JP4076609B2 - 着色ケイ素系粉末物質の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は着色ケイ素系粉末物質の製造方法に関し、特に均一且つ鮮明に着色されたケイ素系粉末物質を製造でき、しかも耐水性、耐候性、耐熱性等の耐久性に優れたインク、塗料、トナー、樹脂等の着色剤として有用な着色ケイ素系粉末物質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク、塗料、トナー及び樹脂等に配合する着色剤としては従来から種々の染料及び顔料が使用されてきた。染料は発色基を有し、水又は他の溶剤に可溶の有機化合物であって、その種類としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、カルボニウムイオン染料、ニトロ染料、キノリン染料、ナフトキノン染料等がある。これに対して、顔料は水又は他の溶剤に不溶な有機又は無機の微粉末である。
【0003】
染料は水又は他の溶剤に可溶なので、非常に薄い着色層を形成することができる上、透明感のある色調にすることが可能である。又、色の種類も5,000種を数え、多様な色彩を実現することも可能であるという利点もある。しかし、染料は耐久性という面では顔料に比べてかなり劣るという欠点がある。
一方、顔料は耐久性という面では染料に比べてかなり優れているという利点を持つが、色調については、染料に比べ鮮明性や透明感が劣り、また色の種類も400種程度と少ないため、選択できる色彩の幅が狭いという欠点がある。
【0004】
特開平9−71732には、従来の着色剤における上記のような欠点をなくすため、多孔質セラミック微粒子(シリカ、アルミナ、チタニア等)に染料を均一に分散して、着色剤として染料分散多孔質セラミック微粒子を得る方法が開示されている。しかしこの方法では多孔質セラミック微粒子中の染料含量を増やすことができず(0.3重量%程度)、また水又は他の溶剤で洗浄すると簡単に染料が流れ出てしまうという問題があった。これは、物理的吸着だけでは染料を多孔質セラミック微粒子に繋ぎ止めておくのが不可能であることに起因する。また、本発明者は特開平6−263425、同6−263426において、フッ化物触媒の存在下、アルコキシシランを加水分解、縮合させて、ケイ素系粉末物質を製造する方法を提案しているが、これらの文献には本発明で使用されるような窒素原子含有有機基を含有する有機ケイ素化合物や有機染料化合物については勿論、本発明で得られるような着色ケイ素系粉末物質の着色性について記載も示唆もない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、染料の鮮明性や透明感を保ちながら、耐久性に優れ、且つ均一に着色され、しかも粒子中の染料含量の増量も可能である上、水又は他の溶剤で染料が流れ出ることがない着色ケイ素系粉末物質の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、驚くべきことにa)一般式(I):
R1 aSiR2 4-a (I)
(式中、 R1は炭素原子数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R2は各々炭素原子数1〜4の、アルコキシ基又はアシロキシ基であり、aは0〜3の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物と、
b)一般式(II):
YR3 bSiR2 3-b (II)
(式中、Yは窒素含有有機基であり、R3は炭素原子数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R2は各々炭素原子数1〜4の、アルコキシ基又はアシロキシ基であり、bは0又は1である。)
で表わされる、窒素原子含有有機基を含有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物と、
c)有機染料化合物とを
d)フッ化物触媒の存在下で加水分解縮合反応させるという非常にシンプルなゾル−ゲル法により、染料の鮮明性や透明感を保ちながら耐久性にも優れ、且つ均一に着色され、しかも粒子中の染料含量の増量化も可能である上、水や溶剤で染料が流れ出ることがない着色ケイ素系粉末物質の製造方法を見出し、本発明に到達した。
【0007】
また、この方法では触媒として中性のフッ化物触媒を用いるので、染料を変質させることもなく、更に短時間で多孔質の微細な粉末固体を安全に得ることができるという有利性があることも見出した。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明による着色ケイ素系粉末物質の製造方法は、a)前記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物と、b)前記一般式(II)で表される、窒素原子含有有機基を含有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物と、c)有機染料化合物とをd)フッ化物触媒の存在下で(共)加水分解縮合反応させるものである。
【0009】
a)有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物
a)成分の有機ケイ素化合物は一般式(I):
R1 aSiR2 4-a (I)
で表される。
ここで、R1は炭素原子数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等や、これらの基の水素原子の少なくとも一部をハロゲン原子等で置換した基、例えばハロゲン化アルキル基等が挙げられる。具体的には、−CH3、−CH2CH3、 − CH2CH2CH3、−CH( CH3)2、− CH2CH2CH2CH3、−CH( CH3)CH2CH3、 −CH2CH( CH3)CH3、−C( CH3)3、−C6H5、−C6H13等が例示される。
【0010】
またR2は各々炭素原子数1〜4の、アルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OCH( CH3)2、− OCH2CH2CH2CH3、−OCH( CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC( CH3)3、 −OCOCH3、−OCO CH2CH3等が例示されるが、中でも−OCH3、−OCH2CH3が好ましい。
なお、aは0、1、2又は3であり、好ましくは0又は1である。
【0011】
このa)成分としては、
Si(OCH3)4、 Si(OCH2CH3)4、 Si(OCH2CH2CH3)4、 Si(OCH2CH2CH2CH3)4、CH3Si(OCH3)3、
CH3Si(OCH2CH3)3、 CH3Si(OCH2CH2CH3)3、
CH3Si(OCH2CH2CH2CH3)3、( CH3)2Si(OCH3)2、
( CH3)2Si(OCH2CH3)2、
( CH3)2Si(OCH2CH2CH3)2、
( CH3)2Si(OCH2CH2CH2CH3)2、
( CH3)3SiOCH3、( CH3)3SiOCH2CH3、
( CH3)3SiOCH2CH2CH3、
( CH3)3SiOCH2CH2CH2CH3、
【0012】
【化1】
が例示できる。
【0013】
これらの中で好ましいものは、Si(OCH3)4、 Si(OCH2CH3)4、CH3 Si(OCH3)3、 CH3 Si(OCH2CH3)3並びにそれらの部分加水分解物である。
なお、a)成分は単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
b)窒素原子含有有機基を含有するケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物
b)成分の窒素原子含有有機基含有ケイ素化合物は一般式(II):
YR3 bSiR2 3-b (II)
で表される。
【0015】
ここでR3は炭素原子数1〜8の、非置換の一価炭化水素基又は窒素原子を含まない置換一価炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等や、これらの基の水素原子の少なくとも一部をハロゲン原子等で置換した基、例えばハロゲン化アルキル基等が挙げられる。具体的には、− CH3、− CH2CH3、
− CH2CH2CH3、−CH( CH3)2、− CH2CH2CH2CH3、
−CH( CH3)CH2CH3、−CH2CH( CH3)CH3、
−C( CH3)3、−C6H5,−C6H13等が例示される。
またR2は炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、
−OCH( CH3)2、−OCH2CH2CH2CH3、−OCH( CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC( CH3)3、−OCOCH3、−OCOCH2CH3等が例示されるが、中でも−OCH3、−OCH2CH3が好ましい。
Yは窒素含有有機基であり、例えば下記式で示されるものが挙げられる。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R5,R6,R9〜R13は水素原子又は炭素原子数1〜8の一価炭化水素基で、R5とR6,R9とR10とR11,R12とR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。Xはハロゲン原子を示す。R7、R8は炭素原子数1〜8の二価炭化水素基で、R7、R8は互いに同一であっても異なっていてもよい。pは0〜3の整数である。)
なお、炭素原子数1〜8の一価炭化水素基の具体例は、R1で説明したものと同様である。炭素原子数1〜8の二価炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基等が挙げられる。
【0018】
Yの窒素含有有機基の具体的としては、下記式で示される基が挙げられる。
H2NCH2−,H(CH3)NCH2−、
H2NCH2CH2−, H(CH3)NCH2CH2−、
H2NCH2CH2CH2−、 H(CH3)NCH2CH2CH2−、
(CH3)2NCH2CH2CH2−、
H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2−、
H(CH3)NCH2CH2NHCH2CH2CH2−、
(CH3)2NCH2CH2NHCH2CH2CH2−、
H2NCH2CH2NHCH2CH2NHCH2CH2CH2−、
H(CH3)NCH2CH2NHCH2CH2NHCH2CH2CH2−、
Cl-(CH3)3N+CH2CH2CH2−、
Cl-(CH3)2(C6H5−CH2−)N+ CH2CH2CH2−、
【0019】
【化3】
これらの中では以下のものが好ましい。
【0020】
【化4】
なお、mは0又は1である。
【0021】
b)成分の一般式(II)で表される窒素含有有機基含有有機ケイ素化合物としては、下記のものを例示することができる。
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
以上のようなb)成分の例の中で好ましいものは、
H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3及び
H2NHCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3
である。
またb)成分としては、以上のような窒素含有有機基含有有機ケイ素化合物の部分加水分解物を用いてもよい。
上記a)成分の有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物に対するb)成分の窒素含有有機基含有有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物の混合比率は特に限定されないが、b)成分/a)成分のモル比は、通常0.01〜3.0、好ましくは0.1〜2.0の範囲が適当である。このモル比が3.0を越えると、目的とする着色ケイ素系粉末物質が固体にならず、液状あるいはオイル状となることがあり、またこのモル比が0.01未満では、染料を化学吸着するための窒素原子含有有機基が少なくなるため、着色化が困難になることがある。
【0026】
c)有機染料化合物
有機染料化合物の種類は特に限定されず、C.I.アシッド・イエロー、C.I.アシッド・レッド、 C. I.アシッド・ブルー、 C. I.アシッド・ブラック、 C. I.フード・イエロー、 C. I.フード・レッド、 C. I.フード・ブラック、 C. I.ダイレクト・イエロー、 C. I.ダイレクト・レッド、 C. I.ダイレクト・ブルー、 C. I.ダイレクト・ブラック、C. I.ダイレクト・オレンジ、 C. I.ベーシック・イエロー、 C. I.ベーシック・レッド、 C. I.ベーシック・ブルー、 C. I.ベーシック・ブラック、 C. I.ベーシック・グリーン、 C. I.リアクティブ・イエロー、 C. I.リアクティブ・レッド、 C. I.リアクティブ・ブルー、 C. I.リアクティブ・ブラック、 C. I.モーダント・ブルー、 C. I.モーダント・レッド等が挙げられる。
【0027】
有機染料化合物の添加量は得られる着色ケイ素系粉末に対して、通常0.1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%が好ましい。有機染料化合物が0.1重量%未満であると、着色効果が不十分であり、また50重量%を超えると、有機染料化合物を吸着させることは困難であり、またコスト的にも有利ではない。
【0028】
d)フッ化物触媒
フッ化物触媒としては、無機フッ化物系、有機フッ化物系のどちらでも使用可能である。一般式MnFm〔ここで、Mは周期率第I〜VIII族もしくはランタノイド系の金属原子又はR4N−(Rは炭素原子数1〜4のアルキル基である)であり、nは1〜4、mは1〜6である〕で表されるフッ化物塩が好ましく、具体的には、LiF、NaF、KF、RbF、CsF等のI族元素のフッ化物;BeF2、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2等のII族元素のフッ化物;BF3、AIF3、GaF3、InF3、TlF3等のIII族元素のフッ化物;CuF2、ZnF2、SnF2、PdF2、SbF3、CrF3等の各種元素のフッ化物;YF3、LaF3、CeF3、PrF3、NdF3、SmF3、EuF3、GdF3、TbF3、DyF3、HoF3、ErF3等のランタノイド系元素のフッ化物;及びNa2SiF6のようなフッ化珪酸
塩等が例示される。またこれらの水和物でもよい。また有機フッ化物触媒としては、(CH3)4NF、(CH3CH2)4NF、( CH3CH2CH2)4NF、( CH3CH2CH2CH2)4NF等の有機フッ化物が例示される。
これらの中でコスト、水溶解性、操作性、安全性から、NaF、KF、( CH3CH2CH2CH2)4NF等が特に好適である。
【0029】
上記のフッ化物触媒のこの反応系での使用量は、 a)、b)両成分に含まれるケイ素原子Si:フッ素原子Fのモル比として、1.0:(0.0001〜2.0)の範囲が好ましく、更に好ましくは1.0:(0.001〜0.1)の範囲である。このモル比が0.0001未満のときは触媒としての効果があまりなく、加水分解・縮合反応に長時間必要となるし、生成する着色ケイ素系粉末物質の性状もよいものでなくなることがあり、またこのモル比が2.0を超えると、ポットイールドの低下を招き、高コストになることがある。
【0030】
(共)加水分解・縮合反応
上記a)〜c)成分による(共)加水分解・縮合反応は、d)の触媒成分の存在下に水または含水有機溶媒中で行なわれる。この有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類;アセトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を挙げることができる。これら有機溶媒を水と併用するときは、有機溶媒の使用量は、水100重量部に対し、5〜50,000重量部、好ましくは10〜500重量部である。特に染料が油溶性のものを使用する場合、有機溶媒が5重量部未満では染料を全て溶解できず、系が不均一になることがあり、また有機溶媒が50,000重量部より多いと、ポットイールドの低下、コストが高価になる等の問題を生じることがある。
【0031】
(共)加水分解・縮合反応を行わせるための水の添加量は、 a)、b)両成分中のSi原子:水のモル比として、1:(0.5〜50)の範囲が好ましい。またこの場合の有機溶媒の使用量は、 a)、b)両成分の合計100重量部に対して、0〜500重量部、好ましくは0〜150重量部添加すればよい。なお、 a)、b)両成分中のSi原子:水のモル比が0.5未満では、加水分解せずに残るa)、b)成分の量が増加して、経時変化を起す可能性があり、このモル比が50を超えると、ポットイールドが低下することがあり、好ましくない。
【0032】
本発明方法に従って実際に着色ケイ素系粉末物質を製造するために行う実際の反応操作としては
1)a)、b)両成分の混合液を攪拌している中に、水を投入する方法、
2)水を攪拌している中に、 a)、b)両成分の混合物を投入する方法、
の2つがあるが、必要に応じこのいずれかを選択すればよい。
この時、有機染料化合物として水溶性染料を使用した場合は、水に溶解させ、また有機溶媒可溶性染料を使用した場合は、有機溶媒に溶解させ、次いで上記溶液をa)、b)両成分と混合させておくことが望ましい。またフッ化物触媒は水に溶解させてから、反応させるのが好ましい。
【0033】
この反応による(共)加水分解・縮合によって得られた縮合反応生成物は濾過等の方法によって反応溶液から水、有機溶媒を除去したのち、揮発乾燥させることにより、本発明の目的とする着色ケイ素系粉末物質を得ることができる。こうして得られる着色ケイ素系粉末物質の嵩比重は0.1〜0.5g/cm3の範囲が好ましく、また平均粒径は0.05〜0.3μmの範囲が好ましい。
なお、このようにして得られた着色ケイ素系粉末物質は内部まで均一に着色されているため、染料の透明性や鮮明性が保たれ、なお且つ化学吸着されているため、水や溶剤で染料が脱落することがないのが大きな特徴である。またフッ化物触媒が中性であるため、染料に悪影響を及ぼすことがなく、また反応中に色変化することがない。
【0034】
着色ケイ素系粉末物質の用途
本発明方法で得られる着色ケイ素系粉末物質は上記特徴を有するので、インク、塗料、トナー、樹脂等に配合する着色剤として有用である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例、比較例及び使用例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
酢酸エチル300g、テトラメトキシシラン20g(0.131mol)、2−アミノエチル−3−プロピルアミノトリメトキシシラン14.7g(0.066mol)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた500mlの反応器に入れ攪拌混合した。
次いで、これにKF0.12g(2mmol)、水60.5g(3.36mol)、及び水溶性染料としてダイレクトブルー86 1.2g(シリカ固形分換算で10重量%)を混合溶解させたものを3分間を要して滴下し、滴下終了後3分間攪拌、反応させたところ、青色ゲル状物が生成した。更に室温で1時間攪拌した後、加圧濾過器で濾別し、イオン交換水で洗浄した。この時、水で洗浄しても染料は殆ど脱落することはなかった。次にゲル状物を80℃で3時間乾燥したところ、青色に着色したケイ素系粉末物質17.5gが得られた。このものは嵩比重0.22g/cm3、平均粒径0.11μmであった。
〔実施例2〕
実施例1における水溶性染料ダイレクトブルー86をダイレクトイエロー142に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、4分間で黄色ゲル状物が生成した。以下このゲル状物を実施例1と同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、黄色に着色したケイ素系粉末物質が得られた。このものは嵩比重0.23g/ cm3、平均粒径0.12μmであった。
【0036】
〔実施例3〕
実施例1における水溶性染料ダイレクトブルー86をダイレクトブラックRWに変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、2分間で黒色ゲル状物が生成した。以下このゲル状物を実施例1と同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、黒色に着色したケイ素系粉末物質17.6gが得られた。このものは嵩比重0.20g/ cm3、平均粒径0.11μmであった。
〔実施例4〕
実施例1における水溶性染料ダイレクトブルー86をダイレクトレッド227に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、4分間で赤色ゲル状物が生成した。以下このゲル状物を実施例1と同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、赤色に着色したケイ素系粉末物質17.3gが得られた。
このものは嵩比重0.22g/ cm3、平均粒径0.11μmであった。
【0037】
〔実施例5〕
KF0.12g(2mmol)、水300g(16.7mol)、及び油溶性染料としてソルベントブルー78 1.2g(シリカ固形分換算で10重量%)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた500mlの反応器に入れ攪拌混合した。
次いで、これにエチルアルコール50g、テトラメトキシシラン20g(0.131mol)、2−アミノエチル−3−プロピルアミノトリメトキシシラン(0.066mol)を混合溶解させたものを5分間を要して滴下し、滴下終了後1分間攪拌、反応させたところ、青色ゲル状物が生成した。更に室温で1時間攪拌した後、加圧濾過器で濾別し、エチルアルコール及び引き続きイオン交換水で洗浄した。この時、エチルアルコールで洗浄しても染料はほとんど脱落することはなかった。次にゲル状物を80℃で3時間乾燥したところ、青色に着色したケイ素系粉末物質18.0gが得られた。このものは嵩比重0.18g/ cm3、平均粒径0.10μmであった。
【0038】
〔実施例6〕
実施例5における油溶性染料ソルベントブルー78をソルベントイエロー54に変えた以外は実施例5と同様にして反応させたところ、1分間で黄色ゲル状物が生成した。以下このゲル状物を実施例5と同様に処理したところ、エチルアルコールで洗浄しても染料は脱落することはなく、黄色に着色したケイ素系粉末物質17.9gが得られた。このものは嵩比重0.20g/ cm3、平均粒径0.11μmであった。
〔実施例7〕
実施例5における油溶性染料ソルベントブルー78をソルベントブラック34に変えた以外は実施例5と同様にして反応させたところ、1分間で黒色ゲル状物が生成した。以下このゲル状物を実施例5と同様に処理したところ、エチルアルコールで洗浄しても染料は脱落することはなく、黒色に着色したケイ素系粉末物質17.2gが得られた。このものは嵩比重0.19g/ cm3、平均粒径0.09μmであった。
【0039】
〔実施例8〕
実施例5における油溶性染料ソルベントブルー78をソルベントレッド145に変えた以外は実施例5と同様にして反応させたところ、1分間で赤色ゲル状物が生成した。以下このゲル状物を実施例5と同様に処理したところ、エチルアルコールで洗浄しても染料は脱落することはなく、赤色に着色したケイ素系粉末物質18.1gが得られた。このものは嵩比重0.18g/ cm3、平均粒径0.09μmであった。
〔実施例9〕
酢酸エチル300g、テトラアセトキシシラン40.9g(0.131mol)、2−アミノエチル−3−プロピルアミノトリメトキシシラン14.7g(0.066mol)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた500mlの反応器に入れ攪拌混合した。
ついで、ここにKF0.12g(2mmol)、水60.5g(3.36mol)及び水溶性染料ダイレクトブルー86 1.2g(シリカ固形分換算で10重量%)を混合溶解させたものを3分間を要して滴下し、滴下終了後2分間攪拌したところ、青色ゲル状物が生成した。更に室温で1時間攪拌した後加圧濾過器でろ別し、イオン交換水で洗浄した。この時、水で洗浄しても染料はほとんど脱落することはなかった。ゲル状物を80℃3時間で乾燥したところ青色に着色したケイ素系粉末物質17.2gが得られた。このものは嵩比重0.19g/cm3 、平均粒径0.10μmであった。
【0040】
〔実施例10〕
実施例1におけるKFをNaF0.08g(2mmol)に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、4分間で青色ゲル状物が生成したので、以下実施例1同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、青色に着色したケイ素系粉末物質17.4gが得られた。このものは嵩比重0.23g/cm3 、平均粒径0.11μmであった。
〔実施例11〕
実施例1におけるKFをNa2SiF60.06g(0.3mmol)に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、2分間で青色ゲル状物が生成したので、以下実施例1同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、青色に着色したケイ素系粉末物質17.6gが得られた。このものは嵩比重0.20g/cm3 、平均粒径0.11μmであった。
【0041】
〔実施例12〕
実施例1におけるKFを(CH3CH2CH2CH2)4NF0.52g(2mmol)に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、3分間で青色ゲル状物が生成したので、以下実施例1同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、青色に着色したケイ素系粉末物質17.3gが得られた。このものは嵩比重0.2g/cm3 、平均粒径0.11μmであった。
〔実施例13〕
酢酸エチル300g、テトラアセトキシシラン40.9g(0.131mol)、2−アミノエチル−3−プロピルアミノトリメトキシシラン14.7g(0.066mol)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた500mlの反応器に入れ攪拌混合した。
ついで、ここにKF0.12g(2mmol)、水60.5g(3.36mol)及び水溶性染料ダイレクトブルー86 1.2g(シリカ固形分換算で10重量%)を混合溶解させたものを3分間を要して滴下し、滴下終了後2分間攪拌したところ、青色ゲル状物が生成した。更に室温で1時間攪拌した後加圧濾過器でろ別し、イオン交換水で洗浄した。この時、水で洗浄しても染料はほとんど脱落することはなかった。ゲル状物を80℃3時間で乾燥したところ青色に着色したケイ素系粉末物質17.2gが得られた。このものは嵩比重0.19g/cm3 、平均粒径0.10μmであった。
【0042】
〔実施例14〕
実施例1におけるKFをNaF0.08g(2mmol)に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、4分間で青色ゲル状物が生成したので、以下実施例1同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、青色に着色したケイ素系粉末物質17.4gが得られた。このものは嵩比重0.23g/cm3 、平均粒径0.11μmであった。
〔実施例15〕
実施例1におけるKFをNa2SiF60.06g(0.3mmol)に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、2分間で青色ゲル状物が生成したので、以下実施例1同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、青色に着色したケイ素系粉末物質17.6gが得られた。このものは嵩比重0.20g/cm3 、平均粒径0.11μmであった。
【0043】
〔実施例16〕
実施例1におけるKFを(CH3CH2CH2CH2)4NF0.52g(2mmol)に変えた以外は実施例1と同様にして反応させたところ、3分間で青色ゲル状物が生成したので、以下実施例1同様に処理したところ、水で洗浄しても染料は脱落することはなく、青色に着色したケイ素系粉末物質17.3gが得られた。このものは嵩比重0.2g/cm3 、平均粒径0.11μmであった。
【0044】
〔比較例1〕
酢酸エチル300g、テトラメトキシシラン30g(0.197mol)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた500mlの反応器に入れ攪拌混合した。
次いで、これにKF0.12g(2mmol)、水60.5g(3.36mol)、及び水溶性染料としてダイレクトレッド227.12g(シリカ固形分換算で10重量%)を混合溶解させたものを3分間を要して滴下し、滴下終了後3分間攪拌、反応させたところ、赤色ゲル状物が生成した。更に室温で1時間攪拌した後加圧濾過器で濾別し、イオン交換水で洗浄した。この時、水で洗浄すると染料が殆ど脱落し、濾液が赤色を呈した。次にゲル状物を80℃で3時間乾燥したところ、無着色のケイ素系粉末物質10.8gが得られた。このものは嵩比重0.17g/ cm3、平均粒径0.09μmであった。
【0045】
〔比較例2〕
酢酸エチル300g、テトラメトキシシラン20g(0.131mol)、2−アミノエチル−3−プロピルアミノトリメトキシシラン14.7g(0.066mol)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた500mlの反応器に入れ攪拌混合した。
次いで、これにNaOH0.17g(4.3mmol)、水60.5g(3.36mol)、及び水溶性染料としてダイレクトレッド227 1.2g(シリカ固形分換算で10重量%)を混合溶解させたものを3分間を要して滴下し、滴下終了後5時間攪拌、反応させたところ、赤色ゲル状物が生成した。更に室温で1時間攪拌した後、加圧濾過器で濾別し、イオン交換水で洗浄した。この時、水で洗浄すると僅かに染料が脱落した。次にゲル状物を80℃で3時間乾燥したところ、赤色だったものが茶色に変色した。この時得られたケイ素系粉末物質は13.5gであった。このものは嵩比重0.55g/ cm3、平均粒径0.51μmであった。
【0046】
〔比較例3〕
酢酸エチル300g、テトラメトキシシラン20g(0.131mol)、2−アミノエチル−3−プロピルアミノトリメトキシシラン14.7g(0.066mol)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた500mlの反応器に入れ攪拌混合した。次いで、これに1N塩酸水 2g、水58.5g(3.36mol)及び水溶性染料ダイレクトレッド227 1.2g(シリカ固形分換算で10重量%)を混合溶解させたものを3分間を要して滴下し、滴下終了後50時間攪拌したところ、赤色ゲル状物が生成した。これを加圧濾過器で濾別し、イオン交換水で洗浄した。この時、水で洗浄すると僅かに染料が脱落した。次にゲル状物を80℃で3時間乾燥したところ赤色だったものが茶色に変色した。この時得られたケイ素系粉末物質は13.5gであった。このものは嵩比重0.87g/ cm3、平均粒径0.76μmであった。
【0047】
〔比較例4〕
テトラエトキシシラン9.5g(0.046mol)、メタノール84.0g、2N塩酸水0.5g及び水6.0g(0.33mol)を攪拌器、温度計、冷却器を備えた200mlの反応器に入れ攪拌混合した。これを80℃で30時間加熱攪拌させたところ、白色ゲル状物が得られた。これを加圧濾過器で濾別し、イオン交換水で洗浄、80℃で3時間乾燥させ、得られた乾燥ゲルを乳鉢ですり潰して粉末状にした。得られたシリカ粉末は嵩比重0.75g/ cm3、平均粒径0.58μmであった。次に、このシリカ粉末2g、シリカ粉末に対して10重量%量(0.2g)のソルベントブルー78及び50gのエタノールを攪拌器を備えた100mlの反応器に入れ室温で30分間攪拌混合したが、上澄み液が透明になることはなかった。その後、これを加圧濾過器で濾別し、エタノールで洗浄したところ、殆どの染料が吸着されずに脱落し、濾液が青色を呈した。得られたシリカ粉末は無着色のものであった。
【0048】
〔使用例〕
実施例1〜4及び実施例13〜16で得られた着色ケイ素系粉末物質を平均粒径0.03μmの微粒子にすり潰した。これを着色剤として5重量部、エチレングリコール25重量部及び水70重量部とを混合し、インクジェットプリンター用インクを製造した。又、使用比較例として、実施例1〜4で使用した各染料3重量部を直接、エチレングリコール25重量部及び水72重量部と混合し、インクジェットプリンター用インクを製造した。エプソン(株)製インクジェットプリンター(MJ−810C)に各インクを供給し、上記プリンターで普通紙上に印字画像を形成した。得られた印字画像を水中に6時間浸漬し、下記基準で耐水性を評価し、表1に示す結果を得た。
耐水性の評価
○:変退色、汚染なし
×:変退色、汚染あり
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られる着色ケイ素系粉末物質は、染料の鮮明性や透明感を保ちながら耐久性にも優れ、且つ均一に着色され、しかも粒子中の染料含量の増量化も可能である上、水や溶剤で染料が流れ出ることがなく、従ってインク、塗料、トナー、樹脂等に配合する着色剤として有用である。
Claims (3)
- a)一般式(I):
R1 aSiR2 4-a (I)
(式中、 R1は炭素原子数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R2は各々炭素原子数1〜4の、アルコキシ基又はアシロキシ基であり、aは0〜3の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物と、
b)一般式(II):
YR3 bSiR2 3-b (II)
(式中、Yは窒素含有有機基であり、R3は炭素原子数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R2は各々炭素原子数1〜4の、アルコキシ基又はアシロキシ基であり、bは0又は1である。)
で表わされる、窒素原子含有有機基を含有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物と、
c)有機染料化合物とを
d)フッ化物触媒の存在下で加水分解縮合反応させることを特徴とする着色ケイ素系粉末物質の製造方法。 - b)成分の一般式(II)で表される加水分解性シランが
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3 、
H2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3 及び
H2NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の着色ケイ素系粉末物質の製造方法。 - 前記フッ化物触媒がNaF、KF、(CH3CH2CH2CH2)4NFよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の方法。
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