【発明の詳細な説明】
スチレンポリマーからなる耐衝撃性成形材料
本発明は耐衝撃性の熱可塑性成形材料及びその製法に関する。
スチレン及びその工業的に均等物、スチレン−アクリロニトリル又はメチルメ
タクリレートのポリマーをベースとする熱可塑性成形材料は、透明で剛性である
が、非常に脆いので多くの用途には不適当である。
耐衝撃性成形材料を得るための一般に慣用の方法は、強靭化変性であり、この
際、大抵はモノマーの重合を適当なゴムの存在下に行い、この際、ゴムは、グラ
フト化により生じるポリマー又はコポリマー(マトリックス)と相容性(compat
ible)になる。
工業的には、ゴムの存在下に、いわゆる塊状−又は溶液法でマトリックスの重
合が行われているか又は必要なグラフトされたゴムの存在下に(一般に乳液中で
)製造され、マトリックスポリマーに添加される。この塊状−又は溶液法では、
数工程の連続的方法が有利である(例えば、DE 1770392;DE 40
46718;US 2727884;US 3903202参照)。
スチレン−及びスチレン−アクリロニトリル−ポリマーの強靭化変性のために
、ポリブタジエン−ゴム及
びブタジエン−スチレン−ブロックゴムが、かつスチレン−アクリロニトリル−
及びメタクリル酸メチル−ポリマーのためにはアクリレート−ゴムも使用されて
いる(例えばDE 2427960又はDE 1260135及びEP 244
856参照)。
ポリブタジエン含有成形材料は、強靭であるがもはや透明ではない。更に、こ
れは、高い二重結合含分に基づき低い耐候性である。
スチレン−アクリロニトリル−及びメタクリル酸メチル−成形材料を得るため
に有利に利用されている方法は、引き続くグラフト鞘(後のマトリックス−相へ
の結合のための相容性化助剤として役立つ)の生成を伴うゴム相のラジカル乳化
重合及び平均直径約100〜1000nmの粒子へのエマルジヨンの凝集である
。この粒子は、乾燥後にもう一つの工程で完成マトリックス中に加工導入される
。
耐衝撃性に変性されたスチレンポリマーを製造するための塊状/溶液−法は、
非透明(不透明)な成形材料をもたらし、これは特別に耐候性ではない。引き続
くグラフトゴムの導入を伴う乳化法は、非常に経費がかかり、アクリレートゴム
又は二重結合の少ないオレフィンゴム(EPM、EPDM)を用いてのみ充分な
耐候性が得られる。
本発明の目的は、スチレン、スチレン−アクリロニトリル又はメタクリル酸メ
チルと特別なゴムをベース
とする耐衝撃性に変性された成形材料を、前記の欠点を有しないか又は従来より
も減少されて有する簡単な経済的な方法で、現存する重合装置中で連続的に製造
することである。
本発明のもう一つの目的は、相応する非変性成形材料に比べて著しく改善され
た機械特性を有するだけではなく、更に透明でもある、ビニル芳香族(即ちスチ
レン−)モノマー、スチレンとアクリロニトリル及び(メタ)アクリルエステル
とのコポリマーをベースとする熱可塑性成形材料である。
本発明のもう一つの目的は、前記特性を有する成形材料を製造することのでき
る方法を提供することである。
これらのかつ他の目的は、本発明により、ビニル芳香族モノマー(A1)の塊
状重合(場合によっては少量の溶剤の添加下に)又は特定のブタジエン含有ゴム
(b)(これは、スチレンとブタジエンとからランダム又は擬ランダムに形成さ
れたブロックを含有し、重合の間にマトリックス材料(A)の封入(吸蔵)を行
い、この形で軟質相(B)を形成する)の存在下でのビニル芳香族モノマー(A
1)と極性コモノマー(A2)との塊状共重合により達成される。
本発明の直接の目的物は、次のものをベースとする成形材料であり、これは、
A及びBからなる成形材料に対して
A:ビニル芳香族モノマー少なくとも1種の又はビニル芳香族モノマー少なくと
も1種及び極性コモノマー少なくとも1種の重合された又は共重合された単位か
らなる硬質マトリックスA 60〜98重量%及び
B:ビニル芳香族モノマーVとジエンDからアニオン重合により製造された、1
分子当たりビニル芳香族モノマーとジエンからランダム又は擬ランダムに構成さ
れたブロック(V/D)少なくとも1個及びビニル芳香族モノマーから構成され
たブロックV少なくも1個を有し、軟質相Bに対して10〜80重量%の、重合
の間に取り入れられたマトリックス−材料の封入物(吸蔵物)(a)を含有する
ブロックコポリマーから形成されている軟質相B 2〜40重量%を含有する。
前記のAとBとからの組成には、軟質相B中に含有されているマトリックス材
料の封入物(a)は計算に入れるべきではない。
使用物質、本発明の成形材料及びその製造を次に詳述し、実施例で説明する。
硬質マトリックス A
ビニル芳香族モノマーをベースとするポリマーのマトリックスを得るための出
発物質としては、一般にスチレンモノマーが好適である。
本発明によれば、スチレン及び慣用の工業的均等物とみなされる置換スチレン
が任意の組合せ及び混合割合で使用することができる。スチレン、α−メチルス
チレン及び4−メチルスチレン又はそれらの混合物が有利である。特にスチレン
が有利である。
極性のモノマーA2としては、公知の構造H2C=CR1R2(ここで、R1
は水素、フェニル又は低級アルキル、殊にメチル又はエチルであり、R2はカル
ボキシル、カルボ−低級−アルコキシ、例えばカルボメトキシ、カルボアリール
オキシ、例えばカルボフェノキシ、カルボキサミド、カルボキシ−N−低級アル
キル−アミド、カルボキシ−N−フェニルアミド又はニトリルである)の極性ビ
ニルモノマーが好適である。
更に、極性コモノマーA2としては、マレイン酸−及びフマル酸無水物及びこ
れらのエステル、半エステル又は場合によってはN−低級アルキル−又はアリー
ル置換されたイミドが好適である。
極性コモノマーA2としては、例えば、適当なアクリロニトリル、無水マレイ
ン酸、マレイン酸イミド、マレイン酸−N−フェニルイミド、マレイン酸−又は
フマル酸半エステル及び−ジエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル
、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メチル、ア
クリル酸ブチル、メタクリルアミド、アクリルアミド及びアクリル酸が挙げられ
る。
軟質相 B
軟質相(ゴム相)Bは、本発明により、特別なブロ
ックゴムの存在下における硬質マトリックスAの重合の際に形成され、この際、
マトリックス材料Aの封入物(吸蔵物;”a”)が生じ、場合によっては、更に
一定の範囲でグラフト化が起こる。このブロックゴムは、相応する未公開のドイ
ツ特許出願P4429952.5によるビニル芳香族モノマー(V)とジエン−
モノマー(D)とのアニオン重合により得られる。この際、これは、鋭い又は先
細の移行(well defined or taperd transition)を有するビニル芳香族化合物と
ジエンとからのブロック及び1分子当たり少なくとも1個のブロック(以後V/
Dと称する;この中でVとDはランダムに又は擬ランダムに分配されている、即
ち非常に短いシークエンスで現れる)をも実質的にビニル芳香族モノマーのみか
ら構成されているブロックVをも含有するゴムである。このブロックコポリマー
は、全体としてジエン10〜85、有利に20〜65重量%及びビニル芳香族化
合物90〜15、有利に80〜35重量%を含有する。本発明によるポリマー材
料は、ジエン分が2〜50、有利に5〜40重量%の範囲にあるような量で使用
される。
この場合、ビニル芳香族モノマーVとしては、スチレン及びそのアニオン重合
可能な誘導体(α−メチルスチレン、2−、3−又は4−メチルスチレン、1,
1−ジフェニルエチレン等)もこれに該当する。
本発明の意味におけるジエン−モノマーDは、アニ
オン重合可能なジエン、例えばブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1−フェ
ニルブタジエンである。これらの記載のモノマーは、単独でも又は混合しても使
用することができる。
本発明のためには、例えば次の構造を有するブロックコポリマーが好適である
:
(1) [V−(D/V)]n;
(2) [V−(D/V)]n−V;
(3) (D/V)−[V−(D/V)]n;
(4) X−[[V−(D/V)]n]m+1;
(5) X−[[(D/V)−V]n]m+1;
(6) X−[[V−(D/V)n−V]m+1;
(7) X-[[(D/V)-V]n(D/V)1 m+1;
(8) Y−[[V−(D/V)]n]m+1;
(9) Y−[[(D/V)−V]n]m+1;
(10)Y−[[V−(D/V)]n−V]m+1;
(11)Y-[[(D/V)-V]n(D/V)]m+1;
[式中、Vはビニル芳香族単位から構成されており、(D/V)は、ジエン−及
びビニル芳香族単位からランダム又は擬ランダムに構成されているブロックであ
り、Xは、n−官能性の開始剤の残基であり、Yはm−官能性のカップリング剤
の残基であり、m及びnは1〜10の整数である]。
ランダム又は擬ランダムなブロックそのものは、異なる組成又は異なる構造の
複数のセグメントから構成
されていてよい:
(D/V)1−(D/V)2
(D/V)1−(D/V)2−(D/V)1
(D/V)1−(D/V)2−(D/V)3
個々のブロックD/V中のビニル芳香族化合物/ジエン−比は、異なっていて
も同じでも、又は1ブロック内で連続的に変動していてもよく:(D/V)1−
−>(D/V)2は、例えば各部分ブロックのガラス転移温度Tg(K.H.Illers
und H.Breuer,Kolloidzeitschrift 190/1,16-34(1963)により測定)はそれ
ぞれ25℃より下回ることを条件として、上昇又は減少することができる。
有利なポリマー構造は、V−(D/V);V−(D/V)−V;X−[−(D
/V)−V]2及びY−(D/V)−V]2であり、ここで、ランダム又は擬ラン
ダムなブロック(D/V)それ自体は、ブロック(D1/V1)−(D2/V2
)−(D3/V3)・・・に分けらていてよい。ランダム又は擬ランダムなブロ
ックは、2〜15個のランダムな部分ブロック、特に有利に3〜10個の部分ブ
ロックから成っているのが有利である。できるだけ多くの部分ブロックDn/V
nへのランダムブロック(D/V)の分配は、一つの部分ブロックDn/Vn内
で変動する(これは、実際の条件下でのアニオン重合時にも非常に避けるのが困
難である)組成でも、(D/V)−ブロックが全体
として殆ど完全なランダムポリマーを保持する利点を有する。
このブロックコポリマーは、全体として、ジエン10〜85、有利に20〜6
5重量%及びビニル芳香族化合物90〜15、特に80〜35重量%を含有する
。
ランダムに構成された(D/V)−ブロック中のビニル芳香族化合物V対ジエ
ンDの重量比は、例えば、Tgが25℃を下回る周辺条件が満足される限り、9
0:10〜10:90で変動可能である。
このブロック(D/V)の分子量は、通常200〜350000g/モルであ
る。5000〜180000g/モルの値が有利である。
本発明により使用可能なゴムの分子量は、40000g/モル〜500000
g/モルである。50000g/モル〜300000g/モルの値が有利であり
、この際、分析ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィからの重量平均を意味す
る。
本発明により使用すべきゴム弾性ブロックコポリマーの製造は、未公開のドイ
ツ特許出願P4420952.5に記載されており、その概要を次に記載する。
このような本発明によるゴム弾性のブロックコポリマーは、前記のパラメータ
の範囲内で、ビニル芳香族化合物とジエンとのランダムコポリマーからそのゴム
弾性ブロックを形成させることにより得;ビニル芳香
族化合物とジエンとのランダムコポリマーを極性共溶媒の存在下での重合させる
ことにより得る。
これにより、非極性溶剤中、極性共溶媒の添加下でのアニオン重合によりブロ
ックコポリマーの軟質ブロックが製造される。この際に、共溶媒は金属カチオン
に対してルイス−塩基として作用することが前提である。溶剤としては、有利に
、脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンが使用され
る。ルイス塩基としては、極性の中性化合物、例えばエーテル及び3級アミンが
有利である。特別有効なエーテルの例は、テトラヒドロフラン及び脂肪族ポリエ
ーテル、例えばジエチレングリコールジメチルエーテルである。3級アミンとし
てはトリブチルアミン及びピリジンが挙げられる。極性の共溶媒は、非極性溶剤
に、例えば0.5〜5容量%の少量で添加される。特に0.1〜0.3容量%の
量のテトラヒドロフランが有利である。経験によれば、大抵の場合に約0.2容
量%の量で充分である。
この配量及びルイス塩基の構造により、共重合パラメータ及びジエン単位の1
,2−又は1,4−結合の割合が測定される。本発明によるポリマーは、例えば
総ジエン単位に対して1,2−結合の割合15〜40%及び1,4−結合の割合
85〜60%を有する。
重合温度は、0〜130℃であってよい。30〜100℃の温度範囲が有利で
ある。
機械特性にとって、ブロックゴム内の軟質ブロックの容量割合は重要である。
本発明によれば、ジエン−及びビニル芳香族シーケンスから構成されている軟質
ブロックの容量割合は60〜95、有利に70〜90、特に有利には80〜90
容量%である。この場合、ビニル芳香族モノマーから成っているブロックはブロ
ックゴム内で硬質相を形成し、その容量割合は5〜40、有利に10〜30、特
に好ましくは10〜20容量%である。この容量割合は、硬質マトリックスAの
本発明による封入された割合(吸蔵された、即ち化学的には結合していない)と
は関係ない。むしろ、この吸蔵された割合が次に記載の本発明による成形材料の
製造時に、軟質相の存在のための前提である。
耐候性で耐衝撃性に変性されたポリマーの製造のために、脂肪族C=C−二重
結合を部分的に又は完全に水素化するのが有利である。このことは、公知法によ
り、例えばEP−A−475461、US−PS4656230又はUS−PS
4629767に記載のように行うことができる。耐候性を実質的に高めるため
には、脂肪族二重結合の有利な水素化度は、60〜100%である。
本発明による成形材料は、耐衝撃性に変性されたスチレンポリマーの製造のた
めに典型的な方法で、例えば、予め形成された(例えば前記の製造法記載参照)
ゴムの存在下での硬質マトリックスAを形成するモノ
マーの塊状又は溶液中での連続的重合(US 294692参照)により又は非
連続的な塊状−懸濁−重合(例えばUS−PS2862906、EP−A−42
9986、EP−A−274109参照)により得られ、この際、使用ゴムから
のマトリックス材料の封入下に軟質相Bが生じる。
撹拌釜、反応塔と管−又は管状ホース−反応器の組合せを備え、従って、複数
の反応帯域を有する連続的方法は特に好適である。放射状の混合の改善のために
、管状反応器中に軸方向の逆混合の原因をもたらさないユニットを備えることが
できる。
連続的な塊状/溶液−法のための溶剤として、環状脂肪族又は芳香族炭化水素
、例えばシクロヘキサン、エチルベンゾール、キシロール、イソプロピルベンゾ
ール又はトルエンが好適である。この場合に、反応混合物の溶剤の割合は、高い
空時収率を得るために、30以下、有利に10重量%以下に保持すべきである。
重合は、熱的に又は分解可能なペルオキシド又はアゾ化合物の使用下に開始す
ることができる。これら開始剤は、一般にグラフト化を改善し、これに伴い良好
な生成物特性をもたらす。例えば、ペルエステル、例えばt−ブチルペルオキシ
ベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、ジベンゾイルペルオキシド及
びジラウリルペルオキシド;ペルケタール、例えば1,1−ジ−t−ブチルペル
オキシシクロヘキサン、1
,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン;
ペルオキシド、例えばジクミルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルキシド、t
−ブチルクミルペルオキシド又はペルカーボネート、例えばt−ブチルペルオキ
シ−イソプロピル−カーボネートが好適である。使用される開始剤の量は、一般
にモノマーに対して0.05〜0.3重量%である。
分子量の調節のために、通常使用される4〜18C−原子を有するメルカプタ
ンを使用することができる。n−ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン及
びn−及びt−ドデシルメルカプタンが特に効を奏する。使用されるメルカプタ
ンの量は、通常モノマーに対して0.01〜0.3重量%である。
分子量分布に影響するために、2官能性の化合物、例えばジビニルベンゾール
、ブタンジオールジアクリレート又はアリルメタクリレートを使用することもで
きる。架橋を避けるために、これらは非常に少量、即ち5〜1500ppmの量
で使用される(EP−A−96862)。
使用される重合温度は、熱的に又は開始剤を用いて重合されるか否かにより、
かつ場合によっては開始剤の半価時間により決まる。これは、一般に70〜20
0、有利に80〜170℃の範囲内にある。全体の反応領域に渡る温度管理は当
業者にとっては周知である。
重合の間(この場合には、殊にモノマー中へのゴムの溶解の後)に又は得られ
た成形材料の加工の前に、このようなポリマー加工材料にとって慣用である様な
添加剤を加えることができる。例えば、通常は、内滑剤、滑剤、酸化防止剤、U
V−安定剤、填料、防炎剤又は発泡剤を含有している。これらの添加剤は、その
特性に応じて、酸化防止剤又はUV−安定剤は非常に少量で使用されるか、又は
例えば填料としてのガラス繊維、防炎剤又は顔料は、透明度に問題にならず特別
な色光沢を有する加工材料を得るべき場合には、多量に使用することもできる。
本発明の方法で得られる成形材料は、熱可塑性プラスチック加工の全ての方法
、例えば押し出し成形、射出成形、カレンダー成形、中空体吹き込み成形、発泡
、圧縮又は浸漬により加工することができ;特に本発明の方法で製造された成形
材料を射出成形及び押出成形に使用するのが有利である。
成形材料は、透明度を失うことがあり得る事実を考慮して、他の相容性のポリ
マーと混合することもできる。例えば、特にこの方法で製造された耐衝撃性のポ
リスチレン成形材料は、ポリフェニレンエーテルとの混合のために、かつ防炎生
成物の製造のために好適であり、この際、防炎剤としては、例えば慣用のハロゲ
ン−又は燐化合物、ホスファゼン又はトリアジン(例えばメラミン)が好適であ
る。
次の実施例及び比較例に記載の量は、特に断りのない限り重量に関する値であ
る。記載の機械的特性値は、圧縮成形された試験体で次の方法により測定した。
降伏応力 DIN 53455
引き裂き強度 DIN 53455
ホール衝撃強度 DIN 53753
透明性 DIN 5036
(2mm−円盤使用)。
例1
ドイツ特許出願P4420952.5の処方により製造された分子量Mn11
7000g/モル、ブタジエン含有量35%及びスチレンブロック長さMn12
600g/モルを有するスチレン−スチレン/ブタジエン−スチレン−三成分ブ
ロックコポリマー(S−S/B−S、この際、S/Bは前記の定義(V/D)に
関連しており;V=S=スチレン及びB=D=ジエン)各15部をスチレン85
部中に溶かし、t−ドデシルメルカプタン0.1部、安定剤としての市販の立体
障害されたフェノール(Irganox(R)1076)0.2部及び水素化された鉱油2部を
加えた。
この溶液から2000gを、アンカー撹拌機を備えた5リットル内容の撹拌釜
中、135℃の温度及び300min-1の撹拌回転数で重合させた。40%の変
換率でこの重合溶液にジクミルペルオキシド1.7g及び保護コロイドとしての
ナトリウムカルボキシメチ
ルセルロース1.8g及び緩衝剤としてのナトリウムジホスフェート1.8gを
有する水1800gの溶液を添加した。分散液を得るために撹拌回転数を400
min-1まで高めた。次いで、これをなお110℃で3時間、113℃で3時間
及び140℃で6時間重合させた。この懸濁ポリマーから付随水を分離し、保護
コロイドの除去のために水で洗浄し、乾燥させ、200℃で試験体を製造した。
この試験体は透明で硬い次の特性を有した:
降伏応力: 29.5[N/mm2]
引き裂き強度: 26.7[N/mm2]
ホール衝撃強度: 5.8[Kj/m2]
透明性: 83 [%]
比較実験1
例1と同様に実施するが、本発明のブロックゴムの代わりに市販のメデイウム
−シス−ポリブタジエンゴム(Bayer AG社のHX 500)8部に代え
た。200℃で得られた試験体は、白色(不透明)で、非透明であり、次の特性
を有した:
降伏応力 26.8[N/mm2]
引き裂き強度 25.3[N/mm2]
ホール衝撃強度: 4.9[Kj/m2]
例2
スチレン−アクリロニトリル−コポリマーの製造のために分子量Mn1420
00及びブタジエン含量4
5重量%を有するS−S/B−S三成分ブロックコポリマーを使用した。
その9.5部をスチレン71.4部中に溶かした。この溶液にアクリロニトリ
ル24.0部、t−ドデシルメルカプタン0.15部、パラフィン油0.6部及
びt−ブチルペルベンゾエート0.08部を加えた。重合を例1の記載と同様に
実施した。この懸濁ポリマーから230℃で試験体を製造した。この試験体は透
明であり次の特性を有した。
降伏応力 16.8[N/mm2]
引き裂き強度: 15.9[N/mm2]
ホール衝撃強度: 30.2[Kj/m2]
透明性: 85 「%」
例3
耐候性で耐衝撃性のポリスチレンの製造のために、構造S−(S/B)1−(
S/B)2−(S/B)3−Sのスチレン−ブタジエン−ブロックゴムを先ず水素
化し、この際、シクロヘキサン中のゴムの15%の水不含溶液に、ニッケルアセ
チルアセトネート0.1g、トリエチルアルミニウム0.2g及びシクロヘキサ
ン20ml(各々1リットル当たり)の混合物を加え、60℃、25バールで水
素で処理した。このゴムはMn118000又はMw177000の分子量及びブ
タジエン含量37重量%を有した。この場合に、(S/B)1、(S/B)2及び
(S/B)3のスチ
レン/ブタジエン−比は異なり:1.35;0.90又は1.25であった。
例1の記載と同様に重合し、透明で次の特性を有する試験体が得られた:
降伏応力: 31.4[N/mm2]
引き裂き強度: 28.3[N/mm2]
ホール衝撃強度: 6.6[Kj/m2]
透明性: 87 [%]
例4
例1からのスチレン−スチレン/ブタジエン−スチレン−三成分ブロックコポ
リマー15部をエチルベンゾール5部及びスチレン80部の混合物中に溶かした
。この溶液にt−ドデシルメルカプタン0.1部、t−ブチルペルベンゾエート
0.14部及びパラフィン油1部を添加した。
この溶液から、1時間当たり各々5リットルを、1リットル又は5リットルの
有効充填容積を有する2個の撹拌釜及び有効充填容積各々10リットルの2個の
塔反応器よりなるカスケードに供給し、重合させた。ポリマー溶液を脱気装置に
導き、220〜240℃で、かつ10ミリバールまで減圧された圧力で溶剤及び
残留モノマーを除いた。この重合時に使用された撹拌回転数、温度及び得られた
総変換率を第1表中にまとめた。
得られた透明な生成物を圧縮して試験体にし、これで次の特性が測定された:
降伏応力: 27.8[N/mm2]
引き裂き強度: 25.9[N/mm2]
ホール衝撃強度: 6.5[Kj/m2]
透明性: 86 [%]
これらの例から、特定のブロックゴムを用いて、耐衝撃性のみならず透明性を
も有する成形材料を得ることができることが明らかである。更に、例1と比較実
験との比較から、比較可能なその他の特性において、特定のポリブタジエン含量
は本発明により明らかに低く保持することができる、即ち、本発明による成形材
料は更なる手段(水素化)を講じることなくても、従来提供可能であるよりも良
好な耐候性であることを示している。
【手続補正書】
【提出日】1998年3月6日
【補正内容】
請求の範囲
1.A及びBからなる成形材料に対して
A:ビニル芳香族モノマー少なくとも1種の又はビニル芳香族モノマー少なく
とも1種及び極性コモノマー少なくとも1種の重合された又は共重合された単位
から成る硬質マトリックスA 60〜98重量%及び
B:ビニル芳香族モノマーVとジエンDからアニオン重合により製造された、
ビニル芳香族モノマーとジエンとからランダム又は擬ランダムに構成されたブロ
ック(V/D)少なくも1個及びビニル芳香族モノマーから構成されたブロック
V少なくも1個を有し、かつブロックゴムの存在下での硬質マトリックスAの重
合の間に形成されたマトリックス材料の封入物(吸蔵物)(a)10〜80重量
%(軟質相Bに対して)を含有する、ブロックコポリマーから形成されている軟
質相B 2〜40重量%
をベースとする成形材料。
2.ビニル芳香族モノマーV及びジエンDからのブロックコポリマーは水素化さ
れている、請求項1に記載の成形材料。
3.ビニル芳香族化合物として、スチレン、α−メチルスチレン又は4−メチル
スチレンが使用されている、請求項1に記載の成形材料。
4.極性コモノマーとして、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イ
ミド、マレイン酸−N−フェニルイミド、マレイン酸−又はフマル酸−半エステ
ル又は−ジエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シ
クロヘキシル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、
メタクリルアミド、アクリルアミド又はアクリル酸が使用されている、請求項1
に記載の成形材料。
5.請求項3のビニル芳香族化合物と請求項4の極性コモノマーのコポリマーで
ある、請求項1に記載の成形材料。
6.溶液中で又は塊状でのモノマーのラジカル重合又は共重合により請求項1に
記載の成形材料を製造する場合に、モノマーをブロックコポリマーの存在下に重
合させることを特徴とする、請求項1に記載の成形材料の製法。
7.ビニル芳香族化合物として、スチレン及び/又はα−メチルスチレンを使用
する、請求項6に記載の方法。
8.極性コモノマーとして、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル又は無水マ
レイン酸を使用する、請求項6に記載の方法。
9.重合を連続的に塊状で又は溶液中で実施する、請求項6に記載の方法。
10.重合を非連続的に塊状/懸濁法として実施する、請求項6に記載の方法。
11.ポリフェニレンエーテルを含有する、請求項1に記載の成形材料。
12.DIN5036により測定した60%より高い透明性を有する、請求項1
に記載の成形材料。
13.シート、プレート又は成形体の製造のための請求項12に記載の成形材料
の使用。
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(72)発明者 ヘルマン ガウゼポール
ドイツ連邦共和国 D−67112 ムッター
シュタット メダルドゥスリング 74