【発明の詳細な説明】
チオカチオン性脂質,医薬組成物およびその使用方法 発明の分野
本発明は合成のカチオン性親油性化合物に関する。特に、プラスに荷電したス
ルホニウムイオンを有するチオカチオン性脂質、生体分子結合体や複合体の成分
としてのチオカチオン性脂質の使用およびそれらの医薬組成物としての使用に関
する。発明の背景
生体内(in vivo)治療剤のような生体分子を含む製剤は、毒性を発現せず、通
常の生物学的工程によって最初に分解することなく生体系に効果を発揮すること
ができる必要がある。時には毒性を有する化合物や不安定な化合物をより効果あ
るように、複合体配送(delivery)系または化学修飾の使用が必要となる。特に
、高く荷電した、不溶性および/または高分子量の薬剤は、時には担体と結合さ
れまたは配送媒体と混合されないと薬理学的有用性が限定される。
薬剤の効果的な投与と関連する問題は、ある種の薬剤は細胞に取り込まれなけ
ればその生物学的効果を発現できないという事実により複雑化される。例えば、
遺伝子機能の調整剤としてのオリゴヌクレオチドの使用は、細胞成分と細胞内、
時には核内のレベルで相互に作用する能力に負っている。しかし、オリゴヌクレ
オチドは他のポリアニオン性物質と同様に、水溶液中で配送されるとき、貧弱な
細胞取込みしか示さない。
オリゴヌクレオチドの細胞内取込みを高めるために多くのアプローチが提案さ
れている。そのいくつかは、ウイルスベクター(Cepko 等,Cell 37:1053-1062
(1984))、細胞レセプターリガンドとの共有結合(Myers 等,ヨーロッパ特許第
273,085 号(1988);Wu 等,J.Biol.Chem.,263:14621-14624(1988);Vestweber
等,Nature 338: 170-172(1989))の使用のような生物学的アプローチを含んで
いる。他に細胞へのDNAの直接的なマイクロインジェクション(Capecchi 等
,Cell 22:479-488(1980))や細胞エレクトロポレーション(Potter 等,Proc.
Nat.Acad.Sci.81:7161-7165(1984))のような物理学的アプローチを含む方
法もある。さらには親油性部分の付加(Shea等,Nucleic Acid Research 18(13)
:3777-3787(1990);MacKellar 等,Nucleic Acid Research 20(13): 3411-3417(
1992))やポリペプチド(Stevenson 等,J.Gen.Virol.,70:2673-2682(1989))
のような化学的アプローチを主に含む方法もある。
リポソームのような配送媒体をオリゴヌクレオチドの細胞内配送に使用するこ
とも開示されている。(Felgner 等,USP5,264,618(1993);Eppstein等,U
SP4,897,355(1993);およびWang 等,Pro.Nat.Acad.Sci.84: 7851-7855(
1987))。リポソーム製剤を使用する利点はこれらの物質の天然に発生した細胞
膜成分に似せる能力である。これは細胞膜とエンドソーム膜の融合を促進し、結
果的にリポソーム内容物を細胞質内に配送する。このような膜融合がなければ、
細胞外物質はエンドサイトーシスによって取り込まれ、細胞質中に開放される前
にファゴソームの中で分解するかもしれない。
生体分子の細胞内配送に最も有用なリポソームはしばしば各種の親油性置換基
の混合物を含む複合製剤である。これらの複合混合物はpH感受性、温度感受性
およびサイズのようなリポソームの物理的特性を最適化することを可能とする。
最近のある進歩は、ジオレイルホスファチジル−エタノールアミン(“DOPE
”)のようなあるpH感受性の両親媒性化合物は酸性pH下で不安定になるリポ
ソームを処方するのに使用できることが認められたことである。これは分解性の
酸性pHおよびエンドソームの酵素含量に晒されたとき、リポソームとエンドソ
ーム膜との融合を促進し、結果的にリソソームの内容物を細胞質内に開放する(R
opert等,Biochem.Biophys.Res.Comm.183(2):879-895(1992);および Ju
liano等,Antisense Research and Development 2:165-176(1992)を参照)。リ
ポソーム中のステロール含有もよく知られている。一般にリポソーム製剤中のス
テロールの存在はin vitro、in vivo 両方において安定性が高まる。コレステロ
ールやビタミンD3のよう有機酸誘導体を含む生体分子の配送のためのリポソー
ム製剤はそれらの誘導体化されていない水不溶性の等価物よりも処方するのがよ
り容易であることが報告されている(Janoff 等、USP4,721,612 および4,891
,208)。しかし、ある極性の脂質を含む複合リポソーム製剤においては、そのよ
うな水溶性酸ステロール誘導体の包含はリポソームを不安定にし、効力を減
ずる。
カチオン性脂質(すなわち、プラスに荷電したアンモニウムやスルホニウムイ
オンを含むヘッドグループを有するグリセロリピドの誘導体)は、オリゴヌクレ
オチドのようなマイナスに荷電した生体分子の細胞内配送のためのリポソーム製
剤に特に有用である。それらの有用性は、それらのプラスに荷電したヘッドグル
ープとマイナスに荷電した細胞表面との相互反応能力に由来するものであろう。
このカチオン性脂質、N−〔1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル〕−N
,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(“DOTMA”)はFelgner 等
によって開示されている(Proc.Nat.Acad.Sci.84: 7413-7417(1987);US
P4,897,355 も参照)。ここで、アンモニウム基を有するカチオン性脂質はリポ
ソーム製剤中でポリヌクレオチドによる細胞のトランスフェクションを容易にす
るために用いられる。これらの製剤において、DOTMAは自発的にDNAと反
応して細胞表面のマイナスに荷電した脂質と融合することができるイオン性脂質
−DNA複合体を形成し、最終的に細胞によるDNAの取込みをもたらすことが
示された。
そのような応用のためのいくつかの他のアンモニウムイオンを含むカチオン性
脂質製剤が報告されている。これらの製剤には、DOTMA類似体、1,2−ビ
ス(オレオイルオキシ)−3−トリメチルアンモニオ)プロパン(“DOTAP
”)(Stamatatos 等,Biochemistry,27:3917-3925(1988);スペルミンの親油
性誘導体(Behr 等,Proc.Nat.Acad.Sci.,86: 6982-6986(1989));および
セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(Pinnaduwage 等,Biochim.Biophys.A
cta,985:33-37(1989))(以下も参照、Leventis等,Biochim.Biophys.Acta,1023
:124-132(1990);Zhou 等,Biochim.Biophys.Acta,1065: 8-14(1991);Farhoo
d等,Biochim.Biophys.Acta,1111: 239-246(1992);およびGao等,Biochim.B
iophys.Res.Commun.,179:280-285(1991))がある。いくつかの商業的に使用
できるカチオン性脂質には、DOTMA(Gibco BRL,Bethesda,maryland)、D
OTAP(Boehringer Mannheim,Germany)、および1,2−ジアシル−3−ト
リメチルアンモニウムプロパン(“TAP”)(Avanti Polar Lipids,Birmingham,
Alabama)がある。しかし、これらのアンモニウムイオン含有脂質の多くは細胞毒
性であることが報告されている。
スルホニウムイオンはアンモニウムイオンとは全く異なる物理学的特性を有し
ている。事実、アンモニウムイオン含有化合物は、窒素原子が高い電気陰性度を
有し、極性化および酸化しにくく、原子価電子が核に強く所有されているため、
強塩基として分類される。この特性はアンモニウムイオンを含む脂質製剤と関連
した毒性のいくつかと関係があるかもしれない。これに対して、スルホニウムイ
オンを含む化合物は、イオウ原子が低い電気陰性度を有し、容易に極性化および
酸化し、原子価電子が核によってゆるやかに所有されているため、弱塩基として
分類される。スルホニウムイオンを含む(すなわち“チオカチオン性”)脂質の
示すこの荷電密度の少なさは、マイナスに荷電した細胞膜との反応性を高め、な
らびに毒性を低下させることができる。
トランスフェクションを高める脂質の有用性と関連する一つの重要な特徴はそ
れらのヘッドグループの大きさであることも示唆されている。「相対的に小さな
極性のヘッドグループ」を有するカチオン性脂質を含む製剤は最も有用であるこ
とが予測されている(Felgner等,J.Biol.Chem.269(4):2550-2561(1994))
。加えて、Morris-Natschke 等は(J.Med.Chem.36: 2018-2025(1993))抗腫
瘍剤としてスルホニウム誘導体を含むホスホコリンエーテル脂質の使用を開示し
、大きなヘッドグループの置換基の存在は効果を減少させることを報告している
。 スルホニウムイオンの物理化学的特性の故に、より大きなヘッドグループを
有するチオカチオン性脂質は好適でありうる。特に、脂質ヘッドグループが隣接
する飽和炭素原子に取り囲まれたイオウ原子からなるとき、スルホニウムイオン
は隣接する炭素原子へ電荷の拡散を示し、これが細胞膜と脂質の反応を容易にし
、ならびに毒性を低下させる。
前述のアンモニウムおよびスルホニウムイオンを含有する脂質が多くの治療用
途において有用であることが示されているにもかかわらず、それらの複合リポソ
ーム製剤の形での取り込みおよび使用は未だ最適化されていない。特に、カチオ
ン性脂質含有製剤にビタミンDを取り込ませることにより効果を高めることは探
究されていない。
そこで、本発明の目的はそれらのアンモニウムイオン含有相対物より薬剤とし
て低毒性のチオカチオン性脂質を提供することにある。
前述の親油性化合物よりも広範囲に生体分子の細胞内配送を高めるチオカチオ
ン性脂質を含有する薬剤を提供することも本発明の目的の一つである。
顕著な効果を示すカチオン性脂質を含有するリポソーム製剤を提供することも
本発明のさらなる目的である。発明の要約
本発明は新規なスルホニウムイオン含有カチオン性脂質(“チオカチオン性脂
質”)および生体分子の細胞内配送用薬剤としてのそれらの使用に関する。これ
らの新規化合物はスルホニウムイオンのプラスの荷電を拡散させるのに有効に働
く少なくとも3個の隣接炭素原予によって囲まれたスルホニウムイオンを含むヘ
ッドグループを有するグリセロリピドである。
特に、本発明は下記一般式のチオカチオン性脂質およびそれらの光学異性体お
よび/または塩類に関する。
ここで、A1およびA2は同一または異なり、−O−CO−、−O−、−S−C
O−または−S−;
A3は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−S−、−S−CO−、−CO
−S−、−O−CS−、−CS−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−C
S−NH−、−NH−CS−、−NH−CO−O−、−NH−CO−NH−、−
O−CO−NH−または不在;
R1およびR2は同一または異なり、水素原子またはC1からC23の飽和もしく
は一部不飽和のアルキルもしくはアラルキル、但しR1およびR2の少なくとも一
方は水素原子でない;
R3はC1からC12のアルキル、アラルキル、アルカリール、ヘテロサイクリル
もしくはヘテロアリール;または
R3はアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドもしくはペンタ
ペプチド;または
R3は
−[(CH2)p−NR4]q−R4、
−(CH2)p−NR4 3 +、
ここで、pは1〜5、qは0〜4、R4は水素原子もしくはC1〜C4のアルキル
;および
m,nおよびoは0〜8、但しm≧1およびm+n+o≧3
これらのカチオン性脂質は生体分子単独または他の脂質置換体と組み合わせて
複合体の形で薬剤に用いることができる。またそれらは生体分子と共有結合的に
結合させることができ、同様な薬剤として用いることができる。
本発明による薬剤はこれらの複合体または結合体(conjugates)と薬学的に許
容しうる担体からなる。薬学的に許容しうる担体の例は水溶液および複合体配送
系を含む。好適には薬学的に許容しうる担体はリポソームである。
本発明の重要な観点は、生体分子の細胞内配送に用いるある種のカチオン性脂
質含有リポソーム製剤が高い効力を示すことの発見である。このようなリポソー
ムは一般にアンモニウムまたはスルホニウムイオンを含有する脂質、ビタミンD
、pH感受性の両親媒性化合物および生体分子からなる。
本発明の他の特徴および利点は下記詳細な説明およびクレームから明らかであ
る。図面の簡単な説明
図1はDOMCATOPおよび抗−HIVアンチセンス(antisense)オリゴヌ
クレオチドを含有するリポソーム製剤のウイルス抑制を示す。
図2はDODMECAPおよび抗−HIVアンチセンスオリゴヌクレオチドを
含有するリポソーム製剤のウイルス抑制を示す。
図3はコレステロールまたはビタミンD3のいずれかと抗−HIVアンチセン
スオリゴヌクレオチドを含有するリポソーム製剤のウイルス抑制を示す。
図4はDODMEHAPまたはDOMHYTOPのいずれかと抗−HIVアン
チセンスオリゴヌクレオチドを含有するリポソーム製剤の細胞の代謝活性に及ぼ
す影響を示す。好適形態の詳細な説明
本発明は脂質ヘッドグループにスルホニウムイオンを有する新しい部類の合成
チオカチオン性脂質を提供する。これらのチオカチオン性脂質は共有結合体(co
njugates)の構成成分および/または薬剤の成分として作用することによって生
体分子の細胞内配送を高めるのに有用である。本発明の主題をさらに明らかに説
明するために、ここに用いられた用語は他に示されない限り、下記のように定義
される。
アルカリール:“アルカリール”は、例えばトリルまたはt−ブチルフェニル
おように、少なくとも1個のアルキル置換基を有するアリール基を意味する。
アルケニル:“アルケニル”は二重結合によって互いに結合した少なくとも2
個の炭素原子を有するアルキル基または部分を意味する。
アルキル:“アルキル”は直鎖または分岐鎖の炭化水素基または部分を意味す
る。単独で用いられるとき、アルキルの用語は飽和炭化水素基を表す。
アルキニル:“アルキニル”は三重結合によって結合した少なくとも2個の炭
素原子を有するアルキル基または部分を意味する。
両親媒性の:“両親媒性の(amphiphilic)”は、有機化合物に関して用いられ
るとき、該化合物が疎水性(非極性)部分と親水性(極性)部分の両方からなっ
ていることを意味する。両親媒性化合物の例にはナトリウムオレート;ホスファ
チジルコリン、およびジオレイルホスファチジルコリン(“DOPC”);およ
びジオレイルホスファチジルエタノールアミン(“DOPE”)のようなそれら
の誘導体を含む。
アンチセンスオリゴヌクレオチド:“アンチセンスオリゴヌクレオチド”は標
的“センス(sense)”核酸に相補性であり、少なくとも部分的には配列特異的機
構によって機能し、標的核酸の機能を調整するオリゴヌクレオチドを意味する。
アラルキル:“アラルキル”は、例えばベンジル、フェネチルまたはベンズヒ
ドリルのように、少なくとも1個のアリール環部分が結合したアルキル基を意味
する。
アリール:“アリール”は、例えばフェニルやナフチルのような、芳香族炭化
水素基または部分を意味する。
生体分子:“生体分子”は望ましい生物学的活性または機能、すなわち in vi
voで“生物学的効果”を有する有機化合物を意味する。例えば、治療剤からなる
生体分子は遺伝子機能のような細胞の機能を変化させることができる。一方、M
RIやCT剤のような診断剤からなる生体分子は組織および/または器官の診断
像を高める生物学的機能を有する。
相補的:“相補的”は、核酸に関して用いられるとき、ワトソン−クリック水
素結合を介して他の反対の極性の核酸のヌクレオチド塩基と対合する配列を有す
る一極の核酸を意味する。すなわち、アデニン(“A”)はチミン(“T”)ま
たはウラシル(“U”)と対合し、グアニン(“G”)はシトシン(“C”)と
対合する。例えば、5′から3′方向に配列GCAUを有する核酸は3′から5
′方向に配列CGTAを有する核酸と“相補的”である。ここで相補的の用語の
使用は実質的に相補的である核酸を含むように意図される。相補的核酸は、一方
をプラス(“(+)”)または“センス”鎖および他方をマイナス(“(−)”
)または“アンチセンス”鎖として表すこともできる。
複合体:“複合体(complex)”は二以上の化合物の非共有の物理的、通常イオ
ン性の会合を意味する。複合体の例は、例えば、カチオン性脂質とイオン的に会
合したマイナスに荷電したオリゴヌクレオチドを含む。
DODMECAP:“DODMECAP”は1,2−ジヘキサデシルオキシ−
3−(N−(5−ヒドロキシペンチル)−N,N−ジメチルアンモニオ)プロパ
ンおよびそれらの異性体および/または塩を意味する。
DODMEHAP:“DODMEHAP”は1,2−ジヘキサデシルオキシ−
3−(N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N,N−ジメチルアンモニオ)プロパ
ンおよびそれらの異性体および/または塩を意味する。
DOMCATOP:“DOMCATOP”はS−((2,3−ジヘキサデシル
オキシ)プロピル)−S−(5−カルボキシペンチル)メチルスルホニウムおよ
びそれらの異性体および/または塩を意味する。
DOMHYTOP:“DOMHYTOP”はS−((2,3−ジヘキサデシル
オキシ)プロピル)−S−(6−ヒドロキシヘキシル)メチルスルホニウムおよ
びそれらの異性体および/または塩を意味する。
DOPC:“DOPC”はジオレイルホスファチジルコリンを意味する。
DOPE:“DOPE”はジオレイルホスファチジルエタノールアミンを意味
する。
グリセロリピド:“グリセロリピド”はグリセリン骨格を有する親油性の分子
を意味し、少なくとも1個の疎水性尾部を有し、親水性の極性のヘッドグループ
を有していてもよい。
ヘッドグループ:“ヘッドグループ”はグリセリン骨格に末端の炭素原子の1
つで結合するグリセロリピドの部分を意味する。ヘッドグループは中性でも極性
でもよい。
ヘテロアリール:“ヘテロアリール”は、例えばピロロまたはピリジルのよう
な芳香環の一部として少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族基を意味する
。
ヘテロサイクリル:例えば、ピペリジニル、ピロリジニルまたはモルホリノの
ような、環構造の部分として少なくとも1個のヘテロ原子を有する環状基。
ハイブリダイズ:“ハイブリダイズ”は塩基対の相互反応を介して相補的核酸
間でデュープレックスを形成することを意味する。
リポソーム:“リポソーム”は球状の二重層に配列された両親媒性の脂質から
なる小胞を意味する。
修飾された:“修飾された(modefied)”は核酸に関して用いられるとき、天
然構造の任意のものが変化を受けた核酸を意味する。これらはホスホジエステル
結合、糖(RNAの場合のリボースまたはDNAの場合のデオキシリボース)お
よび/またはプリンまたはピリミジン塩基に対する修飾を含む。修飾されたホス
ホジエステル結合はホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネ
ートおよびホスホロジチオエートを含む。
核酸配列:“核酸配列”または“配列”はヌクレオチドの特定の配列を有する
核酸、および特定の核酸に存在するヌクレオチドの配列または順序の両方を意味
する。この用語が用いられている文脈からこれらの2つの意味のいずれが適用さ
れるかは明らかであろう。
OBEHYTOP:“OBEHYTOP”はS−((2−ベンジルオキシ−3
−オクタデシルオキシ)プロピル)−S−(6−ヒドロキシヘキシル)メチルス
ルホニウムおよびそれらの異性体および/または塩を意味する。
OBECATOP:“OBECATOP”はS−((2−ベンジルオキシ−3
−オクタデシルオキシ)プロピル)−S−(5−カルボキシペンチル)メチルス
ルホニウムを意味する。
OA:“OA”はオレイン酸を意味する。
オリゴヌクレオチド:“オリゴヌクレオチド”は核酸の短いセグメントを意味
する。
薬理学的に適合性の担体:“薬理学的に適合性の担体”は、生体分子をそれに
添加して、毒性または薬理学的に逆効果を受容できないレベルで示すことなく、
患者にその投与を容易にすることのできる配合物を意味する。
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド:“ホスホロチオエートオリゴヌクレ
オチド”は天然に生じたホスホジエステル結合の代わりに全ホスホロチオエート
結合を有するオリゴヌクレオチドを意味する。
ポリアニオン:“ポリアニオン”は2以上のマイナス荷電を有する分子を意味
する。
配列:“配列”は核酸中のヌクレオチド塩基(A,G,C,TまたはU)のパ
ターンまたは順序を意味する。
治療的有効量:“治療的有効量”は所望の治療上の効果を得るに十分な生物学
的効果を示すに十分な量を意味する。
本発明のチオカチオン性脂質の有用性は、脂質ヘッドグループに十分に分布さ
れたプラス電荷の存在によって高められ、これがマイナスに荷電した細胞膜と効
果的に相互作用することを可能とする。これらのチオカチオン性脂質の好適な用
途はマイナスに荷電した生体分子の細胞内配送である。チオカチオン性脂質は、
また生体分子のマイナス電荷をバランスして、生ずる製剤を中性にするように機
能する。特に好適な用途は、例えばホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのよ
うなオリゴヌクレオチドの細胞内配送である。それらはヨードを含有するCT剤
のようなある種の診断イメージング剤の細胞内配送においても有用である。
本発明のチオカチオン性脂質は天然発生の細胞膜成分を真似るよう設計される
。このことにより、チオカチオン性脂質および関連生体分子が細胞膜と融合し、
それが細胞内配送を促進することが可能となる。細胞膜と十分に融合することが
できないと(時には物質の“融合(fusogenic)”特性として表される)、外来物は
食食されリソソームの酵素によって速やかに分解される。
I.チオカチオン性グリセロリピドの構造
本発明の新規なチオカチオン性脂質は構造式Iの一般式で表すことができるも
のおよびそれらの光学異性体および/または塩である。
構造式Iによって与えられるチオカチオン性脂質は3つの部分;骨格、1以上
の尾部およびヘッドグループを有するものとして説明できる。上に示すように骨
格は3つの炭素のグリセリン部分からなり;尾部はR1およびR2によって与えら
れ、A1およびA2を介して骨格に結合しており;ヘッドグループは
[で与えられる。
本発明のカチオン性グリセロリピドは、プラスに荷電したスルホニウムイオン
S+を含んでいる。スルホニウムイオンはプラスに荷電したアンモニウムイオン
に比較して低い電荷密度を提供する利点を有する。ヘッドグループの周囲の炭素
と結合してプラス電荷は拡散され、マイナスに荷電した細胞表面と相互反応が高
められ、ならびに効率が改良される。ここでm、nおよびoはそれぞれ0〜8で
ある。ただし、m≧1、m+n+o≧3である。
A1およびA2はグリセリン骨格と親油性尾部間の結合を提供する。A1および
A2は同一または異なり、−O−CO−、−O−、−S−CO−または−S−で
あることができる。特に好適な形態は、A1およびA2の双方が−O−で、R1お
よびR2が−CH2−部分を介してA1およびA2と結合している長鎖(C16〜C
18)アルキル部分である構成である。これらの長鎖アルキルエーテル脂質はエ
ステルベースの脂質よりも代謝的により安定であり、細胞中に核酸を運搬するの
に優れていることが発見された。このタイプの特に好適な化合物は、DOMHY
TOP、またはそのカルボン酸誘導体、DOMCATOPである。実施例1パー
トAおよびBをそれぞれ参照のこと。
本発明の他の面は好適なリポソーム構造の形成を選択的に行うためにR2部分
の炭化水素鎖の長さを変化させる能力である。例えば、A2が−O−でR2がHの
とき、形成されるグリセロリピド(すなわち“リソリピド”)は単一の尾部をも
つ。より長鎖のR2部分を有する脂質と組み合わせたリソリピドの使用は1個以
上の二重層を有するリポソームの形成に好適でありうる。リソリピド単独の使用
はミセルの形成に好適である。このような混合脂質製剤は成分の割合を変化させ
ることによりサイズおよび細胞の取込みを最適化することができる。
本発明による他の好適な部類のチオカチオン性脂質は、A2が−O−で、R2が
アラルキルCH2C6H5である。これらのベンジル誘導体は芳香族部分の存在に
より疎水性が高められ、したがって好適な製剤特性を示すことができる。このよ
うに変化したものの中で特に好適な化合物はOBEHYTOP、または等価のカ
ルボン酸誘導体、OBECATOPである。それぞれ実施例1パートCおよびD
参照。
融合特性および製剤特性を最適化するために種々の程度の不飽和度を有するR1
およびR2部分を取り込ませることも可能である。
本発明によって提供される他の新規なチオカチオン性脂質はR3の位置の分子
に取り込まれた追加のカチオン基を有する分子である。このタイプのカチオン性
脂質の好適な形態においては、付加的なカチオン性部分は、例えばリシン、アル
ギニン、ヒスチジンまたはトリプトファンのようなアミノ酸の付加により誘導
される。
R3は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−S−、−S−CO−、−CO
−S−、−O−CS−、−CS−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−C
S−NH−、−NH−CS−、−NH−CO−O−、−NH−CO−NH−、−
O−CO−NH−、または不在であり得るA3を介してチオカチオン性脂質と結
合している。リンカーの選択または必要性は当業者によって容易に決定される。
本発明のチオカチオン性脂質は公知の方法を用いて容易に合成することができ
る。典型的には、グリセリンから誘導されるようなリピドアルコールを四臭化炭
素とトリフェニルホスフィンの混合物のようなブロム化剤を用いてブロム誘導体
に変換する。このようにして形成されたブロム誘導体をナトリウムチオメトキシ
ドのようなアルキルメルカプタンのナトリウム塩と反応させてアルキルチオグリ
セリン中間体を得る。この中間体を、必要に応じ適当な溶媒を用いてハロアルキ
ル化合物の存在下に還流してアルキル化して、カチオン性脂質をそのハロゲン塩
として得る。
チオカチオン性脂質−生体分子結合体(conjugates)
本発明のチオカチオン性脂質は生体分子と共有結合的に結合したチオカチオン
性脂質からなる組成物の形であってもよい。
生体分子は所望の生物学的効果を示し、この生物学的効果をカチオン性脂質と
結合した後も保持しているかぎり如何なる有機化合物でもよい。生体分子の例と
しては、限定されるものではないが、蛋白質、ホルモン、遺伝子、ポリペプチド
、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、薬物(drugs)、抗生物質、抗体、診断イ
メージング剤、およびそれらの誘導体および類似体を含む。チオカチオン性脂質
と生体分子の間の共有結合は公知の方法を用いてなし遂げることができる。例え
ば、PCT WO94/05624参照。
生体分子は好ましくはオリゴヌクレオチドであり、さらに好ましくはヌクレア
ーゼによる分解に対する抵抗の目的でホスホロチオエートオリゴヌクレオチドで
ある。加えて、オリゴヌクレオチドはRNAでもDNAでもよいが、RNアーゼ
(RNases)に対する抵抗性のためDNAがより好ましい。薬剤処方に有用なオリ
ゴヌクレオチドは、典型的には、目的とするかまたは目的とするヌクレオチド配
列とハイブリダイズするのに十分相補的であるかのいずれかのヌクレオチド配列
を有している。該オリゴヌクレオチドは典型的にレセプターホスト細胞において
生化学的機能を発揮することができ、および/または細胞組織の運行を変化させ
ることができる。このような作用の例はトランスフェクションまたはアンチセン
ス剤のようなものである。
オリゴヌクレオチドの適当な長さはそのオリゴヌクレオチドが設計された特有
の用途によるが、ある一般化は可能である。オリゴヌクレオチドがアンチセンス
治療剤として用いられる場合、好ましくは約12と50の間であり、さらに好ま
しくは約15と30ヌクレオチドの間の長さである。
本発明で用いることのできるオリゴヌクレオチドは、限定されるものではない
が、天然に生じた核酸、およびホスホロチオエート、メチルホスホネートまたは
ホスホロジチオエートヌクレオチド間結合を有するような修飾された核酸を含む
。さらに、生体分子は、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジンおよびウ
リジンまたは、5−フルオロウリジン、5−アルキルウリジン、デアザグアノシ
ン、アザグアノシン、アザチミジンのようなそれらの類似体のような天然に生じ
たヌクレオシドであることができる。本発明のチオカチオン性脂質に対するホス
ホロチオエートオリゴヌクレオチドの結合部位は5′または3′末端のいずれか
、ヌクレオチド間結合、ヌクレオシド塩基または骨格の糖部分を介することがで
きる。そのような結合は如何なる公知の方法を用いてもよい。例えば、Goodechi
ld 等,Bioconjugate Chemistry 1(3):165-187(1990)。カチオン性脂質はA3
および/またはR3を介して3′−OHまたは5′−OHに結合することができ
る。または、カチオン性脂質はA3および/またはR3を介して、ヌクレオチド間
のホスホロチオエート結合におけるOまたはS原子を介して如何なるヌクレオチ
ド間結合で結合することができる。さらに、カチオン性脂質はA3および/また
はR3を介して、環内のCまたはN、または環外のNまたはOで塩基と結合する
ことができる。A3および/またはR3を介して、糖部分の1′、2′または4′
位に結合することもできる。
II.カチオン性脂質薬剤
本明細書で説明されるチオカチオン性脂質を用いる薬剤はチオカチオン性脂質
−生体分子結合体(conjugates)からなるか、またはカチオン性脂質と生体分子
を、脂質と生体分子間のイオン性および/または疎水性の相互反応を介して安定
な会合が形成されるような条件下で互いに混合することによって形成されるカチ
オン性脂質−生体分子複合体(complexes)からなることができる。いずれの場合
においても、カチオン性脂質−生体分子結合体/複合体は薬学的に許容できる担
体中で調製され投与される。薬学的に許容できる担体の例としては、水、食塩水
、緩衝液または炭水化物溶液のような水溶液、およびリポソーム、ミクロスフェ
ア、またはエマルジョンのような複合体配送系を含む。
III.リポソーム薬剤
本発明のチオカチオン性脂質含有生体分子薬剤は、好適にはリポソームからな
る。前述のいずれの生体分子もリポソームの中にカプセル化されることができる
。さらに、多くの生体分子含有リポソーム薬剤が文献に記述され、本明細書のリ
ポソーム薬剤を用いるカプセル化に適当なその他追加の生体分子の例として役立
つ。
脂質集合体はカプセル化された水性の塊(aqueous volume)を含む脂質二重層
を形成した完全に閉じた構造の形態(すなわち、単ラメラリポソーム)をとるこ
とができ、または水性の塊によって分離された1より多い同心の脂質二重層(す
なわち、多層ラメラリポソーム)を含むことができる。各脂質二重層は2つの脂
質の単層からなり、その各々は疎水性の(非極性)“尾”領域と親水性の(極性
)“ヘッド”領域を有する。二重層においては、脂質単層の疎水性の“尾”は二
重層の内側に向き、一方親水性の“ヘッド”は二重層の外側に向く。生体分子が
リポソームに捕らえられるのは、生体分子が脂質−生体分子結合体の形でなけれ
ば、水相の内部である。脂質−生体分子の形の場合は生体分子は二重層の内部に
埋め込まれることができる。
リポソームは当業界で知られた種々の方法で作ることができる。(例えば、Ba
ngham 等,J.Mol.Biol.,13:238-252(1965)。これらの方法は一般に、まず脂
質を有機溶媒中で攪拌して溶解させ、続いて蒸発させることを含む。次に、適当
量の水相を脂質相と混合し、リポソームが形成されるに十分な時間インキュベー
トさせる。該水相は一般に緩衝液または糖のような他の溶質とともに懸濁された
生体分子からなる。
カプセル化される生体分子に加えて、本発明のリポソームは本明細書記載のチ
オカチオン性脂質のみ、本明細書記載のチオカチオン性脂質の混合物、またはア
ニオン性脂質(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチシッド酸(pho
sphaticid acid)、または類似のアニオン性リン脂質類似体)のような他の公知
の脂質と結合した本発明のチオカチオン性脂質、または天然の脂質(例えば、ホ
スファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミン)を含む。本発明の
リポソーム製剤はさらに、リソホスファチジルコリン、リソホスファチジルエタ
ノールアミン、またはカチオン性脂質類のリソ形のようなリソ脂質を含むことが
できる。
リポソームは、またステロール、糖脂質、抗体や蛋白質のような組織または器
官標的物質、脂肪酸、または他の天然または合成の親油性若しくは両親媒性の化
合物の任意の置換基を含んでいてもよい。
リポソームに含有させるのに適当なステロールは、限定されるものではないが
、コレステロールおよびビタミンDであり、これらはリポソーム製剤に安定剤と
して含有される。
チオカチオン性脂質の全脂質に対するモル割合は、全体としてプラス電荷のリ
ポソーム製剤が形成されるのに十分である必要がある。この量は、カプセル化さ
れた生体分子の電荷と量、ならびにリポソームの他の成分の電荷と量による。一
般的にリポソームはカチオン脂質と全脂質のモル比が約9:1から1:9であり
、好ましくは約1:2から2:1である。全脂質の生体分子に対するモル比は約
200:1−100:1であり、好ましくは約160:1である。
IV.高い効果のリポソーム製剤
本発明の一つの重要な面は、カチオン性脂質−生体分子リポソーム製剤の効果
はビタミンDおよび少なくとも一つのpH感受性の両親媒性脂質の存在によって
高められることの発見である。アンモニウムイオンおよびスルホニウムイオン含
有カチオン性脂質の双方とも生体分子の細胞内配送のためのリポソーム薬剤で有
用である。
カチオン性脂質は本明細書に記載されたいずれかのチオカチオン性脂質または
他の公知のアンモニウムまたはスルホニウムイオン含有カチオン性脂質であるこ
とができる。上述のように、カチオン性脂質は単独でも、他のカチオン性、中性
またはアニオン性脂質と組み合わせても使用することができる。
ビタミンDはビタミンD3(“コレカルシフェロール”とも称される)、また
はビタミンDの全体としての効果を高める効果を有意に減少させることのないビ
タミンD類似体または誘導体であることができ、これらを本明細書において集合
的に“ビタミンD”として参照する。好適には、誘導されていないビタミンD3
が用いられる。
いくつかの両親媒体(amphiphiles)はpHの作用でそれらの荷電を変化させる
作用を有し、それ故、“pH感受性”である。例えば、オレイン酸および/また
はDOPEのようなpH感受性の両親媒体を含有するリポソーム小胞はpHの作
用でその電荷を変化させることができる。一方、DOPCを含有する小胞はpH
依存的にそれらの電荷を変化させることはない。両親媒体がpHの作用としてそ
の電荷を変化する能力はリポソームの他の構成成分による。特に、アルキル鎖の
飽和の程度は効果を有する。さらに、DOPEのマイナスに荷電したホスフェイ
トのような両親媒体のマイナス電荷と、カチオン性脂質のプラスに荷電したヘッ
ドグループとの間のイオン対の相互作用がある。これはpHの作用として電荷を
変化させやすいDOPEにプラスに荷電したアミノ基を残す。(Felgner 等,J.
Bio.Chem.269:1-12(1994)参照)。
両親媒体のpH感受性は細胞内におけるリポソーム小胞のエンドソーム膜との
融合性(fusogenicity)を高めるのに役立つ(Ropert 等,Biochem.Biophys.Res.
Commun.183(2):879-85(1992))。適当なpH感受性の両親媒性脂質はDOPE
およびオレイン酸を含むが、これに限定されない。好適には、pH感受性両親媒
体はオレイン酸であるが、リポソームに組み入れられた後に生理的pH(約6か
ら7.5)またはその近くで、pHの作用として荷電を変化しやすい如何なる親
油性の両親媒体も使用するのに適している。
オリゴヌクレオチドの細胞内配送のための特に好適なリポソーム製剤は、モル
比が10:5:2のカチオン性脂質:オレイン酸:ビタミンD3からなる。異な
る成分および/または生体分子からなるリポソーム製剤の効果を最大限に発揮さ
せるために他のモル比を設計することができる。そのようなモル比は公知の手法
により容易に決定することができる。例えば、Liposome Technologies,CRC Pres
s,発行者 Gregory Gregoriadis,ed.(1984)参照。
V.薬剤の配送
本発明のチオカチオン性脂質は、所望の治療効果を得るために種々の経路によ
りおよび動物体の種々の部位に生体分子を配送するために薬剤において用いるこ
とができる。これらの薬剤は、前述の薬学的に許容できる担体中のチオカチオン
性脂質−生体分子複合体および/またはチオカチオン性脂質−生体分子結合体か
らなることができる。
薬剤の局所または全身配送は、体腔への薬剤の挿入、エアーゾルの吸入または
通気、または筋肉内、静脈内、皮内、腹膜、皮下および局所投与からなる非経口
導入を含む投与により行うことができる。
経口的に投与される薬剤は固体、液体、エマルジョン、懸濁液、またはゲルの
形態であることができ、好ましくは、例えば錠剤またはカプセルのような投与量
単位の形態である。錠剤は、タルク、植物油、ポリオール、ガム、ゼラチン、澱
粉および他の担体のような慣習的に用いられている他の成分と組み合わせて製剤
化することができる。
皮下、筋肉内または静脈内の注射を意図される非経口剤は、液体、または注射
に先立ち液体中に懸濁されるための固体またはエマルジョンのいずれかとして調
製することができる。そのような製剤は無菌であり、静脈内に注入される液体は
等張であるべきである。適当な賦形剤は、例えば水、デキストローズ、食塩水、
グリセリンなどがある。
該製剤はエアーゾルの形で鼻、喉、気管支のような体腔に投与されることもで
きる。
これらの製剤におけるカチオン性脂質および他の混合剤に対する生体分子の割
合は投与型および要求量により変わる。
本発明の製剤の効果的な投与量は、生体分子およびその所望の生物学的活性、
ならびに特定の製剤動力学、組成、物理的特性、所望の治療効果、被験者の重量
による。最も効果的な投与量は公知の方法で容易に決定することができる。
VI.治療用途
上述の生体分子製剤の好適な治療用途はアンチセンスオリゴヌクレオチドをカ
プセル化したリポソームを含む治療剤の細胞内配送分野である。HIV抑制に有
用な特に好適な治療薬剤は、SEQ.ID.NO.1で与えられるホスホロチオ
エートオリゴヌクレオチドの配送媒体としてのチオカチオン性脂質含有リポソー
ムからなる。このオリゴヌクレオチドはHIV REV タンパク質をコードす
るSEQ.ID.NO.2で与えられるmRNA配列と相補的である。(Peters
on等,公開PCT出願番号 WO95/03407参照)。
実験工程
本発明は好適な形態の代表である以下の実施例を通してよりよく理解されるが
、発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。本明細書で用いられた
全ての化合物は、特にことわらないかぎり、ミルウオーキー、WIのアルドリッ
チケミカル社から購入した。
実施例1カチオン性脂質の合成
パートA:Domhytopのブロマイド塩の形の合成
ステップ1.1,2−O−ジヘキサデシル−3−ブロモ−1,2−プロパ ンジオールの合成
磁石の攪拌棒を備えた250mlの丸底フラスコ中で、120mlのトルエン
に1.92g(3.6mmol)のジヘキサデシルグリセリン(シグマケミカル社)
を溶解させた。この溶液に3.54g(10.7mmol)の四臭化炭素および2.
80g(10.7mmol)のトリフェニルホスフィンを添加し、反応混合液を室温
で一夜(18時間)攪拌した。黄色の懸濁液を濾過し、濾液をロータリーエバポ
レイターで濃縮して白色固体を得た。この残渣をトルエンに溶解させ、飽和の塩
化ナトリウムで一回洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ロータリーエ
バポレイターで真空下に濃縮して2.5gの白色粉末として粗生成物を得た。こ
の粗生成物をシリカゲル60(E.メルク社,ドイツ)上でフラッシュカラムク
ロマトグラフィーにより、100mlのヘキサン、ヘキサン中1%酢酸エチル、
ヘキサン中2%酢酸エチル最終はヘキサン中3%酢酸エチルで連続溶出させて精
製した。各分画(8ml)を集め、薄層クロマトグラフィー(“TLC”)でス
クリーンし、純生成物(シリカゲル、ヘキサン中5%酢酸エチル、Rf=0.5
9)を含む分画をプールした。プールされた分画をロータリーエバポレイターで
真空下に濃縮して量論的収量の1,2−ジヘキサデシル−3−ブロモ−1,2−
プロパンジオールを白色粉末として得た。
ステップ2.1,2−O−ジヘキサデシル−3−メチルチオ−1,2−プ ロパンジオールの合成
磁石の攪拌棒を備えた250mlの丸底フラスコ中で、乾燥テトラヒドロフラ
ン100mlに、ラセミ体の1,2−O−ジヘキサデシル−3−ブロモ−1,2
−プロパンジオール(ステップ1より)2.0g(3.3mmol)を溶解させた。
この溶液に2.33g(33.2mmol)のナトリウムチオメトキシド粉末を加え
反応混合物を室温で一夜攪拌した。反応をTLC(シリカゲル、ヘキサン中5%
酢酸エチル)でモニターし、反応液に490mg(7mmol)のナトリウムチオメ
トキシドを追加した。3時間後、混合物を濾過し、濾液を50mlのテトラヒド
ロフランで洗浄した。化合した濾液をロータリーエバポレイターで真空下に濃縮
して黄色の残渣を得た。この残渣を50mlのクロロホルムに溶解させ、有機溶
液を重炭酸ナトリウム濃縮液25mlで2回洗浄した。有機相を無水硫酸マグネ
シウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレイターで真空下に濃縮して淡い黄色の
油性残渣として粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲル60(E.メルク社、ド
イツ)上、ヘキサン中酢酸エチル0から10%の段階的勾配(step gradiennt)
を用いるカラムクロマトグラフィーを用いて、精製した。各分画を集め、TLC
でスクリーンした。純生成物を含む分画をプールし、濃縮して1,2−O−ジヘ
キサデシル−3−メチルチオ−1,2−プロパンジオールを収率90%で得た。
ステップ3.1,2−O−ジヘキサデシル−3−(S−メチル)−(6− ヒドロキシヘキシル)−スルホニウムブロマイドの合成
磁石の攪拌棒と還流冷却器を備えた250mlの丸底フラスコ中で、トルエン
120mlに、ラセミ体の1,2−O−ジヘキサデシル−3−メチルチオ−1,
2−プロパンジオール(ステップ2より)1.0g(1.75mmol)を溶解させ
た。この溶液に3.17g(17.5mmol)の6−ブロモヘキサノールを加え、
この溶液を135℃で3日間加熱した。茶色い溶液を室温に冷却し、ロータリー
エバポレイターで濃縮し、茶色い油性の残渣を得た。この残渣を50mlのクロ
ロホルムに溶解し、30mlの飽和食塩水で2回洗浄した。クロロホルム層を硫
酸マグネシウムで乾燥した。濾過による硫酸マグネシウムの除去に続き、シリカ
床を通して液中の極度に極性の不純物を完全に除去した。次にこの溶液を真空下
に濃縮してワックス状の残渣として粗生成物を得た。粗生成物は、シリカゲル6
0(E.メルク社,ドイツ)を用いるカラムクロマトグラフィーを用いて、最初
に100mlヘキサン、続いて100mlのヘキサン中10%酢酸エチル、最後
的にヘキサン中30%酢酸エチルで連続的に溶出させた。TLCにより決定され
たような生成物を含む分画をプールし、濃縮し、低融点の黄色固体として収率8
8%でDOMHYTOPの塩を得た。
パートB:Domcatopのブロマイド塩の合成
磁石の攪拌棒と還流冷却器を備えた250の丸底フラスコ中で、トルエン12
0mlに、ラセミ体の1,2−O−ジヘキサデシル−3−メチルチオ−1,2−
プロパンジオール(パートA、ステップ1および2のように調製)1.0g(1
.75mmol)を溶解させた。この溶液に3.41g(17.5mmol)の6−ブロ
モヘキサン酸(6-buromohexanoic acid)を添加し、溶液を4日間135℃で加熱
した。茶色の溶液を室温まで冷却し、ロータリーエバポレイターで濃縮し、茶色
い油性の残渣を得た。この残渣を50mlのクロロホルムに溶解し、シリカ床を
通したて溶液中の極度に極性の不純物を除去した。得られた溶液は次に30ml
の飽和食塩水で洗浄した。次にクロロホルム層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥
させた。濾過による硫酸マグネシウムの除去に続き、真空下に濃縮して、黄色油
性残渣として粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲル(E.メルク社、ドイ
ツ)カラムを用いるカラムクロマトグラフィーにより、100mlのヘキサン、
次に10mlのヘキサン中10%酢酸エチル、最後にヘキサン中30%酢酸エチ
ルで連続的に溶出させて精製した。ヘキサン中30%酢酸エチルからの分画はT
LCで決定されたような生成物を含んでおり、この分画をプールし、濃縮して低
融点の黄色固体としてDOMCATOPのブロマイド塩を収率42%で得た。
パートC:Obehytopのブロマイド塩の合成
ステップ1.1−O−オクタデシル−2−O−ベンジル−3−ブロモ−1 ,2−プロパンジオールの合成
磁石の攪拌棒を備えた250mlの丸底フラスコ中で2.00g(4.6mmol
)の1−O−オクタデシル−2−O−ベンジルグリセリン(ベイケム社、スイス
)を120mlのトルエンに溶解させた。この溶液に4.58g(13.8mmol
)の四臭化炭素と3.62g(13.8mmol)のトリフェニルフォスフィンを加
え、反応混合物を室温で4時間攪拌した。黄色の懸濁液を濾過し、濾液をロータ
リーエバポレイターで濃縮して白色固体を得た。この残渣を50mlのクロロホ
ルムに溶解させ、30mlの飽和重炭酸ナトリウムで2回洗浄し、無水硫酸マグ
ネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレイターで真空下に濃縮して白色固体と
して2.5gの粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲル60(E.メルク社
、ドイツ)カラムを用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより、100
mlのヘキサン、ヘキサン中1%酢酸エチル、ヘキサン中2%酢酸エチル、最後
にヘキサン中3%酢酸エチルで連続溶出させることによって精製した。集められ
た分画をTLCでスクリーンし、純生成物(シリカゲル、ヘキサン中5%酢酸エ
チル、Rf=0.56)を含む分画をプールした。プールされた分画をロータリ
ーエバポレイターで真空下に濃縮して白色粉末として1−O−オクタデシル−2
−O−ベンジル−3−ブロモ−1,2−プロパンジオールを量論的収量で得た。
ステップ2.1−O−オクタデシル−2−O−ベンジル−3−メチルチオ 1,2−プロパンジオールの合成
磁石の攪拌棒を備えた250mlの丸底フラスコ中で、ラセミ体の1−O−オ
クタデシル−2−O−ベンジル−3−ブロモ−1,2−プロパンジオール1.9
9g(4.0mmol)を100mlの乾燥テトラヒドロフランに溶解させた。この
溶液に2.8g(40.0mmol)のナトリウムチオメトキシド粉末を添加し、反
応混合物を室温で4.5時間攪拌した。反応をTLC(シリカゲル、ヘキサン中
5%酢酸エチル;Rf=0.51)でモニターした。混合物を濾過し、濾液を5
0mlのテトラヒドロフランで洗浄した。化合した濾液をロータリーエバポレイ
ターで真空下に濃縮して黄色粉末を得た。この残渣を50mlのクロロホルムに
溶解させ、30mlの重炭酸ナトリウム濃縮溶液で2回洗浄した。有機相を無水
硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレイターで真空下に濃縮して淡
い黄色の油性残渣として粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲル60(E.
メルク社、ドイツ)上、ヘキサン中酢酸エチル0から10%の段階的勾配(step
gradiennt)を用いるカラムクロマトグラフィーを用いて、精製した。集められ
た分画はTLCでスクリーンした。純生成物を含む分画を(シリカゲル、ヘキサ
ン中5%酢酸エチルRf=0.51)プールし、濃縮して、1−O−オクタデシ
ル−2−O−ベンジル−3−メチルチオ−1,2−プロパンジオールを収率90
%で得た。
ステップ3.1−O−オクタデシル−2−O−ベンジル−3−(S−メチ ル−S−(6−ヒドロキシヘキシル))−スルホニウムブロマイドの合成
磁石の攪拌棒と還流冷却器を備えた250mlの丸底フラスコ中で、ラセミ体
の1−O−オクタデシル−2−O−ベンジル−3−メチルチオ−1,2−プロパ
ンジオール1.02g(2.2mmol)を120mlのトルエンに溶解させた。こ
の溶液に3.98g(22.0mmol)の6−ブロモヘキサノールを添加し、溶液
を3日間135℃に加熱した。次に茶色の溶液を室温に冷却し、ロータリーエバ
ポレイターで濃縮して茶色の油性残渣を得た。この残渣を50mlのクロロホル
ムに溶解させ、シリカ床を通して極端に極性の不純物を除去した。生じた溶液を
、次に、飽和の重炭酸ナトリウム30mlで2回洗浄し、飽和の塩化ナトリウム
溶液30mlで抽出した。クロロホルム層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ
た。濾過により硫酸マグネシウムを除去後、溶液を真空下に濃縮して黄色の油性
残渣として粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲル60(E.メルク社、ド
イツ)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、100mlのヘキサン、次に
10mlのヘキサン中10%酢酸エチル、最後にヘキサン中30%酢酸エチルで
連続的に溶出させて精製した。TLC(シリカゲル、ヘキサン中30%酢酸エチ
ル、Rf=0.41)で決定されたような生成物を含む分画をプールし、濃縮し
て、低融点の黄色固体として収率85%でOBEHYTOPのブロマイド塩を得
た。
パートD:実施例4:Obecatopのブロマイド塩の合成
磁石の攪拌棒と還流冷却器を備えた250mlの丸底フラスコ中で、ラセミ体
の1−O−オクタデシル−2−O−ベンジル−3−メチルチオ−1,2−プロパ
ンジオール(パートC、ステップ1および2のように調製)1.0g(1.75
mmol)を120mlのトルエンに溶解させた。この溶液に4.30g(22.0
mmol)の6−ブロモヘキサン酸を添加し、溶液を135℃で3日間加熱した。次
に茶色の溶液を室温まで冷却し、ロータリーエバポレイターで濃縮し茶色の油性
残渣を得た。この残渣を50mlのクロロホルムに溶解させ、シリカ床を通して
極端に極性の不純物を除去した。生じた溶液を30mlの飽和の塩化ナトリウム
溶液で洗浄した。次にクロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫
酸マグネシウムの濾過による除去後、溶液を真空下に濃縮して黄色の油性残渣と
して粗生成部物を得た。この粗生成物をシリカゲル60(E.メルク社、ドイツ
)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、100mlのヘキサン、次に10
0mlのヘキサン中10%酢酸エチル、最後にヘキサン中30%酢酸エチルで連
続的に溶出させて精製した。TLC(シリカゲル、ヘキサン中30%酢酸エチル
、Rf=0.36)で決定されたような生成物を含む分画をプールし、濃縮して
、低融点の黄色固体として収率40%でOBECATOPのブロマイド塩を得た
。
パートE:Dodmecapのブロマイド塩の合成
ステップ1.1,2−ジヘキサデシルオキシグリセリンのブロム化
100mlの丸底フラスコ中で1gの1,2−ジヘキサデシルオキシグリセリ
ンを80mlのトルエンに溶解させた。この溶液に1.84gの四臭化炭素と1
.46gのトリフェニルホスフィンを添加した。反応混合物を室温下で24時間
攪拌し、反応の進行を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン中5%酢酸エチル)に
よってモニターした。
生じた黄色固体を濾過し、濾液をロータリーエバポレイターで濃縮し、アセト
ンに溶解させた。この段階を繰り返し、白色固体(収量900mg)の形で生成
物を単離した。
ステップ2.1,2−ジヘキサデシルオキシ−3−ジメチルアミノグリセ リンの形成
100mlの丸底フラスコ中で、900mgの3−ブロモ−1,2−ジヘキサ
デシルオキシグリセリンを30mlのクロロホルムに溶解させた。720mgの
ジメチルアミンを約10倍モル過剰になるように添加し、反応混合物を室温下に
一夜攪拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン中30%酢酸エ
チル)で測定した。
反応混合物を分液ロートに移し、飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄した。有
機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液をロータリーエバポレイタ
ーで濃縮し、630mgの生成物を得た。
ステップ3:Dodemecapのブロマイド塩の形成
100mlの丸底フラスコ中で、ステップ2で得られた1,2−ジヘキサデシ
ルオキシ−3−ジメチルアミノグリセリン270mg、ブロモヘキサン酸0.6
28gおよび炭酸カリウム0.271gを80mlトルエンに溶解させた。反応
混合物を油浴中で120℃に加熱し、連続攪拌しつつ条件を一夜維持した。反応
の進行は薄層クロマトグラフィー(ヘキサン中30%酢酸エチル)を用いてモニ
ターし、20時間で完全であることが示された。
次いで反応混合物をロータリーエバポレイターで濃縮した。白色残渣を30m
lのクロロホルムに溶解させ、30mlの脱イオン水で分液ロートで3回洗浄し
た。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液をロータリーエバポ
レイターで濃縮し、アセトンで沈殿させて白色ワックス状の生成物が得られた(
収量400mg)。
パートF:Dodmehapのブロマイド塩の合成
100mlの丸底フラスコ中で、パートE、ステップ2で得られた630mg
の1,2−ジヘキサデシルオキシ−3−ジメチルアミノグリセリンおよび1.8
3gのブロモヘキサノールを60mlのトルエンに溶解させた。反応混合物を連
続攪拌しながら油浴で110℃に加熱し、条件を3日間維持した。反応の進行は
薄層クロマトグラフィー(ヘキサン中30%酢酸エチル)を用いてモニターし、
3日後に完了したことが示された。
反応混合物をロータリーエバポレイターで濃縮した。残渣を30mlのクロロ
ホルムに溶解させ、分液ロートで飽和の重炭酸ナトリウム水溶液で3回洗浄して
抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液をロータリー
エバポレイターで濃縮し、シリカゲル60充填カラム(イーエムサイエンス社、
ギップスタウン、NJ)で精製した。生成物はヘキサン中、酢酸エチル30%溶
液を用いて溶出させた。100%ヘキサンでスタートし、酢酸エチルの濃度を各
連続洗浄で30%まで次第に増加させた。(生成物の収量:1.25g)。
実施例IIDomcatop−オリゴヌクレオチド(“リポヌクレオチド”)結合体の合成
パートA:Domcatopのブロマイド塩のNHSエステルの合成
実施例1パートBで製造されたDOMCATOPのブロマイド塩(130mg
、0.17mmol)を20mlの乾燥テトラヒドロフランに溶解させ、この溶液に
65mg(0.56mmol)のN−ヒドロキシコハク酸イミドおよび116mg(
(0.56mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミドを添加した。この溶液を室
温で窒素下に20時間攪拌した。反応により生成したジシクロヘキシルウレアを
濾去し、濾液を減圧下に濃縮し、クロロホルムに溶解する残渣を得た。この溶液
を飽和の重炭酸ナトリウムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、量論的収量
のDODMECAPのNHSエステルを得た。
パートB:5′−アミノ末端オリゴヌクレオチドの合成
SEQ.ID.NO.1からなる5′−アミノ末端オリゴヌクレオチドの合成
は、公知の標準的なホスホルアミダイト化学手順および商業的に入手可能な自動
合成器を用いて行った。塩基アデノシン、グアノシン、シトシンおよびチロシン
のシアノエチルホスホルアミダイトおよびアミノリンカーホスホルアミダイトか
ら調節多孔ガラス固体支持体上で自動化合成を経てオリゴヌクレオチドを合成し
た。5′−アミノ末端オリゴヌクレオチドの合成の最後のステップにはアミノリ
ンカーホスホルアミダイト(アプライドバイオシステム社,フォスターシテイ,
CA)を用い、5′−アミノ末端オリゴヌクレオチドをカップリングさせた。ヌ
クレオシド塩基、O−シアノエチル基の脱保護、オリゴヌクレオチドの支持体と
の結合の切断は、水酸化アンモニウムで55℃で少なくとも15時間処理するこ
とにより一段階で行った。生じたアンモニア性溶液を濃縮すると、5′−アミノ
末端オリゴヌクレオチドが得られ、これを水に溶解し、引き続く使用まで保存し
た。
パートC:DomcatopのNHSエステルと5′−アミノ末端オリゴヌク レオチドのカップリングによるリポヌクレオチドの形成
パートBで製造されたホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(300μlの
水中2.2mg)に33μlの3M酢酸ナトリウムおよび1mlのエタノールを
加えて−20℃、少なくとも1時間で沈殿させた。沈殿したオリゴヌクレオチド
を4℃で少なくとも30分間遠心分離して分離した。上清を除去し、オリゴヌク
レオチドを含むペレットをスピード真空5分間で乾燥させ、490μlの0.2
5MのHEPES溶液(pH8.1)に溶解させた。この溶液に210μlのピ
リジンおよび280μlの25mMチオカチオン性NHSエステルのピリジン液
を加えた。生じた混合物をボルテックスし、55℃で少なくとも18時間反応さ
せた。溶液を10mlのチューブに移し、280μlの3M酢酸ナトリウム、7
00μlの水および7.9mlのエタノールで−20℃で少なくとも2時間処理
した。生じた懸濁液を17,000rpm、4℃で1時間遠心分離し、上清を除
去した。得られたオリゴヌクレオチド含有ペレットを乾燥させ、1mlの水に溶
解させた。この粗生成物を0.1M酢酸アンモニウム(pH7)中増加するメタ
ノール濃度勾配でC8ラジアルパック(radial pak)カラムを使用する逆相HP
LCによって精製した。
リポヌクレオチドを含有する分画をプールし、濃縮して残渣を1−2mlの水
に溶解させ、0.25mlの3M酢酸ナトリウムおよび8mlエタノールで−2
0℃で一夜処理して、リポヌクレオチドのペレットを遠心分離して得た。
実施例IIIリポソーム製剤の合成
後述のリポソーム製剤は示された量のDOPE(アバンチポーラーリピド社、
アラバスター,AL);コレステロール(アバンチポーラーリピド社、アラバス
ター,AL);ビタミンD3(アルドリッチケミカル社、ミルウオーキー,WI)
;オレイン酸(“OA”;ヌチェックプレプ社、エリシアン、MN);および上
述のように製造されたDODMECAP、DOMCATOP、DOMHYTOP
、DODMECAP、OBEHYTOPおよびOBECASTOPを含んでいた
。与えられた全割合はモル割合である。他に示さないかぎり、本明細書でリポソ
ー
ムの製造に用いられたカチオン性脂質:滴定可能な両親媒体:ステロールのモル
割合は、10:5:2である。“全脂質”の用語は上述のリポソームの全成分の
合計である。下記のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはSEQ.ID.N
O.1で与えられる。
所望割合の全脂質の合計80μモルをクロロホルムに溶解させ、乾燥させて、
pH7.4の燐酸緩衝塩水でホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの0.5m
M溶液を1ml含む水溶液で再び水和させた。製造物をボルテックスし、37℃
で一夜振盪すると平衡に達し、小胞を形成し、次いで凍結−解凍した。これに続
き、このように形成された多重ラメラリポソーム小胞を適当な孔のサイズのポリ
カーボネートフィルターを通して押し出し、単一の二重層を有するリポソームを
得た。カプセル化されていない物質を除くため、リポソームをサイジングゲルカ
ラムを通してゲル濾過した。カプセル化されたオリゴヌクレオチドの全量をハイ
ブリダイゼイションプロテクションアッセイを用いて決定した。(Arnold 等,
PCT WO 89/02476参照)。
実施例IVリポソーム製剤の細胞内取込み
10%牛胎児血清(ギブコBRL社、グランドアイランド,NY)を含んだ2
mlのRPMI−1640培地(バイオホイットテイカー社,ウオーカースビル
,MD)中、全部で2×106細胞(U937細胞;ATCC,ロックビル、M
D)を6−ウエルの組織培養プレートに播種し、5%CO2中35℃でインキュ
ベートした。燐酸緩衝塩水(pH7.4)に溶解されたリポソームにカプセル化
されたまたはフリーのオリゴヌクレオチドの100nM溶液を細胞に導入した。
48時間後、細胞を溶解し、実施例IIIに記載されたようにしてオリゴヌクレオ
チドの量を決定した。
実施例IIIに説明されたように製造し、オレイン酸およびビタミンD3とともに
カチオン性脂質DODMECAP、DODMEHAP、DOMCATOP、DO
MHYTOP、OBEHYTOPまたはOBECATOPを含むリポソームは類
似のオリゴヌクレオチド取込みを示した。
実施例Vウイルス抑制検定
10%牛胎児血清を含んだRPMI−1640培地中、全部で2.8×106
細胞(Jurkat 細胞;ATCC)を2本の15mlチューブに全量10mlにな
るように加えた。細胞を遠心分離し、上清を静かに別の容器に移し、細胞を上述
の培地1mlに再び懸濁させた。レトロウイルス(HIV−1IIIB)の試料4.
0mlを一本のチューブに添加し、培地のみ4.0mlを対照に添加した。細胞
は2時間37℃、5%CO2雰囲気でインキュベートした。フリーのウイルスは
細胞から洗浄し、細胞は35mlの培地に再び懸濁した。
感染細胞および対照細胞を96ウエルの組織培養プレートに125μlのアリ
コートで播種した。実施例III に従って製造した種々の濃度のリポソームまたは
フリーのオリゴヌクレオチドをウエルに添加し、プレートを5%CO2雰囲気下
37℃で6日間インキュベートした。製造社説明書および対照を用いて、p24
蛋白レベルを抗原捕獲検定(antigen capture assay)(クールターイムノロジ
ー社、ヒアリー、FL;USP4,886,742)により決定した。結果を図
1,2および3に示す。ここで“−●−”はオリゴヌクレオチドを有するリポソ
ームを表し、“−■−”はオリゴヌクレオチドを有しない対照リポソームを表し
、“−▼−”はフリーのオリゴヌクレオチドを表す。
図1においては、オリゴヌクレオチドを有し、または有しないチオカチオン性
脂質DOMCATOPを用いて製造されたリポソーム、またはオリゴヌクレオチ
ド単独の結果を示す。ここに示されるとおり、オリゴヌクレオチドを含むリポソ
ームは、p24レベルの有意の減少によって示されるように、ウイルスの複製を
効果的に抑制した。
図2においては、アンモニウムイオンを含有する脂質DODMECAPの結果
を示す。ここに示されるとおり、ウイルス複製の抑制は観察されなかった。
図3においては、アンモニウムイオン含有脂質DODMEHAPとステロール
としてビタミンD3またはコレステロールを用いて製造されたリポソームの結果
を表している。ここに示されるとおり、ビタミンD3含有リポソームは、その
コレステロール含有等価物よりもウイルス複製の抑制に予想外により効果的であ
った。
実施例VI細胞代謝活性検定
細胞の代謝活性に与える影響を決定するために、各種のリポソーム製剤の毒性
の測定として、実施例Vからの感染細胞を用いてXTT検定を次のように行った
。細胞培地中、1mg/mlのXTT(2,3−ビス〔2−メトキシ−4−ニト
ロ−S−スルホフェニル〕−2H−テトラゾリウム−S−カルボキシアニリド分
子内塩;シグマケミカル社、セントルイス,MO)溶液を調製した。これに、X
TT溶液1mlにつき、5μlの5mMフェナジンメトスルフェート(シグマケ
ミカル社)を添加した。得られた混合物の50μlのアリコートを各ウエルに添
加し、プレートを5%CO2雰囲気下、37℃で4時間インキュベートした。そ
の後、各ウエルに15μlのトリトンX−100(シグマケミカル社)を加え、
450−650nmの二重(dual)吸光度における光学密度(O.D.)を読ん
だ。補正後光学密度測定は、適当な対照レベルを減ずることにより決定した。
図4に示されるとおり、実施例III に記載されているようにして調製したリポ
ソームの濃度を増加させると、アンモニウムイオン含有脂質(DODMEHAP
)を有するリポソームは等価のスルホニウムイオン含有脂質(DOMHYTOP
)を有するリポソームよりもはるかに低い濃度で毒性を示し始めた(光学密度の
減少によって明らかなとおり)。
本発明の他の観点、用途および利点は、本開示を検討することにより当業者に
明らかとなるであろう。当業者はまた、発明の精神から離れることなく、本明細
書に開示された構成および方法に対する多くの変化が可能であることを認識する
であろう。それ故下記クレームは本発明の範囲を示すものであり、明細書におい
て上述した特定の形態に限定されるものではない。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
// C07M 7:00 C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/09 ZNA
(31)優先権主張番号 08/480,622
(32)優先日 1995年6月7日
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/482,305
(32)優先日 1995年6月7日
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/482,430
(32)優先日 1995年6月7日
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/482,497
(32)優先日 1995年6月7日
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 AU,CA,JP,KR
(72)発明者 パテル,ジャズミン・アール
アメリカ合衆国カリフォルニア州92131,
サン・ディエゴ,スクリップス・ヴィス
タ・ウェイ 10030−52
(72)発明者 ダス,アディティア・ランジャン
アメリカ合衆国カリフォルニア州92122,
サン・ディエゴ,アヴェニダ・ナヴィダッ
ド 7867,アパートメント 241