JPH11504237A - 電気的移送式作用剤投与を促進する組成物及び方法 - Google Patents

電気的移送式作用剤投与を促進する組成物及び方法

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JPH11504237A JP8532606A JP53260696A JPH11504237A JP H11504237 A JPH11504237 A JP H11504237A JP 8532606 A JP8532606 A JP 8532606A JP 53260696 A JP53260696 A JP 53260696A JP H11504237 A JPH11504237 A JP H11504237A
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Abstract

(57)【要約】 体表を通して作用剤を経皮投与するための電気的移送式デバイス(10)は、作用剤と経皮透過促進剤とから形成され、作用剤イオンと促進剤対イオンとに解離することができる化合物を含有するドナー溜め(16)を有する。経皮電気的移送式薬物投与を促進させる方法と、促進された経皮電気的移送式薬物投与を示す組成物の形成方法とも提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 電気的移送式作用剤投与を促進する組成物及び方法 技術的分野 本発明は、体表を通しての電気的移送による作用剤投与に関する。さらに詳し くは、本発明は、競合イオンの影響を避けながら、透過促進剤による電気的移送 式作用剤投与の促進に関する。 背景技術 表皮を通しての拡散による薬物の経皮投与は、例えば皮下注射及び経口投与の ような、より伝統的な投与方法を凌駕する改良を提供する。経皮薬物投与は経口 薬物投与によって経験される肝臓一次通過効果(hepatic first pass effect)を 回避する。経皮薬物投与はまた、皮下注射に比べて、患者の不快感を軽減する。 さらに、経皮薬物投与は、ある一定のパッチの長時間制御投与プロフィルのため に患者の血流中の薬物のより均一な濃度を時間の経過にわたって与えることがで きる。“経皮薬物”投与なる用語は、広範囲に、例えば動物の皮膚、粘膜又は爪 のような体表を通しての作用剤の投与を包括する。 皮膚は身体中への物質の経皮透過に対する主要なバリヤーとして機能し、例え ば薬物のような治療剤の経皮投与に対する身体の主要な抵抗を表す。現在まで、 受動的拡散による治療剤の投与に対する皮膚の物理的抵抗を軽減し、透過を促進 することに努力が集中されてきた。経皮薬物拡散の速度を高めるために種々な方 法が用いられている。例えば、皮膚からの薬物拡散を制限し、皮膚の水和を高め ることによって、皮膚を通しての薬物拡散速度を高めるために、金属、プラスチ ック又は他の物質から製造された薬物不透過性バッキング層が皮膚パッチに用い られている。さらに、皮膚に隣接する雰囲気の温度と相対湿度とを変えることに よって、皮膚を通しての作用剤の吸収速度の上昇が生じている。他の努力は皮膚 の最外部角質層を機械的に粉砕することによって皮膚をすりむく又は穿孔するこ とに向けられている。化学的吸収促進剤(流動促進剤又は透過促進剤とも呼ばれ る)も経皮治療薬物投与デバイスの不可欠成分として又は経皮パッチを貼付する 前の前処理工程として皮膚に塗布される組成物として用いられている。 受動的経皮薬物投与系における脂肪酸透過促進剤の有用性は今までに認められ ている(例えば、米国特許第5,045,553号と第5,023,085号( 脂肪酸と付加的シクロケトン)を参照のこと)。同様に、米国特許第5,069 ,909号(ブプレノルフィンに関する)、第5,001,139号及び第4, 892,737号は受動経皮投与の他の促進剤との混合物への脂肪酸エステルの 使用を開示する。さらに一般的には、C5−C30脂肪族モノカルボン酸がN−エ トキシカルボニル−3−モルホリノシドノルイミンの受動的投与に関する米国特 許第4,731,241号に経皮薬物透過促進剤として開示される。米国特許第 4,892,737号は作用剤の受動的経皮電気的移送のために第4級アンモニ ウム塩と飽和及び不飽和脂肪族カルボン酸との混合物を用いている。米国特許第 4,882,163号は炭素数少なくとも12のアルキル脂肪酸を用いてモノキ シジンを受動的に投与している。米国特許第4,637,930号では、C6− C12脂肪酸エステルがニカルジピン塩酸塩の投与のために用いられている。 脂肪族ジオール、一価又は多価アルコールのエステル及び飽和脂肪酸を含む、 サリチル酸の受動的投与のための組成物が公開PCT特許出願WO90/085 07に開示されている。例えばプロパン−若しくはブタン−ジオールのような脂 肪族1,2−ジオール及び、例えばトリグリセリドのような脂肪油とそれらの脂 肪酸誘導体を含有する組成物は、公開PCT特許出願WO89/00853に開 示されている。さらに、米国特許第4,605,670号と第5,128,37 6号は、(1)C7−C18脂肪族酸とアルコールとのエステル、C8−C26脂肪族 モノアルコール又はこれらの混合物と、(2)例えばピロリドンのようなC4− C6環状アミド;及びジオール、トリオール又はこれらの混合物との混合物を含 有する組成物中の活性剤の受動的経皮投与を開示する。 一般に、これらの受動的方法は薬物の経皮流動を有意に高めるためにごく限定 された成功を収めているにすぎない。経皮薬物透過速度(流動)は電気的に補助 された移送、即ち、電気的移送を用いることによって、受動的拡散によって得ら れるよりも高められることができる。本明細書で用いる“電気的移送”なる用語 は、電界の補助による体表(例えば、皮膚)を通しての作用剤の投与を意味する 。 したがって、電気的移送は一般に、皮膚を通して電流を与えることによって少な くとも部分的に誘導される、例えば皮膚、粘膜又は爪のような体表を通しての作 用剤の通過を意味する。薬物を包含する多くの治療剤を電気的移送によってヒト の身体中に導入されることができる。体表を通しての作用剤の電気的移送は幾つ かの公知現象の1つ以上によって達成されることができる。広範囲に用いられる 電気的移送現象の1つはイオン導入であり、イオン導入は荷電イオンの電気的に 誘導される移送を含む。他の型の電気的移送である電気浸透は、溶解した1種以 上の治療剤を含有する液体の、電界の影響下での生物学的膜を介しての移動を含 む。さらに他の型の電気的移送であるエレクトロポレーションは、電界の影響下 での生物学的膜に形成された一次的形成孔を通しての作用剤の移動を含む。任意 の一定の作用剤を電気的移送する場合に、受動的拡散を含めた、1種より多いこ れらの現象がある程度同時に起こりうる。本明細書で用いる電気的移送なる用語 は、作用剤(単数又は複数)が実際に移送される特定の機構(単数又は複数)に 拘わらず、荷電種、非荷電種又はこれらの混合物の電気的に誘導又は促進される 移送を包含する、その最も広い、可能な解釈を与えられる。 電気的移送式デバイスは典型的に少なくとも2個の電極を必要とし、両方の電 極が皮膚、爪、粘膜又は身体の他の膜表面の一部と電気的に接触する。一般に“ ドナー”又は“アクティブ”電極と呼ばれる、1つの電極は、それから作用剤、 薬物又は薬物先駆体が身体中に投与される電極である。典型的に“カウンター” 又は“リターン”電極と呼ばれる、他方の電極は、身体を通して電気回路を閉じ るために役立つ。例えば、カチオン(即ち、正に荷電した)作用剤が投与される べき場合には、アノードがアクティブ又はドナー電極であり、カソードはカウン ター電極である。或いは、投与されるべき作用剤がアニオン(即ち、負に荷電し ている)である場合には、カソードがドナー電極になり、アノードがカウンター 電極になる。アニオン薬物とカチオン薬物の両方を同時に投与すべきである場合 には、この目的のために、アノードとカソードの両方をに用いることができ、ア ニオン薬物がカソードに配置され、カチオン薬物がカソードに配置される。さら に、電気的移送式投与デバイスは典型的に1個以上のバッテリーとしての電源と 任意に、電極を通しての電流の流れを調節し、それによって薬物投与速度を調節 する電気的制御回路とを包含する。或いは、異なる材料から製造された2つの電 極を接触させることによって形成される電池対(galvanic couple)によって、電 力が少なくとも部分的に供給されることができる。電源の1極をドナー電極に電 気的に接触させ、ドナー電極を身体に、身体をカウンター電極に、及びカウンタ ー電極を電源の反対局に電気的に接触させることによって、完全な電気回路が形 成される。 ドナー電極は典型的に、身体に投与されるべき作用剤又は薬物の溶液を含有す る溜めを包含する。このドナー溜めはポウチ、キャビティ、多孔質スポンジ、パ ッド及び予成形ゲル体の形状をとることができる。同様に、カウンター電極は典 型的に、生体適合性電解質塩溶液を含有する溜めを包含する。このような溜めは 電気的移送式デバイスのアノード又はカソードに電気的に接続して、1種以上の 治療剤又は薬物の固定した又は再生可能なソースを形成する。 電気的移送式薬物流量(flux)がデバイスによって供給される電流レベルに大体 比例することは公知である。しかし、患者によって気持ちよく許容されることが できる電流密度(電流密度は電極の皮膚接触面積(cm2)によって除したデバ イス供給電流レベル(mA)である)には限界がある。患者によって気持ちよく 許容されることができる電流密度レベルに対するこの限界は、電気的移送式系の サイズ、それ故、電極の皮膚接触面積を減少するときに、即ち、装着可能である ように設計される電気的移送式系に関していっそう問題になる。したがって、一 定サイズの任意の電気的移送式デバイスによって供給される電流レベルには限界 があり、この電流限界はデバイスの皮膚接触面積が縮小すると低くなる。或る場 合には、これらの電流限界で作用する電気的移送式デバイスは治療有効量の薬物 を投与することができなかった。このような場合には、電気的移送式デバイスへ の透過促進剤の組込みが作用剤の投与量を適切な(即ち、治療的)レベルに高め ることができる。 本出願に関して、“流動促進剤”と“透過促進剤”なる用語は大ざっぱには、 体表を通る作用剤の通過に対する体表の物理的抵抗を軽減するか、又は体表のイ オン選択性を変えるか、又は体表の導電率若しくは透過率及び/若しくは体表を 通る通路数を増加させる化学種を表す。皮膚の抵抗を減ずるための電気的移送式 透過促進剤の使用は、皮膚を通る特定レベルの電流(即ち、mA)を発生させる ために低い電位(即ち、電圧)を必要にすることによって、電気的移送式デバイ スのサイズを減じて、デバイスに動力を与えるために必要なバッテリーのサイズ 及び/又は数を減じることにも役立つ。電気的移送式透過促進剤の使用は供給さ れる電流の単位あたりの電気的移送される薬物量を高めることができる。それ故 、電気的移送式透過促進剤は、目標経皮薬物流量を得るために必要な、一定サイ ズのデバイスによって供給される電流量を減じる、それ故電流密度をも減じるこ とができ、及び/又はドナー電極及びカウンター電極のサイズ(即ち、皮膚接触 面積)を減じることができる。デバイスのサイズ縮小及び/又は供給電流の減少 は患者の装着感(comfort)を改良し、バッテリー数の減少はデバイスのコストを 減じる。 治療剤の電気的移送式投与のための限定された数の透過促進剤が文献に開示さ れている。ポリペプチドの電気的移送式投与のための透過促進剤としてはエタノ ールが用いられている。Srinivasan等のJ.Pharm.Sci.7 9(7):588〜91(1990)を参照のこと。Sanderson等の米 国特許第4,722,726号では、皮膚を通って外方に移動する組織イオンと の競合を減少するためにイオン界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム) によって皮膚を前処理する。Francoeur等の米国特許第5,023,0 85号は、或る一定の薬物のイオン導入式投与のためのケトンと共の不飽和C14 −C20酸、アルコール、アミン及びエステルの使用を開示する。公開PCT特許 出願WO91/16077は、薬物のイオン導入式投与のための透過促進剤とし て、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸及びカプリル酸のような脂肪酸 の使用を開示する。ヨーロッパ特許出願第93/300198.4号は、広範囲 に述べられているグループの“脂質調節剤(lipid modifier)”を用いる治療剤の イオン導入式経皮投与を開示している。この調節剤は一般に、C5−C28脂肪族 鎖と、例えばヘミアセタール、アミド、アセタール、アルコール、カルボン酸、 エステル等のような部分とを有し、僅か50〜60個の炭素原子を含有するとし て述べられている。幾つかのジオキソラン、脂肪族カーボネート及びピロリドン のみが例示される。 電気的移送式デバイスのドナー溜め組成物に透過促進剤を加えることによって 生じる問題は、体表を通る移送に関して治療剤と競合する外来イオンが組成物中 に導入されることである。例えば、カチオン薬物含有ドナー溜め組成物へのラウ リン酸ナトリウムの添加は2つの対立する効果を有する。ラウレートイオンは皮 膚透過性を高め、それ故、電気的移送式薬物投与速度を高める。他方では、ナト リウムイオンは体表を通る移送に関してカチオン薬物と競合し、したがって、電 気的移送式薬物投与速度を低下させる。これに関して、ナトリウムイオンは“競 合イオン”と呼ばれる。本明細書で用いる限り、この用語は電気的移送によって 投与されるべき治療剤と同じ(即ち、同じ符号の)電荷を有し、治療剤の代わり に体表を通って投与されることができるイオン種を意味する。 発明の開示 本発明は、電気的移送式投与デバイスのドナー溜めに、競合イオンの導入を実 質的に回避して、透過促進剤を添加する方法を提供する。治療剤と透過促進剤の 両方を包含するが、競合する透過促進剤イオンを実質的に包含しない電気的移送 式ドナー溜め組成物をも提供する。本発明は、作用剤−促進剤化合物の形状であ る、投与されるべき治療剤を含む組成物を包含する。作用剤−促進剤化合物は塩 基としての作用剤と、例えば脂肪酸のような酸性透過促進剤とを反応させること によって形成することができる。或いは、作用剤−促進剤化合物は酸としての作 用剤と、例えばピロリドンのような塩基性透過促進剤とを反応させることによっ て形成することができる。作用剤−促進剤化合物は好ましくは水溶性塩である。 作用剤−促進剤化合物を液体(例えば、水性)溶媒中に溶解する場合には、治療 剤イオンと反対に荷電した透過促進剤対イオンとから成る溶液が形成される。こ の溶液は治療剤イオンと同じ電荷を有する競合透過促進剤イオンを実質的に含ま ない。本発明はまた、ドナー電極とカウンター電極とを含み、ドナー電極が本発 明の組成物を含有する電気的移送式投与デバイスをも考慮する。 次に、本発明は添付図面に関連してさらに詳細に説明する。 図面の簡単な説明 図1は、本発明の1実施態様を表す電気的移送式投与デバイスの断面図である 。 図2は、遠隔電源に接続したドナー電極とカウンター電極とを有する、断面で 示した部品を含む、電気的移送式系の概略図である。 本発明の実施態様 本発明は、電気的移送式投与デバイスのドナー溜め組成物中への競合イオン( 即ち、治療剤イオンと同じ符号の電荷を有するイオン)の導入を避けるために治 療有効剤−促進剤化合物を用いる。 一般に、透過促進剤は、流動促進剤の不存在下での同じ供給電流レベルにおけ る作用剤の流量に比べて、一定供給電流レベルにおいて大きい電気的移送式流量 を生じる。本発明によると、電気的移送によって投与されるべき作用剤は作用剤 −促進剤化合物として製剤化され(formulated)、さらに好ましくは作用剤−促進 剤塩として製剤化される。作用剤−促進剤化合物は下記2反応のいずれかによっ て形成されることができる:(1)塩基治療剤と酸透過促進剤とを反応させて、 好ましくは水溶性塩としての作用剤−促進剤化合物を形成する、この化合物は液 体溶媒中に溶解すると、作用剤カチオンと透過促進剤アニオンとを形成する;及 び(2)酸治療剤と塩基透過促進剤とを反応させて、好ましくは水溶性塩として の作用剤−促進剤化合物を形成する、この化合物は液体溶媒中に溶解すると、作 用剤アニオンと透過促進剤カチオンとを形成する。前者の作用剤−促進剤化合物 は電気的移送式投与デバイスのアノード電極からの投与に適し、後者の作用剤− 促進剤化合物は電気的移送式投与デバイスのカソード電極からの投与に適する。 上記2反応は、酸塩基反応の副生成物が中性の水であるので、ドナー溜め組成 物への競合イオンの添加を実質的に回避する。本発明による適当な酸塩基反応の 例を以下に示す。 種々な形の塩基治療剤(D)と酸透過促進剤(H−Enh)との間の反応の例は 下記式を包含する: D + H−Enh → DH+ + Enh- D−NH + H−Enh → D−N+2 + Enh- D−NH2 + H−Enh → D−N+3 + Enh- 酸治療剤(H−D)と種々な形の塩基透過促進剤(N−Enh)との間の反応の 例は下記式を包含する: H−D + H2N−Enh → D- + H3+−Enh H−D + HN−Enh → D- + H2+−Enh H−D + N−Enh → D- + HN+−Enh 本発明の組成物に作用剤−促進剤化合物を用いる場合には、本発明の電気的移 送式投与のための透過促進剤の選択が投与されるべき治療剤イオンの電荷を表示 する。例えば、治療剤が塩基であり、電気的移送によって投与される治療剤のイ オン化形がカチオン(例えば、プロトン付加(protonated)塩基)である場合には 、透過促進剤が酸であることが好ましい。塩基作用剤と酸促進剤との反応はイオ ン化可能な塩を形成し、この塩は液体溶媒中に溶解すると、正に荷電した作用剤 イオンと負に荷電した透過促進剤対イオンとを形成する。例えば、局所麻酔薬の リドカイン[(CH32−C63−NHCOCH2N(C252]は、酸透過促 進剤のラウリン酸と反応して、塩(即ち、リドカインヒドロラウレート)を形成 する塩基(即ち、第3級アミン)である。水溶液中では、リドカインヒドロラウ レートはプロトン化リドカインカチオンとラウレートアニオンとを形成する。 電気的移送によって投与されることができる作用剤−促進剤化合物を形成するた めに酸透過促進剤と反応することができる塩基治療剤(即ち、主としてカチオン 形)の例は、特にリドカイン、フェンタニル、メトクロプラミド、オンダンセト ロン、ベラパミル及びテルブタリンを包含する。 好ましい酸透過促進剤は有機酸であり、好ましい有機酸はC8−C18アルキル 、アルケニル及びアルケニル脂肪酸であり、C10−C14酸がさらにより好ましい 。C10−C12酸が最も好ましい。本発明の電気的移送式透過促進剤として有用な 酸は一般化学式R−COOH[式中、Rは直鎖若しくは分枝鎖、線状若しくは環 状の、非限定的に、炭素数8〜18の炭素鎖を含むアルキル、アルケニル又はア ルキニル基でありうる]を有し、好ましくはC10−C14酸である。この種類の酸 性透過促進剤では、例えば、特にラウリン酸(ドデカン酸)、オレイン酸(9, 10−オクタデカン酸)、カプリン酸(デカン酸)及びカプリル酸(オクタン酸 )を挙げることができる。 或いは、治療剤が酸であり、電気的移送によって投与される治療剤のイオン化 形がアニオン(例えば、D−COO-)である場合には、透過促進剤は好ましく は塩基である。酸作用剤と塩基促進剤との反応はイオン化可能な塩を形成し、こ の塩は液体溶媒に溶解した場合に、負に荷電した作用剤イオンと正に荷電した透 過促進剤対イオンとを形成する。例えば、非ステロイド系抗炎症性薬物(NSA ID)ケトプロフェンは、メチルピロリドンと反応した場合に塩(すなわち、メ チルピロリドンヒドロ−m−ベンゾイルヒドラトロペート)を形成する酸(すな わち、カルボン酸)である。水溶液において、メチルピロリドンヒドロ−m−ベ ンゾイルヒドラトロペートは、プロトン化メチルピロリドンカチオンとケトプロ フェンアニオンとを形成する。主としてアニオン形での電気的移送によって投与 される酸治療剤の例は、抗炎症剤、例えば、特に、アスピリン、トルメチン、フ ェノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン及びケトロ ラク、サリチル酸及びその誘導体(ジフルニサル及びジクロフェナク)、サリチ ル酸及びその誘導体(ジフルニサル及びジクロフェナク)、クロモリン、ナプロ キセン、ゾメピラック、プロスタグランジン、バルプロン酸及びカプトプリルを 包含する。 好ましい塩基透過促進剤は、ピロリドン(例えば、メチルピロリドン及びドデ シルピロリドン)、ピペリジン及びラウロカプラムである。 ドナー溜め組成物中の治療剤の濃度は、その効力、供給電流の大きさ及び持続 時間、促進剤の濃度及び組成物のpHを包含する種々な要因に依存する。一般に 、組成物中の治療剤の濃度は、約10〜100,000μg/mlの範囲内であ り、より好ましくは、約100〜約50,000μg/mlの範囲内である。同 様に、組成物中の種々な形の作用剤の好ましい割合は、また特定の投与条件の関 数である。一般に、1〜100重量%の総作用剤濃度は、荷電(イオン)形で存 在し、より好ましくは約10〜100重量%である。また、治療剤は、作用剤− 促進剤塩/溶液形のみでまたは他の治療剤との混合物として、ドナー溜め中に存 在することができる(例えば、リドカインの場合には、ドナー溜め中に存在する リドカインは、100%リドカインヒドロラウレートを含むかまたはリドカイン ヒドロラウレートとリドカイン塩酸塩との混合物を含むことができる)。ドナー 溜め中に存在する作用剤−促進剤化合物の相対的量は、流動促進効果を達成する ために必要な流動促進剤及び、また電気的移送式投与デバイスの操作形式に依存 して変化する。例えば、デバイスが、促進剤イオンを能動的に(すなわち、エレ クトロ マイグレーション(electromigration)によって)投与するために“逆極性”形式 で最初にランされる場合には、ドナー電極の極性がエレクトロマイグレーション によって治療剤イオンを投与するために固定されている操作形式に比べて低濃度 の促進剤イオンが必要であるにすぎない。典型的には、作用剤−促進剤化合物の 形であるドナー溜め中の治療剤の重量分率は、溜め中に存在する総治療剤の少な くとも約5重量%であり、好ましくは、少なくとも約10重量%である。 ドナー溜めの好ましいpHは、投与される治療剤イオンの電荷(すなわち、作 用剤がカチオン性、アニオン性又は両性かどうか)、好ましい投与速度、投与さ れる特定の治療剤によって生じる刺激及び感作の程度及び特定の投与計画(すな わち、供給電流レベル、持続期間等)を包含する多くの要因でもある。カチオン 性治療剤は、好ましくは約6〜9のpH、より好ましくは約7.5〜8.5のp Hを有するアノードドナー溜めから投与され、アニオン性治療剤は好ましくは約 3〜6のpH、より好ましくは約3.5〜5のpHを有するカソード溜めから投 与される。これらのpH範囲は、これらの特定のアノード/カソードpH範囲に おいて不良な溶解度を示す薬物を例外としやすい。 本発明は、皮膚、粘膜及び爪を包含する体表及び膜を通して投与可能である広 範囲の作用剤の投与に対して有用である。本明細書で用いるかぎり、“作用剤” 、及び“治療剤”なる表現は相互交換可能に用いられ、所望の通常有利な効果を 生じるために生活する生物に投与される任意の薬剤学的に受容可能な作用剤及び 好ましくは治療有効物質(例えばドラッグ又はプロドラッグ)としてそれらの最 も広い解釈を有するように意図される。一般に、これは、主要治療分野の全てに おける治療剤を包含し、これらの治療剤は、限定する訳ではなく、抗生物質と抗 ウイルス剤のような抗感染薬;例えばフェンタニル、スフェンタニル、ブプレノ ルフィンのような鎮痛薬と鎮痛複合薬;麻酔薬;食欲減退薬;抗関節炎薬;例え ばテルブタリンのような抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;下痢止め ;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬;抗偏頭痛薬;例えばスコポラミン及びオンダンセ トロンのような乗り物酔い治療剤;抗おう吐薬;抗腫瘍薬(antineoplastics); 抗パーキンソン病薬;かゆみ止め;抗精神病薬;解熱薬;胃腸及び尿路を含む鎮 痙薬;抗コリン作動薬;交感神経興奮剤(sympathomimetrics);キサンチン誘導 体 ;例えばニフェジピンのようなカルシウムチャンネル遮断薬を含む心血管系製剤 ;例えばドブタミン及びリトドリンのようなベータアゴニスト;ベータ遮断薬; 抗不整脈薬;例えばアテノロールのような抗高血圧薬;例えばラニチジン(ranit idine)のようなACE阻害剤;利尿薬;全身、冠状、末梢及び脳血管を含む血管 拡張薬;中枢神経系刺激薬;咳き薬及び風邪薬;うっ血除去薬;診断薬;例えば 上皮小体ホルモンのようなホルモン;催眠薬;免疫抑制薬;筋弛緩薬;副交感神 経遮断薬;副交感神経作用薬(parasympathomimetrics)、プロスタグランジン類 ;タンパク質;ペプチド;精神刺激薬;鎮静薬及びトランキライザーを包含する 。 さらに詳しくは、本発明は、酸形又は塩基形で製造されうる作用剤の電気的移 送式投与に有用である。本明細書で用いるかぎり、“酸形”とは、ルイス酸であ る作用剤形、即ち、非共有電子対によって化学的部分に結合することができる任 意の作用剤形を意味する。同様に、本明細書で用いるかぎり、“塩基形”とは、 非共有電子対を有する作用剤形を意味する。 それ故、本発明は、塩基形又は酸形を有する非常に多様な作用剤に適用可能で ある。“塩基”薬物の好ましいカテゴリーはアミンである。典型的に、アミンは RnN部分を有し、この部分は酸と反応して、水素原子が窒素原子と会合するか 又は弱く結合するRnN−H+プロトン化イオン形を形成する。プロトン化形は電 気的移送式投与中にアノード電極から典型的に投与される治療剤形である。酸透 過促進剤と反応して、プロトン化薬物イオンを形成することができるアミン薬物 の例は、非限定的に、特に、例えばバスピロン、ジルチアゼム、エンカイニド、 フェンタニル、リドカイン、メトクロプラミド、ミダゾラム、ニカルジピン、プ ラゾシン、スコポラミン、テトラカイン、及びベラパミルを包含する。本発明に よる電気的移送式投与のために特に有用なアミン薬物はリドカイン塩基であり、 これは酸透過促進剤(例えば、ラウリン酸)と反応して、作用剤−促進剤化合物 (例えばリドカインヒドロラウレート)を形成することができる。 “酸”薬物の好ましいカテゴリーは、D−COOH構造を有するカルボン酸薬 物である。カルボキシル基の水素原子は、塩基促進剤に与えられて、治療剤アニ オン(例えば、D−COO-)とプロトン化塩基促進剤対カチオン(例えば、Hn +−Enh)とを形成する。好ましいカルボン酸薬物は、ケトプロフェン、イ ブプロフェン、フェノプロフェン、トルメチン、ケトロラク、ジフルニサル、ナ プロキセン、ゾメピラック、バルプロン酸、アスピリン、プロスタグランジンE 1、ジクロフェナク、カプトプリル及びクロモリンを包含する。カルボン酸でな い酸薬物の例は、ピロキシカム及びリン酸デキサメサゾンを包含する。 本発明は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は他のマクロ分子の電気的 移送式投与に有用であり、これらは他の方法ではそれらの大きさのために経皮的 又は経粘膜的に投与することがむずかしい。これらのマクロ分子物質は典型的に 少なくとも約300ダルトンの分子量、さらに典型的には約300〜40,00 0ダルトンの範囲内の分子量を有する。しかし、これより小さい及び大きいペプ チドもまた本発明によって投与することができる。本発明により投与されること ができるペプチド及びタンパク質の例は、非限定的に、LHRH、例えばブセレ リン、ゴナドレリン、ナフレリン(naphrelin)及びロイプロリドのよ うなLHRH類似体、GHRH、GHRF、インシュリン、インスリノトロピン 、ヘパリン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、TRH、NT− 36(化学名:N−[[(S)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル] −L−ヒスチジル−L−プロリナミド)、リプレシン(liprecin)、下 垂体ホルモン(例えば、HGH,HMG,HCG,デスモプレシン酢酸)、卵胞 ルテオイド、α−ANF、成長因子放出因子(GFRF)、β−MSH、ソマト スタチン、ブラディキニン、ソマトトロピン、血小板由来増殖因子、アスパラギ ナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性性腺刺 激ホルモン、コルチコトロピン(ACTH)、エリスロポイエチン、エポプロス テノール(血小板凝固阻害因子)、グルカゴン、ヒルログ(hirulog)、 ヒルジン類似体、ヒアルロニダーゼ、インターフェロン、インターロイキンー2 、メノトロピン(menotropin)類(例えば、ウロフォリトロピン(F SH)とLH)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活 性因子、ウロキナーゼ、バソプレシン、デスモプレシン、ACTH類似体、AN P、ANPクリアランス阻害因子、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、抗利 尿ホルモンアゴニスト、抗利尿ホルモンアンタゴニスト、ブラジキニンアンタゴ ニスト、CD4、セレダーゼ、CSF類、エンケファリン類、FABフラグメン ト、 IgEペプチド抑制因子、IGF−1、神経栄養因子、コロニー刺激因子、上皮 小体ホルモンとアゴニスト、上皮小体ホルモンアンタゴニスト、プロスタグラン ジンアンタゴニスト、ペンチゲチド(pentigetide)、プロテインC 、プロテインS、レニン阻害因子、チモシンα−1、血栓溶解薬、TNF、ワク チン、バソプレシンアンタゴニスト類似体、α−1抗トリプシン(組換え体)及 び作用剤−促進剤化合物としてのTGF−βを包含する。 次に図1に関しては、本発明によって有用なユニット式電気的移送式デバイス 10を説明する。デバイス10は、本明細書ではドナー電極12及びカウンター 電極14と呼ぶ、導電性物質から製造された2個の電流分配膜又は電極を有する 。これらの電極は、非限定的に、銀、塩化銀、炭素、亜鉛及びステンレス鋼を包 含する、充分に導電性である任意の物質から構成されることができる。電極は、 金属ホイル、スクリーン、コーティング及び、例えば粉状金属(例えば、銀)又 は炭素のような導電性フィラーを装填されたポリマーマトリックスを包含する、 種々な形を有することができる。このようなマトリックスは、例えば、押出、カ レンダーリング、フィルム蒸発又は噴霧塗装のような慣用的方法によって形成す ることができる。図1では、ドナー電極及びカウンター電極12、14は、ドナ ー溜め16とカウンター溜め18とにそれぞれ隣接し、電気的に接触して配置さ れる。ドナー溜め16は、投与される作用剤の溶液を含有するが、任意のカウン ター溜め18は生体適合性電解質塩の溶液を含有する。これらの溜めは、作用剤 を電気的移送によってそれに通過させるためにその中に充分な量の液体を吸収し 、保持するために適合した材料から形成されている。好ましくは、溜めは、1種 以上の親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又 はポリエチレングリコール)及び任意に1種以上の疎水性ポリマー(例えばポリ イソブチレン、ポリエチレン又はポリプロピレン)を含有する。ドナー電極12 及びドナー溜め16は、カウンター電極14及び任意のカウンター溜め18から 電気絶縁体20によって分離される。絶縁体20はエアギャップであることがで きる、又は電子もイオンも有意な程度に伝導せず、デバイス10が施用される体 表100を包含しない経路を通しての短絡からデバイス10を保護する物質から 構成されることができる。デバイス10は任意に、耐水性で好ましくは電気絶縁 性 の物質から構成されたバッキング層22を包含する。デバイス10は図1に層2 4として概略的に示される電子回路と、その中の電源(例えば1個以上のバッテ リー)とを有する。典型的に、電子回路層24は比較的薄く、好ましくは例えば フィルム又はポリマーウェブのような薄いフレキシブル基板上に印刷、塗布又は 他のやり方で付着された電子伝導性経路から構成される、例えば電子回路層24 は印刷されたフレキシブル回路である。電源の他に、電子回路層24はデバイス 10によって供給される電流のレベル、波形、極性、タイミング等を制御する1 つ以上の電子要素をも包含することができる。例えば、回路層24は、電流コン トローラ(例えば、レジスター若しくはトランジスターに基づく電流制御回路) 、オン/オフスイッチ及び/又は電源の電流出力を経時的に制御するために適し たマイクロプロセッサーのような、1個以上の制御回路構成要素を含有すること ができる。回路層24の出力は電極12及び14に、このような電極が回路層2 4内の電源の反対極と電気的に接触するように、電気的に接続する。この実施態 様では、デバイス10は体表100に周囲接着剤層28によって接着する。任意 に、デバイスはインライン接着剤層、即ち、ドナー及び/又はカウンター溜め1 6と18と、患者の体表との間に配置される接着剤層を含有することができる。 インライン接着剤はイオン伝導物質を含有しなければならない、即ち、治療剤イ オンは接着剤層を透過して体表に達することができなければならない。デバイス 10が“オフ”モードであるときに体表100への作用剤の受動的な、即ち、電 気的補助されない流量を制限若しくは制御するために、任意の流量制御膜30が ドナー溜め16と体表100との間に配置される。 酸促進剤と反応して作用剤−促進剤化合物を形成する塩基作用剤は好ましくは 電気的移送式投与デバイスのアノード電極から投与され、塩基促進剤と反応して 作用剤−促進剤化合物を形成する酸作用剤は好ましくは電気的移送式投与デバイ スのカソード電極から投与される。 電気的移送式投与デバイスは作用剤の投与の開始時に、体表がそれを通る作用 剤の促進された流動を示す条件下でより多くの作用剤が投与されるように、促進 剤イオンを患者の体表に投与させるやり方で操作されることができる。このこと は幾つかの方法で達成されることができる。促進剤イオンは薬物イオンと反対の 荷電を有するので、ドナー電極の極性が例えばエレクトロマイグレーションによ って反対に荷電した作用剤イオンを投与するためのような極性である場合には促 進剤イオンはエレクトロマイグレーションによって投与されない。この問題を克 服するために、電極の極性を電気的移送式デバイスの操作の開始時に、エレクト ロマイグレーションによって促進剤イオンを投与するように切り替えることがで きる。透過促進効果を得るために充分な量の促進剤が体表に投与された後に、電 極の極性を、作用剤がエレクトロマイグレーションによって患者に投与される極 性に再び切り替えることができる。作用剤の前に促進剤を投与する他の方法は、 患者に電気的移送式ドナー溜めを供給するが、充分な量の促進剤が受動的拡散に よって体表に投与されるまで、電気的移送電流の始動を控えることである。ひと 度充分な(即ち、透過促進する)量の促進剤が体表に受動的に拡散したならば、 電気的移送式デバイスを始動させて、電気的移送電流を供給して、作用剤をエレ クトロマイグレーションによって投与させる。 このように、本発明とその或る一定の実施態様とを一般的に説明したが、下記 詳細な実施例に関連して本発明をさらに説明する。 実施例 実施例1: 下記実験では、リドカインヒドロラウレートノ水溶液をドナー溶液として用い て、リドカインのインビトロ経皮電気的移送式流量を測定した。リドカインヒド ロラウレート溶液は、リドカイン塩基をラウリン酸と反応させることによって( 即ち、混合することによって)形成された。 ヒト死体の腿と胸部とから得たヒートストリップ(heat stripped)ヒト表皮試 験片を図2に示した2区画電気的移送式透過セル(permeation cell)に取り付け た。セル40は主としてボルトとナット56によって結合させたポリカーボネー トピース52から構成された。セル40は銀ホイルアノードドナー電極48と、 カソードレセプター電極50としてのAg/AgCl負荷エチレン−酢酸ビニル ポリマーフィルムとを有した。ドナー電極とレセプター電極48、50は126 μAの定常電流を供給するように設定されたガルバノスタット(galvanostat)( 図2に図示せず)に電気的に接続した。電気的移送に暴露される各皮膚サンプ ル42の面積は約1.26cm2であり、ドナー区画44とレセプター区画46 の各々の容積は約2mlであった。区画46と46をOリング54を用いて密封 した。リドカイン塩基、ラウリン酸及びリドカインHClの選択された組合せを 含有する溶液をドナー区画44に入れた。ダルベッコのリン酸塩緩衝化生理的食 塩水(pH7.0に緩衝化された最少量の他のイオンを含む0.15N NaC l水溶液)をレセプター区画46に加えた。各流動実験を通して透過セル40を 約32℃に維持した。薬物の経皮電気的移送速度をレセプター溶液を定期的サン プリングして、リドカイン含量に関して分析することによって測定した。6時間 にわたるレセプター溶液の毎時測定からリドカイン流量を算出した。ドナー溶液 に可溶化剤(25重量%のエタノール)を添加することの効果を別に試験した。 表1に示す組成を有するリドカインヒドロラウレート溶液を調製した。種々な 組成の平均リドカイン電気的移送式流量(即ち、6時間実験の3時間目と6時間 目における平均リドカイン経皮流量)を比較した。ドナー区画の総リドカイン濃 度は、リドカインHClとリドカイン塩基との相対的量を釣り合わせることによ って、3種類の製剤においてほぼ一定に維持された。 製剤No.1とNo.2の流量を比較することによって知ることができるよう に、ヒドロラウレート塩として存在するリドカインのモル分率を高めることによ って、リカイン流量は増加した。製剤No.1とNo.3の流量を比較すること によって知ることができるように、25%のエタノールの添加はリドカイン流量 をさらに増加させる。実施例2: リドカインヒドロラウレート水溶液を含有するポリビニルアルコール(PVO H)ヒドロゲルベースドナー溜めを、表2の製剤No.4と6に示した割合で成 分を混合することによって調製した。製剤4との比較のために、ラウリン酸を含 まない以外は同様な製剤(製剤5)も調製した。 50℃の水浴に入れたビーカー中で成分を完全に混合した。直径1.3cm( 1/2インチ)及び厚さ1.6mm(1/16インチ)を有する幾つかのゲルを 各製剤からフォーム型において製造し、−80℃において一晩硬化させたゲル製 剤6以外は、−20℃において一晩硬化させた。次に、ゲルを室温に放置した。 製剤No.4,5及び6のゲルを用いては経皮流動実験をおこなわなかった。実施例3: 付加的なリドカインヒドロラウレート製剤 表3に示した製剤を、50℃において成分を混合することによって調製し、次 にそれからゲルを調製し、−20℃において一晩硬化させた。次に、ゲルを室温 に放置した。 成分を50℃において混合し、混合物をフォーム型中にピペットで入れ、−8 0℃において一晩硬化させることによって、製剤9と10のゲルを調製した。硬 化したゲルは約0.67gの重量と、直径2.25cm及び厚さ1.6mmを有 するディスク形とを有した。これらのゲルを、ゲルの身体遠位面に接触した銀ホ イルアノードとこの銀ホイルを覆うMedparバッキングとを有するアノード 電極アセンブリのアノードドナー溜めとして用いた。カウンター電極アセンブリ は同様なPVOHベースゲル(但し、リドカイン塩/塩基の代わりのNaClと 、ラウリン酸と、エタノールとを有する)を有し、カソードはカウンターゲルの 身体遠位面上に塩化銀粉末を負荷されたポリマーフィルムから構成された。電極 アセンブリを被験者の別々の皮膚部位に貼付し、次に電極をPhoresorl l電源(Iomed社,Salt Lake City,UTから販売)に電気 的に接続させた。Phoresorll電源は1.0mA(0.25mA/cm2 )の電流を供給するようにセットした。PhoresorII電力供給電極ア センブリを8人の健康な被験者に適用して、局所麻酔誘導におけるこれらの製剤 の効果を調べた。リドカインは被験者の上腕に10分間の施用期間投与した。系 を除去した5分間後に、麻酔ブロックの程度と深さを調べるために試験を開始し た。麻酔された面積の大きさ、ブロックの深さ、及び麻酔の持続期間を測定する ことによって、麻酔ブロックの効力を評価した。27ゲージ針をアノード皮膚接 触部位の中心に0.5mmの深さに挿入し、次には、1mmずつの増分で部位の 円周に達するまで中心から離して挿入した。被験者が疼痛を報告しなかった場合 には、 麻酔の深さを次のように試験した。1mm長さ毎に標識した20ゲージ針をアノ ード皮膚接触部位の中心に0.5mmの深さに挿入することによって、麻酔の深 さを測定した。被験者が疼痛を感じたと報告するまで、針を5秒間隔において、 1mm増分で挿入した。ひと度疼痛が報告されたときに、針の浸透深さが報告さ れた。測定されたパラメーターの平均値を表4に示す。 表4に示すように、リドカインヒドロラウレートの添加(製剤9)はリドカイ ンHClのみ(製剤10)に比べて麻酔の程度(即ち、時間、中心からの距離及 び深さ)を改良する。 このように本発明とその一定の好ましい実施態様とを一般的に説明したが、本 発明の種々な変更が本発明の範囲から逸脱せずになされうることは当業者に容易 に明らかであろう。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項 【提出日】1997年4月25日 【補正内容】 請求の範囲 1.予め形成された治療剤−透過促進剤化合物を含み、該化合物が可溶化し たときに作用剤イオンと、反対電荷の透過促進剤イオンとを形成し、促進剤イオ ンが動物の体表を通る作用剤イオンの電気的移送式流動を促進させるために有効 である、電気的移送式治療剤投与デバイスのためのドナー溜め組成物であって、 可溶化したときに、作用剤イオンと同じ電荷を有する競合促進剤イオンを実質的 に含まない組成物。 2.作用剤−促進剤化合物のための液体溶媒を包含する、請求項1記載の組 成物。 3.液体溶媒が水性溶媒である、請求項2記載の組成物。 4.作用剤−促進剤化合物が塩基治療剤と酸透過促進剤との反応;及び 酸治療剤と塩基透過促進剤との反応から成る群から選択された反応の生成物であ る、請求項1記載の組成物。 5.作用剤イオンがプロトン化塩基作用剤を含む、請求項1記載の組成物。 6.作用剤イオンが脱プロトン化酸作用剤を含む、請求項1記載の組成物。 7.化合物が脂肪酸薬物塩を含む、請求項1記載の組成物。 8.治療剤が少なくとも1個のアミノ基を含む、請求項1記載の組成物。 9.治療剤が薬物を含む、請求項1記載の組成物。 10.治療剤がポリペプチド又はタンパク質を含む、請求項1記載の組成物 。 12.酸促進剤がC8−C18飽和又は不飽和有機酸を含む、請求項4記載の 組成物。 13.有機酸がC10−C14有機酸を含む、請求項12記載の組成物。 14.有機酸がラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸及びこれらの混合物か ら成る群から選択される、請求項12記載の組成物。 15.体表(100)を通して治療剤を投与するための電気的移送式投与デ バイス(10)であって、請求項1において定義された組成物を含有するドナー 溜め(16)を含むデバイス。 16.供給電気的移送電流の極性を逆にするための手段と共に電子制御回路 要素(24)を包含する、請求項15記載のデバイス。 17.請求項15記載のデバイスの製造方法であって、 (i)作用剤−促進剤化合物を形成するための塩基治療剤と酸透過促進剤との 反応、及び(ii)作用剤−促進剤化合物を形成するための酸治療剤と塩基透過促 進剤との反応から成る群から選択された反応をおこない、作用剤−促進剤化合物 が液体溶媒中に溶解したときに、治療剤イオンと、反対電荷の透過促進剤イオン とを含有する溶液を形成する工程と; 作用剤−促進剤化合物又はその溶液をドナー溜めに入れる工程と を含む方法。 18.作用剤イオンがプロトン化塩基作用剤を含む、請求項17記載の方法 。 19.作用剤イオンが脱プロトン化酸作用剤を含む、請求項17記載の方法 。 20.化合物が脂肪酸薬物塩を含む、請求項17記載の方法。 21.治療剤が少なくとも1個のアミノ基を含む、請求項17記載のデバイ ス。 22.治療剤が薬物を含む、請求項17記載の方法。 23.治療剤がポリペプチド又はタンパク質を含む、請求項17記載の方法 。 24.酸促進剤がC8−C18飽和又は不飽和有機酸を含む、請求項17記載 の方法。 25.有機酸がC10−C14有機酸を含む、請求項17記載の方法。 26.有機酸がラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸及びこれらの混合物か ら成る群から選択される、請求項17記載の方法。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.電気的移送式治療剤投与デバイスのためのドナー溜め組成物であって、 治療剤−透過促進剤化合物を含み、該化合物が可溶化したときに作用剤イオンと 、反対電荷の透過促進剤イオンとを形成し、促進剤イオンが動物の体表を通る作 用剤イオンの電気的移送式流動を促進させるために有効である組成物。 2.作用剤−促進剤化合物のための液体溶媒を包含する、請求項1記載の組 成物。 3.液体溶媒が水性溶媒である、請求項2記載の組成物。 4.作用剤−促進剤化合物が塩基治療剤と酸透過促進剤との反応;及び 酸治療剤と塩基透過促進剤との反応から成る群から選択された反応の生成物であ る、請求項1記載の組成物。 5.作用剤イオンがプロトン化塩基作用剤を含む、請求項1記載の組成物。 6.作用剤イオンが脱プロトン化酸作用剤を含む、請求項1記載の組成物。 7.化合物が脂肪酸薬物塩を含む、請求項1記載の組成物。 8.治療剤が少なくとも1個のアミノ基を含む、請求項1記載の組成物。 9.治療剤が薬物を含む、請求項1記載の組成物。 10.治療剤がポリペプチド又はタンパク質を含む、請求項1記載の組成物 。 12.酸促進剤がC8−C18飽和又は不飽和有機酸を含む、請求項4記載の 組成物。 13.有機酸がC10−C14有機酸を含む、請求項12記載の組成物。 14.有機酸がラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸及びこれらの混合物か ら成る群から選択される、請求項12記載の組成物。 15.体表(100)を通して治療剤を投与するための電気的移送式投与デ バイス(10)であって、請求項1において定義された組成物を含有するドナー 溜め(16)を含むデバイス。 16.供給電気的移送電流の極性を逆にするための手段と共に電子制御回路 要素(24)を包含する、請求項15記載のデバイス。 17.請求項15記載のデバイスの製造方法であって、 (i)作用剤−促進剤化合物を形成するための塩基治療剤と酸透過促進剤との 反応、及び(ii)作用剤−促進剤化合物を形成するための酸治療剤と塩基透過促 進剤との反応から成る群から選択された反応をおこない、作用剤−促進剤化合物 が液体溶媒中に溶解したときに、治療剤イオンと、反対電荷の透過促進剤イオン とを含有する溶液を形成する工程と; 作用剤−促進剤化合物又はその溶液をドナー溜めに入れる工程と を含む方法。 18.作用剤イオンがプロトン化塩基作用剤を含む、請求項17記載の方法 。 19.作用剤イオンが脱プロトン化酸作用剤を含む、請求項17記載の方法 。 20.化合物が脂肪酸薬物塩を含む、請求項17記載の方法。 21.治療剤が少なくとも1個のアミノ基を含む、請求項17記載のデバイ ス。 22.治療剤が薬物を含む、請求項17記載の方法。 23.治療剤がポリペプチド又はタンパク質を含む、請求項17記載の方法 。 24.酸促進剤がC8−C18飽和又は不飽和有機酸を含む、請求項17記載 の方法。 25.有機酸がC10−C14有機酸を含む、請求項17記載の方法。 26.有機酸がラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸及びこれらの混合物か ら成る群から選択される、請求項17記載の方法。
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