【発明の詳細な説明】
オレフィン類の製造方法発明の分野
本発明は、パラジウム触媒を用いてビニル化合物と有機ハロゲン化物を連成さ
せて置換オレフィン類を製造する方法に関しそして次にカルボン酸またはエステ
ルを製造する方法に関する。背景
パラジウム触媒を用いて有機ハロゲン化物のビニル置換を行うことができれば
、未置換ビニル位に炭素−炭素結合を形成させる非常に便利な方法が得られるこ
とになる。Heckが報告した反応(Palladium Reagents in Organic Syntheses
,Academic Press,Canada 1985)を用いて精密有機品、薬剤および特殊なモノマー
類を製造することができる。このような反応は、例えば臭化アリール類から置換
スチレン類を1段で合成することを可能にし、幅広く多様なスチレン誘導体を製
造するのに優れた方法である。Heitz他、Makromol Chem.,189,119(1968)
アリール置換脂肪族カルボン酸またはそれらのアルキルエステルを製造する新
規な方法が米国特許第5,315,026号に開示されている。1−アリール置
換オレフィンと一酸化炭素を水またはアルコールの存在下25℃から200℃の
範囲の温度で反応させている。触媒として、パラジウム化合物と銅化合物の混合
物を酸に安定な式:
[式中、
R’は、R”と同じか或は異なり、水素、アルキルまたはアリールであり、ここ
で、上記アリールは置換されているか或は未置換であり、そしてArはフェニル
、ナフチル、置換フェニルまたは置換ナフチルであり、そしてnは3から6の整
数である]
で表される環状ホスフィンと一緒に用いている。好適な態様の説明 定義
以下に示す明細において、置換基の意味は下記の通りである:「アルキル」は
、炭素原子数が1から20の直鎖もしくは分枝鎖アルキルを意味し、例えばメチ
ル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三
ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチ
ル、2−エチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニル、デシ
ル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルおよびエイコシルな
どが含まれる[この定義の目的で、「アルキル」は「脂肪族」に置き換え可能で
ある。上記用語は「C1からC6のアルキル」を包含し、これは線状もしくは分枝
で炭素原子数が1から6である]。
「シクロアルキル」は、炭素原子数が3から7の環状アルキルを意味し、例え
ばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシク
ロヘプチルなどが含まれる。
「アリール」はフェニル、ナフチルまたはビフェニルを意味し、
「置換アリール」は、アロイル(以下に定義する如き)、ハロゲン(塩素、臭
素、フッ素またはヨウ素)、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキ
シ[これは、炭素原子数が1から10の直鎖もしくは分
枝鎖アルコキシを意味し、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポ
キシ、ブトキシ、イソブトキシ、第二級ブトキシ、第三級ブトキシ、ペンチルオ
キシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ
、ノニルオキシおよびデシルオキシなどが含まれる]、アリールオキシ[これに
はフェノキシ、およびハロ、アルキルまたはアルコキシで置換されているフェノ
キシが含まれる]、ハロアルキル[これは、炭素原子を1から8個有していて少
なくとも1個のハロゲンで置換されている直鎖もしくは分枝鎖アルキルを意味し
、例えばクロロメチル、ブロモメチル、フルオロメチル、ヨードメチル、2−ク
ロロエチル、2−ブロモエチル、2−フルオロエチル、3−クロロプロピル、3
−ブロモプロピル、3−フルオロプロピル、4−クロロブチル、4−フルオロブ
チル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、ジフルオロメチル、ジヨードメチル、
2,2−ジクロロエチル、2,2−ジブロモエチル、2,2−ジフルオロエチル
、3,3−ジクロロプロピル、3,3−ジフルオロプロピル、4,4−ジクロロ
ブチル、4,4−ジフルオロブチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、
2,2,2−トリ−フルオロエチル、2,3,3−トリフルオロプロピル、1,
1,2,2−テトラフルオロエチルおよび2,2,3,3−テトラフルオロプロ
ピルなどが含まれる]から成る群から選択される少なくとも1個の置換基で置換
されているフェニル、ナフチルまたはビフェニルを意味し、
「アルキル置換シクロアルキル」は、シクロアルキル部分が炭素原子数が3か
ら7の環状アルキルでありそしてアルキル部分が炭素原子数が1から8の直鎖も
しくは分枝鎖アルキルであることを意味し、例えばシクロプロピルメチル、シク
ロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シ
クロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、2−シクロプロピルエチル、2−
シクロペンチルエチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロプロピルプロピ
ル、3−シクロペンチルプロピル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロプ
ロピルブチル、4−シクロペンチルブチル、4−シクロヘキシルブチル、6−シ
クロプロピルヘキシルおよび6−シクロヘキシルヘキシルなどが含まれ、
「アルキルチオ」は、原子価の1つをアルキルが占めている二価の硫黄を意味
し、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキ
シルチオおよびオクチルチオ基などが含まれ、
「ヘテロアリール」は、ヘテロ原子(これには窒素、酸素および硫黄から成る
群から選択されるヘテロ原子が含まれる)を少なくとも1個有する5員から10
員の単もしくは縮合複素芳香族環を意味し、例えば2−フリル、3−フリル、2
−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラ
ゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンズイミ
ダゾリル、キノリル、オキサゾリル、チアゾリルおよびインドリルなどが含まれ
、
「置換ヘテロアリール」は、窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される
ヘテロ原子を少なくとも1個有する複素芳香族核がハロゲン、アミノ、ニトロ、
ヒドロキシ、アルキル、アルコキシおよびハロアルキルから成る群から選択され
る少なくとも1個の置換基で置換されている5員から10員の単もしくは縮合複
素芳香族環を意味し、
「アルカノイル」は、炭素原子数が2から18のアルカノイルを意味し、例え
ばアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、バレリル、
ヘキサノイル、オクタノイル、ラウノイルおよびステ
アロイルなどが含まれ、
「アロイル]はベンゾイルまたはナフトイルを意味し、
「置換アロイル」は、ベンゼンおよびナフタレン環がハロゲン、アミノ、ニト
ロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシおよびハロアルキルから成る群から選択
される置換基を含む少なくとも1個の置換基で置換されているベンゾイルまたは
ナフトイルを意味し、
「ヘテロアリールカルボニル」は、ヘテロアリール部分が上述した如く窒素、
酸素および硫黄から成る群から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個有する5
員から10員の単もしくは縮合複素芳香族環であることを意味し、例えばフロイ
ル、チノイル、ニコチノイル、イソニコチノイル、ピラゾリルカルボニル、イミ
ダゾリルカルボニル、ピリミジニルカルボニルおよびベンズイミダゾリンカルボ
ニルなどが含まれ、
「置換ヘテロアリールカルボニル」は、ヘテロアリール核がハロゲン、アミノ
、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシおよびハロアルキルから成る群から選択され
る少なくとも1個の置換基で置換されている上記ヘテロアリール−カルボニルを
意味し、例えば2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチルまたは2−
オキソ−1,3−ジオキサン−5−イルなどが含まれ、
「ビニル」は、不飽和二重結合を少なくとも1個有していて式CH2=CH−
で表される不飽和置換基を意味し、
「置換ビニル」は、末端に位置する炭素原子上のプロトンの少なくとも1つが
アルキル、シクロアルキル、アルキル置換シクロアルキル、アリール、置換アリ
ール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールで置換されている上記ビニル置
換基を意味する。
本発明の1つの態様では、式
[式中、
R2、R3およびR4は、同一もしくは異なり、独立して、水素、アルキル、シク
ロアルキル、アルキル置換シクロアルキル、置換もしくは未置換のアリール、ア
ルコキシ、アルキルチオ、置換もしくは未置換のヘテロアリール、アルカノイル
、置換もしくは未置換のアロイル、置換もしくは未置換のヘテロアリールカルボ
ニル、トリフルオロメチルまたはハロであり、そしてAは、アリール、置換アリ
ール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ベンジル、置換ベンジル、ビニル
または置換ビニルである]
で表されるオレフィン化合物を製造する。
式IIで表される化合物において、好適には、Aは未置換もしくは置換アリー
ルであり、R2、R3およびR4は、水素、C1からC6のアルキル、置換もしくは
未置換のフェニル、またはトリフルオロメチルである。
最も好適には、Aはアルキル(例えばイソブチル)で置換されているフェニル
またはアルコキシ(例えばメトキシ)で置換されているナフチルであり、R2、
R3およびR4は、水素、メチルまたはトリフルオロメチル、特に水素である。
式A−X[式中、Xはクロロ、ブロモ、ヨード、ジアゾニウム、トリフレート
(triflate)、または有機教本で見られる他の脱離基であり、そしてA
はこの上で定義した通りである]で表される有機ハロ
ゲン化物と式
[式中、
R2、R3およびR4はこの上で定義した通りである]
で表されるビニルまたは置換ビニル化合物を反応させることにより、式IIで表
される化合物を製造する。
この反応を時には「ビニル置換」反応と呼び、この反応を、典型的には、反応
を助長する触媒[これはパラジウム金属またはパラジウム化合物であり、このパ
ラジウムの原子価はゼロ、1または2である]と式
[式中、
R’およびR”は、同一もしくは異なり、独立して、水素、アルキル、アリール
または置換アリールであり、Arはフェニル、ナフチル、置換フェニルまたは置
換ナフチルであり、そしてnは3から6の整数である]
で表される環状配位子の存在下で実施する。好適には、R’およびR”は、同一
もしくは異なり、C1からC6のアルキルである。Arはフェニルまたはナフチル
でありそしてnは3または4である。最も好適には、R’はメチルまたはエチル
であり、R”はC1からC6の分枝アルキルであり、Arはフェニルであり、そし
てnは4である。上記環状配位子としてネオメンチルジフェニルホスフィンが特
に好適である。
このビニル置換反応を溶媒の存在下または無溶媒で実施する。溶媒を用いる場
合、これは極性溶媒、例えばアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン
またはジメチルホルムアミドなどであってもよい。
このビニル置換反応の条件として、通常、ビニルもしくは置換ビニル化合物と
有機ハロゲン化物を等モル比で用いる必要があるが、ビニル化合物を過剰量で用
いるのが好適である。上記触媒/配位子を典型的にはパラジウムもしくはパラジ
ウム化合物の量が有機ハロゲン化物1モルに対して0.0005モルになるよう
な比率で用いる。上記環状配位子を上記金属もしくは金属化合物と同じモル比か
或はそれより高いモル比で存在させる。パラジウム金属もしくはパラジウム化合
物のレベルおよび配位子のレベルを実質的により高くすることも可能であること
を注目すべきである(10倍に及んで)。直面するビニルもしくはハロゲン化物
が比較的不活性な種である場合、例えばオレフィン類が高度に置換されておりそ
して/または有機ハロゲン化物が強電子供与性置換基を持つ場合には、そのよう
に多い量で触媒/配位子を用いる必要があり得る。
反応温度は極めて適度で、25℃から200℃で多様であり(好適には60℃
から150℃であり)、圧力(ビニル化合物が気体状の場合)は大気圧から30
00psiに及ぶ(好適には400から1000psi)。本発明の向上した触
媒組み合わせを用いると、反応時間が非常に短くなり、反応は典型的に1から2
4時間、典型的には2から4時間で完結する。温度と圧力をより高くするとオレ
フィン反応体と生成物が分解を起こす傾向があることから、それは避けるべきで
ある。
反応混合物に入っている生成オレフィンは通常手段で容易に分離され、例えば
蒸留または非極性溶媒を用いた抽出、例えばヘキサンのように炭
素原子数が5から12の液状炭化水素(線状および分枝の両方)を用いた抽出な
どで分離可能である。
本発明のさらなる態様は、式IIで表されるオレフィン化合物をその反応混合
物から単離するか或は単離しないで(好適には単離しないで)触媒カルボキシル
化段階で用いて式III
[式中、
R1、R2、R3、R4およびAは、この上で定義した通りである]
で表される化合物を製造する態様である。
この式IIで表される化合物の触媒カルボキシル化を25℃から200℃、好
適には25℃−120℃、最も好適には25℃−100℃の温度で実施する。ま
た、より高い温度も使用可能である。この反応過程中に温度を好適な範囲内で徐
々に高くして行くと若干有利な収率が得られることを見い出した。
反応容器内の一酸化炭素分圧を周囲温度(または容器に仕込む温度)で少なく
とも1気圧(0psig)にする。反応装置の圧力限界までならば一酸化炭素の
圧力をいくら高くしてもよい。本方法では約3000psig以下の圧力が便利
である。より好適な圧力は、反応温度において0から3000psigの圧力で
あり、最も好適な圧力は0から1000psigの圧力である。本発明のヒドロ
カルボキシル化反応には酸素を存在させないのが望ましことを注目すべきである
。従って、一酸化炭素が100%の雰囲気が本方法を実施するに最も好適である
。しかし
ながら、いろいろな不活性ガス(例えば窒素およびアルゴンなど)を反応マスに
混合することも可能であり、ただ1つの判断基準は、反応の完結に要する時間が
非常に長くなる地点にまで工程を遅くすべきでない点である。
上記カルボキシル化では、水または脂肪族アルコールを式IIで表される化合
物1モル当たり少なくとも1モル存在させてカルボキシル化を実施するが、しか
しながら、反応を完結にまで持って行くに役立てるにはそれを過剰量で用いるの
が好適である。実際上、実用で負わせられる上限(例えば反応槽のサイズなどに
よる)以外、水またはアルコールの量に上限はないが、本方法では式IIで表さ
れる化合物1モル当たり約100モル以下の量が有用である。更に、本発明の方
法で水またはアルコールの使用量を制限することは、収率を最大にする意味で有
利である。従って、水またはアルコールの量を式IIで表される化合物1モル当
たり1から50モルにするのが好適であり、水またはアルコールの量を上記オレ
フィン化合物1モル当たり2から24モルにするのが最も好適である。この反応
の生成物は式IIIで表されるカルボン酸(R1が水素である)またはカルボン
酸エステル(R1がアルキルである)である。
本発明は、キラリティーを持つ炭素原子を式IIIで表される化合物が有する
場合、如何なるラセミ化合物も個々の光学異性体も包含する。例えば、酸が2−
(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸である式IIIで表される化合物
に米国特許第4,246,164号に教示されている如き分離を受けさせると、
鎮痛性化合物であるナプロキセンが得られる。
本発明の実施では、カルボン酸のエステルをもたらす如何なるアルコ
ールも使用可能である。好適な態様では、C1からC6の脂肪族アルコールを用い
る。この態様で用いるアルコール類の例には、メチルアルコール、エチルアルコ
ール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−、イソ−、s−
およびt−ブチルアルコール、ペンチルアルコール類(特にナプロキセンのエス
テルを製造する時のイソアミルアルコール)、およびヘキシルアルコール類が含
まれる。メチルアルコールが高度に好適であり、そしてエチルアルコールが最も
高度に好適である。また、他のアルコール類、グリコール類または芳香族ヒドロ
キシ化合物も使用可能である。最も幅広い意味で、このようなアルコール類は上
記反応でアルコキサイドのイオン源を与える。しかしながら、また、他の如何な
る「アルコキサイドのイオン源」も使用可能である。このようなアルコキサイド
のイオン源は、HC(OR1)3、(R)2C(OR1)2、HC(O)OR1、B(
OR1)3、Ti(OR1)4およびAl(OR1)3[ここで、Rは、水素であるか
、或は独立してR1と同じか或は異なっていてもよく、そしてR1は、この上で定
義した通りである]
から成る群から選択される化合物に由来するイオン源である。
本発明の好適な態様では、中性の条件下、即ち酸を添加しないで、カルボキシ
ル化反応を開始させる。また、添加した酸の存在下でこれを実施することも可能
である。酸を添加する場合、このような酸には硫酸、燐酸またはスルホン酸が含
まれる。ハロゲン化水素酸、例えば塩酸または臭化水素酸などが好適である。ハ
ロゲン化水素は気相としてか或は液相として添加可能である。如何なる濃度も使
用可能である。10%に及ぶ濃度の塩酸が特に好適であり、より高度に好適な濃
度は10%から30%の濃度である。この酸の添加量は、水素イオンが式IIで
表される
化合物1モル当たり40モルに及んで供給される量であり、より好適な量は、水
素イオンが式IIで表される化合物1モル当たり10モルに及んで供給される量
であり、最も好適な量は、水素イオンが式IIで表される化合物1モル当たり4
モルに及んで供給される量である。本発明の触媒カルボキシル化方法では、反応
を助長する量の(i)パラジウム金属またはパラジウム化合物(このパラジウム
の原子価はゼロ、1または2である)または(ii)パラジウム金属もしくはパ
ラジウム化合物と銅化合物の混合物を(iii)式Iで表される環状配位子と一
緒に存在させて、この方法を実施する。パラジウムの化合物および銅の化合物を
時にはパラジウム塩および銅塩と呼ぶ。
1つの態様において、パラジウム化合物および銅化合物は無機塩であり、これ
らを、前以て生じさせておいた錯体[例えば塩化もしくは臭化パラジウム(II
)と塩化もしくは臭化銅(II)と一酸化炭素から生じさせた]または他の何ら
かの同様な錯体として添加する。好適な態様では、反応混合物に個々の成分、即
ち配位子、銅化合物およびパラジウム化合物、例えばパラジウム(II)の無機
塩および銅(II)の無機塩などを添加することにより、活性触媒種をインサイ
チューで生じさせる。このような無機塩には塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩ま
たは酢酸塩が含まれる。最も好適な態様では、ネオメンチルジフェニルホスフィ
ンと塩化銅(II)と塩化パラジウム(II)を用い、これらを個別にか或は一
緒に、即ち同時にか或は逐次的に加える。
このパラジウム金属もしくはパラジウム化合物またはパラジウム化合物と銅化
合物の混合物を炭素、シリカ、アルミナ、ゼオライト、粘土および他のポリマー
材料に支持させて、不均一触媒として用いることも可
能である。
上記銅化合物とパラジウム化合物の混合物の好適な使用量、パラジウム金属の
好適な使用量、またはパラジウム化合物の好適な使用量は、式IIで表される化
合物が金属もしくは金属塩混合物1モル当たり4から8000モル供給されるよ
うな量であり、より好適な量は、式IIで表される化合物が金属塩混合物1モル
当たり20から2000モル供給されるような量である。上記環状配位子を上記
金属もしくは金属塩混合物1モル当たり少なくとも1モル存在させて本発明の方
法を実施する。より好適には、上記配位子を上記混合物1モル当たり1から40
モル存在させ、最も好適には上記配位子を上記混合物1モル当たり1から20モ
ル用いる。
本発明の方法では溶媒を存在させる必要はないが、ある場合には望ましい可能
性がある。使用可能な溶媒には下記の1つ以上が含まれる:ケトン類、例えばア
セトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトンおよ
びアセトフェノンなど;線状、ポリおよび環状エーテル類、例えばジエチルエー
テル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、エチルn−プロピ
ルエーテル、グライム(エチレングリコールのジメチルエーテル)、ジグライム
(ジエチレングリコールのジメチルエーテル)、テトラヒドロフラン、ジオキサ
ンおよび1,3−ジオキソランなど;および芳香族炭化水素、例えばトルエン、
エチルベンゼンおよびキシレン類など。また、アルコール類、例えばメタノール
、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールの異性体およ
びペンタノールの異性体なども溶媒として用いるに適切である。また、酸および
エステル、例えば蟻酸もしくは酢酸または酢
酸エチルなども使用可能である。エステルまたはアルコールを溶媒として用いる
場合の生成物は、相当するカルボン酸エステルである。最も高度に好適なものは
エーテル類、特にテトラヒドロフランである。溶媒を用いる場合、その量は式I
Iで表される化合物1グラム当たり100mLに及ぶ量であってもよいが、最も
有利には式IIで表される化合物1グラム当たり1から30mL存在させて本方
法を実施する。
エステル、例えばイブプロフェンのアルキルエステルが生成する本発明の具体
的な態様では、便利に通常の加水分解方法を用いて上記エステルを酸(イブプロ
フェン自身)に変換することができる。また、望まれるならば塩基性加水分解を
利用して、カチオンが炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシ
ウムまたは第四級アンモニウム化合物である薬学的に受け入れられる塩を生じさ
せることも可能である。
本発明を用いて製造する化合物の例には、イブプロフェン;2−(6−メトキ
シ−2−ナフチル)プロピオン酸;2−(3−フルオロ−4−ビフェニリル)−
プロピオン酸(またフルルビプロフェンとしても知られる)および2−(3−ベ
ンゾイルフェニル)プロピオン酸(またケトプロフェンとしても知られる)が含
まれる。本明細書に記述するように、上記化合物各々のブロモ前駆体とエチレン
を塩基(例えばトリエチルアミン)とパラジウム触媒(本明細書に記述する如き
パラジウム触媒で、これにネオメンチルジフェニルホスフィンなどの如き配位子
を含める)の存在下で反応させる。上記塩基の選択では、反応条件下でベータ水
素化物除去が生じないようにそれを選択すべきであり、かつ上記塩基は上記オレ
フィンにもブロモ前駆体にも評価できる度合で反応すべきでない。上記ブロモ前
駆体はエチレンに対して置換反応を起こして置換されたオ
レフィンが生じ、次にこの置換オレフィンにカルボキシル化を受けさせると(一
酸化炭素と本明細書に記述した如きパラジウム触媒を用いて)、相当する酸生成
物(水が溶媒系の一部または全部を形成している場合)または相当するエステル
(アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコールまたはイソアミルア
ルコールを溶媒の全部または一部として用いる場合)が生じる。
上記反応は下記の如く例示可能である:
イブプロフェン
フルルビプロフェン
ケトプロフェン
ナプロキセン
フェノプロフェン
上記反応では、エチレンの圧力を50から3000psi(好適には400か
ら1000psi)にすべきであり、温度を30℃から200℃(好適には60
℃から150℃)にする。温度と圧力をオレフィンの分解が最小限になるように
選択する。記述した如き配位子と一緒にパラジウム(+2)を塩(例えば酢酸塩また
は塩化物)の形態で用い、ここでは、ホスフィン配位子が好適である。
上記ブロモ前駆体はしばしば商業的に入手可能でありそして/または本分野の
技術者によって容易に調製可能である。例えばAldrich Chemica
l Companyはm−ブロモフェノールおよびm−ブロモアニソールを販売
している一方、Albemarle PPC(パリ、フランス)は6−メトキシ
−2−ブロモナフタレンを販売している。イブプロフェンのブロモ前駆体は、標
準的なフリーデル・クラフ
ツ触媒(例えば臭化亜鉛または臭化第二鉄)を用いたブロモ化で調製可能である
。ケトプロフェンのブロモ前駆体は、塩化アルミニウムを用いた安息香酸メチル
(または同様な低級炭化水素エステル)のブロモ化に続くNaOH加水分解、酸
クロライドへの変換(例えばSOCl2を用いて)そしてベンゼンとの反応(再
びフリーデル・クラフツ触媒、例えばAlCl3などを用いて)により、調製可
能である。
この上に記述したプロフェン化合物に加えて、本発明を用いて相当するブロモ
前駆体をエチレンと反応させて変換を行うことで調製可能な他のプロフェン化合
物には、プロチジニックアシッド(protizinic acid)、チアプ
ロフェニックアシッド(tiaprofenic acid)、インドプロフェ
ン(indoprofen)、ベノキサプロフェン(benoxaprofen
)、カルプロフェン(carprofen)、ピルプロフェン(pirprof
en)、プラノプロフェン(pranoprofen)、アルミノプロフェン(
alminoprofen)、スプロフェン(suprofen)およびロキソ
プロフェン(loxoprofen)が含まれる。
本発明の方法を例示する目的で下記の実施例を示し、これは本発明の制限とし
て意図するものでない。
実施例
NMDP=ネオメンチルジフェニルホスフィン
IBS=4−イソブチルスチレン
BIBB=4−ブロモイソブチルベンゼン
DIBE=1,1−ビス(4−イソブチルフェニル)エチレン
DIBS=4,4’−ジイソブチルスチルベン
実施例1
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy C、100mL)
にPd(OAc)2(11.0mg、0.0490ミリモル)とNMDP(0.
100g、0.308ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で
組み立ててフード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(12.5mL)
とEt3N(12.5mL)とBIBB(10.6g、49.7ミリモル)を加
えた。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig)した後、エチ
レンで満たした(280psig)。この混合物を120−125℃で2時間撹
拌した。一定分量をGC分析した結果、IBS(95.5面積%)でDIBE(
0.6%)でDIBS(4.0%)であることが示された。
実施例2
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy B、100mL)
にPd(OAc)2(11.0mg、0.0490ミリモル)とNMDP(0.
100g、0.308ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で
組み立ててフード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(12.5mL)
とEt3N(12.5mL)とBIBB(10.6g、49.7ミリモル)を加
えた。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig)した後、エチ
レンで満たした(320psig)。この混合物を100−105℃で2時間撹
拌した。一定分量をGC分析した結果、IBS(97.6面積%)でDIBE(
0.1%)でDIBS(2.4%)であることが示された。
実施例3
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy C、10
0mL)にPd(OAc)2(11.0mg、0.0490ミリモル)とNMD
P(0.100g、0.308ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボッ
クス内で組み立ててフード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(12.
5mL)とEt3N(12.5mL)とBIBB(10.6g、49.7ミリモ
ル)を加えた。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig)した
後、エチレンで満たした(330psig)。この混合物を80−85℃で4時
間撹拌した。一定分量をGC分析した結果、IBS(97.9面積%)でDIB
S(2.0%)であることが示された。
実施例4(比較)
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy B、100mL)
にPd(OAc)2(11.0mg、0.0490ミリモル)と(o−Tol)3
P(94.0mg、0.309ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボッ
クス内で組み立ててフード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(12.
5mL)とEt3N(12.5mL)とBIBB(10.6g、49.7ミリモ
ル)を加えた。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig)した
後、エチレンで満たした(330psig)。この混合物を80−85℃で8時
間撹拌した。一定分量をGC分析した結果、IBS(24.0面積%)でBIB
B(76.0%)でDIBS(痕跡量)であることが示された。
実施例5(比較)
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy B、100mL)
にPd(OAc)2(11.0mg、0.0490ミリモル)と(シクロヘキシ
ル)3P(87.0mg、0.310ミリモル)を仕
込んだ。この反応槽をドライボックス内で組み立ててフード内に設置した。シリ
ンジを用いてCH3CN(12.5mL)とEt3N(12.5mL)とBIBB
(10.6g、49.7ミリモル)を加えた。この反応槽をエチレンでパージ洗
浄(2x150psig)した後、エチレンで満たした(300psig)。こ
の混合物を80−85℃で8時間撹拌した。一定分量をGC分析した結果、反応
が起こらなかったことが示された。
実施例6(比較)
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy B、100mL)
にPd(OAc)2(11.0mg、0.0490ミリモル)とPh3P(81.
0mg、0.309ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で組
み立ててフード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(12.5mL)と
Et3N(12.5mL)とBIBB(10.6g、49.7ミリモル)を加え
た。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig)した後、エチレ
ンで満たした(320psig)。この混合物を80−85℃で撹拌してGCで
監視した。8時間で一定分量をGC分析した結果、IBS(14.4GC面積%
)でBIBB(84.6%)でDIBS(痕跡量)であることが示された。
実施例7
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy B、100mL)
にPd(OAc)2(5.0mg、0.022ミリモル)とNMDP(45mg
、0.14ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で組み立てて
フード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(14mL)とEt3N(14
mL)とBIBB(11.8g、5
5ミリモル)を加えた。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psi
g)した後、エチレンで満たした(280psig)。この混合物を100−1
05℃で4時間撹拌した。一定分量をGC分析した結果、IBS(97.8面積
%)で二量体(2.2%)であることが示された。
実施例8
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy C、100mL)
にPdCl2(9.0mg、0.0510ミリモル)とNMDP(0.100g
、0.308ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で組み立て
てフード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(12.5mL)とEt3N
(12.5mL)とBIBB(10.7g、50.2ミリモル)を加えた。この
反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig)した後、エチレンで満た
した(300psig)。この混合物を80−85℃で4時間撹拌した。一定分
量をGC分析した結果、IBS(98.2面積%)でDIBE(0.1%)でD
IBS(1.6%)であることが示された。
実施例9
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy C、100mL)
にPdCl2(9.0mg、0.0510ミリモル)とNMDP(0.100g
、0.308ミリモル)とCaO(1.5g、26.7ミリモル)を仕込んだ。
この反応槽をドライボックス内で組み立ててフード内に設置した。シリンジを用
いてDMF(30mL)とBIBB(10.6g、49.7ミリモル)を加えた
。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig)した後、エチレン
で満たした(36
0psig)。この混合物を80−85℃で6時間撹拌した。一定分量をGC分
析した結果、IBS(95.9面積%)でBIBB(2.0%)でDIBE(0
.1%)でDIBS(2.1%)であることが示された。
実施例10
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy C、100mL)
にPdCl2(9.0mg、0.0510ミリモル)とNMDP(0.100g
、0.308ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で組み立て
てフード内に設置した。シリンジを用いてDMF(20mL)とEt3N(7.
5mL)とBIBB(10.7g、50.2ミリモル)を加えた。この反応槽を
エチレンでパージ洗浄(2x150psig)した後、エチレンで満たした(3
00psig)。この混合物を80−85℃に加熱しそして反応槽をエチレンで
520psigに加圧した。この混合物をこの温度で2.5時間撹拌した。一定
分量をGC分析した結果、IBS(97.5面積%)でDIBE(0.1%)で
DIBS(2.5%)であることが示された。
実施例11
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy C、100mL)
にPdCl2(7.0mg、0.0395ミリモル)とNMDP(0.130g
、0.401ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で組み立て
てフード内に設置した。シリンジを用いてDMF(15mL)とEt3N(10
.2g)とBIBB(21.0g、98.5ミリモル)を加えた。この反応槽を
エチレンでパージ洗浄(2x150psig)した後、エチレンで満たした(3
00psig)。この混合物を120℃で1時間撹拌した。一定分量をGC分析
した結果、
IBS(92.0面積%)でBIBB(0.4%)でDIBE(0.7%)でD
IBS(6.9%)であることが示された。
実施例12
ドライボックス内でオートクレーブ(Hastelloy B、100mL)
にPd(OAc)2(11.0mg、0.0490ミリモル)とNMDP(0.
100g、0.308ミリモル)と2−ブロモ−6−メトキシナフタレン(11
.8g、49.8ミリモル)を仕込んだ。この反応槽をドライボックス内で組み
立ててフード内に設置した。シリンジを用いてCH3CN(20mL)とEt3N
(8mL)を加えた。この反応槽をエチレンでパージ洗浄(2x150psig
)した後、エチレンで満たした(320psig)。この混合物を80−85℃
で5時間撹拌した。GC分析した結果、2−メトキシ−6−ビニルナフタレンの
みであることが示された。この反応混合物を室温に冷却した後、エチレンの圧力
を解放した。この混合物を濾過した後、沈澱物をCH2Cl2(150mL)で洗
浄した。その濾液を一緒にしてHCl(1N、2x50mL)、H2O(50m
L)そして食塩水(50mL)で洗浄した。その有機層を乾燥(Na2SO4)さ
せた後、減圧下で濃縮を行うことにより、融点=92−93℃の白色固体(8.
76g、96%)を得た。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C07C 25/24 C07C 25/24
41/30 41/30
43/215 43/215
49/796 49/796
67/38 67/38
69/612 69/612
69/65 69/65
69/734 69/734 Z
69/738 69/738 Z
// C07B 61/00 300 C07B 61/00 300
C07D 213/79 C07D 213/79
215/00 215/00