【発明の詳細な説明】
多層、フッ素含有重合体材料
本発明は少なくとも一種のフッ素含有層と少なくとも一種の非フッ素含有層の少
なくとも二層からなり、ここでフッ素含有層は0.1から100μmの厚さであり、0.
1から0.76gフッ素/gフッ素含有層を含み、フッ素40μg/cm2から50μg/cm2で
被覆される重合体材料に関する。
この対象物上にフッ素含有層を形成するための種々の対象物のフッ素化はよく知
られている。この成形体及び膜のフッ素含有層は、多くの場合、揮発性物質の透
過に対して確実な遮断作用を有する。
例えば、合成樹脂タンク壁を通る燃料の透過防止のために、合成樹脂燃料タンク
がフッ素化される。
西独特許DE-C 36 40 975,DE-C 26 44 508,DE-C 35 23 137,DE-C 42 12 969,DE-A
36 40 975,DE-B 19 05 094,DE-C 24 01 948及び米国特許US2,811,468が重合体
成形体、膜及び他の対象物のフッ素化を記述している。
しかしこれまでに努力された方法は満足なものでなく、フッ素化層の更なる遮断
作用が望まれる。
西独-B 19 05 094はそのコンテナ壁がフッ素0.01から30μg/cm2壁のフッ素被覆
を有する燃料用貯蔵容器を記述する。
既に引用したUS2,811,468はそのフッ素含有量が非常に高いので実用的に大気ガ
スに対し不透過であるが、そのフッ素含有量が3.5重量%を超えないフッ素化ポ
リエチレン膜を記述する。
緒言で引用した文献の障壁作用は有機化学化合物に対してフッ素化対象物がさら
に望まれることを記述している。
現在の知識状況はこの層の透過性あるいは換言すれば比較的小さい分子に対する
その遮断作用を決定するフッ素によって得られた表面層の化学構造を決定するこ
とであると考えられる。しかし、他方では何れの方法によって遮断層の適当なあ
るいは最適な性質を得ることができるかということは、正確には予言可能でも計
画可能でもない。
本発明は、上述された欠点を除去し、特にフッ素含有重合体材料の比較的小さい
分子に対する透過性を低減することをその課題とする。
それによって緒言で定義した重合体材料が発見された。その上、本発明に適合す
る重合体材料の製造のための方法、透過障壁としての本発明に適合する重合体材
料の利用、膜、繊維、並びに成形体の製造のための本発明に適合する材料の利用
、及び本発明に適合する重合体材料からの膜、繊維並びに成形体が発見された。
層を形成して構成された本発明に適合するフッ素含有重合体材料は、本発明に適
合する方法による重合体のフッ素化で得られる。
これまでの有用な重合体は一般に、本発明に適合する条件下ではフッ素化剤と完
全に分解的に反応しなかった。本発明の意味で完全に分解しないということは、
重合体がフッ素化進行によって、例えば役に立たない断片への分解によって、分
解されないことを意味する。
有用な重合体は一般に、フッ素化過程の完全な又は部分的な炭素-フッ素結合に
よって置換できる炭素-水素結合を有する。
このような重合体の例として、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテ
ルケトン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィンのような全ての熱可塑性
で加工可能な合成樹脂が対象になる。
例えばプロピレンの単独重合体、プロピレンとC2 からC4 までのα-オレフィン
との共重合体、エチレンの単独重合体、エチレンとC3 からC8 までのα-オレフ
ィンとの共重合体又はα-β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体のようなポリ
オレフィンが特に有用である。特に0.890から0.968g/cm3の密度範囲のエチレン
重合体が、とりわけ0.940から0.962g/cm3までの密度範囲のHDPEが使用される。
このようなポリオレフィンはよく知られた重合方法で生産される。これは例えば
Ziegler,Phillips,又はメタロセン触媒系の使用下の低圧重合法及び一般にラジ
カルで開始される高圧重合である。
本発明の目的において有用なフッ素化剤は、発明に適合するフッ素化条件下で出
発重合体と完全に分解的に反応しない純物質又は混合物である。
純物質としては、元素のフッ素、例えばフッ化塩素、三フッ化塩素、フッ化臭素
のようなフッ化ハロゲン、例えば三フッ化窒素、フッ化酸化窒素(NOF)、フッ化
二酸化窒素のようなフッ化窒素、三フッ化砒素、五フッ化砒素、五フッ化アンチ
モン、四フッ化硫黄、四フッ化珪素、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラ
ート、テトラフルオロ硼酸、例えばXeF2又はXeF4のようなフッ化希ガス及びその
HFとの付加生成物が対象になる。
しかしまたフッ素ガス又は他のフッ素化剤の一種と、フッ素ガス又はフッ素化剤
に対してフッ素化条件下で不活性な希釈ガスの一種又は数種との混合物を使用す
る。希釈ガスとしては一般に軽い希ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン及び窒素
を使用する。不活性希釈ガスとしては窒素を使用することが好ましい。
好適なフッ素/不活性ガス混合物はガス混合物に関して0.1から99.5体積%まで
の量のフッ素ガス、好ましくは1から99%までを含む。希釈ガスは100%までの
補足量である。その量的関係は重要ではない。
出発物質として有用な重合体のフッ素化は多くのステップで実施される。この方
法は、その温度が一般に微結晶融点又は軟化点付近にある重合体に対してと同様
に既に冷却した重合体に対しても適用される。
本発明に適合する重合体材料の製造のための反応室において、フッ素化剤に対し
て広範囲に抵抗性があり、前述の作業範囲における圧力負荷に耐えることを除い
て、フッ素化技術の通常の必要条件以外の、特別の必要条件は設定されない。フ
ッ素化剤の発明に適合する使用の際、破壊的に作用することに対しては広範囲に
抵抗を示す。
フッ素化法の第一段階では、フッ素化すべき重合体の環境圧力P1は、フッ素化剤
なしで反応室内で0.001から0.5kPaまで、好ましくは0.01から0.1kPaまで、真空
ポンプによって減圧される。
これは一般に20から200℃、好ましくは20から80℃、の範囲の反応温度で起こる
。圧力P1は一般に1から60分間保持される。
これに続いて、第二ステップでは、反応室の圧力P2はフッ素化剤、好ましくは元
素フッ素又はフッ素含有ガスによって、0.1から300kPaまで、好ましくは1から3
00kPaまで加圧される。
ここで温度は一般に20から200℃、好ましくは20から80℃の範囲にあり、圧力P2
は一般に10から300分間保持される。フッ素含有ガスのフッ素濃度は0.1から99体
積%の範囲、好ましくは1から99体積%の範囲にある。この時、一般にフッ素化
室の圧力は0.01から1kPaまで減圧される。
その後、第三ステップでは、反応室内の圧力P3はフッ素化剤、好ましくは元素フ
ッ素又はフッ素含有ガスによって、0.1から300kPaまで、好ましくは10から300kP
aまで調節される。この際、温度は一般に20から200℃、好ましくは20から80℃の
範囲にあり、圧力条件P3は一般に5から300分間保持される。
フッ素含有ガスのフッ素濃度は0.1から99体積%の範囲、好ましくは1から99体
積%の範囲にある。一般に、その時フッ素化室内の圧力は0.01から1kPaまで減圧
される。
その後、第四ステップでは反応室内の圧力P4はフッ素化剤、好ましくは元素フッ
素又はフッ素含有ガスによって0.1から1000kPaまで、好ましくは10から800kPaま
で調節される。この際温度は一般に20から200℃まで、好ましくは20から80℃ま
での範囲にあり、圧力条件P4は一般に0.5から200時間、好ましくは0.5から100時
間、特に0.5から50時間保持される。フッ素含有ガスのフッ素濃度は0.1から100
体積%の範囲、好ましくは1から100体積%の範囲にある。
その後、反応室のフッ素化重合体材料は取り出される。
フッ素化重合体材料は一般に比較的薄いフッ素含有層及びより厚い基剤重合体の
層を含む。この両方の層はたいてい例えば溶媒による抽出、剥離等のような通常
の物理的分離法では互いに分離できない。
フッ素化層のフッ素被覆はフッ素40μg/cm2から50mg/cm2好ましくはフッ素50
μg/cm2から40mg/cm2の範囲にある;それはWickbold法で重合体の溶解及びフ
ッ化物のイオン検知電極による引き続く決定によって決定される(F.Ehrenberge
r,定量的有機元素分析、VCH Verlag(1991)649頁以下及び424頁以下(説明))。
フッ素化層の厚さは透過型電子顕微鏡法で決定され、0.01から100μmの範囲、
好ましくは0.1から100μmの範囲にある。
多層重合体材料のフッ素含有層を覆う化学結合したフッ素の量はESCA分光法で
決定され、0.1から0.76gフッ素/gフッ素含有層、好ましくは0.4から0.76gフッ
素/gフッ素含有層となる。
本発明に適合する重合体材料は特に中空体(体積0.3から301)におけるECE34、
付録5に依存するする透過法で決定される、小さい分子に対するその遮断作用に
よって際立っている。
この際、試験すべき容器は燃料で50%まで満たされて密封され、40℃の環境温度
で4週間前貯蔵され、空けられ、新たに50%満たされ、さらに8週間貯蔵される
。透過は満たした容器の重量損失で確認される。
小さい分子は一般に16から1000g/molまで、好ましくは25から500g/molまで及
び特に30から250g/molまでの範囲の分子量を有する。
この分子の化学的性質は一般に重要ではないが、本発明に適合する重合体材料の
遮断作用は例えば脂肪族及び芳香族炭化水素、アルコール類、エーテル類、ケト
ン類及びその同類のような有機分子に対して特に顕著になる。
5から100重量%、好ましくは10から100重量%の炭化水素成分を有する、炭化水
素含有混合物に対する遮断層としての発明に適合する重合体材料は特に好適に使
用される。
100%までの補足成分は一般に他の有機物質から、好ましくはアルコール類及び
エーテル類からなる。
炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、
ヘプタンオクタン及びその異性体のような脂肪族、好ましくは燃料製造のための
精製留分が考慮される。
さらに、芳香族としてはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンが挙げ
られ、好ましくは燃料の製造の際に生じる、芳香族類が挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノ
ール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert.-ブタノール、n-アミルアルコール、
i-アミルアルコールのようなC1 からC5 までのアルカノール類、好ましくはC1
からC4 までのアルコール類、特にメタノール及びエタノールが考慮される。
エーテルとしては、対称的又は非対称的C1 からC5 までのジアルキルエーテルが
問題になる。このようなエーテルは例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテ
ル、tert.-ブチルメチルエーテル、tert.-ブチルエチルエーテル及びtert.-アミ
ルメチルエーテルである。
ガソリン、軽油のような自動車の動力用の通常の燃料混合物及び暖房用灯油に対
する遮断層として発明に適合する重合体材料は全く好適である。
特にアルコール含有燃料の透過が非常に減少することが際立つ。
発明に適合する重合体材料は全ての種類の膜、繊維及び成形体の製造用に使用で
きる。
本発明に適合する重合体材料は、例えば袋、缶、タンク、コンテナのような貯蔵
容器の製造に対して好適に使用できる。特に、発明に適合する材料は、例えば乗
用車、オートバイ、バス及びトラックのような全ての種類の自動車に対する合成
樹脂燃料容器の製造のために使用でき、さらに暖房用灯油タンク及び工業用大型
コンテナに対しても好適である。
本発明に適合する重合体材料からの繊維、膜、及び成形体は、例えば押出成型の
ような当業者によく知られた方法によって製造することができる。
これに加えて、種々の方法が応用できる。フッ素化すべき重合体は例えば膜又は
中空体又は同類のような既に成型した状態の純材料として実際に提供でき、そこ
でフッ素化される(「オフライン」法)。他方、成型工程中のフッ素化すべき重合体
をフッ素化できる(「インライン」法)。
最初から成型された、多層重合体材料をフッ素化のために使用可能で、成型工程
中の多層膜又は成形体をフッ素化すること、又は多層複合体(ラミネート)の構
成要素として発明に適合する重合体材料を使用することも可能である。
実施例
減圧可能な反応室中にHDPE(LupolenR 4261A)の容量00mlのフラスコが表1及び
2に示した実験条件下でフッ素化され、そこではフッ素化剤の存在無しに第一ス
テップが行なわれた。
フラスコはHaltermann CEC-RF-08-A-85(MO)及びFAM-試験液DIN 51604-Bという
名の試験燃料に対する遮断作用についてECE 34,付録5相当のいわゆる透過性試
験を試験された。試験結果は表3及び4に編集された。LupolenR
4261Aの未処理フラスコとの比較試験が参考として実施された。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年3月14日
【補正内容】
請求の範囲
1 少なくとも一種のフッ素含有層及び少なくとも一種の非フッ素含有層の少な
くとも二層からなり、ここでフッ素含有層は0.01から100μmの厚さであり、0.1
から0.76gフッ素/gフッ素含有層を含み、448μgフッ素/cm2から50mgフッ素
/cm2で被覆される、フッ素化により入手可能な重合体材料。
2 非フッ素含有層がポリオレフィンを含むことを特徴とする、請求項1に記載
の少なくとも二層からなる重合体材料。
3 非フッ素含有層がエチレン重合体を含むことを特徴とする、請求項1又は2
に記載の少なくとも二層からなる重合体材料。
4 最初に重合体の周囲圧力を0.001から0.5kPaまでの圧力P1まで減圧し、つい
で第二ステップでフッ素含有ガスと共に1から300kPaまでの圧力P2で、ついで第
三ステップでフッ素含有ガスと共に10から300kPaまでの圧力P3で、最後に第四ス
テップで10から800kPaまでの圧力P4でフッ素化し、ここでP1はP2、P3、及びP4よ
り低く、フッ素化の際の温度が20と80℃の間にあることを特徴とする、請求項1
から3までに適合する、重合体のフッ素化による多層で、且つ少なくとも一種の
フッ素含有層を含む重合体材料の製造のための方法。
5 フッ素化の際の温度が25と45℃の間にあることを特徴とする、請求項4に記
載の方法。
6 小さい分子に対する透過を防止する遮断として、請求項1から3までに適合
する重合体材料の利用。
7 5から100重量%までの炭化水素成分を有する物質混合物に対する透過を防
止する遮断として、請求項1から3までに適合する、重合体材料の利用。
8 膜、繊維及び成形体の製造のための、請求項1から3までに適合する重合体
材料の利用。
9 貯蔵容器の製造のための、請求項1から3までに適合する、重合体材料の利
用。
10 燃料貯蔵容器の製造のための、請求項1から3までに適合する、重合体材
料の利用。
11 請求項1から3までに適合する重合体材料からの膜、繊維及び成形体。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),UA(AZ,BY,KG,KZ
,RU,TJ,TM),AU,BG,BR,CA,CN
,CZ,FI,HU,JP,KR,MX,NO,NZ,
PL,SG,SK,TR,UA,US,VN
(72)発明者 カレル,ルタル
スロベニア国、61234、メンゲス、トゥル
ツィン、ムラカリェファ、29