JPH1143741A - 靱性及び疲労特性に優れたばね用鋼材 - Google Patents

靱性及び疲労特性に優れたばね用鋼材

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JPH1143741A
JPH1143741A JP19753597A JP19753597A JPH1143741A JP H1143741 A JPH1143741 A JP H1143741A JP 19753597 A JP19753597 A JP 19753597A JP 19753597 A JP19753597 A JP 19753597A JP H1143741 A JPH1143741 A JP H1143741A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 S含有量を無理に低減しなくともSの有する
悪影響を抑止でき、靱性及び疲労特性の両方に優れたば
ね用鋼材を提供する。 【解決手段】 Cを0.65%以下含有し、Sを0.0
20%以下含有するばね用鋼材であって、Cu硫化物を
Cu換算で0.005%以上含有することを特徴とす
る。また[Cu硫化物(Cu換算量)]/[Mn硫化物
(Mn換算量)]の値を0.20以上に制御しても優れ
た靱性及び疲労特性を得ることができる。靱性及び疲労
特性の向上に有効なCu硫化物を生成する上で、Mn含
有量を0.30%以下、Cuを0.20%以上含有する
ことが望ましく、高強度を得る上で、Cを0.35%以
上含有させ、Siを1.0%以上含有させることが望ま
しい。更にTiを0.015%以上含有させることによ
り靱性及び疲労特性を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は靱性及び疲労特性に
優れたばね用鋼材(圧延線・棒材)に関し、詳細には自
動車等における内燃機関の弁ばねや、懸架ばね,スタビ
ライザー,トーションバー等に加工した際に高い靱性と
優れた疲労特性を発揮する高強度ばね用鋼材に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、ばねに対する要求特性は一段と厳
しくなってきており、例えば自動車用等に用いられるば
ねにおいては、ばねの許容荷重の増加,軽量化,小型化
などの観点から、ばね用鋼材の高強度化が求められてい
る。
【0003】但し、一般的に鋼材の高強度化は靱性の劣
化を招くものであり、ばねの靱性が低下すると、衝撃的
な荷重が負荷されたときに破壊しやすくなり、また疵や
腐食ピット等の欠陥が生じたときに容易に破壊してしま
うため、部材の信頼性が確保できない。この靱性の低下
は、高強度化により粒界強度が相対的に弱くなること、
欠陥感受性が増すこと、亀裂進展抵抗が低くなることな
どに起因すると言われており、特に腐食環境下において
は、鋼中の旧オーステナイト粒界を水素が拡散移動する
ことによって粒界の結合エネルギーが弱まり、脆性破壊
が生じるものであり、水素脆性として知られている。本
発明者らは、ばね用鋼においてTiやNb等の炭窒化物
よりなる微細な析出物を分散させると、水素をトラップ
して水素脆化を抑制できることを見出し、先に出願した
(特願平8−284315号)。上記ばね用鋼は、高い
耐水素脆性と優れた疲労特性を有するものであるが、上
記炭窒化物形成元素は、一般に高価なものが多く鋼材コ
ストの上昇を招くと共に、上記炭窒化物が粗大になると
疲労破壊の起点となるので、鋳造条件及び圧延条件には
十分な注意を払って、上記炭窒化物のサイズを微細なま
ま維持することが必要である。
【0004】また、ばねの靱性や疲労特性に悪影響を及
ぼす元素としてSが知られており、S含有量が多いと以
下の〜の作用によりばねの靱性や疲労特性が劣化す
ることから、S量を極力低減することが一般的に行われ
ている。即ち、 鋼中に固溶されているSは、粒界に偏析し易く、粒
界の靱性を低下させる作用を有する。 SがMnと結合すると粗大なMn硫化物となり易
く、この粗大なMn硫化物が応力集中源となって靱性や
疲労特性を劣化させる。 尚、TiやNb等の炭窒化物形成元素を含有するば
ね用鋼では、前述の通り、微細なTi系炭窒化物が脆化
元素である水素をトラップすることにより靱性は向上す
るものであるが、Sが存在すると炭窒化物形成元素は硫
化物を作ってしまい、水素の捕捉に有効な炭窒化物の生
成量が少なくなり、十分な靱性・疲労特性向上効果が得
られない。
【0005】S量を低減するには、予備処理炉として転
炉形式の炉を用いる方法や、溶銑鍋を用いる方法、或い
は混銑車を用いる方法等がある。現在主流となっている
のは、最も安価で且つ高い脱燐反応効率が得られる転炉
形式の炉を使用する方法であり、焼石灰や酸化鉄を主成
分とする脱燐材を溶銑に吹き込みながら酸素ガスを上吹
きする方法が汎用されている。しかしながら、Sを通常
の製鋼プロセスで低減するには限界があり、それ以上に
低減したいときには特殊な工程を導入せざるを得なかっ
た。
【0006】また応力集中源となる粗大なMn硫化物を
低減するという観点からMn量を低減することも提案さ
れているが、Mn含有量を抑えると焼入れ性が低下し、
不完全焼入れ組織が生成することにより、疲労寿命など
に悪影響を及ぼす場合があり、しかもMn硫化物の生成
量が少なくなる分、固溶S量は増加することになるので
前記やによる悪影響がむしろ大きくなってしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであって、S含有量を無理に低減し
なくともSの有する上記〜の悪影響を抑止でき、靱
性及び疲労特性の両方に優れたばね用鋼材を提供しよう
とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明のばね用鋼材とは、Cを0.65%以下含有し、Sを
0.020%以下含有するばね用鋼材であって、Cu硫
化物をCu換算で0.005%以上含有するものである
ことを要旨とするものである。
【0009】また、Cを0.65%以下含有し、Sを
0.020%以下含有するばね用鋼材において、[Cu
硫化物(Cu換算量)]/[Mn硫化物(Mn換算
量)]の値を0.20以上に制御しても優れた靱性及び
疲労特性を得ることができ、更に、Cu硫化物をCu換
算で0.005%以上含有させれば、より一層優れた靱
性及び疲労特性を得ることができる。
【0010】靱性及び疲労特性の向上に有効なCu硫化
物を生成する上で、Mn含有量を0.30%以下、Cu
を0.20%以上含有することが望ましく、高強度を得
る上で、Cを0.35%以上含有させ、Siを1.0%
以上含有させることが望ましい。更にTiを0.015
%以上含有させることにより靱性及び疲労特性を向上さ
せることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、Sを無理に低減し
なくとも上記〜による悪影響を抑止して、疲労強度
と靱性の両方に優れたばね用鋼材を開発すべく鋭意研究
を重ねた。その結果、Sをある程度含有していても、C
u硫化物として存在させれば、Sが有する前記〜の
悪影響の発現を抑止できることを見出し、本発明に想到
した。具体的には、Sを0.020%以下含有するばね
用鋼材において、Cu硫化物をCu換算で0.005%
以上含有させるか、或いは[Cu硫化物(Cu換算
量)]/[Mn硫化物(Mn換算量)](以下、硫化物
形成Cu/Mn比ということがある)の値を0.20以
上に制御すれば良いが、両方の条件を満足すれば、より
優れた靱性及び疲労特性を得ることができる。尚、Sが
有する前記〜の悪影響を抑制する上で、Cu硫化物
の含有率(Cu換算)で0.010%以上が好ましく、
0.015%以上であるとより好ましい。また、[Cu
硫化物(Cu換算量)]/[Mn硫化物(Mn換算
量)]の値は、0.5以上であると好ましく、1.0以
上であると腐食疲労特性がより一層向上するので好まし
い。
【0012】この様に、Sをある程度含有していても、
Cu硫化物として存在させれば、Sが有する前記〜
の悪影響を抑制できる理由としては、以下の様に説明で
きる。
【0013】MnS等のMn硫化物は、数μmから数百
μm以上の大きさに成長し易く、かつ圧延により延伸さ
れると一層長くなって粗大化し、応力集中源となって靱
性及び疲労特性に悪影響を及ぼすものである。これに対
して、CuS等のCu硫化物の大きさ(直径)は通常1
μm前後以下であり、且つ圧延時に延伸する割合も小さ
いので圧延後も微細粒子として存在するため応力集中源
となりにくく、靱性及び疲労特性に与える悪影響は極め
て少ない。従って、Mn硫化物の生成を抑制してCu硫
化物の生成を促進することによって、応力集中源の形成
を抑制すると共に、固溶Sを少なくすることができるの
で、粒界強度の劣化を招くこともなく、靱性及び疲労特
性を向上させることができるものと考えられる。
【0014】またCuS等のCu硫化物は、上述のTi
等の炭窒化物と同様に鋼中の水素を捕捉して靱性を高め
る作用も有している。更にTi等の炭窒化物形成元素を
含有するばね用鋼においては上記作用に加えて、Cu硫
化物を生成させることでTi等の炭窒化物形成元素が硫
化物を形成する傾向を下げ、Ti等の炭窒化物を十分析
出させることにより靱性及び疲労特性を高くすることが
できる。
【0015】本発明のばね用鋼では、Sを製鋼プロセス
で極度に低減する必要はなく、0.020%以下の範囲
であればその存在を許容するものであり、例えば0.0
1%以上含有させることができる。但し、S含有量が多
過ぎると、固溶Sが増大するとともにMn硫化物の生成
傾向も高まるために靱性が劣化するので、Sは0.02
0%以下に制限することが必要である。
【0016】尚、ばね用鋼において、CやSiは降伏応
力を高くしてばねとしての要求特性を確保することに関
わっている。Cは多過ぎるとマトリクス組織の靱性が低
下して硫化物制御の効果が小さくなるので、0.65%
を上限とすることが必要である。但し、Cが少な過ぎる
と降伏応力が低くなり、へたりなどの弊害が生じるの
で、0.35%以上含有させることが望ましい。またS
iが少な過ぎても、降伏応力が低くなり、へたり等の弊
害が生じるので、1.0%以上含有させることが望まし
い。但し、多過ぎても焼入れ加熱時に炭化物の溶け込み
が不十分となり、均一にオーステナイト化させるのによ
り高温の加熱が必要となって表面の脱炭が進み、ばねの
疲労特性が悪くなるので、上限は3.0%とすることが
望ましい。
【0017】Mn及びCuの含有量を制御することは、
Cu硫化物の生成割合を高める上で非常に有効である。
Mnが0.30%を超えると、MnとSの溶解度積が高
くなるために有害なMn硫化物の生成傾向が高まる。一
方、Cuが0.20%未満ではCuとSの溶解度積が低
く、Cu硫化物を十分に生成させるのが困難となってく
るため、Mn硫化物や固溶Sの生成傾向が増す。従っ
て、Mnは0.30%以下とし、且つCuを0.20%
以上とすることが推奨される。また、そもそもCuは電
気化学的に鉄より貴な元素であり、耐食性を高める作用
が有するが、1.0%を超えてもそれ以上の耐食性向上
効果は期待できず、むしろ熱間圧延による素材の脆化を
引き起こす恐れが生じてくるので1.0%を上限とする
ことが好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0018】尚、S,Mn,Cu量が上記の範囲内であ
っても、鋳造条件や熱処理条件によってはMn硫化物が
多量に生成してしまい、[Cu硫化物(Cu換算量)]
/[Mn硫化物(Mn換算量)](以下、硫化物形成C
u/Mn比ということがある)が0.20%未満になる
ことがある。Mn硫化物は1200〜1400℃の高温
で生成しやすいので、鋳造時などにこの温度域に長時間
滞留することを避け速やかに冷却することが、硫化物形
成Cu/Mn比を0.20%以上に制御する上で有効で
ある。
【0019】硫化物形成Cu/Mn比は、一旦0.20
%以上に制御しておけば、通常のばね製造工程(引抜加
工後熱間巻き又はオイルテンパー線からの冷間巻きな
ど)において上記硫化物形成Cu/Mn比が変動するこ
とはないので、最終ばね製品において良好な性能が確保
できる。
【0020】硫化物形成Cu/Mn比の測定方法は抽出
残滓法を用いるのが良い。この際、化合物型Mn(また
はCu)として認識されるものの全てが硫化物型Mn
(またはCu)であると仮定して計算しても大きな誤差
にはならないので、硫化物であることを細かく同定する
作業を省くことが可能である。
【0021】また硫化物形成Cu/Mn比が、ばね製造
工程で変動してしまうことはないのでその測定は圧延線
・棒鋼材、オイルテンパー線、ばね製品そのもの等いず
れの段階において行っても差し支えない。
【0022】前述の通りTiは、その炭窒化物が鋼中の
水素をトラップすることによりばね用鋼の靱性及び疲労
特性を高めるので添加することが望ましい。このTiの
添加効果は、Mn硫化物の生成量が少なくCu硫化物が
比較的多く生成されている条件下で、顕著に発揮され
る。但し、Ti添加量が少な過ぎると、Tiの炭窒化物
生成量が不十分となり大きな特性向上効果は得られない
ので、Tiは0.015%以上含有させることが好まし
い。
【0023】本発明のばね用鋼材は、その他の含有元素
により制限を受けるものではないが、ばね鋼としての一
般的な要求特性を確保し、或いはその性能を高める意味
から、以下の元素を含有させても良い。
【0024】Nb,Zr,Ta,Hfはいずれも炭窒化
物形成元素であり、ばね鋼中の結晶粒内および粒界に微
細な炭窒化物を析出し、水素脆化の原因となる拡散性水
素をトラップして耐水素脆化特性を高める上で、Tiと
同様の作用を有する。しかも生成する炭窒化物によって
結晶粒の微細化を増進し、靱性を高めてばねの耐へたり
性を高める作用も発揮するので、Tiに加えて、或いは
Tiに替えて添加しても良い。これらの効果を有効に発
揮させるには、0.001%以上、より好ましくは0.
005%以上を含有することが望ましい。但し、多過ぎ
ると、炭窒化物が粗大化すると共にそれらの個数も増大
し、疲労特性への悪影響が顕著に現われてくるので、夫
々0.5%以下、より好ましくは0.2%以下に抑える
べきである。
【0025】Moは、上記Nb等と同様、炭窒化物を生
成して耐水素脆性および疲労特性を高める他、粒界強度
を高めることによっても耐水素脆性や疲労特性の向上に
寄与し、更にはMoの存在によって腐食溶解時に生成す
るモリブデートイオンの吸着作用により耐食性を高める
という作用も発揮する。そしてこのMoは、鋼中への固
溶度が高くかつ炭化物が粗大化し難い等の理由から前記
Nb等の元素よりもやや多めに加えることが望ましく、
好ましくは0.05%程度以上、より好ましくは0.1
%以上含有させるのがよい。但しMo量が多くなり過ぎ
ると、こうした作用効果が飽和するばかりでなく、やは
り炭窒化物の粗大化や個数の増大を招くので、3.0%
以下、好ましくは2.0%以下に抑えるべきである。
【0026】また炭窒化物形成元素として、Vを0.0
05%程度以上、より好ましくは0.01以上含有させ
ることも有効である。即ち、適量のVは炭窒化物よりな
る微細析出物を形成して耐水素脆性および疲労特性を一
段と高める作用を発揮するばかりでなく、結晶粒微細化
効果を発揮して靱性や耐力を高め、更には耐食性や耐へ
たり性の向上にも寄与する。しかし多過ぎると、焼き入
れ加熱時にオーステナイト中に固溶されない炭化物量が
増大して満足な強度と硬さが得られにくくなるので、
1.0%以下、より好ましくは0.5%以下に抑えるべ
きである。
【0027】Crは、腐食条件下で表層部に生成する錆
を非晶質で緻密なものとし、耐食性の向上に寄与する
他、Mnと同様に焼入れ性向上にも有効に作用する。こ
うした効果は0.05%以上5.0%以下の添加で有効
に発揮されるが、5.0%を超えて過度に添加すると、
焼入れ時に炭化物の溶け込みが起こりにくくなって強度
や硬さに悪影響を及ぼす様になる。Crのより好ましい
含有量は0.1〜2.0%の範囲である。
【0028】Niは、焼入れ焼戻し後の素材の靱性を高
めると共に、生成する錆を非晶質で緻密なものとして耐
食性を高める作用があり、更にばね特性として重要なへ
たり特性を改善する作用も有している。こうした作用は
0.05%以上3.0%以下の添加で有効に発揮される
が、好ましくは0.1%以上とするのがよい。しかし、
3.0%を超えて含有させると焼入れ性が過度に増大
し、圧延後に過冷却組織が出やすくなる。Niのより好
ましい範囲は0.1〜1.0%の範囲である。
【0029】Al,B,Co,Wは、いずれも靱性を高
めて耐へたり性の向上に寄与する元素であり、またAl
は結晶粒度を微細化して耐力比を向上させ、Bは焼入性
の向上により粒界強度を高める作用を有し、CoとWは
焼入れ焼戻し後の強度と硬さを高める他、Bは表面に生
成する錆を緻密化して耐食性を高め、Wは腐食溶解時に
タングステン酸イオンを形成して耐食性の向上に寄与す
る。これら元素の作用は、Al:0.005%程度以
上、B:1ppm程度以上、Co:0.01%程度以
上、W:0.01%程度以上の添加で有効に発揮される
が、Alが1.0%を超えると酸化物系析出物の生成量
が増大すると共にそのサイズも粗大化して疲労特性に悪
影響を及ぼし、BおよびCoの上記添加効果は約50p
pmおよび5.0%で飽和するので、それ以上の添加は
経済的に無駄であり、またW量が1.0%を超えると素
材靱性に悪影響を及ぼす様になる。これらの観点から上
記元素のより好ましい含有量は、Al:0.01〜0.
5%、B:5〜30ppm、Co:0.5〜3.0%、
W:0.1〜0.5%の範囲である。
【0030】Caや、La,Ce等の希土類元素はいず
れも耐食性の向上に寄与する元素であり、またCaは更
に強脱酸元素としての作用を発揮して鋼中の酸化物系析
出物を微細化して靱性の向上にも寄与する。こうした効
果は、Caで0.1ppm以上、LaやCe等の希土類
元素では夫々0.001%以上、より確実には0.00
5%以上含有させることによって有効に発揮される。但
し、Ca量が200ppm以上になると製鋼時における
炉壁耐火物の損傷が著しくなり、またLaやCe等の希
土類元素の効果は夫々約0.1%で飽和するため、それ
以上の添加は経済的に無駄である。
【0031】Nは、TiやNb等と炭窒化物を形成し、
拡散性水素トラップとなると共に、結晶粒微細化効果を
有効に発揮させるので、1ppm以上含有することが好
ましく、10ppm以上であればより好ましい。但し、
多過ぎると、炭窒化物のサイズや個数が増大し、疲労特
性に悪影響を与えるので、200ppm以下が好まし
く、100ppm以下であればより好ましい。
【0032】また、鋼中に不可避的に混入してくる不純
物であるPは、粒界に偏析して粒界強度を低下させ粒界
破壊の原因となるので、0.02%程度以下に抑えるこ
とが望ましい。また、鋼材中に混入することのある他の
不純物であるZn,Sn,As,Sbについては、やは
り粒界偏析を起こして粒界強度を高め水素脆性を助長す
る傾向があるので、何れも60ppm程度以下に抑える
ことが望ましい。
【0033】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の主旨に適合し得る範囲で適宜変更
を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいず
れも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0034】
【実施例】表1に化学成分を示すNo.1〜11の鋼材
を溶製した後、造塊法または連続鋳造法によって鋳造し
た。連続鋳造は、ブルーム連鋳(鋳片の断面430×3
00mm)またはビレット連鋳(鋳片の断面155×1
55mm)の2通りで行い、造塊法によるインゴット及
びブルーム連鋳材は、分塊圧延によって上記ビレットの
サイズに加工した。得られたビレットを熱間圧延によっ
て直径14mmの線材に加工した。この線材を直径1
2.5mmまで引抜加工してから焼入れ焼戻しを行い、
回転曲げ疲労試験片を作製した。焼戻しは350〜45
0℃で1時間行い試験片の硬さがHRCで53〜55と
なる様に調整した。破壊靱性試験片は上記ビレットから
別途切り出した板材を用いて粗加工を施した後、上記と
同様の調質処理を施し、さらに仕上げ加工を行うことに
よりCT試験片を作製した。上記試験片に長さ約3mm
の疲労予亀裂を導入して10tオートグラフ引張試験機
を用い、大気中・室温で破壊靱性値を測定した。回転曲
げ疲労試験は平滑試験片を用い、大気中・室温で行い、
回転曲げ107 回における大気疲労限(MPa)を測定
した。腐食疲労試験は回転曲げ試験片に5%NaClを
滴下する装置を用いて35℃のもと60rpmで行い、
腐食疲労寿命を測定した。硫化物形成Cu/Mn比は抽
出残滓法で測定した。これらの測定結果は表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】No.1〜6はいずれも本発明の成分条件
を満足する本発明例であり、No.1〜5はCu硫化物
の含有率(Cu換算)が0.005%以上であり、N
o.2〜6は硫化物形成Cu/Mn比が0.20以上で
ある。いずれも破壊靱性値が高く、大気疲労限及び腐食
疲労寿命で評価される疲労特性に優れているが、両方の
条件を満足するNo.2〜5は特に靱性及び疲労特性が
優れている。またNo.3,4はTiを含むものであ
り、腐食疲労特性が一段と優れている。
【0038】これに対して、No.7〜11は成分範囲
またはCu硫化物の生成比率(Cu換算によるCu硫化
物の含有率,硫化物形成Cu/Mn比)が本発明に係る
条件を満足していない比較鋼である。No.7はMnが
高いことや鋳造条件などに起因してCu硫化物の生成量
が極端に少ない比較鋼、No.8はSが多過ぎる場合の
比較鋼、No.9はC量が0.65%を超えている場合
の比較鋼、No.10,11は化学成分的には本発明範
囲内でありMnも低めであるが、造塊法により鋳造する
ことにより鋳片の冷却速度を低くしてMn硫化物を生成
させCu硫化物の生成量を抑制した比較鋼である。いず
れも硬さは本発明鋼と同レベルであり、同程度の強度を
有するが、破壊靱性及び腐食疲労特性が本発明鋼より顕
著に劣っている。更にNo.7,8,11は、大気疲労
限も本発明鋼より劣っているが、これは応力集中源であ
る粗大なMn硫化物が増加したためと考えられる。
【0039】尚、No.3とNo.7は、成分組成は同
程度であるが、硫化物形成Cu/Mn比及びCu硫化物
の含有率(Cu換算)が大幅に異なっている。これは、
鋳造方法による違いであり、No.3では、ビレット連
鋳を行い、No.7は造塊法により鋳造を行った。N
o.3は、Mn含有量が0.3%を超えるなど成分的に
はMn硫化物を生じ易いものであるが、ビレット連鋳を
採用することにより鋳造速度を高めることでMn硫化物
の生成量を抑え、Cu硫化物の生成を多くしたものであ
り、靱性及び疲労特性のいずれも優れている。一方N
o.7は、造塊法により鋳造したので鋳片の冷却速度が
低く、Mn硫化物が増加した結果、Cu硫化物はほとん
ど形成されていないので靱性及び疲労特性のいずれも乏
しい。
【0040】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、S含有量を無理に低減しなくともSが有する前記
〜の悪影響を抑止でき、靱性及び疲労特性の両方に優
れた高強度ばね用鋼材を提供することができることとな
った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 茨木 信彦 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cを0.65%(質量%の意味、以下同
    じ)以下含有し、Sを0.020%以下含有するばね用
    鋼材であって、 Cu硫化物をCu換算で0.005%以上含有するもの
    であることを特徴とする靱性及び疲労特性に優れたばね
    用鋼材。
  2. 【請求項2】 Cを0.65%以下含有し、Sを0.0
    20%以下含有するばね用鋼材であって、 [Cu硫化物(Cu換算量)]/[Mn硫化物(Mn換
    算量)] の値が0.20以上であることを特徴とする靱性及び疲
    労特性に優れたばね用鋼材。
  3. 【請求項3】 [Cu硫化物(Cu換算量)]/[Mn硫
    化物(Mn換算量)]の値が0.20以上である請求項1
    に記載のばね用鋼材。
  4. 【請求項4】 Mn含有量を0.30%以下にすると共
    に、Cuを0.20%以上含有する請求項1〜3のいず
    れかに記載のばね用鋼材。
  5. 【請求項5】 Cを0.35%以上含有し、Siを1.
    0%以上含有する請求項1〜4のいずれかに記載のばね
    用鋼材。
  6. 【請求項6】 Tiを0.015%以上含有する請求項
    1〜5のいずれかに記載のばね用鋼材。
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