JPH1142560A - 鋳鋼製クランク軸の疲労強度増強加工方法並びにその装置 - Google Patents

鋳鋼製クランク軸の疲労強度増強加工方法並びにその装置

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JPH1142560A
JPH1142560A JP20347397A JP20347397A JPH1142560A JP H1142560 A JPH1142560 A JP H1142560A JP 20347397 A JP20347397 A JP 20347397A JP 20347397 A JP20347397 A JP 20347397A JP H1142560 A JPH1142560 A JP H1142560A
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crankshaft
roll
cast steel
work
fatigue strength
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JP20347397A
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猛 ▲濱▼田
Takeshi Hamada
Toshiyuki Ochi
敏行 落
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳鋼母材の疲労強度を同じ強度レベルの鍛鋼
や圧延材と同等に向上させるて、強度信頼性が高く、か
つ、品質が安定した鋳鋼製クランク軸を提供する。又、
熱間ロール加工作業の効率化を図って、生産性の向上に
より低コストの鋳鋼製クランク軸を提供する。 【解決手段】 鋳鋼製クランク軸Cをワークロール7と
バックアップロール5とで加圧挟持し、該挟持中心軸の
回りに回転させ、さらに、ワークロール7に近接して設
けた高周波誘導加熱装置10等の加熱装置によりクラン
ク軸CのフィレットF部を連続的に加熱しながらワーク
ロール7によりフィレットF部を連続的に熱間ロール加
工する第1工程と、この第1工程を経たクランク軸Cを
該加工前の鋳鋼材と同強度レベルになるように調質のた
めの熱処理を行なう第2工程とによって、鋳鋼製クラン
ク軸の疲労強度増強加工方法が構成される。また、この
方法に対して疲労強度向上のために冷間ロール加工を行
う第3工程が追加される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋳鋼製クランク軸
の疲労強度を増強するための加工方法並びに該加工方法
の実施に好適に用いられる熱間ロール加工装置に関し、
更に詳細には、鋳鋼製クランク軸をそのフィレット部に
おける疲労強度の向上を図るために主として熱間ロール
加工により加工処理を行なわせる鋳鋼製クランク軸の疲
労強度増強加工方法並びにその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】応力集中部である軸フィレット部を冷間
ロール加工することによって疲労強度が向上することは
周知の技術であるが、エンジン内燃機関部品であるクラ
ンク軸に関してその高応力発生部であるピン・フィレッ
ト部(クランクピンとクランクウエッブのコーナー部)
及びジャーナル軸フィレット部(ジャーナル軸とクラン
クウエッブのコーナー部)に冷間ロール加工を適用し、
クランク軸最弱部であるフィレット部の疲労強度を向上
させる方法や装置に関する研究開発は数多く成されてお
り、また、発明・考案の提案も多く行なわれている。
【0003】しかしながら鋳鋼製クランク軸の場合、ミ
クロ・シユリンケージと呼ばれる直径φ500μm程度
の鋳造欠陥があるとこれが疲労破壊の起点となり、クラ
ンク軸の設計安全率は十分に達成しているとしても該ク
ランク軸の疲労強度を低下させ、疲労強度バラツキの原
因となっている場合がある。このことは図5に×印でプ
ロット示される通りである。
【0004】クランク軸フィレット部をロール加工する
従来の冷間ロール加工装置としては、本出願人によって
特願平7−113216号で提案されたもの等の先行技
術があり、このような冷間ロール加工装置によって加工
されたクランク軸においては、その最弱部であるフィレ
ット部の表面粗さ性状は、図6に示すように加圧力を常
温ヘルツ面圧換算で増加させることによって大きく改善
することができるようになっている。しかし、表面及び
表面近傍に存在する鋳造欠陥を圧着し得るところまでに
は至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、クランク軸
についてはフィレットのコーナーR中心付近の表面部に
は応力集中による高応力が発生し、その内部(ピン及び
ジャーナル軸中心)に向けて図7に示すような応力勾配
が存在している。このような高応力発生部の表面及び表
面近傍に、疲労強度を低下させる要因である鋳造欠陥が
存在したとすれば、母材の疲労強度は低下し、また、鋳
造欠陥の存在形態によって疲労強度にバラツキが存在す
ることは広く知られるところである。
【0006】最悪の場合、鋳造欠陥の存在によって母材
の疲労強度は顕著に低下し、表面及び表面近傍に発生す
る高応力に対する母材の耐疲労強度が下回った場合には
疲労損傷に至る。殊に、変動荷重の下での使用が余儀な
くされるクランク軸では、品質が安定し、かつ、強度に
対する信頼性の高いものが要求され、これらの顧客要求
を満足させるためにも、鋳鋼製クランク軸における鋳造
欠陥を積極的に圧着することができる加工技術を提供す
ることは、製作者側における重要課題であるといわれて
いる。
【0007】そこで本発明は、鋳鋼製クランク軸の最弱
部であるフィレット部の表面及び表面近傍の個所に対し
て、冷間ロール加工技術と熱間圧延による欠陥圧着技術
を結合した上で応用し得るに至った新規な技術である熱
間ロール加工を実施して、当該個所に存在する鋳造欠陥
を効果的に圧着することで、鋳鋼母材の疲労強度を同じ
強度レベル(引張り強さ)の鍛鋼や圧延材と同等に向上
させる(図5参照)ようにすることによって、強度信頼
性が高く、かつ、品質が安定した鋳鋼製クランク軸を提
供することを目的とするものである。更に本発明は、熱
間ロール加工作業の効率化を図って、生産性の向上によ
り低コストの鋳鋼製クランク軸を提供し得る経済的効果
を果たさせることもまた目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するため以下に述べる構成としたものである。即
ち、本発明のうち請求項1の発明は、鋳鋼製クランク軸
をワークロールとバックアップロールとで加圧挟持する
とともに、該挟持中心軸の回りに回転させ、さらに、ワ
ークロールに近接して設けた加熱装置により前記クラン
ク軸のフィレット部を連続的に加熱しながらワークロー
ルにより前記フィレット部を連続的に熱間ロール加工す
る第1工程と、この第1工程で熱間ロール加工した前記
クランク軸を該加工前の鋳鋼材と同強度レベルになるよ
うに調質のための熱処理を行なう第2工程とを含むこと
を特徴とする鋳鋼製クランク軸の疲労強度増強加工方法
である。
【0009】また、本発明のうち請求項2の発明は、請
求項1記載の疲労強度増強加工方法において、クランク
軸のフィレット部を連続的に加熱するための前記加熱装
置が高周波誘導加熱装置であることを特徴とする。
【0010】また、本発明のうち請求項3の発明は、請
求項1又は2に記載の疲労強度増強加工方法において、
前記第2工程で熱処理した鋳鋼製クランク軸のフィレッ
ト部をさらに疲労強度向上のために冷間ロール加工する
第3工程を追加して含む構成としたことを特徴とする。
【0011】また、本発明のうち請求項4の発明は、請
求項1、2又は3に記載の疲労強度増強加工方法が、引
張強度が40〜70kg/mm2の鋳鋼材からなる鋳鋼製クラ
ンク軸の疲労強度増強加工を行なうものであることを特
徴とする。
【0012】また、本発明のうち請求項5の発明は、請
求項1乃至3の疲労強度増強加工方法の実施に好適に用
いられるクランク軸加工用熱間ロール加工装置であり、
鋳鋼製クランク軸をワークロールとバックアップロール
とで加圧挟持するクランク軸保持手段と、このクランク
軸保持手段が加圧挟持した前記クランク軸を該挟持中心
軸の回りに回転させる回転駆動手段と、前記ワークロー
ルの前縁に近接して設けられ、前記クランク軸保持手段
が加圧挟持した前記クランク軸のフィレット部を連続的
に加熱する高周波誘導加熱装置とを含み、ワークロール
が前記フィレット部に対するロール接触角度θ、すなわ
ちワークロールの回転軸に直交差する面と前記挟持中心
軸に直交差する面との交差角度が35°≦θ≦60°に
設定され、ワークロールの外周弧面部の半径r1 と前記
フィレット部の半径r2 との比R=r1 /r2 が0.6
≦R≦0.95に設定されてなることを特徴とする。
【0013】また、本発明のうち請求項6の発明は、請
求項5記載のクランク軸加工用熱間ロール加工装置にお
いて、ワークロールとバックアップロールとによる加圧
力が常温ヘルツ面圧換算で400kg/mm2以上であり、高
周波誘導加熱装置が前記クランク軸の表面温度を100
0℃以上に加熱保持し得る加熱能力を有するものである
ことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の例に
ついて添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発
明の実施の形態の例である熱間ロール加工装置の概要構
成を示し、 (a)図は正面図、 (b)図は (a)図のA−A線
矢視側面図、 (c)図は要部構成を示す断面図、図2は、
図1図示熱間ロール加工装置の要部構成を示し、 (a)図
はクランク軸保持手段の正面図、 (b)図は (a)図におけ
る要部拡大図、 (c)図はフィレット部の拡大断面図であ
る。
【0015】図1及び図2において、1は旋回装置で実
現される回転駆動手段であって、この旋回装置1は、大
型旋盤に類似のもので、その駆動回転軸芯Sと被加工軸
としての鋳鋼製クランク軸(以降、クランク軸と称す)
Cを加圧挟持するクランク軸保持手段(後述する)の挟
持中心軸の軸心とが合致するようにセンタリングして、
該クランク軸Cを回転させる構成とされている。また、
2はロールフレームスタンドであって、このロールフレ
ームスタンド2は、旋回装置1の後側に配設されてい
て、該旋回装置1の駆動回転軸芯Sに対し平行に移動可
能に設けられている。なお、ここでは図示を省略した
が、このロールフレームスタンド2には、該ロールフレ
ームスタンド2を移動させる駆動機構が内設されてい
る。
【0016】3はロールフレームで実現されるクランク
軸保持手段であって、このロールフレーム3は、前方を
開口させたコの字状に形成され、旋回装置1の駆動回転
軸芯Sと直交する方向に配されると共に、その後部の連
結アーム3cおよび図示省略のリンク機構等の公知の連
結手段を介して、ロールフレームスタンド2に揺動可能
に支持されている。また、このロールフレーム3のコの
字状に開口して対向する両先端部の内の上方の先端部3
aには、下方の先端部3b内側面に直交する線に沿って
該下方の先端部3b方向に進退する加圧ヘッド4aを有
するシリンダ装置4を装着している。そして、このロー
ルフレーム3の上方の先端部3aに装着された油圧シリ
ンダ4の加圧ヘッド4aには、ロールホルダ6に回転自
由に保持された前後方向で対のバックアップロール5
が、また、下方の先端部3bの内側面上には、ロールホ
ルダ8に回転自由に保持された左右方向で対のワークロ
ール7が、互いに加圧ヘッド4aの作動中心線S' 上で
対向させられて、各々のロールホルダ6,8を介して着
脱可能に取り付けられている。更にまた、加圧ヘッド4
aに取り付けられたバックアップロール5のロールホル
ダ6と該加圧ヘッド4aとの間には、図1-(c)図に示す
ように、球面軸受9が介装されている。
【0017】上記構成の本実施形態に係る熱間ロール加
工装置では、図1-(b)図に示すように、旋回装置1によ
り回転軸芯中心に回転させられるクランク軸Cのジャー
ナルJまたはピンPを、ロールフレーム3のバックアッ
プロール5とワークロール7とで挟むと共に、油圧シリ
ンダ4によりバックアップロール5を圧下させてワーク
ロール7との間で加圧挟持することで、その両側のフイ
レット部Fに対関係を成し設けられるワークロール7を
押圧しロール加工する。そして、ロールフレームスタン
ド2を移動させることで、該ロールフレーム3をクラン
ク軸Cの回転軸芯方向に移動させて各ジャーナルJおよ
びピンPを順次個別にロール加工する。なお、ピンPの
フイレット部をロール加工する場合には、ロールフレー
ム3を該ピンPのスイング回転に追従して揺動させる。
【0018】ここで本実施形態装置では、ワークロール
7とバックアップロール5とを、該バックアップロール
5を押圧する加圧ヘッド4aの作動中心線S' 上で対向
させているので、被加工クランク軸の軸径が変更されて
も、常にその軸芯に対して 180°で対向する両側方から
加圧挟持して、安定したロール加工を行うことができ
る。更に、バックアップロール5のロールホルダ6と加
圧ヘッド4aとの間に球面軸受9を介装しているので、
スイング回転するクランク軸CのピンPを加工する場
合、そのピンPの動きに対して対のバックアップロール
5を円滑に沿わせて追従動させ、対向するワークロール
7との間のピンPの挟圧を確実なものとすることができ
る。
【0019】また、本実施形態に係る熱間ロール加工装
置における被加工クランク軸の挟圧は、従来装置のよう
にロールフレームをぺンチ状に開閉動させることなく、
油圧シリンダの押力で直接的に行うので、そのロールフ
レームを一体に形成することができ、これにより構造を
簡易化できると共に構造強度を高めてよりコンパクトな
ものとすることができ、更には、該ロールフレームを揺
動可能に支持するリンク機構等に対する負荷を軽減して
装置全体の簡素化も図ることができる。また、クランク
軸のジャーナルおよびピンのフイレット部Fをロール加
工する場合、従来装置のように各ジャーナルおよびピン
ごとに専用のロールフレームを配置することなく、1つ
のロールフレームにて各ジャーナル(図1-(a)参照)お
よびピン(図2-(a)参照)をロール加工できるので、装
置構成をより簡易なものとすることができる。
【0020】このような構成になる上記熱間ロール加工
装置には、図2-(b)に拡大示されるように、高周波誘導
加熱装置10が設けられている。この高周波誘導加熱装
置10は、ワークロール7の前記フイレット部Fに対向
する前縁に近接して配設されていて、誘導加熱コイル1
1と制御電源部12とにより構成される。誘導加熱コイ
ル11は、ワークロール7の前縁に対しその前方位置に
おいて、被加工クランク軸のフイレット部Fに当接する
個所あるいは略当接し得る至近個所に配設される。一
方、制御電源部12は、ロールフレーム3のワークロー
ル7に近い適宜個所に取り付けられていて、調節制御さ
れた高周波電源を誘導加熱コイル11に印加し得るよう
に設けられる。このような高周波誘導加熱装置10は、
熱間ロール加工運転中において、前記フイレット部Fを
表面温度1000℃以上に連続的に加熱し得るようにな
っている。
【0021】上記熱間ロール加工装置を主要装置に用い
て行なう本発明に係る鋳鋼製クランク軸の疲労強度増強
加工方法について以下に説明する。先ず被加工材である
クランク軸としては、材料の引張強度が40〜70kg/m
m2の鋳鋼品からなる鋳鋼製クランク軸Cを適用すること
が好ましい。一方、ワークロール7については、これを
クランク軸のフイレット部Fに当接させるに際して以下
に示される条件を満足させることが必要である。すなわ
ち、ワークロール7が前記フィレット部Fに対するロー
ル接触角度θ(ワークロール7の回転軸に直交差する面
とロールフレーム3の前記挟持中心軸に直交差する面と
の交差角度:図2-(c)参照)を35°≦θ≦60°の範
囲の所定の角度に設定するとともに、ワークロール7の
外周弧面部の半径r1 とフィレット部Fの半径r2 との
比R(=r1 /r2 )を0.6≦R≦0.95範囲の所
定の値に設定する。また、フイレット部Fを表面温度1
000℃以上に連続的に加熱し得るように高周波誘導加
熱装置10の加熱能力を制御する。
【0022】このように初期条件を設定した後、クラン
ク軸Cをワークロール7とバックアップロール5とで加
圧挟持し、かつ、前記挟持中心軸の回りに回転させると
ともに、高周波誘導加熱装置10によってフイレット部
Fの表面温度を1000℃以上に連続的に加熱しなが
ら、ワークロール7によってフィレット部Fの熱間ロー
ル加工を連続的に行なう(第1工程)。
【0023】上記第1工程が終了すると、続いて熱間ロ
ール加工を施したクランク軸Cに対して該加工前の鋳鋼
材と同強度レベルになるように調質のための熱処理を行
なう(第2工程)。この熱処理は後述するが、残留応力
解放のための熱処理(SR処理)に他ならないものであ
る。通常は以上の第1工程と第2工程の2工程を行なわ
せれば十分であって、後は大気冷却等で冷却することに
より疲労強度が増強された鋳鋼製クランク軸のフイレッ
トロール加工が終了するが、更に、疲労強度を向上させ
る必要がある場合には、第2工程の終了に引き続いて一
般的に行なわれている冷間ロール加工(第3工程)を行
なわせれば良い。
【0024】このようにして全てのフイレットロール加
工が終了した後、仕上げ加工を行なって顧客仕様に基づ
くスムーズな曲率のフイレット形状に仕上げることによ
って、クランク軸のロール加工の一切が完了する。
【0025】一般に鋳造欠陥のない、または、熱間圧延
や熱間鍛造により鋳造欠陥を圧着した材料の疲労強度は
引張強度の約半分(上限)であることは周知である。し
かし、鋳鋼では防ぐことのできない小さな鋳造欠陥は必
ず存在し、かつ、不規則に分布するものである。そのた
め、疲労の起点は前述のように構造上過大な応力がかか
るフイレット部に存在する鋳造欠陥のような弱点から発
生する。
【0026】そこで熱間ロール加工を行なえば、現象的
には、加熱によって被加熱表層部を柔らかくし、ロール
加工によって表層部に存在する小さな鋳造欠陥を圧着さ
せ、これによって、欠陥として疲労強度を低下させるこ
とがないよう極く小さく圧着して分散させれば潰された
鋳造欠陥が疲労起点とはなり得ないことから、鋳造欠陥
が存在しない圧延材(鋳塊であっても、熱間圧延による
同作用で疲労強度が引張強度の約半分となる)や鍛鋼材
(鋳塊であっても、熱間鍛造による同作用で疲労強度が
引張強度の約半分となる)と同様に引張強度の約半分の
表層部の欠陥によりバラツキのない疲労強度となる。
【0027】熱間ロール加工を施せば、以上述べたよう
な欠陥を圧着させる作用と共に加熱部位には高温から常
温に戻る(大気冷却による)際の熱応力や組織変態が生
じ、一方、ロール加工部位には冷間ロール加工の効果と
同様、局所的な(塑性)変形による圧縮残留応力や加工
硬化が起こる。従って、熱間ロール加工を施したままの
状態で出荷し使用したとすると、これらの複雑な影響因
子によって強度保証が難しくなる。そこで、熱間ロール
加工後、前記SR処理することによって全ての影響因子
をクリアし、均一な母材強度に整えるのである。勿論、
圧着された鋳造欠陥は当然ながらまた開くことはない。
【0028】熱間ロール加工の際の加熱温度としては、
フイレット部の表面温度で1000℃以上が必要であ
り、この温度条件は鋳鋼の軟化温度に相当する温度であ
って、1000〜1200℃の範囲が適当である。一
方、ワークロール7とバックアップロール5とによる加
圧力は、前述する如く、常温ヘルツ面圧換算で400kg
/mm2以上であることが条件であるが、この400kg/mm2
の値は、常温でロール加工した場合でも、図7で示すよ
うにかなり大きい鋳造欠陥が存在する鋳鋼母材の疲労強
度が、クランク軸フイレット部の応力集中を考慮した場
合のフイレット部表面からの深さにおいて必要な強度を
十分に持たせて組成変形させることができる値であり、
概して(本発明の実施の形態に係る加工装置のクランク
軸の場合)表面下10mm程度までは塑性変形する値であ
る。従って、温度による母材の変形抵抗値にもよるが、
疲労強度を大きく低下させる近傍の欠陥は十分に圧着さ
れるため、疲労強度は向上すると当然考えられる。この
加圧力を増せば、さらに深い個所まで圧着効果が期待で
きるが、図1図示実施形態に係る加工装置のクランク軸
形状では、装置面からの制約を考慮して400kg/mm2
度が上限値である。
【0029】
【実施例】本発明に係る鋳鋼製クランク軸の疲労強度増
強加工方法の効果を明らかにするために、引張強さが5
7kg/mm2の実体クランク軸を試験片として上記加工処理
を施した後、試験機にかけて疲労試験を行なった。その
試験の結果を以下に示す。この場合、実体クランク軸は
表面温度1000℃、加圧力400kg/mm2の条件下で、
熱間ロール加工装置によりフイレットロール加工を行な
った後、残留応力解放のためのSR熱処理をして、この
SR熱処理された実体クランク軸を試験機にかけて疲労
試験を行ない、疲労強度を確認した。なお、使用した試
験機は、図4に図示する共振型疲労試験機であって、振
動を加えて試験片である鋳鋼製クランク軸に曲げ応力を
付与するようにした装置である。
【0030】疲労強度の試験結果は、図3に示される通
りであり、熱間ロール加工した実体クランク軸の疲労強
度は、黒三角印でプロットするように、圧延材、鍛鋼材
と同等の値を有していて、熱間ロール加工をしない鋳鋼
(白三角印でプロットされる)に比して高い疲労強度を
保有していることが明らかである。
【0031】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0032】上記実験例の結果からも明らかなように、
本発明によれば、高周波誘導加熱を行いながら熱間ロー
ル加工することによって、クランク軸における特にフイ
レット部の表面及び表面近傍の鋳造欠陥を圧着し、鋳鋼
母材の疲労強度を同強度レベル(引張強さ)の圧延材、
鍛鋼材と同等の域まで向上させることができる。しかも
高周波加熱装置による加熱時間は、加熱コイルの長さな
ど形状の変更や、加熱部材と加熱コイルの距離、周波数
の変更により、更なる短時間加熱が可能であって、品質
面及び生産性の面での向上が図られる。
【0033】以上のように、高温加熱を行いながら熱間
ロール加工を迅速に行なうことにより、鋳鋼母材の疲労
強度やバラツキを改善して、機械的強度に信頼性が高い
クランク軸を容易に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の例である熱間ロール加工
装置の概要構成を示し、 (a)図は正面図、 (b)図は (a)
図のA−A線矢視側面図、 (c)図は要部構成を示す断面
図である。
【図2】図1図示熱間ロール加工装置の要部構成を示
し、 (a)図はクランク軸保持手段の正面図、 (b)図は
(a)図におけるワークロール7付近部の拡大図、 (c)図
はフィレット部の拡大断面図である。
【図3】本発明方法を実施して得られた試験片における
熱間ロール加工の効果を示す特性線図である。
【図4】共振型疲労試験機の概要構造図である。
【図5】鋳鋼の疲労限と引張強さの関係線図である。
【図6】鋳鋼の表面粗さとヘルツ面圧の関係線図であ
る。
【図7】鋳鋼の疲労強度低下要因を説明する応力とフィ
レット部表面からの深さの関係線図である。
【符号の説明】
1…旋回装置、 2…ロールフレームスタンド、
3…ロールフレーム、3a…上方の先端部、 3b…
下方の先端部、 3c…連結アーム、4…油圧シリン
ダ、 4a…加圧ヘッド、 5…バックアップロー
ル、6…ロールホルダ、 7…ワークロール、 8
…ロールホルダ、9…球面軸受、 10…高周波誘導
加熱装置、 11…誘導加熱コイル、12…制御電源
部、 C…クランク軸、 F…フイレット部、
J…ジャーナル、 P…ピン、 S…駆
動回転軸芯、S' …作動中心線、 θ…ロール接触
角度、

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳鋼製クランク軸をワークロールとバッ
    クアップロールとで加圧挟持するとともに、該挟持中心
    軸の回りに回転させ、さらに、ワークロールに近接して
    設けた加熱装置により前記クランク軸のフィレット部を
    連続的に加熱しながらワークロールにより前記フィレッ
    ト部を連続的に熱間ロール加工する第1工程と、この第
    1工程で熱間ロール加工した前記クランク軸を該加工前
    の鋳鋼材と同強度レベルになるように調質のための熱処
    理を行なう第2工程とを含むことを特徴とする鋳鋼製ク
    ランク軸の疲労強度増強加工方法。
  2. 【請求項2】 クランク軸のフィレット部を連続的に加
    熱するための前記加熱装置が高周波誘導加熱装置である
    請求項1記載の鋳鋼製クランク軸の疲労強度増強加工方
    法。
  3. 【請求項3】 前記第2工程で熱処理した鋳鋼製クラン
    ク軸のフィレット部をさらに疲労強度向上のために冷間
    ロール加工する第3工程を追加して含む請求項1又は2
    に記載の鋳鋼製クランク軸の疲労強度増強加工方法。
  4. 【請求項4】 引張強度が40〜70kg/mm2の鋳鋼材か
    らなる鋳鋼製クランク軸の疲労強度増強加工を行なうも
    のである請求項1、2又は3に記載の鋳鋼製クランク軸
    の疲労強度増強加工方法。
  5. 【請求項5】 鋳鋼製クランク軸をワークロールとバッ
    クアップロールとで加圧挟持するクランク軸保持手段
    と、このクランク軸保持手段が加圧挟持した前記クラン
    ク軸を該挟持中心軸の回りに回転させる回転駆動手段
    と、前記ワークロールの前縁に近接して設けられ、前記
    クランク軸保持手段が加圧挟持した前記クランク軸のフ
    ィレット部を連続的に加熱する高周波誘導加熱装置とを
    含み、ワークロールが前記フィレット部に対するロール
    接触角度θ、すなわちワークロールの回転軸に直交差す
    る面と前記挟持中心軸に直交差する面との交差角度が3
    5°≦θ≦60°に設定され、ワークロールの外周弧面
    部の半径r1 と前記フィレット部の半径r2 との比R=
    r1 /r2 が0.6≦R≦0.95に設定されてなるこ
    とを特徴とするクランク軸加工用熱間ロール加工装置。
  6. 【請求項6】 ワークロールとバックアップロールとに
    よる加圧力が常温ヘルツ面圧換算で400kg/mm2以上で
    あり、高周波誘導加熱装置が前記クランク軸の表面温度
    を1000℃以上に加熱保持し得る加熱能力を有する請
    求項5記載のクランク軸加工用熱間ロール加工装置。
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