JPH1137013A - エンジンの燃料噴射弁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジンの燃料噴射弁において、断線時の燃
料噴射を抑制する。 【解決手段】 印加される電圧に応じて収縮するピエゾ
アクチュエータ１０と、ピエゾアクチュエータ１０に圧
縮荷重を付与する与圧スプリング１８と、ピエゾアクチ
ュエータ１０の収縮に応じて差圧室８を収縮するピスト
ン１１と、加圧燃料が導かれる燃圧室３と、燃圧室３と
差圧室８を連通する絞り通路５と、燃圧室３と差圧室８
の圧力差に応じて変位する針弁２と、針弁２を閉弁方向
に付勢するリターンスプリング４と、針弁２によって開
閉される噴口１ｂとを備えるエンジンの燃料噴射弁７に
おいて、電磁歪アクチュエータ１０が収縮するのに伴っ
て差圧室８が収縮する構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、電磁歪アクチュ
エータを介して針弁前後の燃料圧力を変化させることに
より針弁を作動させるエンジンの燃料噴射弁に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車用エンジンに備えられる燃料噴射
弁等に、印加電圧に応じて伸張するピエゾアクチュエー
タ（圧電素子）を備え、ピエゾアクチュエータを介して
針弁（弁体）を開弁作動させるものがあった。針弁をピ
エゾアクチュエータにより駆動することにより、燃料噴
射弁の高速応答性が高まり、最大噴射量と最小噴射量の
比（ダイナミックレンジ）が拡大してエンジンの高出力
化に対応できる。また、少量の燃料を安定して噴射でき
るので、エンジンの燃費低減がはかれる。

【０００３】この種の燃料噴射弁として、針弁をその前
後差圧に基づいて開弁させるようにしたものが知られて
いる。針弁の前後には燃圧室と差圧室が画成されてお
り、燃圧室には所定の圧力で燃料が導入され、差圧室は
燃圧室とオリフィスにより連通されている。針弁背後側
の差圧室にはピエゾアクチュエータが設けられており、
このピエゾアクチュエータの伸縮により針弁の開閉作動
が制御される。すなわち、ピエゾアクチュエータに電圧
を印加して伸長させ、針弁前後の燃圧室と差圧室の圧力
はオリフィスを介して均等化されている状態では、針弁
はリターンスプリングの張力により閉弁保持している。
この状態からピエゾアクチュエータの両端子を短絡させ
てピエゾアクチュエータを瞬時に収縮させると、針弁背
後の差圧室の容積が拡大する。このとき、差圧室は針弁
前方の燃圧室に対してオリフィスを介して連通している
ので、一時的に差圧室の内圧が低下し針弁の前後に開弁
方向の圧力差が発生する。これにより針弁はリターンス
プリングに抗して開弁し、噴口が開いて燃料が噴射され
ることになる。（この種の燃料噴射弁の公知例として
は、例えば特開平６−２８０７１１号公報を参照。）

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のこの
ようなピエゾアクチュエータを用いた燃料噴射弁では、
針弁がシート部に着座して噴口を閉じるときに、燃料室
の圧力が瞬間的に上昇し、所定の噴射時期以外で燃料を
噴射する二次噴射を起こす可能性があった。

【０００５】また、燃圧室に導かれる燃料圧力が上昇す
るエンジンの起動前において、まず燃圧室に燃料が導か
れ、次いでオリフィスを介して背圧室に燃料が流入する
ので、背圧室の圧力が上昇し終わるまでの間は、針弁の
前後に圧力差が生じるため、針弁が所定の噴射時期以外
でリターンスプリングに抗して開弁して燃料が噴射され
てしまう初期燃料噴射を起こす可能性があった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のこの
ようなピエゾアクチュエータを用いた燃料噴射弁では、
ピエゾアクチュエータに印加される電圧を遮断して針弁
を開弁させる構造のため、ピエゾアクチュエータに電圧
を導くリード線等の断線が発生した場合、ピエゾアクチ
ュエータが収縮するのに伴って針弁が開弁し、所定の噴
射時期以外で燃料が一時的に噴射されてしまう可能性が
あった。

【０００７】本発明は上記の問題点を鑑みてなされたも
のであり、エンジンの燃料噴射弁において、断線時等の
燃料噴射を防止することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載のエンジ
ンの燃料噴射弁は、印加される電圧または磁界が遮断さ
れるのに伴って収縮する電磁歪アクチュエータと、電磁
歪アクチュエータの伸縮に応じて拡縮する差圧室と、加
圧燃料が導かれる燃圧室と、燃圧室と差圧室を連通する
絞り通路と、燃圧室と差圧室の圧力差に応じて変位する
針弁と、針弁を閉弁方向に付勢するリターンスプリング
と、針弁によって開閉され燃圧室の燃料を噴出する噴口
とを備えるエンジンの燃料噴射弁において、電磁歪アク
チュエータが収縮するのに伴って差圧室が収縮する構成
とした。

【０００９】請求項２に記載のエンジンの燃料噴射弁
は、請求項１に記載の発明において、前記差圧室を画成
するピストンと、ピストンを摺動可能に嵌合させるシリ
ンダボディとを備え、ピストンを電磁歪アクチュエータ
と直列に配置し、電磁歪アクチュエータのピストンに近
い固定端をシリンダボディに支持する支持部材と、シリ
ンダボディと支持部材の間に配置されて電磁歪アクチュ
エータのピストンから遠い移動端の変位をピストンに伝
達する伝達部材とを備えるものとした。

【００１０】請求項３に記載のエンジンの燃料噴射弁
は、請求項２に記載の支持部材をシリンダボディと別体
で形成し、シリンダボディに支持部材を回転させること
により支持部材を嵌合させる内周溝を形成するものとし
た。

【００１１】請求項４に記載のエンジンの燃料噴射弁
は、請求項２に記載の発明において、電磁歪アクチュエ
ータを収装するケーシングを備え、支持部材をケーシン
グに一体的に形成するものとした。

【００１２】請求項５に記載のエンジンの燃料噴射弁
は、請求項１から４のいずれか一つに記載の発明におい
て、前記電磁歪アクチュエータに圧縮荷重を付与する与
圧スプリングと、与圧スプリングの弾性復元力を調整す
る調整機構を備えるものとした。

【００１３】

【発明の作用および効果】請求項１に記載の発明におい
て、燃料噴射弁の開弁作動時に、電磁歪アクチュエータ
はエンジン回転に同期して電圧または磁界が印加される
ことにより伸長する。電磁歪アクチュエータの伸長に伴
って、差圧室はその容積が拡大してその圧力が低下す
る。燃圧室は絞り通路を介して圧力低下が遅れて伝わる
ので、差圧室と燃圧室に圧力差が直ちに発生する。この
圧力差により針弁がリターンスプリングに抗して噴口を
開き、燃圧室に導かれる高圧燃料が噴口から噴射され
る。

【００１４】燃料噴射弁の閉弁作動時に、電磁歪アクチ
ュエータはエンジン回転に同期して電圧または磁界が遮
断されることにより収縮する。電磁歪アクチュエータの
収縮に伴って、差圧室はその容積が縮小してその圧力が
直ちに上昇する。差圧室と燃圧室の圧力差およびリター
ンスプリングの付勢力により針弁が移動してノズルボデ
ィのシート部に着座する。針弁がシート部に着座するこ
とにより、噴口が閉塞され、燃料の噴射が停止される。

【００１５】万一、電磁歪アクチュエータに電圧または
磁界を印加するリード線等が断線した場合、電磁歪アク
チュエータは電圧または磁界が遮断されて収縮して針弁
を閉弁させる。これにより、針弁が所定の噴射時期以外
で燃料が噴射されてしまうことを防止できる。

【００１６】すなわち、燃料噴射弁は電磁歪アクチュエ
ータに印加される電圧または磁界を遮断して針弁を閉弁
させる構造のため、断線等の発生時に燃料の噴射が瞬間
的に停止され、エンジンの二次故障を防止することがで
きる。

【００１７】請求項２に記載の発明において、燃料噴射
弁の開弁作動時に、電磁歪アクチュエータはエンジン回
転に同期して電圧または磁界が印加されることにより伸
長する。電磁歪アクチュエータの伸長に伴って伝達部材
を介してピストンが電磁歪アクチュエータの変位方向と
逆方向に移動することにより、差圧室はその容積が拡大
してその圧力が低下する。燃圧室は絞り通路を介して圧
力低下が遅れて伝わるので、差圧室と燃圧室に圧力差が
直ちに発生する。この圧力差により針弁がリターンスプ
リングに抗して噴口を開き、燃圧室に導かれる高圧燃料
が噴口から噴射される。

【００１８】燃料噴射弁の閉弁作動時に、電磁歪アクチ
ュエータはエンジン回転に同期して電圧または磁界が遮
断されることにより収縮する。電磁歪アクチュエータの
伸長に伴って伝達部材を介してピストンが電磁歪アクチ
ュエータの変位方向と逆方向に移動することにより、差
圧室はその容積が縮小してその圧力が直ちに上昇する。
こうして発生する差圧室と燃圧室の圧力差およびリター
ンスプリングの付勢力により針弁が移動してノズルボデ
ィのシート部に着座する。針弁がシート部に着座するこ
とにより、噴口が閉塞され、燃料の噴射が停止される。

【００１９】燃料噴射弁は電磁歪アクチュエータに印加
される電圧または磁界を遮断して針弁を閉弁させる構造
のため、万一断線等が発生した場合に、燃料の噴射が停
止され、エンジンの二次故障を防止することができる。

【００２０】請求項３に記載の発明において、支持部材
はシリンダボディの各内周溝に嵌合することにより、シ
リンダボディに対して軸方向の変位が規制される。

【００２１】燃料噴射弁の組み立て時に、伝達部材はシ
リンダボディ内に挿入され、回転されることにより内周
溝に嵌合して取付けられる。

【００２２】請求項４に記載の発明において、支持部材
を電磁歪アクチュエータを収装するケーシングに一体的
に形成することにより、電磁歪アクチュエータや伝達部
材の組み付けが容易に行え、構造の簡素化がはかれる。

【００２３】請求項５に記載の発明において、調整機構
を介して与圧スプリングの弾性復元力を調整することに
より、ピエゾアクチュエータは与圧スプリングによって
所定の圧縮荷重が付加され、安定した作動性が確保され
る。

【００２４】

【発明の実施の形態】以下、本発明を筒内噴射式火花点
火エンジンに備えられる燃料噴射弁に適用した実施形態
を添付図面に基づいて説明する。

【００２５】図１に示すように、燃料噴射弁７はその先
端に設けられるノズルボディ１を図示しないエンジンの
燃焼室に臨ませる。ノズルボディ１はエンジンの燃焼室
天井壁から燃焼室に臨み、ノズルボディ１の先端に開口
した噴口１ｂから燃料噴霧をピストンの冠部に向けて噴
出するようになっている。

【００２６】ノズルボディ１の内部に針弁２が摺動可能
に収装される。ノズルボディ１の内部には針弁２のまわ
りに燃圧室３が画成される。ノズルボディ１の先端に噴
口１ｂが開口し、噴口１ｂは針弁２によって開閉され
る。

【００２７】図示しない燃料ポンプから圧送される燃料
は、燃料入口通路６から燃圧室３に導入され、針弁２の
リフトに伴って噴口１ｂから噴射される。

【００２８】針弁２はその基端側にピストン部２ｃを有
する。ノズルボディ１およびシリンダボディ９とピスト
ン部２ｃの間には差圧室８が画成される。燃圧室３と差
圧室８はピストン部２ｃの外周に形成された絞り通路
（隙間）５を介して連通する。

【００２９】針弁２を閉弁方向に付勢するリターンスプ
リング４が設けられる。リターンスプリング４は針弁２
のピストン部２ｃとシリンダボディ９の間に圧縮された
状態で介装され、針弁２と同軸上に配置される。

【００３０】針弁２の基端とケーシング９の間にはシム
１７が介装され、シム１７によって針弁２の軸方向の移
動が規制される。シム１７は円盤状に形成される。シム
１７の板厚によって針弁２の最大リフト量が決まる。

【００３１】シリンダボディ９の内部には差圧室８を画
成するピストン１１が摺動可能に介装される。ピストン
１１の外周にはＯリング１２が介装される。Ｏリング１
２がシリンダボディ９の円筒状をした内壁面に摺接する
ことにより、差圧室８の密封がはかれる。

【００３２】ピストン１１を介して針弁２を開閉駆動す
るピエゾアクチュエータ１０が設けられる。ピエゾアク
チュエータ１０は円盤状をした複数のピエゾ素子が、同
じく円盤状をした内部電極を挟んで積層される。

【００３３】ピエゾアクチュエータ１０のピストン１１
に近い端部１０ａは支持部材４０を介してシリンダボデ
ィ９に結合され、シリンダボディ９に対して固定端とし
て機能する。

【００３４】ピエゾアクチュエータ１０のピストン１１
から遠い端部１０ａは円筒状をした伝達部材３０に結合
され、シリンダボディ９に対して移動端として機能す
る。伝達部材３０はピストン１１に当接し、差圧室８に
燃圧が作用している状態で、ピストン１１をピエゾアク
チュエータ１０の伸縮動作に追従させるようになってい
る。

【００３５】したがって、ピエゾアクチュエータ１０が
各ピエゾ素子に図示しない駆動用アンプから電圧が印加
されて伸長すると、ピエゾアクチュエータ１０の端部１
０ａが支持部材４０によってシリンダボディ９に固定さ
れているので、伝達部材３０はシリンダボディ９の基端
側に後退し、燃圧室３に対して差圧室８の圧力が低下
し、針弁２はリターンスプリング４に抗して開弁する。

【００３６】ピエゾアクチュエータ１０は各ピエゾ素子
に印加される電圧が遮断短絡されると収縮し、伝達部材
３０はシリンダボディ９の先端側に移動するので差圧室
８を収縮して圧力を回復させて、つまり針弁２にかかる
差圧を相殺し、リターンスプリング４により閉弁方向に
駆動する。

【００３７】なお、ピエゾアクチュエータ１０に代えて
印加される磁界の強さに応じて伸縮する超磁歪素子から
なる磁歪アクチュエータを用いてもよい。ここでは、ピ
エゾアクチュエータと磁歪アクチュエータ等を総称して
電磁歪アクチュエータとする。

【００３８】コントローラはエンジンの回転数、エンジ
ンの吸入空気量を始めエンジン運転条件を検出する各種
信号を入力し、これらのエンジン運転条件に応じて燃料
噴射量を演算する。コントローラでは演算された燃料噴
射量に対応するパルス信号がつくられ、このパルス信号
に応じた電圧が駆動用アンプを介してピエゾアクチュエ
ータ１０に印加される。

【００３９】燃料噴射弁７は、ピエゾアクチュエータ１
０の変位方向と針弁２の変位方向を逆転させる機構とし
て、シリンダボディ９に対してピエゾアクチュエータ１
０のピストン１１に近い固定端を支持する支持部材４０
を備えるとともに、ピエゾアクチュエータ１０のピスト
ン１１に遠い移動端の変位をピストン１１に伝達する伝
達部材３０を備える。

【００４０】支持部材４０は、図２にも示すように、ピ
エゾアクチュエータ１０の固定端１０ａに接合する円盤
状をした受け板部４１と、受け板部４１から径方向に拡
がる扇形をした一対の係合部４２とを有する。

【００４１】シリンダボディ９の内周面には一対の内周
溝１５が形成される。支持部材４０はその各係合部４２
が各内周溝１５に嵌合することにより、シリンダボディ
９に対して軸方向の変位が規制される。

【００４２】燃料噴射弁７の組み立て時は、ピエゾアク
チュエータ１０と支持部材４０が収装された伝達部材３
０をシリンダボディ９内に挿入し、伝達部材３０を９０
度回転させることにより、支持部材４０の係合部４２が
内周溝１５に嵌合するようになっている。

【００４３】伝達部材３０は有底円筒状をした筒部３１
を有し、筒部３１の底部にピエゾアクチュエータ１０の
移動端１０ｂが接合する。

【００４４】伝達部材３０の開口端側から軸方向に延び
る２本の脚部３２を有する。各脚部３２は、支持部材４
０の各係合部４２の間を挿通して、それぞれの先端がピ
ストン１１に接合する。

【００４５】各脚部３２の先端外周面がシリンダボディ
９の内周面に摺動可能に接合する。また、筒部３１の外
周面から突起３３が環状に突出し、突起３３の外周面が
シリンダボディ９の内周面に摺動可能に接合する。伝達
部材３０は脚部３２と突起３３を介してシリンダボディ
９に対する径方向の位置決めが行われる。

【００４６】シリンダボディ９の開口端にはアジャスト
プレート２１，２２が取付けられる。アジャストプレー
ト２１と伝達部材３０の間に皿バネ状をした与圧スプリ
ング１８が圧縮された状態で介装される。伝達部材３０
は与圧スプリング１８の弾性復元力によりピエゾアクチ
ュエータ１０の移動端に押し付けられ、ピエゾアクチュ
エータ１０の伸縮作動に追従する。与圧スプリング１８
の弾性復元力はピエゾアクチュエータ１０の駆動力より
小さく、かつピストン１１に加わる燃料圧力による押圧
力より大きく設定される。また、ピエゾアクチュエータ
１０は与圧スプリング１８によって圧縮荷重が付加され
ることにより、安定した作動性が確保される。

【００４７】各アジャストプレート２１，２２はそれぞ
れシリンダボディ９の内周に螺合して共締めされる。シ
リンダボディ９に対する各アジャストプレート２１，２
２の螺合位置を変えることにより、与圧スプリング１８
がピエゾアクチュエータ１０に付与する圧縮荷重を調整
することができる。

【００４８】以上のように構成され、次に作用について
説明する。

【００４９】図１に示すように、はピエゾアクチュエー
タ１０に電圧が印加されず収縮しているとき、ピストン
１１は差圧室８を収縮させている。このとき、ピストン
部２ｃの前後に生じる燃圧室３と差圧室８の圧力は絞り
通路５を介して均等化されているが、ピストン１１にか
かる圧力で与圧スプリング１８が縮むことのないように
設定してあるため、伝達部材３０はピエゾアクチュエー
タ１０に密着している。

【００５０】燃料噴射弁７の開弁作動時に、ピエゾアク
チュエータ１０はエンジン回転に同期して電圧が印加さ
れることにより伸長する。ピエゾアクチュエータ１０の
伸長に伴って伝達部材３０を介してピストン１１が移動
することにより、差圧室８はその容積が拡大してその圧
力が低下する。燃圧室３には絞り通路５を介して圧力低
下が遅れて伝わるので、差圧室８と燃圧室３に圧力差が
直ちに発生する。この圧力差により針弁２がリターンス
プリング４に抗して噴口１ｂを開き、燃圧室３に導かれ
る高圧燃料が噴口１ｂを通ってエンジン５０の燃焼室に
噴射される。

【００５１】燃料噴射弁７の閉弁作動時に、ピエゾアク
チュエータ１０に印加される電圧がエンジン回転に同期
して遮断短絡されることによりピエゾアクチュエータ１
０は収縮する。ピエゾアクチュエータ１０が収縮するの
に伴って与圧スプリング１８に押されてピストン１１が
移動することにより、差圧室８はその容積が縮小してそ
の圧力が上昇する。燃圧室３には絞り通路５を介して圧
力低下が遅れて伝わるので、差圧室８の圧力が燃圧室３
と同じ、もしくはそれより高くなる。このため、差圧室
８と燃圧室３の圧力差およびリターンスプリング４の付
勢力により針弁２が移動してノズルボディ１のシート部
に着座する。針弁２がシート部に着座することにより、
噴口１ｂが閉塞され、燃料の噴射が停止される。

【００５２】ところで、ピエゾアクチュエータ１０のリ
ード線等が断線した場合、ピエゾアクチュエータ１０は
電圧が遮断短絡されて収縮する。このためピストン１１
が差圧室８を収縮させ針弁２の閉じ方向の付勢力が大き
くなり、針弁２を閉弁させる。これにより、針弁２が所
定の噴射時期以外で開き、燃料が噴射されてしまうこと
を防止できる。

【００５３】すなわち、燃料噴射弁７はピエゾアクチュ
エータに印加される電圧を遮断して針弁２を閉弁させる
構造のため、断線等の発生時に燃料が噴射されることを
防止できる。

【００５４】また、ピエゾアクチュエータ１０はピスト
ン１１に直接的に接合しない構造のため、ピエゾアクチ
ュエータ１０で発生する熱がピストン１１に伝わりにく
く、ピストン１１の安定した作動性が確保される。

【００５５】燃料噴射弁７は、ピエゾアクチュエータ１
０の変位方向と針弁２の変位方向が逆転しているが、ピ
エゾアクチュエータ１０とピストン１１と針弁２および
リターンスプリング４が直列に並べられ、構造の簡素化
がはかれる。

【００５６】次に、図４に示す実施形態について説明す
る。なお、図１との対応部分には同一符号を付す。

【００５７】ピストン１１を収装するシリンダボディ９
とピエゾアクチュエータ１０を収装するケーシング４９
が別体で形成される。シリンダボディ９とケーシング４
９は複数のボルトを介して締結される。

【００５８】ピエゾアクチュエータ１０のピストン１１
に近い端部１０ａは支持部材５１を介してシリンダボデ
ィ９に結合される。支持部材５１は円筒状をしたケーシ
ング４９の端部に一体形成される。

【００５９】支持部材５１は、図５にも示すように、ピ
エゾアクチュエータ１０の固定端に接合する円盤状をし
た受け板部５１と、受け板部５１から径方向に拡がる扇
形をした一対の係合部５２とを有する。

【００６０】ピエゾアクチュエータ１０のピストン１１
から遠い端部には伝達部材３０が結合される。

【００６１】伝達部材３０は有底円筒状をした筒部３１
を有し、筒部３１の底部にピエゾアクチュエータ１０の
移動端１０ｂが接合する。

【００６２】伝達部材３０の開口端側から軸方向に延び
る２本の脚部３２を有する。各脚部３２は、支持部材５
１の各係合部５２の間を挿通して、それぞれの先端がピ
ストン１１に接合する。

【００６３】ケーシング４９の開口端にはアジャストプ
レート２１，２２が取付けられる。アジャストプレート
２１と伝達部材１５の間に皿バネ状をした与圧スプリン
グ１８が圧縮された状態で介装される。伝達部材３０は
与圧スプリング１８の弾性復元力によりピエゾアクチュ
エータ１０の移動端に押し付けられ、ピエゾアクチュエ
ータ１０の伸縮作動に追従する。与圧スプリング１８の
弾性復元力はピエゾアクチュエータ１０の駆動力より小
さく設定される。また、ピエゾアクチュエータ１０は与
圧スプリング１８によって圧縮荷重が付加されることに
より、安定した作動性が確保される。

【００６４】各アジャストプレート２１，２２はそれぞ
れケーシング４９の内周に螺合して共締めされる。ケー
シング９に対する各アジャストプレート２１，２２の螺
合位置を変えることにより、与圧スプリング１８がピエ
ゾアクチュエータ１０に付与する圧縮荷重を調整するこ
とができる。

【００６５】この場合、支持部材５０を電磁歪アクチュ
エータ１０を収装するケーシング４９に一体的に形成す
る構造により、電磁歪アクチュエータ１０や伝達部材３
０の組み付けが容易に行え、構造の簡素化がはかれる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態を示す燃料噴射弁の断面図。

【図２】同じく図１のＡ−Ａ線に沿う燃料噴射弁の断面
図。

【図３】同じくシリンダボディの断面図。

【図４】他の実施形態を示す燃料噴射弁の断面図。

【図５】同じく図４のＡ−Ａ線に沿う燃料噴射弁の断面
図。

【符号の説明】

１ ノズルボディ １ｂ 噴口 ２ 針弁 ２ｃ ピストン部 ３ 燃圧室 ４ リターンスプリング ５ 絞り通路 ６ 燃料入口 ７ 燃料噴射弁 ８ 差圧室 ９ シリンダボディ １０ ピエゾアクチュエータ １１ ピストン １５ 内周溝 １８ 与圧スプリング ３０ 伝達部材 ３２ 脚部 ４０ 支持部材 ４９ ケーシング ５０ 支持部材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大木 俊治 神奈川県横浜市神奈川区宝町２番地 日産 自動車株式会社内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】印加される電圧または磁界が遮断されるの
   に伴って収縮する電磁歪アクチュエータと、 電磁歪アクチュエータの伸縮に応じて拡縮する差圧室
   と、 加圧燃料が導かれる燃圧室と、 燃圧室と差圧室を連通する絞り通路と、 燃圧室と差圧室の圧力差に応じて変位する針弁と、 針弁を閉弁方向に付勢するリターンスプリングと、 針弁によって開閉され燃圧室の燃料を噴出する噴口と、 を備えるエンジンの燃料噴射弁において、 電磁歪アクチュエータが収縮するのに伴って差圧室が収
   縮する構成としたことを特徴とするエンジンの燃料噴射
   弁。
2. 【請求項２】前記差圧室を画成するピストンと、 ピストンを摺動可能に嵌合させるシリンダボディとを備
   え、 ピストンを電磁歪アクチュエータと直列に配置し、 電磁歪アクチュエータのピストンに近い固定端をシリン
   ダボディに支持する支持部材と、 シリンダボディと支持部材の間に配置されて電磁歪アク
   チュエータの移動端の変位をピストンに伝達する伝達部
   材と、 を備えたことを特徴とする請求項１に記載のエンジンの
   燃料噴射弁。
3. 【請求項３】前記支持部材をシリンダボディと別体で形
   成し、 シリンダボディに支持部材を回転させることにより支持
   部材を嵌合させる内周溝を形成したことを特徴とする請
   求項２に記載のエンジンの燃料噴射弁。
4. 【請求項４】前記電磁歪アクチュエータを収装するケー
   シングを備え、 支持部材をケーシングに一体的に形成したことを特徴と
   する請求項２に記載のエンジンの燃料噴射弁。
5. 【請求項５】前記電磁歪アクチュエータに圧縮荷重を付
   与する与圧スプリングと、 与圧スプリングの弾性復元力を調整する調整機構を備え
   たことを特徴とする請求項１から４のいずれか一つに記
   載のエンジンの燃料噴射弁。