JPH1136184A - 製紙用サイズ剤組成物およびサイジング紙 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、製紙用サイズ剤組成物の分散剤とし
て、膨潤性セルロース好ましくはバクテリアセルロース
を使用することにより、サイズ剤の安定性およびサイズ
効果を格段に向上させた製紙用サイズ剤組成物およびサ
イジング紙に関する。 【解決手段】本発明は、アルキルケテンダイマー、アル
キルまたはアルケニル置換コハク酸無水物、ロジンエス
テル類およびその強化物の少なくとも１種を含有するロ
ジン系物質、の３種から選ばれた少なくとも１種を、分
散剤により乳化分散せしめてなる製紙用サイズ剤組成物
であって、該分散剤として膨潤性セルロース好ましくは
バクテリアセルロースを使用することにより、サイズ剤
の安定性およびサイズ効果を格段に向上させた製紙用サ
イズ剤組成物およびサイジング紙の提供を可能ならしめ
たものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、製紙用サイズ剤組
成物およびサイジング紙に関する。さらに詳しくは、分
散剤として膨潤性セルロース好ましくはバクテリアセル
ロースを使用することにより、サイズ剤組成物の安定性
およびサイズ効果を格段に向上させた製紙用サイズ剤組
成物およびサイジング紙に関する。

【０００２】

【従来の技術】紙、板紙などのセルロース繊維製品に適
用されるサイジング方法としては、一般に、セルロース
繊維の水性分散体にサイズ剤を添加して抄造する内添サ
イジング法、およびあらかじめ製造されたセルロース繊
維製品の表面にサイズ剤を施したり、抄造工程中にサイ
ズプレスやタブサイズなどによりサイズ剤を施こす、い
わゆる表面サイジング法があり、それぞれ各種のサイズ
剤が使用されている。

【０００３】これまで、各種のサイズ剤としては、例え
ばロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ
剤およびケテンダイマー系サイズ剤などが、それぞれの
特徴を活かして使用されている。

【０００４】上記のサイズ剤の中で、ロジン系サイズ剤
は、酸性紙系〜中性紙系において汎用され、また、アル
ケニル無水コハク酸系サイズ剤およびケテンダイマー系
サイズ剤で代表される、いわゆる中性サイズ剤は、弱酸
性からアルカリ性の幅広いｐＨ域で使用可能であるた
め、主として中性紙系で用いられている。

【０００５】これらいずれのサイズ剤を用いる場合にお
いても、常に問題となるのは、水性分散液としてのサイ
ズ剤の安定性と添加した紙のサイズ効果である。安定性
には、高温での安定性と機械的なせん断力に対する安定
性があり、サイズ剤の取り扱い上、改良が求められてい
る。サイズ効果は、少量の添加で十分な効果を示すこと
が求められるが、それぞれに問題があり、排水汚染緩和
やコスト低減の面から、サイズ剤の分散性改良や紙への
歩留り性の向上を図るなど、精力的に努力しているのが
実状である。

【０００６】従来より、これらの問題点を改良すべく、
種々の試みがなされている。例えば、特開平５−３３９
８９６号公報には、各種のサイズ剤に分散剤として特定
量のアニオン性不飽和単量体と特定量のノニオン性不飽
和単量体とからなるアニオン性共重合体を、特定比率で
混合した水性分散液を紙に適用することにより、各種安
定性とサイズ効果が向上する旨、開示されている。

【０００７】また、特開平６−６５８９０号公報には、
アルキルケテンダイマーを特定のグラフト化カチオン澱
粉により乳化分散せしめた製紙用サイズ剤組成物が、各
種安定性とサイズ効果に優れる旨、開示されている。

【０００８】そして、特開平９−１１１６９２号公報に
は、アルキルまたはアルケニル置換こはく酸無水物を特
定のグラフト化カチオン澱粉により乳化分散せしめた製
紙用サイズ剤組成物が、各種安定性とサイズ効果に優れ
る旨、開示されている。

【０００９】このほか、これまでにもサイズ剤の安定性
を向上させる手段として、例えば各種の澱粉類、界面活
性剤、ナフタリンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物、
リグニンスルホン酸ソーダ、カチオン性ポリアクリルア
ミドなどが用いられてきたが、いずれも十分満足する結
果は得られていない。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる課題
の解決を目的としてなされたものである。すなわち、本
発明者らは、アルキルケテンダイマー、アルキルまたは
アルケニル置換コハク酸無水物、ロジンエステル類およ
びその強化物の少なくとも１種を含有するロジン系物
質、の３種から選ばれた少なくとも１種と、分散剤とし
て膨潤性セルロース好ましくはバクテリアセルロースと
を乳化分散せしめて得られる製紙用サイズ剤組成物が、
各種安定性を格段に向上させた製紙用サイズ剤組成物で
あり、該製紙用サイズ剤組成物を紙に適用した場合に
は、極めて優れたサイズ効果を発揮することを見い出
し、本発明に至ったものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、鋭意検討した結果、以下の発明に至
った。

【００１２】すなわち、本発明は、アルキルケテンダイ
マー、アルキルまたはアルケニル置換コハク酸無水物、
ロジンエステル類およびその強化物の少なくとも１種を
含有するロジン系物質の３種から選ばれた少なくとも１
種を、分散剤により乳化分散せしめてなる製紙用サイズ
剤組成物であって、該分散剤が膨潤性セルロースである
ことを特徴とする製紙用サイズ剤組成物の発明である。

【００１３】また、上記発明において、膨潤性セルロー
スが、バクテリアセルロースである製紙用サイズ剤組成
物の発明である。

【００１４】また、上記発明において、バクテリアセル
ロースが、通気攪拌培養バクテリアセルロースである製
紙用サイズ剤組成物の発明である。

【００１５】また、上記発明において、該製紙用サイズ
剤組成物中、アルキルケテンダイマー（ａ１）、アルキ
ルまたはアルケニル置換コハク酸無水物（ａ２）、ロジ
ンエステル類およびその強化物の少なくとも１種を含有
するロジン系物質（ａ３）、の３種から選ばれた少なく
とも１種（Ａ）と、膨潤性セルロース（Ｂ）の含有比率
（Ａ：Ｂ）が、１：０．０１〜１：０．２である製紙用
サイズ剤組成物の発明である。 ただし、Ａは（有効成
分換算）、Ｂは（固形分換算）である。

【００１６】さらに、本発明は、上記の製紙用サイズ剤
組成物を用いたサイジング紙の発明である。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の製紙用サイズ剤組
成物およびそれを用いたサイジング紙について詳細に説
明する。

【００１８】本発明は、アルキルケテンダイマー、アル
キルまたはアルケニル置換コハク酸無水物、ロジンエス
テル類およびその強化物の少なくとも１種を含有するロ
ジン系物質、の３種から選ばれた少なくとも１種を、分
散剤により乳化分散せしめてなる製紙用サイズ剤組成物
であって、該分散剤が膨潤性セルロース、好ましくはバ
クテリアセルロース、特に好ましくは通気攪拌培養バク
テリアセルロースであることを特徴とする製紙用サイズ
剤組成物であって、該製紙用サイズ剤組成物を内添およ
び／または表面塗工により、紙に適用することができ
る。

【００１９】本発明における表面塗工とは、あらかじめ
製造された紙の表面および／または裏面に本発明の製紙
用サイズ剤組成物をコーティングしたり、また、抄造工
程中でサイズプレス、タブサイズ、噴霧、コーティング
などの処理を施こす、製紙業界で公知の表面サイジング
法を指すものである。

【００２０】本発明に用いられるサイズ成分としては、
製紙業界において使用されている各種のサイズ成分が使
用可能であるが、本発明においては、特にアルキルケテ
ンダイマー、アルキルまたはアルケニル置換コハク酸無
水物、ロジンエステル類およびその強化物の少なくとも
１種を含有するロジン系物質、の３種から選ばれた少な
くとも１種が好ましく使用される。

【００２１】これらのサイズ成分としては、アルキルケ
テンダイマーについては、例えば特開平６−６５８９０
号公報に記載されているようなアルキルケテンダイマー
を使用すればよい。また、アルキルまたはアルケニル置
換コハク酸無水物については、例えば特開平９−１１１
６９２号公報に記載されているようなアルケニル置換コ
ハク酸無水物を使用すればよい。また、ロジンエステル
類およびその強化物の少なくとも１種を含有するロジン
系物質については、例えば特開平７−２２９０８３号公
報に記載されているようなロジンエステル類およびその
強化物の少なくとも１種を含有するロジン系物質を使用
すればよい。

【００２２】本発明に用いられる膨潤性セルロースは、
ミクロフィブリル化セルロースやバクテリアセルロース
のようにＴＡＰＰＩ標準法ＵＭ２５６に準拠して測定し
た保水度が３００％以上の高度に膨潤したセルロースで
ある。ミクロフィブリル化セルロースとは、例えば特開
昭５６−１００８０１号公報、特開昭５９−１２０６３
８号公報および特開平６−１３６６８１号公報などに開
示されているようなパルプに対して強度に機械的処理を
施して膨潤性を高めた微細繊維状セルロースのことであ
る。

【００２３】本発明に用いられるバクテリアセルロース
とは、微生物により産生された、セルロース、セルロー
スを主鎖としたヘテロ多糖、β−１，３、β−１，２等
のグルカン、のいずれか或はそれらの混合物である。な
お、ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分は、
マンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロー
ス、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の６炭
糖、５炭糖及び有機酸等である。

【００２４】バクテリアセルロースを生産する微生物
は、とくに限定されないが、アセトバクター・アセチ・
サブスピーシス・キシリナム(Acetobactor acetisubsp
xylinum) ＡＴＣＣ １０８２１或は同パストウリアン
(A.pasteurium)、同ランセンス(A.rancens)、サルシナ
・ベントリクリ(Sarcina ventriculi)、バクテリウム・
キシロイデス(Bacterium xyloides)、シュードモナス属
細菌、アグロバクテリウム属細菌等で、バクテリアセル
ロースを生産するものを利用することができる。なお、
培養方法としては、静置培養で作られたものの他に、例
えば特開昭６２−１７５１９０号公報（発明の名称、網
状セルロース生成物及び微生物によるその製造方法）、
特公平５−６８２３５号公報（発明の名称、微生物によ
るセルロース性物質の製造方法）などに記載された通気
攪拌培養で作られたものなど、何れも使用することがで
きる。

【００２５】静置培養バクテリアセルロースがゲル状態
であるのに対し、通気撹拌培養バクテリアセルロースの
場合は、セルロース生産菌の撹拌培養後、培養液から分
離・精製されたバクテリアセルロースが分散状態にある
ため、より分散効果が高いので、本発明の製紙用サイズ
剤組成物を得るのに好適に用いられる。

【００２６】本発明における製紙用サイズ剤組成物を得
るための各種サイズ成分と膨潤性セルロース好ましくは
バクテリアセルロースとの乳化分散方法は、例えばサイ
ズ成分として、アルキルケテンダイマーを使用し、分散
剤として、通気撹拌培養バクテリアセルロースを用いた
場合には、以下のように調製すればよい。

【００２７】すなわち、所定量の通気撹拌培養バクテリ
アセルロースを水中で分散し、ｐＨ調整後、適温に加温
し、これに、あらかじめ加温溶解しておいたアルキルケ
テンダイマーを加えて混合し、高圧吐出型ホモゲナイザ
ーを用いて加圧して乳化させた後、冷却して、所定濃度
の製紙用サイズ剤組成物を得ればよい。この他のサイズ
成分の場合についても、類似の方法で調製が可能であ
る。

【００２８】このようにして得られた本発明の製紙用サ
イズ剤組成物は、高温安定性、機械安定性とも格段に優
れ、これを紙に適用した場合には、極めて良好なサイズ
効果を示した。

【００２９】本発明において用いられる各種サイズ成分
と膨潤性セルロース好ましくはバクテリアセルロースと
の混合比率は、各種サイズ成分の種類によって異なり、
一概には決め難いが、本発明においては、通常、製紙用
サイズ剤組成物中、アルキルケテンダイマー（ａ１）、
アルキルまたはアルケニル置換コハク酸無水物（ａ
２）、ロジンエステル類およびその強化物の少なくとも
１種を含有するロジン系物質（ａ３）、の３種から選ば
れた少なくとも１種（Ａ）と、膨潤性セルロース好まし
くはバクテリアセルロース（Ｂ）の含有比率（Ａ：Ｂ）
が、１：０．０１〜１：０．２であり、好ましくは１：
０．０５〜１：０．１である。含有比率（Ａ：Ｂ）が、
１：０．０１未満であると乳化分散し難く、十分な高温
安定性、機械安定性が得られないのみならず、サイズ効
果も低下する。また、１：０．２を超えると若干サイズ
効果が低下する傾向がみられ、液の増粘傾向もみられ好
ましくない。ここで、本発明において用いられる３種の
サイズ成分につき、上記のとおりそれぞれａ１〜ａ３と
し、これら３種のサイズ成分から選ばれた少なくとも１
種のサイズ成分（ａ１、ａ２、ａ３各単独であってもよ
いし、ａ１〜ａ３が組合わさったものでもよい）をＡと
した。また、Ａは（有効成分換算）、Ｂは（固形分換
算）を表すものである。

【００３０】本発明の製紙用サイズ剤組成物は、製紙用
パルプに対して、通常、サイズ成分が０．０１〜３．０
重量％（有効成分換算）となる量含有せしめることが好
ましい。０．０１重量％未満であると十分なサイズ効果
が得られず、また、３．０重量％を超えて含有せしめて
も、それ以上のサイズ効果の向上は望めず、工程の汚れ
を発生させるため好ましくない。

【００３１】本発明においては、各種サイズ成分と乳化
分散する膨潤性セルロース好ましくはバクテリアセルロ
ースの他に、既存の高分子系の乳化安定剤や、界面活性
剤と併用することも可能である。ここで用いる既存の高
分子としては、例えばカラギーナン、アルギン酸塩、ペ
クチン、グアーガム、グアーガム誘導体、澱粉、澱粉誘
導体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロー
ス、ＣＭＣ、その他のセルロース誘導体、キチン、キト
サン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラヤ
ガム、ゲランガム、ウェランガム、シクロデキストリ
ン、プルラン、ゼラチン、タマリンドガム、ポリアクリ
ルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコー
ル、ポリエチレングリコール、デキストリン、デキスト
ラン、たんぱく質などが挙げられる。さらに、界面活性
剤としては、非イオン性、カチオン性、アニオン性、両
性の界面活性剤が挙げられる。

【００３２】本発明において、各種サイズ成分と膨潤性
セルロース好ましくはバクテリアセルロースとを、乳化
分散することによって、格段の安定性とサイズ効果が得
られる理由としては、下記のことが考えられる。

【００３３】すなわち、本発明において使用される膨潤
性セルロースは、そのほとんど全てが、幅１μｍ以下に
フィブリル化しており、比表面積が大きい。特にバクテ
リアセルロースのフィブリル幅は、０．１μｍ以下と極
めて細く、比表面積が非常に大きいため、各種のサイズ
成分を含む水性分散液と混合し、乳化分散すると、分散
した各種のサイズ成分の間にバクテリアセルロースのフ
ィブリルが適度に分散し、凝集を妨げるため、極めて良
好な高温安定性、機械安定性などを発揮するものと考え
られる。また、優れたサイズ効果を発揮することに関し
ては、本発明の製紙用サイズ剤組成物では、サイズ成分
がバクテリアセルロースのフィブリルに付着した状態で
存在するため、界面活性剤などで分散した製紙用サイズ
剤組成物に比べて、セルロースからなるパルプの繊維に
定着し易く、サイズ成分の歩留りが向上することによる
ものと考えられる。

【００３４】本発明における製紙用サイズ剤組成物を紙
に適用する場合に使用されるパルプとしては、通常の紙
製造に使用できるものであれば特に限定されない。例え
ば、ＬＢＫＰ，ＮＢＫＰなどの化学パルプ、ＧＰ，ＰＧ
Ｗ，ＴＭＰ，ＣＴＭＰ，ＣＭＰ，などの機械パルプ、Ｄ
ＩＰなどの古紙パルプや、亜麻、麻類などの草本類パル
プおよびこれらの混合物が使用できる。また、これらの
木材パルプや草本類パルプと不織布などに使用される各
種の合成繊維を併用することも可能である。

【００３５】本発明における製紙用サイズ剤組成物を適
用する紙には、必要に応じて、アクリルアミド、澱粉、
澱粉誘導体などの乾燥紙力増強剤を、また、尿素・ホル
マリン系樹脂、メラミン・ホルマリン系樹脂、ジアルデ
ヒドデンプン、エポキシ化ポリアミドポリアミン系樹脂
などの湿潤紙力増強剤を含有させてもよい。さらに、通
常の抄紙で使用される添加剤を必要に応じて含ませるこ
とができ、特に限定されない。

【００３６】本発明における製紙用サイズ剤組成物を適
用した紙は、長網抄紙機、円網抄紙機、ハイブリッド抄
紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置を用いて製
造される。

【００３７】本発明における表面塗工方法としては、オ
ンマシンコーター、オフマシンコーターのいずれでも良
い。例えば、従来公知のエアーナイフコーター、カーテ
ンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲート
ロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロー
ルコーター、などの各種装置をオンマシンおよび／また
はオフマシンで用いることができる。この他、従来公知
のサイズプレス、タブサイズ、噴霧などの各種装置をオ
ンマシンおよび／またはオフマシンで用いることができ
る。また、塗工後には、マシンカレンダー、熱カレンダ
ー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレ
ンダー装置を用いて仕上げることも可能である。

【００３８】本発明の製紙用サイズ剤組成物を適用した
紙の用途は特に限定されず、従来公知の用途、例えば筆
記用紙、印刷用紙、感圧記録用紙、感熱記録用紙、イン
クジェット記録用紙、ＰＰＣ用紙、包装用紙、写真支持
体用原紙、化粧紙、段ボール紙、石膏ボード用原紙、各
種加工用原紙などの各種用途において好適に使用でき
る。

【００３９】本発明においては、高温安定性、機械安定
性およびサイズ効果は、以下の方法により求めた。

【００４０】＜高温安定性＞サイズ剤組成物中のサイズ
剤有効成分濃度１０％の液２５０ｍｌを４０℃の恒温槽
中に１週間保温後、乳化分散液を定性濾紙（東洋濾紙Ｎ
ｏ. ５Ｂ）で濾過して濾紙上に残る凝固物を目視で観察
し、下記のとおりのグレード付けを行った。なお、安定
性の良好なサイズ剤組成物としては、下記グレード１ま
たはグレード２が必要である。 グレード１ 凝固物なし。 グレード２ 凝固物極く微量あり。 グレード３ 凝固物かなりあり。 グレード４ 凝固物多量にあり。 ＜機械安定性＞サイズ剤組成物中のサイズ剤有効成分濃
度１０％の液２５０ｍｌを試料容器に加え、液温度４０
℃に保ちながら、マーロン機械安定性試験器（熊谷理器
工業株式会社製）を用いて試験加重１０Ｋｇｆ，回転円
板回転数１０００ｒｐｍの条件で３０分間回転させる。
回転停止後、容器内の試料をメッシュを通して濾過す
る。メッシュ上の凝固物を捕集し、その凝固物を目視で
観察し、下記のとおりのグレード付けを行った。なお、
安定性の良好なサイズ剤組成物としては、下記グレード
１またはグレード２が必要である。 グレード１ 凝固物なし。 グレード２ 凝固物極く微量あり。 グレード３ 凝固物かなりあり。 グレード４ 凝固物多量にあり。 ＜サイズ効果＞ＪＩＳ ８１２２に準じて測定したが、
良好なサイズ効果と判断されるためには、１５秒以上の
値が求められている。

【００４１】

【実施例】以下では、本発明を実施例により詳細に説明
する。なお、本発明は実施例に限定されるものではな
い。以下における部、％は、すべて絶乾重量によるもの
である。

【００４２】通気攪拌培養バクテリアセルロース調製例 シュークロース５％、リン酸１カリウム０．３％、硫酸
マグネシウム（７水塩）０．０５％、カザミノ酸（Ｄｉ
ｆｃｏ社製）０．８％、ｐＨ５の組成の培地４００ｍｌ
を５００ｍｌ容フラスコに張り込み、１２０℃３０分間
殺菌した。

【００４３】上記の組成の培地に寒天２％を加えた斜面
寒天培地で３０℃６日間生育させたアセタバクター・ア
セチ・サブスパーシス・キシリナムＡＴＣＣ１０８２１
を上記の殺菌した培地に接種し３０℃２日間振とう培養
し種母とした。

【００４４】上記培地のそれぞれ単独に酵母エキス（Ｄ
ｉｆｃｏ社製）０．５０％を加え、ｐＨ４に調整した培
地３５０ｍｌをガラス製の気泡塔（全容量５００ｍｌ）
に無菌的に入れ、また、５０ｍｌの種母をあわせて入
れ、通気１／１０ＶＶｍにて、攪拌しつつ３０℃で２週
間培養したところ、粒状のペレットが得られた。水洗後
のペレットを固形分濃度５％で高圧吐出型ホモゲナイザ
ーを用いて圧力２００Ｋｇ／ｃｍ² で分散した。

【００４５】静置培養バクテリアセルロース離解物調製
例 シュークロース５０ｇ／ｌ、酵母エキス５ｇ／ｌ、硫安
５ｇ／ｌ、リン酸水素カリウム（ＫＨ₂ＰＯ₄）３ｇ／
ｌ、硫酸マグネシウム（ＭｇＳＯ₄・７Ｈ₂Ｏ）０．５ｇ
／ｌからなる組成の培地（ｐＨ５．０）５０ｌを容量２
００ｌの培養タンクに張り込み、１２０℃で２０分間蒸
気殺菌して培養液を作製した。次いで、この培養液に酵
母エキス５ｇ／ｌ、ペプトン３ｇ／ｌ、マンニトール２
５ｇ／ｌからなる組成の斜面寒天培地（ｐＨ６．０）で
３０℃、３日間生育させたアセトバクター・アセチ・サ
ブスピーシス・キシリナム（ＡＴＣＣ １０８２１）を
接種し、３０℃で培養した。

【００４６】上記条件で３０日間培養したところ、培養
液の上層に白色のバクテリアセルロース性多糖類を含む
ゲル状の膜が形成された。このセルロース性多糖類のゲ
ル状膜を水洗後、１０×１０ｍｍに切断し、通気攪拌培
養バクテリアセルロースの場合と同様の方法により分散
し、静置培養バクテリアセルロースの５％分散液とし
た。

【００４７】製造例１ 上記の通気攪拌培養バクテリアセルロース調製例に従っ
て作られた所定量の通気攪拌培養バクテリアセルロース
に水を加え、５００ｇとした後、硫酸でｐＨを３.５ に
調整する。この分散液を７０℃に加温する。次に、１０
０ｇのアルキルケテンダイマーを７０℃で溶解して加え
て混合、高圧吐出型ホモゲナイザーを用いて、圧力２０
０Ｋｇ／ｃｍ² で乳化分散した後、全量が１０００ｇと
なるように水を加えて冷却し、サイズ成分（アルキルケ
テンダイマー）を１０％含有する本発明の製紙用サイズ
剤組成物を得、これを製造例１とした。

【００４８】製造例２ 製造例１と同様であるが、通気攪拌培養バクテリアセル
ロース離解物の代わりに、静置培養バクテリアセルロー
スを用いて製造した本発明の製紙用サイズ剤組成物を製
造例２とした。

【００４９】製造例３ １００ｇのアルケニル置換コハク酸無水物（アルケニル
置換基の炭素数１５〜１８の混合物）に、上記の通気攪
拌培養バクテリアセルロース調製例に従って作られた所
定量の通気攪拌培養バクテリアセルロースを加えて混合
し、水を加えて５００ｇとした後、ホモミキサー（特殊
機化工業株式会社製：ＨＶ−Ｍ型）を用いて１００Ｖで
２分間攪拌して乳化分散し、次いで水で希釈し、サイズ
成分（アルケニル置換コハク酸無水物）を１０％含有す
る本発明の製紙用サイズ剤組成物を得、これを製造例３
とした。

【００５０】製造例４ １００ｇのロジンエステルのマレイン酸強化物を約１５
０℃に加熱溶解し、激しく攪拌しながら、これに上記の
通気攪拌培養バクテリアセルロース調製例に従って作ら
れた所定量の通気攪拌培養バクテリアセルロースを加え
て混合し、以下は製造例１と同様にして、サイズ成分
（ロジンエステルのマレイン酸強化物）を１０％含有す
る本発明の製紙用サイズ剤組成物を得、これを製造例４
とした。

【００５１】実施例１〜７ 針葉樹晒クラフトパルプ（ＮＢＫＰ）および広葉樹晒ク
ラフトパルプ（ＬＢＫＰ）６０：４０を離解機で十分離
解した後、ＰＦＩミルを用いてカナダ標準濾水度４５０
ｍｌに叩解した。このパルプスラリー１００部に対し
て、炭酸カルシウム（奥多摩工業株式会社製：ＴＰ１２
１）を１０部、カチオン化タピオカ澱粉（日本食品加工
株式会社製：ネオタック４０Ｔ）を１．０部添加し、上
記製造例１または２で調製された表１に記載されたとお
りの［サイズ成分量：バクテリアセルロース量］のサイ
ズ剤組成物をサイズ成分として０．１部相当量含有する
ように加え、紙料とした。この紙料を用いて、ＴＡＰＰ
Ｉ標準法に準拠して、坪量６０ｇ／ｍ² の手抄きシート
を調製した。その後、１００℃のドラムドライヤーで１
分間乾燥した。

【００５２】実施例８ バクテリアセルロースの代わりに、特開昭５９−１２０
６３８号公報に記載されているような高圧ホモジナイザ
ーを用いて作製された微細繊維状セルロース（膨潤性セ
ルロース）を、表１に記載されたとおりの［サイズ成分
量：微細繊維状セルロース量］のサイズ剤組成物をサイ
ズ成分として０．１部相当量含有するように加えること
以外は、実施例４と同様にして実施例８の紙料を調製し
た。

【００５３】このようにして得られた８種類の本発明の
製紙用サイズ剤組成物を含有した本発明のサイジング紙
について、上記の試験方法により、サイズ性を試験した
結果を表１に示す。

【００５４】また、８種類の本発明の製紙用サイズ剤組
成物について、上記の試験方法により、高温安定性およ
び機械安定性を試験した結果を表１に示す。

【００５５】比較例１ 実施例４と同様であるが、通気攪拌培養バクテリアセル
ロースの代わりに、カチオン化タピオカ澱粉を表１に記
載されたとおりの［サイズ成分量：カチオン澱粉量］の
サイズ剤組成物をサイズ成分として０．１部相当量含有
するように加えること以外は、実施例４と同様にして比
較例１の紙料を調製した。以下、実施例４と同様にし
て、高温安定性、機械安定性およびサイズ性を試験した
結果を表１に示す。

【００５６】実施例９ 実施例４と同様であるが、上記製造例３で調製された表
２に記載されたとおりの［サイズ成分量：バクテリアセ
ルロース量］のサイズ剤組成物をサイズ成分として０．
１部相当量含有するように加えること以外は、実施例４
と同様にして行い、高温安定性、機械安定性およびサイ
ズ性を試験した結果を表２に示す。

【００５７】比較例２ 実施例９と同様であるが、通気攪拌培養バクテリアセル
ロースの代わりに、カチオン化タピオカ澱粉を表２に記
載されたとおりの［サイズ成分量：カチオン澱粉量］の
サイズ剤組成物をサイズ成分として０．１部相当量含有
するように加えること以外は、実施例９と同様にして行
い、高温安定性、機械安定性およびサイズ性を試験した
結果を表２に示す。

【００５８】実施例１０ 実施例４と同様であるが、上記製造例４で調製された本
発明の製紙用サイズ剤組成物が、表３に記載されたとお
りの［サイズ成分量：バクテリアセルロース量］のサイ
ズ剤組成物をサイズ成分として０．３部相当量含有する
ように加えること以外は、実施例４と同様にして行い、
高温安定性、機械安定性およびサイズ性を試験した結果
を表３に示す。

【００５９】比較例３ 実施例１０と同様であるが、通気攪拌培養バクテリアセ
ルロースの代わりに、カチオン化タピオカ澱粉を表３に
記載されたとおりの［サイズ成分量：カチオン澱粉量］
のサイズ剤組成物をサイズ成分として０．３部相当量含
有するように加えること以外は、実施例１０と同様にし
て行い、高温安定性、機械安定性およびサイズ性を試験
した結果を表３に示す。

【００６０】

【表１】

【００６１】

【表２】

【００６２】

【表３】

【００６３】実施例１１ 実施例４と比較例１の製紙用サイズ組成物各４重量％水
溶液を、サイズプレス装置により、表面塗工を行った結
果、実施例４のサイジング紙は優れたサイズ効果を示し
たが、比較例１のサイジング紙はエマルジョン破壊を惹
起し、サイズ効果が著しく劣るものしか得られなかっ
た。

【００６４】＜評価＞上記の表１の試験結果から、分散
剤としてカチオン化タピオカ澱粉を用いて、サイズ成分
としてアルキルケテンダイマーを乳化分散せしめた本発
明外の製紙用サイズ剤組成物を使用した場合の比較例１
は、高温安定性、機械安定性およびサイズ性の全ての特
性において、著しく劣る結果しか得られないことが解
る。一方、分散剤として通気攪拌培養バクテリアセルロ
ースを用いて、サイズ成分としてアルキルケテンダイマ
ーを乳化分散せしめた本発明の製紙用サイズ剤組成物
は、比較例１に比べて、いずれも高温安定性、機械安定
性およびサイズ性の全ての特性において、優れた結果が
得られ、高温安定性および機械安定性は、実施例２〜６
が良好であって、特に実施例４〜６が良好であることが
解る。また、サイズ性については、実施例２〜６が良好
であって、特に実施例３〜５が良好であることが解る。
また、通気攪拌培養バクテリアセルロースに代えて静置
培養バクテリアセルロースを使用した実施例７は、通気
攪拌培養バクテリアセルロースの場合よりも僅かに劣る
傾向がみられたが、比較例１と比較して、格段に優れて
いることが解る。さらに、バクテリアセルロースの代わ
りに膨潤性セルロースを用た実施例８は、通気攪拌培養
バクテリアセルロースや静置培養バクテリアセルロース
に比べて若干劣る傾向がみられたが、比較例１と比較し
ては、優れていることが解る。上記の表２の試験結果か
ら、分散剤としてカチオン化タピオカ澱粉を用いて、サ
イズ成分としてアルケニル置換コハク酸無水物を乳化分
散せしめた本発明外の製紙用サイズ剤組成物を使用した
場合の比較例２は、高温安定性、機械安定性およびサイ
ズ性の全ての特性において、著しく劣る結果しか得られ
ないことが解る。一方、分散剤として通気攪拌培養バク
テリアセルロースを用い、サイズ成分としてアルケニル
置換コハク酸無水物を乳化分散せしめた本発明の製紙用
サイズ剤組成物は、比較例２に比べて、いずれも高温安
定性、機械安定性およびサイズ性の全ての特性におい
て、格段に優れた結果が得られることが解る。上記の表
３の試験結果から、分散剤としてカチオン化タピオカ澱
粉を用いて、サイズ成分としてロジンエステルのマレイ
ン酸強化物を乳化分散せしめた本発明外の製紙用サイズ
剤組成物を使用した場合の比較例３は、高温安定性、機
械安定性およびサイズ性の全ての特性において、著しく
劣る結果しか得られないことが解る。一方、分散剤とし
て通気攪拌培養バクテリアセルロースを用い、サイズ成
分としてロジンエステルのマレイン酸強化物を乳化分散
せしめた本発明の製紙用サイズ剤組成物は、比較例３に
比べて、いずれも高温安定性、機械安定性およびサイズ
性の全ての特性において、格段に優れた結果が得られる
ことが解る。

【００６５】

【発明の効果】アルキルケテンダイマー、アルキルまた
はアルケニル置換コハク酸無水物、ロジンエステル類お
よびその強化物の少なくとも１種を含有するロジン系物
質、の３種から選ばれた少なくとも１種と、分散剤とし
て膨潤性セルロース好ましくはバクテリアセルロースを
用いた本発明の製紙用サイズ剤組成物は、高温安定性お
よび機械安定性に優れ、該製紙用サイズ剤組成物を紙に
適用した場合は、サイズ効果が格段に向上したサイジン
グ紙が得られる。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルキルケテンダイマー、アルキルまた
   はアルケニル置換コハク酸無水物、ロジンエステル類お
   よびその強化物の少なくとも１種を含有するロジン系物
   質、の３種から選ばれた少なくとも１種を、分散剤によ
   り乳化分散せしめてなる製紙用サイズ剤組成物であっ
   て、該分散剤が膨潤性セルロースであることを特徴とす
   る製紙用サイズ剤組成物。
2. 【請求項２】 膨潤性セルロースが、バクテリアセルロ
   ースであることを特徴とする請求項１記載の製紙用サイ
   ズ剤組成物。
3. 【請求項３】 バクテリアセルロースが、通気攪拌培養
   バクテリアセルロースであることを特徴とする請求項２
   記載の製紙用サイズ剤組成物。
4. 【請求項４】 該製紙用サイズ剤組成物中、アルキルケ
   テンダイマー（ａ１）、アルキルまたはアルケニル置換
   コハク酸無水物（ａ２）、ロジンエステル類およびその
   強化物の少なくとも１種を含有するロジン系物質（ａ
   ３）の３種から選ばれた少なくとも１種（Ａ）と、膨潤
   性セルロース（Ｂ）の含有比率（Ａ：Ｂ）が、１：０．
   ０１〜１：０．２であることを特徴とする請求項１記載
   の製紙用サイズ剤組成物。
5. 【請求項５】 請求項１〜４に記載の製紙用サイズ剤組
   成物を用いたサイジング紙。