JPH11347323A - 焼結体フィルタとその製造方法 - Google Patents

焼結体フィルタとその製造方法

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JPH11347323A
JPH11347323A JP10157801A JP15780198A JPH11347323A JP H11347323 A JPH11347323 A JP H11347323A JP 10157801 A JP10157801 A JP 10157801A JP 15780198 A JP15780198 A JP 15780198A JP H11347323 A JPH11347323 A JP H11347323A
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仁志 大高
Toshiyuki Nashimoto
俊行 梨本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧力損失を上げることなく、より微細な粒子
の捕捉性能を高めた焼結体フィルタをを提供する。 【解決手段】 複数層の熱可塑性樹脂粉体を基にした焼
結体であり、未焼結時にその主成分中で、原料粉体の成
分、粒度分布、かさ密度の条件内の少なくとも1条件を
各層で変えることで、吸着側層の圧力損失を他層に対し
て大きくした焼結体フィルタであり、フィルタ全体とし
ての圧力損失の上昇を抑えつつ、捕集面付近だけを緻密
構造にして微細粉塵を捕集する効果を高めることがで
き、また、その設定を用途に合わせてより細かく設定す
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、産業用集塵器や分
離器における固気分離或いは固液分離用のフィルタ装置
に関し、微細粒子を捕集するのに好適な焼結フィルタ及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来フィルタ濾材としては、バグフィル
タに代表される繊維(織布或いは不織布)濾材と並び、樹
脂や無機物或いは金属の粉体を用いた適当な孔径の連結
多孔を有する焼結多孔体が多く用いられている。フィル
タに用いるべく製作される焼結多孔体は通常、自形が保
たれるような強度に設計されており、自己形状支持体と
なっている。従って、バグフィルタ等に用いられる形状
支持体いわゆるリテーナが不要であり、エレメントの脱
着や交換等の取扱いがバグフィルタに比べて非常に容易
である。また、焼結体では表面形状を波形やひだ状など
任意に成形することができるため、フィルタエレメント
の単位濾過面積を大きくとることができ、従って装置全
体がコンパクトになるという利点もある。
【0003】これら焼結多孔体は通常、一定の孔径分布
と強度を有する均一の組織で成り立っている。つまり、
構成成分等が単一或いは複数であるかどうかに関わら
ず、その構成成分がほぼ均等に拡散された原料粉体を焼
結した物である。従って、この焼結体のどの部分をとっ
ても、それらが誤差範囲或いは制御可能な範囲で、略同
一の孔径分布と強度を有する。焼結体を均一の組織で構
成することは、フィルタエレメントとして用いる場合に
重要な要素である。つまり、どの部分の圧力損失も強度
も同一であるから、フィルタエレメントとして各部分で
均等に濾過性能を発揮することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで近年、大気汚
染や環境汚染に対する社会的監視が強まる中、フィルタ
装置への要求、特に濾過性能についての要求がより高い
物となっている。即ちフィルタには、1)圧力損失は現状
のままあるいは小さく、2)更に微細粒子の捕捉性能が高
いものが求められている。
【0005】ここで図7は従来の焼結多孔体で圧力損失
を低くした場合の粉塵等の捕集形態を表す模式図であ
る。この構成のように、濾材100の構成成分のかさ密
度を小さくして孔径を大きくすることで、圧力損失ΔP
を小さくすることはできる。しかし、孔径が大きくなる
と粉塵粒子の捕捉は困難になり、粒子が孔を通り抜ける
「目抜け」、或いは濾材中に滞留してしまう「目詰まり」を
生じてしまい、フィルタとしての濾過性能の低下は免れ
ないという問題がある。
【0006】一方、図8は従来の焼結多孔体で捕捉性能
を高めた場合の粉塵等の捕集形態を表す模式図である。
この構成のように、濾材200の構成成分のかさ密度を
大きくして孔径を小さくすることで、粉塵粒子の捕捉性
能を高めることは可能である。しかし、同時に濾材の圧
力損失ΔPは大きくなってしまう。そしてこれに対処す
るには、濾過面積を大きくして、つまりフィルタ装置全
体の容量を大きくして濾過風速を落とすか、送風機の動
力を大きくするかなど、いすれにせよ装置の大型化が必
要となってくる。
【0007】従って、本発明の第1の目的は、上記要求
を満たすものであり、圧力損失を上げることなく、より
微細な粒子の捕捉性能を高めた焼結体フィルタを提供す
ることにある。更に、本発明の第2の目的は、上記要求
を満たすものであり、圧力損失を上げることなく、より
微細な粒子の捕捉性能を高めた焼結体フィルタを製作す
る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を本発明は、以
下の構成により達成する。 複数層の熱可塑性樹脂粉体を基にした焼結体であ
り、未焼結時にその主成分中で、原料粉体の成分、粒度
分布、かさ密度の条件内の少なくとも1条件を各層で変
えることで、吸着側層の圧力損失を他層に対して大きく
した焼結体壁と焼結体フィルタ。つまり、例えば、粒子
吸着側となる表面付近の組織層のかさ密度を大きくして
孔径を小さくして微細粒子を捕捉し、その層で圧力損失
が上がった分を、反対面付近の層のかさ密度を小さくし
て圧力損失を下げ、全体としての圧力損失と強度の維持
を提供するものである。
【0009】 複数層が一度に焼結されて一体焼結体
となる上記に記載の焼結体フィルタ。 前記焼結体壁が円筒状或いは多角筒状に成形され、
且つ少なくとも一方の端が開放された形状である上記
又はに記載の焼結体フィルタ。 前記焼結体壁内の通気方向に対して前記吸着側層か
らそれに対する裏面層へ順次圧力損失が小さくなるよう
に前記主成分中の条件が変更される構成である上記〜
の1つに記載の焼結体フィルタ。 前記焼結体壁が少なくとも3層で構成され、表裏面
層に挟まれた中間層がそれらより小さい圧力損失を有し
た構成である上記〜の1つに記載の焼結体フィル
タ。 前記焼結体の少なくとも一層の母材原料粉体に粒子
状或いは繊維状の導電性材料が0.01%〜25%の重量割合で
混合されている構成である上記〜の1つに記載の焼
結体フィルタ。 前記吸着側面に平均粒径2〜10μmのフッ素樹脂粉
体から成る厚さ10〜150μmのコーティング層を有する構
成である上記〜の1つに記載の焼結体フィルタ。
【0010】 上記に記載の焼結体フィルタを製造
する方法であって、通気性を有する自己支持性のネット
或いは境界板により金型内を各層用の空間に仕切り、熱
可塑性樹脂粉体を原料とし各層に特定な成分の原料粉体
を各層同士で成分が混合しないように各対応空間に供給
し、一度の焼結で多層構造の焼結体壁を形成する焼結体
フィルタの製造方法。つまり、上記のようなネット或い
は境界板により金型内を各層用の空間に仕切ることで、
隣り合う層の成分が混ざり合うことを抑え、更に、一度
に焼結を行うことで隣り合う層の樹脂が絡み合い、ボル
ト、ビス、接着剤等の媒体を使用することなく、各層で
異なった通気性を保ちつつ一体となった焼結体フィルタ
を成形することができる。
【0011】ここで、各層構成の好ましい物性として
は:構成各層の、厚さが0.5〜15[mm]、通気度(フラジー
ル法:圧損12.7mm水柱時)が0.3〜100[cm3/cm2/sec]、気
孔率が5〜60[%]、引張強さが0.2〜3.0[kgf/mm2]の範囲
内にあることが本発明として好ましい。この際の層の成
分としては、焼結体の母材原料粉体が、ポリエチレンや
ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂
やポリスルフォン系樹脂の粉体が好ましい。焼結体の母
材原料粉体に含む成分材料としては、鉱石或いはセラミ
ックスなどの鉱物性無機材料の粒子や繊維を1%〜45%の
重量割合で混合した粉体を構成層中の少なくとも一層に
混入することが好ましい。
【0012】上記ネットの形態としては、そのまま残置
して焼結する構成が可能で、その場合、ネットの構成と
しては、熱可塑性樹脂粉体原料を、例えば水平面に対し
て垂直方向に層面を有する多層に構成する為に、その境
界として樹脂或いは金属製の、目開きが接触する2種の
層の原料粉体のうち大きい方の平均粒度の50〜150%で
且つ開口率が10〜50%且つ厚さが最少層厚の1/10〜1/10
0の自己支持性のネットを用いることが好ましい。
【0013】また、原料粉体を金型に投入後、層間の境
界板を取り除いて焼結する構成も可能で、その場合、境
界板の構成としては、異なる熱可塑性樹脂粉体原料を、
例えば水平面に対して垂直な方向に層面を有する多層に
構成する為に、その境界として最少層厚の1/100〜1/100
0の厚さの樹脂或いは紙或いは金属製の板を用いること
が好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態とし
て、角筒形の二層樹脂焼結体フィルタについて説明す
る。図1は本発明の焼結体フィルタの局所を拡大して粉
塵等の捕集形態を示す模式図である。この実施形態で
は、焼結体フィルタ10の吸着側層である外層12の構
成成分のかさ密度を大きくして、外層12において気流
が通り抜けるための平均的な孔径を小さくし、外層12
の圧力損失ΔPを大きくしている。そして、内層14の
構成成分のかさ密度を小さくして、内層14において気
流が通り抜けるための平均的な孔径を大きくすること
で、圧力損失ΔPを小さくしている。
【0015】つまり、外層12では塵等の吸着面で孔径
が小さいので、微細粒子を捕捉し易くなる。その一方で
外層12自体の単位面積当たりの圧力損失は大きな物と
なってしまう。そこで、外層12の厚さをそれ単独では
フィルタとして不十分な程度に薄くし、焼結体フィルタ
10の厚み方向を考慮した場合の圧力損失の上昇を抑え
る。その上で、構成成分のかさ密度を小さくした内層1
4を備えることで、外層12と内層14とを合わせた値
がフィルタとしての所望の圧力損失となるように各層の
厚さを設定し、圧力損失の上昇を抑える。このような構
成とすることで、強度を落とすことなく、全体としての
圧力損失の上昇を抑えつつ、微細粒子の捕捉性能をより
高いものとすることができる。
【0016】このような圧力損失の調整に関与する主な
項目としては、熱可塑性樹脂粉体の未焼結時のその主成
分中での、原料粉体の成分、粒度分布、かさ密度等であ
る。特に、要求される微細粒子の捕捉性能に関しては、
吸着側層のこれらの調整により単位面積当たりの圧力損
失を大きくする側に設定する。そして、フィルタ全体と
して圧力損失の上昇を抑えるためには、フィルタの強度
維持のために吸着側層の厚みとそれ以外の層の厚みとを
バランスを取りつつ、吸着側層以外の層の原料粉体の成
分、粒度分布、かさ密度等の設定により圧力損失を調整
する。
【0017】この焼結体フィルタ10の実際の使用形態
として、図2を参照して説明する。この図2は本発明の
焼結体フィルタの内の1形態を使用する捕集装置の1つ
の実施形態を示す概略図である。この捕集装置1は略角
形状の密閉されたケーシング2を有し、その内部は区画
壁である上部天板3によって下部の捕集室4と上部の清
浄空気室5とに分けられている。また、ケーシング2の
中腹に下部の捕集室4に連通する含塵空気の供給口6が
設けられている。また、ケーシング2の上部に清浄空気
室5に連通する清浄空気の排出口7が設けられている。
そして、上部天板3の下面には本発明の焼結体フィルタ
の内の1形態である中空扁平状の複数のフィルタエレメ
ント8が所定の間隔で取り付けられている。フィルタエ
レメント8は上端に大径部9が形成され、そして、この
大径部9が締め付けボルト11により上部天板3に取り
付けられている。
【0018】供給口6からケーシング2の捕集室4内に
供給された含塵空気は、中空に形成されたフィルタエレ
メント8の濾過体を通過して内側に流れ込む。この時粉
塵はフィルタエレメント8の表面に付着・堆積して捕集
され、フィルタエレメント8の内側に流れ込んだ清浄空
気は、ケーシング2の上部の清浄空気室5に入り、その
排出口7から所定の場所に導かれる。噴射管13は通常
の空気流とは逆の空気流を瞬間的にフィルタエレメント
8内に噴射する物で、フィルタエレメント8の表面に付
着・堆積した粉塵等をトレー15上に払い落とす作用を
備えている。
【0019】図3は図2に示したフィルタエレメント8
に対するP−P断面図である。フィルタエレメントは捕
集能力、払い落とし能力等を考慮して形状が決定され、
図3の装置では、フィルタエレメント8の断面は波形形
状ないし蛇腹形状としている。なお、本発明の焼結体フ
ィルタは上記のような中空形態に限らず、円板等の平板
形状とすることもできる。
【0020】焼結原料は、例えばポリエチレン樹脂粉の
平均粒径の異なる二種を用いる。基本的には、ポリエチ
レン樹脂粉で粒子径が大きいXは内層(圧力損失小)に、
粒子径の小さいYは外層(圧力損失大)の原料とする。と
にかくこの二種の平均粒径に差があれば、圧力損失の異
なる複数層の焼結体フィルタを作成することが可能であ
るが、使用において都合の良い粒径としては、X:平均
粒子径300〜600μm,Y:平均粒子径100〜200μmであ
る。この際、各層に用いる原料は単種である必要性は無
く、例えばXとYをそれぞれの層に適当な粉体かさ密度
に調整した混合物でもよい。また、XとYが同種或いは
同グレードの樹脂である必要もない。要は、目的とする
フィルタエレメントとして必要な圧力損失と強度を得る
ことができる材料で、焼結可能な材料であるものなら、
どのような組合わせでも構わない。
【0021】次に、本発明の焼結体フィルタの製造方法
について記載する。まず、以下では中空の角筒状の焼結
体フィルタを製造する場合を述べるもので、図3の物と
は形状が異なるが、同様の工程で製造することができ
る。始めに原料の金型20への充填の前工程について説
明する。図4は本発明の焼結体フィルタを製造するため
の金型の1実施形態を示す斜視図である。焼結体の外形
を形成する為の外金型22内に内形を形成する内金型2
4を所望の距離を保って設置する。外金型22と内金型
24で形成する空間に、樹脂製のネット26を設置す
る。ネット26、外金型22、内金型24それぞれの距
離は、所望の圧力損失と微細粒子捕集能力に対して必要
とされる外層・内層のそれぞれの厚さに対応するように
設定される。
【0022】図5は金型への原料の投入形態を示す模式
図である。この図では、金型20内にネット26を設置
後、上記二種の原料をそれぞれの隙間、Xは内層(ネッ
ト26と内金型24の間)にYは外層(ネット26と外金
型22の間)に、投入充填用ホッパ30により原料を金
型20内の全ての間隙について同時に投入充填してい
く。同時に投入充填することで常に金型20内のいずれ
の間隙についても原料粉XとYの充填高さを同じくし、
充填時のネット26と金型22又は26と間の距離が変
化しないようにする。また原料投入に際しては、ネット
と金型間距離つまり焼結後にそれぞれの層となる部分の
厚さに応じた排出幅を有するホッパ形状の投入口を用い
るのが好ましい。
【0023】図6は中空状底付きの焼結体フィルタとす
る場合の金型への原料の投入形態を示す模式図である。
中空状底付きの焼結体フィルタとする場合は、予め外金
型22a底部に所定厚さd1で外層用の原料Yを投入充
填し、その上にネット26a枠内に内層用の原料Xを所
定厚さd2に充填する。内金型24aはこの底部に充填
された原料Xまでの挿入で停止される。その後は、図5
と同様に、投入充填用ホッパ30により原料を金型20
a内の全ての間隙について同時に原料を投入充填してい
く。
【0024】そして、このように原料充填した金型を炉
に入れ(天地無用)、それぞれの層を同時に220〜230℃で
約2時間加熱し、50〜60℃前後まで冷却し(加熱時間・
温度、冷却温度については、使用する原料により異な
る。)、これら二層を一体に焼結する。その後、外金型
22から内金型24及び焼結体の順に引き抜く。尚、外
金型22は分割式であるほうが焼結体を取出し易く望ま
しい。このようにして、外側と内側に異なる組織の二層
を有する、二層樹脂焼結多孔体を得る。ネットを用いる
場合そのネットはそのまま残置することになるが、ネッ
トを用いずに鉄板のような薄い無孔材料を用いて、原料
を投入充填した後、その無孔材料を各層が混じり合わな
いように引き抜くことも可能である。この際の鉄板の厚
さは、焼結体を構成する層のうち最少厚さの1/100〜1/1
000であることが望ましい。
【0025】また、焼結時にネットを残置する場合、こ
れに使用するネット26の目開きは、層境界で各層の粒
子が混じり合わないことが条件であり、粒子径が大きい
方の原料の平均粒子径の50〜150%が可能で、100%以下
であることがより望ましい。ネットの開口率は、低すぎ
ると圧力損失の上昇となるので、各層の圧力損失に影響
を与えない程度以上が好ましく、更にはより開口率の高
い方が好ましいが、層境界で各層の粒子が混じり合わな
いようにすることが必要である。従って、ネットの開口
率は25〜75%程度の範囲となる。ネットの厚さは、焼結
体を構成する層の最少厚さに対して、1/10〜1/100であ
ることが望ましい。また、ネットの素材はできれば焼結
原料と同種で、焼結時に原料と融着することが焼結体の
強度上好ましいが、特に必要条件ではなく、金属等のネ
ットを使用しても構わない。
【0026】なお、得られた焼結体の表面にフッ素樹脂
粉体からなるコーティング層を付加して、特に精密濾過
に最適な濾材として提供することもできる。
【0027】更に、各層を別々に焼結の後、外層となる
焼結体フィルタの中に内層となるフィルタを挿入固定す
ることもできる。この場合には固定するための部材若し
くは接着剤などが必要となるが、それぞれの層の原料が
混じることはあり得なくなる。また、外層と内層との組
み合わせを焼結後であっても容易に変更することができ
る。
【0028】
【実施例】上記、少なくとも2層の異なる組織の層を有
するの焼結体フィルタとその製造方法を、以下に実施例
を示して説明する。しかし本発明は、以下の実施例によ
って制限されるものではない。以下の実施例の焼結体フ
ィルタの形状は、簡略化及び実験の容易性から図2の複
雑な形態とはせず、中空の角筒状とし、2層及び3層に
ついて検討する。
【0029】(実施例1) 原料A:超高分子量ポリエチレン粉体(平均粒子径130μ
m、真密度0.935g/cm3、粉体かさ密度0.51g/cm3) 原料B:高密度ポリエチレン粉砕粉体(平均粒子径350μ
m、真密度0.934g/cm3、粉体かさ密度0.26g/cm3) 上記原料Aと原料Bを用い、焼結体フィルタの二層の原
料とした。粒子径の小さい方の原料Aはそのまま外層の
原料とし、内層には原料Aと原料Bを重量比4対6で混
合した原料C(粉体かさ密度0.36g/cm3)を用いた。 内寸法:縦100mm、横100mm、幅30mmの片端閉塞で二つ割
の外金型に、寸法:縦120mm、横80mm、幅10mmの内金型
を設置し、外金型と内金型の間に10mm幅の隙間を形成す
るようにした。この隙間の中間に、高密度ポリエチレン
製の縦120mmのネット(目開き350μm、線径0.5mm)を設置
し外部から仮固定した。この際、このネットには予めア
イロンをかけ、90mm×90mmの矩形断面の筒形態に成形し
ておいた。
【0030】次に、投入口外径寸法:9mm×90mmの投入
充填用ホッパM(外層及び内層用の2つの投入口が一体
となっている。)を2つ、同9mm×20mmの同ホッパN
(外層及び内層用の2つの投入口が一体となってい
る。)を2つ、計4つの投入充填用ホッパを用意し、金
型の長辺の隙間にはホッパMで、同短辺にはホッパN
で、ネットと外金型の隙間(外層)には原料Aを、ネット
と内金型の隙間(内層)には原料Cを同時に投入充填し
た。なお、ホッパM、Nそれぞれの断面形状としては内
金型に近い辺を短辺とした台形形状が好ましく、これら
を組み合わせることで内金型上方を除く外層及び内層の
上方全体をホッパで覆うことができ、各層への原料投入
を全体で均等にできる。これをそのまま電気炉内に移
し、常温から昇温し、220℃で2時間保持した後、50℃
まで冷却したのち電気炉から取出し、内金型を引き抜い
た後、外金型を分解して、角筒状の二層ポリエチレン樹
脂焼結多孔体を得た。これに端部処理を施せば、実施例
1のフィルタエレメントとなる。
【0031】(実施例2) 原料G:ポリサルフォン樹脂粉砕粉体(平均粒子径150μ
m、真密度1.24g/cm3、メルトフロー指数6.5(ASTM D123
8)、粉体かさ密度0.51g/cm3) 原料H:ポリサルフォン樹脂粉砕粉体(平均粒子径250μ
m、粉体かさ密度0.29g/cm3) 上記原料Gと原料Hを用い、二層の焼結体フィルタの原
料とした。粒子径が小さい方の原料Gを外層の原料と
し、内層には原料Hを用いた。
【0032】金型、ネット及び投入充填用ホッパについ
ては、実施例1と同様の物を使用し、ネットと外金型の
隙間(外層)には原料Gを、ネットと内金型の隙間(内層)
には原料Hを同時に投入充填した。これをそのまま電気
炉内に移し、常温から昇温し、230℃で2時間保持した
後、150℃まで冷却したのち電気炉から取出し、内金型
を引き抜いた後、外金型を分解して、角筒状のポリサル
フォン製二層樹脂焼結多孔体を得た。これに端部処理を
施せば、実施例2のフィルタエレメントとなる。
【0033】(実施例3)実施例1に示した原料Aと原
料Bを用い、焼結体フィルタの三層の原料とした。粒子
径の小さい方の原料Aはそのまま外層の原料とし、中間
層には原料Aと原料Bを重量比4対6で混合した原料C
(粉体かさ密度0.36g/cm3)を用い、内層には原料Aと原
料Bを重量比2対8で混合した原料D(粉体かさ密度0.3
1g/cm3)を用いた。
【0034】金型については実施例1と同様の物を使用
し、外金型と内金型の間に10mm幅の隙間を形成するよう
にした。この間隙幅をほぼ三等分するように、高密度ポ
リエチレン製の縦120mmのネット(目開き350μm、線径0.
5mm)を二枚設置し外部から仮固定した。この際、このネ
ットには予めアイロンをかけ、それぞれ93mm×93mm,96m
m×96mmの矩形断面の筒形態に成形しておいた。
【0035】次に、金型内の全ての間隙に対向する位置
に投入充填用ホッパを用意し、原料を金型内の全ての間
隙について同時に投入充填した。この際、ネットと外金
型の隙間(外層)には原料Aを、ネット間の隙間(中間層)
には原料Cを、ネットと内金型の隙間(内層)には原料D
を同時に投入充填する。これをそのまま電気炉内に移
し、常温から昇温し、220℃で2時間保持した後、50℃
まで冷却したのち電気炉から取出し、内金型を引き抜い
た後、外金型を分解して、角筒状の三層ポリエチレン樹
脂焼結多孔体を得た。これに端部処理を施せば、実施例
3のフィルタエレメントとなる。
【0036】(比較例1)実施例1に示した原料A,B
を用い、原料A,Bを重量比7対3で混合した原料(粉
体かさ密度0.41g/cm3)を用い、単層の焼結体フィルタを
製作した。金型及び投入充填用ホッパについては、実施
例1と同様の物を使用し、原料Aと原料Bを重量比7対
3で混合した原料を投入充填用ホッパにより投入充填し
た。これをそのまま電気炉内に移し、常温から昇温し、
220℃で2時間保持した後、50℃まで冷却したのち電気
炉から取出し、内金型を引き抜いた後、外金型を分解し
て、角筒状の単層ポリエチレン樹脂焼結多孔体を得た。
これに端部処理を施せば、比較例1のフィルタエレメン
トとなる。
【0037】(比較結果)上記各実施例及び比較例によ
るフィルタエレメントを試験用粉塵負荷装置にかけて、
比較実験を行った。それぞれの初期圧力損失値を表1
に、粉塵負荷試験における圧力損失値と清浄排気中の含
塵濃度のデータを表2に示す。尚、負荷試験の条件は、
粉塵は炭酸カルシウム粉(平均粒径15μm)で、負荷量は1
0g/m3N、濾過風速は1m/minである。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】表1,2から解るように、圧力損失は比較
例1と同等若しくは低くなっているにも拘わらず、本発
明のフィルタによれば清浄排気中の含塵濃度を非常に低
くすることができる。
【0041】
【発明の効果】複数層の熱可塑性樹脂粉体を基にした焼
結体の少なくとも1つの成分条件を各層で変えること
で、吸着側層の圧力損失を他層に対して大きくした焼結
体フィルタにより、フィルタ全体としての圧力損失の上
昇を抑えつつ、捕集面付近だけを緻密構造にして微細粉
塵を捕集する効果を高めることができ、また、その設定
を用途に合わせてより細かく設定することができる。更
に、それぞれの層を別々に焼結の後、組み付ける場合に
は、それぞれの層の原料が混じることはあり得なくな
り、また、外層と内層との組み合わせを焼結後であって
も容易に変更することができる。一方、一度機に一体の
焼結体とする場合には、張り合わせや接合などフィルタ
として好ましくない工程が不要となって、性能が安定
し、製造工程も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼結体フィルタの局所を拡大して粉塵
等の捕集形態を示す模式図である。
【図2】本発明の焼結体フィルタの内の1形態を使用す
る捕集装置の1つの実施形態を示す概略図である。
【図3】図2に示したフィルタエレメント8に対するP
−P断面図である。
【図4】本発明の焼結体フィルタを製造するための金型
の1実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4に示した金型への原料の投入形態を示す模
式図である。
【図6】中空状底付きの焼結体フィルタとする場合の図
4に示した金型への原料の投入形態を示す模式図であ
る。
【図7】従来の焼結多孔体で圧力損失を低くした場合の
粉塵等の捕集形態を表す模式図である。
【図8】従来の焼結多孔体で捕捉性能を高めた場合の粉
塵等の捕集形態を表す模式図である。
【符号の説明】
1 捕集装置 3 上部天板 5 清浄空気室 6 供給口 7 排出口 8 フィルタエレメント 10 焼結体フィルタ 12 外層 14 内層 20,20a 金型 22,22a 外金型 24,24a 内金型 26,26a ネット 100 濾材 200 濾材

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数層の熱可塑性樹脂粉体を基にした焼
    結体であり、未焼結時にその主成分中で、原料粉体の成
    分、粒度分布、かさ密度の条件内の少なくとも1条件を
    各層で変えることで、吸着側層の圧力損失を他層に対し
    て大きくした焼結体壁とすることを特徴とする焼結体フ
    ィルタ。
  2. 【請求項2】 前記複数層が一度に焼結されて一体の焼
    結体となることを特徴とする請求項1に記載の焼結体フ
    ィルタ。
  3. 【請求項3】 前記焼結体壁が円筒状或いは多角筒状に
    成形され、且つ少なくとも一方の端が開放された形状で
    あることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体フ
    ィルタ。
  4. 【請求項4】 前記焼結体壁内の通気方向に対して前記
    吸着側層からそれに対する裏面層へ順次圧力損失が小さ
    くなるように前記主成分中の条件が変更される構成であ
    ることを特徴とする請求項1〜3の1つに記載の焼結体
    フィルタ。
  5. 【請求項5】 前記焼結体壁が少なくとも3層で構成さ
    れ、表裏面層に挟まれた中間層がそれらより小さい圧力
    損失を有していることを特徴とする請求項1〜3の1つ
    に記載の焼結体フィルタ。
  6. 【請求項6】 前記焼結体の少なくとも一層の母材原料
    粉体に粒子状或いは繊維状の導電性材料が0.01%〜25%の
    重量割合で混合されていることを特徴とする請求項1〜
    5の1つに記載の焼結体フィルタ。
  7. 【請求項7】 前記吸着側面に平均粒径2〜10μmのフ
    ッ素樹脂粉体から成る厚さ10〜150μmのコーティング層
    を有することを特徴とする請求項1〜6の1つに記載の
    焼結体フィルタ。
  8. 【請求項8】 請求項1に記載の焼結体フィルタを製造
    する方法であって、 通気性を有する自己支持性のネット或いは境界板により
    金型内を各層用の空間に仕切り、 熱可塑性樹脂粉体を原料とし各層に特定な成分の原料粉
    体を各層同士で成分が混合しないように各対応空間に供
    給し、 一度の焼結で多層構造の焼結体壁を形成することを特徴
    とする焼結体フィルタの製造方法。
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