JP3990498B2 - 焼結フィルタの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業用集塵器や分離器における固気分離或いは固液分離用のフィルタ装置に関し、微細粒子を捕集するのに好適な焼結フィルタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来フィルタ濾材としては、バグフィルタに代表される繊維(織布或いは不織布)濾材と並び、樹脂や無機物或いは金属の粉体を用いた適当な孔径の連結多孔を有する焼結多孔体が多く用いられている。
フィルタに用いるべく製作される焼結多孔体は通常、自形が保たれるような強度に設計されており、自己形状支持体となっている。従って、バグフィルタ等に用いられる形状支持体いわゆるリテーナが不要であり、エレメントの脱着や交換等の取扱いがバグフィルタに比べて非常に容易である。
また、焼結体では表面形状を波形やひだ状など任意に成形することができるため、フィルタエレメントの単位濾過面積を大きくとることができ、従って装置全体がコンパクトになるという利点もある。
【0003】
これら焼結多孔体は通常、一定の孔径分布と強度を有する均一の組織で成り立っている。つまり、構成成分等が単一或いは複数であるかどうかに関わらず、その構成成分がほぼ均等に拡散された原料粉体を焼結した物である。従って、この焼結体のどの部分をとっても、それらが誤差範囲或いは制御可能な範囲で、略同一の孔径分布と強度を有する。
焼結体を均一の組織で構成することは、フィルタエレメントとして用いる場合に重要な要素である。つまり、どの部分の圧力損失も強度も同一であるから、フィルタエレメントとして各部分で均等に濾過性能を発揮することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年、大気汚染や環境汚染に対する社会的監視が強まる中、フィルタ装置への要求、特に濾過性能についての要求がより高い物となっている。即ちフィルタには、1)圧力損失は現状のままあるいは小さく、2)更に微細粒子の捕捉性能が高いものが求められている。
【0005】
ここで図7は従来の焼結多孔体で圧力損失を低くした場合の粉塵等の捕集形態を表す模式図である。この構成のように、濾材100の構成成分のかさ密度を小さくして孔径を大きくすることで、圧力損失ΔPを小さくすることはできる。しかし、孔径が大きくなると粉塵粒子の捕捉は困難になり、粒子が孔を通り抜ける「目抜け」、或いは濾材中に滞留してしまう「目詰まり」を生じてしまい、フィルタとしての濾過性能の低下は免れないという問題がある。
【0006】
一方、図8は従来の焼結多孔体で捕捉性能を高めた場合の粉塵等の捕集形態を表す模式図である。この構成のように、濾材200の構成成分のかさ密度を大きくして孔径を小さくすることで、粉塵粒子の捕捉性能を高めることは可能である。しかし、同時に濾材の圧力損失ΔPは大きくなってしまう。そしてこれに対処するには、濾過面積を大きくして、つまりフィルタ装置全体の容量を大きくして濾過風速を落とすか、送風機の動力を大きくするかなど、いすれにせよ装置の大型化が必要となってくる。
【0007】
従って、本発明の第1の目的は、上記要求を満たすものであり、圧力損失を上げることなく、より微細な粒子の捕捉性能を高めた焼結体フィルタを提供することにある。
更に、本発明の第2の目的は、上記要求を満たすものであり、圧力損失を上げることなく、より微細な粒子の捕捉性能を高めた焼結体フィルタを製作する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を本発明は、以下の構成により達成する。
(1) 複数層の熱可塑性樹脂粉体を基にした焼結体であり、未焼結時にその主成分中で、原料粉体の成分、粒度分布、かさ密度の条件内の少なくとも1条件を各層で変えることで、吸着側層の圧力損失を他層に対して大きくした焼結体壁とする焼結体フィルタを製造する方法であって、通気性を有する自己支持性のネット或いは境界板により金型内を各層用の空間に仕切り、熱可塑性樹脂粉体を原料とし各層に特定な成分の原料粉体を各層同士で成分が混合しないように各対応空間に供給し、一度の焼結で多層構造の焼結体壁を形成することを特徴とする焼結体フィルタの製造方法。
つまり、例えば、粒子吸着側となる表面付近の組織層のかさ密度を大きくして孔径を小さくして微細粒子を捕捉し、その層で圧力損失が上がった分を、反対面付近の層のかさ密度を小さくして圧力損失を下げ、全体としての圧力損失と強度の維持を提供するものである。
【0010】
つまり、上記のようなネット或いは境界板により金型内を各層用の空間に仕切ることで、隣り合う層の成分が混ざり合うことを抑え、更に、一度に焼結を行うことで隣り合う層の樹脂が絡み合い、ボルト、ビス、接着剤等の媒体を使用することなく、各層で異なった通気性を保ちつつ一体となった焼結体フィルタを成形することができる。
【0011】
ここで、各層構成の好ましい物性としては:
構成各層の、厚さが0.5〜15[mm]、通気度(フラジール法:圧損12.7mm水柱時)が0.3〜100[cm3/cm2/sec]、気孔率が5〜60[%]、引張強さが0.2〜3.0[kgf/mm2]の範囲内にあることが本発明として好ましい。
この際の層の成分としては、焼結体の母材原料粉体が、ポリエチレンやポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂やポリスルフォン系樹脂の粉体が好ましい。
焼結体の母材原料粉体に含む成分材料としては、鉱石或いはセラミックスなどの鉱物性無機材料の粒子や繊維を1%〜45%の重量割合で混合した粉体を構成層中の少なくとも一層に混入することが好ましい。
【0012】
上記ネットの形態としては、そのまま残置して焼結する構成が可能で、その場合、ネットの構成としては、熱可塑性樹脂粉体原料を、例えば水平面に対して垂直方向に層面を有する多層に構成する為に、その境界として樹脂或いは金属製の、目開きが接触する2種の層の原料粉体のうち大きい方の平均粒度の50〜150%で且つ開口率が10〜50%且つ厚さが最少層厚の1/10〜1/100の自己支持性のネットを用いることが好ましい。
【0013】
また、原料粉体を金型に投入後、層間の境界板を取り除いて焼結する構成も可能で、その場合、境界板の構成としては、異なる熱可塑性樹脂粉体原料を、例えば水平面に対して垂直な方向に層面を有する多層に構成する為に、その境界として最少層厚の1/100〜1/1000の厚さの樹脂或いは紙或いは金属製の板を用いることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態として、角筒形の二層樹脂焼結体フィルタについて説明する。
図1は本発明の焼結体フィルタの局所を拡大して粉塵等の捕集形態を示す模式図である。
この実施形態では、焼結体フィルタ10の吸着側層である外層12の構成成分のかさ密度を大きくして、外層12において気流が通り抜けるための平均的な孔径を小さくし、外層12の圧力損失ΔPを大きくしている。そして、内層14の構成成分のかさ密度を小さくして、内層14において気流が通り抜けるための平均的な孔径を大きくすることで、圧力損失ΔPを小さくしている。
【0015】
つまり、外層12では塵等の吸着面で孔径が小さいので、微細粒子を捕捉し易くなる。その一方で外層12自体の単位面積当たりの圧力損失は大きな物となってしまう。そこで、外層12の厚さをそれ単独ではフィルタとして不十分な程度に薄くし、焼結体フィルタ10の厚み方向を考慮した場合の圧力損失の上昇を抑える。その上で、構成成分のかさ密度を小さくした内層14を備えることで、外層12と内層14とを合わせた値がフィルタとしての所望の圧力損失となるように各層の厚さを設定し、圧力損失の上昇を抑える。
このような構成とすることで、強度を落とすことなく、全体としての圧力損失の上昇を抑えつつ、微細粒子の捕捉性能をより高いものとすることができる。
【0016】
このような圧力損失の調整に関与する主な項目としては、熱可塑性樹脂粉体の未焼結時のその主成分中での、原料粉体の成分、粒度分布、かさ密度等である。特に、要求される微細粒子の捕捉性能に関しては、吸着側層のこれらの調整により単位面積当たりの圧力損失を大きくする側に設定する。そして、フィルタ全体として圧力損失の上昇を抑えるためには、フィルタの強度維持のために吸着側層の厚みとそれ以外の層の厚みとをバランスを取りつつ、吸着側層以外の層の原料粉体の成分、粒度分布、かさ密度等の設定により圧力損失を調整する。
【0017】
この焼結体フィルタ10の実際の使用形態として、図2を参照して説明する。この図2は本発明の焼結体フィルタの内の1形態を使用する捕集装置の1つの実施形態を示す概略図である。
この捕集装置1は略角形状の密閉されたケーシング2を有し、その内部は区画壁である上部天板3によって下部の捕集室4と上部の清浄空気室5とに分けられている。また、ケーシング2の中腹に下部の捕集室4に連通する含塵空気の供給口6が設けられている。また、ケーシング2の上部に清浄空気室5に連通する清浄空気の排出口7が設けられている。そして、上部天板3の下面には本発明の焼結体フィルタの内の1形態である中空扁平状の複数のフィルタエレメント8が所定の間隔で取り付けられている。フィルタエレメント8は上端に大径部9が形成され、そして、この大径部9が締め付けボルト11により上部天板3に取り付けられている。
【0018】
供給口6からケーシング2の捕集室4内に供給された含塵空気は、中空に形成されたフィルタエレメント8の濾過体を通過して内側に流れ込む。この時粉塵はフィルタエレメント8の表面に付着・堆積して捕集され、フィルタエレメント8の内側に流れ込んだ清浄空気は、ケーシング2の上部の清浄空気室5に入り、その排出口7から所定の場所に導かれる。噴射管13は通常の空気流とは逆の空気流を瞬間的にフィルタエレメント8内に噴射する物で、フィルタエレメント8の表面に付着・堆積した粉塵等をトレー15上に払い落とす作用を備えている。
【0019】
図3は図2に示したフィルタエレメント8に対するP−P断面図である。フィルタエレメントは捕集能力、払い落とし能力等を考慮して形状が決定され、図3の装置では、フィルタエレメント8の断面は波形形状ないし蛇腹形状としている。
なお、本発明の焼結体フィルタは上記のような中空形態に限らず、円板等の平板形状とすることもできる。
【0020】
焼結原料は、例えばポリエチレン樹脂粉の平均粒径の異なる二種を用いる。基本的には、ポリエチレン樹脂粉で粒子径が大きいXは内層(圧力損失小)に、粒子径の小さいYは外層(圧力損失大)の原料とする。とにかくこの二種の平均粒径に差があれば、圧力損失の異なる複数層の焼結体フィルタを作成することが可能であるが、使用において都合の良い粒径としては、X:平均粒子径300〜600μm,Y:平均粒子径100〜200μmである。
この際、各層に用いる原料は単種である必要性は無く、例えばXとYをそれぞれの層に適当な粉体かさ密度に調整した混合物でもよい。また、XとYが同種或いは同グレードの樹脂である必要もない。要は、目的とするフィルタエレメントとして必要な圧力損失と強度を得ることができる材料で、焼結可能な材料であるものなら、どのような組合わせでも構わない。
【0021】
次に、本発明の焼結体フィルタの製造方法について記載する。
まず、以下では中空の角筒状の焼結体フィルタを製造する場合を述べるもので、図3の物とは形状が異なるが、同様の工程で製造することができる。
始めに原料の金型20への充填の前工程について説明する。
図4は本発明の焼結体フィルタを製造するための金型の1実施形態を示す斜視図である。焼結体の外形を形成する為の外金型22内に内形を形成する内金型24を所望の距離を保って設置する。外金型22と内金型24で形成する空間に、樹脂製のネット26を設置する。
ネット26、外金型22、内金型24それぞれの距離は、所望の圧力損失と微細粒子捕集能力に対して必要とされる外層・内層のそれぞれの厚さに対応するように設定される。
【0022】
図5は金型への原料の投入形態を示す模式図である。
この図では、金型20内にネット26を設置後、上記二種の原料をそれぞれの隙間、Xは内層(ネット26と内金型24の間)にYは外層(ネット26と外金型22の間)に、投入充填用ホッパ30により原料を金型20内の全ての間隙について同時に投入充填していく。同時に投入充填することで常に金型20内のいずれの間隙についても原料粉XとYの充填高さを同じくし、充填時のネット26と金型22又は26と間の距離が変化しないようにする。
また原料投入に際しては、ネットと金型間距離つまり焼結後にそれぞれの層となる部分の厚さに応じた排出幅を有するホッパ形状の投入口を用いるのが好ましい。
【0023】
図6は中空状底付きの焼結体フィルタとする場合の金型への原料の投入形態を示す模式図である。
中空状底付きの焼結体フィルタとする場合は、予め外金型22a底部に所定厚さd1で外層用の原料Yを投入充填し、その上にネット26a枠内に内層用の原料Xを所定厚さd2に充填する。内金型24aはこの底部に充填された原料Xまでの挿入で停止される。その後は、図5と同様に、投入充填用ホッパ30により原料を金型20a内の全ての間隙について同時に原料を投入充填していく。
【0024】
そして、このように原料充填した金型を炉に入れ(天地無用)、それぞれの層を同時に220〜230℃で約2時間加熱し、50〜60℃前後まで冷却し(加熱時間・温度、冷却温度については、使用する原料により異なる。)、これら二層を一体に焼結する。その後、外金型22から内金型24及び焼結体の順に引き抜く。尚、外金型22は分割式であるほうが焼結体を取出し易く望ましい。このようにして、外側と内側に異なる組織の二層を有する、二層樹脂焼結多孔体を得る。
ネットを用いる場合そのネットはそのまま残置することになるが、ネットを用いずに鉄板のような薄い無孔材料を用いて、原料を投入充填した後、その無孔材料を各層が混じり合わないように引き抜くことも可能である。この際の鉄板の厚さは、焼結体を構成する層のうち最少厚さの1/100〜1/1000であることが望ましい。
【0025】
また、焼結時にネットを残置する場合、これに使用するネット26の目開きは、層境界で各層の粒子が混じり合わないことが条件であり、粒子径が大きい方の原料の平均粒子径の50〜150%が可能で、100%以下であることがより望ましい。ネットの開口率は、低すぎると圧力損失の上昇となるので、各層の圧力損失に影響を与えない程度以上が好ましく、更にはより開口率の高い方が好ましいが、層境界で各層の粒子が混じり合わないようにすることが必要である。従って、ネットの開口率は25〜75%程度の範囲となる。ネットの厚さは、焼結体を構成する層の最少厚さに対して、1/10〜1/100であることが望ましい。また、ネットの素材はできれば焼結原料と同種で、焼結時に原料と融着することが焼結体の強度上好ましいが、特に必要条件ではなく、金属等のネットを使用しても構わない。
【0026】
なお、得られた焼結体の表面にフッ素樹脂粉体からなるコーティング層を付加して、特に精密濾過に最適な濾材として提供することもできる。
【0027】
更に、各層を別々に焼結の後、外層となる焼結体フィルタの中に内層となるフィルタを挿入固定することもできる。この場合には固定するための部材若しくは接着剤などが必要となるが、それぞれの層の原料が混じることはあり得なくなる。また、外層と内層との組み合わせを焼結後であっても容易に変更することができる。
【0028】
【実施例】
上記、少なくとも2層の異なる組織の層を有するの焼結体フィルタとその製造方法を、以下に実施例を示して説明する。しかし本発明は、以下の実施例によって制限されるものではない。
以下の実施例の焼結体フィルタの形状は、簡略化及び実験の容易性から図2の複雑な形態とはせず、中空の角筒状とし、2層及び3層について検討する。
【0029】
(実施例1)
原料A:超高分子量ポリエチレン粉体(平均粒子径130μm、真密度0.935g/cm3、粉体かさ密度0.51g/cm3)
原料B:高密度ポリエチレン粉砕粉体(平均粒子径350μm、真密度0.934g/cm3、粉体かさ密度0.26g/cm3)
上記原料Aと原料Bを用い、焼結体フィルタの二層の原料とした。粒子径の小さい方の原料Aはそのまま外層の原料とし、内層には原料Aと原料Bを重量比4対6で混合した原料C(粉体かさ密度0.36g/cm3)を用いた。
内寸法:縦100mm、横100mm、幅30mmの片端閉塞で二つ割の外金型に、寸法:縦120mm、横80mm、幅10mmの内金型を設置し、外金型と内金型の間に10mm幅の隙間を形成するようにした。この隙間の中間に、高密度ポリエチレン製の縦120mmのネット(目開き350μm、線径0.5mm)を設置し外部から仮固定した。この際、このネットには予めアイロンをかけ、90mm×90mmの矩形断面の筒形態に成形しておいた。
【0030】
次に、投入口外径寸法:9mm×90mmの投入充填用ホッパM(外層及び内層用の2つの投入口が一体となっている。)を2つ、同9mm×20mmの同ホッパN(外層及び内層用の2つの投入口が一体となっている。)を2つ、計4つの投入充填用ホッパを用意し、金型の長辺の隙間にはホッパMで、同短辺にはホッパNで、ネットと外金型の隙間(外層)には原料Aを、ネットと内金型の隙間(内層)には原料Cを同時に投入充填した。
なお、ホッパM、Nそれぞれの断面形状としては内金型に近い辺を短辺とした台形形状が好ましく、これらを組み合わせることで内金型上方を除く外層及び内層の上方全体をホッパで覆うことができ、各層への原料投入を全体で均等にできる。
これをそのまま電気炉内に移し、常温から昇温し、220℃で2時間保持した後、50℃まで冷却したのち電気炉から取出し、内金型を引き抜いた後、外金型を分解して、角筒状の二層ポリエチレン樹脂焼結多孔体を得た。これに端部処理を施せば、実施例1のフィルタエレメントとなる。
【0031】
(実施例2)
原料G:ポリサルフォン樹脂粉砕粉体(平均粒子径150μm、真密度1.24g/cm3、メルトフロー指数6.5(ASTM D1238)、粉体かさ密度0.51g/cm3)
原料H:ポリサルフォン樹脂粉砕粉体(平均粒子径250μm、粉体かさ密度0.29g/cm3)
上記原料Gと原料Hを用い、二層の焼結体フィルタの原料とした。粒子径が小さい方の原料Gを外層の原料とし、内層には原料Hを用いた。
【0032】
金型、ネット及び投入充填用ホッパについては、実施例1と同様の物を使用し、ネットと外金型の隙間(外層)には原料Gを、ネットと内金型の隙間(内層)には原料Hを同時に投入充填した。
これをそのまま電気炉内に移し、常温から昇温し、230℃で2時間保持した後、150℃まで冷却したのち電気炉から取出し、内金型を引き抜いた後、外金型を分解して、角筒状のポリサルフォン製二層樹脂焼結多孔体を得た。これに端部処理を施せば、実施例2のフィルタエレメントとなる。
【0033】
(実施例3)
実施例1に示した原料Aと原料Bを用い、焼結体フィルタの三層の原料とした。粒子径の小さい方の原料Aはそのまま外層の原料とし、中間層には原料Aと原料Bを重量比4対6で混合した原料C(粉体かさ密度0.36g/cm3)を用い、内層には原料Aと原料Bを重量比2対8で混合した原料D(粉体かさ密度0.31g/cm3)を用いた。
【0034】
金型については実施例1と同様の物を使用し、外金型と内金型の間に10mm幅の隙間を形成するようにした。この間隙幅をほぼ三等分するように、高密度ポリエチレン製の縦120mmのネット(目開き350μm、線径0.5mm)を二枚設置し外部から仮固定した。この際、このネットには予めアイロンをかけ、それぞれ93mm×93mm,96mm×96mmの矩形断面の筒形態に成形しておいた。
【0035】
次に、金型内の全ての間隙に対向する位置に投入充填用ホッパを用意し、原料を金型内の全ての間隙について同時に投入充填した。この際、ネットと外金型の隙間(外層)には原料Aを、ネット間の隙間(中間層)には原料Cを、ネットと内金型の隙間(内層)には原料Dを同時に投入充填する。
これをそのまま電気炉内に移し、常温から昇温し、220℃で2時間保持した後、50℃まで冷却したのち電気炉から取出し、内金型を引き抜いた後、外金型を分解して、角筒状の三層ポリエチレン樹脂焼結多孔体を得た。これに端部処理を施せば、実施例3のフィルタエレメントとなる。
【0036】
(比較例1)
実施例1に示した原料A,Bを用い、原料A,Bを重量比7対3で混合した原料(粉体かさ密度0.41g/cm3)を用い、単層の焼結体フィルタを製作した。
金型及び投入充填用ホッパについては、実施例1と同様の物を使用し、原料Aと原料Bを重量比7対3で混合した原料を投入充填用ホッパにより投入充填した。
これをそのまま電気炉内に移し、常温から昇温し、220℃で2時間保持した後、50℃まで冷却したのち電気炉から取出し、内金型を引き抜いた後、外金型を分解して、角筒状の単層ポリエチレン樹脂焼結多孔体を得た。これに端部処理を施せば、比較例1のフィルタエレメントとなる。
【0037】
(比較結果)
上記各実施例及び比較例によるフィルタエレメントを試験用粉塵負荷装置にかけて、比較実験を行った。それぞれの初期圧力損失値を表1に、粉塵負荷試験における圧力損失値と清浄排気中の含塵濃度のデータを表2に示す。尚、負荷試験の条件は、粉塵は炭酸カルシウム粉(平均粒径15μm)で、負荷量は10g/m3N、濾過風速は1m/minである。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1,2から解るように、圧力損失は比較例1と同等若しくは低くなっているにも拘わらず、本発明のフィルタによれば清浄排気中の含塵濃度を非常に低くすることができる。
【0041】
【発明の効果】
複数層の熱可塑性樹脂粉体を基にした焼結体の少なくとも1つの成分条件を各層で変えることで、吸着側層の圧力損失を他層に対して大きくした焼結体フィルタにより、フィルタ全体としての圧力損失の上昇を抑えつつ、捕集面付近だけを緻密構造にして微細粉塵を捕集する効果を高めることができ、また、その設定を用途に合わせてより細かく設定することができる。
更に、それぞれの層を別々に焼結の後、組み付ける場合には、それぞれの層の原料が混じることはあり得なくなり、また、外層と内層との組み合わせを焼結後であっても容易に変更することができる。
一方、一度機に一体の焼結体とする場合には、張り合わせや接合などフィルタとして好ましくない工程が不要となって、性能が安定し、製造工程も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼結体フィルタの局所を拡大して粉塵等の捕集形態を示す模式図である。
【図2】本発明の焼結体フィルタの内の1形態を使用する捕集装置の1つの実施形態を示す概略図である。
【図3】図2に示したフィルタエレメント8に対するP−P断面図である。
【図4】本発明の焼結体フィルタを製造するための金型の1実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4に示した金型への原料の投入形態を示す模式図である。
【図6】中空状底付きの焼結体フィルタとする場合の図4に示した金型への原料の投入形態を示す模式図である。
【図7】従来の焼結多孔体で圧力損失を低くした場合の粉塵等の捕集形態を表す模式図である。
【図8】従来の焼結多孔体で捕捉性能を高めた場合の粉塵等の捕集形態を表す模式図である。
【符号の説明】
1 捕集装置
3 上部天板
5 清浄空気室
6 供給口
7 排出口
8 フィルタエレメント
10 焼結体フィルタ
12 外層
14 内層
20,20a 金型
22,22a 外金型
24,24a 内金型
26,26a ネット
100 濾材
200 濾材
Claims (1)
- 複数層の熱可塑性樹脂粉体を基にした焼結体であり、未焼結時にその主成分中で、原料粉体の成分、粒度分布、かさ密度の条件内の少なくとも1条件を各層で変えることで、吸着側層の圧力損失を他層に対して大きくした焼結体壁とする焼結体フィルタを製造する方法であって、通気性を有する自己支持性のネット或いは境界板により金型内を各層用の空間に仕切り、熱可塑性樹脂粉体を原料とし各層に特定な成分の原料粉体を各層同士で成分が混合しないように各対応空間に供給し、一度の焼結で多層構造の焼結体壁を形成することを特徴とする焼結体フィルタの製造方法。
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