JP6061745B2 - 固体高分子形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、単セルとカーボンセパレータを交互に積層して形成されたセルスタックを備え、冷却水用のセパレータ水路が、各単セルに対応して前記カーボンセパレータのそれぞれに形成され、各セパレータ水路の水路出口から流出した冷却水を集めて出水口から出水するマニホールドを備えている固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池では、単セルと積層するセパレータに高い導電性と耐食性が求められることから、通常、カーボン粉末をバインダで固めたり焼成して形成されたカーボン製のカーボンセパレータが使用され、当該カーボンセパレータに冷却水用のセパレータ水路が形成される。
ところが、冷却水が当該セパレータ水路を通流する際、経年劣化等によってカーボンセパレータの表面からカーボン微粒子が剥離して冷却水中へ流出し、そのカーボン微粒子を含む冷却水を循環させると、冷却水の循環系にカーボン微粒子が蓄積して循環水路に詰まりなどの弊害を生じる可能性がある。
そこで、従来、冷却水の循環系に介装される水タンク内に円筒形や平板形状のフィルタを配置し、カーボン微粒子などを含む冷却水が当該フィルタを通って通流するように構成して、当該フィルタによりカーボン微粒子などを捕捉して取り除く技術が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−19678号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、冷却水がフィルタを通過する構成であるため、フィルタがカーボン微粒子などを捕捉するのに伴って、フィルタの目が徐々に詰まって、フィルタの通過抵抗(流動抵抗)が増大する。フィルタの通過抵抗が増大すると、流路抵抗が高くなり、単位時間当たりに循環できる冷却水の量が少なくなって、その結果、セルスタックに対する冷却能力の低下を招くことになる。
また、フィルタが水タンク内に配置された構成であるため、フィルタの交換作業も容易ではなく、この点に改良の余地があった。
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、フィルタがカーボン微粒子などを捕捉しても、循環する冷却水の量の低下を招くことなく、セルスタックを所望通りに冷却することができ、更には、フィルタの交換作業も比較的容易な固体高分子形燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による固体高分子形燃料電池は、単セルとカーボンセパレータを交互に積層して形成されたセルスタックを備え、冷却水用のセパレータ水路が、各単セルに対応して前記カーボンセパレータのそれぞれに形成され、各セパレータ水路の水路出口から流出した冷却水を集めて出水口から出水するマニホールドを備えている固体高分子形燃料電池であって、
その特徴構成は、前記マニホールドの内面のうち、前記各セパレータ水路の水路出口に対面する側の内面で、少なくとも前記出水口の近傍部位に当該出水口の開口部を避けて前記冷却水中のカーボン微粒子を捕捉するフィルタを設けてある点にある。
上記特徴構成によれば、セパレータ水路を通流してセルスタックを冷却したのち、各セパレータ水路の水路出口からマニホールド内に流出した冷却水、つまり、カーボン微粒子を含む冷却水は、マニホールドの出水口からマニホールド外へ出水する前に、出水口の近傍部位に設けられたフィルタに接触し、そのフィルタへの接触によって、冷却水中のカーボン微粒子がフィルタにより捕捉されて取り除かれる。
当該フィルタは、マニホールドの内面のうち、各セパレータ水路の水路出口に対面する側の内面で、少なくとも出水口の近傍部位に出水口の開口部を避けて設けられているので、たとえカーボン微粒子の捕捉によりフィルタの目が徐々に詰まっても、冷却水流路の抵抗が大きく増大することはない。したがって、単位時間当たりに循環する冷却水の量はほぼ一定に維持され、常に安定した冷却能力でセルスタックを所望通りに冷却することができる。
そして、当該フィルタは、上述した水タンクに比べて比較的小さなマニホールドの内面のうち、各セパレータ水路の水路出口に対面する側の内面、つまり、セルスタックとは逆の外側の内面に設けられているので、水タンク内に設けられたフィルタに比べて、フィルタの交換作業も比較的容易となる。
本発明による固体高分子形燃料電池の更なる特徴構成は、前記フィルタが、前記各セパレータ水路の水路出口に対面する側の前記マニホールドの内面の全長にわたって設けてある点にある。
上記特徴構成によれば、上述したフィルタが、各セパレータ水路の水路出口に対面する側のマニホールドの内面の全長にわたって設けられているので、各セパレータ水路の水路出口の全てに対して、その対向する位置にフィルタが存在することとなり、冷却水とフィルタとの接触機会が増大するとともに、冷却水がフィルタに接触する時間が長くなり、その結果、冷却水中のカーボン微粒子がより一層効率よく捕捉されて取り除かれる。
本発明による固体高分子形燃料電池の更なる特徴構成は、前記マニホールドが、前記セルスタックの積層方向を長手方向とする筒状に構成され、前記各セパレータ水路の水路出口が、当該筒状に構成されたマニホールドの長手方向に沿ってそれぞれ配設されるとともに、各水路出口からの冷却水の流出方向が、当該マニホールドの長手方向に直交する方向に構成され、前記出水口が、前記マニホールドの長手方向の端面の前記セルスタック側に設けられている点にある。
上記特徴構成によれば、各セパレータ水路の水路出口が、筒状に構成されたマニホールドの長手方向に沿ってそれぞれ配設され、各水路出口からの冷却水の流出方向が、マニホールドの長手方向に直交する方向に構成されているので、各水路出口からマニホールド内に流出する冷却水は、マニホールドの内面のうち、フィルタが設けられている側の内面に向かって流出し、その後、筒状のマニホールド内を当該マニホールドの長手方向の端面に設けられている出水口に向かって通流する。したがって、冷却水がフィルタに接触する機会が確実に確保されて、冷却水中のカーボン微粒子の捕捉が確実となる。
そして、出水口が、マニホールドの長手方向の端面のセルスタック側に設けられているので、マニホールドの内面のうち、セルスタックとは逆の側の内面、つまり、フィルタが設けられている側の内面と出水口との間に十分な空間が確保され、その空間を利用してフィルタを無理なく配設することができる。
本発明による固体高分子形燃料電池の更なる特徴構成は、前記各セパレータ水路の水路出口が、各セパレータ水路にそれぞれ複数個ずつ設けられ、当該複数個の水路出口が、前記マニホールドのセパレータ側開口に接続されている点にある。
上記特徴構成によれば、各セパレータ水路の水路出口が、各セパレータ水路にそれぞれ複数個ずつ設けられ、当該複数個の水路出口が、マニホールドのセパレータ側開口に接続されているので、冷却水がセパレータ水路から水路出口を通ってマニホールド内に流出する際の流動抵抗は、水路出口がひとつの場合に比べて低くなる。
その結果、単位時間当たりに循環する冷却水の量が多くなって、セルスタックに対する冷却能力が向上する。
本発明による固体高分子形燃料電池の更なる特徴構成は、前記フィルタが、交換自在である点にある。
上記特徴構成によれば、必要に応じて、フィルタを新しいものと簡単に交換することができるので、フィルタのメンテナンスが容易となる。この構成を採用する場合、フィルタとそのフィルタを収納する筐体(例えば、後述する蓋体16,17)を一体に交換自在とすることも、好ましい形態である。
本発明による固体高分子形燃料電池の更なる特徴構成は、前記フィルタが、ポリプロピレンまたはポリエチレンを素材とする不織布フィルタである点にある。
上記特徴構成によれば、微粒子の捕捉に適したポリプロピレンまたはポリエチレン製の不織布フィルタによって、冷却水中のカーボン微粒子を確実に捕捉して取り除くことができる。
第1実施形態による固体高分子形燃料電池の斜視図 第1実施形態における蓋体を外したマニホールドの斜視図 第2実施形態による固体高分子形燃料電池の要部の一部切り欠き斜視図 別実施形態による蓋体を外したマニホールドの斜視図
本発明による固体高分子形燃料電池の第1と第2実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態による固体高分子形燃料電池(PEFC)は、図1に示すように、多数の単セル1とセパレータ2を交互に積層し、当該積層方向Lの両端にセパレータ2が位置するように積層して形成されたセルスタック3を備えている。
単セル1自体は従来公知であるため、詳しい説明は省略するが、燃料極と空気極の間に電解質(高分子電解質膜)が挟まれた構成であり、また、セパレータ2としては、高い導電性と耐食性、更には、低価格が求められることから、カーボン粉末をバインダで固めたり焼成して形成されたカーボン製のカーボンセパレータ2が使用され、当該カーボンセパレータ2の一側面には、セパレータ水路用の溝4aが形成されている。
このような構成の単セル1とカーボンセパレータ2を交互に積層することで、カーボンセパレータ2の溝4aと隣接する単セル1によって、冷却水が通流する冷却水用のセパレータ水路4が、各単セル1に対応してカーボンセパレータ2のそれぞれに形成される。
単セル1とカーボンセパレータ2からなるセルスタック3には、当該セルスタック3の積層方向Lを長手方向とする断面形状矩形の筒状に構成された入口側と出口側との2つのマニホールド7、8が設けられている。
入口側のマニホールド7は、入水管9から流入した冷却水を各セパレータ水路4に分配するためのもので、正面視において、セルスタック3の下面一側方(図1における下面左方)に設けられ、各セパレータ水路4の水路入口5が、筒状に構成された入口側のマニホールド7の長手方向に沿ってそれぞれ配設されるとともに、マニホールド7内の冷却水が、当該マニホールド7の長手方向に直交する方向に沿って各水路入口5からセパレータ水路4内に流入するように構成されている。
出口側のマニホールド8は、各セパレータ水路4を通流して水路出口6から流出した冷却水を集めて出水口10から出水管11へ出水するためのもので、正面視において、セルスタック3の上面他側方(図1における上面右方)に設けられ、各セパレータ水路4にそれぞれ1個ずつ設けられた水路出口6が、筒状に構成された出口側のマニホールド8の長手方向に沿ってそれぞれ配設されるとともに、各水路出口6からの冷却水の流出方向が、当該マニホールド8の長手方向に直交する方向に構成されている。
出水口10は、図2に示すように、出口側のマニホールド8の長手方向の端面において、セルスタック3側に偏った位置に設けられ、当該出水口10の近傍部位で、かつ、出水口10の開口部を避けた状態で、当該マニホールド8内の上方にフィルタ12を保持するフィルタ保持部材13が設けられている。
当該フィルタ保持部材13は、出口側のマニホールド8内において、その横幅方向の全長にわたって配設された多数の孔14aを有する底板14と、当該底板14における冷却水の流れ方向上手側の端部に位置して横幅方向の全長にわたって配設された金網15により構成され、当該フィルタ保持部材13内に冷却水中のカーボン微粒子を捕捉するフィルタ12が収納配置されている。
すなわち、フィルタ12が、出口側のマニホールド8の内面のうち、各セパレータ水路4の水路出口6に対面する側の内面で、出水口10の近傍部位に当該出水口10の開口部を避けた状態で設けられている。そして、当該フィルタ12を収納保持するフィルタ保持部材13に対応して、出口側のマニホールド8の上方の一部が取り外し可能な蓋体16に構成され、蓋体16を取り外すことにより、フィルタ12を簡単に交換できるように構成されている。
なお、フィルタ12としては、冷却水中のカーボン微粒子を捕捉できるものであれば、如何なるフィルタであっても良いが、本実施形態では、ポリプロピレンまたはポリエチレンを素材とする不織布フィルタが使用される。
このような構成の固体高分子形燃料電池によれば、入水路9から入口側のマニホールド7内に流入した冷却水は、各セパレータ水路4の水路入口5を通って分配供給され、各セパレータ水路4を通流してセルスタック3を冷却する。
その際、経年劣化によってカーボンセパレータ2の表面から剥離したカーボン微粒子が冷却水中へ流出し、当該カーボン微粒子を含む冷却水が、各セパレータ水路4の水路出口6から出口側のマニホールド8の長手方向に直交する方向に向けて当該マニホールド8内に流出される。
その後、カーボン微粒子を含む冷却水は、当該マニホールド8内で集められて出水口10から出水管11を通って出水されるが、その前に、フィルタ保持部材13内に収納されたフィルタ12に接触し、当該フィルタ12によって冷却水に含まれるカーボン微粒子が捕捉されて取り除かれ、カーボン微粒子が取り除かれたのちの冷却水が出水される。
そして、カーボン微粒子を捕捉したのちのフィルタ12は、蓋体16を取り外すことによって簡単に新しいフィルタ12と交換することができる。
したがって、適切な時期にフィルタ12を交換することによって、常にカーボン粉末を含まない冷却水により、セルスタック3を所望通りに冷却することが可能となる。
(第2実施形態)
つぎに、第2実施形態による固体高分子形燃料電池について説明するが、第1実施形態で説明した構成部品については、同じ符号を付すことで説明を省略し、主として第1実施形態と異なる構成について説明する。
第2実施形態による固体高分子形燃料電池では、図3に示すように、各セパレータ水路4の水路出口6が、各セパレータ水路4にそれぞれ複数個(この実施形態では4個)ずつ設けられている。出口側のマニホールド8は、そのカーボンセパレータ2側(セルスタック3側)の底板がなく、カーボンセパレータ2側に開口するセパレータ側開口8aに構成されるとともに、単セル1がカーボンセパレータ2と同様に、完全な矩形の板状に構成されている。そして、当該マニホールド8が、セパレータ側開口8aの全周とセルスタック3との間にシール用のゴムパッキン8bを挟持した水密状態で、セルスタック3に固着され、各セパレータ水路4に設けられた複数個の水路出口6が、出口側のマニホールド8のセパレータ側開口8aに接続されている。その結果、水路出口6とセパレータ側開口8aとの接続が格段に容易となる。
当該第2実施形態においても、各セパレータ水路4に設けられた複数個の水路出口6からマニホールド8内に流出した冷却水は、出水口10から出水管11を通って出水される前に、フィルタ保持部材13内に収納されたフィルタ12(図3では、マニホールド8の一部を切り欠いているために図外)に接触してカーボン微粒子が捕捉され、カーボン微粒子が取り除かれたのちの冷却水が出水される。
〔別実施形態〕
(1)第1と第2実施形態では、出口側のマニホールド8の内面のうち、各セパレータ水路4の水路出口6に対面する側の内面の一部の部位にフィルタ12を設けた例を示したが、図4に示すように、出口側のマニホールド8の内面において、各セパレータ水路4の水路出口6に対面する内面の全長(さらには全面)にわたってフィルタ12を設けて実施することもできる。
この図4に示す実施形態では、出口側のマニホールド8の上方部分が全て取り外し可能な蓋体17に構成されるとともに、蓋体17に対して取り外し自在な金網18が設けられ、金網18内にフィルタ12が収納保持されている。言い換えると、当該蓋体17はフィルタ12のカセットを兼用するカセット式蓋体17で、そのカセット式蓋体17を取り外すことで、フィルタ12を簡単に交換することができる。
(2)第1実施形態では、出口側のマニホールド8が、そのカーボンセパレータ2側に底板を有し、その底板に水路出口6用の孔を設けた構成であるが、第2実施形態と同様に、カーボンセパレータ2側の底板をなくして、カーボンセパレータ2側に開口するセパレータ側開口8aを設け、当該セパレータ側開口8aの全周とセルスタック3との間にシール用のゴムパッキン8bを挟持した水密状態で、マニホールド8をセルスタック3に固着して実施することも、また、シール用のゴムパッキン8bをなくして、マニホールド8のセパレータ側開口8aの全周とセルスタック3とを水密に接着して実施することもできる。
第1と第2実施形態では、出口側のマニホールド8として、断面形状矩形の筒状に構成されたマニホールド8を示したが、当該マニホールド8は、例えば、断面形状円形の筒状のものにも適用可能であり、また、フィルタ12に関しては、マニホールド8の内面に貼着しておき、必要に応じて新しいフィルタ12に貼り替えることもできる。
1 単セル
2 カーボンセパレータ
3 セルスタック
4 セパレータ水路
6 水路出口
8 マニホールド
8a セパレータ側開口
10 出水口
12 フィルタ
L セルスタックの積層方向

Claims (6)

  1. 単セルとカーボンセパレータを交互に積層して形成されたセルスタックを備え、冷却水用のセパレータ水路が、各単セルに対応して前記カーボンセパレータのそれぞれに形成され、各セパレータ水路の水路出口から流出した冷却水を集めて出水口から出水するマニホールドを備えている固体高分子形燃料電池であって、
    前記マニホールドの内面のうち、前記各セパレータ水路の水路出口に対面する側の内面で、少なくとも前記出水口の近傍部位に当該出水口の開口部を避けて前記冷却水中のカーボン微粒子を捕捉するフィルタを設けてある固体高分子形燃料電池。
  2. 前記フィルタが、前記各セパレータ水路の水路出口に対面する側の前記マニホールドの内面の全長にわたって設けてある請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
  3. 前記マニホールドが、前記セルスタックの積層方向を長手方向とする筒状に構成され、前記各セパレータ水路の水路出口が、当該筒状に構成されたマニホールドの長手方向に沿ってそれぞれ配設されるとともに、各水路出口からの冷却水の流出方向が、当該マニホールドの長手方向に直交する方向に構成され、前記出水口が、前記マニホールドの長手方向の端面の前記セルスタック側に設けられている請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池。
  4. 前記各セパレータ水路の水路出口が、各セパレータ水路にそれぞれ複数個ずつ設けられ、当該複数個の水路出口が、前記マニホールドのセパレータ側開口に接続されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池。
  5. 前記フィルタが、交換自在である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池。
  6. 前記フィルタが、ポリプロピレンまたはポリエチレンを素材とする不織布フィルタである請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池。
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