JP3725614B2 - 微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体や気体等の流体中に含まれる微粒子を分離濾過するための多孔質プラスチックフィルタであって、ひだ付中空状筒体に構成して濾過面積の増大を図った微粒子分離用多孔質プラスチックフイルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液体や気体などの流体中に含まれる微粒子を分離ろ過するためのフィルタとしては、粒子状熱可塑性プラスチック材例えば超高分子量ポリエチレンを主成分とする組成物を焼結成形して円筒状多孔質体としたものや、外面に波形ひだを有する長方形状多孔質体としたもの、さらには、合成繊維、ガラス繊維などを密織した布、不織布などの布材を内外で折返して無端状に連続しているひだ付布筒状体としたものなどが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前者の円筒状多孔質体のものは、その濾過面積は、円筒基体の直径換言すれば長さ一定の場合その半径に依存し、その多孔質体を組込んだ集塵装置の濾過能力は多孔質体の組込み量によって決まることとなり、濾過能力を上げると必然的に大いなる容量の集塵装置が必要となり、結果的に集塵装置が大型化することとなる。
【0004】
また、後者のひだ付の多孔質体ないしはひだ付の布筒状体のものは、その濾過面積を向上でき、その濾過能力を上げても集塵装置の大型化は避け得るものの、多孔質体のものは中空長方形状となっているので、その形状はある範囲で自由にすることができるが、集塵装置の形状の自由度は少ないものとなる。しかも、布筒状体のものは、布材を折返して無端状となっているので多孔質体のもの以上にその形状は自由にすることができるが、その形状を維持するための補持装置(リティナー)が必要となるものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するもので、粉末の熱可塑性プラスチック材を焼結成形して外内に折り箇所を設けたものであって、その折り曲げの数、外寸法、内寸法、肉厚などを任意に選択できると共に垂直あるいは水平に対する自立性を有する多孔質体のひだ付中空状筒体である。すなわち、本発明は、
【0006】
(1) 粉末の熱可塑性プラスチック材を焼結成形した多孔質体からなり、筒体壁の少なくともその一部にひだ部を形成した中空状筒体で構成されていることを特徴とする微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタである。
【0007】
(2) 前記中空状筒体の少なくとも一側の表面の水に対する接触角が60度以上であることを特徴とする。
【0008】
(3) 前記粉末の熱可塑性プラスチック材として、平均粒径が5〜90μmのプラスチック材Aを用いたことを特徴とする。
【0009】
(4) 前記粉末の熱可塑性プラスチック材として、少なくとも、平均粒径が5〜90μmのプラスチック材Aと、平均粒径が90μmを超え1,000μm以下のプラスチック材Bとを使用してなることを特徴とする。
【0010】
(5) 前記中空状筒体は、少なくとも、平均粒径が小径なプラスチック材Aを焼結成形してなる小粒子多孔質層と、平均粒径が該プラスチック材Aより大径なプラスチック材Bを焼結成形してなる大粒子多孔質層との複合一体層を具備することを特徴とする。
【0011】
(6) 前記プラスチック材Aは、平均粒径が10〜60μmの超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする。以下、本発明の内容をさらに具体的に説明する。
【0012】
本発明は、粉末の熱可塑性プラスチック材を焼結成形した多孔質体からなり、筒体壁の少なくともその一部にひだ部を形成した中空状筒体で構成されている。ひだ部は、筒体の外周端に位置する外側屈曲部と、筒体の内周側に位置する内側屈曲部とを交互にあるいは適宜間隔等をおいて設けることにより形成することができる。かかるひだ部を好ましくは全周に又はほぼ半周にわたり形成する。ひだ部を全周に形成したものは分離装置容器内に垂直に配設する場合に好適である。ひだ部をほぼ半周にわたり形成したものは、分離装置容器内に水平に配設する場合に好適である。なぜなら、ひだ部のないほぼ半周を上側には位置させ、ひだ部を下側になるように配置することにより、ひだ部が上側にもある場合に生じる、除去すべき微粒子のひだ部への滞積をなくすることができるからである。
【0013】
本発明の多孔質プラスチックフィルタは、粉末の熱可塑性プラスチック材、さらにはこれに、これとは平均粒径が相違する粉末の熱可塑性プラスチック材を混合して焼結成形した多孔質体のひだ付中空状筒体で構成される。また、単層構造のもの、あるいはこの層にこれとは平均粒径が相違する粉末の熱可塑性プラスチック材を焼結成形した多孔質層を積層一体化した複層構造のものとすることができる。
【0014】
本発明に用いる熱可塑性プラスチック材は、超高分子量ポリエチレン、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエチレンサルファイド樹脂などであり、さらにこれらにフッ素系樹脂、放射線照射による低密度ポリエチレンを含む架橋ポリオレフィン系樹脂などを混合したものであっても良く、要は焼結成形により多孔質体を得られる粉末の熱可塑性プラスチック材であれば特に限定されるものではないが、これら材料の中でもメルトフローレイト(MFR)の小さな材料を使用する方が均一な孔径を有する多孔質体を得る上では好適である。MFRは、1.0以下が好ましい。
【0015】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂に、γ線、χ線などの電離性放射線を吸収線量10KGy以上照射して、架橋度10%以上としたものである。ここで、電離性放射線を照射することにより、ポリオレフィン系樹脂を高分子化させてメルトフローレイト(MFR)の小さな材料とするものであるので、架橋度10%未満では均一な孔径を有する多孔質体を得る上では好ましくない。
【0016】
また、本発明の多孔質プラスチックフィルタは、多孔質体が単層構造、あるいは多孔質体を積層一体化した複層構造で構成してあって、前記中空状筒体の少なくとも一側の表面の水に対する接触角が60度以上であることを特徴としている。すなわち、微粒子を含む液体や気体などの流体が流入する側、あるいは流体が流出する側の表面の水に対する接触角が60度以上であり、好ましくは90度以上である。
【0017】
水に対する接触角が、60度未満の表面を有するプラスチックフィルタでは、表面の自由エネルギーが大きいため、逆洗を行ってもフィルタ表面に付着した微粒子の払い落しが十分に行われず、目詰まりなどが発生するため、実用上問題がある。
【0018】
なお、水に対する接触角は、ゴニオメーター式接触角測定器を用いマイクロシリンジでイオン交換水20μlを多孔質プラスチックフィルタの表面に滴下し接触角を測定した数値である。
【0019】
水に対する接触角が60度以上の表面状態を得る方法としては、多孔質プラスチックフィルタを構成する熱可塑性プラスチック材の種類やその粒子の平均粒径の選定などによって行うことができる。
【0020】
また、本発明において、好ましくは粉末の熱可塑性プラスチック材は、平均粒径が5〜90μmの範囲、さらに好ましくは10〜60μmの範囲のものを使用する。これにより、中空筒状体の表面の水に対する接触角が、60度以上、好ましくは90度以上のものを発現させることがよい。
【0021】
ただし、平均粒径が5〜90μmの範囲のものに対して、これより小さな平均粒径の粉末の熱可塑性プラスチック材、あるいはこれより大なる平均粒径の粉末の熱可塑性プラスチック材を所定量添加してあってもよく、要は、その表面の水に対する接触角が、60度以上、好ましくは90度以上のものを発現させるものであれば用いることができる。
【0022】
なお、その添加量は、例えば平均粒径が5μm未満だけのもので生ずる成形用金型内への不均一な充填などの現象や、粒径が90μm以上だけのもので生ずる塵芥等の微粒子の不充分な表面捕集能などの現象が生じ得ない範囲であればよい。
【0023】
多孔質プラスチックフィルタを、多孔質体で単層構造に構成する場合、それを構成する熱可塑性プラスチック材は、その表面の水に対する接触角が60度以上になるように平均粒径が5〜90μmの範囲のものであれば前記した熱可塑性プラスチック材より選択して単独、あるいは混合して使用すれば良い。例えば、平均粒径が5〜90μmさらに好ましくは10〜60μmの超高分子量ポリエチレンを単独に使用したものが好適に使用される。
【0024】
しかし、この他に例えば、これにさらにフッ素系プラスチック材、前記した射線照射による架橋度10%以上の架橋ポリオレフィン系樹脂、その他から選択された熱可塑性プラスチック材を混合したものや、粒径が5μm以上90μm以下の熱可塑性プラスチック材、好ましくは超高分子量ポリエチレンなどに、粒径が90μmより大なる熱可塑性プラスチック材、好ましくは超高分子量ポリエチレンなど添加してなるものが使用できる。
【0025】
なお、フッ素系プラスチック材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフルオロアクリルアクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン等、通常知られているものであればよく、特にポリテトラフルオロエチレン、またはポリフルオロアクリルアクリレートが、塵芥等の微粒子に対する非粘着特性を付与するという点からはより好ましい材料である。
【0026】
このフッ素系プラスチック材の混合割合は、プラスチック材全体に対し、0.1〜50重量%の範囲であれば良く、好ましくは1〜30重量%の範囲である。
【0027】
混合割合が、0.1重量%未満では、その捕集した塵芥等の微粒子の払い落し性能は、多孔質プラスチックフィルタを構成している熱可塑性プラスチック材料自体が有しているものに依存され、所望の払い落し性能は得難く、また、50重量%を超えると焼結された多孔質プラスチックフィルタの強度低下が著しく、実用上問題を生ずるものである。
【0028】
さらに、本発明は、前記粉末の熱可塑性プラスチック材として、少なくとも、平均粒径が5〜90μmのプラスチック材Aと、平均粒径が90μmを超え1,000μm以下のプラスチック材Bとを基材として使用してもよい。両プラスチック材A,Bを混合使用する場合、前記した各種熱可塑性プラスチック材が使用できるが、例えば5〜90μmの超高分子量ポリエチレンと、粒径が90μmを超え1,000μm以下の超高分子量ポリエチレンとを混合したものなどが好適に使用できる。
【0029】
この超高分子量ポリエチレンの混合割合は、粒径が5〜90μmの範囲のものが、全体に対し20重量%以上でよく、好ましくは40重量%以上である。
【0030】
さらに、本発明では、前記中空状筒体は、少なくとも、平均粒径が小径なプラスチック材Aを焼結成形してなる小粒子多孔質層と、平均粒径が該プラスチック材Aより大径なプラスチック材Bを焼結成形してなる大粒子多孔質層との複合一体層を具備することを特徴とする。すなわち、中空状筒体の除去すべき微粒子を含む液体や気体等の流体が流入する側、あるいは流体が流出する側の一方を粒径が小径な粒子のプラスチック材を焼結成形してなる小粒子多孔質層とし、他方を上記小粒子多孔質層の粒径より大径な粒子のプラスチック材を焼結成形してなる大粒子多孔質層とし、これを複合一体化して少なくとも2層以上で構成するものである。
【0031】
多孔質プラスチックフィルタが複層構造の場合、小粒子多質層は、塵芥等の微粒子の良好な非粘着性能と表面捕微粒子集性能を発現するものであって、前記単層構造の多孔質プラスチックフィルタの場合で説明したと同様の熱可塑性プラスチック材が適宜使用できる。好ましくは、小粒子多質層は、その表面の水に対する接触角が60度以上になるように粒径が5μm以上90μm以下の範囲のものであれば前記した単層構造の場合と同様の組成のものが好適に使用できる。
【0032】
また、大粒子多孔質層は、前記の小粒子多孔質層を構成する熱可塑性プラスチック材の平均粒径より大きい平均粒径のプラスック材により構成される。
【0033】
大粒子多孔質層は、圧力損失が低く高い強度を有し、前記小粒子多孔質層について説明したような超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂などが使用できるものであって、平均粒径が90〜1,000μm、好ましくは150〜600μmの範囲の焼結により多孔質体を得られる熱可塑性プラスチック材であれば特に限定されるものではなく、例えばぶどう房形状の超高分子量エチレン系ポリオレフィン(超高分子量ポリエチレン等)具体的には、平均粒径が100〜200μmで、且つ嵩密度が0.35〜0.45g/cm3 のものが機械的強度などの点で好適である。
【0034】
平均粒径が1,000μmを越えるものでは多孔質プラスックフイルタの機械的強度が不十分となりやすい。また平均粒径が90μm未満では多孔質プラスックフイルタを複層にする意味合いが薄弱となる。
【0035】
小粒子多質層と大粒子多孔質層との厚み構成は、大きな孔径を有する大粒径多孔質層の厚み比率がフイルタ全厚みの30%以上100%未満とするのが好ましい。大きな孔径を有する大粒径多孔質層の厚み比率が30%以下では圧力損失が高くなり、複層構造にする意味合いが薄弱となる。
【0036】
ここで、流体が流出する側を、平均粒径が小径な粒子の熱可塑性プラスチック材を焼結成形してなる小粒子多質層とし、他方側を、その小粒子多孔質層の粒径より大きい粒径の粒子のプラスック材を焼結成形してなる大粒子多孔質層とした複層の多孔質プラスチックフィルタは、前記した効果に加えて流体内に含有する比較的大なる微粒子を、大粒子多孔質層によっていち早く捕集し、遅れて比較的小なる微粒子を捕集すると共に、所定間隔の逆洗によってその微粒子を分離することによって圧力損失が生じないあるいは低下させることができる。
【0037】
前記の複層構造の多孔質プラスチックフィルタは、大きな孔径を有する大粒径多孔質層と小さな孔径を有する小粒径多孔質層の複層構造になっていれば、流体の流入側と流出側での層の配置においては特に限定されることなく、流入側に大きな孔径を有する層を配置しても、またその逆であってもフィルタの性能上問題はない。さらには、層の数は限定されず、要求品質に応じ粒径を変化させた層を全体が2層以上になるように設けることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は本発明の実施の形態の一例であるプラスチックフィルタの(a)は平面図、(b)は斜視図、図2,図3は他の例のプラスチックフィルタの平面図、図4は プラスチックフィルタの製造方法を説明するための、筒状内型11と筒状外型12の断面図、図5はプラスチックフィルタ1により構成されたフィルタユニット21の(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0039】
図1に示すプラスチックフィルタ1は、粉末の熱可塑性プラスチック材を焼結成形した多孔質体からなり、中空状筒体に構成されている。筒体の外周端に位置する外側屈曲部2aと、筒体の内周側に位置する内側屈曲部2bとを交互に設けることにより形成されるひだ部は、筒体の全周にわたって形成されている。各屈曲部2a,2bはそれぞれ同数8箇所均等な間隔にあり、その横断面形状(平面形状)は星形をなしている。図2に示すプラスチックフィルタ1は外側屈曲部2a,内側屈曲部2bがそれぞれ同数12箇所均等な間隔にあり、やはりその横断面形状は星形をなしている。
【0040】
図3のプラスチックフィルタ1は、筒体の外周端に位置する外側屈曲部2aと、筒体の内周側に位置する内側屈曲部2bとを交互に設けることにより形成されるひだ部を、筒体のほぼ半周にわたって形成した例を示す。筒体壁3のほぼ半周(図左半分)においてはひだ部が形成されておらず、ほぼ円筒形状をなし、筒体壁3の残りの半周(図右半分)は星形をなしている。外側屈曲部2aが7箇所あるのに対し、内側屈曲部2bは6箇所であり外側屈曲部2aの数より1小さい。なお、上記筒体壁3のほぼ半周は円筒形状をなす曲面の他、複数の平面が連接する多角筒形状となすこともできるが、内周側に向けて凹む屈曲部を設けないようにする。
【0041】
図示のプラスチックフィルタ1において、筒体壁3の厚み(t),外径(R1),内径(R2),ひだの数(n)について、これらの好ましい範囲の一例を示すと、外径(R1)は20〜150mm,内径(R2)は{(2t+1)n}×1/2π〜R1×0.8,厚み(t)は1〜5mm,ひだの数(n)は6個以上のものが好適である。
【0042】
ここで、外径(R1)を20mm未満換言すると内側断面積を5cm2 未満にすると、[フィルタの表面積/集塵装置の容積]は、大きくでき好ましいが、実用性特にフィルタとしての濾過面積あるいは払落し面積が小となり過ぎ好ましくない。
【0043】
本発明のプラスチックフィルタの製造は、プラスチックフィルタを単層構造の多孔質体に構成する場合は、公知の製造方法を適用し得、多孔質プラスチック基材は、所定の粒径の熱可塑性プラスチック材料を、多孔質プラスチックフィルタの断面形状に合わせた形状からなる外型とその内部に挿入する内型とよりなる成形金型を用いる静的成形方法や、ラム押出成形方法、射出成形方法、スクリュウ押出成形方法などの動的成形方法などによって焼結成形して得られる。例えば、図4に示すような断面形状の筒状内型11と筒状外型12によって形成される間隙部13に、粉末のプラスチック材を充填し、これを適宜温度で加熱して焼結後、脱型して得られる。
【0044】
また、複層構造の多孔質プラスチックフィルタを製造する方法としては、フイルタの形状等により種々の方法が考えられるが、生産効率や各層の厚みの調整が確実にできる次の2つの方法が好ましい。
【0045】
〔第1方法〕
内型と交換可能な外型により、熱可塑性プラスチック材の粒子を充填できる間隙部を形成し得る成形金型を使用し、
▲1▼ まず、内型の外方に交換可能な外型を配して充填する熱可塑性プラスチック材の粒子の粒径に対応した層厚みを形成できる一次間隙部を形成し、この一次間隙部内に小径の粒子または大径の粒子のプラスチック材を充填した後、これを焼結成形して小粒子多孔質層、または大粒子多孔質層の多孔質プラスチック基材とし、
【0046】
▲2▼ 次いで、先に使用した外型を取り外して、取り外した外型より内径が大である他の外型に交換・被嵌して一次多孔質プラスチック基材の表層側に二次間隙部を形成し、
【0047】
▲3▼ さらに続けて、二次間隙部内に前記の小粒子状熱可塑性プラスチック材より大きな粒径の大粒子状熱可塑性プラスチック材、または前記の小粒子状熱可塑性プラスチック材を充填した後、これらを焼結して前記小粒子多孔質層の内表層側に大粒子多孔質層、または大粒子多孔質層の内表層側に小粒子多孔質層を成形する。
【0048】
▲4▼ これらを冷却後、外型と内型を脱型する。これにより、大粒子多孔質層に、水に対する接触角が60度以上好ましくは90度以上の小粒子多孔質層を複合一体化した複層の多孔質プラスチックフィルタを得る。
【0049】
なお、複層の多孔質プラスチックフィルタの各層は、同種の熱可塑性プラスチック材で構成する方が焼結成型する際に好都合であり、また各層の層間接着力の面からも好ましい。
【0050】
〔第2方法〕
▲1▼ まず、所定の粒径の粒子の熱可塑性プラスチック材を上記したような適宜手段により一次焼結成形して多孔質プラスチック基材とし、
【0051】
▲2▼ 次いで、導電性材料によりその多孔質プラスチック基材の多孔質部分の表面に導電性を付与する。なお、導電性の付与は、多孔質プラスチック基材を成形する際に例えばカーボンブラックやカーボンファイバー、金属粉などの導電性材料を基体中に混入させる方法や、成形後の多孔質プラスチック基材の表面に界面活性剤等の液体を塗布する方法などによって行われる。通常、界面活性剤などを塗布する方法が取られるが多孔質プラスチック基材の少なくとも表面に導電性を付与できるものであれば、特に限定されない。
【0052】
▲3▼ 続いて、多孔質プラスチック基材の表面に、その多孔質プラスチック基材の表面と相溶性を有し、かつその多孔質プラスチック基材を構成する粒子よりも小さい粒径の粒子のプラスチック材を噴出させる静電気的に塗着する塗装方法によって、小粒子のプラスチック材を被着・積層し、
【0053】
▲4▼ さらに続けて、この多孔質プラスチック基材を、所定温度に設定した加熱炉などで二次焼結する。これにより、大粒子多孔質層に、水に対する接触角が60度以上好ましくは90度以上の小粒子多孔質層を複合一体化した複層の多孔質プラスチックフィルタを得ることができる。
【0054】
これらに使用する成形金型は、多孔質プラスチックフィルタの断面形状に合わせた前記した静的成形方法における外型と内型とよりなる成形金型、動的成形方法における押出用口金や射出用成形金型などである。
【0055】
上記のようにして得られる多孔質プラスチックフィルタは、通常、複数本を組合せて図5に示すようなフィルタユニット21とし、これを所定の形状の分離装置用容器内に垂直または水平に懸架等の手段により取り付けて分離装置として使用する。
【0056】
図5に示すフィルタユニット21は、多孔質プラスチックフィルタ1を略板状の支持体22に取付けたものであって、プラスチックフィルタ1の一方の端部を孔の開いた支持体22に嵌着等の手段により固定し、他方の端部の開口部を蓋体23で閉塞したものである。
【0057】
この支持体22および蓋体5は、金属や各種の合成樹脂例えば硬質のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂や反応型の熱硬化性樹脂などが使用されるが、反応型の液状ポリウレタン樹脂が成形加工性や寸法安定性から好ましい。
【0058】
そして、このフィルタユニットに導電性を付与する必要がある場合には、多孔質プラスチックフィルタを焼結成形する際に超高分子量ポリエチレンに1〜10%程度のカーボンブラックを添加するとともに支持体および蓋体にも同様にカーボンブラックを添加した導電性材料を使用する。
【0059】
なお、反応型の液状ポリウレタン樹脂を使用する場合主剤のポリオールおよび硬化剤に平均糸長0.1〜1.0mmの炭素繊維を3〜10重量%添加したものが、残留歪みが小さく高い寸法精度と帯電防止性能を兼ね備えたものとなり、好適である。
【0060】
なお、ひだ部を中空状筒体のほぼ半周にわたり形成したフィルタで構成したフィルタユニットは、主として所定の形状の分離装置用容器内に、その半周を円筒形とした側(ひだ部を形成しない側)を上面側(除去すべき微粒子が落下して来る側)にして水平方向に配置して取り付けて分離装置すると、落下して来る除去すべき微粒子がプラスチックフィルタのひだ部分に滞積しなくて好ましい。しかし、このフィルタユニットを、星形ひだ付中空状筒体と同様に垂直方向に懸架して取り付けて分離装置としてもよい。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例によりその範囲が限定されるものではない。多孔質プラスチックフィルタを以下に記載の内容にて製造し、フィルタとしての性能評価を下記の方法により評価した。その結果を各表に示す。
【0062】
「粒子脱落の有無」……逆洗による払い落しの際に、フィルタ粒子の脱落がなく良好なもの(○)、逆洗による払い落しの際に、フィルタ粒子の脱落が一部認められるもの(△)、逆洗による払い落しの際に、フィルタ粒子の脱落があるものを(×)とした。ただし、ここでフィルタ粒子とは、フィルタ面に設けた非粘着特性を有する粒子あるいはフィルタを構成しているプラスチックを指す。
【0063】
「粉体払い落し性」……逆洗によるフィルタ表面に付着した微粒子の払い落しが極めて良好なもの(◎)、逆洗によるフィルタ表面に付着した微粒子の払い落しが良好なもの(○)、逆洗によるフィルタ表面に付着した微粒子の払い落しが一部悪いもの(△)、逆洗によるフィルタ表面に付着した微粒子の払い落しが悪いものを(×)とした。
【0064】
「微粒子捕集性能」……払い落された微粒子の流体流出側への混入が認められないもの(○)、払い落された微粒子の流体流出側への混入が一部認められるもの(△)、払い落された微粒子の流体流出側への混入が認められるもの(×)とした。
【0065】
「対水接触角/度」……ゴニオメーター式接触角測定器(エルマ社製G−1型)により測定した数値である。
【0066】
「圧力損失/mmAq」…微粒子を含まない空気を1m/minで吸引した時の値である。
【0067】
〔実施例1〕
平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、断面形状が図5に示す筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、図1に示す肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0068】
〔比較例1〕
平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、円筒状内型と円筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、肉厚3mmの断面形状が円筒形の多孔質プラスチックフィルタを得た(外径は実施例1と同一)。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示したように、各例においては、粒子の脱落や流体流出側への微粒子の混入、さらには粉体の払い落し性能についても問題なく良好であるが、実施例1の星形形状のフィルタは、円形形状のフィルタに比較して圧力損失が低く、しかも単位容積当たりのろ過面積が多くなるので、分離装置のろ過容量、装置容量、設置面積などの選択が容易にでき、設計施工上も優れるものである。
【0071】
〔実施例2〕
平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、実施例1と同様の断面形状の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み2mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、肉厚2mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0072】
〔実施例3〕
平均粒径が110μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを、実施例1と同様の断面形状が星形の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0073】
〔実施例4〕
平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、実施例1と同様の断面形状が星形の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み2mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、次いで、その表面に界面活性剤を塗布して肉厚2mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示したように、実施例2においては、粒子の脱落や流体流出側への微粒子の混入もなく、また粉体の払い落し性能についても問題なかったが、実施例3においては、孔径が大きいため、流体流出側への微粒子の混入が一部認められた。実施例4においては、粉体の払い落し性に間題があった。また、圧力損失は、いずれも実用上は問題ないが、特に実施例3が良好である。
【0076】
〔実施例5〜9〕
平均粒径が40μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンと、平均粒径が150μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量400万の塊状の超高分子量ポリエチレンとを、それぞれ表3に記載の割合(重量%)で混合した組成物を、実施例1と同様の断面形状の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み2mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、肉厚2mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0077】
【表3】
【0078】
表3に示したように、実施例5〜9のいずれも粒子の脱落および粉体払い落し性能について問題なく、また、圧力損失については実施例5が若干高いが実用上問題はない。小粒径材料の割合が低い実施例9では、流体流出側への微粒子の混入が一部認められた。
【0079】
〔実施例10〕
平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンと平均粒径が0.2μmのPTFE粉体を、その混合割合が全体に対し超高分子量ポリエチレンが95重量%、およびΡTFE粉体が5重量%になるようにブレンダーにて機械的に混合し焼結用材料とした。この材料を、実施例1と同様の断面形状の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み2mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、肉厚2mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0080】
〔実施例11〕
平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量20万の超高分子量ポリエチレンと溶媒に溶したポリフルオロアルキルアクリレートを、その混合割合が全体に対し超高分子量ポリエチレンが99重量%、およびポリフルオロアルキルアクリレート成分が1重量%になるようにブレンダーにて機械的に混合し焼結用材料とした。この材料を、実施例1と同様の断面形状の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み2mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、肉厚2mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0081】
【表4】
【0082】
表4に示したように、実施例10,11においては、粒子の脱落や粉体の払い落し性能に問題はなく、また、払い落し性能を評価する上で1つの目安となる対水接触角も大きな値となった。実施例10において、PTFE粒子が脱落しない理由については現在のところ定かでないが、金型内で超高分子量ポリエチレンが溶融膨脹する際に、PTFE粒子がある程度超高分子量ポリエチレンの粒子内部に埋封されるためと考えられる。一方、実施例11において、ポリフルオロアルキルアクリレートが脱落しない理由は、過熱により超高分子量ポリエチレンの粒子側に親油基が、表面側にパーフルオロアルキル基が高密度に配向されているためと考えられる。また、圧力損失は、いずれも実用上は問題ない。
【0083】
〔実施例12〕
断面形状が実施例1と同様の断面形状の筒状内型1個と、筒状内型よりも大径であってかつ交換可能な筒状外型を2個計3個を準備し、まず、平均粒径が160μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを、層の厚み比率が最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmの70%を得るに必要な幅の一次間隙部を有する筒状内型と筒状外型からなる成形金型の一次間隙部内に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、孔径の大きな大粒径多孔質層を得た後、続いて、この筒状外型をその筒状外型より内径が大なる筒状外型に交換して前記の大粒径多孔質層の外側に、平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、層の厚み比率が最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmの30%になり得るに必要な幅の二次間隙部を形成して大なる筒状外型を配置し、この二次間隙部内に、前記の平均粒径が30μmの超高分子量ポリエチレンを充填し、これを再度160〜220℃の温度で30分加熱し、円筒の外層側即ち、流体の流入側に孔径の小さな小粒径多孔質層が、円筒の内層側即ち、流体の流出側に孔径の大きな大粒径多孔質層が形成された2層の全肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0084】
〔実施例13〕
実施例12と同一の筒状内型および筒状外型を使用し、まず、平均粒径が30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを層の厚み比率が最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmの30%を得るに必要な幅の一次間隙部を有する筒状内型と筒状外型からなる成形金型の一次間隙部内に充填し、これを160〜220℃の温度で30分加熱し、孔径の小さな小粒径多孔質層を得た後、実施例13と同様にして筒状外型を取替え、平均粒径が160μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを層の厚み比率がフイルタの全厚みの70%になるように、上記小粒径多孔質層の外側と取替えた筒状外型を配して設けた二次間隙部内に充填し、これを再度160〜220℃の温度で30分加熱し、円筒の外層側即ち、流体の流入側に孔径の大きな大粒径多孔質層が、円筒の内層側即ち、流体の流出側に孔径の小さな小粒径多孔質層が形成された2層の全肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0085】
〔実施例14〕
平均粒径が160μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを、実施例1と同様の断面形状の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、超高分子量ポリエチレン単独の断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0086】
【表5】
【0087】
表5に示したように、実施例12,13においては、粒子の脱落や流体流出側への微粒子の混入もなく、また圧力損失も小さく問題ないが、実施例14においては、孔径が大きすぎるため、流体流出側への微粒子の混入が認められた。なお、圧力損失は、いずれも実用上は問題ないが、特に実施例14が良好である。
【0088】
〔実施例15〕
平均粒径が170μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを、実施例1と同様の断面形状の筒状内型と筒状外型から形成される最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmを得るに必要な幅の間隙部に充填し、これを150〜200℃の温度で60分加熱し、肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。この多孔質プラスチック基材の表面に界面活性剤を塗布してその基材の表面に導電性を付与した後、平均粒径30μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、自動静電塗装機を用いて、使用電圧60ΚV、霧化空気圧1.5Kg/cm2 にて静電塗装して、その基材の表面に平均粒径30μmの分子量200万の超高分子量ポリエチレンで厚さ200μmの多孔質層を被着積層した。これをさらに150〜200℃の温度の加熱炉内で30分加熱して焼結成形して、その基材の表面に基材の孔径より小径の多孔質層を被着溶着した2層の肉厚ほぼ3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0089】
〔実施例16〕
平均粒径が340μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量330万の超高分子量ポリエチレンを、先端部に最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmを得るに必要な幅の円筒状開口を有する口金を設けたラム式押出機で焼結成形して、肉厚3mmの円筒形状の多孔質プラスチック基材を得た。この多孔質プラスチック基材を、実施例15と同じ静電塗装条件で静電塗装して、その基材の表面に平均粒径30μmの分子量200万の超高分子量ポリエチレンで厚さ200μmの多孔質層を被着積層し、これをさらに実施例15と同様の加熱条件で焼結成形して、その基材の表面に基材の孔径より小径の多孔質層を被着積層した2層の肉厚ほぼ3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0090】
【表6】
【0091】
表6に示したように、小粒径のプラスチック材を静電塗装してなる実施例15,16においては、粒子の脱落や流体流出側ヘの微粒子の混入もなく、フィルタとしての性能に優れている。また、圧力損失は、いずれも良好である。
【0092】
〔実施例17〕
実施例12と同一の筒状内型および筒状外型を使用し、先ず、平均粒径が160μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを、層の厚み比率が最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmの70%を得るに必要な幅の一次間隙部を有する筒状内型と筒状外型からなる成形金型の一次間隙部内に充填し、これを160〜220℃の温度で30分加熱し、孔径の大きな大粒径多孔質層を得た後、実施例12と同様にして筒状外型を取替え、平均粒径が26μmの低密度ポリエチレンに200KGyのγ線を照射して得た架橋度77%(メルトフローレイト0.01以下)の小粒径のプラスチック材を、層の厚み比率がフイルタの全厚みの30%になるように、上記大粒径多孔質層の外側と取替えた筒状外型を配して設けた二次間隙部内に充填し、これを再度160〜220℃の温度で30分加熱し、円筒の外層側即ち、流体の流入側に孔径の小きな小粒径多孔質層が、円筒の内層側即ち、流体の流出側に孔径の大さな大粒径多孔質層が形成された2層の全肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0093】
〔実施例18〕
実施例15と同様の方法で平均粒径が170μmの分子量400万の超高分子量ポリエチレンで、肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。この多孔質プラスチック基材の表面に界面活性剤を塗布してその基材の表面に導電性を付与した後、実施例17で使用したと同様の架橋度77%の小粒径のプラスチック材を、実施例15と同じ静電塗装方法で静電塗装して、その基材の表面に平均粒径26μmの超高分子量ポリエチレンで厚さ170μmの多孔質層を被着積層し、これをさらに実施例15と同様の加熱条件で焼結成形して、その基材の表面に基材の孔径よりり小径の多孔質層を被着積層した2層の肉厚ほぼ3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0094】
【表7】
【0095】
表7に示したように、低密度ポリエチレンに200KGyのγ線を照射して得た架橋度77%の小粒径のプラスチック材料を、筒状等の形状からなる外型とその内部に挿入する内型とよりなる成形金型を用いる静的成形方法や、静電塗装方法の実施例17,18においては、粒子の脱落や流体流出側ヘの微粒子の混入もなく、フィルタとしての性能を充分に備えている。また、圧力損失は、いずれも良好である。
【0096】
〔実施例19〕
実施例12と同一の筒状内型および筒状外型を使用し、まず、平均粒径が150μmで嵩密度が0.42g/cm3 の樹脂粒子がぶどう房形状の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを、層の厚み比率が最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmの70%を得るに必要な幅の一次間隙部を有する筒状内型と筒状外型からなる成形金型の一次間隙部内に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、孔径の大きな大粒径多孔質層を得た後、実施例12と同様にして筒状外型を取替え、平均粒径が40μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、層の厚み比率がフィルタの全厚みの30%になるように、上記大粒径多孔質層の外側の筒状外型と取替えた筒状外型を配して設けた間隙部に充填し、これを再度160〜220℃の温度で20〜30分加熱し、円筒の外層側即ち、流体の流入側に孔径の小さな小粒径多孔質層を有し、円筒の内層側即ち、流体の流出側に孔径の大きな大粒径多孔質層を有する2層の全肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0097】
〔実施例20〕
実施例12と同一の筒状内型および筒状外型を使用し、まず、平均粒径が120μmで嵩密度が0.46g/cm3 の樹脂粒子が塊状の分子量400万の超高分子量ポリエチレンを、層の厚み比率が最終の多孔質プラスチックフィルタ厚み3mmの70%を得るに必要な幅の一次間隙部を有する筒状内型と筒状外型からなる成形金型の一次間隙部内に充填し、これを160〜220℃の温度で30〜90分加熱し、孔径の大きな大粒径多孔質層を得た後、実施例12と同様にして筒状外型を取替え、平均粒径が40μmでメルトフローレイトが0.01以下の分子量200万の超高分子量ポリエチレンを、層の厚み比率がフイルタの全厚みの30%になるように、上記大粒径多孔質層の外側の筒状外型と取替えた筒状外型を配して設けた二次間隙部内に充填し、これを再度160〜220℃の温度で20〜30分加熱し、円筒の外層側即ち、流体の流入側に孔径の小きな小粒径多孔質層が、円筒の内層側即ち、流体の流出側に孔径の大さな大粒径多孔質層が形成された2層の全肉厚3mmの断面形状が星形の多孔質プラスチックフィルタを得た。
【0098】
【表8】
【0099】
表8に示したように、樹脂粒子がぶどう房形状の超高分子量ポリエチレンを使用した実施例19においては、圧力損失の低下を招くことなく高い引張強度、伸びを示している。実施例20においては、圧力損失の低下は招くことはないが引張強度、伸びが低下していることを示している。
【0100】
【発明の効果】
本発明に係る全周に又はほぼ半周にわたりひだ部を形成した中空状筒体で構成された微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタは、単体のフィルタエレメントとして使用した場合は無論のことこれを集合させたフィルタユニットとして利用した場合、単なる円筒状のものに比較し1本当たり1.5倍〜数倍の濾過面積を持たせることが可能となり、これを集塵装置に組み込んだ場合、集塵装置の大きさを1/2〜1/3以下に小型化することができ、産業上大きな効果を奏する。
【0101】
しかも、本発明の多孔質プラスチックフィルタは、粉末の熱可塑性プラスチック材を焼結成形してあるので、フィルタとしての各種の優れた特性を有する多孔質体であると共に、剛直性を有することより、フィルタエレメントあるいはフィルタユニットの形状を維持するための補持装置(リティナー)などを必要とすることのない自己直立性あるいは形態保持性のあるフィルタである。
【0102】
また、本発明の多孔質プラスチックフィルタは、中空状筒体の少なくとも一側の表面の水に対する接触角が、60度以上、好ましくは90度以上であるため、良好な払い落し性能を有する。
【0103】
また、粉末の熱可塑性プラスチック材として、平均粒径が5〜90μmの熱可塑性プラスチック材Aを用いる構成、また、平均粒径が5〜90μmのプラスチック材Aと、平均粒径が90μmを超え1,000μm以下のプラスチック材Bとを使用してなる構成、平均粒径が小径なプラスチック材Aを焼結成形してなる小粒子多孔質層と、平均粒径が該プラスチック材Aより大径なプラスチック材Bを焼結成形してなる大粒子多孔質層との複合一体層を具備する構成により、良好な払い落し性能と、表面捕集性能を兼備しながらも、従来のようにPTFE粒子等が脱落し、捕集された微粒子中に混入するなどの問題のない微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタを提供することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例であるプラスチックフィルタ1の(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図2】他の例のプラスチックフィルタ1の平面図である。
【図3】他の例のプラスチックフィルタ1の平面図である。
【図4】プラスチックフィルタの製造方法を説明するための、筒状内型11と筒状外型12の断面図である。
【図5】プラスチックフィルタ1により構成されたフィルタユニット21の(a)は平面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
1 プラスチックフィルタ
2a 外側屈曲部
2b 内側屈曲部
3 筒体壁
11 筒状内型
12 筒状外型
21 フィルタユニット
22 支持体
23 蓋体
Claims (6)
- 粉末の熱可塑性プラスチック材を焼結成形した多孔質体からなり、筒体壁の少なくともその一部にひだ部を形成した中空状筒体で構成されていることを特徴とする微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ。
- 前記中空状筒体の少なくとも一側の表面の水に対する接触角が60度以上であることを特徴とする請求項1記載の微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ。
- 前記粉末の熱可塑性プラスチック材として、平均粒径が5〜90μmのプラスチック材Aを用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ。
- 前記粉末の熱可塑性プラスチック材として、少なくとも、平均粒径が5〜90μmのプラスチック材Aと、平均粒径が90μmを超え1,000μm以下のプラスチック材Bとを使用してなることを特徴とする請求項1又は2記載の微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ。
- 前記中空状筒体は、少なくとも、平均粒径が小径なプラスチック材Aを焼結成形してなる小粒子多孔質層と、平均粒径が該プラスチック材Aより大径なプラスチック材Bを焼結成形してなる大粒子多孔質層との複合一体層を具備することを特徴とする請求項1,2又は4記載の微粒子分離用多孔質プラスチックフイルタ。
- 前記プラスチック材Aは、平均粒径が10〜60μmの超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項3,4又は5記載の微粒子分離用多孔質プラスチックフイルタ。
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