JPH11341594A - スピーカ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ボイスコイルの発生する磁束が磁気ギャップ
内の磁束密度を変化させて再生音に電流歪が生じやすい
ムービングコイル型のスピーカにおいて、磁束密度を犠
牲にしたり磁気回路を大型化することなくスピーカの電
流歪が十分に抑制できるようにすること。 【解決手段】 円筒形状のボビン１０の外周面のうち軸
線方向に所定量離間させた２箇所にそれぞれが巻回され
ている２つのボイスコイル１１，１２と、電気抵抗の低
いアルミニウム等の材料からなりボビン１０の内側に空
隙を介して配置された円柱形状もしくは肉厚円筒形状の
電流歪抑制部材１３と、２つのボイスコイル１１，１２
の外側に空隙を介してそれぞれの内周面を対向させ、互
いに径方向逆向きに磁化されているリング形状の２つの
マグネット１４，１５と、磁性材からなり２つのマグネ
ット１４，１５の外周面に自身の内周面を接合させてい
る円筒形状のヨーク１６とを備える構成とし、ボビン１
０の内側に確保される空きスペースに大きめの電流歪抑
制部材１３を設置できるようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、可動ボイスコイル
を組み込んだムービングコイル型のスピーカに係り、特
に、その磁気回路構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】図４はムービングコイル型のスピーカに
一般的に採用されている磁気回路の断面図である。同図
に示すように、この磁気回路は、磁性材からなり中央部
にセンターポール１ａが立設されているヨーク１と、こ
のヨーク１のプレート部１ｂ上に接合されてセンターポ
ール１ａを包囲しているリング形状のマグネット２と、
磁性材からなりマグネット２上に接合されてセンターポ
ール１ａとの間に磁気ギャップＧを画成しているトップ
プレート３とによって主に構成されており、軸線方向に
磁化されているマグネット２からの直流磁束が磁気ギャ
ップＧ内で収束するようになっている。なお、図示省略
してあるが、コーン紙等からなる振動板に接着されてい
る円筒形状のボビンの外周面にボイスコイルが巻回され
ており、このボイスコイルが磁気ギャップＧ内に配置さ
れるので、音声電流を通電することでボイスコイルに電
磁力が作用し、このボイスコイルに駆動されて振動板が
振動するようになっている。

【０００３】しかしながら、このように構成された磁気
回路においては、ボイスコイルに電流が流れると磁束が
発生し、この磁束が磁気ギャップＧ内の磁束密度を変化
させてしまうため、磁気ギャップＧ内に配置されるボイ
スコイルは特に高周波数帯域においてインダクタンスが
上昇し、スピーカの再生音に電流歪と称される歪が生じ
るという難点がある。

【０００４】そこで従来、図５に示すように、銅やアル
ミニウム等の電気抵抗の低い非磁性材料からなるキャッ
プ４をヨーク１のセンターポール１ａに外嵌させ、この
キャップ４に生起される渦電流によってボイスコイルが
発生する磁束を低減させ、もって磁気ギャップＧ内の磁
束密度の変化を小さくするという技術が提案されてい
る。スピーカの磁気回路にこのようなキャップ４を付設
すると、図６に示すように高周波数帯域におけるインピ
ーダンス曲線の平準化が図れ、音響出力の周波数特性も
図７に示すように改善される。

【０００５】なお、特開昭６３−２１５２９５号公報に
開示されているように、キャップ４よりも肉薄な銅やア
ルミニウム等の金属膜をセンターポール１ａやトッププ
レート３にクラッドし、同様の効果を期待するという技
術も提案されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述したように、スピ
ーカの電流歪を抑制するための対策として、前者の従来
技術では、銅やアルミニウム等からなるキャップ４を磁
気ギャップＧ内に配置させているが、ボイスコイルが遊
挿される磁気ギャップＧ内にさらにキャップ４を配置さ
せるとなると、このキャップ４の板厚分だけ磁気ギャッ
プＧのギャップ長を増大させなければならず、磁気ギャ
ップＧ内における磁束密度が低下するという問題を生じ
る。また、このような磁束密度の低下を補うためには、
より大きなマグネット２が必要になる等、磁気回路の大
型化を余儀なくされるという不具合もある。

【０００７】一方、後者の従来技術では、キャップ４よ
りも肉薄な銅やアルミニウム等の金属膜をセンターポー
ル１ａやトッププレート３にクラッドしているため、磁
気ギャップＧのギャップ長をさほど増大させる必要はな
いが、肉薄な金属膜に生起される弱い渦電流では、ボイ
スコイルが発生する磁束を十分に低減させることはでき
ず、スピーカの電流歪を抑制する効果が低いという問題
がある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、２つのボイス
コイルの外側にそれぞれ径方向逆向きに磁化されている
リング形状の２つのマグネットを対向配置させて、ボビ
ンの内側の円柱形状のスペースをほとんど利用しない磁
気回路となし、この空きスペースに電気抵抗の小なる部
材を配置させることにより、磁束密度を犠牲にしたり磁
気回路を大型化することなくスピーカの電流歪が十分に
抑制できるようにした。

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明のスピーカでは、円筒形状
のボビンの外周面のうち軸線方向に所定量離間する２箇
所に巻回された２つのボイスコイルと、鉄よりも電気抵
抗の低い材料からなり前記ボビンの内側に空隙を介して
配置された電流歪抑制部材と、互いに径方向逆向きに磁
化され前記２つのボイスコイルの外側に空隙を介して配
置されたリング形状の２つのマグネットと、磁性材から
なり前記２つのマグネットの外周面に接合されたヨーク
とを備える構成とした。

【００１０】このように構成されるスピーカの磁気回路
は、一方のマグネットの内周面から２つのボイスコイル
を横切って他方のマグネットの内周面へと至る直流磁束
の収束を利用しているので、ボビンの内側の空きスペー
スにアルミニウム等からなる大きめの電流歪抑制部材を
設置してスピーカの電流歪抑制効果を高めても、ボイス
コイルに作用する磁束密度を低下させる心配がない。し
たがって、磁気回路を大型化することなく、高周波数帯
域における再生音の歪を抑えて音質を向上させることが
できる。

【００１１】

【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、
図１は本発明の第１実施例に係るスピーカの断面図、図
２は本発明の第２実施例に係るスピーカの断面図、図３
は本発明の第３実施例に係るスピーカの断面図である。

【００１２】まず、図１に示す第１実施例について説明
すると、このスピーカは、非磁性材からなる円筒形状の
ボビン１０と、このボビン１０の外周面のうち軸線方向
に所定量離間させた２箇所にそれぞれが巻回されている
２つのボイスコイル１１，１２と、ボビン１０の内側に
空隙を介して配置された略円柱形状のアルミニウムから
なる電流歪抑制部材１３と、リング形状の２つのマグネ
ット１４，１５および円筒形状のヨーク１６からなる磁
気回路と、この磁気回路や電流歪抑制部材１３を収納保
持している磁気回路カバー１７と、コーン紙等からなり
ボビン１０の図示上端部を自身の内周部に接合している
振動板１８と、弾性エッジ１９やダンパ２０を介して振
動板１８を支持しているフレーム２１とによって概略構
成されている。ただし、前記２つのマグネット１４，１
５は互いに径方向逆向きに磁化されていて、各マグネッ
ト１４，１５の内周面がそれぞれ空隙を介して前記２つ
のボイスコイル１１，１２の外側に対向させてあり、か
つ、磁性材からなる前記ヨーク１６の内周面が各マグネ
ット１４，１５の外周面に接合させてある。

【００１３】すなわち、このスピーカの磁気回路は、磁
束が一方のマグネット１４の内周面からボイスコイル１
１を内側へ横切り、さらにボイスコイル１２を外側へ横
切って他方のマグネット１５の内周面へ収束するので、
ボビン１０の内側の円柱形状のスペースをほとんど利用
しない磁気回路となっている。そのため、この空きスペ
ースに、前述したキャップ４（図５参照）に比べてはる
かに厚いアルミニウム製の電流歪抑制部材１３を設置し
てスピーカの電流歪抑制効果を高めても、ボイスコイル
１１，１２に作用する磁束密度を低下させる心配がな
い。したがって、このスピーカは、磁気回路を大型化し
なくとも高周波数帯域における再生音の歪を抑える効果
が高く、良好な音質が期待できる。実際、このスピーカ
を図４，５に示した従来のスピーカと比較した場合、図
６に実線で示すように高周波数帯域におけるインピーダ
ンス曲線が大幅に平準化されており、音響出力の周波数
特性も図７に実線で示すように改善されている。

【００１４】なお、このスピーカは、ボイスコイル１
１，１２に音声電流を通電すると電磁力の作用で両者１
１，１２に同一方向の駆動力が与えられるようになって
おり、その駆動力がボビン１０を介して振動板１８に伝
達されることから、この振動板１８が音声電流に応じて
振動するようになっている。

【００１５】また、電流歪抑制部材１３の材料としては
比較的安価で軽量なアルミニウムが好適であるが、鉄よ
りも電気抵抗が低くて渦電流を生じやすい他の材料、例
えば銅などであってもよい。

【００１６】図２に示す第２実施例では、ボビン１０の
内側に位置する円柱形状の電流歪抑制部材１３と磁気回
路カバー１７とをアルミニウム等で一体品にしてあり、
第１実施例に比べて部品点数を削減し組立工数を減らす
ことができる。

【００１７】図３に示す第３実施例では、電流歪抑制部
材１３と磁気回路カバー１７とフレーム２１とをアルミ
ニウム等で一体品にしてあり、第２実施例よりもさらに
部品点数を削減し組立工数を減らすことができる。

【００１８】

【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を奏する。

【００１９】２つのボイスコイルの外側にそれぞれ径方
向逆向きに磁化されているリング形状の２つのマグネッ
トを対向配置させて、ボビンの内側の円柱形状のスペー
スをほとんど利用しない磁気回路となし、このボビンの
内側の空きスペースにアルミニウムや銅等からなる電流
歪抑制部材を設置した構成にしてあるので、従来品に用
いられているキャップなどと比べてはるかに厚い電流歪
抑制部材を使用してスピーカの電流歪抑制効果を高めて
も、ボイスコイルに作用する磁束密度を低下させる心配
がない。したがって、磁気回路を大型化することなく、
高周波数帯域における再生音の歪を抑えて音質を向上さ
せることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例に係るスピーカの断面図で
ある。

【図２】本発明の第２実施例に係るスピーカの断面図で
ある。

【図３】本発明の第３実施例に係るスピーカの断面図で
ある。

【図４】電流歪抑制対策が講じられていない従来のスピ
ーカの磁気回路を示す断面図である。

【図５】キャップを付設して電流歪を抑制している従来
のスピーカの磁気回路を示す断面図である。

【図６】スピーカの再生音の周波数に応じたインピーダ
ンスを示す特性図である。

【図７】スピーカの再生音の周波数に応じた音響出力を
示す特性図である。

【符号の説明】

１０ ボビン １１，１２ ボイスコイル １３ 電流歪抑制部材 １４，１５ マグネット １６ ヨーク １７ 磁気回路カバー １８ 振動板 ２１ フレーム

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円筒形状のボビンの外周面のうち軸線方
   向に所定量離間する２箇所に巻回された２つのボイスコ
   イルと、鉄よりも電気抵抗の低い材料からなり前記ボビ
   ンの内側に空隙を介して配置された電流歪抑制部材と、
   互いに径方向逆向きに磁化され前記２つのボイスコイル
   の外側に空隙を介して配置されたリング形状の２つのマ
   グネットと、磁性材からなり前記２つのマグネットの外
   周面に接合されたヨークとを備えていることを特徴とす
   るスピーカ。
2. 【請求項２】 前記電流歪抑制部材が円柱形状もしくは
   肉厚円筒形状に形成されていることを特徴とする請求項
   １記載のスピーカ。
3. 【請求項３】 前記電流歪抑制部材がアルミニウムもし
   くは銅からなることを特徴とする請求項１記載のスピー
   カ。