JPH11335773A - 冷間加工性に優れた軸受用鋼 - Google Patents
冷間加工性に優れた軸受用鋼Info
- Publication number
- JPH11335773A JPH11335773A JP15686498A JP15686498A JPH11335773A JP H11335773 A JPH11335773 A JP H11335773A JP 15686498 A JP15686498 A JP 15686498A JP 15686498 A JP15686498 A JP 15686498A JP H11335773 A JPH11335773 A JP H11335773A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- carbide
- center distance
- average
- ppm
- steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 C量,Si量を低減することなく、転動疲労
寿命などの特性を損なわずに素材の冷間鍛造性を向上さ
せ、金型寿命を向上させることができる冷間加工性に優
れた軸受用鋼を提供することにある。 【解決手段】 重量%で、C:0.60〜1.20%、
Si:0.10〜0.30%、Mn:0.10〜1.0
0%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、
Cr:0.80〜2.00%、Al:0.005〜0.
040%を夫々含有し、残部がFe及び不可避不純物か
らなり、該不可避不純物中、Ti:≦15ppm、O:
≦12ppmに夫々抑制し、さらに球状化焼鈍後の平均
炭化物中心間距離が0.500μm以上0.850μm
以下、炭化物面積率が12%〜30%、さらに0.73
×C量(重量%)+0.08≦平均炭化物中心間距離≦
0.30×C量(重量%)+0.57を満足する構成と
した軸受用鋼。
寿命などの特性を損なわずに素材の冷間鍛造性を向上さ
せ、金型寿命を向上させることができる冷間加工性に優
れた軸受用鋼を提供することにある。 【解決手段】 重量%で、C:0.60〜1.20%、
Si:0.10〜0.30%、Mn:0.10〜1.0
0%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、
Cr:0.80〜2.00%、Al:0.005〜0.
040%を夫々含有し、残部がFe及び不可避不純物か
らなり、該不可避不純物中、Ti:≦15ppm、O:
≦12ppmに夫々抑制し、さらに球状化焼鈍後の平均
炭化物中心間距離が0.500μm以上0.850μm
以下、炭化物面積率が12%〜30%、さらに0.73
×C量(重量%)+0.08≦平均炭化物中心間距離≦
0.30×C量(重量%)+0.57を満足する構成と
した軸受用鋼。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間鍛造やヘッダ
ー加工等の冷間加工性に優れた軸受用鋼、更に詳しく
は、冷間加工により成形されるベアリングの内輪,外輪
の軌道輪および転動体用の鋼に関する。
ー加工等の冷間加工性に優れた軸受用鋼、更に詳しく
は、冷間加工により成形されるベアリングの内輪,外輪
の軌道輪および転動体用の鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】ベアリングの軌道輪および転動体の素材
にはJISに規定するSUJ2が広く使用されている。
一般に軸受部材は球状化焼なまし処理を施した鋼材、鋼
管および鍛造リングから切削加工により製造されるが、
この製造工程において、鋼材から全面切削により加工す
る場合は材料歩留りや生産効率が問題となる。また鍛造
リングは一般には熱間加工により製造されるが、寸法精
度および省エネルギーの観点から冷間加工による成形が
望ましい。
にはJISに規定するSUJ2が広く使用されている。
一般に軸受部材は球状化焼なまし処理を施した鋼材、鋼
管および鍛造リングから切削加工により製造されるが、
この製造工程において、鋼材から全面切削により加工す
る場合は材料歩留りや生産効率が問題となる。また鍛造
リングは一般には熱間加工により製造されるが、寸法精
度および省エネルギーの観点から冷間加工による成形が
望ましい。
【0003】すなわち、冷間加工は切削や熱間加工など
の加工法と比較すると生産性が高いこと、工程の自動化
が容易なことなどの利点があることから合理的加工法と
して近年急激な普及を示し、冷間鍛造によってベアリン
グの軌道輪および転動体の成形が行われている。しか
し、高炭素クロム軸受鋼は冷間における変形抵抗が高い
ため、冷間加工した際の金型寿命が短いこと、また冷間
鍛造時に割れが発生するといった諸問題がある。
の加工法と比較すると生産性が高いこと、工程の自動化
が容易なことなどの利点があることから合理的加工法と
して近年急激な普及を示し、冷間鍛造によってベアリン
グの軌道輪および転動体の成形が行われている。しか
し、高炭素クロム軸受鋼は冷間における変形抵抗が高い
ため、冷間加工した際の金型寿命が短いこと、また冷間
鍛造時に割れが発生するといった諸問題がある。
【0004】このような従来の軸受用鋼の冷間鍛造性を
改善する方法として、特許第2726440号,特開平
7−188857号,特開平8−53735号各公報に
は、変形抵抗を素材のC量,Si量を減少させることで
変形抵抗を低くし、高炭素クロム鋼と比較して冷間鍛造
性が改善されたとある。しかし、C,Siは焼入硬さを
増大させ、室温,高温における強度を維持して耐摩耗性
を付与するために必須な成分であり、C,Si量を減ら
すことは転動寿命を短くすることになる。
改善する方法として、特許第2726440号,特開平
7−188857号,特開平8−53735号各公報に
は、変形抵抗を素材のC量,Si量を減少させることで
変形抵抗を低くし、高炭素クロム鋼と比較して冷間鍛造
性が改善されたとある。しかし、C,Siは焼入硬さを
増大させ、室温,高温における強度を維持して耐摩耗性
を付与するために必須な成分であり、C,Si量を減ら
すことは転動寿命を短くすることになる。
【0005】また、特許第2522457号、特開平2
−294451号各公報には、冷間鍛造した際に発生す
る微少割れの原因である炭化物の粒径を制限することに
よって冷間鍛造性を向上させたとあるが、冷間鍛造時の
金型寿命が短いという問題を解決するまでには至らな
い。また、特開平9−227991号公報には、冷間鍛
造性評価指針の1つである変形抵抗を下げるには硬さを
下げるのが有効であるとしているが、高炭素クロム軸受
鋼の中には低硬さであるにも関わらず変形抵抗が高いも
のもあり、変形抵抗を評価する場合は素材のミクロ組織
の影響を加えて考慮する必要がある。
−294451号各公報には、冷間鍛造した際に発生す
る微少割れの原因である炭化物の粒径を制限することに
よって冷間鍛造性を向上させたとあるが、冷間鍛造時の
金型寿命が短いという問題を解決するまでには至らな
い。また、特開平9−227991号公報には、冷間鍛
造性評価指針の1つである変形抵抗を下げるには硬さを
下げるのが有効であるとしているが、高炭素クロム軸受
鋼の中には低硬さであるにも関わらず変形抵抗が高いも
のもあり、変形抵抗を評価する場合は素材のミクロ組織
の影響を加えて考慮する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、C
量,Si量を低減することなく、転動疲労寿命などの特
性を損なわずに素材の冷間鍛造性を向上させ、金型寿命
を向上させることができる冷間加工性に優れた軸受用鋼
を提供することにある。
量,Si量を低減することなく、転動疲労寿命などの特
性を損なわずに素材の冷間鍛造性を向上させ、金型寿命
を向上させることができる冷間加工性に優れた軸受用鋼
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の前記目的である
金型寿命を向上させ、なおかつ素材の冷間鍛造性をも向
上させるには、素材の変形抵抗を低くする必要がある。
それには炭化物粒径を大きくし、かつ炭化物を少なくす
ることが一般的に有効であることは周知の事実である。
金型寿命を向上させ、なおかつ素材の冷間鍛造性をも向
上させるには、素材の変形抵抗を低くする必要がある。
それには炭化物粒径を大きくし、かつ炭化物を少なくす
ることが一般的に有効であることは周知の事実である。
【0008】本発明者らは、軸受用鋼の炭化物形状を画
像解析により調査し検討を重ねた結果、冷間鍛造性の向
上には球状化焼鈍組織が大きく影響を及ぼしており、特
に炭化物中心間距離が重要であることを見い出した。さ
らに研究を重ねたところ、球状化焼鈍後の球状炭化物の
平均炭化物中心間距離とC量に関して、0.73×C量
(重量%)+0.08≦平均炭化物中心間距離、を満足
するとき、高炭素クロム軸受鋼においても従来の球状化
焼鈍組織のときよりも冷間鍛造性を大幅に向上させるこ
とができることを知見した。
像解析により調査し検討を重ねた結果、冷間鍛造性の向
上には球状化焼鈍組織が大きく影響を及ぼしており、特
に炭化物中心間距離が重要であることを見い出した。さ
らに研究を重ねたところ、球状化焼鈍後の球状炭化物の
平均炭化物中心間距離とC量に関して、0.73×C量
(重量%)+0.08≦平均炭化物中心間距離、を満足
するとき、高炭素クロム軸受鋼においても従来の球状化
焼鈍組織のときよりも冷間鍛造性を大幅に向上させるこ
とができることを知見した。
【0009】また平均炭化物中心間距離がある一定の大
きさ以上になると変形抵抗は緩やかに低下するだけとな
り、顕著な効果は得られないことが判明した。さらに軸
受鋼の製造工程において、炭化物中心間距離を大きくす
ることは炭化物粒径を大きくすることにつながる。大き
な炭化物が存在したまま焼入・焼戻しを施した場合、焼
入組織、または焼戻組織に大きい炭化物が残留し、また
十分な硬さが得られないために転動疲労寿命を短くする
原因となる。そのため、焼入前の球状炭化物は出来るだ
け均一微細にするのが好ましい。これより、十分な変形
抵抗低下効果を得て且つ転動疲労寿命等の軸受鋼として
の特性を十分に発揮させるには、平均炭化物中心間距離
≦0.03×C量(重量%)+0.57を満足すること
が必要である。
きさ以上になると変形抵抗は緩やかに低下するだけとな
り、顕著な効果は得られないことが判明した。さらに軸
受鋼の製造工程において、炭化物中心間距離を大きくす
ることは炭化物粒径を大きくすることにつながる。大き
な炭化物が存在したまま焼入・焼戻しを施した場合、焼
入組織、または焼戻組織に大きい炭化物が残留し、また
十分な硬さが得られないために転動疲労寿命を短くする
原因となる。そのため、焼入前の球状炭化物は出来るだ
け均一微細にするのが好ましい。これより、十分な変形
抵抗低下効果を得て且つ転動疲労寿命等の軸受鋼として
の特性を十分に発揮させるには、平均炭化物中心間距離
≦0.03×C量(重量%)+0.57を満足すること
が必要である。
【0010】そこで、本発明者らが見いだした上記知見
に基づいてなされた前記の課題を解決するための手段
は、請求項1の発明では、重量%で、C:0.60〜
1.20%、Si:0.10〜0.30%、Mn:0.
10〜1.00%、P:0.015%以下、S:0.0
15%以下、Cr:0.80〜2.00%、Al:0.
005〜0.040%を夫々含有し、残部がFe及び不
可避不純物からなり、該不可避不純物中、Ti:≦15
ppm、O:≦12ppmに夫々抑制し、さらに球状化
焼鈍後の平均炭化物中心間距離が0.500μm以上
0.850μm以下、炭化物面積率が12%〜30%、
さらに0.73×C量(重量%)+0.08≦平均炭化
物中心間距離≦0.30×C量(重量%)+0.57を
満足する構成としたことを特徴とする冷間加工性に優れ
た軸受用鋼である。
に基づいてなされた前記の課題を解決するための手段
は、請求項1の発明では、重量%で、C:0.60〜
1.20%、Si:0.10〜0.30%、Mn:0.
10〜1.00%、P:0.015%以下、S:0.0
15%以下、Cr:0.80〜2.00%、Al:0.
005〜0.040%を夫々含有し、残部がFe及び不
可避不純物からなり、該不可避不純物中、Ti:≦15
ppm、O:≦12ppmに夫々抑制し、さらに球状化
焼鈍後の平均炭化物中心間距離が0.500μm以上
0.850μm以下、炭化物面積率が12%〜30%、
さらに0.73×C量(重量%)+0.08≦平均炭化
物中心間距離≦0.30×C量(重量%)+0.57を
満足する構成としたことを特徴とする冷間加工性に優れ
た軸受用鋼である。
【0011】また請求項2の発明では、重量%で、C:
0.60〜1.20%、Si:0.10〜0.30%、
Mn:0.10〜1.00%、P:0.015%以下、
S:0.015%以下、Cr:0.80〜2.00%、
Al:0.005〜0.040%を夫々含有し、さらに
Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.10〜0.5
0%、Cu:0.10〜0.50%のうち1種または2
種以上を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、
該不可避不純物中、Ti:≦15ppm、O:≦12p
pmに夫々抑制し、さらに炭化物平均炭化物中心間距離
が0.500μm以上0.850μm以下、炭化物面積
率が12%〜30%、さらに0.73×C量(重量%)
+0.08≦平均炭化物中心間距離≦0.30×C量
(重量%)+0.57を満足する構成としたことを特徴
とする冷間加工性に優れた軸受用鋼である。
0.60〜1.20%、Si:0.10〜0.30%、
Mn:0.10〜1.00%、P:0.015%以下、
S:0.015%以下、Cr:0.80〜2.00%、
Al:0.005〜0.040%を夫々含有し、さらに
Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.10〜0.5
0%、Cu:0.10〜0.50%のうち1種または2
種以上を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、
該不可避不純物中、Ti:≦15ppm、O:≦12p
pmに夫々抑制し、さらに炭化物平均炭化物中心間距離
が0.500μm以上0.850μm以下、炭化物面積
率が12%〜30%、さらに0.73×C量(重量%)
+0.08≦平均炭化物中心間距離≦0.30×C量
(重量%)+0.57を満足する構成としたことを特徴
とする冷間加工性に優れた軸受用鋼である。
【0012】ここで、本発明に係る軸受用鋼において、
前記請求項1記載の発明における各成分の限定理由を以
下に詳述する。
前記請求項1記載の発明における各成分の限定理由を以
下に詳述する。
【0013】重量%(以下、同じ)で、C:0.60〜
1.20%。Cは焼入焼戻後の硬さを得るのに必要であ
る。また焼入硬さを増大させ、室温,高温における強度
を維持して耐摩耗性を付与するために必須の元素であ
る。C含有量が0.60%未満であると焼入硬さが不足
して耐摩耗性を維持することができない。一方、1.2
0%を超えると長時間ソーキングでも拡散しきれない巨
大な共晶炭化物が生成するため、軸受部品の静粛性を初
めとして被研削性,冷間鍛造性,被切削性を低下させる
ので、その上限を1.20%とする。
1.20%。Cは焼入焼戻後の硬さを得るのに必要であ
る。また焼入硬さを増大させ、室温,高温における強度
を維持して耐摩耗性を付与するために必須の元素であ
る。C含有量が0.60%未満であると焼入硬さが不足
して耐摩耗性を維持することができない。一方、1.2
0%を超えると長時間ソーキングでも拡散しきれない巨
大な共晶炭化物が生成するため、軸受部品の静粛性を初
めとして被研削性,冷間鍛造性,被切削性を低下させる
ので、その上限を1.20%とする。
【0014】Si:0.10〜0.30%。Siは製鋼
工程における脱酸のために必要な元素であり、また耐摩
耗性と強度を増大する効果があり、少なくとも0.10
%は必要である。しかし、Si含有量が0.30%を超
えると冷間鍛造性,被切削性を低下させるので0.10
〜0.30%とする。
工程における脱酸のために必要な元素であり、また耐摩
耗性と強度を増大する効果があり、少なくとも0.10
%は必要である。しかし、Si含有量が0.30%を超
えると冷間鍛造性,被切削性を低下させるので0.10
〜0.30%とする。
【0015】Mn:0.10〜1.00%。Mnは焼入
性を向上させて強度を増大させる。しかし、多すぎると
残留オーステナイトを増加させて逆に強度を低下させ、
また寸法の径年劣化を引き起こす。このためMnの成分
範囲を0.10〜1.00%とした。
性を向上させて強度を増大させる。しかし、多すぎると
残留オーステナイトを増加させて逆に強度を低下させ、
また寸法の径年劣化を引き起こす。このためMnの成分
範囲を0.10〜1.00%とした。
【0016】P:0.015%以下。Pは靭性を低下さ
せる元素であり、極力低減することが望ましい。したが
って、Pの含有量は0.015%以下とする。
せる元素であり、極力低減することが望ましい。したが
って、Pの含有量は0.015%以下とする。
【0017】Al:0.005〜0.040%。Alは
製鋼工程での脱酸のために必須の元素であり、特にOを
12ppm以下にするためにはある程度の添加は必要で
あり、下限を0.005%とする。また多量に含有する
と硬質のAl2 O3 含有量の高い酸化物系介在物を多量
に生成するため、上限を0.040%とする。
製鋼工程での脱酸のために必須の元素であり、特にOを
12ppm以下にするためにはある程度の添加は必要で
あり、下限を0.005%とする。また多量に含有する
と硬質のAl2 O3 含有量の高い酸化物系介在物を多量
に生成するため、上限を0.040%とする。
【0018】S:0.015%以下。SはMnを化合し
て硫化系介在物を形成する。この硫化系介在物は冷間鍛
造時に発生原因となり、また転がり寿命を低下の原因と
なるため極力低減することが望ましい。したがって、
0.015%以下とする。
て硫化系介在物を形成する。この硫化系介在物は冷間鍛
造時に発生原因となり、また転がり寿命を低下の原因と
なるため極力低減することが望ましい。したがって、
0.015%以下とする。
【0019】Cr:0.80〜2.00%。Crは強
度、焼入性を向上させるのに重要な元素である。また、
Cと結びついて微細な炭化物を形成し耐摩耗性を付与す
る。しかし0.80%未満ではその効果がなく、また球
状化焼鈍時において炭化物が球状化し難くなる。一方、
2.00%を超えると巨大な共晶炭化物が生成するため
製品時の転動疲労寿命を短くする原因になる。従って、
Crの含有範囲を0.80〜2.00%とする。
度、焼入性を向上させるのに重要な元素である。また、
Cと結びついて微細な炭化物を形成し耐摩耗性を付与す
る。しかし0.80%未満ではその効果がなく、また球
状化焼鈍時において炭化物が球状化し難くなる。一方、
2.00%を超えると巨大な共晶炭化物が生成するため
製品時の転動疲労寿命を短くする原因になる。従って、
Crの含有範囲を0.80〜2.00%とする。
【0020】以上が本発明に係る軸受用鋼の基本成分で
ある。また、不可避不純物の内O、Tiを下記のように
限定する。
ある。また、不可避不純物の内O、Tiを下記のように
限定する。
【0021】Ti:≦15ppm。Tiは硬質の非金属
介在物TiNを形成して静粛性・音響特性を劣化させる
ので極力低減させることが望ましいが、15ppmまで
は許容される。よって、上限を15ppmとする。
介在物TiNを形成して静粛性・音響特性を劣化させる
ので極力低減させることが望ましいが、15ppmまで
は許容される。よって、上限を15ppmとする。
【0022】O:≦12ppm。Oは硬質の酸化物系非
金属介在物を形成して静粛性・音響特性を劣化させるの
で極力低減することが望ましいが、12ppmまでは許
容される。よって、上限を12ppmとする。
金属介在物を形成して静粛性・音響特性を劣化させるの
で極力低減することが望ましいが、12ppmまでは許
容される。よって、上限を12ppmとする。
【0023】つぎに、本発明に係る軸受用鋼において、
前記請求項2記載の発明における前記成分以外の各成分
の限定理由を以下に詳述する。
前記請求項2記載の発明における前記成分以外の各成分
の限定理由を以下に詳述する。
【0024】Ni:0.10〜0.50%。Niを0.
10%以上添加すると焼入性が向上すると共に靭性,延
性を改善する効果がある。しかし、多量に添加すると冷
間鍛造時の変形抵抗を上昇させるため上限を0.50%
とした。
10%以上添加すると焼入性が向上すると共に靭性,延
性を改善する効果がある。しかし、多量に添加すると冷
間鍛造時の変形抵抗を上昇させるため上限を0.50%
とした。
【0025】Mo:0.10〜0.50%。Moを0.
10%以上添加すると焼入性が向上すると共に耐食性,
耐摩耗性を向上させる。しかし、多量に添加するとM6
C炭化物を多量に生成し、被削性に悪影響を及ぼす上、
冷間鍛造時の変形抵抗を上昇させるため上限を0.50
%とした。
10%以上添加すると焼入性が向上すると共に耐食性,
耐摩耗性を向上させる。しかし、多量に添加するとM6
C炭化物を多量に生成し、被削性に悪影響を及ぼす上、
冷間鍛造時の変形抵抗を上昇させるため上限を0.50
%とした。
【0026】Cu:0.10〜0.50%。Cuを0.
10%以上添加すると焼入性,耐食性を向上させる。し
かし、多量に添加すると赤熱脆性を助長して熱間加工性
が劣化するので、上限を0.50%とする。
10%以上添加すると焼入性,耐食性を向上させる。し
かし、多量に添加すると赤熱脆性を助長して熱間加工性
が劣化するので、上限を0.50%とする。
【0027】このように、本発明に係る軸受用鋼では、
上述した成分構成を採用し、そして図1に示すように、
球状化焼鈍後の平均炭化物中心間距離が0.500μm
以上0.850μm以下、炭化物面積率が12〜30
%、さらにC量と平均炭化物中心間距離に関して、0.
73×C量(重量%)+0.08≦平均炭化物中心間距
離≦0.30×C量(重量%)+0.57、を満足する
とき、転動疲労寿命などの特性を損なわずに素材の冷間
鍛造性を向上させ、金型寿命を向上させることができる
冷間鍛造性に優れた軸受用鋼を提供することが可能とな
る。
上述した成分構成を採用し、そして図1に示すように、
球状化焼鈍後の平均炭化物中心間距離が0.500μm
以上0.850μm以下、炭化物面積率が12〜30
%、さらにC量と平均炭化物中心間距離に関して、0.
73×C量(重量%)+0.08≦平均炭化物中心間距
離≦0.30×C量(重量%)+0.57、を満足する
とき、転動疲労寿命などの特性を損なわずに素材の冷間
鍛造性を向上させ、金型寿命を向上させることができる
冷間鍛造性に優れた軸受用鋼を提供することが可能とな
る。
【0028】
【実施例】以下、本発明に係る軸受用鋼を実施例に基づ
いて説明する。表1に供試材の化学組成を示す。この供
試材は通常の小型真空炉において溶製し、巨大炭化物を
拡散する目的で1230℃×3hのソーキングを施した
後φ30mm棒鋼に熱間鍛造したものを放冷した。さら
に球状化焼鈍(790℃で1時間保持し、600℃まで
15℃/hr以下で徐冷した後空冷)を施した。
いて説明する。表1に供試材の化学組成を示す。この供
試材は通常の小型真空炉において溶製し、巨大炭化物を
拡散する目的で1230℃×3hのソーキングを施した
後φ30mm棒鋼に熱間鍛造したものを放冷した。さら
に球状化焼鈍(790℃で1時間保持し、600℃まで
15℃/hr以下で徐冷した後空冷)を施した。
【0029】
【表1】
【0030】表2に供試材に球状化焼鈍を施した後の焼
鈍炭化物の面積率、平均炭化物中心間距離、変形抵抗、
ならびに焼入れ・焼戻し処理後の硬さを示す。炭化物の
面積率等の測定は、SEMを用い5000倍で8視野観
察し、総面積2016μm2における全炭化物について
画像解析装置を用いて測定した。図1に炭化物中心間距
離について模式的に示す。
鈍炭化物の面積率、平均炭化物中心間距離、変形抵抗、
ならびに焼入れ・焼戻し処理後の硬さを示す。炭化物の
面積率等の測定は、SEMを用い5000倍で8視野観
察し、総面積2016μm2における全炭化物について
画像解析装置を用いて測定した。図1に炭化物中心間距
離について模式的に示す。
【0031】
【表2】
【0032】変形抵抗は試験片サイズ6.0×9.0m
mH H/D=1.5のものを圧縮率60%の条件で圧
縮変形させたときの変形抵抗を測定した。焼入れ・焼戻
し処理は、焼入処理は850℃で1hr保持後水冷、焼
戻処理は160℃で2hr保持後空冷とした。
mH H/D=1.5のものを圧縮率60%の条件で圧
縮変形させたときの変形抵抗を測定した。焼入れ・焼戻
し処理は、焼入処理は850℃で1hr保持後水冷、焼
戻処理は160℃で2hr保持後空冷とした。
【0033】図2に本発明鋼及び比較鋼における球状化
焼鈍後の平均炭化物中心間距離と変形抵抗の関係を示
す。変形抵抗は平均炭化物粒径が大きくなるにつれ低下
する傾向があり、ある平均炭化物中心間距離以上になる
と変形抵抗が低下する効果が大きくなる。例えば0.7
5C鋼においては平均炭化物中心間距離がおよそ0.5
6μm以上、0.90C鋼においては平均炭化物中心間
距離がおよそ0.65μm以上、1.00C鋼において
は平均炭化物中心間距離がおよそ0.70μm以上とな
ると変形抵抗の低下効果が大きい。つまりC量が異なっ
ても各々変形抵抗を著しく低下させる平均炭化物中心間
距離を選定できることが判明した。
焼鈍後の平均炭化物中心間距離と変形抵抗の関係を示
す。変形抵抗は平均炭化物粒径が大きくなるにつれ低下
する傾向があり、ある平均炭化物中心間距離以上になる
と変形抵抗が低下する効果が大きくなる。例えば0.7
5C鋼においては平均炭化物中心間距離がおよそ0.5
6μm以上、0.90C鋼においては平均炭化物中心間
距離がおよそ0.65μm以上、1.00C鋼において
は平均炭化物中心間距離がおよそ0.70μm以上とな
ると変形抵抗の低下効果が大きい。つまりC量が異なっ
ても各々変形抵抗を著しく低下させる平均炭化物中心間
距離を選定できることが判明した。
【0034】図3に本発明鋼及び比較鋼のC量と平均炭
化物中心間距離の関係を示す。C量が多くなるほど平均
炭化物粒径は大きくなる傾向がある。C量と平均炭化物
中心間距離との間に、0.73×C量(重量%)+0.
08≦平均炭化物中心間距離≦0.30×C量(重量
%)+0.57、の関係が満たされる場合、変形抵抗が
著しく低下し、冷間鍛造性が改善される。
化物中心間距離の関係を示す。C量が多くなるほど平均
炭化物粒径は大きくなる傾向がある。C量と平均炭化物
中心間距離との間に、0.73×C量(重量%)+0.
08≦平均炭化物中心間距離≦0.30×C量(重量
%)+0.57、の関係が満たされる場合、変形抵抗が
著しく低下し、冷間鍛造性が改善される。
【0035】
【発明の効果】従来のJISで規定するSUJ2に代表
される高炭素クロム軸受鋼は、変形抵抗が高いため冷間
鍛造による軸受部材の成型は困難であったが、本発明に
より、高炭素クロム軸受鋼においても冷間鍛造によるベ
アリングの内輪,外輪等の軌道輪、及び転動体の成形が
容易になり、軸受部材の製造における材料歩留りや生産
効率の向上に大きく貢献する。さらには冷間鍛造で形成
することにより、従来よりも寸法精度の向上および省エ
ネルギー化の効果が得られる。
される高炭素クロム軸受鋼は、変形抵抗が高いため冷間
鍛造による軸受部材の成型は困難であったが、本発明に
より、高炭素クロム軸受鋼においても冷間鍛造によるベ
アリングの内輪,外輪等の軌道輪、及び転動体の成形が
容易になり、軸受部材の製造における材料歩留りや生産
効率の向上に大きく貢献する。さらには冷間鍛造で形成
することにより、従来よりも寸法精度の向上および省エ
ネルギー化の効果が得られる。
【図1】炭化物中心間距離を模式的に示した図である。
【図2】本発明鋼及び比較鋼における球状化焼鈍後の平
均炭化物中心間距離と変形抵抗の関係を示す図である。
均炭化物中心間距離と変形抵抗の関係を示す図である。
【図3】本発明鋼及び比較鋼のC量と平均炭化物中心間
距離の関係を示す図である。
距離の関係を示す図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.60〜1.20%、
Si:0.10〜0.30%、Mn:0.10〜1.0
0%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、
Cr:0.80〜2.00%、Al:0.005〜0.
040%を夫々含有し、残部がFe及び不可避不純物か
らなり、該不可避不純物中、Ti:≦15ppm、O:
≦12ppmに夫々抑制し、さらに球状化焼鈍後の平均
炭化物中心間距離が0.500μm以上0.850μm
以下、炭化物面積率が12%〜30%、さらに0.73
×C量(重量%)+0.08≦平均炭化物中心間距離≦
0.30×C量(重量%)+0.57を満足する構成と
したことを特徴とする冷間加工性に優れた軸受用鋼。 - 【請求項2】 重量%で、C:0.60〜1.20%、
Si:0.10〜0.30%、Mn:0.10〜1.0
0%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、
Cr:0.80〜2.00%、Al:0.005〜0.
040%を夫々含有し、さらにNi:0.10〜0.5
0%、Mo:0.10〜0.50%、Cu:0.10〜
0.50%のうち1種または2種以上を含み、残部がF
e及び不可避不純物からなり、該不可避不純物中、T
i:≦15ppm、O:≦12ppmに夫々抑制し、さ
らに炭化物平均炭化物中心間距離が0.500μm以上
0.850μm以下、炭化物面積率が12%〜30%、
さらに0.73×C量(重量%)+0.08≦平均炭化
物中心間距離≦0.30×C量(重量%)+0.57を
満足する構成としたことを特徴とする冷間加工性に優れ
た軸受用鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15686498A JPH11335773A (ja) | 1998-05-22 | 1998-05-22 | 冷間加工性に優れた軸受用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15686498A JPH11335773A (ja) | 1998-05-22 | 1998-05-22 | 冷間加工性に優れた軸受用鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11335773A true JPH11335773A (ja) | 1999-12-07 |
Family
ID=15637067
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP15686498A Pending JPH11335773A (ja) | 1998-05-22 | 1998-05-22 | 冷間加工性に優れた軸受用鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11335773A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012158089A1 (en) * | 2011-05-17 | 2012-11-22 | Aktiebolaget Skf | Improved bearing steel |
EP3348662A1 (en) * | 2017-01-16 | 2018-07-18 | Aktiebolaget SKF | Near-eutectic bearing steel |
CN108559913A (zh) * | 2018-05-16 | 2018-09-21 | 浙江健力股份有限公司 | 一种GCr15轴承钢管及其制备工艺 |
CN115637378A (zh) * | 2021-07-20 | 2023-01-24 | 宝山钢铁股份有限公司 | 一种滚动体用轴承钢及其制造方法 |
-
1998
- 1998-05-22 JP JP15686498A patent/JPH11335773A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012158089A1 (en) * | 2011-05-17 | 2012-11-22 | Aktiebolaget Skf | Improved bearing steel |
EP3348662A1 (en) * | 2017-01-16 | 2018-07-18 | Aktiebolaget SKF | Near-eutectic bearing steel |
US20180202030A1 (en) * | 2017-01-16 | 2018-07-19 | Aktiebolaget Skf | Near-eutectoid bearing steel |
US10619230B2 (en) | 2017-01-16 | 2020-04-14 | Aktiebolaget Skf | Near-eutectoid bearing steel |
CN108559913A (zh) * | 2018-05-16 | 2018-09-21 | 浙江健力股份有限公司 | 一种GCr15轴承钢管及其制备工艺 |
CN115637378A (zh) * | 2021-07-20 | 2023-01-24 | 宝山钢铁股份有限公司 | 一种滚动体用轴承钢及其制造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2002256397A (ja) | 耐食性に優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼 | |
CN111763889A (zh) | 一种高碳轴承钢及其制备方法 | |
JPH05117804A (ja) | 加工性および転動疲労性に優れた軸受用鋼 | |
JPWO2014027463A1 (ja) | 高周波焼入れ用鋼材 | |
JPH05214484A (ja) | 高強度ばね用鋼およびその製造方法 | |
JPH09324219A (ja) | 耐水素脆性に優れた高強度ばねの製造方法 | |
JPH07188857A (ja) | 軸受部品 | |
JP2841468B2 (ja) | 冷間加工用軸受鋼 | |
JPH11335773A (ja) | 冷間加工性に優れた軸受用鋼 | |
JPWO2018212196A1 (ja) | 鋼及び部品 | |
JP7464821B2 (ja) | 軸受軌道用鋼材、および軸受軌道 | |
JP2018165403A (ja) | 低サイクル疲労強度および被削性に優れた浸炭用鋼材および浸炭部品 | |
JP6265048B2 (ja) | 肌焼鋼 | |
JP3721723B2 (ja) | 被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材 | |
JP3236883B2 (ja) | 肌焼鋼及びそれを用いた鋼管の製造方法 | |
JPS6144159A (ja) | 浸炭窒化性にすぐれた冷間鍛造用鋼 | |
JP4302480B2 (ja) | 冷間加工性に優れた高硬度鋼 | |
JPH09279296A (ja) | 冷間鍛造性に優れた軟窒化用鋼 | |
JPS59159971A (ja) | 焼入性のすぐれた冷間鍛造用鋼 | |
JPH11106863A (ja) | 冷間加工性に優れた機械構造用鋼材及びその製造方法 | |
WO2023248556A1 (ja) | 高周波焼入れ用鋼 | |
JP3769918B2 (ja) | 耐粗粒化肌焼鋼材並びに強度と靭性に優れた表面硬化部品及びその製造方法 | |
JPH04210451A (ja) | 冷間加工性に優れた高強度高耐食性ステンレス鋼 | |
JP2000282184A (ja) | 被削性と耐食性に優れた高周波焼入れ用高硬度鋼 | |
JPH06299296A (ja) | 耐脱炭性に優れた高強度ばね用鋼 |