JPH1132761A - 変異原性試験方法 - Google Patents

変異原性試験方法

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JPH1132761A
JPH1132761A JP9207438A JP20743897A JPH1132761A JP H1132761 A JPH1132761 A JP H1132761A JP 9207438 A JP9207438 A JP 9207438A JP 20743897 A JP20743897 A JP 20743897A JP H1132761 A JPH1132761 A JP H1132761A
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JP
Japan
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bacterium
nucleic acid
mutagenicity
bacteriophage
dye
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JP9207438A
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English (en)
Inventor
Fudeko Tsunoda
ふで子 角田
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Organo Corp
Original Assignee
Organo Corp
Japan Organo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 核酸を色素又は蛍光色素で標識したバクテリ
オファージを利用することにより、厳密な無菌操作を必
要とせず、細菌を用いる迅速且つより正確な変異原性試
験方法を提供する。 【解決手段】 細菌を用いる変異原性試験において、細
菌と変異原性を調べようとする物質(検体)を反応させ
て、突然変異を起こした細菌を検出する際に、核酸を色
素又は蛍光色素で標識したバクテリオファージを用い
て、色素又は蛍光色素で標識された上記核酸を注入され
た細菌を光学的手段(例えば、分光光度計、蛍光光度
計)を用いて検出する。上記細菌として、膜結合型AT
Pアーゼの合成に関する遺伝子の一部に変異を生じさせ
た細菌を利用するのが、誤陽性を防ぐ観点から好まし
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種化学物質等の
変異原性を検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】変異原性とは、化学物質等が細胞の持つ
DNAに作用して、その塩基配列に損傷を引き起こす性
質を言う。これと癌原性との相関はかなり高いと言われ
ており、検出が煩雑で困難である癌原性試験におけるス
クリーニング法(予備試験法)として変異原性を検出す
る方法が有効であると言われている。
【0003】変異原性を検出する試験のうち、簡便で最
も一般的であるエームス(Ames)法の概要を以下に
述べる。先ず、ある栄養素を自力では合成できず、培地
に該栄養素がないと生育できないように栄養要求性を持
つようにした細菌と変異原性の有無を調べようとする物
質(以下、「検体」と言う)とを接触させて、上記栄養
素を欠いた寒天培地上で一定時間培養する。その検体に
変異原性があると、細菌が突然変異を起こし、非栄養要
求性になり、上記栄養素を自力で合成できるようにな
り、上記栄養素を欠いた寒天培地上でも生育、増殖し
て、菌の集落(コロニー)が出現する。変異原性の強弱
は、出現するコロニー数で判定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
な培養法の場合には、培養時間として48時間以上が必
要であり、また、雑菌による汚染を受けないように厳密
な無菌操作が必要となる。さらには、栄養要求性の細菌
を利用しているため、該栄養要求性の対象である栄養素
が含まれている検体では、誤陽性になる問題もある。従
って、本発明は、細菌を用いる変異原性試験において、
従来技術の上記のような問題点を解決し、厳密な無菌操
作を必要とせず、迅速且つ望ましくはより正確な変異原
性試験方法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような
課題を解決するために、突然変異を起こした細菌を検出
する際に、培養法ではなく、その細菌に特異的なバクテ
リオファージを利用するものである。即ち、本発明は、
細菌を用いる変異原性試験において、細菌と変異原性を
調べようとする物質とを反応させることにより突然変異
を起こした細菌を検出する際に、核酸を色素又は蛍光色
素で標識したバクテリオファージを用いて、色素又は蛍
光色素で標識された上記核酸を注入された細菌を光学的
手段を用いて検出することを特徴とする変異原性試験方
法を提供するものである。また、本発明の上記変異原性
試験方法において、変異原性試験用の上記細菌として、
膜結合型ATPアーゼの合成に関する遺伝子の一部に変
異を生じさせた細菌を利用するのが好ましい。なお、一
般的に、地球上の通常の穏和な条件下に生息する殆どの
細菌に対しては、これを宿主とする特異的なバクテリオ
ファージが存在し、しかも、バクテリオファージの宿主
認識は厳密で宿主細菌以外の細菌に実質的に吸着、結合
することは無い。
【0006】本発明において、バクテリオファージを用
いるのは下記の理由による。バクテリオファージの核酸
(以下、時に「ファージ核酸」と言う)の細菌への注入
は、宿主細菌のエネルギー状態に依存している。即ち、
ファージ核酸の注入は生育活性(代謝活性)を失った宿
主細菌細胞に対しては起こらず、生育活性のある宿主細
菌細胞に対してのみ起こるということである。また、他
の細菌に非特異的に吸着したバクテリオファージ粒子が
あったとしても、他の細菌へのファージ核酸の注入は起
こらない。ここで用いる細菌は、突然変異を起こすこと
によって生育活性を獲得し、増殖することができるよう
になる。従って、突然変異を起こした時、バクテリオフ
ァージはその細菌に吸着し、核酸を注入できる。バクテ
リオファージの細菌への吸着、核酸の注入は短時間に完
了する。具体的には、バクテリオファージ粒子数と細菌
細胞数や温度等に影響されるが、数秒から10分程度と
言われている。従って、色素又は蛍光色素で標識された
核酸(以下、時に「色素標識核酸」と言う)の注入を受
けた細菌は、遅くても十数分後には確認することができ
る。上述のようにバクテリオファージと細菌との結合は
特異的に起こることから、この操作中に他の細菌による
汚染を受けたとしても、このバクテリオファージは目的
とする突然変異を起こした細菌にしか色素標識核酸を注
入しない。上述のような理由から、バクテリオファージ
を用いることにより、突然変異を起こした細菌だけを短
時間に高精度で検出できる。
【0007】突然変異を起こした細菌にはファージ核酸
と共に色素又は蛍光色素が注入されるため、光学的手
段、例えば、分光光度計、蛍光光度計等を用いて、定量
的に変異原性の強弱を検出することができる。
【0008】化学物質等の検体は、水系検体であれば、
そのまま或いは濃縮して変異原性の検出に供することが
できる。非水系液状検体の場合は、水に溶解させた後、
変異原性の検出に供するか、水に不溶の場合は必要に応
じ変異原性の無い非イオン性界面活性剤などで水に分散
させた後、変異原性の検出に供する。また、固体状検体
の場合は、水に溶解させた後、変異原性の検出に供する
か、水に不溶の場合は、変異原性の無い溶剤に溶解する
か、または、水を加えて磨り潰すかした後、必要に応じ
変異原性の無い非イオン性界面活性剤などで水に分散さ
せた後、変異原性の検出に供する。
【0009】細菌としては、変異原性の検出に用いるこ
とができる細菌であれば、特に限定されることは無く、
例えば、サルモネラ・タイフイムリウム(Salmonella t
yphimurium)TA98、同TA100、同TA153
5、同TA1536、大腸菌(Escherichia coli)WP
2uvrA(trp−)等を使用する。これらの細菌は
栄養要求性であり、その対象である栄養素が含まれてい
ない培地上では生育できない。
【0010】バクテリオファージは、その核酸が色素又
は蛍光色素で標識されたものを利用するが、バクテリオ
ファージ自体は、上記細菌に特異的に吸着し、その核酸
を該細菌に注入するものであれば、特に限定されること
は無い。バクテリオファージは一本鎖又は二本鎖のDN
Aファージが一般的であるが、RNAファージを除外す
るものでは無い。従って、色素又は蛍光色素で標識され
た核酸はDNAでもRNAでもよい。色素標識核酸を有
するバクテリオファージは、例えば、ファージ核酸に親
和性を有する色素又は蛍光色素を添加した培地で、該バ
クテリオファージに感染した細菌を増殖させることによ
り得ることができる。一般に、バクテリオファージの感
染(溶菌感染)の過程は、主に、宿主細菌への吸着、フ
ァージ核酸の注入、注入されたファージ核酸を鋳型とし
たファージ粒子の複製という3段階に分けられる。
【0011】ファージ核酸を色素又は蛍光色素で標識す
る方法としては、ファージ核酸(DNA又はRNA)に
親和性を有する色素又は蛍光色素をその親和性を利用し
て該核酸の螺旋構造等の立体構造の隙間に物理的に挿入
してもよいし、色素又は蛍光色素の化学的な結合により
標識したヌクレオチドをファージ核酸の合成時に取り込
ませて、化学的な結合により該核酸を標識するようにし
てもよい。
【0012】色素又は蛍光色素としては、バクテリオフ
ァージの核酸に結合でき、該バクテリオファージから核
酸と共に細菌に注入されて該細菌を染色できるものであ
れば、特に限定されることは無い。色素としては、例え
ば、エチジウムブロミド、プロピジウムイオデート等を
挙げることができ、蛍光色素としては、例えば、4,6
−ジアミノ−2−フェニルインドールハイドロクロライ
ド(DAPI)、アクリジンオレンジ等を挙げることが
できる。ここで、蛍光色素とは、特定波長の光を照射す
ると特定波長の蛍光を発する色素を表し、色素とは、上
記の蛍光色素以外の色素を表すものとする。
【0013】バクテリオファージの細菌への吸着、色素
標識核酸注入時の温度条件は、細菌やバクテリオファー
ジの種類にもよるが、例えば、好気性条件下で、10〜
50℃、より好ましくは20〜40℃、更に好ましくは
30〜37℃程度である。一般に、温度が高い方が感染
速度は速くなる。また、両者を含む懸濁液を攪拌して、
細菌とバクテリオファージの接触効率を高めることも好
ましい。
【0014】バクテリオファージの細菌への吸着、色素
標識核酸注入の際には、両者を含む懸濁液には栄養素類
(主に炭素源)の存在が必要である。栄養素類が不足し
ている場合には、細菌の代謝活性が弱く、感染不良とな
り、細菌へのファージ核酸の注入が行われないことがあ
るので、栄養素類(主に炭素源)を供給する。炭素源と
しては、例えば、グルコース等の単糖類や二糖類、三糖
類等の糖類などの炭水化物を用いることができ、また、
バクテリオファージの細菌への吸着性を向上させるトリ
プトファン等を添加することもできる。
【0015】本発明において色素標識核酸を有するバク
テリオファージを使用する理由は次の通りである。即
ち、上述のようにバクテリオファージは宿主細菌に対し
て特異的に吸着するが、色素又は蛍光色素がバクテリオ
ファージ中に存在している時とファージ核酸と共に細菌
内に注入された後とでは、検出される分光光度又は蛍光
光度(蛍光強度)に光学的に識別できる有意な差異が生
じる(特願平9−88781号)。この差異は、色素や
蛍光色素が、バクテリオファージ中では密な状態で詰ま
っているのに対して、注入された細菌細胞内では展開
(ファージ核酸の立体構造の展開などに伴う)、拡散な
どによりその形態が変わることに起因すると考えられ
る。かかる差異を利用することによって、細菌に非吸着
のバクテリオファージを物理的に分離する操作の必要無
しに、ファージ核酸を注入された細菌のみを光学的に識
別し、その存在やその量を光学的に検出することができ
る。勿論、遠心分離や膜濾過により細菌と残存ファージ
を分離した後に細菌の画分について分光光度又は蛍光強
度を測定することによっても同様の識別や検出を行うこ
とができる。
【0016】更に、通常の条件下においては、色素又は
蛍光色素で標識したファージ核酸は、色素又は蛍光色素
が標識されていることにより、遺伝子の遺伝情報の
(逆)転写が阻害され、遺伝子としての活性を失う。即
ち、本発明で用いる色素又は蛍光色素で標識されたファ
ージ核酸は、通常は細菌細胞内に注入されても新たなバ
クテリオファージ粒子の複製や宿主細胞を破壊して新生
バクテリオファージ粒子を細菌細胞外へ放出させる酵素
群を生成することが無いので、感染過程の最終段階に認
められる宿主細胞の溶菌は起こらない。このため、色素
又は蛍光色素で標識されたファージ核酸は宿主細胞内で
安定に保たれ、従って処理時間の長短の検出精度への影
響が極めて小さいという利点が得られる。なお、細菌の
種類、環境条件、用いる色素又は蛍光色素の種類等によ
って、ファージ核酸の複製や(逆)転写が生じる可能性
もあるが、この場合には、核酸合成阻害剤や蛋白質合成
阻害剤の使用、ファージ核酸の一部のナンセンスコドン
への改変などにより、積極的にその複製や(逆)転写を
防ぐ処理を行うこともできる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
するが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。
【0018】基本的操作手順は、次の通りである。先
ず、ある栄養素の栄養要求性を持つようにした細菌の懸
濁液と検体とを反応させる。次に、得られる懸濁液に、
核酸を色素又は蛍光色素で標識したバクテリオファージ
を添加する。その検体に変異原性があった場合、細菌は
突然変異を起こし、非栄養要求性、即ち、自力で栄養素
を合成し得るような生育活性を持つようになり、この状
態の細菌に上記バクテリオファージは吸着し、色素標識
核酸を注入する。次に、色素標識核酸を注入された細菌
を光学的手段で検出する。光学的手段としては、例え
ば、吸光光度計、蛍光光度計等が挙げられる。
【0019】検体の変異原性検出用の細菌として、膜結
合型ATPアーゼの合成に関する遺伝子の一部に変異を
生じさせた細菌を用いるのが好ましいが、その理由は次
の通りである。従来法として上述したエームス法は、あ
る栄養素の合成に関する遺伝子に突然変異を生じさせ
て、その栄養素を自力で合成できないようにした細菌を
用い、上記栄養素合成に関する遺伝子の復帰変異により
変異原性を検出する。このため、検体にその栄養素が含
まれている場合、その検体に変異原性が無くても、細菌
はその栄養素を取り込んで増殖する。即ち、誤陽性が発
生する。本発明で好ましく用いられる細菌は、膜結合型
ATPアーゼの合成に関する遺伝子に変異を生じさせて
ATPアーゼを合成できないようにした細菌であり、上
記ATPアーゼ合成に関する遺伝子の復帰変異により検
体の変異原性の有無を検出するため、変異原性の判定が
検体成分の影響を受けることはない。
【0020】膜結合型ATPアーゼの合成に関する遺伝
子に変異を生じさせた細菌は、ATPの分解によって膜
電位を形成することはできない。膜電位は、呼吸鎖に伴
う電子伝達系と膜結合型ATPアーゼの二者の作用によ
って生じる。従って、ATPアーゼの合成に関する遺伝
子に変異を生じさせてATPアーゼを合成できないよう
にした細菌は、呼吸鎖に伴う電子伝達系によってのみ膜
電位を形成する。このような細菌に呼吸鎖阻害剤(アン
カップラー)を作用させると、呼吸鎖に伴う電子伝達系
が阻害され、膜電位は消失する。この時の細菌には、バ
クテリオファージの吸着は起こるが、膜電位が消失して
いるので、バクテリオファージの核酸の注入は起こらな
い。従って、バクテリオファージの誤った核酸注入が起
こらず、誤陽性の危険性は無い。この細菌が変異原性物
質の作用によって変異を起こし、ATPアーゼの合成が
始まると、ATP分解に伴う膜電位が生じるようにな
る。この時アンカップラーを作用させて呼吸鎖を阻害し
ても、膜電位が消失することはない。従って、かかる細
菌には、バクテリオファージが吸着し、色素又は蛍光色
素で標識された核酸がその細菌に注入される。上述のよ
うに、膜結合型ATPアーゼの合成に関する遺伝子に変
異を生じさせた細菌を用いることにより、検体の種類に
関係無く、変異原性を検出でき、バクテリオファージが
誤って細菌に色素標識核酸を注入するという危険性を回
避できる。
【0021】このような膜結合型ATPアーゼの合成に
関する遺伝子に変異を生じさせた細菌を用いる実施の形
態について以下に説明する。膜結合型ATPアーゼの合
成に関する遺伝子の一部に変異を生じさせた細菌の一例
としては、下記の調製例1のようにして得られる大腸菌
Escherichia coli)変異株がある。バクテリオファー
ジとしては、その核酸が色素又は蛍光色素で標識された
ものを利用する。バクテリオファージは、上記細菌に特
異的に吸着し、核酸を上記細菌中に注入するものであれ
ば、特に限定されることは無い。色素又は蛍光色素とし
ては、上記バクテリオファージの核酸に結合でき、該バ
クテリオファージから核酸と共に細菌に注入されて該細
菌を染色できるものであれば、特に限定されることは無
く、例えば、上に例示したようなものを用いることがで
きる。
【0022】先ず、細菌懸濁液と検体とを反応させる。
次に、得られる懸濁液にアンカップラーを添加し、呼吸
鎖に伴う電子伝達系を阻害する。アンカップラーとして
は、2,4−ジニトロフェノール、青酸カリウム、カル
ボニルシアニド−m−クロロフェニルヒドラゾン等が挙
げられる。次に、得られる混合懸濁液に核酸を色素又は
蛍光色素で標識したバクテリオファージを添加する。そ
の検体に変異原性があった場合、細菌は突然変異を起こ
し、膜結合型ATPアーゼを合成し、呼吸鎖を阻害され
ていても膜電位が生じる。この状態の細菌に上記バクテ
リオファージは吸着し、その色素標識核酸を注入する。
色素標識核酸を注入された細菌を上記のような光学的手
段で検出する。
【0023】
【実施例】以下の実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0024】調製例1 <膜結合型ATPアーゼの合成に関する遺伝子の一部に
変異を生じさせた細菌の調製・分離>大腸菌(Escheric
hia coli)K12を培養して得た対数増殖期の細菌懸濁
液にニトロソグアニジン(大腸菌K12をATPアーゼ
が合成できないようにするための変異原)を100μg
/mlの濃度になるように添加し、pH6.0且つ37
℃の条件下で30分間反応させた。得られた細菌懸濁液
をクエン酸−蔗糖−ペニシリン培地(一例として、1リ
ットル中に、硫酸マグネシウム0.2g、クエン酸ナト
リウム2g、燐酸1水素2カリウム1g、燐酸2水素ア
ンモニウム1g、塩化ナトリウム5g、蔗糖200g、
ペニシリン3,000,000単位を含む)に添加し、
37℃で2時間培養した。次に、得られた培養液を最小
グルコース寒天培地(一例として、1リットル中に、硫
酸マグネシウム0.1g、クエン酸ナトリウム0.5
g、燐酸1水素2カリウム7g、燐酸2水素1カリウム
2g、硫酸アンモニウム1g、グルコース20g、寒天
15gを含む)に撒き、コロニーを形成させた。各コロ
ニーを単離して、各コロニーについて下記のP1トラン
スダクション法に従った試験を行い、膜結合型ATPア
ーゼの合成に関する遺伝子の一部に変異を生じさせた細
菌のコロニーを探し出し、その細菌を分離した。
【0025】ここで、P1トランスダクション法とは、
P1ファージを使って、変異を生じさせた部分の遺伝子
を或る処理を行った細菌に移し、変異した菌株であるこ
とを確認する方法である。膜結合型ATPアーゼの合成
に関する遺伝子の近傍にはアスパラギン酸の合成に関す
る遺伝子がある。このアスパラギン酸の合成ができない
ようにした細菌に、アスパラギン酸の合成に関する遺伝
子と一緒に膜結合型ATPアーゼの合成に関する遺伝子
を移す。これらの遺伝子を移した細菌は、アスパラギン
酸を合成できるようになるので、上記遺伝子が移された
こと(形質導入)を確認できる。その菌株がクエン酸を
資化するか否かを確認する。クエン酸を資化できない細
菌が膜結合型ATPアーゼの合成に関する遺伝子の一部
に変異を生じさせた細菌である。
【0026】調製例2 <蛍光色素標識核酸を有するバクテリオファージの調製
(特願平9−88781号)>Lブロス培地(1リット
ル中に、バクトトリプトン10g、酵母エキス5g、塩
化ナトリウム5gを含む)中、大腸菌B株を37℃で好
気的に培養し、対数増殖期中期でIFO(Institution
for Fermentation, Osaka)より入手したバクテリオフ
ァージT4(No.20004)を添加し、このバクテ
リオファージT4(即ち、T4ファージ)を増殖させ
た。なお、T4ファージの増殖培養に使用する培地は、
栄養リッチな培地であれば特に限定されることは無い。
【0027】核酸(ここでは、DNA)を蛍光色素標識
したT4ファージ粒子を調製するために、上記Lブロス
培地にT4ファージを添加する際に、同時に蛍光色素と
しての4,6−ジアミノ−2−フェニルインドールハイ
ドロクロライド(DAPI)を培地1リットル当たり1
mgの量で添加した。なお、蛍光色素としては、ファー
ジ核酸(ここでは、ファージDNA)に例えば親和性を
持つ蛍光物質であれば特に限定されることは無い。
【0028】T4ファージが大腸菌細胞内で増殖し、細
胞を溶かして培地中に放出される(溶菌)まで、37℃
で好気的に培養を続けた。その後、ファージを含む培養
液を低速遠心分離(3,000rpm、10分間)によ
り細胞の残渣を除き、上澄み液に塩化ナトリウムを1モ
ル/リットルの濃度となるように加えて溶解し、更に、
ポリエチレングリコールを10容量%の濃度になるよう
に加えて溶解し、4℃で一晩放置した。放置後、生じた
凝集物を遠心分離(15,000rpm、20分間)に
よって回収し、この凝集沈澱物を5mM硫酸マグネシウ
ムを含む20mMトリス塩酸緩衝液の少量に懸濁した。
得られた懸濁液に等容量のクロロホルムを加え、30秒
間激しく攪拌した後、遠心分離してクロロホルム層と水
層を分離した。ファージを含んだ水層を採り、30,0
00rpm、30分間の遠心分離によりファージを回収
した。得られたファージを含む沈澱を少量の5mM硫酸
マグネシウム−20mMトリス塩酸緩衝液に懸濁した。
【0029】この懸濁液を、塩化セシウム57重量%、
46重量%、33重量%の密度とした塩化セシウム水溶
液の不連続密度勾配の上に乗せ、水平ロータにより、4
℃、3,000rpm、3時間遠心分離した。形成され
たファージのバンドを採り、透析して塩化セシウムを除
去し、蛍光色素標識核酸を有するT4ファージ〔核酸が
蛍光色素である4,6−ジアミノ−2−フェニルインド
ールハイドロクロライド(DAPI)で標識されたT4
ファージ〕の精製標品とした。この精製標品の濃度は、
1011個/ml〜1012個/mlであった。
【0030】実施例1 細菌として、調製例1で得た膜結合型ATPアーゼの合
成に関する遺伝子の一部に変異を生じさせた大腸菌を用
いた。バクテリオファージとしては、調製例2で得た蛍
光色素標識核酸を有するT4ファージの精製標品を用い
た。検体として、変異原性を有することが確認済の化学
物質、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フ
リル)アクリルアミド(AF−2)を用いた。
【0031】細菌は、最小グルコース培地(1リットル
中に、硫酸マグネシウム・7水塩0.2g、クエン酸・
1水塩2g、燐酸二カリウム・無水塩10g、燐酸水素
アンモニウムナトリウム・4水塩3.5g、グルコース
20gを含む)で、波長600nmにおける吸光度が
0.2〜0.3になるまで増殖させた。
【0032】得られた細菌懸濁液1mlに検体濃度0μ
g/リットル〜2μg/リットルの溶液0.1mlを添
加して、37℃で2時間振盪培養した。次に、アンカッ
プラーとして、2,4−ジニトロフェノールを0.1m
g/リットルの濃度になるように培養液に添加し、30
秒間反応させた。次に、上記の蛍光色素標識核酸を有す
るT4ファージの精製標品を1×108 個/mlの濃度
になるように添加し、37℃で10分間振盪し、反応さ
せた。蛍光光度計により、得られた懸濁反応混合液の蛍
光強度を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】 ──────────────────────────── AF−2(μg/リットル) 蛍光強度(−) ──────────────────────────── 0 20.2 0.5 88.5 1.0 125.9 2.0 196.1 ──────────────────────────── (注):(−)は単位無しであることを示す。
【0034】表1から、検体が変異原性がある物質であ
れば、蛍光強度により変異原性の強弱の定量的検出がで
きることが分かる。
【0035】実施例2 細菌として、大腸菌(Escherichia coli)WP2uvr
A(trp−)菌株を用いた。バクテリオファージとし
ては、調製例2で得た蛍光色素標識核酸を有するT4フ
ァージの精製標品を用いた。検体として、変異原性を有
することが確認済の化学物質、2−(2−フリル)−3
−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド(AF−
2)を用いた。
【0036】細菌は、培養液(1リットル中に、ニュー
トリエントブロス8g、塩化ナトリウム5gを含む)
で、波長600nmにおける吸光度が0.2〜0.3に
なるまで増殖させた。
【0037】得られた細菌懸濁液0.1mlに検体濃度
0μg/リットル〜2μg/リットルの溶液0.1ml
及びL−トリプトファン0.05mM水溶液2mlを添
加して、37℃で2時間振盪培養した。次に、上記の蛍
光色素標識核酸を有するT4ファージの精製標品を1×
108 個/mlの濃度になるように添加し、37℃で1
0分間振盪し、反応させた。蛍光光度計により、得られ
た懸濁反応混合液の蛍光強度を測定した。結果を表2に
示す。
【0038】
【表2】 ──────────────────────────── AF−2(μg/リットル) 蛍光強度(−) ──────────────────────────── 0 29.2 0.5 95.5 1.0 151.2 2.0 212.3 ──────────────────────────── (注):(−)は単位無しであることを示す。
【0039】表2から、検体が変異原性がある物質であ
れば、蛍光強度により変異原性の強弱の定量的検出がで
きることが分かる。
【0040】比較例1(エームス法) 細菌として、大腸菌(Escherichia coli)WP2uvr
A(trp−)菌株を用いた。検体として、変異原性を
有することが確認済の化学物質、2−(2−フリル)−
3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド(AF
−2)を用いた。
【0041】細菌は、培養液(1リットル中に、ニュー
トリエントブロス8g、塩化ナトリウム5gを含む)
で、波長600nmにおける吸光度が0.2〜0.3に
なるまで増殖させた。
【0042】得られた細菌懸濁液0.1mlに検体濃度
0μg/リットル〜2μg/リットルの溶液0.1ml
を試験管に入れ、それにトップアガー(1リットル中
に、塩化ナトリウム4.5g、寒天5.5g、L−トリ
プトファン0.05mmolを含む)を2ml入れて、
混合した。これを最小グルコース寒天培地(1リットル
中に、硫酸マグネシウム・7水塩0.2g、クエン酸・
1水塩2g、燐酸二カリウム・無水塩10g、燐酸水素
アンモニウムナトリウム・4水塩3.5g、グルコース
20g、寒天15gを含む)の入ったシャーレに流し込
み、37℃で48時間培養した。復帰コロニー数を表3
に示す。
【0043】
【表3】 ──────────────────────────── AF−2(μg/リットル) 復帰コロニー数 ──────────────────────────── 0 23 0.5 134 1.0 258 2.0 432 ────────────────────────────
【0044】実施例2と比較例1を対比すると、本発明
による実施例2においても、比較例1のエームス法と同
様に変異原性を検出することができることが分かる。検
出時間は比較例1の約48時間に対して、実施例2では
3時間程度であった。従って、本発明の方法を使用する
ことにより、変異原性を検出するのに要する時間をエー
ムス法に比較して大幅に短縮できた。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、細菌による変異原性試
験において、変異原性物質により突然変異を起こした細
菌を検出するに際して、バクテリオファージを用いるた
め、迅速な検出を行うことができる。また、バクテリオ
ファージを用いて細菌を検出するため、他の細菌の汚染
の影響を受けないことから、厳密な無菌操作の必要が無
い。試験に供する細菌として、膜結合型ATPアーゼの
合成に関する遺伝子に変異を生じさせた細菌を用いる場
合には、検体の成分による影響が無い。また、このよう
な細菌を用いることにより、変異を起こさなかった細菌
にバクテリオファージが核酸を注入するという危険性が
無い。このように、本発明によれば、変異原性を迅速且
つ精度良く検出できる効果がある。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細菌を用いる変異原性試験において、細
    菌と変異原性を調べようとする物質とを反応させること
    により突然変異を起こした細菌を検出する際に、核酸を
    色素又は蛍光色素で標識したバクテリオファージを用い
    て、色素又は蛍光色素で標識された前記核酸を注入され
    た細菌を光学的手段を用いて検出することを特徴とする
    変異原性試験方法。
  2. 【請求項2】 前記細菌として、膜結合型ATPアーゼ
    の合成に関する遺伝子の一部に変異を生じさせた細菌を
    利用することを特徴とする請求項1に記載の変異原性試
    験方法。
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