JPH11301581A - キャンバーを有する浮体式コンテナヤード - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】移動するコンテナクレーンの重みによって、コ
ンテナクレーンの走行方向と直角な方向に発生する浮体
構造物の撓みによって発生するコンテナクレーンの走行
機能及び荷役機能に対する障害を排除できる浮体式コン
テナヤードを提供する。 【解決手段】コンテナ船３を浮体構造の側壁６に係留し
て、該側壁６に沿って配置されたクレーン走行部５Ａ上
をコンテナクレーン２を走行させて、前記コンテナ船３
のコンテナ４の荷役を行う浮体式コンテナヤード１Ａで
あって、前記コンテナクレーン２が走行する各位置にお
いて、該コンテナクレーン２の重量によって発生する撓
みδ１と相殺してクレーン走行部５Ａの傾斜が略水平に
なる逆方向の初期撓みδを与えて前記クレーン走行部５
Ａを形成して構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、洋上に係留され、
コンテナ船のコンテナを荷役する浮体式コンテナヤード
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】コンテナ船のコンテナを荷役するために
は、コンテナを載置するための広大なスペースの確保が
必要であり、近年は用地を確保することが難しく、ま
た、コンテナ船は比較的大きな船であり、喫水も例えば
１４ｍと深いので、それに伴って、岸壁も比較的深い水
深が必要となる。そのため、浮体式のコンテナヤードが
構想され、様々な洋上試験が行われている。

【０００３】この浮体式コンテナヤードは図２、図３に
その例を示すが、このコンテナヤード１の側壁６に接岸
されたコンテナ船３の荷役を行うために、コンテナクレ
ーン２の配設が不可欠であり、側壁６に沿ってクレーン
走行用のレール17を設け、このレール17上をコンテナク
レーン２が矢印Ｅ方向に走行し、コンテナ船３の前後方
向に配置された船倉31や甲板上からコンテナ４を吊り上
げて、コンテナヤード１側に荷下ろしをし、ヤード用コ
ンテナクレーンである陸上クレーン８やコンテナ運搬用
車輛でコンテナ置場11へ移送し保管する。逆に、この陸
上クレーン８やコンテナ運搬用車輛から船倉31や甲板上
にコンテナ４を搭載したりする。

【０００４】また、このコンテナヤード１には、コンテ
ナクレーン２との間でコンテナ４を受け渡しする陸上ク
レーン８、コンテナ置き場11、コンテナ４の陸上側の移
送を矢印Ｔに沿って行うトラック等の通路12、トラック
の入口12ａ、出口12ｂ、管理棟14、修理施設15、守衛
所、変電所、給油設備、照明塔、危険物庫等を備えてい
る。

【０００５】この浮体式コンテナヤード１は、その規模
によって様々な大きさのものが考えられるが、一例を上
げれば、新世代オーバーパナマックスサイズ（約６，０
００ＴＥＵ積（ＴＥＵ：２０フィート換算コンテナ
数））クラスのコンテナ船二隻が同時着岸でき、ヤード
内のコンテナ貯蔵個数は約１２，０００ＴＥＵであり、
長さＬが７００ｍ、幅Ｂが５００ｍの略平坦な平面を持
ち、喫水ｄが２ｍ、水面上の高さｈが３〜８ｍ、型深さ
Ｄが５〜１０ｍ、排水量が７０万トン（重量トン）の非
常に大きな洋上浮体構造物である。この浮体式コンテナ
ヤード１は、港内や海岸に隣接して係留固定され、連絡
通路９で陸上側の通路と接続している。

【０００６】そして、この浮体式コンテナヤード１で使
用されるコンテナクレーン２は、例えば、クレーン脚部
21の長さ約２０ｍ、幅方向の走行レール間Ｂｃが約３０
ｍで、コンテナを吊り上げて横方向に走行する荷役部23
の高さＨｃは約３５ｍで、幅方向に約１００ｍ移動可能
に設けられ、定格荷重４０トンである。

【０００７】そして、このコンテナクレーン２の一基の
重量は約９００トンになるので、浮体式コンテナヤード
１は、コンテナクレーン２の走行位置にこのコンテナク
レーン２の重量が加わるため変形し撓みを生じる。

【０００８】この撓みはコンテナクレーン２の走行方向
Ｅにも発生するが、この方向の撓みはコンテナクレーン
２の走行及び停止作業位置に対して両端支持構造にな
り、しかも、後述するように、走行方向Ｅの傾斜に対す
る許容値は、走行方向Ｅと直角な方向Ｆ（以下横方向と
呼称する）の傾斜に対する許容値より大きいので、浮体
式コンテナヤード１の浮体構造の剛性を適当に選んで設
計および建造することにより、コンテナクレーン２の重
量によって生じるクレーン用レール17の傾斜、即ち、コ
ンテナクレーン２の傾斜を許容範囲内に収めることが可
能である。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図３に
示すように、横方向Ｆの撓みδ１に関しては、片側が側
壁６、即ち、洋上になるので、片持ち梁の構造になり、
しかもコンテナクレーン２は一基の重量が約９００トン
と非常に重いので、コンテナクレーン２が海側に傾斜す
るＧ方向にコンテナクレーン２を支持するクレーン走行
部５が下方に撓むことになる。

【００１０】この横方向Ｆの撓みによる傾斜は、例えば
２５ｃｍ／３０ｍ（１／１２０）程度の僅かな傾斜では
あるが、コンテナクレーン２は、コンテナ４の荷役部23
の高さＨｃが約３５ｍと非常に背が高く、重量もあるの
で、僅かな傾斜でも走行機能及び荷役機能に支障を生
じ、荷役作業上大きな障害になるという問題がある。

【００１１】一例として、陸上クレーンの設置基準を参
考に示すと走行方向Ｅの傾斜は１／４００以内であるの
に対して、横方向Ｆの左右のレール間３０ｍの相対変位
は２５ｍｍ以内、即ち、傾斜１／１２００以内となって
いる。

【００１２】また、この傾斜の問題を解決するために、
クレーン走行部５のバラスト水を出し入れして浮力を調
整して対処する方法が考えられるが、機構が複雑になる
上に、コンテナクレーンの走行速度に追従するための応
答速度の問題もあり、このバラスト水のコントロールに
よる方法は現実的ではない。

【００１３】本発明は前記したような問題点を解決する
ためになされたものであって、その目的は、移動するコ
ンテナクレーンの重みによって、コンテナクレーンの走
行方向と直角な方向に発生する浮体構造物の撓みによっ
て発生するコンテナクレーンの走行機能及び荷役機能に
対する障害を排除できる浮体式コンテナヤードを提供す
ることにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明のキャンバーを有
する浮体式コンテナヤードは、コンテナ船を浮体構造の
側壁に係留して、該側壁に沿って配置されたクレーン走
行部上をコンテナクレーンを走行させて、前記コンテナ
船のコンテナの荷役を行う浮体式コンテナヤードであっ
て、前記コンテナクレーンが走行する各位置において、
該コンテナクレーンの重量によって発生する撓みと相殺
してクレーン走行部の傾斜が略水平になる逆方向の初期
撓みを与えて前記クレーン走行部を形成したことを特徴
とする。

【００１５】この初期撓みは、コンテナクレーンの重量
やレール幅や、浮体構造の剛性によって異なるが、予め
計算や実験から求まる量であり、構造的に最初から傾斜
させて建造することもできるが、、前記クレーン走行部
の前記初期撓みの形成を前記クレーン走行部の浮力調整
によって行うこともできる。この浮力調整はクレーン走
行部自体の浮力調整によっても可能であるが、クレーン
走行部の下部に浮力タンク等の浮力体を潜り込ませて行
うこともできる。

【００１６】以上の構成の浮体式コンテナヤードによれ
ば、コンテナクレーンが走行する時に、コンテナクレー
ンの重量によるクレーン走行部に発生する撓みによっ
て、予め設けられた逆方向の撓み、即ち、キャンバーと
相殺してクレーン走行部が略水平になるので、コンテナ
クレーンの走行位置による横方向の傾斜の発生を防止で
き、コンテナクレーンの走行機能及び荷役機能に支障を
来すことがない。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、図１に基づき本発明に係る
キャンバーを有する浮体式コンテナヤードの実施の形態
を説明する。図１に示すように、キャンバーを有する浮
体式コンテナヤード１Ａは、コンテナ船３をクレーン走
行部５Ａの洋上側の側壁６Ａに係留して、この側壁６に
沿ってコンテナクレーン２を走行させて、コンテナ船３
のコンテナ４の荷役を行うように構成される。

【００１８】このキャンバーを有する浮体式コンテナヤ
ード１Ａには、コンテナクレーン２の走行用のレール1
7、走陸上クレーン８、コンテナ置き場11、コンテナ４
の陸上側の移送を行うトラック等の通路12、トラックの
入口12ａ、出口12ｂ、管理棟14、修理施設15、変電所、
給油設備、照明塔、危険物庫等の必要な設備を具備して
構成される。

【００１９】このキャンバーを有する浮体式コンテナヤ
ード１Ａを長さＬが７００ｍ、幅Ｂが５００ｍの略平坦
な平面を持ち、喫水ｄが２ｍ、水面上の高さｈが３〜８
ｍ、型深さＤが５〜１０ｍ、排水量が７０万トン（重量
トン）の洋上浮体構造物として形成する。

【００２０】そして、このキャンバーを有する浮体式コ
ンテナヤード１Ａで使用されるコンテナクレーン２を、
クレーン脚部21の長さ約２０ｍ、幅方向の走行レール間
Ｂｃが約３０ｍで、コンテナを吊り上げて横方向に走行
する荷役部23の高さＨｃは約３５ｍで、幅方向に約１０
０ｍ移動可能で、定格荷重４０トンの移動クレーンで構
成し、このコンテナクレーン２をレール17を敷設したク
レーン走行部５Ａ上に四基搭載し、走行可能に構成す
る。

【００２１】このような巨大なコンテナクレーン２を四
基走行させるクレーン走行部５Ａを、コンテナクレーン
２が各走行位置に来た時に、コンテナクレーン２の重量
によってクレーン走行部５Ａに発生する撓みδ１によっ
て、クレーン走行部５Ａが略水平になるように、コンテ
ナクレーン２が走行する各位置において、コンテナクレ
ーン２の重量によって発生する撓み量δ１と略等しい量
の逆方向の初期撓みδを与えてクレーン走行部５Ａを形
成する。即ち、このクレーン走行部５Ａを予め上方向に
撓ませてキャンバーδを付けて形成する。

【００２２】この初期キャンバー量δは、コンテナクレ
ーン２の重量やレール幅や、浮体構造の剛性によって異
なるが、予め計算や実験から求まる量であり、一例を上
げれば、クレーン走行部５Ａの横傾斜で約２５ｃｍ／３
０ｍ（１／１２０）である。そして、この初期キャンバ
ーδの形成は、構造的に最初から傾斜させて建造するこ
ともできるが、クレーン走行部５Ａの浮力を増加させる
という浮力調整によっても行うことができる。

【００２３】この浮力調整はクレーン走行部５Ａ自体の
浮力調整によっても可能であるが、クレーン走行部５Ａ
の下部に浮力タンク等の浮力体７を潜り込ませて行うこ
ともできる。この構造により、このクレーン走行部５Ａ
の傾斜は、荷役中の約２０〜４０トン程度のコンテナ４
の荷役によって発生する僅かな傾斜の範囲内のみに収め
ることができる。

【００２４】なお、図１や図３では、分かりやすくする
ために、撓みδ、δ１を非常に大きく拡大して、模式的
に図示しており、実際の量は、上述したように、（１／
１２０）程度の傾斜を生じる撓み量である。

【００２５】以上の構成のキャンバーを有する浮体式コ
ンテナヤード１Ａによれば、コンテナクレーン２が走行
及び停止する時に、コンテナクレーン２の重量によって
コンテナクレーン２のクレーン走行部５Ａに撓みδ１が
発生するが、この撓みδ１によって、予めキャンバーが
付いているクレーン走行部５Ａのキャンバー量δを相殺
して略水平にすることができるので、コンテナクレーン
２の重量によって発生し、コンテナクレーン２の走行機
能及び荷役機能に支障を来す横方向の傾斜を防止でき
る。

【００２６】また、初期撓みδの形成をクレーン走行部
５Ａの浮力調整によって行うことにより、クレーン走行
部５Ａの構造が単純化するので設計及び建造が容易とな
り、コストダウンできる。

【００２７】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によるキャンバーを有する浮体式コンテナヤードによれ
ば、コンテナクレーンが走行及び停止する時に、コンテ
ナクレーンの重量によってコンテナクレーンのクレーン
走行部に発生する撓みを利用して、予めキャンバーの付
いているクレーン走行部のキャンバー量を相殺して略水
平にすることができるので、コンテナクレーンの重量に
よって発生する横方向の傾斜を防止でき、この傾斜によ
って生じるコンテナクレーンの走行機能及び荷役機能に
対する障害を防止でき、効率よく荷役作業できる。

【００２８】また、初期撓みの形成をクレーン走行部の
浮力調整によって行うことにより、クレーン走行部の構
造が単純化するので設計及び建造が容易となり、コスト
ダウンできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るキャンバーを有する浮体式コンテ
ナヤードの部分側断面図である。

【図２】従来技術の浮体式コンテナヤードの概形を示す
平面図である。

【図３】図２のコンテナクレーン部分と横方向の撓みと
の関係を示す側断面図である。

【符号の説明】

１ 浮体式コンテナヤード １Ａ キャンバーを有する浮体式コンテナヤード ２ コンテナクレーン ３ コンテナ船 ４ コンテナ ５，５Ａ クレーン走行部 ６ 側壁 ７ 浮力体（浮力タンク） ８ 陸上クレーン 11 コンテナ置き場 12 通路 17 走行レール 21 クレーン脚部 23 荷役部 31 船倉 δ キャンバー（初期撓み）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コンテナ船を浮体構造の側壁に係留し
   て、該側壁に沿って配置されたクレーン走行部上をコン
   テナクレーンを走行させて、前記コンテナ船のコンテナ
   の荷役を行う浮体式コンテナヤードであって、前記コン
   テナクレーンが走行する各位置において、該コンテナク
   レーンの重量によって発生する撓みと相殺してクレーン
   走行部の傾斜が略水平になる逆方向の初期撓みを与えて
   前記クレーン走行部を形成したことを特徴とするキャン
   バーを有する浮体式コンテナヤード。
2. 【請求項２】前記クレーン走行部の前記初期撓みの形成
   を前記クレーン走行部の浮力調整によって行う請求項１
   記載のキャンバーを有する浮体式コンテナヤード。