JPH11301570A - 摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単に設置でき、且つ専有する空間を小さな
ものとする。 【解決手段】 ロンジ１０が配設された船底外板１に、
複数の空気吹き出し部３を船体幅方向に並ぶように設け
る。船体幅方向に延びる耐食材製半割りパイプ１１を、
各空気吹き出し部３が連通するように、船底外板１の内
側に船底のロンジ１０を貫通させて取り付けて、内部に
空気分散チャンバ１２を形成する。半割りパイプ１１
に、１本の空気送給パイプ８を接続する。空気送給パイ
プ８を通し空気分散チャンバ１２に送給した加圧空気
を、ロンジ１０に遮られることなく、各空気吹き出し部
３へ分散させて導く。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は航行時に船体表面に
作用する摩擦抵抗を低減させるために船体表面を微小気
泡で被覆するようにさせる摩擦抵抗低減船の空気吹き出
し器に関するもので、特に、微小気泡で船底を広く覆う
ようにさせる摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】船舶の航行時には、流体としての海水の
粘性のために船体の周りに海水による境界層が形成され
るが、この境界層の中では、海水の流速は船体表面が零
で船体表面から離れるに従い急激に大きく変化する傾向
にあり、船体の表面に海水の摩擦抵抗が作用し船体抵抗
の大きな要素の一つとなっている。

【０００３】そのため、近年、上記船体の表面に作用す
る摩擦抵抗を減少させて推進性能を向上させるための研
究が進められており、その対策の一つとして、船体表面
から微小気泡（マイクロバブル）を噴出させ、船体の浸
水部（没水部）表面の境界層内に微小気泡を送り込んで
船体の浸水部表面を微小気泡で覆うことにより船体表面
に作用する摩擦抵抗を低減することを狙ったマイクロバ
ブル推進法の研究が進められている。

【０００４】マイクロバブル推進法を具現化する一つの
方法として、コンプレッサー等の空気送給装置で発生さ
せた加圧空気を船底から水中へ吹き出させて、船底に微
小気泡による所要のボイドを形成させるようにさせるこ
とが考えられている。船底から加圧空気を吹き出させる
手段としては、図２（イ）（ロ）にその一例の概略を示
す如く、船底外板１に開口部４を穿設すると共に、該開
口部４に、多数の空気吹き出し口（細孔）５を所要のピ
ッチで穿設してなる多孔板６を取り付けて、空気吹き出
し部３を形成し、更に、該空気吹き出し部３の周囲を取
り囲むように、流量調整弁９を備えた空気送給パイプ８
を介して図示しない空気送給装置に接続したボックス状
のシーチェスト２を、船底外板１の内側に水密に取り付
けた構成として、上記空気送給装置から空気送給パイプ
８を通してシーチェスト２に送給された加圧空気を上記
空気吹き出し部３の空気吹き出し口５から水中に吹き出
させて微小気泡を発生させるようにした空気吹き出し器
が提案されている。

【０００５】又、上記空気吹き出し器の空気吹き出し部
３としては、図３（イ）に示す如く、上記と同様の開口
部４に多孔質板７を取り付けたり、図３（ロ）に示す如
く、船底外板１に直接多数の空気吹き出し口５を穿設し
て、これら空気吹き出し口５の一群を空気吹き出し部３
とする型式の空気吹き出し器も提案されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、図２（イ）
（ロ）や図３（イ）（ロ）等に提案されているこれまで
の空気吹き出し器では、航行時の海水の流れに乗せて船
底を広く覆うことができるようにするためには、船底に
複数の空気吹き出し部３を一列に並べて設けて、各空気
吹き出し部３毎にシーチェスト２を取り付けることとな
るので、取り付けるシーチェスト２の数が多くなると共
に空気送給パイプ８の本数も多くなり、作業工数が多く
て設置工事が大変になるという問題がある。

【０００７】そこで、本発明は、少ない作業工数で容易
に設置することのできる摩擦抵抗低減船の空気吹き出し
器を提供しようとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、船底外板の所要位置に、加圧空気を水中
に吹き出させることにより微小気泡を発生させるように
するための複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配列
して設け、且つ空気送給パイプを通して送給された加圧
空気を上記各空気吹き出し部へ分散して導くための空気
分散チャンバを形成するように、船体幅方向に延びる耐
食材製半割りパイプを、船底のロンジを貫通するように
上記船底外板の内側に組み付けた構成とする。

【０００９】空気送給パイプを通して半割りパイプによ
る空気分散チャンバ内に送給された加圧空気は、該空気
分散チャンバ内で船体幅方向に分散されて船体幅方向に
配列された各空気吹き出し部に導かれ、該各空気吹き出
し部より水中に向かって吹き出されて微小気泡を発生さ
せるようになる。この際、空気分散チャンバ内における
加圧空気の流れは船底のロンジにより遮られることはな
い。更に、半割りパイプは耐食材製としてあることか
ら、船体が寿命に達するまで内部の健全性を保つことが
できるようになり、空気吹き出し器内部をメンテナンス
フリーとして、作業員が内部に入って点検する必要をな
くすことができる。したがって、半割りパイプによる空
気分散チャンバの長手方向と垂直な断面積を小さなもの
とすることができて、空気吹き出し器の専有する空間を
極めて小さなものとすることができる。

【００１０】又、半割りパイプをチタン製とすることに
より、強度的に優れたものとすることができる。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。

【００１２】図１（イ）（ロ）は本発明の摩擦抵抗低減
船の空気吹き出し器の実施の一形態を示すもので、船底
外板１の船長方向に延びる各ロンジ１０間位置に、複数
の空気吹き出し部３を船体幅方向に一列に並ぶように設
けると共に、該各空気吹き出し部３のすべてを船底外板
１の内側から覆って連通させるように、船体幅方向全長
に一連に延びるチタン（チタン合金を含む）の如き耐食
材製の半割りパイプ１１を、各ロンジ１０を貫通するよ
うにして船底外板１に水密に取り付けて空気分散チャン
バ１２を形成し、且つ該半割りパイプ１１の長手方向中
央部に流量調整弁９付きの空気送給パイプ８を接続し
て、該空気送給パイプ８を通して空気分散チャンバ１２
内に送給された加圧空気を該空気分散チャンバ１２内で
船体幅方向に分散させて各空気吹き出し部３に導けるよ
うにした構成とする。なお、半割りパイプ１１を貫通さ
せるために上記船底のロンジ１０に設ける切り欠き部の
高さは、ロンジ１０の長手方向に要求される剛性を低下
させることのないよう、ロンジ１０自体の高さに比して
充分低いものとする。

【００１３】空気送給パイプ８を通して空気送給装置か
ら半割りパイプ１１による空気分散チャンバ１２に送ら
れた加圧空気は、該空気分散チャンバ１２内で船体幅方
向に分散され、船体幅方向に並ぶ各空気吹き出し部３に
導かれて、各空気吹き出し部３から船外へ吹き出されて
微小気泡を発生する。この際、空気分散チャンバ１２内
における加圧空気の流れはロンジ１０に遮られることな
く円滑なものとすることができる。

【００１４】上記において、空気分散チャンバ１２を形
成する半割りパイプ１１は、耐食材であるチタン製とし
てあり、しかもチタンは造船用鋼材との溶接性に優れて
いることから、船体構造材の一部として用いることがで
きて、船底部の設計強度上の問題を起すことはなく、船
体が寿命に達するまで健全性を保つことができる。した
がって、作業者が内部に入って点検する必要性をなくす
ことができるので、空気分散チャンバ１２の長手方向と
垂直な断面積を、大きな空気抵抗が生じない程度の小さ
なものとすることができることにより、空気吹き出し器
全体として専有する空間を極めて小さなものとすること
ができる。

【００１５】又、上記半割りパイプ１１は、船体幅方向
に連通する構造としてあって、空気送給パイプ８を１本
だけ接続すればよく、しかも予め船底のロンジ１０の所
定の位置に設けた切り欠き部を通すようにすることによ
り、船底外板１の内側に容易に配置することができるの
で、少ない作業工数で空気吹き出し器を設置することが
できる。

【００１６】因に、半割りパイプ１１の端面部等に開閉
可能とした点検口を設けたり、空気吹き出し部３を開閉
できるようにしておけば、これらの部分からボアスコー
プやＣＣＤカメラ等を挿入して目視により内部観察を行
うことができる。

【００１７】なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限
定されるものではなく、空気分散チャンバ１２を形成す
る半割りパイプとしては、耐食性に優れ且つ造船用鋼材
と溶接性の良い材質であればチタン以外の耐食材を用い
てもよいこと、空気吹き出し部３の形状、面積等は所望
する微小気泡による船体被覆効果が得られるように自在
に決定することができること、又、実施の形態では、半
割りパイプ１１を一連に取り付けるようにした場合を示
したが、長手方向の途中に仕切りを入れたり、途中を分
断して複数分割構造として、各分割領域で少なくとも２
つ以上の空気吹き出し部を連通させるようにし、且つ各
分割領域毎に空気送給パイプを接続してもよく、これに
より、各分割領域から任意の量の加圧空気を吹き出させ
ることができるようになること、その他、本発明の要旨
を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは
勿論である。

【００１８】

【発明の効果】以上述べた如く、本発明によれば、次の
如き優れた効果を発揮する。 (1) 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中に吹き出さ
せることにより微小気泡を発生させるようにするための
複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配列して設け、
且つ空気送給パイプを通して送給された加圧空気を上記
各空気吹き出し部へ分散して導くための空気分散チャン
バを形成するように、船体幅方向に延びる耐食材製半割
りパイプを、船底のロンジを貫通するように上記船底外
板の内側に組み付けた構成としてあるので、半割りパイ
プ内の健全性を船体が寿命に達するまで保つことがで
き、人が内部に入って点検する必要をなくすことができ
ることにより、半割りパイプによる空気分散チャンバの
長手方向と直角な断面積を小さなものとして、空気吹き
出し部の専有する空間を極めて小さなものとすることが
でき、又、複数の空気吹き出し部に対して半割りパイプ
及び空気送給パイプをそれぞれ１つ宛設置すれば済むの
で、少ない作業工数で容易に設置することができる。 (2) 空気分散チャンバを形成する半割りパイプをチタン
製とすることにより、強度的に優れたものとすることが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器の実
施の一形態を示すもので、（イ）は概略斜視図、（ロ）
は（イ）のＡ−Ａ矢視図である。

【図２】これまでに提案されている空気吹き出し器の一
例を示すもので、（イ）は切断側面図、（ロ）は底面図
である。

【図３】これまでに提案されている空気吹き出し器の他
の例を示すもので、（イ）は多孔質板を使用した場合
の、又、（ロ）は船底外板に空気吹き出し口を直接穿孔
した場合の底面図である。

【符号の説明】

１ 船底外板 ３ 空気吹き出し部 ８ 空気送給パイプ １０ ロンジ １１ 半割りパイプ １２ 空気分散チャンバ

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中
   に吹き出させることにより微小気泡を発生させるように
   するための複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配列
   して設け、且つ空気送給パイプを通して送給された加圧
   空気を上記各空気吹き出し部へ分散して導くための空気
   分散チャンバを形成するように、船体幅方向に延びる耐
   食材製半割りパイプを、船底のロンジを貫通するように
   上記船底外板の内側に組み付けた構成を有することを特
   徴とする摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器。
2. 【請求項２】 空気分散チャンバを形成する半割りパイ
   プをチタン製とした請求項１記載の摩擦抵抗低減船の空
   気吹き出し器。