JPH11291973A - 摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 設置に要する作業工数を減らせるようにす
る。 【解決手段】 船底外板１に、多数の空気吹き出し部３
を一列に並ぶように設ける。溝型鋼の如き長さの長いシ
ーチェスト１１を、各空気吹き出し部３のすべてが連通
するように、船底外板１の内側に水密に取り付け、シー
チェスト１１を各空気吹き出し部３で共通使用する。シ
ーチェスト１１に一本の空気送給パイプ８を接続する。
空気送給パイプ８を通しシーチェスト１１内に送給した
加圧空気を、長手方向に分散させて各空気吹き出し部３
から船外へ吹き出させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は航行時に船体表面に
作用する摩擦抵抗を低減させるために船体表面を微小気
泡で被覆するようにさせる摩擦抵抗低減船の空気吹き出
し器に関するもので、特に、微小気泡で船底を広く覆う
ようにさせる摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】船舶の航行時には、流体としての海水の
粘性のために船体の周りに海水による境界層が形成され
るが、この境界層の中では、海水の流速は船体表面が零
で船体表面から離れるに従い急激に大きく変化する傾向
にあり、船体の表面に海水の摩擦抵抗が作用し船体抵抗
の大きな要素の一つとなっている。

【０００３】そのため、近年、上記船体の表面に作用す
る摩擦抵抗を減少させて推進性能を向上させるための研
究が進められており、その対策の一つとして、船体表面
から微小気泡（マイクロバブル）を噴出させ、船体の浸
水部（没水部）表面の境界層内に微小気泡を送り込んで
船体の浸水部表面を微小気泡で覆うことにより船体表面
に作用する摩擦抵抗を低減することを狙ったマイクロバ
ブル推進法の研究が進められている。

【０００４】マイクロバブル推進法を具現化する一つの
方法として、コンプレッサー等の空気送給装置で発生さ
せた加圧空気を船底から水中へ吹き出させて、船底に微
小気泡による所要のボイドを形成させるようにさせるこ
とが考えられている。船底から加圧空気を吹き出させる
手段としては、図４（イ）（ロ）にその一例の概略を示
す如く、船底外板１に開口部４を穿設すると共に、該開
口部４に、多数の空気吹き出し口（細孔）５を所要のピ
ッチで穿設してなる多孔板６を取り付けて、空気吹き出
し部３を形成し、更に、該空気吹き出し部３の周囲を取
り囲むように、流量調整弁９を備えた空気送給パイプ８
を介して図示しない空気送給装置に接続したシーチェス
ト２を、船底外板１の内側に水密に取り付けた構成とし
て、上記空気送給装置から空気送給パイプ８を通してシ
ーチェスト２に送給された加圧空気を上記空気吹き出し
部３の空気吹き出し口５から水中に吹き出させて微小気
泡を発生させるようにした空気吹き出し器が提案されて
いる。

【０００５】又、上記空気吹き出し器の空気吹き出し部
３としては、図５（イ）に示す如く、上記と同様の開口
部４に多孔質板７を取り付けたり、図５（ロ）に示す如
く、船底外板１に直接多数の空気吹き出し口５を穿設し
て、これら空気吹き出し口５の一群を空気吹き出し部３
とする型式の空気吹き出し器も提案されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、図４（イ）
（ロ）や図５（イ）（ロ）等に提案されているこれまで
の空気吹き出し器では、航行時の海水の流れに乗せて船
底を広く覆うことができるようにするためには、船底に
複数の空気吹き出し部３を一列に並べて設けて、各空気
吹き出し部３毎にシーチェスト２を取り付けることとな
るので、取り付けるシーチェスト２の数が多くなると共
に空気送給パイプ８の本数も多くなり、作業工数が多く
て設置工事が大変になり、設置コストが嵩むという問題
がある。

【０００７】そこで、本発明は、設置コストの引き下げ
を行えるよう、少ない作業工数で容易に設置することの
できる摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器を提供しようと
するものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、船底外板の所要位置に、加圧空気を水中
に吹き出させることにより微小気泡を発生するようにす
るための複数の空気吹き出し部を一列に並べて設け、且
つ該各空気吹き出し部のすべてを船底外板の内側から覆
って連通させるように長さの長いシーチェストを船底外
板に組み付け、該シーチェストに空気送給パイプを接続
した構成とする。

【０００９】空気送給パイプを通してシーチェスト内に
送給された加圧空気は、シーチェスト内で長手方向に分
散されることにより一列に並ぶ各空気吹き出し部に導か
れ、該各空気吹き出し部から水中に向かって吹き出され
て微小気泡を発生させるようになる。したがって、一列
に並ぶ各空気吹き出し部に対して１つのシーチェストを
取り付けるのみでよく、シーチェストの取り付け工数を
大幅に減らすことができると共に空気送給パイプ数も大
幅に減らすことができ、設置のための作業工数を減らし
て、設置コストを引き下げることができる。

【００１０】又、船底外板の所要位置に、加圧空気を水
中に吹き出させることにより微小気泡を発生させるよう
にするための複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配
列して設け、且つ該各空気吹き出し部のすべてを船底外
板の内側から覆って連通させるように、船体幅方向に延
びる溝型鋼からなるシーチェストを、船底のロンジを貫
通するようにして船底外板に組み付け、該シーチェスト
に空気送給パイプを接続した構成とすることにより、ロ
ンジのある部分にも効率よいレイアウトで設置でき、加
圧空気を船体幅方向に分散して各空気吹き出し部から水
中に向かって吹き出すことができる。

【００１１】更に、船底外板の所要位置に、加圧空気を
水中に吹き出させることにより微小気泡を発生させるよ
うにするための複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に
配列して設け、且つ該各空気吹き出し部が並ぶ位置の上
方でしかも船底のロンジよりも高い位置に、空気送給パ
イプを接続した空気ヘッダーを配し、更に、該空気ヘッ
ダーと上記各空気吹き出し部との間に、空気分散パイプ
を連通接続し、上記空気ヘッダーと各空気分散パイプと
によりシーチェストを形成した場合は、ロンジに加工を
施すことなくシーチェストを設置できることになる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。

【００１３】図１は本発明の実施の一形態を示すもの
で、船底外板１に複数の空気吹き出し部３を船体幅方向
又は船体長手方向に一列に並ぶように設けると共に、該
各空気吹き出し部３のすべてを船底外板１の内側から覆
って連通させるように断面コの字形状とした溝型鋼から
なる長さの長いシーチェスト１１を船底外板１に水密に
取り付け、且つ該シーチェスト１１の長手方向中央部に
空気供給口１０を１個所だけ設け、該空気供給口１０
に、一端を図示しない空気送給装置に接続した流量調整
弁９付きの空気送給パイプ８の他端を接続して、該空気
送給パイプ８を通してシーチェスト１１内に送給された
加圧空気をシーチェスト１１内で長手方向に分散させて
各空気吹き出し部３に導けるようにする。

【００１４】空気送給パイプ８を通して空気送給装置か
らシーチェスト１１内に送られた加圧空気は、該シーチ
ェスト１１内で長手方向に円滑に分散され、一列に並ぶ
各空気吹き出し部３に導かれて、各空気吹き出し部３か
ら船外へ吹き出されるので、発生した微小気泡によるボ
イドが形成されることにより船底表面を広く被覆するこ
とができるようになる。

【００１５】上記において、シーチェスト１１は、複数
の空気吹き出し部３が並ぶ方向に一連に延びていて、各
空気吹き出し部３のすべてを一体に取り囲むようにして
各空気吹き出し部３で共通使用するようにしてあるた
め、各空気吹き出し部３に対して個々に取り付ける必要
がなく、又、該シーチェスト１１は長手方向に連通する
構造としてあって空気抵抗が小さいことから、シーチェ
スト１１に接続する空気送給パイプ８も１本のみとする
ことができる。したがって、シーチェスト１１及び空気
送給パイプ８の設置のための作業工数を大幅に減らすこ
とができ、低コストで設置することができる。

【００１６】次に、図２（イ）（ロ）は本発明の実施の
他の形態を示すもので、船底のロンジ１２が設けられて
いる位置への適用例を示す。すなわち、船底外板１の船
長方向に延びる各ロンジ１２間位置に、複数の空気吹き
出し部３を船体幅方向に一列に並ぶように設けると共
に、該各空気吹き出し部３のすべてを船底外板１の内側
から覆って連通させるように、船体幅方向全長に一連に
延びる半割パイプ形状の溝型鋼からなるシーチェスト１
１ａを、各ロンジ１２を貫通するようにして船底外板１
に水密に取り付け、且つ該シーチェスト１１ａの長手方
向中央部に空気供給口１０を１個所だけ設け、該空気供
給口１０に、流量調整弁９付きの空気送給パイプ８を接
続して、該空気送給パイプ８を通してシーチェスト１１
ａ内に送給された加圧空気をシーチェスト１１ａ内で船
体幅方向に分散させて各空気吹き出し部３に導けるよう
にしたものである。なお、シーチェスト１１ａを貫通さ
せるために上記船底のロンジ１２に設ける切り欠き部の
高さは、ロンジ１２の長手方向に要求される剛性を低下
させることのないよう、ロンジ１２自体の高さに比して
充分低いものとする。又、上記シーチェスト１１ａとし
ては、断面コの字形状の如き溝型鋼であってもよい。

【００１７】図２（イ）（ロ）に示すようにすると、空
気送給パイプ８を通して空気送給装置からシーチェスト
１１ａに送られた加圧空気は、該シーチェスト１１ａ内
で船体幅方向に円滑に分散され、船体幅方向に並ぶ各空
気吹き出し部３に導かれて、各空気吹き出し部３から船
外へ吹き出されるので、ロンジ１２のある位置でもシー
チェスト１１ａを効率よいレイアウトで組み付けること
ができる。

【００１８】次いで、図３（イ）（ロ）は本発明の実施
の他の形態を示すもので、船底外板１の船長方向に延び
る各ロンジ１２間位置に、多数の空気吹き出し部３を船
体幅方向に一列に並ぶよう設け、且つ該各空気吹き出し
部３が並ぶ位置の上方でしかも船底のロンジ１２の高さ
よりも高い位置に、船体幅方向に水平に延びる筒状の空
気ヘッダー１３を配置し、該空気ヘッダー１３と上記各
空気吹き出し部３との間に、空気分散パイプ１４をそれ
ぞれ連通接続して、上記空気ヘッダー１３と各空気分散
パイプ１４とによりシーチェスト１１ｂを形成し、更
に、上記空気ヘッダー１３の長手方向中央部上側に空気
供給口１０を１個所だけ設け、該空気供給口１０に、空
気送給パイプ８を接続し、該空気送給パイプ８を通して
空気ヘッダー１３内に送給した加圧空気を、各空気分散
パイプ１４により空気吹き出し部３に導くようにしたも
のである。

【００１９】図３（イ）（ロ）に示すように構成する
と、シーチェスト１１ｂが船底の各ロンジ１２を跨ぐよ
うな配置設計となることから、ロンジ１２に切り欠き部
等の加工を施す必要がない点で有利となる。

【００２０】なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限
定されるものではなく、空気吹き出し部３の形状、面積
等は所望する微小気泡による船体被覆効果が得られるよ
うに自在に決定することができること、又、実施の形態
では、シーチェスト１１，１１ａ，１１ｂを一連に取り
付けるようにした場合を示したが、長手方向の途中に仕
切りを入れたり、途中を分断して複数分割構造として、
各分割領域で少なくとも２つ以上の空気吹き出し部を連
通させるようにし、且つ各分割領域毎に空気送給パイプ
を接続してもよく、これにより、各分割領域から任意の
量の加圧空気を吹き出させることができるようになるこ
と、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において
種々変更を加え得ることは勿論である。

【００２１】

【発明の効果】以上述べた如く、本発明の摩擦抵抗低減
船の空気吹き出し器によれば、次の如き優れた効果を発
揮する。 (1) 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中に吹き出さ
せることにより微小気泡を発生するようにするための複
数の空気吹き出し部を一列に並べて設け、且つ該各空気
吹き出し部のすべてを船底外板の内側から覆って連通さ
せるように長さの長いシーチェストを船底外板に組み付
け、該シーチェストに空気送給パイプを接続した構成と
してあるので、複数の空気吹き出し部に対してシーチェ
スト及び空気送給パイプをそれぞれ１つ宛設置すればよ
く、設置に要する作業工数を減らすことができて設置コ
ストを削減することができる。 (2) 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中に吹き出さ
せることにより微小気泡を発生させるようにするための
複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配列して設け、
且つ該各空気吹き出し部のすべてを船底外板の内側から
覆って連通させるように、船体幅方向に延びる溝型鋼か
らなるシーチェストを、船底のロンジを貫通するように
して船底外板に組み付け、該シーチェストに空気送給パ
イプを接続した構成とすることにより、ロンジのある位
置でも、シーチェストを効率のよいレイアウトとして組
み付けることができる。 (3) 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中に吹き出さ
せることにより微小気泡を発生させるようにするための
複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配列して設け、
且つ該各空気吹き出し部が並ぶ位置の上方でしかも船底
のロンジよりも高い位置に、空気送給パイプを接続した
空気ヘッダーを配し、更に、該空気ヘッダーと上記各空
気吹き出し部との間に、空気分散パイプを連通接続し、
上記空気ヘッダーと各空気分散パイプとによりシーチェ
ストを形成した構成とすることにより、ロンジへの加工
を行うことなく設置することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器の実
施の一形態を示す概略図である。

【図２】本発明の実施の他の形態を示すもので、（イ）
は概略斜視図、（ロ）は（イ）のＡ−Ａ矢視図である。

【図３】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、
（イ）は概略斜視図、（ロ）は（イ）のＢ−Ｂ矢視図で
ある。

【図４】これまでに提案されている空気吹き出し器の一
例を示すもので、（イ）は切断側面図、（ロ）は底面図
である。

【図５】これまでに提案されている空気吹き出し器の他
の例を示すもので、（イ）は多孔質板を使用した場合
の、又、（ロ）は船底外板に空気吹き出し口を直接穿孔
した場合の底面図である。

【符号の説明】

１ 船底外板 ３ 空気吹き出し部 ８ 空気送給パイプ １１，１１ａ，１１ｂ シーチェスト １２ ロンジ １３ 空気ヘッダー １４ 空気分散パイプ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中
   に吹き出させることにより微小気泡を発生するようにす
   るための複数の空気吹き出し部を一列に並べて設け、且
   つ該各空気吹き出し部のすべてを船底外板の内側から覆
   って連通させるように長さの長いシーチェストを船底外
   板に組み付け、該シーチェストに空気送給パイプを接続
   した構成を有することを特徴とする摩擦抵抗低減船の空
   気吹き出し器。
2. 【請求項２】 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中
   に吹き出させることにより微小気泡を発生させるように
   するための複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配列
   して設け、且つ該各空気吹き出し部のすべてを船底外板
   の内側から覆って連通させるように、船体幅方向に延び
   る溝型鋼からなるシーチェストを、船底のロンジを貫通
   するようにして船底外板に組み付け、該シーチェストに
   空気送給パイプを接続した構成を有することを特徴とす
   る摩擦抵抗低減船の空気吹き出し器。
3. 【請求項３】 船底外板の所要位置に、加圧空気を水中
   に吹き出させることにより微小気泡を発生させるように
   するための複数の空気吹き出し部を、船体幅方向に配列
   して設け、且つ該各空気吹き出し部が並ぶ位置の上方で
   しかも船底のロンジよりも高い位置に、空気送給パイプ
   を接続した空気ヘッダーを配し、更に、該空気ヘッダー
   と上記各空気吹き出し部との間に、空気分散パイプを連
   通接続し、上記空気ヘッダーと各空気分散パイプとによ
   りシーチェストを形成したことを特徴とする摩擦抵抗低
   減船の空気吹き出し器。