JPH11293418A - 希土類磁石材料用母合金、希土類磁石材料およびその製造方法ならびにそれを用いた希土類ボンド磁石 - Google Patents

希土類磁石材料用母合金、希土類磁石材料およびその製造方法ならびにそれを用いた希土類ボンド磁石

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JPH11293418A
JPH11293418A JP10120035A JP12003598A JPH11293418A JP H11293418 A JPH11293418 A JP H11293418A JP 10120035 A JP10120035 A JP 10120035A JP 12003598 A JP12003598 A JP 12003598A JP H11293418 A JPH11293418 A JP H11293418A
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magnetic phase
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Masahiro Tobiyo
飛世  正博
Mikio Shindo
幹夫 新藤
Hiroshi Okajima
弘 岡島
Katsunori Iwasaki
克典 岩崎
Akimasa Sakuma
昭正 佐久間
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ボンド磁石とした場合の成形性(圧縮性)が
良好で、かつ実用に耐える高い磁気特性を実現できる複
合組織型の希土類窒化磁石材料およびその製造方法なら
びにその原料母合金、希土類ボンド磁石を提供する。 【解決手段】 成分組成が原子%でRl100-(l+m+n)
mn(RはYを含めた希土類元素の1種または2種以上
でありSmを必ず含む、TはFeまたはFeとCo、M
はV、Al、Ti、Cr、Mn、Cu、Ga、Zr、N
b、Mo、Hf、Ta、Wのうちの1種または2種以上
でありVを必ず含む)、6≦l≦12,1≦m≦15,
0.15≦n≦5.5で表され、TbCu7型の結晶相
からなる相と30原子%以上のTを含む軟磁性相とから
実質的になるとともに、前記30原子%以上のTを含む
軟質磁性相の平均結晶粒径を0.01〜5μmとしたこ
とを特徴とする希土類磁石材料用母合金。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、R−T−M(Mは
Vを必ず含む)−B−N系の特長あるミクロ組織を有し
た希土類窒化磁石材料およびその製造方法ならびにその
原料母合金、希土類ボンド磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】特開平8-316018号には、R(R
はSm比率が50原子%以上の希土類元素の1種以上)
が4〜8原子%、Nが10〜20原子%、M(MはZr
であるか、Zrの一部をTi,V,Cr,Nb,Hf,
Ta,Mo,W,Al,CおよびPから選択される少な
くとも1種の原子で置換したものである)が2〜10原
子%、残部が実質的にTからなる組成を有し、R、Tお
よびNを主体とし、好ましい平均結晶粒径が5〜500
nmの準安定相のTbCu7型等の硬質磁性相と、平均
結晶粒径が5〜60nmのbcc構造のT相(TはFe
またはFeとCo)とからなる希土類窒化磁石およびそ
のボンド磁石が開示されている。この希土類窒化磁石は
窒化処理後に前記組成となるように調整されたR−T−
M系合金溶湯を溶湯急冷法により急冷凝固し、Zrを含
んだ微結晶状態または非晶質状態の超急冷薄帯を得、熱
処理を加えて前記の微細な複合組織を生成せしめて高い
磁気特性を実現したものである。特に、図3には、溶湯
急冷法における冷却ロールの周速度が45m/秒以上と
いう非常に速い急冷速度のときに高い磁気特性が得られ
る記載がある。しかし、溶湯急冷法において冷却ロール
の周速度を45m/秒以上とするには大型の溶湯急冷設
備を要し、設備コストが増大する問題がある。また、冷
却ロールの周速度を45m/秒以上として急冷凝固され
た薄帯は先端が尖鋭形状となり、この薄帯を粉砕して所
定の熱処理を施した後適当な比率でバインダーと混合し
てボンド磁石用原料としボンド磁石を成形すると、前記
尖鋭形状の形態が粉砕、熱処理後の粉末においても保持
される結果バインダー中への分散が疎となり、ボンド磁
石の成形体密度(磁気特性)が低下する問題がある。こ
のように、前記従来の希土類窒化磁石粉末は磁粉の磁気
特性を優先させるとボンド磁石とした場合の成形性(圧
縮性)が悪化して高い磁気特性のボンド磁石を得ること
が困難である。
【0003】次に、希土類鉄系磁石材料の結晶微細化手
段として水素化・分解、脱水素・再結合反応による方法
(HDDR法)が知られている。HDDR法において、
脱水素・再結合の温度または時間を変えると生成する化
合物が変化することが報告されている。例えばJ.Al
loys Comp.196(1993)155―15
9のFig.6等には、Sm2.2Fe17合金の脱水素・
再結合反応を真空中で800℃×15分より低温度、短
時間の条件で行うとSmFe7相以外に10μm以上の
粗大な結晶粒径のαFe等が生成して保磁力および角型
性を劣化させることが報告されている。他方、脱水素・
再結合反応を真空中で800℃×30分以上の高温度、
長時間の条件で行うとSm2Fe17相のみが生成しαF
eは生成しないので硬質磁性相と軟質磁性相とからなる
複合組織を得られない。このように、従来は希土類鉄系
合金において、単にHDDR法を適用しても、微細な軟
質磁性相と硬質磁性相とからなる複合組織型の希土類磁
石材料を実現することは困難を極めた。すなわち、α鉄
等のT(FeまたはFeとCo)を主体とする軟質磁性
相の結晶粒はHDDR処理により微細化しないので、微
細結晶の軟質磁性相と硬質磁性相とからなる高い磁気特
性の希土類窒化磁石を実現する上で障害となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の問題を踏ま
えて、本発明の課題は、ボンド磁石とした場合の成形性
(圧縮性)が良好で、かつ実用に耐える高い磁気特性を
実現できる複合組織型の希土類窒化磁石材料およびその
製造方法ならびにその原料母合金、希土類ボンド磁石を
提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討の
結果、前記R−T−M(MはVを必ず含む)−B系の希
土類窒化磁石材料用に好適な母合金組成を見出した。こ
の母合金組成において、溶湯急冷速度を従来に比べてか
なり遅い条件(例えば冷却ロールの周速度で、好ましく
は0.05〜25m/秒、より好ましくは0.1〜20
m/秒、特に好ましくは1〜10m/秒)として急冷凝
固したものは平均結晶粒径が0.01μm以上10μm
未満のTを含む軟質磁性相が混在したミクロ組織を有す
る。この微細な軟磁性相は例えばストリップキャスト法
を適用して厚み200μm〜2mmの薄板状(薄帯状)
のもので得られる。次に、水素化・分解反応処理に続い
て脱水素・再結合反応処理(HDDR処理)を施し、そ
の後窒化を行うことにより、上記課題を達成できること
を知見した。
【0006】本発明の希土類磁石材料用母合金は、成分
組成が原子%でRl100-(l+m+n)mn(RはYを含め
た希土類元素の1種または2種以上でありSmを必ず含
む、TはFeまたはFeとCo、MはV、Al、Ti、
Cr、Mn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、T
a、Wのうちの1種または2種以上でありVを必ず含
む)、6≦l≦12,1≦m≦15,0.15≦n≦
5.5で表され、TbCu7型の結晶相からなる相と3
0原子%以上のTを含む軟質磁性相とから実質的になる
とともに、前記30原子%以上のTを含む軟質磁性相の
平均結晶粒径を0.01〜5μmとしたものである。前
記母合金の各構成元素の成分範囲は後述する本発明の製
造方法により得られる希土類窒化磁石材料の各成分範囲
を実現するように選択される。よって、前記母合金の各
構成元素の成分限定理由は本発明の希土類磁石材料に準
じる。
【0007】また、本発明は、窒化処理後に成分組成が
原子%でR αT100-( α+ β+ γ+ δ) βB γN δ(Rは
Yを含めた希土類元素の1種または2種以上でありSm
を必ず含む、MはV、Al、Ti、Cr、Mn、Cu、
Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wのうちの1種
または2種以上でありVを必ず含む)、5≦α≦11,
0.5≦β≦14.5,0.1≦γ≦5,4≦δ≦30
となるように成分調整されたR−T−M−B系母合金溶
湯を、溶湯急冷法により急冷凝固して、TbCu7型結
晶相からなる相と30原子%以上のTを含む軟質磁性相
とから実質的になるとともに、前記30原子%以上のT
を含む軟質磁性相の平均結晶粒径を0.01〜5μmと
した希土類磁石材料用母合金を得、その後必要ならばさ
らに平均粉末粒径20〜500μmに粉砕し、続いて
0.1〜10atmの水素ガス中または水素ガス分圧を
有した不活性ガス(窒素ガスを除く)中で500〜80
0℃×1〜8時間保持する水素化・分解反応処理を行
い、次に1×10-1Torr以下の高真空中に700〜
1200℃×0.1〜2時間保持する脱水素・再結合反
応処理を行った後、窒化処理を行う希土類磁石材料の製
造方法である。
【0008】また、本発明は、成分組成が原子%でR α
100-( α+ β+ γ+ δ) βB γN δ(RはYを含めた希
土類元素の1種または2種以上でありSmを必ず含む、
TはFeまたはFeとCo、MはV、Al、Ti、C
r、Mn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、T
a、Wのうちの1種または2種以上でありVを必ず含
む)、5≦α≦11,0.5≦β≦14.5,0.1≦
γ≦5,4≦δ≦30で表され、TbCu7型結晶相か
らなる硬質磁性相と30原子%以上のTを含む軟質磁性
相とから実質的になる希土類磁石材料であって、前記硬
質磁性相の平均結晶粒径が0.05〜20μmであり、
かつ前記軟質磁性相の平均結晶粒径が0.01〜5μm
である希土類磁石材料である。なお、前記硬質磁性相は
集合して粒径が10〜20μmの結晶粒を一部形成する
場合がある。特に、前記軟質磁性相よりも前記硬質磁性
相の平均結晶粒径が大きい場合に良好な磁気特性が得ら
れ、その減磁曲線において、磁界(H)を保磁力(iH
c)から0まで戻したときの磁化の値と(σ)と残留磁
化(σr)との比率(σ/σr×100%)をスプリン
グバック率と定義した場合、スプリングバック率が20
〜70%のものである。例えばNd−Fe−B系の焼結
磁石ではスプリングバック率が20%未満であるが、本
発明の希土類類磁石材料は20〜70%のスプリングバ
ック率を示し、交換結合力が働いていると思われる。
【0009】また本発明は、成分組成が原子%でR αT
100-( α+ β+ γ+ δ) βB γN δ(RはYを含めた希土
類元素の1種または2種以上でありSmを必ず含む、T
はFeまたはFeとCo、MはV、Al、Ti、Cr、
Mn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W
のうちの1種または2種以上でありVを必ず含む)、5
≦α≦11,0.5≦β≦14.5,0.1≦γ≦5,
4≦δ≦30で表され、TbCu7型再結晶硬質磁性相
と30原子%以上のTを含む再結晶軟質磁性相とから実
質的になる希土類磁石材料であって、前記再結晶硬質磁
性相の平均再結晶粒径が0.05〜20μmであり、か
つ前記再結晶軟質磁性相の平均再結晶粒径が0.01〜
5μmである希土類磁石材料である。特に、前記再結晶
軟質磁性相よりも前記再結晶硬質磁性相の平均再結晶粒
径が大きい場合に高い磁気特性が得られ、その減磁曲線
において磁界(H)を保磁力(iHc)から0まで戻し
たときの磁化の値(σ)と残留磁化(σr)との比率
(σ/σr×100%)をスプリングバック率と定義し
た場合、スプリングバック率が20〜70%のものであ
る。
【0010】本発明の希土類磁石材料は平均粉末粒径2
0〜500μmの粉末状にしてバインダーと混合し、ボ
ンド磁石の成形に供する。平均粉末粒径が20μm未満
では耐酸化性、充填性、成形性が劣化し、高い磁気特性
(密度)のボンド磁石を得ることが困難である。500
μmを越えると窒化に長時間を要しかつ成形したボンド
磁石の成形体から粗い磁石粉末粒子が剥離する場合があ
る。
【0011】本発明の希土類磁石材料の粉末を熱硬化性
樹脂で結着してなる希土類ボンド磁石の密度は6g/c
3以上となる。これは、R−T−M(MはVを必ず含
む)−B系の母合金組成およびかなり遅い溶湯急冷速度
の条件を採用したことを反映している。すなわち、急冷
凝固したものが尖鋭形状でないことによる。
【0012】 本発明の希土類磁石材料はR元素を5〜1
1原子%含有することが好ましい。R元素が5原子%未
満および11原子%を越えると本発明の特長である微細
な硬質磁性相と軟質磁性相とが混在した複合組織を得る
ことが困難であり、磁気特性が低下する。R元素はSm
を必ず含み、Sm以外にY、La、Ce、Pr、Nd、
Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、L
uのうちの1種または2種以上を含むことが許容され
る。Smミッシュメタルやジジム等の2種以上の希土類
元素の混合物を用いてもよい。Rとして、好ましくはS
mとY、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Erのうちの
1種または2種以上との組み合わせ、さらに好ましくは
SmとY、Ce、Pr、Ndのうちの1種または2種以
上との組み合わせ、特に好ましくは実質的にSmのみの
場合である。Smの純度でいえば、高いiHcを得るた
めに、Rに占めるSm比率を50原子%以上、さらには
70原子%以上とすることがよい。なお、Rには、製造
上混入が避けられないO、H、C、Al、Si、Na、
Mg、Ca等の不可避不純物の含有が許容される。本発
明の希土類磁石材料は、0.1〜5原子%のBを含有す
ることが好ましい。Bの含有量が0.1原子%未満であ
ると前記30原子%以上のTを含む軟質磁性相が混在し
た本発明の希土類磁石材料およびその母合金を実現する
ことが困難である。5原子%を越えると粗大なFe−
B、Fe3B等の硼化物相が生成してiHcが極端に低
下する。
【0013】本発明の希土類磁石材料の窒素(N)含有
量は4〜30原子%とすることが好ましい。Nが4原子
%未満では磁化が低くなり、30原子%を越えると保磁
力を向上することが困難である。より好ましい窒素
(N)の含有量は10〜20原子%である。
【0014】本発明の希土類磁石材料は0.01〜30
原子%のCoを含有することが好ましい。Coの導入に
よりキュリー温度、iHcの温度係数を向上する効果が
ある。しかし、30原子%を越えると残留磁化およびi
Hcの顕著な低下を招来し、0.01原子%未満ではC
oの添加効果が認められない。Coのより好ましい含有
量範囲は1〜20原子%である。
【0015】本発明の希土類磁石材料を構成する硬質磁
性相はTbCu7型結晶相からなる。具体的には例えば
R(T,M)7y(y=2〜5)相からなる。本発明の
希土類磁石材料に占める硬質磁性相の体積比率は50%
以上が好ましく、70〜90%がより好ましい。よっ
て、不可避の不純物相を除いて軟質磁性相の体積比率は
50%未満が好ましく、10〜30%がより好ましい。
この体積比率の範囲を外れると良好な磁気特性を得るこ
とが困難であり、特に最大エネルギー積が低下する。体
積比率は電子顕微鏡や光学顕微鏡による観察、X線回折
等を併用して総合的に判断されるが、希土類磁石材料断
面を撮影した透過型電子顕微鏡写真の面積分析法により
求めることができる。よって断面積比が体積比率であ
る。
【0016】本発明の希土類磁石材料のM元素の好まし
い含有量は0.5〜14.5原子%である。M元素を1
4.5原子%を越えて添加するとThMn12型の結晶構
造のSm(Fe,M)12z相が生成してiHcが低下
する。M元素の含有量が0.5原子%未満では、窒化後
においてαFe等のTを含む軟質磁性相の粗大粒が生成
してiHcが低下する。M元素にはVが必ず含まれる。
本発明の希土類磁石材料において、磁石特性発現相であ
る前記硬質磁性相と前記軟質磁性相との合計の体積比率
が50%以上となるように、M元素に占めるVの含有比
率を50%以上とすることが好ましい。Vが50%未満
では前記硬質磁性相と前記軟質磁性相との合計の生成比
率が低下する。MがVのみの場合が理想であり、この場
合には不可避不純物相を除いて磁石特性発現相を前記硬
質磁性相と前記軟質磁性相とから構成することができ
る。
【0017】本発明で行うHDDR処理過程において、
後工程の窒化処理により硬質磁性相となる相の部分を、
水素化・分解反応処理により希土類元素Rの水素化物R
HxとFe−M相などに分解する。さらにこの状態から
水素成分を強制的に取り除く脱水素・再結合反応処理に
より平均結晶粒径が0.05〜20μmの再結晶(再結
合)組織が得られる。再結晶粒子はランダム方向に配向
している。場合によっては異方性が付与される可能性が
ある。この水素化・分解反応処理は水素ガス中または窒
素ガスを除く不活性ガスと水素ガスとの混合ガス中で行
う。水素分圧が0.1atm未満では上記分解反応が十
分に起こらず、10atmを越えると処理設備が大型化
し設備コストが増大する。よって水素分圧の好ましい範
囲は0.1〜10atmであり、0.5〜2atmがよ
り好ましい。水素化・分解反応処理の加熱条件が500
℃×1時間未満ではR−T−M−B系母合金が水素を吸
収するのみでRHx、Fe-M相などへの分解がほとんど
起こらず、800℃×8時間を越えると脱水素後のもの
の結晶粒が粗大化し、この脱水素後のものを窒化して得
られる希土類窒化磁石材料の結晶粒が粗大化しiHcが
顕著に低下する。水素化・分解反応処理の加熱条件は5
00〜800℃×1〜5時間がより好ましく、600〜
800℃×2〜4時間が特に好ましい。脱水素・再結合
反応処理時の水素分圧が1x10-1Torrよりも低真
空であると処理に長時間を要する。1x10-6Torr
を越えた高真空では設備コストが増大する。脱水素・再
結合反応処理の加熱条件が700℃×0.1時間未満で
はRHx等の分解がほとんど進行しない。1200℃×
2時間を越えると再結晶組織が粗大粒化し高いiHcを
得ることが困難である。よって、RHx等の十分な分解
反応および微細な再結晶組織を得るために脱水素・再結
合反応処理の加熱条件は700〜1200℃×0.1〜
2時間が好ましく、750〜1000℃×0.2〜1時
間がより好ましい。上記HDDR処理により、前記母合
金において硬質磁性相になる相を平均結晶粒径で0.0
5〜20μm、より好ましくは0.05〜10μmに微
細化することができる。よって、このものを窒化してな
る硬質磁性相の平均結晶粒径は0.05〜20μmとな
る。0.05μm未満ではボンド磁石にした場合の密度
が低下し、20μmを越えるとiHcが低下する。次
に、本発明の希土類磁石材料を構成する軟質磁性相は急
冷凝固段階で平均結晶粒径が0.01μm以上10μm
未満に微細化されており、HDDR処理後も基本的にこ
の範囲に維持される。iHcを高めるために、前記軟質
磁性相のより好ましい平均結晶粒径範囲は0.01〜5
μmである。平均結晶粒径が0.01μm未満ではボン
ド磁石にした場合の密度が低下し、10μmを越えると
Hkが低下する。
【0018】窒化処理を行う前に必要に応じて粉砕、分
級を行い被窒化粉末の粒径を調整することが均一な窒化
を行うために好ましい。ガス窒化法を採用する場合は、
窒素ガスまたは窒素を含有した窒化ガスの圧力を0.2
〜10atmにすることが好ましい。0.2atm未満
では窒化反応が遅く、10atmを越えると高圧ガスの
設備のために設備コストが増大する。より好ましい窒化
ガスの圧力範囲は1〜10atmである。ガス窒化の加
熱条件は300〜650℃×0.1〜30時間が好まし
い。300℃×0.1時間未満では窒化がほとんど進行
せず、650℃×30時間を越えると磁石特性を発現す
る窒化相を生成する以外にRNとFe−Mなどへの分解
が起こりiHcが顕著に低下する。より好ましいガス窒
化の加熱条件は400〜550℃×0.5〜30時間で
あり、400〜550℃×1〜10時間が特に好まし
い。窒化処理後に、真空中あるいは不活性ガス中(窒素
ガスを除く)で300〜600℃×0.5〜50時間の
熱処理を行うと、iHcをさらに高めることができる。
【0019】本発明の希土類磁石材料の粉末を、高分子
重合体または前記希土類磁石材料の粉末のキュリー温度
よりも低い融点の金属(合金)で結着することにより、
各種磁石応用製品に有用な希土類ボンド磁石を構成でき
る。高分子重合体としてエポキシ樹脂やフェノール樹脂
等に代表される熱硬化樹脂またはポリアミド樹脂やEE
A樹脂等の熱可塑性樹脂または合成ゴムや天然ゴム等の
公知のものを用い得る。また、純金属または合金のバイ
ンダーとして亜鉛や錫などの公知の低融点金属や合金を
用いることができる。希土類ボンド磁石の成形方法とし
ては圧縮成形や射出成形、押出成形などの公知の方法を
採用できる。また、公知のシラン系やチタン系のカップ
リング剤で表面処理することや、ジアミノジフェニルス
ルフォン(DDS)等の硬化剤、各種金属石鹸等の滑剤
などを適宜用いることができる。特に、本発明の希土類
磁石粉末は比表面積が小さい粒子形状のため圧縮性がよ
く、熱硬化性樹脂を主としたバインダーで結着してボン
ド磁石を成形した場合、6g/cm3以上の高密度(高
い磁気特性)のものを提供できる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明を説明
する。まず、V含有量を変えた場合の実施例1〜3と、
Bを含まない比較例1〜3と、Mを含まない比較例4に
ついて説明する。 (実施例1)純度99.9%のSm、Fe、VおよびB
を用いて表1の実施例1の希土類窒化磁石粉末に対応し
た母合金組成になるように配合し、アルゴンガス雰囲気
の高周波溶解炉で母合金を溶製した。その後、片ロール
の溶湯急冷装置を用いて前記母合金の溶湯を冷却ロール
の周速度5m/秒の条件で急冷凝固し、550μm±4
0μmの板厚の母合金薄帯を作製した。作製した薄帯の
X線回折をCu-Kα線を用いて行ったところ、回折線
は全てSm(Fe,V)7相とFe−V相として指数付
けされた。前記薄帯の任意の断面を研磨後、走査電子顕
微鏡で撮影した写真を図2(a)、その模式図を図2
(b)に示す。図2より、薄帯のミクロ組織は白地のマ
トリックスを構成する(2)Sm(Fe,V)7が主相であ
り全体の50体積%以上を占めていた。黒色の(1)はE
PMA(X線マイクロアナライザー)による組成分析で
はVが約10原子%含まれるFe−V相である。次に、
この薄帯の断面を再研磨後エッチングして結晶粒界を出
して透過型電子顕微鏡で断面写真を撮影し、切断法によ
り評価したFe-V相の平均結晶粒径は0.16μmだっ
た。なお、本発明の切断法による平均結晶粒径は、撮影
した断面写真の任意方向に所定長さの直線を引き、その
直線上に存在する測定対象の30個の結晶粒の占める分
の直線の長さを(1/30)して求めた。次に、前記薄
帯を1atmの水素ガス中に750℃×1時間加熱保持
する水素化・分解反応処理を行った後、続いて水素分圧
(真空中)5〜8×10-2Torrで750℃×1時間
保持する脱水素・再結合反応処理を行った。その後ジョ
ークラッシャーとディスクミルを用いて平均粉末粒径2
0〜500μmに粉砕した。平均粉末粒径の測定にはSy
mpatec社製レーザー回折型粒度分布測定装置:HERO
S&RODOSシステムを用いた。次に前記粉体を1a
tmの窒素ガス中に450℃×10時間保持するガス窒
化処理を行い冷却した。続いてArガス気流中で440
℃×5時間熱処理を施して本発明の希土類磁石材料を得
た。得られた希土類窒化磁石の粉末から任意にサンプリ
ングしてその断面を研磨後、走査電子顕微鏡で撮影した
写真を図7(a)、その模式図を図7(b)に示す。図
7より、断面組織は白地のマトリックスを構成する(12)
Sm(Fe,V)7X(x=2〜5)が主相であり全体
の50体積%以上を占めていた。黒色の(11)は原子%表
示でFe9010相である。この薄片を100nm程度の
厚さまで加工し透過型電子顕微鏡でその断面写真を撮影
した。得られた断面写真から前記の切断法により求めた
Sm(Fe,V)7X相の平均結晶粒径(dh)、Fe
9010相の平均結晶粒径(ds)の測定結果を表1に示
す。また、得られた希土類窒化磁石粉末の組成、25℃
における残留磁化(σr)、保磁力(iHc)、角型を
示す(Hk)およびスプリンバック率(S)の測定結果
を表1に示す。25℃におけるσr、iHc、Hkおよ
びSは振動試料型磁力計(東英工業(株)製のVSM−
3型)の銅容器に前記希土類窒化磁石の粉末とワックス
とを所定比率で混ぜて充填後、ワックスを一旦溶かした
後固化して磁石粉末を結着した状態で、振動試料型磁力
計にセットし得られたσ−H曲線により評価した。図1
に本発明の代表的なσ−H曲線を示す。Hkは第2象限
の減磁曲線上においてσrの70%に相当するσ(磁
化)に対応したH(磁界の強さ)の絶対値である。なお
以降の各実施例、各比較例の評価は全て実施例1と同条
件で行った。
【0021】(実施例2)表1に示すように、V含有
量、窒素含有量を変えた以外は実施例1と同様にして本
発明の希土類窒化磁石粉末を得た。この希土類窒化磁石
粉末の中間生成物である急冷凝固後の薄帯の断面を実施
例1と同様にして撮影した写真を図3(a)にその模式
図を図3(b)に示す。図3において、白地のマトリッ
クスを構成する(4)Sm(Fe,V)7が主相であり全体
の50体積%以上を占めていた。黒色の(3)は原子%表
示でFe9010相である。また、実施例1と同様にして
Fe9010相の平均結晶粒径を評価したところ、0.2
2μmだった。また、得られた希土類窒化磁石の粉末か
ら任意にサンプリングしてその断面組織を実施例1と同
様にして撮影した写真を図8(a)に、その模式図を図
8(b)に示す。図8より、断面のミクロ組織は白地の
マトリックスを構成する(14)Sm(Fe,V)7X(x
=3.2)が主相であり全体の50体積%以上を占めて
いた。黒色の(13)は原子%表示でFe9010相である。
さらに、実施例1と同様にして評価したSm(Fe,
V)7X相の平均結晶粒径(dh)、Fe9010相の平
均結晶粒径(ds)を表1に示す。また、実施例1と同
様にして評価した磁気特性を表1に示す。
【0022】(実施例3)表1に示すように、V含有
量、窒素含有量を変えた以外は実施例1と同様にして本
発明の希土類窒化磁石粉末を得た。この希土類窒化磁石
粉末の中間生成物である急冷凝固後の薄帯の走査電子顕
微鏡写真を実施例1と同様にして撮影した写真を図4
(a)に、その模式図を図4(b)に示す。図4におい
て、白地のマトリックスを構成する(6)Sm(Fe,
V)7が主相であり全体の50体積%以上を占めてい
た。黒色の(5)は原子%表示でFe5050相である。さ
らに、実施例1と同様にしてFe5050相の平均結晶粒
径を評価したところ、0.33μmだった。また、得ら
れた希土類窒化磁石の粉末の断面を実施例1と同様にし
て撮影した写真を図9(a)に、その模式図を図9
(b)に示す。図9より、断面のミクロ組織は白地のマ
トリックスを構成する(16)Sm(Fe,V)7X(x=
3.5)が主相であり全体の50体積%以上を占めてい
た。黒色の(15)は原子%表示でFe5050相である。さ
らに、実施例1と同様にして評価したSm(Fe,V)
7X相の平均結晶粒径(dh)、Fe5050相の平均結
晶粒径(ds)を表1に示す。また、実施例1と同様に
して評価した磁気特性を表1に示す。
【0023】(比較例1〜4)Vは含むがBを含まない
比較例1〜3およびBは含むがVを含まない比較例4の
組成とした以外は実施例1と同様にして希土類窒化磁石
粉末を作製し評価した結果を表1に示す。また、比較例
1の急冷凝固薄帯の断面写真を図5に、比較例1の窒化
処理後のものの断面写真を図6に示す。図5、図6よ
り、比較例1の薄帯にはFeを含む軟磁性相は生成しな
かった。この現象は比較例2、3でも同様だった。比較
例4の場合は急冷凝固後および窒化後のもののいずれに
もTbCu7型の結晶相とともに平均結晶粒径が約30
μmの粗大なFe-V相が生成した。実施例1と同様に
してこれら比較例のものを評価した結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】表1の実施例1〜3より、Bを添加した効
果が明らかである。急冷凝固した薄帯にはFeを30%
以上含む軟質磁性相が生成したが、この軟質磁性相はH
DDR処理、窒化処理後もほぼ同じ結晶粒径で存在する
ことを確認した。また、V含有量の増加とともに硬質磁
性相と軟質磁性相の平均結晶粒径が微増し、iHcが微
減する傾向を示した。Vを含むがBを含まない比較例1
〜3ではFeを含む軟質磁性相は生成しなかった。Bを
含むがVを含まない比較例4では平均結晶粒径で約30
μmのFeを含む軟質磁性相が生成した。これら比較例
のものは実施例のものに比べて磁気特性が劣っていた。
スプリングバック率(S)も10%以下であり磁気的な
相互作用がないことが推察される。
【0026】(実施例4〜6)B量と磁気特性の相関を
見るために、表2に示す希土類窒化磁石粉末の組成にす
るとともに粉末の平均粒径を60μmとした以外は実施
例1と同様な操作によって希土類窒化磁石材料を作製
し、評価した。結果を表2に示す。実施例4〜6のいず
れも、急冷凝固した薄帯のCu-Kα線によるX線回折
線はTbCu7型結晶相とFe−V相として指数付けら
れることを確認した。
【0027】(比較例5〜6)B含有量が0.1原子%
未満または5原子%より多い組成とした以外は実施例1
と同様にして表2の希土類窒化磁石粉末を作製し評価し
た。結果を表2に示す。Bが0.1原子%未満の比較例
5の場合はTh2Zn17型のSm2(Fe,V)1 7Ny相
(y=2.8)のみが生成し、軟質磁性相は生成しなか
った。Bが5原子%より多い比較例6の場合はTbCu
7型のSm(Fe,V)7Nx相(x=3.8)とTh2
17型のSm2(Fe,V)17Ny相(y=2.9)の硬
質磁性相と、平均結晶粒径30μmの粗大なFe-V相
が生成した。
【0028】
【表2】
【0029】表2から、B量を0.1〜5原子%の範囲
にすることによりiHc、Hkが高く、Sを20%以上
とできることがわかる。また、比較例5〜6より、Bが
0.1原子%未満または5原子%を越えるとiHc、H
k、Sが低下した。
【0030】(実施例7〜21)次に、R成分の含有量
と種類を変化させた場合、窒素含有量を変化させた場
合、Feの一部をCoで置換した場合、M元素の種類と
含有量を変化させた場合の検討結果を説明する。表3に
示す実施例7〜21の希土類窒化磁石粉末の組成にする
とともに、各希土類窒化磁石粉末に対応した組成の各母
合金溶湯を各々溶湯急冷法の冷却ロールの周速0.05
〜25m/秒の急冷速度範囲内で凝固して各母合金薄帯
を作製し、以降は実施例1と同様にして希土類窒化磁石
粉末を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】(比較例7〜13)表4に示すように、S
m含有量が少ない比較例7および過多の比較例8、Rに
占めるSm比率が低い比較例9、窒素含有量の少ない比
較例10および過多の比較例11、Co置換量過多の比
較例12、M含有量過多の比較例13の組成とした以外
は実施例1と同様にして希土類窒化磁石粉末を作製し評
価した。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】表3、表4よりR成分中のSm比率が50
原子%以上でかつR成分が5〜11原子%であり、さら
に窒素が4〜30原子%で、適量範囲のB元素とM元素
とを含有したときに高いiHc、Hk、スプリングバッ
ク率(S)が得られた。また、0.01〜30原子%の
Coを含有したときにiHcの温度係数、キュリー温度
が改善された。また、実施例15〜21より、M元素と
してVと、Ti、Mn、Cr、Zrのいずれかを含有し
た場合に高いiHc、Hk、スプリングバック率(S)
が得られた。これに対し、比較例7では粗大な軟質磁性
相が生成して磁気特性が低下した。比較例8では粗大な
硬質磁性相と軟質磁性相が生成した。比較例10、11
より窒素含有量が4〜30原子%を外れると磁気特性が
顕著に劣化することがわかった。比較例12、13よ
り、Co量が過多またはM元素が過多のときにiHc、
Hk、スプリングバック率(S)が低下した。
【0035】(実施例22〜25)窒化処理後の組成が
Sm9.4FebalV4.5B2.0N12.5(原子%)になるよう
に調整されたSm-Fe-V-B系母合金の溶湯を溶湯急
冷装置の冷却ロールの周速を0.05〜25m/秒の急
冷速度の範囲内で変えて急冷凝固し、薄帯を得た。得ら
れた薄帯の各急冷凝固条件毎に各々任意の10片をサン
プリングして測定した板厚および平均結晶粒径(この値
は窒化後に硬質磁性相となる部分を対象に測定した値)
を表5に示す。次に、得られた薄帯を以降は実施例1と
同様にして処理し、本発明の希土類窒化磁石粉末を得
た。得られた希土類窒化磁石の粉末は平均粉末粒径(d
p)が50〜60μmのものであり、2wt%のエポキ
シ樹脂と混合した後、10kOeの磁場中でプレス圧1
0ton/cm2で圧縮成形し、さらに硬化のため14
0℃×1時間の熱処理を施して等方性ボンド磁石を作製
した。得られた等方性ボンド磁石の密度(ρ)および最
大エネルギー積(BH)maxを表5に示す。
【0036】(比較例15)冷却ロールの周速を30m
/秒を越えた条件とした以外は実施例22〜25と同様
にして希土類窒化磁石粉末を作製し、評価した。結果を
表5に示す。
【0037】
【表5】
【0038】表5より、得られた急冷薄帯の硬質磁性相
となる部分の平均結晶粒径が9〜20μmのものを用い
て本発明の希土類窒化磁石粉末を作製し、前記ボンド磁
石を成形した場合、6.0g/cm3以上の高い密度の
ボンド磁石を実現できた。これに対し、比較例15の急
冷薄帯を用いてなるボンド磁石では密度5.1g/cm
3となった。これは比較例15の場合に比べて実施例2
2〜25の希土類窒化磁石材料粉末の形状が丸みを帯び
ており、比表面積が小さくなっているためである。この
ように、実施例22〜25の平均結晶粒径の急冷薄帯を
用いることによって圧縮性のよい希土類窒化磁石粉末が
得られ、高い磁気特性(密度)の希土類ボンド磁石が得
られた。
【0039】(実施例26〜30)純度99.9%のS
m、Fe、V、Ti、Bを用いて下記の希土類窒化磁石
粉末に対応した母合金組成に配合後、アルゴンガス雰囲
気で、高周波溶解した溶湯を溶湯急冷法により急冷凝固
し、Feを30原子%以上含む軟質磁性相の平均結晶粒
径が0.01〜1.5μmの急冷薄帯を得た。次に、雰
囲気熱処理炉に仕込み1atmの水素ガスを供給すると
ともに500℃まで加熱し水素を吸収させた後真空にす
ることにより脱水素を行う工程を繰り返し平均粉末粒径
100μmまで粗粉砕した。このSm-Fe-B-V-Ti
系母合金粉を表6の条件で水素化・分解反応させる処理
と、それに続けて脱水素・再結合反応処理を行った。水
素化・分解反応処理時の水素ガス圧は1atmとし、脱
水素・再結合反応処理時の水素分圧は5〜7×10-2
orrとした。次いで、雰囲気熱処理炉に仕込み460
℃においてアンモニアガス分圧0.35atm、水素ガ
ス0.65atmの混合気流中で5時間保持する窒化処
理を行った。続いてアルゴンガス気流中で400℃×3
0分間熱処理を行いSm9.2FebalB1.0V4.0Ti2.0
N12.3(原子%)の組成を有した表6の各希土類窒化磁
石粉末を得た。以降は実施例1と同様に評価した主な結
果を表6に示す。
【0040】(比較例19、20)表6の水素化・分解
処理反応条件および脱水素・再結合反応処理条件とした
以外は実施例26〜30と同様にして希土類窒化磁石粉
末を作製し、評価した結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】表6から水素化・分解反応処理を500〜
800℃×1〜8時間とし、さらに脱水素・再結合反応
処理を700〜1200℃×0.1〜2時間とすること
により良好な磁気特性(高いiHc)が得られた。各実
施例の硬質磁性相の平均結晶粒径は0.05〜20μm
の範囲内にあり、かつ軟質磁性相の平均結晶粒径は0.
01〜5μmの範囲内に分布していた。これに対し比較
例19、20のものはiHc等が低く、かつ硬質磁性相
の平均結晶粒径は20μmを越えていた。
【0043】(実施例31〜33、比較例23)次に、
B量、水素化・分解反応の処理温度と磁気特性との相関
についての検討結果を説明する。表7の水素化・分解反
応処理温度および希土類窒化磁石粉末の組成とした以外
は実施例1と同様にして表7の各希土類窒化磁石粉末を
作製し評価した。結果を表7に示す。
【0044】
【表7】
【0045】表7より、比較例23ではTh2Zn17
構造の硬質磁性相のみが生成し、軟質磁性相は生成しな
かった。なお、実施例33よりもB含有量が多い場合は
TbCu7型のSm(Fe,V,Ti)7相とTh2Zn17
型のSm2(Fe,V,Ti)17相と平均結晶粒径30μ
mの粗大なFe-V−Ti相が生成し、窒化処理後の粉
末の磁気特性が低かった。また、表7から水素化・分解
反応処理温度は600〜620℃が特に好ましいことが
わかった。
【0046】(実施例34〜39)次に、希土類窒化磁
石粉末の平均粉末粒径とボンド磁石特性との相関につい
て説明する。平均粉末粒径(dp)を20〜500μm
とし、かつ表8の組成とした本発明の希土類窒化磁石粉
末を作製し、各粉末を2wt%のエポキシ樹脂と混合し
た後、10kOeの磁場中でプレス圧10ton/cm
2で圧縮成形し、続いて硬化のため140℃×1時間の
熱処理を施して等方性ボンド磁石を作製した。得られた
等方性ボンド磁石の密度(ρ)および磁気特性を表8に
示す。
【0047】
【表8】
【0048】表8から本発明の等方性ボンド磁石が高い
充填密度と良好な磁気特性を有していることがわかる。
【0049】不明確な点があるが、本発明の母合金にお
いて窒化後に硬質磁性相になる相および/またはTを3
0原子%以上含む軟質磁性相にBが含有されるようであ
る。また、本発明の希土類磁石材料において、硬質磁性
相および/または軟質磁性相にBが含有されるようであ
る。
【0050】
【発明の効果】(1)上記のR−T−M(MはVを含
む)−B系母合金組成と凝固速度のかなり遅い溶湯急冷
条件とを採用したことにより、ボンド磁石用に好適な、
Tを含む微細な軟質磁性相が分散したボンド磁石用原料
母合金を見出した。 (2)ボンド磁石用に好適な、微細な硬質磁性相と軟質
磁性相とが混在した特長あるミクロ組織の希土類磁石材
料およびその製造方法を見出した。 (3)(2)の希土類磁石材料粉末を用いることによ
り、各種ボンド磁石応用製品の高性能化のニーズに応え
られる希土類ボンド磁石を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の希土類磁石材料のσ−H特性の一例を
示す図である。
【図2】本発明の母合金薄帯の断面を撮影した走査電子
顕微鏡写真の一例(a)およびその模式図(b)であ
る。
【図3】本発明の母合金薄帯の断面を撮影した走査電子
顕微鏡写真の他の例(a)およびその模式図(b)であ
る。
【図4】本発明の母合金薄帯の断面を撮影した走査電子
顕微鏡写真のさらに他の例(a)およびその模式図
(b)である。
【図5】比較例の母合金薄帯の断面を撮影した走査電子
顕微鏡写真である。
【図6】比較例の希土類磁石材料の断面を撮影した走査
電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の希土類磁石材料の断面を撮影した走査
電子顕微鏡写真の一例(a)およびその模式図(b)で
ある。
【図8】本発明の希土類磁石材料の断面を撮影した走査
電子顕微鏡写真の他の例(a)およびその模式図(b)
である。
【図9】本発明の希土類磁石材料の断面を撮影した走査
電子顕微鏡写真のさらに他の例(a)およびその模式図
(b)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩崎 克典 埼玉県熊谷市三ケ尻5200番地日立金属株式 会社磁性材料研究所内 (72)発明者 佐久間 昭正 埼玉県熊谷市三ケ尻5200番地日立金属株式 会社磁性材料研究所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成分組成が原子%でRl100-(l+m+n)
    mn(RはYを含めた希土類元素の1種または2種以上
    でありSmを必ず含む、TはFeまたはFeとCo、M
    はV、Al、Ti、Cr、Mn、Cu、Ga、Zr、N
    b、Mo、Hf、Ta、Wのうちの1種または2種以上
    でありVを必ず含む)、6≦l≦12,1≦m≦15,
    0.15≦n≦5.5で表され、TbCu7型の結晶相
    からなる相と30原子%以上のTを含む軟磁性相とから
    実質的になるとともに、前記30原子%以上のTを含む
    軟質磁性相の平均結晶粒径を0.01〜5μmとしたこ
    とを特徴とする希土類磁石材料用母合金。
  2. 【請求項2】 窒化処理後に成分組成が原子%でR αT
    100-( α+ β+ γ+ δ) βB γN δ(RはYを含めた希土
    類元素の1種または2種以上でありSmを必ず含む、M
    はV、Al、Ti、Cr、Mn、Cu、Ga、Zr、N
    b、Mo、Hf、Ta、Wのうちの1種または2種以上
    でありVを必ず含む)、5≦α≦11,0.5≦β≦1
    4.5,0.1≦γ≦5,4≦δ≦30となるように成
    分調整されたR−T−M−B系母合金溶湯を、溶湯急冷
    法により急冷凝固して、TbCu7型の結晶相からなる
    相と30原子%以上のTを含む軟質磁性相とから実質的
    になるとともに、前記30原子%以上のTを含む軟質磁
    性相の平均結晶粒径を0.01〜5μmとした希土類磁
    石材料用母合金を得、その後必要ならばさらに平均粉末
    粒径20〜500μmに粉砕し、続いて0.1〜10a
    tmの水素ガス中または水素ガス分圧を有した不活性ガ
    ス(窒素ガスを除く)中で500〜800℃×1〜8時
    間保持する水素化・分解反応処理を行い、次に1×10
    -1Torr以下の高真空中に700〜1200℃×0.
    1〜2時間保持する脱水素・再結合反応処理を行った
    後、窒化処理を行うことを特徴とする希土類磁石材料の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 成分組成が原子%でR αT100-( α+ β+
    γ+ δ) βB γN δ(RはYを含めた希土類元素の1種
    または2種以上でありSmを必ず含む、TはFeまたは
    FeとCo、MはV、Al、Ti、Cr、Mn、Cu、
    Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wのうちの1種
    または2種以上でありVを必ず含む)、5≦α≦11,
    0.5≦β≦14.5,0.1≦γ≦5,4≦δ≦30
    で表され、TbCu7型結晶相からなる硬質磁性相と3
    0原子%以上のTを含む軟質磁性相とから実質的になる
    希土類磁石材料であって、前記硬質磁性相の平均結晶粒
    径が0.05〜20μmであり、かつ前記軟質磁性相の
    平均結晶粒径が0.01〜5μmであることを特徴とす
    る希土類磁石材料。
  4. 【請求項4】 前記軟質磁性相よりも前記硬質磁性相の
    平均結晶粒径が大きい請求項3に記載の希土類磁石材
    料。
  5. 【請求項5】 減磁曲線において磁界(H)を保磁力
    (iHc)から0まで戻したときの磁化の値(σ)と残
    留磁化(σr)との比率(σ/σr×100%)をスプ
    リングバック率と定義した場合、スプリングバック率が
    20〜70%である請求項3または4に記載の希土類磁
    石材料。
  6. 【請求項6】 成分組成が原子%でR αT100-( α+ β+
    γ+ δ) βB γN δ(RはYを含めた希土類元素の1種
    または2種以上でありSmを必ず含む、TはFeまたは
    FeとCo、MはV、Al、Ti、Cr、Mn、Cu、
    Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wのうちの1種
    または2種以上でありVを必ず含む)、5≦α≦11,
    0.5≦β≦14.5,0.1≦γ≦5,4≦δ≦30
    で表され、TbCu7型からなる再結晶硬質磁性相と3
    0原子%以上のTを含む再結晶軟質磁性相とから実質的
    になる希土類磁石材料であって、前記再結晶硬質磁性相
    の平均再結晶粒径が0.05〜20μmであり、かつ前
    記再結晶軟質磁性相の平均再結晶粒径が0.01〜5μ
    mであることを特徴とする希土類磁石材料。
  7. 【請求項7】 前記再結晶軟質磁性相よりも前記再結晶
    硬質磁性相の平均再結晶粒径が大きい請求項6に記載の
    希土類磁石材料。
  8. 【請求項8】 減磁曲線において、Hを保磁力(iH
    c)から0まで戻したときの磁化の値(σ)と残留磁化
    (σr)との比率(σ/σr×100%)をスプリング
    バック率と定義した場合、スプリングバック率が20〜
    70%である請求項6または7に記載の希土類磁石材
    料。
  9. 【請求項9】 希土類磁石材料が平均粉末粒径20〜5
    00μmの粉末状である請求項3乃至8のいずれかに記
    載の希土類磁石材料。
  10. 【請求項10】 請求項9の希土類磁石材料の粉末をバ
    インダーで結着した希土類ボンド磁石。
  11. 【請求項11】 請求項9の希土類ボンド磁石が熱硬化
    性樹脂によって結着されており、かつ密度が6g/cm
    3以上である希土類ボンド磁石。
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