JPH11284242A - 圧電性薄膜およびその製造方法 - Google Patents
圧電性薄膜およびその製造方法Info
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- JPH11284242A JPH11284242A JP8644698A JP8644698A JPH11284242A JP H11284242 A JPH11284242 A JP H11284242A JP 8644698 A JP8644698 A JP 8644698A JP 8644698 A JP8644698 A JP 8644698A JP H11284242 A JPH11284242 A JP H11284242A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 下地界面付近の整合層によって圧電性を損な
うことなく、安価で高性能な薄膜圧電素子を容易に実現
できる圧電性薄膜およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 導電性酸化亜鉛薄膜2の上に絶縁性酸化
亜鉛薄膜3を積層したこと。
うことなく、安価で高性能な薄膜圧電素子を容易に実現
できる圧電性薄膜およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 導電性酸化亜鉛薄膜2の上に絶縁性酸化
亜鉛薄膜3を積層したこと。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は圧電性薄膜およびそ
の製造方法に係り、特に、マイクロマシン化されたセン
サやアクチュエータに好適な圧電性薄膜およびその製造
方法に関する。
の製造方法に係り、特に、マイクロマシン化されたセン
サやアクチュエータに好適な圧電性薄膜およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、マイクロマシニング技術を用い
て、小型化、高精度化および低価格化のマイクロセンサ
やマイクロアクチュエータの研究開発が進められてお
り、これに伴って、高性能な圧電性薄膜が要望されてい
る。
て、小型化、高精度化および低価格化のマイクロセンサ
やマイクロアクチュエータの研究開発が進められてお
り、これに伴って、高性能な圧電性薄膜が要望されてい
る。
【0003】圧電性薄膜の材料としては、従来から、主
にチタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛などのペロブスカ
イト構造の材料が研究されている。この材料系は、バル
ク材とした場合には圧電定数が比較的大きいという特長
があるが、薄膜化する場合に以下に示すような問題があ
った。
にチタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛などのペロブスカ
イト構造の材料が研究されている。この材料系は、バル
ク材とした場合には圧電定数が比較的大きいという特長
があるが、薄膜化する場合に以下に示すような問題があ
った。
【0004】第1に、膜の組成制御が難しいという問題
があった。特に、鉛は蒸気圧が高いために成膜中に抜け
やすく、結果的に化学量論組成よりも鉛が少なくなりや
すかった。
があった。特に、鉛は蒸気圧が高いために成膜中に抜け
やすく、結果的に化学量論組成よりも鉛が少なくなりや
すかった。
【0005】第2に、高温プロセスを必要とするという
問題があった。一般に膜の形成温度は、500℃であ
り、成膜後に熱処理する場合も500℃以上である。こ
のため、プロセスが重くなるばかりでなく、圧電素子と
して使用するための電極薄膜は白金等の高温耐性のある
材料を使用しなければならず、高価なデバイスになって
しまった。
問題があった。一般に膜の形成温度は、500℃であ
り、成膜後に熱処理する場合も500℃以上である。こ
のため、プロセスが重くなるばかりでなく、圧電素子と
して使用するための電極薄膜は白金等の高温耐性のある
材料を使用しなければならず、高価なデバイスになって
しまった。
【0006】第3に、形成した膜は、分極軸がランダム
な方向を向いた多結晶なので、この後に分極処理を行わ
なければ、圧電性を示さない。このため、低価格化を阻
む要因となっていた。
な方向を向いた多結晶なので、この後に分極処理を行わ
なければ、圧電性を示さない。このため、低価格化を阻
む要因となっていた。
【0007】第4に、鉛を使用しているため、環境への
悪影響が懸念されていた。
悪影響が懸念されていた。
【0008】一方、ポリフッ化ビニリデンなどの有機高
分子材料も薄膜化が研究されているが、この材料系は、
基本的に耐熱性が低いために用途が限定されてしまうと
いう問題があった。
分子材料も薄膜化が研究されているが、この材料系は、
基本的に耐熱性が低いために用途が限定されてしまうと
いう問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のような問題点に
対して、本件の発明者は、センサやアクチュエータに用
いる圧電性薄膜として酸化亜鉛薄膜を採用することを試
みた。酸化亜鉛薄膜は、過去にSAWデバイス用の圧電
性薄膜として研究されていたが、センサやアクチュエー
タへの応用は、材料の圧電定数が比較的小さいために、
ほとんど研究されていなかった。
対して、本件の発明者は、センサやアクチュエータに用
いる圧電性薄膜として酸化亜鉛薄膜を採用することを試
みた。酸化亜鉛薄膜は、過去にSAWデバイス用の圧電
性薄膜として研究されていたが、センサやアクチュエー
タへの応用は、材料の圧電定数が比較的小さいために、
ほとんど研究されていなかった。
【0010】前記酸化亜鉛薄膜の特長は、分極軸が基板
面に垂直になるように配向した多結晶薄膜を低温(常
温)で容易に形成できることである。このことは、薄膜
の圧電性能が、結晶性の良否およびその配向性にかかっ
ている点(Japan.J.Appl.Phys.Su
ppl.2,Pt.1,1974.p737〜p74
0)に鑑みれば、薄膜が結晶化しやすくかつ配向しやす
い酸化亜鉛は、薄膜圧電素子への応用が容易である。
面に垂直になるように配向した多結晶薄膜を低温(常
温)で容易に形成できることである。このことは、薄膜
の圧電性能が、結晶性の良否およびその配向性にかかっ
ている点(Japan.J.Appl.Phys.Su
ppl.2,Pt.1,1974.p737〜p74
0)に鑑みれば、薄膜が結晶化しやすくかつ配向しやす
い酸化亜鉛は、薄膜圧電素子への応用が容易である。
【0011】また、酸化亜鉛薄膜は、成膜後の分極処理
は不要であり、電極材料も安価で加工の容易な金属薄膜
を使用することができることから、安価な薄膜圧電素子
を実現できる。
は不要であり、電極材料も安価で加工の容易な金属薄膜
を使用することができることから、安価な薄膜圧電素子
を実現できる。
【0012】しかし、図10に示すように、単に絶縁性
の酸化亜鉛薄膜3を上部電極9と下部電極8との間に積
層して形成した薄膜圧電素子5では、下部電極8との界
面付近の酸化亜鉛薄膜3の結晶性に問題があった。
の酸化亜鉛薄膜3を上部電極9と下部電極8との間に積
層して形成した薄膜圧電素子5では、下部電極8との界
面付近の酸化亜鉛薄膜3の結晶性に問題があった。
【0013】すなわち、一般に、多結晶薄膜を異種材料
上に堆積させると、下地とのミスフィットのために界面
に非晶質の整合層4が形成される。酸化亜鉛薄膜3にお
いても、下部電極8とのミスフィットが極めて小さい場
合を除いて、下部電極8との界面付近には整合層4が形
成される。この整合層4は、非晶質であるから圧電性を
示さない。したがって、図10に示す構造の薄膜圧電素
子5では、この整合層4が素子5の圧電性能を低下させ
る要因になってしまっていた。
上に堆積させると、下地とのミスフィットのために界面
に非晶質の整合層4が形成される。酸化亜鉛薄膜3にお
いても、下部電極8とのミスフィットが極めて小さい場
合を除いて、下部電極8との界面付近には整合層4が形
成される。この整合層4は、非晶質であるから圧電性を
示さない。したがって、図10に示す構造の薄膜圧電素
子5では、この整合層4が素子5の圧電性能を低下させ
る要因になってしまっていた。
【0014】前記整合層4を発生させないためには、ミ
スフィットの小さい下地材料を選択し、その上に酸化亜
鉛薄膜3をエピタキシャル成長させることが考えられ
る。例えば、金の(111)面は、酸化亜鉛のc面との
ミスフィットが小さいため、下部電極8として用いれ
ば、整合層4の発生を抑制できてエピタキシャルな成長
が実現できる。
スフィットの小さい下地材料を選択し、その上に酸化亜
鉛薄膜3をエピタキシャル成長させることが考えられ
る。例えば、金の(111)面は、酸化亜鉛のc面との
ミスフィットが小さいため、下部電極8として用いれ
ば、整合層4の発生を抑制できてエピタキシャルな成長
が実現できる。
【0015】しかし、金は高価であるとともに、加工が
難しく、下地との密着性も悪いので実用的でない。
難しく、下地との密着性も悪いので実用的でない。
【0016】一方、アルミニウムは、金と結晶型が同じ
で格子定数もほぼ等しいことから、アルミニウムの(1
11)面にも、酸化亜鉛がエピタキシャル成長すること
が期待される。アルミニウムは、安価であり、加工も容
易であるから、エピタキシャル成長が実現できれば好都
合である。
で格子定数もほぼ等しいことから、アルミニウムの(1
11)面にも、酸化亜鉛がエピタキシャル成長すること
が期待される。アルミニウムは、安価であり、加工も容
易であるから、エピタキシャル成長が実現できれば好都
合である。
【0017】しかし、アルミニウム薄膜の表面は、大気
に接触した時点で非晶質の自然酸化膜が形成されてしま
うため、この上に整合層4を発生させずに酸化亜鉛薄膜
3を形成することはできない。
に接触した時点で非晶質の自然酸化膜が形成されてしま
うため、この上に整合層4を発生させずに酸化亜鉛薄膜
3を形成することはできない。
【0018】本発明はこのような問題点に鑑みてなされ
たもので、下地界面付近の整合層によって圧電性を損な
うことなく、安価で高性能な薄膜圧電素子を容易に実現
できる圧電性薄膜およびその製造方法を提供することを
目的とするものである。
たもので、下地界面付近の整合層によって圧電性を損な
うことなく、安価で高性能な薄膜圧電素子を容易に実現
できる圧電性薄膜およびその製造方法を提供することを
目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
本発明に係る請求項1に記載の圧電性薄膜の特徴は、導
電性酸化亜鉛薄膜の上に絶縁性酸化亜鉛薄膜を積層した
点にある。そして、このような構成を採用したことによ
り、整合層を導電性酸化亜鉛薄膜の領域に含ませて実質
的に下部電極の一部として機能させられるため、圧電性
を生じる絶縁性酸化亜鉛薄膜には最下部から結晶性の良
好な膜が積層され、圧電性を損なうこともなく、安価な
下地電極を使用できることから、安価で高性能な薄膜圧
電素子を容易に実現できる。
本発明に係る請求項1に記載の圧電性薄膜の特徴は、導
電性酸化亜鉛薄膜の上に絶縁性酸化亜鉛薄膜を積層した
点にある。そして、このような構成を採用したことによ
り、整合層を導電性酸化亜鉛薄膜の領域に含ませて実質
的に下部電極の一部として機能させられるため、圧電性
を生じる絶縁性酸化亜鉛薄膜には最下部から結晶性の良
好な膜が積層され、圧電性を損なうこともなく、安価な
下地電極を使用できることから、安価で高性能な薄膜圧
電素子を容易に実現できる。
【0020】また、請求項2に記載の圧電性薄膜の特徴
は、請求項1において、導電性酸化亜鉛薄膜を200オ
ングストローム以上の膜厚に形成した点にある。そし
て、このような構成を採用したことにより、絶縁性酸化
亜鉛薄膜が結晶性の著しく劣っている部分と接触するの
を防止できて、圧電性能を確実に向上させることができ
る。
は、請求項1において、導電性酸化亜鉛薄膜を200オ
ングストローム以上の膜厚に形成した点にある。そし
て、このような構成を採用したことにより、絶縁性酸化
亜鉛薄膜が結晶性の著しく劣っている部分と接触するの
を防止できて、圧電性能を確実に向上させることができ
る。
【0021】また、請求項3に記載の圧電性薄膜の製造
方法の特徴は、導電性酸化亜鉛薄膜を不活性雰囲気中ま
たは還元性雰囲気中において形成するとともに、この導
電性酸化亜鉛薄膜の上に絶縁性酸化亜鉛薄膜を酸化雰囲
気中において形成するようにした点にある。そして、こ
のような方法を採用したことにより、導電性と絶縁性の
酸化亜鉛薄膜を分けてそれぞれ容易に形成することがで
きる。
方法の特徴は、導電性酸化亜鉛薄膜を不活性雰囲気中ま
たは還元性雰囲気中において形成するとともに、この導
電性酸化亜鉛薄膜の上に絶縁性酸化亜鉛薄膜を酸化雰囲
気中において形成するようにした点にある。そして、こ
のような方法を採用したことにより、導電性と絶縁性の
酸化亜鉛薄膜を分けてそれぞれ容易に形成することがで
きる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1
乃至図9を参照して説明する。
乃至図9を参照して説明する。
【0023】本件の発明者は、従来の問題点を解決する
ために鋭意研究をした結果、図1に示すように、圧電性
薄膜1として、整合層4(接合層)の厚さよりも厚い導
電性の酸化亜鉛薄膜2を形成するとともに、この導電性
酸化亜鉛薄膜2の上に絶縁性の酸化亜鉛薄膜3を積層す
ることを見出した。このような構成を採用することで、
結晶性の悪い整合層4を導電性酸化亜鉛薄膜2の領域に
含ませて実質的に図4に示す下部電極8の一部として機
能させられるため、圧電性を生じる絶縁性酸化亜鉛薄膜
3には最下部から結晶性の良好な膜が積層されることと
なる。
ために鋭意研究をした結果、図1に示すように、圧電性
薄膜1として、整合層4(接合層)の厚さよりも厚い導
電性の酸化亜鉛薄膜2を形成するとともに、この導電性
酸化亜鉛薄膜2の上に絶縁性の酸化亜鉛薄膜3を積層す
ることを見出した。このような構成を採用することで、
結晶性の悪い整合層4を導電性酸化亜鉛薄膜2の領域に
含ませて実質的に図4に示す下部電極8の一部として機
能させられるため、圧電性を生じる絶縁性酸化亜鉛薄膜
3には最下部から結晶性の良好な膜が積層されることと
なる。
【0024】また、前記導電性酸化亜鉛薄膜2の適正な
厚さを決定するために、酸化亜鉛薄膜2の膜厚と結晶性
の関係について実験した。
厚さを決定するために、酸化亜鉛薄膜2の膜厚と結晶性
の関係について実験した。
【0025】実験方法は、グレーズドアルミナ基板上に
膜厚の異なる酸化亜鉛薄膜2を形成し、これらをX線回
折(粉末法)することにより結晶性の膜厚依存性を評価
した。膜厚は、200、500、1000、1500オ
ングストロームの4水準とした。
膜厚の異なる酸化亜鉛薄膜2を形成し、これらをX線回
折(粉末法)することにより結晶性の膜厚依存性を評価
した。膜厚は、200、500、1000、1500オ
ングストロームの4水準とした。
【0026】図2に示す実験結果より、各試料ともにc
軸配向を示す(002)ピークが認められるが、膜厚が
厚いほどその強度が強くなっている。この傾向は、膜厚
が厚いほど回折に寄与する体積が増加するためである。
軸配向を示す(002)ピークが認められるが、膜厚が
厚いほどその強度が強くなっている。この傾向は、膜厚
が厚いほど回折に寄与する体積が増加するためである。
【0027】そして、前記結果に基づいてより詳細に検
討するため、(002)ピークの面積を算出し、膜厚に
対する関係をプロットした。図3に示すように、酸化亜
鉛薄膜2の膜厚に対して(002)ピーク面積は直線に
ならず、膜厚が薄いものほど曲率の大きな曲線になって
いる。この結果は、酸化亜鉛薄膜2の結晶性が、膜厚に
依存することを示しており、膜厚が厚いほど結晶性が良
く、逆に薄いほど結晶性が劣っていることがわかる。特
に、膜厚が200オングストローム未満の領域での曲率
が大きくなっていることから、この領域の結晶性は非常
に悪く、酸化亜鉛薄膜2の圧電特性を劣化させる要因と
なる。
討するため、(002)ピークの面積を算出し、膜厚に
対する関係をプロットした。図3に示すように、酸化亜
鉛薄膜2の膜厚に対して(002)ピーク面積は直線に
ならず、膜厚が薄いものほど曲率の大きな曲線になって
いる。この結果は、酸化亜鉛薄膜2の結晶性が、膜厚に
依存することを示しており、膜厚が厚いほど結晶性が良
く、逆に薄いほど結晶性が劣っていることがわかる。特
に、膜厚が200オングストローム未満の領域での曲率
が大きくなっていることから、この領域の結晶性は非常
に悪く、酸化亜鉛薄膜2の圧電特性を劣化させる要因と
なる。
【0028】したがって、導電性酸化亜鉛薄膜2の厚さ
は、200オングストローム以上に形成することが好ま
しい。
は、200オングストローム以上に形成することが好ま
しい。
【0029】また、酸化亜鉛薄膜2の膜厚は、厚いほど
結晶性が向上し、圧電性も向上するが、あまりに厚くな
り過ぎると、膜の内部応力による歪や破壊が発生した
り、圧電薄膜の剛性が高くなって屈曲変形が起こりにく
くなることなどの不具合がある。このため、導電性酸化
亜鉛薄膜2の膜厚は、実用性を考慮すると、10マイク
ロメートル以下にすることが好ましい。
結晶性が向上し、圧電性も向上するが、あまりに厚くな
り過ぎると、膜の内部応力による歪や破壊が発生した
り、圧電薄膜の剛性が高くなって屈曲変形が起こりにく
くなることなどの不具合がある。このため、導電性酸化
亜鉛薄膜2の膜厚は、実用性を考慮すると、10マイク
ロメートル以下にすることが好ましい。
【0030】つぎに、本実施形態における圧電性薄膜1
の製造方法について説明する。
の製造方法について説明する。
【0031】本実施形態における圧電性薄膜1の製造方
法は、まず、所望の下地の上にアルゴンなどの不活性雰
囲気中あるいは微量の水素を添加してなる還元性雰囲気
中において酸化亜鉛ターゲットをスパッタリングするこ
とにより、導電性の酸化亜鉛薄膜2を形成する。ここで
いう導電性とは、導電性の下地に膜を積層させたときに
下地と膜表面との導通が充分取れる程度の膜厚方向の電
気伝導度を有していることを意味する。このように導電
性が生じるのは、不活性雰囲気中や還元性雰囲気中で
は、堆積中の薄膜から酸素が抜けるためであると考えら
れる。
法は、まず、所望の下地の上にアルゴンなどの不活性雰
囲気中あるいは微量の水素を添加してなる還元性雰囲気
中において酸化亜鉛ターゲットをスパッタリングするこ
とにより、導電性の酸化亜鉛薄膜2を形成する。ここで
いう導電性とは、導電性の下地に膜を積層させたときに
下地と膜表面との導通が充分取れる程度の膜厚方向の電
気伝導度を有していることを意味する。このように導電
性が生じるのは、不活性雰囲気中や還元性雰囲気中で
は、堆積中の薄膜から酸素が抜けるためであると考えら
れる。
【0032】そして、前記導電性酸化亜鉛薄膜2の上
に、酸化性雰囲気中において酸化亜鉛ターゲットをスパ
ッタリングすることにより、絶縁性の酸化亜鉛薄膜3を
形成する。ここでいう絶縁性とは、通常の四探針式抵抗
測定器では測定できない程度の電気絶縁性を有している
ことを意味し、シート抵抗で10数メガオーム以上の抵
抗値を有するものである。
に、酸化性雰囲気中において酸化亜鉛ターゲットをスパ
ッタリングすることにより、絶縁性の酸化亜鉛薄膜3を
形成する。ここでいう絶縁性とは、通常の四探針式抵抗
測定器では測定できない程度の電気絶縁性を有している
ことを意味し、シート抵抗で10数メガオーム以上の抵
抗値を有するものである。
【0033】つぎに、本発明の実施形態の作用について
説明する。
説明する。
【0034】本実施形態における圧電性薄膜1では、導
電性酸化亜鉛薄膜2の領域に結晶性の悪い整合層4を含
んで下部電極8の一部として機能し、絶縁性酸化亜鉛薄
膜3は、最下部から結晶性の良好な膜が積層され、圧電
性を充分発揮する。
電性酸化亜鉛薄膜2の領域に結晶性の悪い整合層4を含
んで下部電極8の一部として機能し、絶縁性酸化亜鉛薄
膜3は、最下部から結晶性の良好な膜が積層され、圧電
性を充分発揮する。
【0035】また、膜厚が200オングストローム以上
の導電性酸化亜鉛薄膜2であれば、前記絶縁性酸化亜鉛
薄膜3が結晶性の極めて悪い層に接触することがなく、
確実に良好な圧電性能を発揮できる。
の導電性酸化亜鉛薄膜2であれば、前記絶縁性酸化亜鉛
薄膜3が結晶性の極めて悪い層に接触することがなく、
確実に良好な圧電性能を発揮できる。
【0036】つぎに、本実施形態における圧電性薄膜1
を薄膜圧電素子5に応用した場合に、導電性酸化亜鉛薄
膜2の有無の相違による薄膜圧電素子5の特性の違いを
評価する実験を行った。
を薄膜圧電素子5に応用した場合に、導電性酸化亜鉛薄
膜2の有無の相違による薄膜圧電素子5の特性の違いを
評価する実験を行った。
【0037】図4に示すように、実験に用いた薄膜圧電
素子5は、厚さ0.1マイクロメートルの導電性酸化亜
鉛薄膜2上に厚さ0.9マイクロメートルの絶縁性酸化
亜鉛薄膜3を積層させて、これらを厚さ0.5マイクロ
メートルで対向面積1600平方マイクロメートルのア
ルミニウムの下部電極8と上部電極9との間に介設され
た構成となっている。
素子5は、厚さ0.1マイクロメートルの導電性酸化亜
鉛薄膜2上に厚さ0.9マイクロメートルの絶縁性酸化
亜鉛薄膜3を積層させて、これらを厚さ0.5マイクロ
メートルで対向面積1600平方マイクロメートルのア
ルミニウムの下部電極8と上部電極9との間に介設され
た構成となっている。
【0038】一方、比較用の単層構造の薄膜圧電素子5
は、図10に示すような厚さ1.0マイクロメートルの
絶縁性酸化亜鉛薄膜3を前記アルミニウムの下部電極8
と上部電極9との間に介設された構成となっている。
は、図10に示すような厚さ1.0マイクロメートルの
絶縁性酸化亜鉛薄膜3を前記アルミニウムの下部電極8
と上部電極9との間に介設された構成となっている。
【0039】また、評価デバイス10は、図5および図
6に示すように、各薄膜圧電素子5を厚さ10マイクロ
メートル、長さ5000マイクロメートル、幅2000
マイクロメートルのシリコン製カンチレバー11の付け
根部分に固定して形成した。
6に示すように、各薄膜圧電素子5を厚さ10マイクロ
メートル、長さ5000マイクロメートル、幅2000
マイクロメートルのシリコン製カンチレバー11の付け
根部分に固定して形成した。
【0040】この評価デバイス10の作製プロセスは、
まず、厚さ300マイクロメートルのシリコンSi(1
00)単結晶基板の所望の領域に異方性エッチング技術
を利用して、厚さ10マイクロメートルのダイアフラム
を形成する。そして、このダイアフラムの上に下部電極
8、導電性酸化亜鉛薄膜2、絶縁性酸化亜鉛薄膜3およ
び上部電極9を順次スパッタリングおよびエッチングに
より形成し、最後にダイアフラムの所望領域をドライエ
ッチングして貫通させてカンチレバー11を形成する。
まず、厚さ300マイクロメートルのシリコンSi(1
00)単結晶基板の所望の領域に異方性エッチング技術
を利用して、厚さ10マイクロメートルのダイアフラム
を形成する。そして、このダイアフラムの上に下部電極
8、導電性酸化亜鉛薄膜2、絶縁性酸化亜鉛薄膜3およ
び上部電極9を順次スパッタリングおよびエッチングに
より形成し、最後にダイアフラムの所望領域をドライエ
ッチングして貫通させてカンチレバー11を形成する。
【0041】前記酸化亜鉛薄膜2,3の成膜方法は、タ
ーゲットとして直径5インチの酸化亜鉛焼結体を用い、
マグネトロンRFスパッタリングを行った。また、成膜
条件は、基板加熱は特に行わず、RFパワーは500ワ
ット(W)、プロセスガスの圧力は0.6パスカル(P
a)とし、スパッタリングガスの雰囲気は、導電性酸化
亜鉛薄膜2の場合にはアルゴン100%雰囲気、絶縁性
酸化亜鉛薄膜3の場合にはアルゴン90%で酸素10%
の雰囲気とした。
ーゲットとして直径5インチの酸化亜鉛焼結体を用い、
マグネトロンRFスパッタリングを行った。また、成膜
条件は、基板加熱は特に行わず、RFパワーは500ワ
ット(W)、プロセスガスの圧力は0.6パスカル(P
a)とし、スパッタリングガスの雰囲気は、導電性酸化
亜鉛薄膜2の場合にはアルゴン100%雰囲気、絶縁性
酸化亜鉛薄膜3の場合にはアルゴン90%で酸素10%
の雰囲気とした。
【0042】そして、デバイスの評価は、圧電効果と逆
圧電効果の2通りの方法について行った。圧電効果と
は、圧電体が外力で歪むことにより内部に電界(電圧)
が発生する効果をいう。また、逆圧電効果とは、圧電体
に電界を印加することにより圧電体が歪むことをいう。
圧電効果の2通りの方法について行った。圧電効果と
は、圧電体が外力で歪むことにより内部に電界(電圧)
が発生する効果をいう。また、逆圧電効果とは、圧電体
に電界を印加することにより圧電体が歪むことをいう。
【0043】前記圧電効果を評価するために、図7に示
すように、加振器12を使って評価デバイス10全体を
上下方向にカンチレバー11の共振周波数で振動させ
た。この際、加振器12のパワーを調整してカンチレバ
ー11の先端の振幅が30マイクロメートルになるよう
にした。このときに、薄膜圧電素子5の上部電極9と下
部電極8との間に発生する電圧をオシロスコープ13で
測定した。
すように、加振器12を使って評価デバイス10全体を
上下方向にカンチレバー11の共振周波数で振動させ
た。この際、加振器12のパワーを調整してカンチレバ
ー11の先端の振幅が30マイクロメートルになるよう
にした。このときに、薄膜圧電素子5の上部電極9と下
部電極8との間に発生する電圧をオシロスコープ13で
測定した。
【0044】また、前記逆圧電効果を評価するために、
図8に示すように、上部電極9と下部電極8との間に振
幅1ボルト(V)であって、カンチレバー11の共振周
波数の正弦波交流を印加して、カンチレバー11の先端
の変位量をレーザー変位計14によって測定した。
図8に示すように、上部電極9と下部電極8との間に振
幅1ボルト(V)であって、カンチレバー11の共振周
波数の正弦波交流を印加して、カンチレバー11の先端
の変位量をレーザー変位計14によって測定した。
【0045】圧電効果および逆圧電効果の測定は、それ
ぞれ数サンプルを作製して行った。この結果を図9に示
す。ただし、1層構造の薄膜圧電素子5に関しては、圧
電効果の結果を参照したところ、逆圧電効果の出力はほ
とんど認められないと予測されたため逆圧電効果の測定
は行わなかった。
ぞれ数サンプルを作製して行った。この結果を図9に示
す。ただし、1層構造の薄膜圧電素子5に関しては、圧
電効果の結果を参照したところ、逆圧電効果の出力はほ
とんど認められないと予測されたため逆圧電効果の測定
は行わなかった。
【0046】圧電効果については、図9に示すように、
各サンプル間にばらつきは存在するものの、1層構造の
薄膜圧電素子5は、出力が認められなかったり、認めら
れてもごくわずかであるか0.03ミリボルトであった
のに対して、2層構造の薄膜圧電素子5は、1つの試料
のみ出力が認められなかっただけで、他の試料は0.2
〜0.5ミリボルトの出力が確認された。
各サンプル間にばらつきは存在するものの、1層構造の
薄膜圧電素子5は、出力が認められなかったり、認めら
れてもごくわずかであるか0.03ミリボルトであった
のに対して、2層構造の薄膜圧電素子5は、1つの試料
のみ出力が認められなかっただけで、他の試料は0.2
〜0.5ミリボルトの出力が確認された。
【0047】また、逆圧電効果については、2層構造の
薄膜圧電素子5がそれぞれ0.5、5、10、15マイ
クロメートルの測定値が確認された。したがって、全体
として2層構造の方が大きな出力が得られ、圧電効果お
よび逆圧電効果が大きいことが確認された。
薄膜圧電素子5がそれぞれ0.5、5、10、15マイ
クロメートルの測定値が確認された。したがって、全体
として2層構造の方が大きな出力が得られ、圧電効果お
よび逆圧電効果が大きいことが確認された。
【0048】したがって、本発明の実施形態によれば、
絶縁性酸化亜鉛薄膜3が、導電性酸化亜鉛薄膜2の下地
界面付近の整合層4によって圧電性を損なうことなく、
良好な圧電特性を発揮することができる。
絶縁性酸化亜鉛薄膜3が、導電性酸化亜鉛薄膜2の下地
界面付近の整合層4によって圧電性を損なうことなく、
良好な圧電特性を発揮することができる。
【0049】また、アルミニウムなどの安価な電極を使
用することができるので、安価で高性能な薄膜圧電素子
5を容易に実現できる。
用することができるので、安価で高性能な薄膜圧電素子
5を容易に実現できる。
【0050】なお、本発明は前記実施の形態のものに限
定されるものではなく、必要に応じて種々変更すること
が可能である。
定されるものではなく、必要に応じて種々変更すること
が可能である。
【0051】たとえば、本実施形態の圧電性薄膜1の製
造方法において、酸化亜鉛薄膜2,3の形成はスパッタ
リングにより行っているが、導電性および絶縁性の酸化
亜鉛薄膜2,3を形成できる限り、蒸着法やイオンプレ
ーティング法などの他の薄膜形成方法を使用してもよ
い。
造方法において、酸化亜鉛薄膜2,3の形成はスパッタ
リングにより行っているが、導電性および絶縁性の酸化
亜鉛薄膜2,3を形成できる限り、蒸着法やイオンプレ
ーティング法などの他の薄膜形成方法を使用してもよ
い。
【0052】
【発明の効果】以上述べたように本発明に係る請求項1
に記載の圧電性薄膜によれば、整合層を導電性酸化亜鉛
薄膜の領域に含ませて実質的に下部電極の一部として機
能させられるため、圧電性を生じる絶縁性酸化亜鉛薄膜
には最下部から結晶性の良好な膜が積層され、圧電性を
損なうこともなく、安価な下地電極を使用できることか
ら、安価で高性能な薄膜圧電素子を容易に実現できる。
に記載の圧電性薄膜によれば、整合層を導電性酸化亜鉛
薄膜の領域に含ませて実質的に下部電極の一部として機
能させられるため、圧電性を生じる絶縁性酸化亜鉛薄膜
には最下部から結晶性の良好な膜が積層され、圧電性を
損なうこともなく、安価な下地電極を使用できることか
ら、安価で高性能な薄膜圧電素子を容易に実現できる。
【0053】また、請求項2に記載の圧電性薄膜によれ
ば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、圧電性を有
する絶縁性酸化亜鉛薄膜が結晶性の著しく劣っている部
分と接触するのを防止できて、圧電性能を確実に向上さ
せることができる。
ば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、圧電性を有
する絶縁性酸化亜鉛薄膜が結晶性の著しく劣っている部
分と接触するのを防止できて、圧電性能を確実に向上さ
せることができる。
【0054】また、請求項3に記載の圧電性薄膜の製造
方法によれば、導電性と絶縁性の酸化亜鉛薄膜を分けて
それぞれ容易に形成することができる。
方法によれば、導電性と絶縁性の酸化亜鉛薄膜を分けて
それぞれ容易に形成することができる。
【図1】 本発明に係る圧電性薄膜の実施形態を示す側
面断面図
面断面図
【図2】 膜厚の異なる酸化亜鉛薄膜のX線回折結果を
示す図
示す図
【図3】 酸化亜鉛薄膜の膜厚に対する(002)ピー
ク面積の関係を示すグラフ
ク面積の関係を示すグラフ
【図4】 本発明に係る圧電性薄膜の実施形態を利用し
た薄膜圧電素子を示す断面側面図
た薄膜圧電素子を示す断面側面図
【図5】 図4に示す薄膜圧電素子を評価する評価デバ
イスの平面図
イスの平面図
【図6】 図5の矢印6−6における断面図
【図7】 図4に示す薄膜圧電素子の圧電効果を測定す
る装置の概略図
る装置の概略図
【図8】 図4に示す薄膜圧電素子の逆圧電効果を測定
する装置の概略図
する装置の概略図
【図9】 図4に示す薄膜圧電素子および比較試料の圧
電効果および逆圧電効果の結果を示す表
電効果および逆圧電効果の結果を示す表
【図10】 酸化亜鉛薄膜が1層構造の薄膜圧電素子を
示す断面側面図
示す断面側面図
1 圧電性薄膜 2 導電性酸化亜鉛薄膜 3 絶縁性酸化亜鉛薄膜 4 整合層 5 薄膜圧電素子 8 下部電極 9 上部電極
Claims (3)
- 【請求項1】 導電性酸化亜鉛薄膜の上に絶縁性酸化亜
鉛薄膜を積層したことを特徴とする圧電性薄膜。 - 【請求項2】 前記導電性酸化亜鉛薄膜を200オング
ストローム以上の膜厚に形成したことを特徴とする請求
項1に記載の圧電性薄膜。 - 【請求項3】 導電性酸化亜鉛薄膜を不活性雰囲気中ま
たは還元性雰囲気中において形成するとともに、この導
電性酸化亜鉛薄膜の上に絶縁性酸化亜鉛薄膜を酸化雰囲
気中において形成するようにしたことを特徴とする圧電
性薄膜の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8644698A JPH11284242A (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 圧電性薄膜およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8644698A JPH11284242A (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 圧電性薄膜およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11284242A true JPH11284242A (ja) | 1999-10-15 |
Family
ID=13887161
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8644698A Withdrawn JPH11284242A (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 圧電性薄膜およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11284242A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6987349B2 (en) | 2001-09-28 | 2006-01-17 | Seiko Epson Corporation | Piezoelectric thin film element, manufacturing method thereof, and liquid ejecting head and liquid ejecting apparatus employing same |
US7254877B2 (en) | 2001-02-09 | 2007-08-14 | Seiko Epson Corporation | Method for the manufacture of a piezoelectric element |
-
1998
- 1998-03-31 JP JP8644698A patent/JPH11284242A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7254877B2 (en) | 2001-02-09 | 2007-08-14 | Seiko Epson Corporation | Method for the manufacture of a piezoelectric element |
US6987349B2 (en) | 2001-09-28 | 2006-01-17 | Seiko Epson Corporation | Piezoelectric thin film element, manufacturing method thereof, and liquid ejecting head and liquid ejecting apparatus employing same |
US7089636B2 (en) | 2001-09-28 | 2006-08-15 | Seiko Epson Corporation | Method of manufacturing a piezoelectric thin film element |
US7475461B2 (en) | 2001-09-28 | 2009-01-13 | Seiko Epson Corporation | Method and manufacturing a piezoelectric thin film element |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20050607 |