JPH11278377A - 船舶における推進装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】プロペラ翼を取り付けるボス部による翼面積の
低下を防止して推進効率の低下を防止する船舶の推進装
置を提供する。 【解決手段】船体船尾部２ａに、鉛直軸心回りで筒状体
１２を回転自在に支持するとともに、この筒状体１２
に、内側空間部１３ａを有するノズル部材１３を取り付
け、このノズル部材１３内に形成された環状空間室内１
４に、その内側空間部の外周に沿って、環状の第１回転
体１６Ａおよび第２回転体１６Ｂをそれぞれ軸受部材１
５を介して回転自在に配置し、上記各回転体１６Ａ，１
６Ｂの内周面に、その回転中心に向かってプロペラ翼１
７Ａ，１７Ｂを４枚づつ放射状に取り付け、船体２内
に、筒状体１２を回転させる第１回転駆動装置１８を設
けるとともに、両回転体をそれぞれの外周に形成された
リング状ギヤ４２Ａ，４２Ｂおよび動力伝達機構１９を
介して互いに逆方向に回転させる第２回転駆動装置２０
を設けたもの。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、船舶における推進
装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、船舶に設けられる推進装置は、図
１４に示すように、船体の底部膨出部１０１から回転自
在に突出されたプロペラ軸１０２の先端部に、ボス部１
０３を介して、複数枚のプロペラ翼１０４が放射状に取
り付けられたものであった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
推進装置によると、ボス部１０３の外径が、プロペラ翼
１０４の外周径に対して占める割合が３０％もあり、こ
のため、翼面積（展開面積）の占める割合が減少し、揚
力の減少に伴う推進効率の低下を招くとともに、ボス部
１０３から渦が発生し、さらなる推進効率の低下を招く
という問題があった。

【０００４】そこで、本発明は、プロペラ翼を取り付け
るボス部によるプロペラ翼の有効面積の低下を防止し得
るとともに推進効率の低下を防止し得る船舶における推
進装置を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の船舶における推進装置は、船体船尾部に、
鉛直軸心回りで筒状体を回転自在に支持するとともに、
この筒状体に、内側空間部を有するノズル部材を取り付
け、このノズル部材内に形成された環状空間室内に、そ
の内側空間部の外周に沿って、環状の第１回転体および
第２回転体をそれぞれ軸受部材を介して回転自在に配置
し、上記各回転体の内周面に、その回転中心に向かって
プロペラ翼を所定間隔置きに複数枚放射状に取り付け、
船体内に、上記筒状体を回転させる第１回転駆動装置を
設けるとともに、上記両回転体をそれぞれの外周に形成
されたギヤおよび動力伝達機構を介して互いに逆方向に
回転させる第２回転駆動装置を設けたものである。

【０００６】上記構成によると、ノズル部材に回転自在
に設けられた環状の回転体の内周面に、プロペラ翼をそ
の回転中心に向かって突出するように設けたので、ボス
部を介してプロペラ翼が設けられるものに比べて、翼面
積を広くすることができるため、推進効率が向上する。
また、プロペラ翼が設けられた筒状体を回転させること
により、船舶の進路を変更させるようにしたので、単
に、プロペラ翼の後方に配置された舵板を揺動させる場
合に比べて、推進効率の向上が図られる。さらに、前後
にプロペラ翼を配置するとともに互いに逆方向に回転さ
せるようにしたので、プロペラ後流の回転エネルギーを
回収することができる。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態におけ
る船舶における推進装置を、図１〜図８に基づき説明す
る。

【０００８】本発明に係る推進装置はボス部ではなく、
ノズル部材に回転自在に設けられた回転体によりプロペ
ラ翼を回転させるようにしたものであり、またノズル部
材の方向を変化させることにより舵の機能をも有せし
め、さらに二重反転プロペラの機構を具備させたもので
ある。

【０００９】すなわち、図１〜図５に示すように、この
推進装置１は、船体２の船尾部２ａの底壁部３を貫通し
て垂下されるとともに旋回軸受１１を介して鉛直軸心回
りで回転自在に支持された筒状体１２と、この筒状体１
２の下端部に連結保持されて内側空間部１３ａを有する
とともに所定長さ（前後方向での長さ）でかつ正面視が
円形状（環状）にされたノズル部材１３と、このノズル
部材１３内の前後位置に形成された第１および第２環状
空間室１４（１４Ａ，１４Ｂ）内に複数個（例えば、６
０度置きに６個）の軸受部材１５を介してそれぞれ回転
自在に配置された円環状の第１および第２回転体１６
（１６Ａ，１６Ｂ）と、これら各回転体１６の内周面で
かつ所定角度置き、例えば９０度置きの位置から、その
回転軸心（通常の船舶の場合には、プロペラ軸心に相当
する）に向けて突出するようにそれぞれ４枚（４枚に限
定されるものではなく、２〜３枚、５枚以上でもよい）
づつ設けられた半長円形状の第１および第２プロペラ翼
１７（１７Ａ，１７Ｂ）と、上記筒状体１２を回転（揺
動）させる第１回転駆動装置１８と、上記各回転体１６
を動力伝達機構１９を介して回転互いに逆方向に回転さ
せる第２回転駆動装置２０とから構成されている。勿
論、上記両プロペラ翼１７Ａ，１７Ｂの取付け方向（捩
り方向）は、互いに逆方向にされている。また、上記ノ
ズル部材１３の内周面には、プロペラ翼１７の根元部が
挿通し得る溝部１３ｂが前後位置で形成されるととも
に、各プロペラ翼１７Ａ，１７Ｂはノズル部材１３の内
側に形成された内側空間部１３ａ内に位置している。な
お、ノズル部材１３の後縁部内には、必要に応じて、整
流用のフィン２１が取り付けられている。

【００１０】第１回転駆動装置１８は、船尾部２ａ内に
ブラケット３１を介して設けられた第１回転駆動機（例
えば電動機が使用される）３２と、筒状体１２の外周面
に設けられた揺動用リング状ギヤ３３に噛合されるとと
もに第１回転駆動機３２の出力軸部に取り付けられた揺
動用駆動ギヤ３４とから構成されている。

【００１１】また、第２回転駆動装置２０は、筒状体１
２の下部内にそれぞれ水平支持軸体４１を介して回転自
在に設けらるとともに各回転体１６Ａ，１６Ｂの外周面
に形成された第１および第２推進用リング状ギヤ４２
（４２Ａ，４２Ｂ）に噛合される中間歯車４３と、筒状
体１２の上部内に水平支持板１２ｂにそれぞれ鉛直軸心
回りで回転自在に支持された鉛直回転軸体４４と、これ
ら各鉛直回転軸体４４の下端部に取り付けられるととも
にそれぞれ上記中間歯車４３に噛合する第１および第２
推進用駆動ギヤ４５（４５Ａ，４５Ｂ）と、上記各鉛直
回転軸体４４の上端部に取り付けられるとともに反転用
歯車４６を介して互いに連動された第１および第２連動
用歯車４７（４７Ａ，４７Ｂ）と、これら連動用歯車４
７の一方にすなわち一方の鉛直回転軸体４４にその出力
軸４８ａが連結された第２回転駆動機（例えば、電動機
または内燃機関が使用される）４８とから構成されてい
る。なお、上記各ギヤ４２，４３および４５は、かさ歯
車が使用されている。

【００１２】したがって、上記第２回転駆動機４８を駆
動すると、推進用駆動ギヤ４５が取り付けられた両鉛直
回転軸体４４は、反転用歯車４６および連動用歯車４７
により互いに逆方向に回転し、両回転体１６Ａ，１６Ｂ
すなわち前後のプロペラ翼１７Ａ，１７Ｂは、互いに逆
方向に回転する。

【００１３】また、第１回転駆動機３２を駆動させるこ
とにより、筒状体１２を介してノズル部材１３を鉛直軸
心回りで揺動させて、推進方向を制御することができ
る、すなわち操舵機能を発揮させることができる。

【００１４】また、上記各軸受部材１５は、ノズル部材
１３の各環状空間室１４Ａ，１４Ｂ内に配置された仕切
板５１に支持された支持軸体５２と、この支持軸体５２
の中間部に回転自在に支持されるとともに上記各回転体
１６の外側面に形成された溝部１６ａに係合案内される
支持ローラ５３とから構成されており、各プロペラ翼１
７の回転により回転体１６に作用する主としてスラスト
力を受けるようにされている。勿論、ラジアル方向の力
も支持するものである。なお、上記支持軸体５２を仕切
板５１側に回転自在に支持させるようにしてもよい。

【００１５】また、図５に示すように、上記ノズル部材
１３の断面形状は翼形状にされており、このような翼形
状とすることにより、船首方向の力であるスラスト力Ｔ
が発生する。図５において、水流Ｗにより発生する揚力
をＬ、抗力をＤとすると、これらの合力Ｎの内、前方へ
の分力Ｔがスラスト力として作用する。すなわち、プロ
ペラ翼１７による推進力に加えて、ノズル部材１３を翼
形状とすることにより発生するスラスト力が加算され、
したがって船舶における推進効率が向上する。

【００１６】さらに、図６および図７に示すように、上
記プロペラ翼１７は、半長円形状すなわち長方形の端部
が半円状に形成された翼本体部１７ａと、回転体１６へ
の円形の取付板部１７ｂとから構成されるとともに、そ
の翼本体部１７ａの断面形状はエローフォイル型にされ
ており、効率良く推進力を出せるようにされている。

【００１７】また、上記ノズル部材１３の内周部と回転
体１６の側面との間、および船体２と筒状体１２の外面
との間には、シール部材５４および５５がそれぞれ設け
られて、ノズル部材１３の環状空間室１４内、および船
体２内に海水が入らないようにされている。例えば、ノ
ズル部材１３側のシール部材５４は、環状空間室１４の
内壁部に沿って設けられた環状板材５６に形成された環
状溝（図示せず）内に挿入されたリング状シール材５７
と、同じくこの環状溝内にかつ複数箇所で挿入されて上
記リング状シール材５７を、回転体１６側に付勢する複
数個のばね材（図示せず）とから構成されている。な
お、筒状体１２側のシール部材５５の構成についても、
上記ノズル部材１３側のシール部材５４と同一の構成と
されている。

【００１８】上記構成において、船舶を推進させる場
合、第２回転駆動機４８の駆動により、両回転体１６を
互いに逆方向に回転させて４枚のプロペラ翼１７を回転
させれば、推進力が発生する。この推進力の発生時に、
前後におけるプロペラ翼１７Ａ，１７Ｂが逆方向に回転
するため、前方のプロペラ翼１７Ａにより捻られた流れ
が、後方のプロペラ翼１７Ｂにより捻り返され、したが
ってプロペラ後流に回転流が与えられないため、通常発
生して無駄になっていたプロペラ後流の回転エネルギー
が回収される。すなわち、推進効率の更なる向上を図る
ことができる。

【００１９】また、上記船舶の進路を変更する場合に
は、第１回転駆動機３２を駆動して筒状体１２を回転さ
せて、ノズル部材１３全体の向きを変えれはよい。この
ように、推進装置１自体を、ノズル部材１３に回転自在
に設けられた回転体１６の内周面から、プロペラ翼１７
をその中心に向かって突出するように設けたので、従来
のように、ボス部を設ける必要がなく、したがって翼面
積を広くすることができるとともにボス部からの渦の発
生を無くすことができるため、推進効率の向上を図るこ
とができる。また、プロペラ翼１７は、回転体１６の内
周面に取り付けられるため、その根元部の取付けスペー
スを十分に確保することができ、したがってプロペラ翼
１７の強度を上げることができる。また、ノズル部材１
３の向きを変えて、船舶の進路を変更するようにしたの
で、その変更時においては、プロペラ翼１７そのものの
向きが変更されるため、推進効率を低下させることがな
い。さらに、前後にプロペラ翼１７Ａ，１７Ｂを配置す
るとともに互いに逆方向に回転させるようにしたので、
通常無駄になっていたプロペラ後流の回転エネルギーを
回収することができ、さらなる推進効率の向上を図るこ
とができる。

【００２０】ところで、上記実施の形態においては、プ
ロペラ翼１７を半長円形状として説明したが、例えば図
８および図９に示すように、放物線形状（または半楕円
形状）のプロペラ翼６１でもよく、また図１０および図
１１に示すように、三角形状のプロペラ翼６２でもよ
く、さらに図１２および図１３に示すように、三日月形
状のプロペラ翼６３すなわちスキュウ翼でもよい。

【００２１】また、上述した各プロペラ翼は、４枚のプ
ロペラ翼を回転体の内周面から中心に向かって突出する
ように設けたが、例えば４枚のプロペラ翼の回転中心側
である先端部同士を互いに連結させることにより、プロ
ペラ翼自体の構造を、より簡単かつ強固にすることがで
きる。

【００２２】

【発明の効果】以上のように本発明の推進装置の構成に
よると、ノズル部材に回転自在に設けられた環状の回転
体の内周面から、プロペラ翼を回転中心に向かって突出
するように設けたので、従来のように、ボス部を設ける
必要がなく、したがって翼面積を広くすることができる
とともにボス部から発生する渦を無くすことができるた
め、推進効率の向上を図ることができる。また、プロペ
ラ翼は、回転体の内周面に取り付けられているため、そ
の根元部の取付けスペースを十分に確保することがで
き、したがってプロペラ翼の強度を上げることができ
る。また、プロペラ翼が設けられた筒状体を回転させて
船舶の進路を変更させるようにしたので、単に、プロペ
ラ翼の後方に配置された舵板を揺動させる場合に比べ
て、推進効率の向上が図られる。さらに、前後にプロペ
ラ翼を配置するとともに互いに逆方向に回転させるよう
にしたので、プロペラ後流の回転エネルギーを回収する
ことができ、より一層の推進効率の向上を図ることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態における推進装置の概略構
成を示す断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ矢視図である。

【図３】図２のＢ−Ｂ矢視図である。

【図４】図１のＣ−Ｃ矢視図である。

【図５】同推進装置のノズル部材における推力発生の作
用を説明する図である。

【図６】同推進装置におけるプロペラ翼の正面図であ
る。

【図７】同推進装置におけるプロペラ翼の側面図であ
る。

【図８】同推進装置におけるプロペラ翼の第１の変形例
を示す正面図である。

【図９】図８のＤ−Ｄ矢視図である。

【図１０】同推進装置におけるプロペラ翼の第２の変形
例を示す正面図である。

【図１１】図１０のＥ−Ｅ矢視図である。

【図１２】同推進装置におけるプロペラ翼の第３の変形
例を示す正面図である。

【図１３】図１２のＦ−Ｆ矢視図である。

【図１４】従来例における推進装置の要部断面図であ
る。

【符号の説明】

１ 推進装置 ２ 船体 １１ 旋回軸受 １２ 筒状体 １３ ノズル部材 １３ａ 内側空間部 １４ 環状空間室 １５ 軸受部材 １６Ａ 第１回転体 １６Ｂ 第２回転体 １７Ａ 第１プロペラ翼 １７Ｂ 第２プロペラ翼 １８ 第１回転駆動装置 １９ 動力伝達機構 ２０ 第２回転駆動装置 ３２ 第１回転駆動機 ３３ 揺動用リング状ギヤ ３４ 揺動用駆動ギヤ ４２Ａ 第１推進用リング状ギヤ ４２Ｂ 第２推進用リング状ギヤ ４５Ａ 第１推進用駆動ギヤ ４５Ｂ 第２推進用駆動ギヤ ４８ 第２回転駆動機

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】船体船尾部に、鉛直軸心回りで筒状体を回
   転自在に支持するとともに、この筒状体に、内側空間部
   を有するノズル部材を取り付け、このノズル部材内に形
   成された環状空間室内に、その内側空間部の外周に沿っ
   て、環状の第１回転体および第２回転体をそれぞれ軸受
   部材を介して回転自在に配置し、上記各回転体の内周面
   に、その回転中心に向かってプロペラ翼を所定間隔置き
   に複数枚放射状に取り付け、船体内に、上記筒状体を回
   転させる第１回転駆動装置を設けるとともに、上記両回
   転体をそれぞれの外周に形成されたギヤおよび動力伝達
   機構を介して互いに逆方向に回転させる第２回転駆動装
   置を設けたことを特徴とする船舶における推進装置。