JPH11269782A - インクジェット染色用布帛と染色方法 - Google Patents

インクジェット染色用布帛と染色方法

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JPH11269782A
JPH11269782A JP10072578A JP7257898A JPH11269782A JP H11269782 A JPH11269782 A JP H11269782A JP 10072578 A JP10072578 A JP 10072578A JP 7257898 A JP7257898 A JP 7257898A JP H11269782 A JPH11269782 A JP H11269782A
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JP
Japan
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fabric
ink
dyeing
wax agent
cationic substance
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JP10072578A
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Taiji Endo
泰司 遠藤
Shuichi Shimazu
秀一 島津
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Suminoe Textile Co Ltd
Original Assignee
Suminoe Textile Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェット染色における染色濃度の低下
や、滲み、色割れ、干渉縞発生を防止し、もって鮮明か
つ繊細で高発色濃度の高品位な染色図柄の付与を可能と
するインクジェット染色用布帛とインクジェット染色方
法を提供する。 【解決手段】 布帛素材に、カチオン系物質および融点
が40℃以上であるワックス剤を含有せしめる。また、
染色方法は、布帛素材に、カチオン系物質および融点が
40℃以上であるワックス剤を含む水性液を含浸させ、
乾燥後の布帛に分散染料からなるインクを用いてインク
ジェット方式によって所要の図柄を捺染した後、熱処理
を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、インクジェット
染色用布帛と、この布帛を用いるインクジェット染色方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、プリント手法の1つとして、紙用
インクジェット方式プリンターによるテキスタイルプリ
ントの検討が進んでいる。このインクジェット方式によ
ると、従来の布帛のプリントにおけるトレース製版工程
や転写紙製作工程が省略できる上、多種多様な色柄デザ
インの創出が可能になるという利点がある。
【0003】しかるに、布帛に対するインクジェット染
色においては、プリンターのノズルから噴射された染料
インクが布帛表面で広がって滲みを生じると共に、染料
インクが布帛の組織内にも浸透拡散して染料の表面濃度
が低下する上、色の混合が不均一になって混色部での色
割れを発生しやすく、高発色濃度の鮮明な図柄が得られ
ないという難点があった。
【0004】そこで、このような滲みや色割れを防止し
て染色図柄の鮮明化を図るために、従来よりインクジェ
ット染色に供する布帛に対して種々の前処理を施すこと
が提案されている。例えば、特公昭63−31594号
公報には、使用される染料に対して非染着性である水溶
性高分子、水溶性塩類、水不溶性無機微粒子より選択さ
れる化合物を布帛に付着させる方法が記載され、また特
公昭62−45359号公報には、水不溶性染料を含有
するインクを用いる場合に、布帛に予め含窒素カチオン
性物質を付与する方法が記載され、更に特公昭63−3
1593号公報には、インクとして粘度および表面張力
が特定範囲に規定されたものを用い、かつ布帛としてそ
の撥水度が50点以上であるものを用いる方法が記載さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
非染着性の化合物を布帛に付着させる方法では、布帛の
表面が非染着性の被膜で覆われることになるため、布帛
繊維に対する染料の染着性が損なわれて染着率の低下ひ
いては染色濃度の低下を招くという問題があった。ま
た、布帛に予め含窒素カチオン性物質を付与する方法で
は、布帛上で水不溶性染料を凝集させることで滲みを防
止し染色濃度を高くすることができるものの、染色部の
ドットの形状を拡大して観察すると布帛の繊維方向に沿
って水不溶性染料が流れた状態で凝集しているため、真
円状のドット形状が得られず、そのため画像の変形が生
じたり、画像全体に細かい線が感じられ画像のエッジ部
分がぎざぎざに視認される現象が生じたりして、高品位
な図柄が得られないという問題があった。また、撥水度
50点以上の布帛を用いる方法では、撥水作用によりイ
ンクの滲みを確実に防止できるものの、ドット径が小さ
くなり過ぎてドット感が目だってしまう上に、ドット径
が小さくなり過ぎるため返って目視観察の上ではあたか
も染色濃度が低下しているかのような印象を与えること
になって、高品位な図柄が得られないという問題があっ
た。
【0006】更に、これら従来技術では、染色後の布帛
表面において干渉縞(モアレ)模様が現出されることを
確実に防止することは到底成し得なかった。
【0007】この発明は、かかる技術的背景に鑑みてな
されたものであって、インクジェット染色における染色
濃度の低下や、滲み、色割れ、干渉縞発生を防止し、も
って鮮明かつ繊細で高発色濃度の高品位な染色図柄の付
与を可能とするインクジェット染色用布帛とインクジェ
ット染色方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者らは鋭意研究の結果、布帛素材に、カチオ
ン系物質および特定のワックス剤を含有させることによ
り、鮮明かつ繊細で高発色濃度の高品位な染色図柄の付
与が可能となることを見出すに至り、この発明を完成し
たものである。
【0009】即ち、この発明に係るインクジェット染色
用布帛は、布帛素材に、カチオン系物質および融点が4
0℃以上であるワックス剤が含有されてなることを特徴
とするものである。分散染料のインク滴が布帛に滴下さ
れると、該分散染料中に含まれる染料を微分散させる作
用を有するアニオン系分散剤が、布帛に含有されるカチ
オン系物質によって中和され、これによりインクに凝集
作用が生じて構成繊維束方向へ広がりを生じず、もって
滲みが防止される。かつ、布帛に含有されたワックス剤
の撥水作用により、前記凝集時におけるドット形状が丸
い形状に調整されるとともに、インク滴が布帛内部に浸
透拡散することが効果的に防止されて染料の表面濃度が
向上され、ひいては発色性に優れた図柄が形成される。
通常、布帛に撥水作用を付与せしめるとドット径が小さ
くなり過ぎてドット感が強調されるようになって、高品
位な画質が得られないのであるが、この発明において
は、発色のための熱処理の際に、即ち分散染料が繊維に
染着するまでの間に、ワックス剤が溶融して分散染料と
ともにマイグレーションを起こすため、インクジェット
プリンタの持つ解像度に見合った適正なドット径が確保
され、干渉縞の発生が確実に防止され、もって鮮明で高
品位な画質が確保される。
【0010】上記において、カチオン系物質及びワック
ス剤はその合計量で、布帛素材に対して0.1〜50g
/m2 の割合で含有されているのが望ましく、この場合
には布帛の風合いを低下させることなく上述の作用を十
分に発揮させ得る。
【0011】また、カチオン系物質/ワックス剤の重量
比は97/3〜15/85の範囲にあるのが望ましく、
この場合には、カチオン系物質の凝集作用と、ワックス
剤の撥水作用及びマイグレーション作用(熱処理時)と
が、相互に阻害し合うことなく、これらの作用が相乗的
に働き、ひいては一層滲みのない一段と鮮明でかつ高品
位な画質が確保される。
【0012】また、布帛素材はポリエステル繊維からな
るのが望ましく、これにより一段と均染性、堅牢度に優
れた染色用布帛が得られる。
【0013】上記カチオン系物質は、カチオン樹脂およ
びカチオン界面活性剤から選択される少なくとも1種で
あるのが望ましく、より一層滲みのない鮮明な画質が確
保される。
【0014】上記ワックス剤としては、炭化水素類、高
級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸アルコール
エステル類から選択される1種または2種以上の化合物
を用いるのが望ましい。これらの化合物を用いれば、よ
り一層適正でかつ均一な(ばらつきの少ない)ドット径
を確保し得て、干渉縞の発生もより確実に防止される。
【0015】また、この発明に係る染色方法は、布帛素
材に、カチオン系物質および融点が40℃以上であるワ
ックス剤を含む水性液を含浸させ、乾燥後の布帛に分散
染料からなるインクを用いてインクジェット方式によっ
て所要の図柄を捺染し、次いで熱処理を施すことを特徴
とするものであり、布帛にカチオン系物質およびワック
ス剤が含有されているので、インクジェット染色におけ
る染色濃度の低下、滲み、色割れが防止される。また、
捺染後の熱処理により、染料の固着及び発色が促進され
るのみならず、ワックス剤が溶融して分散染料とともに
マイグレーションを起こしてインクジェットプリンタの
持つ解像度に見合った適正なドット径が確保され、これ
により干渉縞の発生が確実に防止され、もって鮮明かつ
繊細で高発色濃度、高品位な染色物が、低コストにて製
造され得る。
【0016】
【発明の実施の形態】この発明のインクジェット染色用
布帛は、布帛素材に、カチオン系物質および融点が40
℃以上であるワックス剤が含有されてなるものである
が、このカチオン系物質としては、カチオンを有するも
のであれば特に制約はないが、これらの中でも特に滲み
防止性に優れると共に、より高彩度、高濃度で一段と発
色性に優れた染色図柄の付与が可能となることから、カ
チオン樹脂、カチオン界面活性剤が好適に用いられる。
これらは単独でも2種以上の混合物でも使用できる。
【0017】前記カチオン樹脂としては、例えばアミン
塩型ポリマー、第4級アンモニウム塩型ポリマー、ジシ
アンアミド型ポリマー等が挙げられ、中でもアミン塩型
ポリマーが特に好適である。そして、このようなアミン
塩型ポリマーの市販品として、例えば日華化学製ネオフ
ィクスRP70(ポリエチレンポリアミン系カチオン樹
脂)が挙げられる。
【0018】前記カチオン界面活性剤としては、例えば
アミン塩型カチオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩
型界面活性剤、ジシアンアミド型界面活性剤等が挙げら
れ、中でもアミン塩型カチオン界面活性剤が特に好適で
ある。このアミン塩型カチオン界面活性剤の市販品とし
て、例えばセンカ株式会社製EOP12などが挙げられ
る。
【0019】この発明において、布帛素材に前処理とし
て含有させるワックス剤は、その融点が40℃以上でな
ければならない。融点が40℃未満では、インクの保持
力が低く、ドット形の適正化が図れなくなる上に、融点
が常温に近いことで発色のための熱処理を施す前にワッ
クス剤が既に一部溶融するなどして、発色のための熱処
理の際に、その熱処理温度でワックス剤が適度に溶融し
て分散染料とともにマイグレーションを起こす作用が十
分に得られなくなって、この発明の効果が達成されなく
なるからである。中でも、前記ワックス剤の融点は、4
0〜120℃の範囲にあるのが好ましく、これにより発
色のための熱処理の際に、即ち通常の発色のための熱処
理温度で、ワックス剤が適度に溶融して分散染料ととも
に適度なマイグレーションを起こすこととなり、ひいて
はインクジェットプリンタの持つ解像度に見合った適正
なドット径を確保させることができ、干渉縞の発生をよ
り確実に防止できるとともに、一段と鮮明で高発色濃度
の高品位な画質を確保することができる。
【0020】上記ワックス剤としては、その融点が40
℃以上であれば特に限定されないが、中でも一層適正な
ドット径を確保できて、干渉縞の発生をより確実に防止
し得る利点から、パラフィンワックス等の炭化水素類、
セチルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸
等の高級脂肪酸類、蜜ろう等の動物性ろうやカルナバ等
の植物性ろう等の高級脂肪酸アルコールエステル類を用
いるのが好ましい。これらは単独でも2種以上の混合物
でも使用できる。上記ワックス剤の好適な市販品とし
て、例えば、パラフィンワックスおよび高級脂肪酸アル
コールエステル類からなる日華化学製リポオイルNT1
2(融点60℃)が挙げられる。
【0021】上記カチオン系物質及びワックス剤を布帛
に含有せしめた際の両者の重量比は、97/3〜15/
85の範囲に設定されるのが好ましい。カチオン系物質
の比率が上記範囲より大きくなると、カチオン系物質単
独の場合に近くなり、即ちカチオン系物質の作用が相対
的に強くなって、得られるドット形状が繊維束方向に沿
って流れた形状を呈しやすくなり、画像の変形を生じる
ことが懸念されるので、好ましくない。また、カチオン
系物質の比率が上記範囲より小さくなると、ワックス剤
単独の場合に近くなり、即ちワックス剤の撥水作用が相
対的に強くなって、カチオン系物質による凝集作用が阻
害される結果、滲み防止効果が十分に確保できなくなる
ので、好ましくない。中でも上記重量比は85/15〜
30/70の範囲に設定されるのがより好ましい。
【0022】また、カチオン系物質及びワックス剤を布
帛に含有させる量は、両者の合計量で、布帛素材に対し
て0.1〜50g/m2 の割合とするのが好ましい。
0.1g/m2 未満では前述の含有効果が十分に得られ
なくなり、一方50g/m2 を超えると最終的に得られ
る染色製品の風合いが低下するので、好ましくない。中
でも、0.5〜25g/m2 の割合で付与するのがより
好ましく、この場合には滲み、色割れ、干渉縞発生を確
実に防止し、かつ十分な染色濃度を確保できると共に、
風合いに優れた染色製品を得ることができる。なお、上
記付与割合とは、乾燥時におけるものである。
【0023】この発明において使用される布帛素材とし
ては、分散染料で染色可能な素材であれば特に限定され
ず、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル
繊維などが挙げられる。中でも分散染料による染色で優
れた染色性能(均染性、堅牢度、鮮明性)を確保し得る
ポリエステル繊維からなる布帛が好適である。
【0024】インクジェット染色用布帛を得るには、前
記カチオン系物質およびワックス剤を水性液形態、つま
り水性エマルジョンまたは水溶液として、パッド法、ス
プレー法、浸漬法、コーティング法、インジェクト法等
の種々の付与手段により布帛素材に含有させた後、乾燥
させればよい。そして、上記水性液の粘度が比較的低い
ものであることから、パッド法やスプレー法が好適に用
いられる。また、付与の際には、カチオン系物質とワッ
クス剤の両方を含有する水性液を用いて前記手段により
布帛にこれらを同時に付与しても良いし、あるいはそれ
ぞれを別々に含有する2つの水性液、即ちカチオン系物
質含有水性液と、ワックス剤含有水性液を準備し、どち
らか一方の水性液を用いて前記手段により布帛に付与し
た後、残りの水性液を布帛に付与するものとしても良い
が、前者の同時付与する方法によれば、布帛に対して、
カチオン系物質とワックス剤を相互により均一に付与さ
せることができ、両者の相乗作用が一層高められること
で、一段と鮮明で高発色濃度の高品位な画質を確保する
ことができるので、前者の同時付与する方法を適用する
のが望ましい。また、同時付与の方が生産性にも優れて
いるからコスト的にも有利である。
【0025】しかして、前記カチオン系物質及びワック
ス剤を含有させたインクジェット染色用布帛をインクジ
ェット染色に供すると、即ちプリンターのノズルより分
散染料からなるインクを噴射して布帛表面に付着させる
と、該分散染料を微分散させているアニオン系分散剤
が、布帛に含有されるカチオン系物質によって中和され
ることにより、インクに凝集作用が生じて構成繊維束方
向へ広がりを生じず、もって滲みが防止される。かつ、
布帛に含有されたワックス剤の撥水作用により、凝集時
におけるドット形状が丸い形状に調整されるとともに、
インク滴が布帛内部に浸透拡散することが効果的に防止
されて染料の表面濃度が向上され、ひいては発色性に優
れた図柄が形成される。通常、布帛に撥水作用を付与せ
しめるとドット径が小さくなり過ぎてドット感が強調さ
れるようになって、高品位な画質が得られないのである
が、この発明においては、発色のための熱処理の際に、
即ち分散染料が繊維に染着するまでの間に、ワックス剤
が溶融して分散染料とともにマイグレーションを起こす
ため、インクジェットプリンタの持つ解像度に見合った
適正なドット径が確保され、干渉縞の発生が確実に防止
され、もって鮮明で高品位な画質が確保される。しか
も、未染着状態で残る染料成分は殆どなく高い染着率が
達成される。
【0026】なお、インクジェット染色におけるインク
ジェット方式は特に限定されず、サーマル式、ピエゾ
式、荷電制御方式などどのような方式でも適用すること
ができる。
【0027】この発明のインクジェット染色方法におい
ては、分散染料からなるインクを使用する。この分散染
料の粒径は1μm以下とするのが好ましい。インクに
は、上記分散染料を分散させるための分散剤の他、必要
に応じて表面張力調整剤、乾燥防止剤等の各種添加剤を
配合することができる。
【0028】前記インクの粘度は2〜10cps(25
℃)の範囲に設定されるのが好ましい。2cps未満で
は布帛に滲みを生じることがあり、一方10cpsを超
えると、粘度が高いためにインクの出射安定性が低下す
る上に、発色のための熱処理の際にマイグレーション不
良を生じやすいので、好ましくない。また、インクの表
面張力は30〜60mN/mの範囲に設定されるのが好
ましい。30mN/m未満ではインクの出射不良や滲み
発生を生じやすく、一方60mN/mを超えるとインク
の出射不良を生じやすいし、ドット径が小さくなり過ぎ
るので、好ましくない。
【0029】上記のインクジェット染色に供した布帛
は、染料の固着及び発色のために熱処理を施すが、この
熱処理により、ワックス剤が溶融して分散染料とともに
マイグレーションを起こすので、インクジェットプリン
タの持つ解像度に見合った適正なドット径が確保され
る。また、適正なドット径が確保されることで、干渉縞
の発生が確実に防止され、ひいては鮮明で高品位な画質
が確保される。なお、この熱処理は、110〜190℃
程度の温度で1〜10分間程度行えば良い。また、この
熱処理方法としては、特に限定されないが、高圧スチー
ム、高温スチーム、乾熱による方法が好適に用いられ
る。
【0030】上記の熱処理を経た染色布帛は、未固着の
染料成分が極めて少なく汚れを生じにくいため、そのま
ま染色製品に供することができるが、必要に応じて洗浄
を行ってもよい。しかして、この洗浄においては未固着
染料成分が少ないので軽い洗浄で済み、また未固着染料
の溶出による布帛の着色汚染もない。更に、洗浄排水に
含まれる染料成分も僅かであるから、格別な排水処理を
施す必要がない。
【0031】
【実施例】次に、この発明の実施例を比較例と対比して
具体的に説明する。なお、インクジェット染色における
インクとして、次の組成よりなるものを使用した。
【0032】(分散染料インク) *イエロー C.I.Dispers Yellow 42 7.0重量% アニオン系分散剤 2.0重量% プロピレングリコール 30.0重量% イオン交換水 61.0重量% *マゼンタ C.I.Dispers Red 283 6.0重量% アニオン系分散剤 1.5重量% プロピレングリコール 30.0重量% イオン交換水 62.5重量% *シアン C.I.Dispers Blue 60 5.0重量% アニオン系分散剤 2.0重量% プロピレングリコール 30.0重量% イオン交換水 63.0重量% *ブラック C.I.Dispers Orange 30 3.0重量% C.I.Dispers Red 167 1.5重量% C.I.Dispers Blue 73 6.0重量% アニオン系分散剤 3.0重量% プロピレングリコール 30.0重量% イオン交換水 56.5重量%
【0033】<実施例1>日華化学製ネオフィクスRP
70(ポリエチレンポリアミン系カチオン樹脂含有量7
0重量%)を9重量%、日華化学製リポオイルNT12
(高級脂肪酸アルコールエステル類含有量30重量%)
を6重量%含有する前処理水性液を調製し、この水性液
をポリエステル布帛に対し、通常のパッド法により、ピ
ックアップ60%になるように付与した後、120℃に
て10分間の乾燥を行った。次に、この布帛に対し、ピ
エゾ式インクジェットプリンターを用いて、4色(イエ
ロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の分散染料インク
によるプリントを行い、得られた捺染織物に190℃に
て5分間の熱処理を施して染料の固着、発色を行った
後、通常の還元洗浄を行い、プリント染色物を得た。
【0034】<実施例2>前処理液として、センカ株式
会社製EOP12(カチオン界面活性剤含有量70重量
%)を9重量%、日華化学製リポオイルNT12を6重
量%含有する水性液を使用した以外は、実施例1と同様
にしてプリント染色物を得た。
【0035】<実施例3>前処理液として、日華化学製
ネオフィクスRP70を9重量%、明成化学製ミリナー
ルF66(高級脂肪酸含有量30重量%)を6重量%含
有する水性液を使用した以外は、実施例1と同様にして
プリント染色物を得た。
【0036】<実施例4>前処理液として、日華化学製
ネオフィクスRP70を10重量%、日華化学製リポオ
イルNT12を4重量%含有する水性液を使用した以外
は、実施例1と同様にしてプリント染色物を得た。
【0037】<実施例5>前処理液として、日華化学製
ネオフィクスRP70を4重量%、日華化学製リポオイ
ルNT12を16重量%含有する水性液を使用した以外
は、実施例1と同様にしてプリント染色物を得た。
【0038】<実施例6>前処理液として、日華化学製
ネオフィクスRP70を2重量%、日華化学製リポオイ
ルNT12を2重量%含有する水性液を使用した以外
は、実施例1と同様にしてプリント染色物を得た。
【0039】<実施例7>前処理液として、日華化学製
ネオフィクスRP70を20重量%、日華化学製リポオ
イルNT12を16重量%含有する水性液を使用した以
外は、実施例1と同様にしてプリント染色物を得た。
【0040】<比較例1>未処理のポリエステル布帛に
対し、実施例1と同様にしてインクジェット染色による
プリント、熱処理、還元洗浄を行い、プリント染色物を
得た。
【0041】<比較例2>水溶性高分子であるカルボキ
シメチルセルロース(第一工業製薬社製ファインガムS
A−2L)の20重量%水溶液を、ポリエステル布帛表
面に、乾燥時の塗布量が20g/m2 となるようにドク
ターナイフを用いてコーティングした後、120℃で1
0分間の乾燥を行った。次に、この布帛に対し、実施例
1と同様にしてインクジェット染色によるプリント、熱
処理、還元洗浄を行い、プリント染色物を得た。
【0042】<比較例3>前処理液として、塩化カルシ
ウム水溶液(30g/L)を使用した以外は、実施例1
と同様にしてプリント染色物を得た。
【0043】<比較例4>前処理液として、モンモリロ
ナイト分散液(30g/L)を使用した以外は、実施例
1と同様にしてプリント染色物を得た。
【0044】<比較例5>前処理液として、日華化学製
ネオフィクスRP70(カチオン樹脂)の9重量%水性
液を使用した以外は、実施例1と同様にしてプリント染
色物を得た。
【0045】<比較例6>前処理液として、センカ株式
会社製EOP12(カチオン界面活性剤)の9重量%水
性液を使用した以外は、実施例1と同様にしてプリント
染色物を得た。
【0046】<比較例7>前処理液として、日華化学製
リポオイルNT12(ワックス剤)の6重量%水性液を
使用した以外は、実施例1と同様にしてプリント染色物
を得た。
【0047】<比較例8>前処理液として、明成化学株
式会社製アサヒガードAG−850(フッ素系はっ水剤
含有量30重量%)の3重量%水性液を使用した以外
は、実施例1と同様にしてプリント染色物を得た。
【0048】
【表1】
【0049】以上の実施例及び比較例で得られたプリン
ト染色物につき、全体的な滲みの有無、染料インクのド
ット径、ドット形状、混色部の色割れ、発色性、洗浄に
伴う着色汚れの有無、干渉縞の有無、の各項目を調べ、
これらより総合的に製品としての品位を評価した。その
結果を表2、3に示す。
【0050】なお、滲み、色割れ、着色汚れ、干渉縞、
の各項目は、その発生の程度を「なし」、「軽度」、
「中度」、「重度」の4段階評価とした。また、平均ド
ット径、ドット形状の真円度、発色性(染色濃度)、の
各項目は下記の方法により評価した。
【0051】(平均ドット径)上記発色洗浄後のプリン
ト染色物(布帛)上のドット径の平均値を求めた。ドッ
ト径が小さい程滲みが小さいが、小さ過ぎるとドット感
が目立ち過ぎる上に、目視観察の上ではあたかも染色濃
度が低下しているかのような印象を受け、高品位な画質
が得られない。一方、ドット径が大きいと滲みが生じ、
シャープな図柄が得られない。一般的なプリンター解像
度(360dpi)からすると、最適なドット径は10
0μm程度である。
【0052】(ドット形状の真円度)上記発色洗浄後の
プリント染色物(布帛)の1つのドットの長径と短径を
計測し、以下の計算式により真円度を算出した。
【0053】真円度=長径/短径 5つのドットについて真円度を計測し、これらの平均
値、即ち平均真円度を算出した。真円度は、ドットの円
形形状の変形度合いを表し、真円度が1に近い程、真円
に近くなり、ドットの変形が発生せず、画質が向上す
る。
【0054】(発色性)発色洗浄後のプリント染色物
(布帛)のプリント部分の一部(3cm×3cm角)の
明度Lを測色機(ミノルタ製CM−3700d)にて
測定した。明度L値が小さい程染色濃度が高く、発色
性に優れている。なお、明度Lとは、L
色法(JIS Z8729−1980)による明度のことで
ある。
【0055】また、品位の判定は、◎…優良、○…良、
△…可、×…やや不良、××…不良、の5段階評価とし
た。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】表2、3の結果から明らかなように、この
発明のインクジェット染色用布帛を用いた染色(実施例
1〜7)では、染色濃度が高く、インクの滲み及び色割
れもないため、高発色濃度でかつ鮮明な染色図柄を付与
でき、しかも適正なドット径及び適正なドット形状が得
られて、干渉縞の発生もない高品位の染色物が得られる
ことが判る。また、洗浄による布帛の着色汚染もない。
【0059】これに対し、比較例1〜7の染色物では、
滲み防止性に劣り、図柄が不鮮明であるし、混色部での
色割れも生じており、品位的に劣る。また、比較例1〜
4、7の染色物では洗浄に伴う着色汚れも生じている。
更に、比較例4〜7の染色物では干渉縞が発生してい
る。加えて、比較例1〜4、6の染色物は発色性が不十
分である。また、比較例8の染色物は滲みは生じていな
いものの、色割れが発生している上に、ドット径が小さ
くなり過ぎて見かけの発色性も不十分であるし、干渉縞
も顕著に発生している。
【0060】
【発明の効果】この発明にかかるインクジェット染色用
布帛は、布帛素材に、カチオン系物質および融点が40
℃以上であるワックス剤が含有されてなるものであり、
分散染料からなるインク滴がこの布帛に滴下されると、
このカチオン系物質が、インク中に含まれる分散染料を
分散させるためのアニオン系分散剤を中和するから、イ
ンクに凝集作用が生じて構成繊維束方向へ広がりを生じ
ず、従って滲みを防止することができる。かつワックス
剤の撥水作用により、この凝集時のドット形状が丸い形
状に調整されるとともに、インク滴の布帛内部への浸透
拡散が効果的に防止されるから、染料の表面濃度が向上
し、発色性に優れた図柄の付与が可能となる。しかも、
発色のための熱処理の際に、ワックス剤が溶融して分散
染料とともにマイグレーションを起こすので、インクジ
ェットプリンタの持つ解像度に見合った適正なドット径
を確保でき、干渉縞の発生も確実に防止でき、ひいては
鮮明で高品位な図柄を形成させることができる。更に、
未染着状態で残る染料成分は殆どなく高い染着率が達成
されるので、未固着染料の溶出による布帛の着色汚染も
ない。
【0061】上記において、カチオン系物質及びワック
ス剤がその合計量で、布帛素材に対して0.1〜50g
/m2 の割合で含有されている場合には、布帛の良好な
風合いを十分に確保できるとともに、染色濃度の低下
や、滲み、色割れ、干渉縞発生をより確実に防止でき
る。
【0062】また、カチオン系物質/ワックス剤の重量
比が97/3〜15〜85の範囲にある場合には、両者
の上記作用が相乗的に協働し、ひいてはより一層滲みの
ない一段と鮮明でかつ高品位な画質を確保することがで
きる。
【0063】また、布帛素材がポリエステル繊維からな
る場合には、一段と均染性、堅牢度に優れた染色用布帛
を提供することができる。
【0064】また、カチオン系物質がカチオン樹脂およ
びカチオン界面活性剤から選択される少なくとも1種で
ある場合には、滲みの発生を一層確実に防止することが
できる。
【0065】また、ワックス剤として、炭化水素類、高
級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸アルコール
エステル類から選択される1種または2種以上の化合物
を用いる場合には、より一層適正でかつ均一なドット径
を確保することができ、干渉縞の発生もより確実に防止
できる。
【0066】この発明にかかる染色方法によれば、カチ
オン系物質および融点が40℃以上であるワックス剤を
含有した布帛を用いるから、インクの滲みを防止できる
とともに、高い染色濃度を達成でき、かつ色割れも防止
できる。また、捺染後の熱処理により、染料の固着及び
発色が促進されるとともに、ワックス剤が溶融して分散
染料とともにマイグレーションを起こしてインクジェッ
トプリンタの持つ解像度に見合った適正なドット径が確
保され、これにより干渉縞の発生を確実に防止できる。
このように、固着、発色のための熱処理において同時に
ドット径の適正化を図ることができるので、鮮明かつ繊
細で高発色濃度、高品位な染色物を、低コストにて製造
できるものである。更に、高い染着率が達成されるの
で、必要に応じて熱処理後に洗浄を行っても未固着染料
による汚れを生じず、また洗浄排水に含まれる染料成分
も僅かであるから、格別な排水処理を施す必要がない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D06P 5/20 D06P 5/20 C

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 布帛素材に、カチオン系物質および融点
    が40℃以上であるワックス剤が含有されてなるインク
    ジェット染色用布帛。
  2. 【請求項2】 前記カチオン系物質及びワックス剤がそ
    の合計量で、布帛素材に対して0.1〜50g/m2
    割合で含有されてなる請求項1に記載のインクジェット
    染色用布帛。
  3. 【請求項3】 前記カチオン系物質/ワックス剤の重量
    比が97/3〜15/85の範囲にある請求項1または
    2に記載のインクジェット染色用布帛。
  4. 【請求項4】 前記布帛素材がポリエステル繊維からな
    る請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット
    染色用布帛。
  5. 【請求項5】 前記カチオン系物質がカチオン樹脂およ
    びカチオン界面活性剤から選択される少なくとも1種で
    ある請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェッ
    ト染色用布帛。
  6. 【請求項6】 前記ワックス剤として、炭化水素類、高
    級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸アルコール
    エステル類から選択される1種または2種以上の化合物
    を用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジ
    ェット染色用布帛。
  7. 【請求項7】 布帛素材に、カチオン系物質および融点
    が40℃以上であるワックス剤を含む水性液を含浸さ
    せ、乾燥後の布帛に分散染料からなるインクを用いてイ
    ンクジェット方式によって所要の図柄を捺染し、次いで
    熱処理を施すことを特徴とするインクジェット染色方
    法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000063024A1 (en) * 1999-04-15 2000-10-26 Foto-Wear, Inc. Heat sealable coating for manual and electronic marking and process for heat sealing the image
KR100442328B1 (ko) * 2001-11-14 2004-07-30 네오미디어테크 주식회사 잉크젯 프린팅용 텍스타일 및 그 제조 방법
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JP2017206789A (ja) * 2016-05-18 2017-11-24 Ykk株式会社 捺染用の前処理剤、捺染用の前処理方法、及び染色方法

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