JPH11268877A - 糸の切替え成功率を向上させる糸巻き用ボビンの処理方法および処理装置 - Google Patents

糸の切替え成功率を向上させる糸巻き用ボビンの処理方法および処理装置

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JPH11268877A
JPH11268877A JP7200598A JP7200598A JPH11268877A JP H11268877 A JPH11268877 A JP H11268877A JP 7200598 A JP7200598 A JP 7200598A JP 7200598 A JP7200598 A JP 7200598A JP H11268877 A JPH11268877 A JP H11268877A
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潔 赤澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】紙管を用いて形成されている糸巻き用ボビン
を、より高い糸の切替え成功率にて、糸の巻取りに使用
することを可能にする糸巻き用ボビンの処理方法および
処理装置を提供すること。 【解決手段】少なくとも表層が紙で構成された紙管から
なり、その管端部表面に周方向に延びる糸把持用スリッ
ト溝を設けた糸巻き用ボビンに対し、前記スリット溝に
刃状物を押圧挿入してその溝幅を、該スリット溝の長手
方向全長の少なくとも20%を拡幅処理することを特徴
とする糸巻き用ボビンの処理方法であり、また、本発明
の糸巻き用ボビンの処理装置は、該方法を効果的に行う
ことのできる装置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、糸の切替え成功率を向
上させる糸巻き用ボビンのスリット溝の処理方法と、糸
の切替え成功率を向上させる糸巻き用ボビンのスリット
溝の処理装置に関する。
【0002】より具体的には、紙管を用いて形成されて
いる糸巻き用ボビンを、より高い糸の切替え成功率に
て、使用することを可能にする糸巻き用ボビンの処理方
法および処理装置に関するものである。
【0003】本発明の方法は、糸巻き用ボビンの糸把持
用のスリット溝に対して、後述する該スリット幅の幅を
広げる処理をするものであり、また、本発明の装置は、
該処理をする装置に関するものである。
【0004】本発明の方法と装置は、次の2つの場合に
使用できるものである。
【0005】すなわち、第一に、いったん糸巻きが行な
われ、その糸が使用された後に、空の該糸巻き用ボビン
を再生使用して、再度の使用(リサイクル使用)を可能
にする技術として使用することができる。
【0006】あるいはまた、第二に、新品の糸巻き用ボ
ビンを使用するに際して、該初めての使用に先立ち、該
ボビンの糸の切替え成功率を向上させておくための技術
として使用することができる。
【0007】いずれの場合においても、本発明の処理を
受けた糸巻き用ボビンは、糸の切替え時の切替え成功率
が、本発明の処理を受けていない糸巻き用ボビンを使用
した場合と比較して、より高い率を実現できるものであ
る。
【0008】
【従来の技術】一般に、繊維製造工程の糸条の巻取り用
ボビンには、紙管を用いて形成されているものが多い。
【0009】このような紙管から形成された糸巻き用ボ
ビンに巻取られた糸条が、製織や製編などの工程で消費
された後は、空になったボビンは、リサイクル使用に提
供されることなく、廃棄されることが多かった。
【0010】しかし、近年、地球資源保護や地球環境保
護が強く叫ばれるようになるに至って、使用済みの糸巻
き用ボビンをただワンウェイで大量に廃棄してしまうこ
とは地球資源を無駄にし、また、環境破壊を増大させる
原因になり、かつ繊維生産におけるコストアップの要因
にもなっていると言える。
【0011】このような観点から、使用済みの紙管を使
い捨てにすることなく、再びリサイクル使用することが
真剣に検討され始めている。
【0012】しかるに、糸条巻取機で糸条をボビンに巻
き上げるには、ボビンに対する最初の糸掛けが円滑に行
われるようになっていることが重要である。
【0013】一般に、このような糸掛けが円滑に行える
ようにするため、ボビンの端部表面には糸把持用のスリ
ット溝が周方向に延長するように設けられている。
【0014】しかしながら、紙管から形成されるボビン
の場合には、上記のように管端部表面に設けた糸把持用
スリット溝が、主として紙管が持つ吸湿作用によって経
時的に閉塞するという傾向があるため、リサイクル使用
に提供しようとしても、該ボビンは、該スリット溝に糸
条が入り込み難く、糸掛け性(糸掛け成功率あるいは糸
切替え成功率)が著しく悪くなり、それによって繊維の
生産性を低下させる原因になっていた。
【0015】すなわち、かかる該糸把持用スリット溝の
閉塞現象が、糸巻き用ボビンのリサイクル使用の実用化
を妨げる原因になっていたのである。
【0016】このような糸把持用スリット溝の閉塞現象
は、やはり吸湿作用により、使用済みのボビンのみなら
ず、新品のボビンにも見られることがあり、そのような
閉塞現象が生ずると、新品ボビンを使用した糸掛け性
(糸掛け成功率あるいは糸切替え成功率)においてす
ら、その成功率を低くさせる要因となっていた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、第一
には、いったん糸巻きが行なわれ、その糸が使用された
後に、空の該糸巻き用ボビンを再生して、再度の使用
(リサイクル使用)を可能にする技術として使用するこ
とができる、糸の切替え成功率を向上させる糸巻き用ボ
ビンの処理方法を提供することにある。また、該方法を
実施するに好適な糸巻き用ボビンの処理装置を提供する
ことにある。
【0018】あるいはまた、第二に、新品の糸巻き用ボ
ビンを使用するに際して、該ボビンの初めての使用に先
立ち、該ボビンの糸の切替え成功率を向上させるため
に、予め該ボビンを処理する技術として使用することの
できる、糸の切替え成功率を向上させる糸巻き用ボビン
の処理方法を提供することにある。また、該方法を実施
するに好適な糸巻き用ボビンの処理装置を提供すること
にある。
【0019】なお、上述のスリット溝の閉塞現象は、新
品ボビンに比較して、使用済みの糸巻き用ボビンにおい
て、より顕著に生ずるものであるから、本発明の方法
は、使用済みの糸巻きボビンの再生使用を可能にさせる
目的で用いる場合が、より効果的なものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】上述のの目的を達成する
本発明の糸巻き用ボビンの処理方法は、少なくとも表層
が紙で構成された紙管からなり、その管端部表面に周方
向に延びる糸把持用スリット溝を設けた糸巻き用ボビン
に対し、前記スリット溝に刃状物を押圧挿入してその溝
幅を該スリット溝の長手方向全長の少なくとも20%を
拡幅処理することを特徴とするものである。
【0021】このように糸巻き用ボビンを初めて使用す
るに先だって、あるいは、リサイクル使用をするに先立
って、糸把持用スリット溝の長手方向の、20%以上、
好ましくは35%以上に、刃状物を押圧挿入して押し広
げて、閉塞したスリット溝を拡幅修正することにより、
該ボビン使用時の糸掛け成功率を高率にすることができ
る。
【0022】また、本発明の糸巻き用ボビンの処理装置
は、少なくとも表層が紙で構成された紙管からなり、そ
の管端部表面に周方向に延びる糸把持用スリット溝を設
けた糸巻用ボビンを支持するボビンホルダーを設け、該
ボビンホルダー上の糸巻き用ボビンの前記スリット溝を
検出する検出器と刃状物とを配置し、該検出器の検出信
号により前記刃状物およびボビンホルダーの少なくとも
一方を該刃状物と前記スリット溝とを互いに対向させる
位置に移動するとともに、該刃状物を前記スリット溝に
押圧挿入する制御部を設けたことを特徴とするものであ
る。
【0023】このようにスリット溝の位置を検出する検
知器を設け、その検出信号に基づいて刃状物とスリット
溝とを互いに対向する位置関係になるように構成するこ
とにより、糸巻き用ボビンの糸把持用スリット溝の拡幅
処理を自動的に実施することができるようになる。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明において、スリット溝の拡
幅処理に使用する糸巻き用ボビンは、少なくとも表層が
紙で構成された紙管からなるものである。
【0025】すなわち、糸巻き用ボビンは管全体が紙で
構成された紙管であってもよく、あるいは表層側だけが
紙層であり、内層側が金属管または樹脂管で形成された
ものであってもよい。いずれの場合にも、紙層で形成さ
れた管端部表面には糸把持用のスリット溝が周方向に沿
って設けられている。
【0026】また、紙管において前述したスリット溝の
経時的な閉塞傾向を生ずるのは、紙層の厚さが3mm以
上の場合において特に顕著であるので、本発明が対象と
する糸巻用ボビンとしては、このように紙層の厚さが3
mm以上である紙管に対して特に有効である。
【0027】本発明において、スリット溝の拡幅処理に
使用する刃状物としては、円板状や扇状の回転刃、ナイ
フ状の直線刃などいずれでもよく、特に限定されるもの
ではないが、先端部の横断面形状としてV字状またはそ
れに近い形状のものが好ましい。また、刃状物の刃先の
長手方向の形状としては、スリット溝に沿って直線状ま
たは波状になっているものが好ましい。
【0028】スリット溝に刃状物を押圧挿入するとき
は、そのボビンをボビンホルダーで支持し、その内周面
を保持させるようにしておくことが望ましい。このよう
にボビン内周面側を支持することにより、刃状物のボビ
ン径方向の押圧力に対してボビンが変形して偏心した
り、あるいはスリット溝の深さ方向に亀裂が入らないよ
うにすることができる。
【0029】また、スリット溝の拡幅処理は、少なくと
もスリット溝の長手方向全長の20%に対して行うよう
にすることが重要である。
【0030】より好ましくは、少なくともスリット溝の
長手方向の全長の35%に対して行うこと、最も好まし
くはスリット溝の長手方向の全長にわたり行うことであ
る。
【0031】また、このスリット幅の拡幅処理は、スリ
ット溝全長の20%以上であれば、長手方向に、実質的
に連続的に行ってもよく、あるいは実質的に不連続的に
行ってもよい。
【0032】スリット溝の拡幅処理は、深さ方向ととも
に長手方向に対して行われることは重要である。
【0033】深さ方向の拡幅処理は、刃状物の刃先をス
リット溝に深さ方向に押圧挿入すればよい。この深さ方
向の拡幅処理をするときには、紙管端部にスリット溝か
ら管端に向けた剪断力が作用し、溝底にクラックが入る
ことがあるので、スリット溝側の管端面を押圧規制する
ような当て板(当接面)を設けるようにするとよい。
【0034】スリット溝の長手方向に対する拡幅処理
は、刃状物を主としてスリット溝の深さ方向への相対移
動だけで行い、ボビンの円周方向への相対移動は実質的
に行わないようにすることが好ましい。刃状物をボビン
に対して円周方向に相対移動させると、スリット溝の溝
壁の一部が削り取られたり、表面に浮き出てバリになっ
たりすることがあるからである。また、一般に表層の紙
層は非常に硬く加工されているので、スリット溝を拡幅
すると同時にボビン周方向に相対移動させると相当のト
ルクが必要になり、加工を難しくするからである。
【0035】このように刃状物を主としてボビン半径方
向に相対移動するだけにして、スリット溝を長手方向に
対して拡幅処理する方法としては、回転刃であれば、刃
先をスリット溝に挿入した状態にして、回転刃とボビン
とを同方向に同一周速度で回動させれるようにすればよ
い。また、ナイフ状の直線刃であれば、刃先をスリット
溝の深さ方向に往復出没させながら、刃先がスリット溝
から出るごとにボビンを少しずつ回動させるようにすれ
ばよい。
【0036】刃状物の固定方法としては、ボビンの軸方
向に弾性的に支持することが望ましい。
【0037】該弾性的に支持することによって、スリッ
ト溝内への刃状物の挿入を容易ならしめ、さらに、スリ
ット溝内へ刃状物を挿入する際に、導入部分に傷をつけ
ることを防ぐことができる。弾性的に支持するとは、例
えば、図1で説明すると、同図において、刃状物を固定
し押し当て挿入する軸を、該軸に対してボビンの長さ方
向の左右両側に取り付けた金属製バネ18で固定するこ
とによって支持するような構造である。
【0038】糸巻き用ボビンのスリット溝の拡幅処理
は、手作業で行ってもよいが、好ましくは自動化された
装置により処理すれば該処理の効率を向上することがで
きる。このような自動処理装置としては、糸巻き用ボビ
ンをボビンホルダーで支持し、この支持された糸巻き用
ボビンの外周外側に、スリット溝の位置を検出する検知
器と刃状物とを配置するようにするとよい。また、検知
器が検出したスリット溝位置の信号に基づき、刃状物と
ボビンホルダーとの少なくとも一方を移動させて、刃状
物をスリット溝に対向した位置にしてから、スリット溝
に押圧挿入する制御部を設ければ、自動拡幅処理を行う
ことができる。
【0039】スリット溝の位置を検出する検知器は、特
に限定されるものではないが、好ましくは光学センサー
などのような非接触型のものがよい。この検知器は、ス
リット溝のボビン軸方向の位置を検出するとともに、ボ
ビン周方向の位置を検出できるものとする。そのため、
検知器はボビンに対してボビン軸方向において、相対移
動が可能であるとともに、ボビン軸を中心にボビン周方
向においても相対移動が可能であるように設置されるの
が好ましい。より好ましくは、検知器自体をボビン軸方
向に移動し、ボビン周方向には糸巻き用ボビンの方を回
動させるような構成にすることが望ましい。
【0040】本発明による糸巻き用ボビンのスリット溝
の拡幅処理工程は、この拡幅処理工程だけを独立に設け
てもよい。
【0041】あるいは、本発明による糸巻き用ボビンの
スリット溝の拡幅処理を、糸巻き用ボビンを再生して使
うときに用いようとする際には、他のボビン再生用工程
と組合せて行うようにしてもよい。
【0042】例えば、使用されて小さくなっているボビ
ンの内径を拡大させる工程と組合せるようにすれば、使
用済み糸巻き用ボビンのリサイクル使用を一層効率的に
することができる。
【0043】図1は、本発明による糸巻き用ボビンの処
理装置の一例を示すものである。
【0044】図1において、1が、新品の糸巻き用ボビ
ンあるいは使用済みの糸巻き用ボビンである。
【0045】この糸巻き用ボビン1は、図6に例示した
ような紙管から構成され、その管端部表面には、糸把持
用のスリット溝2がボビン周方向に延長するように設け
られている。スリット溝2の形状は、例えば、図7に示
すように糸把持部2aと、これよりも広幅の糸導入部2
bとから形成されるものが好ましい。
【0046】上記構成からなる糸巻き用ボビン1は、図
1に示すように、ボビンホルダー3により支持されてい
る。ボビンホルダー3は左右一対のチャック3a、3b
から構成されている。一方のチャック3aは、軸受5に
回転自在に支持された回転軸4に連結され、かつ、ベル
ト6を介してモータ7により回転駆動されるようになっ
ている。また、他方のチャック3bは、支持軸9に軸受
8を介して回転自在に支持され、かつシリンダ10を介
して軸方向に移動可能になっている。
【0047】これら両チャック3a、3bは、それぞれ
糸巻き用ボビン1の両側から内周面を支持するように挿
入され、かつ、フランジ部によって糸巻き用ボビン1の
端面を規制するように支持している。このようにチャッ
ク3a、3bのフランジ部が糸巻き用ボビン1の端面
(特にスリット溝2側の端面)を規制していること、さ
らには糸巻き用ボビン1の内周面を支持していることに
よって、スリット溝2に刃状物11が挿入されたときの
溝底におけるクラック発生を防止する。
【0048】また、糸巻用ボビン1の外周外側には、円
板刃からなる刃状物11が設置されている。この刃状物
11は、支持軸12に回転自在に軸支され、かつシリン
ダ13の作用により糸巻きボビン1の表面に刃先を押圧
する位置まで往復移動できるようになっている。このよ
うな刃状物11の刃先位置を規制するため、刃状物11
の付近には、該刃状物11の上下の位置を調整する高さ
調整用ストッパー14が設けられており、刃先の侵入深
さを調整できる。また、刃状物11は、アクチュエータ
15の作用により糸巻き用ボビン1の軸方向に平行に往
復移動できるようになっている。
【0049】さらに、糸巻用ボビン1の外周外側には、
スリット溝2の位置を検出する検知器16が配置されて
いる。検知器16には、例えば光センサーが使用され、
光センサーからの放射光がボビン表面で反射して返って
くるまでの時間、あるいはボビン表面と溝との明度差な
どによってスリット溝2の有無を検出し、かつボビン端
面(チャック3aの当接面)からのスリット溝2のボビ
ン軸方向距離L並びにボビン周方向の位置を検出するよ
うにしている。
【0050】上記検知器16が検出したスリット溝の位
置信号は、制御部17に入力され、この制御部17によ
り上記モータ7やアクチュエータ15などの駆動部が自
動制御されるようになっている。また、前述の如く、刃
状物11を金属製バネ18を用いて弾性的に支持するこ
とができる。
【0051】上述した本発明の処理装置に糸巻き用ボビ
ンの処理は、次のようにして実施される。
【0052】まず、糸巻き用ボビン1をボビンホルダー
3に装着すると、検知器16がボビン軸方向に移動して
スリット溝2の位置を検出する。その検出信号は制御部
17に入力され、その時点における刃状物11のボビン
軸方向位置とスリット溝2のボビン周方向位置と比較さ
れ、その相対差に基づいて、制御部17からモータ7と
アクチュエータ15とにそれぞれ駆動信号が出力され
る。
【0053】アクチュエータ15に対する指令によっ
て、刃状物11をスリット溝2に対向する位置までボビ
ン軸方向に移動させる。また、モータ7に対する指令に
よって、糸巻用ボビン1を刃状物11がスリット溝2の
ボビン周方向の押圧開始位置に対向する位置まで回動さ
せる。
【0054】上述のように糸巻き用ボビン1と刃状物1
1の位置がそれぞれ設定された後、シリンダ13を駆動
して刃状物11を下降させ、その刃先をスリット溝2内
に押圧挿入する。次いで、モータ7を駆動して糸巻き用
ボビン1を回動させると、刃状物11が刃先をスリット
溝2に挿入したまま、図2に示すように糸巻き用ボビン
1に随伴して共回りするので、スリット溝2が長手方向
に沿って拡幅処理される。
【0055】この拡幅処理は、スリット溝2の長手方向
全長の少なくとも20%以上を行うようにし、好ましく
は少なくとも35%以上、最も好ましくはスリット溝2
の全長にわたり行うようにする。
【0056】このようにして実施されるスリット溝の拡
幅処理は、刃状物11の刃先が糸巻き用ボビン1と同一
の周方向かつ周速度で回動しているため、刃状物11と
スリット溝2との間にはボビン周方向に実質的に相対移
動が発生しておらず、そのためスリット溝2の溝壁が削
り取られたり、表面に浮き上がってバリになったりする
ような問題が起らない。
【0057】このように糸巻用ボビン1のスリット溝2
と刃状物11とがボビン周方向に実質的に相対移動を起
こさないようにするスリット溝の拡幅処理としては、図
3に示す実施形態のように、円板刃に代えて扇状刃の刃
状物11aを使用するようにしてもよい。この扇状刃1
1aは支持軸12aに回動自在に支持され、糸巻き用ボ
ビン1の回転に随伴して共回りするようになっている。
【0058】また、図4に示す実施形態のように、直線
状の平刃からなる刃状物11bを使用することもでき
る。この実施形態では、刃状物11bの刃先がスリット
溝2に対して往復出没するようにし、その刃先がスリッ
ト溝2から外側に出る毎とに、糸巻用ボビン1を僅かな
角度ずつ回動させるようにしたものである。
【0059】図5は、さらに他の実施形態を示すもの
で、スリット溝2の溝底とほぼ同一半径を有する円弧状
の刃先をもつ刃状物11cを使用している。この実施形
態では、刃状物11cの円弧状の刃先がスリット溝2の
溝底に達するように押圧挿入されるだけで、一挙に拡幅
処理することができる。しかも、ボビン周方向の相対移
動がないから、溝壁を削り取ったり、バリを生じたりす
ることがない。
【0060】本発明で処理された糸巻き用ボビンは、ナ
イロン、ポリエステルなどの合成繊維製造用として有効
に使用することができる。
【0061】特に、2000m/分以上の高速巻取用の
糸巻取り用のボビンとして、新品としての使用あるいは
リサイクル使用として使用することができる。
【0062】
【実施例】以下、実施例、比較例を用いて、本発明を具
体的に説明する。
【0063】実施例1〜4、比較例1、2 全体が紙層によって構成された内径120mm、厚さ6
mmの紙管から形成される糸巻き用ボビンであり、管端
からボビン軸方向に10mmの位置に、図7のような糸
導入部と糸把持部からなるスリット溝(糸把持部におけ
る表面開口部の幅1.5mm、内側段差部の幅0.25
mm、深さ3.5mm、全長300mm)を穿設した1
600本の糸巻き用ボビンを用意した。
【0064】これら糸巻き用ボビンを、20デニール、
7フィラメントのナイロン6糸条を溶融紡糸し、500
0m/分で巻取る工程に使用した。巻取りにはスピンド
ル1本に8本の紙管を装着するようにしたスピンドル2
軸を装備した自動切替式ワインダーを使用し、1個当た
りのパッケージ重量が7.5kg巻(直径が365m
m)になるごとに、自動糸切替えしながら実施した。
【0065】これら糸巻きパッケージを仮撚加工糸のメ
ーカに供給して、約2カ月を経て返還された空の糸巻き
用ボビンのスリット溝は、上記表面開口部の幅が0.7
mm、内側段差部の幅が0.08mmまで閉塞した状態
になっていた。
【0066】これら使用済みの紙管について、図1のボ
ビン処理装置を使用して、それぞれ40本ずつについ
て、そのスリット溝を全長の100%(実施例1)、8
3%(実施例2)、33%(実施例3)、20%(実施
例4)、10%(比較例1)の長さに拡幅処理した。そ
の拡幅は、新品ボビンのスリット幅に対して90〜10
0%まで広げるようにした。
【0067】このように拡幅処理後の糸巻き用ボビンを
リサイクル使用に提供して、上記と同じナイロン6糸条
の巻取り工程において糸掛け成功率(糸切替え成功率)
を調べたところ、表1に示すような結果が得られた。
【0068】この表1には、比較例2として、上記スリ
ット溝の拡幅処理を何もしていない使用済み紙管40本
をリサイクル使用したときの糸掛け成功率も併記した。
【0069】表1から明らかなように、本発明によって
拡幅処理した紙管を使用した実施例1〜3においては、
ほとんど100%の糸切替え成功率で、糸切替えが実現
されることが確認できた。
【0070】本発明の臨界値である20%(実施例4)
でも、糸切替え成功率が40回試みた中で38回と高い
率を示し、実際の繊維産業での操業を考えれば、この2
0%付近が臨界値であろうことが確認できた。それ以下
であると、本発明の効果が顕著ではなくなり、そういう
処理をすることの意味が乏しくなるのである。
【0071】実施例5、比較例3また、新品の糸巻き用
ボビンでも、約2週間の間、温度30℃、湿度60%以
上の条件下で放置した場合のスリット溝は、上記表面開
口部の幅が0.7mm、内側段差部の幅が0.08mm
まで閉塞しており、使用済みの糸巻きボビンと同様の状
態になった。
【0072】これらの新品の閉塞した糸巻き用ボビンに
ついても、図1のボビン処理装置を使用して、40本に
ついてそのスリット溝を全長の100%(実施例5)の
長さに拡幅処理した。その拡幅は、新品ボビンのスリッ
ト幅に対して90〜100%まで広げるようにした。
【0073】このように拡幅処理を施した後の糸巻き用
ボビンを使用して、上記と同じナイロン6糸条の巻取り
工程において糸掛け成功率(糸切替え成功率)を調べた
ところ、表1に示すような結果が得られた。
【0074】この表1には、比較例3として、上記スリ
ット溝の拡幅処理を何もしていない新品ではあるが、ス
リット溝が上記のとおりに閉塞した糸巻取りボビン40
本を使用したときの糸切替え成功率も併記した。
【0075】表1から明らかなように、本発明によって
拡幅処理した糸巻取りボビンを使用した実施例5では、
ほとんど100%の糸切替え成功率で、糸切替えが実現
されていることがわかる。
【0076】これに対して、新品ではあるが閉塞した糸
巻取りボビンを用いた場合には、40回中、5回の失敗
が発生した。
【0077】
【表1】 本発明の糸巻き用ボビンのスリット溝の処理方法と、糸
の切替え成功率を向上させる糸巻き用ボビンのスリット
溝の処理装置は、糸の切替え成功率を向上させることが
できるものであり、繊維産業において、繊維製造工程の
糸条巻取り工程で利用できるものである。
【0078】特に、紙管から形成された糸巻き用ボビン
に糸条を巻取る際に、高い切替え成功率で糸条を巻取る
ことを実現する。
【0079】本発明の方法と装置は、代表的には、次の
2つの場合に使用できる。
【0080】第一に、いったん糸巻きが行なわれ、その
糸が使用された後に、該糸巻き用ボビンを再生使用し
て、再度の使用(リサイクル使用)を可能にする技術と
して利用することができる。
【0081】あるいは、第二に、新品の糸巻き用ボビン
を使用するに際して、該初めての使用に先立ち、該ボビ
ンの糸の切替え成功率を向上させておくための技術とし
て利用することができる。
【0082】
【発明の効果】本発明の糸巻き用ボビンのスリット溝の
処理方法と、糸の切替え成功率を向上させる糸巻き用ボ
ビンのスリット溝の処理装置は、糸の切替え成功率を向
上させることができるものであり、繊維産業において、
繊維製造工程の糸条巻取り工程で利用できるものであ
る。
【0083】特に、紙管から形成された糸巻き用ボビン
に糸条を巻取る際に、高い切替え成功率で糸条を巻取る
ことを実現する。
【0084】本発明の方法と装置は、代表的には、次の
2つの場合に使用できる。
【0085】第一に、いったん糸巻きが行なわれ、その
糸が使用された後に、該糸巻き用ボビンを再生使用し
て、再度の使用(リサイクル使用)を可能にする技術と
して利用することができる。
【0086】あるいは、第二に、新品の糸巻き用ボビン
を使用するに際して、該初めての使用に先立ち、該ボビ
ンの糸の切替え成功率を向上させておくための技術とし
て利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の糸巻き用ボビンの処理装置の
一例を示す概略モデル図である。
【図2】図2は、本発明により処理するときの糸巻き用
ボビンと刃状物との関係を示す概略説明モデル図であ
る。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態からなる糸巻き
用ボビンと刃状物との関係を示す概略説明モデル図であ
る。
【図4】図4は、本発明のさらに他の実施形態からなる
糸巻き用ボビンと刃状物との関係を示す概略説明モデル
図である。
【図5】図5は、本発明のさらに他の実施形態からなる
糸巻き用ボビンと刃状物との関係を示す概略説明モデル
図である。
【図6】図6は、本発明に使用される糸巻き用ボビンの
1例を示した概略斜視図である。
【図7】図7は、本発明において用いられる糸巻き用ボ
ビンに穿設されたスリット溝をモデル的に例示したもの
で、(A)は展開図、(B)は(A)のX−X断面図、
(C)は(A)のY−Y断面図である。
【符号の説明】
1:糸巻用ボビン 2:スリット溝 3:ボビンホルダー(チャック) 4:回転軸 5:軸受 6:ベルト 7:モータ 8:軸受 9:支持軸 10:シリンダ 11:刃状物 12:支持軸12 13:シリンダ 14:高さ調整用ストッパー 15:アクチュエータ 16:スリット溝2の位置を検出する検知器 17:制御部 18:金属製バネ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも表層が紙で構成された紙管から
    なり、その管端部表面に周方向に延びる糸把持用スリッ
    ト溝を設けた糸巻き用ボビンに対し、前記スリット溝に
    刃状物を押圧挿入してその溝幅を、該スリット溝の長手
    方向全長の少なくとも20%を拡幅処理することを特徴
    とする糸巻き用ボビンの処理方法。
  2. 【請求項2】糸巻き用ボビンをボビンホルダーに支持
    し、該糸巻き用ボビンの前記スリット溝の位置を検出す
    る検知器を配置し、該検知器の検出値に基づき前記刃状
    物および前記糸巻き用ボビンの少なくとも一方を移動し
    て該刃状物と前記スリット溝とを互いに対向させた後、
    該刃状物を前記スリット溝に押圧挿入することを特徴と
    する請求項1記載の糸巻き用ボビンの処理方法。
  3. 【請求項3】いったん糸巻きが行なわれ、その糸が使用
    された後に、その糸巻き用ボビンを再生使用に提供する
    に際して、請求項1または2記載の糸巻き用ボビンの処
    理を行うことを特徴とする糸巻き用ボビンの処理方法。
  4. 【請求項4】新品の糸巻き用ボビンを使用するに際し
    て、該初めての使用に先立ち、請求項1または2記載の
    糸巻き用ボビンの処理を行うことを特徴とする糸巻き用
    ボビンの処理方法。
  5. 【請求項5】少なくとも表層が紙で構成された紙管から
    なり、その管端部表面に周方向に延びる糸把持用スリッ
    ト溝を設けた糸巻用ボビンを支持するボビンホルダーを
    設け、該ボビンホルダー上の糸巻き用ボビンの前記スリ
    ット溝を検出する検知器と刃状物とを配置し、該検出器
    の検出信号により前記刃状物およびボビンホルダーの少
    なくとも一方を該刃状物と前記スリット溝とを互いに対
    向させる位置に移動すると共に、該刃状物と前記スリッ
    ト溝に押圧挿入する制御部を設けたことを特徴とする糸
    巻き用ボビンの処理装置。
  6. 【請求項6】前記ボビンホルダーに、前記糸巻き用ボビ
    ンのスリット溝側の管端面を規制する当接面を設けたこ
    とを特徴とする請求項5記載の糸巻用ボビンの処理装
    置。
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