JPH11265007A - 光記録媒体 - Google Patents

光記録媒体

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JPH11265007A
JPH11265007A JP6731398A JP6731398A JPH11265007A JP H11265007 A JPH11265007 A JP H11265007A JP 6731398 A JP6731398 A JP 6731398A JP 6731398 A JP6731398 A JP 6731398A JP H11265007 A JPH11265007 A JP H11265007A
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optical
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JP6731398A
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Inventor
Hideyuki Nishizawa
秀之 西沢
Akiko Hirao
明子 平尾
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 外部からの電場印加を行なうことなく、光照
射により高密度の情報を高速かつ高感度で記録可能な光
記録媒体を提供する。 【解決手段】 マトリックス材と、電荷輸送能を有する
材料と、非線形光学特性を有する材料とを含有し、光照
射により屈折率を変化せしめる効果をもって光変調され
たデータを記録する光記録媒体であって、前記光記録媒
体全体における前記電荷輸送能を有する材料の重量比が
増加すると、硬化する特性を有することを特徴とする光
記録媒体である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録媒体に係
り、特に光照射により屈折率を変化せしめる効果をもっ
て光変調されたデータを記録するフォトリフラクティブ
記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の光磁気記録や光熱相変化型の媒体
(光ディスク等)に比べはるかに高密度な記録を行なう
光記録媒体の1つとして、フォトリフラクティブ媒体が
知られている。このフォトリフラクティブ媒体は、高密
度画像など容量の大きなデータを記録することが可能で
あり、次のようなメカニズムによって記録層の屈折率を
変化せしめる媒体である。すなわち、電磁波を照射する
ことによって、その内部に存在する電荷を空間的に分離
せしめ、この電荷により発生した電場により記録材料の
屈折率を変化させる。したがって、媒体内部に発生する
電場を大きくすれば、ポッケルス効果に起因してより大
きな屈折率変化を得ることが可能となる。このようなフ
ォトリフラクティブ媒体は、電磁波の干渉パターンを直
接、屈折率格子として記録できることから、ホログラフ
ィックメモリー、および光演算素子等への応用も期待さ
れている。
【0003】近年、作製の容易さから、有機高分子化合
物を用いたフォトリフラクティブ媒体の開発が盛んにな
っている(例えば、特公平6−55901号公報等)。
しかしながら、これらの媒体を利用するに際しては、電
極を設け外部から電場を印加する必要があった(例え
ば、特開平6−175167号公報)。これは、次のよ
うな事情による。
【0004】電磁波の干渉パターンをフォトリフラクテ
ィブ媒体に照射すると、この電磁波の強度に応じた非平
衡なキャリアがフォトリフラクティブ媒体中に発生す
る。電磁波の照射面に平行となるように、外部電場Eex
をフォトリフラクティブ媒体に印加した際に発生する電
場Eは、次式(1)で表わされる。 E=E0 [(1+iEex/Ed )/{1+iEex/(Ed +Eq )}](I1 +I0 ) (1) E0 =iEd /(1+Ed /Eq ) (2) Ed =(2πD)/(μΛ) (3) Eq =(eNΛ)/(2πε) (4) I0 は照射光強度の空間平均であり、I1 は照射光強度
の極大値と極小値との差である。また、Λは最近接の極
大値間の距離(空間波長)である。εはフォトリフラク
ティブ媒体の誘電率であり、Nは空間電荷の濃度、Dは
拡散係数、μは移動度である。eは素電荷量、iは虚数
単位であり、位相を表している(例えばPochi Y
eh著、Introduction to Photo
refractive Nonlinear Opti
cs,John Wiley&Sons社、1993 年3
章)。
【0005】物理的には、Ed は電荷の拡散による電場
を表わしており、Eq はイオン化した不純物および移動
できない電荷による空間電場を表わしている。通常、拡
散係数Dと移動度μとの間には、アインシュタインの関
係式D/μ=kT/e(kはボルツマン定数、Tは絶対
温度)が成り立つと考えられているので、Ed は物質に
依存しない定数となる。このため、大きな電場Eを得る
には、Ed に比べてEq を十分大きくし、かつEexを大
きくする必要があった。Ed に比べEq を大きくするた
めには、上記式(4)において、ΛおよびNを大きくす
る必要がある。しかしながら、Λを大きくすると、干渉
縞の密度が減少するため、記録素子にした際の記録密度
が小さくなってしまう。また一方、空間電荷の濃度Nを
増やした場合には、その電荷による散乱が原因となっ
て、移動度が低下してしまうという欠点が生じる。
【0006】外部電場を印加したときの電場の形成に必
要な時間は、電荷のドリフト速度により決定されるた
め、移動度の低下は書き込み速度の低下を意味する。し
たがって、移動度の低下は極力避けなければならない。
【0007】なお、外部から電場Eexを印加した場合、
可動な電荷(キャリア)は、電場方向に移動するため、
Eは外部電場の方向にほぼ一致する。ポッケルス効果に
よる屈折率変調は電場方向に行なわれるので、この屈折
率の変化を電磁波により読み出すためには、電場の方向
を電磁波の入射方向に垂直に近づけなければならない。
このため、電場を印加する電極形状を工夫する必要があ
り、安価に作製することができなかった。さらに、通常
の光ディスクには利用できない等、用途が限定されてし
まっていた。
【0008】ホログラムメモリーは、角度多重や位相多
重など、多重記録を行なうことによって、記録密度を高
くすることが可能である。しかしながら、これらの多重
記録を行なううえで、光学主軸が存在していると、その
主軸に近い角度で記録を行なった場合と、主軸と大きな
角度をなす方向の光で記録を行なった場合とで、発生し
た干渉縞の回折効率が異なってしまうという問題があっ
た。このため、読み出し時に、検出器の感度を調整しな
ければならないという不具合が生じる。また、非線形光
学材料として、線状または平面状の分子を用いていたた
め、電場の方向とこれら分子の励起双極子の方向とが偶
然同じ方向になった場合にしか、屈折率の変化が発生し
なかった。このため、非線形光学特性を有する分子の濃
度を高めなければならず、結果として、他に必要な成分
の含有量の減少を避けることができずに性能の特性を招
いていた。例えば、電荷発生材の濃度低下は書き込み感
度の低下を招く。電荷発生材の濃度を低下させない方法
としては、例えばポーリングがある。ポーリングは、外
部から高電場を印加し、これによって分子を配向させる
技術であるが、この場合には、光学主軸の発生のみなら
ず、高電場の印加が必要という二つのデメリットが生じ
る。
【0009】通常、有機分子の組合せによりフォトリフ
ラクティブ効果を得るためには、光導電性と電気光学効
果が発現する特性とを有していることが必要である。ま
たこの電気光学特性を有する分子は、大きな電気双極子
モーメントを有することが多いので、電場によるポーリ
ングが可能なのである。しかしながら、ポーリングに利
用できる電場は、外部電場である必要はなく、内部電場
でも、ポーリング効果は起こる。
【0010】光伝導性を発現させるためには、光記録媒
体中に10%以上の電荷輸送分子を必要とし、このよう
な量で電荷輸送分子を含有させると系全体のガラス転移
温度が低下してしまう。この状態では、分子は電場など
により容易に回転するので、結果としてポーリングが起
こる。従来、ガラス転移温度を低くすることで、内部電
場による分子の配向を行ないやすくし、この結果屈折率
の変化を大きくしていた。しかしながら、内部電場によ
りポーリングが起こる場合には、多重書き込みを行なう
ため、後から光を照射する度に、内部の分子の配向方向
が変わってしまう。したがって、以前に書き込まれたデ
ータが破壊されてしまう。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、外部
からの電場印加を行なうことなく、光照射により高密度
の情報を高速かつ高感度で記録可能な光記録媒体を提供
することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、マトリックス材と、電荷輸送能を有する
材料と、非線形光学特性を有する材料とを含有し、光照
射により屈折率を変化せしめる効果をもって光変調され
たデータを記録する光記録媒体であって、前記光記録媒
体全体における前記電荷輸送能を有する材料の重量比が
増加すると、硬化する特性を有することを特徴とする光
記録媒体を提供する。
【0013】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
光記録媒体は、データを干渉縞により記録するホログラ
ム記録媒体であり、まず、このホログラムメモリーにつ
いて説明する。
【0014】ホログラムメモリーは、記録情報を含んだ
物体光と、この物体光と可干渉性を有する参照光とを媒
体内で重ねることにより干渉縞を発生させ、この干渉縞
を記録するものである。この干渉縞は、物体光の進行方
向と参照光の進行方向との垂直二等分線の方向に発生す
る。すなわち、強め合う部分も弱め合う部分も、この垂
直二等分線の方向につながっている。したがって、内部
電場はこの光の強弱に直角に発生する。再生時には、記
録時と同様の参照光を媒体に入射し、この屈折率格子に
よりブラッグ条件を満たした回折光または反射光を発生
させる。これが物体光の成分を持つことなる。つまり、
入射角度が異なる場合には、ブラッグ条件が満足されず
物体光は再生されない。したがって、媒体内部の干渉縞
のつながる方向を変えることにより、内部電場は以前の
電場の向きと異なる方向に発生し、各点での内部電場は
電場ベクトルの和になるので、その方向の光による電場
を発生させ、これを屈折率格子として記録することがで
きる。すなわち、媒体へ照射する物体光および参照光の
両方またはいずれか一方の入射角度を変えることによ
り、その物体光を先の記録の上に記録することができる
(角度多重)。
【0015】多重に記録された情報を再生する場合に
も、ブラッグ条件が異なるため、互いの記録は干渉しな
い。これを実現するシステムには、大きく分けると次の
2つがある。具体的には、1)物体光と参照光とのなす
角度を保存したまま入射角度を変える方法、2)物体光
と参照光とのなす角度を変える方法の2つである。ま
た、物体光と参照光とのなす角度を変えるためには、大
きく分けると次の2つの方法がある。すなわち、3)試
料を回転させる方法、4)光の進行方向を変える方法の
2つである。
【0016】光の進行方向を変える方法としては、例え
ば、次のような方法が挙げられる。具体的には、プリズ
ムやミラー等の光学部品に光を照射してこれら光学部品
を回転させる方法;カー効果やポッケルス効果など磁気
光学効果や電気光学効果により透過光または反射光の方
向を変える方法;液晶に回折格子を表示させ、その格子
幅を変えるなどして回折方向を変える方法;参照光と物
体光とを光強度により焦点距離を変えるセルフフォーカ
シング(3次の非線形光学特性)機能を有する媒体を透
過させ、2つの光のなす角度を変える方法などがを用い
ることができる。したがって、実際の装置においては、
前述した1)〜4)の方法を適宜組み合わせて採用する
ことができる。例えば、回転可能な台の上に記録媒体を
固定し、これを回転させることによって、1)と3)と
を合わせた方法とすることができ、物体光と参照光とを
記録媒体に導くためのミラーや回折格子やレンズ等を同
時に回転させ、記録媒体上での物体光と参照光とのなす
角を一定にした場合には、1)と4)とを合わせた方法
とすることができる。また、例えば、物体光と参照光と
を記録媒体に導くためのレンズを、音響光学効果を用い
た素子により構成し、レンズの焦点距離を変え、レンズ
を移動させながら試料も回転させることによって、2)
と3)とを合わせた方法とすることができる。この場合
には、4)の方法も合わせることになる。さらに、例え
ば、物体光と参照光とをそれぞれ記録媒体に導くための
ミラーや回折格子やレンズ等を、同時または一方だけを
自由に回転させることによって、2)と4)とを合わせ
た方法とすることができる。なお、必ずしも2つのみを
組み合わせる必要はなく、上述した1)から4)をどの
ように組み合わせてもよい。
【0017】フォトリフラクティブ媒体に要求される特
性としては、光キャリア発生能、光キャリア輸送能、お
よび光学非線形性があり、さらに実際に使用する場合に
は厚さ100μm程度の膜を形成可能でなければならな
い。したがって、数種の機能を有する分子をマトリック
スに混合した系を膜にする必要がある。この系全体のガ
ラス転移点は、通常室温近傍まで低下しており、非線形
光学特性を有する分子が回転できる状態になっている。
すると、外部電場の印加または書き込みによる内部電場
の発生によって分子の双極子が電場方向にそろい、光学
主軸が発生する。この結果発生する屈折率格子による光
の回折効率は、分子が配向しない場合に比べると高くな
る。しかしながら、多重記録を行なう場合には、後から
書き込んだ光による内部電場で分子が再配向してしまう
ため、前回書き込んだデータは消失してしまう。また、
外部電場による配向で、光学主軸が存在すると、その主
軸に近い角度の光で記録を行なった場合と、主軸と大き
な角度をなす方向の光で記録を行なった場合とで、発生
した干渉縞の回折効率が異なってしまい、これを補正す
る必要が生じる。また、主軸に対する角度が大きいと回
折効率が低くなり、書き込みが不可能となるため、記録
容量を低下させてしまう。したがって、分子の配向は、
たとえ屈折率の変化が大きくなったとしても、メモリー
の容量を低下させるので好ましくない。
【0018】例えば、高分子材料からなるマトリックス
(マトリックスポリマー)の鎖と相互作用する分子をマ
トリックス中に分散した場合、分子が2つ以上の高分子
鎖と相互作用すると、高分子鎖の自由運動が妨げられ
る。分子が動きにくくなる結果、粘性と弾性とが向上す
る。高分子に分散させる分子の量が多くなると、高分子
間の相互作用だけでなく、高分子と分子との相互作用、
または分子間の相互作用が重要になってくる。このと
き、高分子間の相互作用よりも分子間の相互作用が強い
ものになると、分子の含有量の増加とともに相互作用が
強くなり、結果として粘性と弾性とが向上する。このよ
うな系では、通常の場合とは異なって分子の含有量が高
くなっても分子が運動しにくい膜、すなわち配向しにく
い膜が形成される。
【0019】このように分子が動きにくくなる効果は、
ガラス転移温度の増加、あるいはベータ緩和の減少等に
より観測することができる。例えばガラス転移温度は、
よく知られているように、示差熱測定や誘電率の温度依
存性測定、弾性率および粘性率の測定等から得られる。
すなわち、示差熱測定の場合には、ガラス転移温度を越
えると液体状態の挙動を示すために、分子運動は急激に
盛んになり、このため熱量の吸収が生じるのを観測す
る。一方、ベータ緩和は、ガラス転移温度以下での側鎖
の運動に起因するものである。高分子の側鎖が電気双極
子をもつ場合には、側鎖が動き出すと誘電率が大きくな
り、動きが活発になると電気的な力を振り切ることが可
能になる。こうして、誘電率が再び小さくなり、温度変
化をみるとピークを示す。すなわち、本発明の光記録媒
体中において、電荷輸送能を有する分子の重量比が増大
すると、ガラス転移点以下の領域の周波数0.1〜10
kHzにおける誘電率が低下する。なおここで、0.1
〜10kHzの周波数とは、永久双極子を反映するもの
である。
【0020】また、ポリマーと分子との間の相互作用
は、電子スピン共鳴スペクトルを測定することによって
得ることができる(例えば、A.Hirao, H.Nishizawa, an
d M.Sugiuchi, Journal Applied Physics Vol.74, No.
2, pp1083-1085 )。つまり、ポリマーと分子との間に
電荷移動相互作用が存在する場合には、電荷密度の偏り
が生じ、これによりラジカルイオンが発生して、このラ
ジカルを電子スピン共鳴で測定することになる。したが
って、ポリマーと分子とを混合する前の状態では、スピ
ン濃度が観測されないほど小さい場合でも、混合して相
互作用が発生した場合には、スピン濃度が高くなる。例
えば、混合する前の状態、すなわちマトリックス材単独
および電荷輸送能を有する材料単独の電子スピン共鳴か
ら得られるスピン濃度は、いずれも1×1013(spi
ns/cm3 )以下である。フォトリフラクティブ素子
に用いる場合には、電荷輸送層を有する材料とマトリッ
クス材とを混合した後のスピン濃度が3×1013(sp
ins/cm3 )以上であることが好ましく、5×10
13(spins/cm3 )以上であることがより好まし
い。
【0021】従来、ガラス転移温度を低くすることによ
って、内部電場に起因した分子の配向を行ないやすく
し、この結果、屈折率の変化を大きくしていた。しかし
ながら、このような系は、メモリーには向いていない。
高分子等のマトリックス材と電荷輸送能を有する分子と
を混合した系において、分子の混合比の増加とともに粘
性や弾性が高くなる組合せを用いることによって、分子
の配向を少なくすることが可能であり、このため、本発
明により多重記録が可能な媒体を作製することができ
る。
【0022】本発明の光記録媒体において、マトリック
ス材としては、例えば有機高分子、無機ガラス、有機分
子をアモルファス状態にした有機ガラス等が挙げられ
る。特に、相溶性(お互いの溶けやすさ)の点から、有
機高分子が好ましい。
【0023】使用され得る有機高分子としては、光学的
に不活性であり、ガラス転移温度が100℃以下程度に
なるように分子量等が設計されたものが好ましいが、特
に限定されない。例えば、ポリエチレン樹脂、ナイロン
樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ
アリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、
スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセタ
ール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、
ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポ
リフェニレンオキシド樹脂、アルキド樹脂、スチレン−
無水マレイン酸共重合体樹脂、フェノール樹脂、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステルカーボネー
ト、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアク
リレート、およびパラフィンワックス等が挙げられる。
【0024】これらの有機高分子は、所望の特性が得ら
れるよう、電荷輸送能を有する材料との組み合せによっ
て適宜選択することができる。上述したようなマトリッ
クス材の含有量は、本発明の光記録媒体中、10重量%
以上90重量%以下程度とすることが好ましい。10重
量%未満の場合には、マトリックス間のからみ合いが少
ないため膜形成が困難となり、一方90重量%を越える
と電荷輸送分子間の距離が長くなるため、電荷輸送能を
失うおそれがある。
【0025】また、本発明の光記録媒体に用いられる電
荷輸送材は、ホールまたはエレクトロンを輸送するもの
であり、例えばホッピング伝導により電荷を輸送する機
能を有する任意の材料を使用することができる。電荷輸
送材は、分子単独でもポリマーでも、さらには他のポリ
マーとの共重合体となっていてもよい。例えば、以下に
列挙するものが挙げられる。すなわち、インドール、カ
ルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾ
ール、イミダゾール、ピラゾール、オキサアジアゾー
ル、ピラゾリン、チアチアゾール、トリアゾールなどの
含窒素環式化合物、またはその誘導体、またはこれらを
主鎖または側鎖に有する化合物、ヒドラゾン化合物、ト
リフェニルアミン類、トリフェニルメタン類、ブタジエ
ン類、スチルベン類、アントラキノンジフェノキノン等
のキノン化合物類またはその誘導体、またはこれらを主
鎖または側鎖に有する化合物、C60、C70等のフラーレ
ンならびにその誘導体である。さらには、ポリアセチレ
ン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の
π共役系高分子やオリゴマー;またはポリシラン、ポリ
ゲルマン等のσ共役系高分子やオリゴマー;アントラセ
ン、ピレン、フェナントレン、およびコロネンなどの多
環芳香族化合物等が挙げられる。
【0026】電荷輸送材の添加量は、前述のマトリック
ス材に対して0.1重量%以上3重量%以下程度である
ことが望まれる。0.1重量%未満の場合には十分な機
能を得ることが困難となり、一方3重量%を越えると、
空間電荷が保持されにくく光記録媒体として機能しない
おそれがある。
【0027】なお、本発明の光記録媒体においては、電
荷輸送材のイオン化ポテンシャル(Highest Occupied M
olecular Orbitalと真空準位との差)に比べて、ポリマ
ーの電子親和力(Lowest Occupied Molecular Orbital
と真空準位との差)が小さいことが好ましい。これによ
って、電荷輸送材とマトリックスポリマーとの間で電子
の交換が起こり、この間に結合力が働くからである。
【0028】例えばマトリックス材としてポリマーを用
いる場合、ポリマーを構成するモノマーユニットの体積
に比べて、電荷輸送材の体積が小さいことが好ましい。
これにより、ポリマー中に形成される空間(自由体積)
の中に電荷輸送材が入り込むことが可能となり、ポリマ
ーと電荷輸送材との距離が近づくため、2つの間の結合
が強くなるからである。
【0029】本発明の光記録媒体に含有される非線形光
学特性を有する材料としては、例えばC60、2−(N,
N−ジメチルアミノ)−5−ニトロアセトアニリド(D
AN)などを用いることができるが、上述したような電
荷輸送材、あるいはマトリックス材としての機能を兼ね
てもよい。
【0030】非線形光学特性を有する材料の含有量は、
マトリックスに対して0.1重量%以上40重量%以下
であることが好ましい。0.1重量%未満の場合には、
材料の非線形光学特性が小さく、フォトリフラクティブ
効果の発現が困難となり、一方40重量%を越えると、
非線形光学特性を有する分子の永久双極子モーメントが
電荷捕獲サイトとして働くため、電荷輸送能を失うおそ
れがある。
【0031】上述したような成分に加えて、本発明の光
記録媒体には、さらに電荷発生能を有する材料が含有さ
れていてもよい。電荷発生材としては、書き込み光を吸
収して電荷を発生する任意の材料を用いることができ
る。かかる材料としては、例えば、セレンおよびセレン
合金、CdS、CdSe、AsSe、ZnO、α−Si
などの無機光導電体、金属フタロシアニン、無金属フタ
ロシアニン、またそれらの誘導体等のフタロシアニン色
素/顔料、ナフタロシアニン色素/顔料、モノアゾ、ジ
スアゾ、トリスアゾなどのアゾ系色素/顔料、ペリレン
系染顔料、インジゴ系染顔料、キナクリドン系染顔料、
アントラキノン、アントアントロン等の多環キノン系染
顔料、シアニン系染顔料、例えば、TTF−TCNQで
代表されるような電子受容性物質と電子供与性物質とか
らなる電荷移動錯体、アズレニウム塩、C60、C70で代
表されるフラーレンならびにその誘導体等が挙げられ
る。
【0032】これらの電荷発生材は、単独で使用しても
2種類以上の化合物を使用しても構わない。電荷発生材
は、書き込み光を吸収して電荷を発生するものである必
要があるので、書き込み光に対する光学濃度が非常に高
い電荷発生材を用いた場合には、素子の内部の電荷発生
材まで書き込み光が到達しないおそれがある。このよう
な不都合を避けるために、素子とした際の光学密度が1
-6から10の範囲であることが好ましい。
【0033】また、電荷発生材の添加濃度が高すぎる場
合も、内部まで書き込み光が到達しないため、内部まで
書き込むことが困難となる。一方、添加濃度が過剰に低
い場合には発生する電荷密度が低く、所望の内部電場が
得られない。したがって、電荷発生材の添加濃度は、素
子としたときの光学密度が10-6から10の範囲内とな
るように調整することが好ましい。
【0034】電荷発生材の添加量は、具体的には、記録
媒体全体に対して0.01重量%〜20.0重量%程度
とすることが望まれる。0.01重量%未満の場合に
は、光照射で発生する単位体積当たりの電荷が小さく、
十分な内部電荷の発生が困難となり、一方20.0重量
%を越えると、電荷発生材同士の会合確率が高くなり、
媒体の導電率が上昇して高い内部電場を発生できなくな
るおそれがある。
【0035】上述したような電荷発生材から生じたキャ
リアは、電荷輸送材に注入された後、電荷輸送材間を移
動して電場を形成する。したがって、用いる電荷輸送材
のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、他の分子
と以下に示す関係を有していることが望ましい。すなわ
ち、キャリアがホールの場合には、電荷発生材のイオン
化ポテンシャルIP (CGM)と、電荷輸送材のイオン
化ポテンシャルIP (CTM)とは以下の関係を満たす
ことが好ましい。
【0036】IP (CTM)<IP (CGM) またこのとき、電子は電荷発生材から移動しないことが
要求されるため、電荷発生材の電子親和力χ(CGM)
と電荷輸送材の電子親和力χ(CTM)とは、以下の関
係を満たすことが好ましい。
【0037】χ(CTM)<χ(CGM) 一方、キャリアがエレクトロンの場合には、電荷発生材
および電荷輸送材のイオン化ポテンシャルおよび電子親
和力は、以下の関係にあることが望まれる。
【0038】IP (CGM)<IP (CTM) χ(CGM)<χ(CTM) さらにまた、例えば非線形光学材料等の他の分子やホス
トマトリックスとは、相互作用がないことが望ましい。
【0039】本発明の光記録媒体は、例えば、上述した
ようなマトリックス材料と、電荷輸送材と、非線形光学
特性を有する材料とを混合して溶液を得、溶媒を蒸発さ
せることによって作製することができる。ここで用い得
る溶媒としては、例えば、トリクロロエタン、トルエン
等が挙げられる。あるいは、溶媒を用いず、例えば分子
混合物を加熱した状態で微粒子を混合させ、急冷させる
ことによって本発明の光記録媒体を作製してもよい。
【0040】上述したような溶液を用いて本発明の光記
録媒体を製造する場合には、例えば、スピンコーティン
グ法、浸漬塗布法、ローラ塗布法、スプレー塗布法、ワ
イヤーバー塗布法、ブレード法などの各種塗布方法、イ
ンジェクション法などの注型を用いた方法、真空蒸着
法、スパッタリング法、またはプラズマCVD法などを
用いて、基板上に塗膜を形成する。
【0041】基板としては、例えば、金属板(アルミニ
ウム、銅、鉄等);ガラス;石英;ポリカーボネート、
ポリメチルメタクリレート、アクリル等のポリマー等を
用いることができる。ただし、基板を通して光を照射す
る場合には、基板は照射光に対してある程度の透明性を
有していることが要求される。こうした材料としては、
例えば、ガラス、アクリル樹脂などのプラスチックが挙
げられる。
【0042】本発明の光記録媒体は、典型的には、例え
ば以下のようにして製造することができる。まず、マト
リックス材と電荷輸送能を有する材料と非線形光学特性
を有する材料とをトルエンに溶解し、室温(20℃)〜
200℃で加熱し、これを留去する。次いで、100〜
180℃程度に加熱した石英基板上に膜厚調節用のスペ
ーサーを配置し、この上に先の乾燥させた物質を載せ
る。上部からもう1つの基板を押し当てることにより、
所望の膜厚の試料を作製することができる。
【0043】なお、マトリックスとしてアモルファスな
ポリマーを用い、その中にキャリア発生材とキャリア輸
送材と非線形光学材料とがドープされた系が広く研究さ
れている。この系に代表されるフォトリフラクティブ媒
体では、マトリックスの温度特性が、ホログラムメモリ
ーの特性である回折効率、書き込み時間、そして記録寿
命に大きく影響を及ぼす。例えば、マトリックスを構成
するポリマーの主鎖の動き易さの指標の1つとして、ガ
ラス転移温度(Tg )が知られている。フォトリフラク
ティブ媒体のTg は、ポリマーのTg よりも低下する。
g が低い場合には、回折効率は高くなり、書き込み時
間は速くなるものの、記録寿命が短くなることが報告さ
れている。これは、以下の理由によると考えられる。す
なわち、Tg よりも50℃低い温度で実際には分子が動
き始めるため、Tg が350Kである媒体を室温(30
0K)に放置すると、その媒体構成分子は動き得る状態
にあるといえる。そのため、ホッピング確率が高くな
り、書き込みに要する時間が短くなる。また、非線形光
学分子は電場の方向に配向して、回折効率が高くなる。
しかしながら、記録後長時間放置した場合には、非線形
光学材料などの結晶が析出して記録を読み出すことが困
難となったり、空間的にトラップされたキャリアが移動
することにより記録が消去されて記録寿命が短くなって
しまう。
【0044】本発明の光記録媒体においては、マトリッ
クス中の電荷輸送材の濃度を高くすることが可能で、電
荷の移動が速やかに起こるので書き込み時間を短くする
ことができ、しかも、マトリックスが強く拘束されてお
り、書き込み後の電場により非線形分子の方向緩和が起
こらないので、記録寿命を著しく長くすることができ
た。
【0045】上述したような本発明の光記録媒体は、2
つの光による干渉縞を形成することによって情報が記録
されるので、光源としては可干渉性(コヒーレント)の
光を用いることができる。干渉縞を得るには、同一の光
源の光を分割して用いることが好ましいが、出力波長の
同じ2つの光源に相互に帰還をかける(出力光を相手に
入力する)等して、異なる光源を用いることも可能であ
る。
【0046】情報を記録する際には、2つの光の一方に
情報を付加させ、これともう一方の光との間に生ずる干
渉縞を媒体に記録する。このため、2つの光間に光路差
を生じるので、コヒーレント長の短い光であると干渉縞
を生じない。このような理由から、光路差より長いコヒ
ーレンスをもつレーザーが、光源として好ましい。通
常、コンピューター用の端末やビデオ編集、またはデー
タベース用メモリ等への応用を考えると、装置内部での
光路差は1cm以上程度と考えられるので、ガスレーザ
ーや半導体レーザー、特に帰還をかけコヒーレンス長を
長くした半導体レーザーが光源として好ましく用いられ
る。
【0047】また、上述のようにして記録された情報
は、以下のようにして消去することができる。第1の方
法は、媒体に一様に光を照射したり熱を加えることによ
ってトラップされた電荷を再分布させ、電荷分布を一様
にする方法であり、第2の方法はトラップされた電荷を
極性の反対の電荷と再結合させる方法である。
【0048】電荷分布を一様にする第1の方法は、媒体
の広い領域に記録された情報を消去するのに適した方法
であり、一方、電荷を消去する第2の方法は、局所的に
書き込まれた記録を消去するのに適している。この場
合、極性の反対の電荷を発生する機構を媒体に付与する
必要があり、例えば、発生する電荷がキャリアの場合に
は、エレクトロン発生材とその輸送材を含有させる必要
がある。
【0049】本発明においては、マトリックス材と、電
荷輸送能を有する材料と、非線形光学特性を有する材料
とを含有し、光照射により屈折率を変化せしめる効果を
もって光変調されたデータを記録する光記録媒体におい
て、光記録媒体全体に対する電荷輸送能を有する材料の
重量比が増加すると、硬化する特性を付与しているの
で、内部電場や外部電場による分子配向に起因する光学
主軸の発生を抑制し、光記録媒体中における電荷輸送材
の濃度を高めることが可能な高感度、高速なメモリーを
実現することが初めて可能となった。
【0050】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例および比較
例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明
はこれらの例に限定されるものではない。 (実施例1)まず、電荷輸送材としてのオキサジアゾー
ル誘導体と、マトリックス材としてのビスフェエノール
A型ポリカーボネートとを、(マトリックス:電荷輸送
材)の重量混合比が1:2、1:1、2:1、3:1に
なるように混合し、それぞれトリクロロエタンに溶解し
て4種類の溶液を調製した。ここで用いた各成分を以下
の化学式に示す。
【0051】
【化1】
【0052】一方、石英上に半透明アルミ電極を設けた
基板を用意し、前述のようにして得られた各溶液を、そ
れぞれこの基板上に塗布し、140℃で乾燥することに
より厚さ15μm程度の膜を形成した。この膜上に金を
蒸着して、試料を作製した。
【0053】こうして作製された試料を温度可変のクラ
イオスタット中に固定し、上下に形成された金とアルミ
とを電極として交流電圧を印加して誘電率を測定し、得
られた結果を図1のグラフに示す。
【0054】図1のグラフ中、曲線a、b、c、dは、
それぞれ(マトリックス:電荷輸送材)の重量混合比が
1:2、1:1、2:1、3:1の試料についての結果
を表わしている。
【0055】各曲線において310Kから始まる誘電率
の増加は、ガラス転移によるものである。260Kから
300Kにかけてのピークとキンクがポリマー中の双極
子の配向による吸収を示している。この系では、電荷輸
送材の増加とともに吸収が弱くなっており、電荷輸送材
の増加にもかかわらず、系全体で硬化して、分子が配向
しにくい状態になっていることがわかる。
【0056】次に、光記録媒体としての性能を評価する
ために、2光波混合法によって書き込み時間を評価し
た。用いた装置の概略を図2に示す。図2に示すよう
に、アルゴンレーザー3から照射された光は、まずビー
ムスプリッター4により第1のビーム1と第2のビーム
2とに分けられる。第1のビーム1はミラー5で、ビー
ム2はミラー6でそれぞれ反射した後、交差する位置に
配置された試料7を透過する。試料を透過したビーム1
の強度は検出器10により測定され、ビーム2の強度は
検出器11で測定される。
【0057】なお、第1および第2のビームは、それぞ
れシャッター8および9によって独立に遮断することが
できる。試料7がフォトリフラクティブ特性を有してい
ると、2つのビーム1および2を照射したときには試料
内部で交差した2つのビームの干渉縞により書き込みが
起こり、内部に屈折率格子が発生する。このとき、試料
内に光学主軸が存在していると、その主軸とビームの入
射角とで決まるいずれかのビームの強度が強くなり、他
方の強度は弱くなる。また、試料に光学主軸が存在しな
い場合には、発生した屈折率格子によりビーム強度の強
いビームが、弱いビームの方向に回折される量と、弱い
ビームが強いビームの方向に回折される量が異なるため
(回折効率は同じ)、検出器の場所では、弱いビームの
強度は強くなり、強いビームの強度は弱くなる。
【0058】したがって、例えば、ビーム2の強度をビ
ーム1の強度より高めておき、ビーム2をシャッター9
で遮断した状態でビーム1の強度を検出器10により測
定しはじめ、この後シャッター9を開けてビーム2を透
過させると、検出器10の強度は書き込みが進むにつれ
増加し、やがて平衡状態になる。このような測定によっ
て、書き込みに必要な時間を評価することができる。
【0059】本実施例の試料の作製に当たっては、ま
ず、電荷輸送材としてのオキサジアゾール誘導体と、マ
トリックス材としてのビスフェノールA型ポリカーボネ
ートと、電荷発生材および非線形光学特性を有する材料
としてのフラーレンC60およびインジゴ誘導体と、非線
形光学特性を示す分子2−(N,N−ジメチルアミノ)
5−ニトロアセトニトリド(DAN)とを、重量比で4
0:20:8:32の割合で塩化メチレンに溶解して溶
液を得た。ここで用いた各成分を下記化学式に示す。
【0060】
【化2】
【0061】上述のようにして得られた溶液を、石英基
板上にキャストした後、150℃で乾燥して厚さ6μm
の膜を形成して作製した。得られた試料について、ヘリ
ウム−ネオンレーザーを用いた2光波混合の実験を行な
い、その測定結果を図3のグラフに示す。入射前のビー
ム1の強度は2.2mWであり、ビーム2の強度は2.
7mWであった。また、2つのビーム強度が平衡になる
までの時間は10秒程度であり、短時間での書き込みが
可能であることが確認された。
【0062】(実施例2)まず、電荷輸送材としてのピ
ラゾリン誘導体と、マトリックス材としてのポリアリレ
ートとの重量混合比が1:1になるように混合し、トリ
クロロエタンに溶解して溶液を調製した。ここで用いた
各成分を以下の化学式に示す。
【0063】
【化3】
【0064】上述のようにして得られた溶液をシリコー
ン樹脂上にキャストし、乾燥して厚さ200μm程度の
膜を形成した。その後、この膜をシリコーン樹脂から剥
離して、電子スピン共鳴の測定管に窒素とともに封入し
て、次のようにして電子スピン共鳴スペクトルを測定し
た。
【0065】まず、基準物質として、既知濃度の1,1
−ジフェニル−2−ピクリル−ヒドラジルの試料の電子
スピン共鳴スペクトル(吸収したマイクロ波強度の微
分)のピークを2回積分して、吸収したマイクロ波の積
分、すなわち全吸収量を得た。なお、1,1−ジフェニ
ル−2−ピクリル−ヒドラジルは、1分子中にスピン1
個をもつ部位を有している。したがって、前述の積分に
より得られた全吸収量と、その濃度とで検量線を作製
し、試料の吸収したマイクロ波強度と比較して、スピン
濃度を算出した。
【0066】得られた結果を、図4のグラフに示す。な
お、図4(a)は、マトリックス材としてのポリマー単
独の場合であり、図4(b)は、ピラゾリン誘導体の場
合であり、図4(c)は、ポリマーとピラゾリン誘導体
との混合物の場合である。
【0067】マトリックス材としてのポリマーとピラゾ
リン誘導体とを混合した場合(図4(c))のスピン濃
度は、7.9×1013(spins/cm3 )であっ
た。しかしながら、マトリックス材単体(図4(a))
または電荷輸送材単体(図4(b))では、スペクトル
は観測されず、したがってスピン濃度は0であった。こ
のため、ポリマーと電荷輸送材との2つを混合したとき
に測定されたスピンは、2つの間の相互作用を示すもの
と判断できた。
【0068】本実施例の試料の作製に当たっては、ま
ず、電荷輸送材としてのピラゾリン誘導体と、マトリッ
クス材としてのポリアリレートと、下記化学式で表わさ
れる電荷発生材としてのチタニルフタロシアニンの微粒
子と、非線形光学特性を有する材料としてのDANと
を、重量比で40:20:8:32の割合で塩化メチレ
ンに溶解して溶液を得た。
【0069】
【化4】
【0070】上述のようにして得られた溶液を石英基板
上にキャストした後、150℃で乾燥して厚さ6μmの
膜を形成して、試料を作製した。こうして得られた試料
について、ヘリウム−ネオンレーザーを用いた2光波混
合の実験を行なったところ、入射前のビーム1の強度は
2.2mWであり、ビーム2の強度は2.7mWであっ
た。また、2つのビーム強度が平衡になるまでの時間は
7秒程度であり、短時間での書き込みが可能であること
が確認された。 (比較例1)まず、電荷輸送材としてのオキサジアゾー
ル誘導体と、マトリックスとしての下記化学式で表わさ
れるポリスチレンとを、重量混合比が1:2,1:1、
2:1、3:1になるように混合し、それぞれトリクロ
ロエタンに溶解して4種類の溶液を調製した。
【0071】
【化5】
【0072】一方、石英上に半透明アルミ電極を設けた
基板を用意し、前述のようにして得られた各溶液を、そ
れぞれこの基板上にに塗布し、140℃で乾燥すること
により厚さ12μm程度の膜を形成した。この膜上に金
を蒸着して、試料を作製した。
【0073】こうして作製された試料を温度可変のクラ
イオスタット中に固定し、上下に形成された金とアルミ
とを電極として交流電圧を印加して誘電率を測定した。
この結果、ガラス転移温度以下ではピークやキンクを示
さず、また電荷輸送材の含有量の増加とともに、ガラス
転移に起因する吸収の裾が低温側に広がってきた。
【0074】本比較例の試料の作製に当たっては、ま
ず、電荷輸送材としてのオキサジアゾール誘導体と、マ
トリックス材としてのビスフェノールA型ポリカーボネ
ートと、電荷発生材および非線形光学特性を有する材料
としてのフラーレンC60およびインジゴ誘導体と、非線
形光学特性を示す分子2−(N,N−ジメチルアミノ)
5−ニトロアセトニトリド(DAN)とを、重量比で4
0:20:8:32の割合で塩化メチレンに溶解して溶
液を得た。これを石英基板上にキャストした後、150
℃で乾燥して厚さ6μmの膜を形成して作製した。
【0075】実施例1と同様の2光波混合の測定を行な
い、得られた測定結果を図5のグラフに示す。2つのビ
ームの強度が平衡になるまでの時間は3分程度であり、
実施例1に比べて非常に遅いことがわかる。書き込みが
遅いことは、記録媒体として致命的な欠点である。 (比較例2)まず、電荷輸送材としてのピラゾリン誘導
体と、マトリックスとしてのポリスチレンとの重量混合
比が1:1になるように混合し、これをトリクロロエタ
ンに溶解して溶液を調製した。この溶液をシリコーン樹
脂上にキャストし、乾燥して厚さ200μm程度の膜を
形成した。その後、この膜をシリコーン樹脂から剥離
し、電子スピン共鳴の測定管に窒素とともに封入して、
前述の実施例2の場合と同様にして電子スピン共鳴スペ
クトルを測定した。その結果、このスピン濃度は、2.
4×1013(spins/cm3 )であった。しかしな
がら、電荷輸送材単体またはマトリックス材単体では、
スペクトルは観測されず、したがってスピン濃度は0で
あった。このため、マトリックス材と電荷輸送材との2
つを混合したときに測定されたスピンは、2つの間の相
互作用を示すものと判断できた。
【0076】本比較例の試料の作製に当たっては、ま
ず、電荷輸送材としてのピラゾリン誘導体と、マトリッ
クス材としてのポリスチレンと、電荷発生材としてのチ
タニルフタロシアニンの微粒子と、非線形光学特性を有
する材料としてのDANとを、重量比で40:20:
8:32の割合で塩化メチレンに溶解して溶液を得た。
この溶液を、石英基板上にキャストした後、150℃で
乾燥して厚さ6μmの膜を形成して、試料を作製した。
【0077】こうして得られた試料について、ヘリウム
−ネオンレーザーを用いた2光波混合の実験を行なった
ところ、入射前のビーム1の強度は2.2mWであり、
ビーム2の強度は2.7mWであった。また、2つのビ
ーム強度が平衡になるまでの時間は2分程度と、実施例
1および2に比べて著しく長いことがわかった。
【0078】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、外
部からの電場印加を行なうことなく、光照射により高密
度の情報を高速かつ高感度で記録可能な光記録媒体が提
供される。かかる光記録媒体は、内部電場や外部電場に
起因した光学主軸の発生を抑制して、マトリックス中に
おける電荷輸送材の割合を高めることが可能となり、こ
れに起因した多くの利点を有し、その工業的価値は絶大
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光記録媒体における誘電損失の温度依
存性を表わすグラフ図。
【図2】2光波混合の実験装置を示す概略図。
【図3】実施例1の光記録媒体の2光波混合の結果を表
わすグラフ図。
【図4】実施例2の光記録媒体の電子スピン共鳴スペク
トル。
【図5】比較例2の光記録媒体の2光波混合の結果を表
わすグラフ図。
【符号の説明】
1…第1のビーム 2…第2のビーム 3…レーザー 4…ビームスプリッター 5、6…ミラー 7…試料 8,9…シャッター 10,11…光検出器

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マトリックス材と、電荷輸送能を有する
    材料と、非線形光学特性を有する材料とを含有し、光照
    射により屈折率を変化せしめる効果をもって光変調され
    たデータを記録する光記録媒体であって、 前記光記録媒体全体における前記電荷輸送能を有する材
    料の重量比が増加すると、硬化する特性を有することを
    特徴とする光記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記記録媒体全体に対する前記電荷輸送
    能を有する材料の重量比が増加すると、ガラス転移点以
    下の領域の周波数0.1〜10kHzにおける誘電率が
    低下する請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記マトリックス材単独の電子スピン共
    鳴から得られるスピン濃度は、1×1013(spins
    /cm3 )以下であり、前記電荷輸送能を有する材料単
    独の電子スピン共鳴から得られるスピン濃度は、1×1
    13(spins/cm3 )以下であり、前記マトリッ
    クス材と前記電荷輸送能を有する材料とを混合した場合
    のスピン濃度は3×1013(spins/cm3 )以上
    である請求項1に記載の光記録媒体。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007227795A (ja) * 2006-02-24 2007-09-06 Dainippon Printing Co Ltd 有機電子デバイス用有機組成物および有機電子デバイス

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007227795A (ja) * 2006-02-24 2007-09-06 Dainippon Printing Co Ltd 有機電子デバイス用有機組成物および有機電子デバイス

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