JPH10213825A - フォトリフラクティブ記録媒体および記録装置 - Google Patents

フォトリフラクティブ記録媒体および記録装置

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JPH10213825A
JPH10213825A JP1529997A JP1529997A JPH10213825A JP H10213825 A JPH10213825 A JP H10213825A JP 1529997 A JP1529997 A JP 1529997A JP 1529997 A JP1529997 A JP 1529997A JP H10213825 A JPH10213825 A JP H10213825A
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JP
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light
photorefractive
recording medium
medium
recording
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JP1529997A
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English (en)
Inventor
Hideyuki Nishizawa
秀之 西沢
Akiko Hirao
明子 平尾
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication of JPH10213825A publication Critical patent/JPH10213825A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 読み出し時に検出器の感度を調整する必要が
なく、かつ外部電場を印加して分子を配向せしめなくと
も高い回折効率が得られるフォトリフラクティブ記録媒
体を提供する。 【解決手段】 立体的に異なる3方向に光学軸を有し、
直径0.5nm以上1000nm以下のクラスター状物
質からなる非線形光学材料と、電荷発生剤と、電荷輸送
剤とを含有し、光伝導性を有するフォトリフラクティブ
記録媒体である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録媒体に係
り、特に多重記録を好適に行ない得る光記録媒体および
記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の光磁気記録や光熱相変化型の媒体
(光ディスク等)に比べはるかに高密度な記録を行なう
光記録媒体の1つとして、フォトリフラクティブ媒体が
知られている。このフォトリフラクティブ媒体は、高密
度画像など容量の大きなデータを記録することが可能で
あり、次のようなメカニズムによって記録層の屈折率を
変化せしめる媒体である。すなわち、電磁波を照射する
ことによって、その内部に存在する電荷を空間的に分離
せしめ、この電荷により発生する電場により記録材料の
屈折率を変化させる。したがって、媒体内部に発生する
電場を大きくすれば、ボッケルス効果により大きな屈折
率変化を得ることが可能となる。このようなフォトリフ
ラクティブ媒体は、電磁波の干渉パターンを直接記録で
きることから、ホログラフィックメモリー、および光演
算素子等への応用も期待されている。
【0003】近年、結晶材料の作製が容易なことや、特
性制御の困難性を回避できるなどの理由から、有機高分
子化合物を用いたフォトリフラクティブ媒体の開発が盛
んになっている(例えば、特公平6−55901号公
報)。
【0004】ホログラムメモリーは、角度多重や位相多
重など多重記録を行なうことによって、記録密度を高く
することが可能である。なお、ホログラフ記録は、デー
タを干渉縞で記録し、記録された格子によるブラッグ反
射を読み出すものである。従来は非線形光学材料とし
て、線状または平面状分子が用いられていたため、干渉
縞により発生した電場の方向とこれら分子の励起双極子
の方向とが、偶然同じ方向になった場合にしか屈折率の
変化が発生しなかった。このため、非線形光学特性を有
する分子の濃度を高める必要があり、結果として他の成
分の量が相対的に少なくなってしまい種々の問題が引き
起こされていた。例えば、電荷発生剤の濃度が低下する
と書き込み感度が低下してしまう。外部から高電場を印
加し、これによって分子を配向させるというポーリング
を採用すれば、濃度低下を防止することができるもの
の、この場合には光学主軸の発生に加えて、外部から高
電場の印加が必要であるという二つのデメリットが生じ
る。
【0005】さらに、マトリックス中にこれら分子を分
散した系は、アモルファスであり、分子の方向はランダ
ムである。このため、内部電場に感応し光学特性の変化
に寄与できる分子の数は小さくなる。
【0006】上述したポーリングは、系をガラス転移点
近傍またはそれ以上の温度に加熱して分子が回転できる
ようにしておき、外部から大きな電場を印加し、これに
よって、分子の双極子を電場方向にそろえる方向であ
る。しかしながら、この方法では、光学主軸が発生して
しまう。
【0007】多重記録を行なううえで、光学主軸が存在
すると、その主軸に近い角度の光で記録を行なった場合
と、主軸と大きな角度をなす方向の光で記録を行なった
場合とで、発生した干渉縞の回折効率が異なってしまう
ので、読み出し時に検出器の感度を調整してこれを補正
する必要があった。また主軸に対する角度が大きいと回
折効率が低くなり書き込みが不可能となるため、記録容
量の低下につながってしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、読み
出し時に検出器の感度を調整する必要がなく、かつ外部
電場を印加して分子を配向せしめなくとも高い回折効率
が得られるフォトリフラクティブ記録媒体を提供するこ
とを目的とする。
【0009】また本発明は、光検出器の感度調整や外部
電場の印加を必要とせず、しかも高い回折効率で、媒体
に情報を記録可能なフォトリフラクティブ記録装置を提
供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、立体的に異なる3方向に光学軸を有し、
直径0.5nm以上1000nm以下のクラスター状物
質からなる非線形光学材料と、電荷発生剤と、電荷輸送
剤とを含有し、光伝導性を有するフォトリフラクティブ
記録媒体を提供する。
【0011】また本発明は、立体的に異なる3方向に光
学軸を有し、直径0.5nm以上1000nm以下のク
ラスター状物質からなる非線形光学材料、電荷発生剤お
よび電荷輸送剤を含有し、光伝導性を有するフォトリフ
ラクティブ記録媒体と、前記記録媒体に参照光を照射す
る第1の光源と、参照光ビームに情報を付加した物体光
を前記記録媒体の第1の光源からの照射部の少なくとも
一部に照射する第2の光源と、前記第1の光源から照射
される参照光のうち、前記フォトリフラクティブ記録媒
体によって回折された成分を読取る検出器とを具備する
ことを特徴とするフォトリフラクティブ記録装置を提供
する。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
フォトリフラクティブ記録媒体において、クラスター状
物質とは、同一原子の集合体であって、原子の個数が1
000個以下のものをいう。かかるクラスター状物質
は、カーボンクラスターであるフラーレン類や金クラス
ター等の金属クラスターまたは半導体微粒子など、クラ
スターそのものの電子構成に起因する光学的非線形性を
有する。また、クラスター状物質は、クーロンブロッケ
ード等のように電子数が通常の結晶状態に比べて少ない
という統計的な性質に起因する、あるいはプラズモンや
ポーラリトン等の準粒子に起因する光学的非線形性を有
している。
【0013】このような材料は、立体的に異なる3方向
に光学軸を有しているので、非線形光学材料として配合
することにより、アモルファス状態での特性を向上させ
ることができ、加えて、多重書き込みも容易に行なうこ
とが可能となる。
【0014】非線形光学材料の有する光学軸のうち最も
大きな光学軸をx軸とし、x軸と直交する任意の方向を
y軸とし、さらに非線形光学材料のもつ非線形光学定数
のx,y,z軸成分をそれぞれγx,γy,γzとした
ときに、γy/γxおよびγz/γxが0.2以上、好
ましくは0.6以上であり、C60のような1のものが最
適である。
【0015】なお、フラーレン類をフォトリフラクティ
ブ材料と混合して電荷移動錯体を形成させることにより
電荷発生効率を大きくすること、すなわち増感すること
が試みられている。しかしながら、電荷移動錯体を形成
した場合には、フラーレン類の立体的な対称性は著しく
損なわれて束縛されてしまうために、上述したような効
果は期待できない。
【0016】本発明においては、上述したような非線形
光学材料の直径を、0.5nm以上1000nm以下に
制限している。この理由は、直径が0.5nm未満であ
るとクラスター状となり得ず、一方1000nmを越え
ると、本発明で目的としている記録波長で情報を記録す
ることができないからである。なお、1000nmとい
う直径の最大値は、原子数1000個以下と言い換える
ことができる。
【0017】このような非光学特性を有する材料の含有
量が過剰に低い場合には、非線形性を十分に発現しなく
なり、逆に過剰に高い場合には誘電率が増加することに
起因して内部電場が小さくなり、結果として非線形性が
発現しなくなる。また、非線形光学材料の含有率が高く
なることは、電荷輸送能を有する分子の含有量が低くな
ることを意味し、その結果、電荷輸送能の低下を招くた
め、書き込みに必要な時間を長くしてしまう。
【0018】非線形光学分子の含有量は、フォトリフラ
クティブ材料全体の重量に対して0.1重量%以上8
0.0重量%以下とすることが好ましく、0.3重量%
以上70.0重量%以下がより好ましく、0.5重量%
以上60.0重量%以下が最も好ましい。
【0019】ここで、非線形性の発現について詳細に説
明する。まず、光学主軸、すなわち非線形光学特性を発
現し得る方向が1つ(1次元)の分子のその軸と、電場
とのなす角度がθ以下の場合に、非線形性が発現すると
仮定する。この分子がランダムな方向を向いていれば、
分子の軸と電場とのなす角がθ以下になる確率pは、θ
があまり大きくない場合には、p=(sinθ)2 /2
で与えられる。
【0020】非線形性は電子の分極の非対称性に起因す
るため、電子の軌道方向に非常に敏感であるが、非常に
鈍感な分子があると仮定してθが10°程度とすれば、
この分子がランダムに並んでいる場合に特定の方向に感
応する確率は0.015程度となる。したがって、立体
的に異なる3方向に光学主軸を有する、すなわち3次元
のいずれの方向にも感応する分子が0.1重量%含有さ
れている系は、光学主軸が1つの分子が6.6重量%含
有されている系に匹敵する。非線形光学材料が100重
量%含有されている系と比較すると、屈折率の変化は1
桁小さくなる程度であるので、記録容量は10分の1程
度になる。しかしながら、元の記録容量が極めて大きい
ことを考慮すると十分実用に耐えるものである。
【0021】本発明のフォトリフラクティブ記録媒体に
おいて、非線形光学材料は、後述する電荷発生剤の一部
を兼ねることも可能であるが、クラスター状物質の立体
的な対称性を損なわないのために、電荷移動錯体の形成
は避けなければならない。
【0022】本発明における電荷発生剤としては、分子
状、微結晶、またはクラスター状のいずれでもよく、光
の照射によってキャリアを発生する任意の材料を用いる
ことができる。かかる材料としては、例えば、セレンお
よびセレン合金、CdS,CdSe,CdSSe,As
Se,ZnO,ZnSおよびアモルファスシリコン等の
無機光導電体;チタニルフタロシアニン、バナジルフタ
ロシアニン等の各種結晶型(α,β,γ,δ,ε,ζ,
η,θ,ι,κ,λ,μ,ν,ξ,ο,π,ρ,σ,
τ,υ,φ,χ,ψ,ω,A,B,C,X,Y型など)
の金属フタロシアニン顔料および各種液晶型の無金属フ
タロシアニン顔料;モノアゾ色素;ビスアゾ色素;トリ
スアゾ色素およびテトラキスアゾ色素等のアゾ系色素お
よび顔料;ペリレン酸無水物およびペリレン酸イミドな
どのペリレン系染顔料;ペリノン顔料;インジゴ系染料
および顔料;キナクリドン系顔料;アントラキノン;ア
ントアントロンおよびジブロモアントロン等の多環キノ
ン系顔料;シアニン色素;TTF−TCNQ等の電子捕
獲性物質と電子供与性物質とからなる電荷移動錯体;ピ
リリウム染料またはチアピリリウム染料とポリカーボネ
ート樹脂とからなる共晶錯体;アズレニウム塩;C60
70等のフラーレンおよびその誘導体;テレフタル酸ジ
メチル、テレフタル酸ジエチル等のカルボニル基を有す
るテレフタル酸誘導体、キサンテン系染料および顔料;
アズレニウム色素、およびスクアリリウム色素等が挙げ
られる。
【0023】これらの電荷発生剤は、単独で使用して
も、2種類以上の化合物を使用してもよい。電荷発生剤
は、記録層全体に対して0.1〜60重量%程度の割合
で用いることが好ましい。0.1重量%未満の場合に
は、光照射で発生する単位体積当たりの電荷が小さく、
十分な内部電荷の発生が困難となり、一方、60重量%
を越えると、電荷発生剤同士の会合確率が高くなり、素
子の導電率が上昇して高い内部電場を発生できなくなる
おそれがある。
【0024】なお上述したように、非線形光学材料とし
てのクラスター状物質を電荷発生剤の一部として作用さ
せてもよいが、この場合でも、電荷発生を行なった後、
電荷発生剤に残留した電荷により分子の電子的な対称性
が損なわれるという理由から、電荷発生剤として独立の
成分を別途配合しなければならない。
【0025】本発明で用いられ得る電荷輸送剤として
は、例えばホッピング伝導により電荷を輸送する機能を
有する任意の材料を使用することができる。例えば、ア
モルファス半導体として知られるSi,Ge,Se,
S,Te,B,As,およびSb等の構造不規則な半導
体、SiC,InSb,GaAs,GaSb,CdGe
x As2 ,CdSix2 ,CdSnx As2 ,As2
Se3,As23 ,Ge−Sb−Se,Si−Ge−
As−Te,Ge−As−Se,As23 −As2
3 ,As−Se−Te,Tl2 Se−As2 ,T
3,(Cu1-x Aux )Te2 ,V25 −P2
5 ,MnO−Al23 −SiO2 ,V25 −P2
5 −BaO,CoO−Al23 −SiO2 ,V25-
GeO2 −BaO,FeO−Al23 −SiO2 ,V2
5 −PbO−Fe23 ,TiO2 −B23 −Ba
O,SiOx ,Al23 ,ZrO2 ,Ta23 ,S
34 、およびBN等の組成も不規則な半導体が挙げ
られる。さらに、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ
チオフェン、およびポリアニリン等のπ共役系高分子や
オリゴマー;ポリシラン、およびポリゲルマン等のσ共
役系高分子やオリゴマー;アントラセン、ピレン、フェ
ナントレン、およびコロネンなどの多環芳香族化合物;
インドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサ
ゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキ
サジアゾール、ピラゾリン、チアチアゾール、およびト
リアゾールなどの含窒素環式化合物を有する化合物、ま
たはこれらを主鎖または側鎖に有する化合物;ヒドラゾ
ン化合物、トリフェニルアミン類、トリフェニルメタン
類、ブタジエン類、スチルベン類、TCNQ、アントラ
キノン、ジフェノキノン等の誘導体、C60,C70等のフ
ラーレならびにその誘導体が挙げられる。
【0026】より具体的には、例えば、クロロアニル、
ブロモアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキ
ノジメタン、2,4,7−トリニトリ−9−フルオレノ
ン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−テトラフルオ
レノン、2,4,7−トリニトロ−9−ジシアノメチレ
ンフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサン
トン、2,4,9−トリニトロチオキサントン、N,N
−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−3,4,9,1
0−ペリレンテトラカルボキシイミド、ジフェノン、ス
チルベンゾキノンなどの低分子化合物、およびこれらの
化合物を高分子に主鎖または側鎖に導入した高分子化合
物が挙げられる。
【0027】電荷輸送剤の配合量は、フォトリフラクテ
ィブ材料全体の重量に対して20重量%以上80重量%
以下程度の割合で用いることが好ましい。電荷輸送剤の
配合量が20重量%未満の場合には、電荷輸送分子間の
距離が離れてしまうために、電荷移動に必要な2つの分
子間の波動関数の重なりが著しく小さくなる。この波動
関数の重なりは、分子間距離に対して指数関数的に減少
するので、移動度と拡散係数は、例えば50.0重量%
のときに比べて2桁程度小さくなる。このように著しく
低下すると、書き込み時間が長くなって実用的でなくな
る。
【0028】なお、拡散係数は10-6(cm2 /s)以
上の桁であり、これにより干渉縞の距離(10-4cm)
を電荷が拡散するのに必要な時間が、書き込みに必要な
最小に時間である。典型的には、書き込み時間は1(m
s)以下の程度である。しかるに、電荷輸送剤の量が2
0.0重量%以下では、拡散係数は2桁以上小さくなる
ため、書き込み時間は10(ms)以上になり、動画を
記録することが困難になる。
【0029】一方、電荷輸送剤の配合量が80重量%を
越えると、電荷輸送剤同士が凝集・結晶化し、異なる分
子が分散した系を素子を形成できなくなるおそれがあ
る。なお、本発明のフォトリフラクティブ記録媒体にお
いては、電荷輸送能を有する分子が液体状態で非線形分
子電荷発生剤等を溶解せしめる能力を有していれば、電
荷を輸送するのみならず他の成分を分散させるためのマ
トリックス材料としても作用させることもできる。当然
ながらこの場合には、電荷輸送剤の配合量は前述の範囲
に限定されず、20重量%以上であればよい。
【0030】本発明の記録媒体における記録層は、例え
ば上述したような非線形光学材料、電荷発生剤および電
荷輸送剤を含有する組成物を適切な支持体上に塗布する
ことによって形成することができる。
【0031】かかる組成物は、例えば、前述の成分を所
定の割合でトルエン、ジクロロエタン、およびトリクロ
ロエタン等の適切な溶媒に均一に溶解して調製すること
ができる。
【0032】なお、本発明において、電荷輸送剤等の成
分がポリマーでない場合には、前述の成分にマトリック
ス材料を混合してもよい。マトリックス材料は、ポッケ
ルス効果等の非線形光学特性を有していてもよく、例え
ば有機高分子、無機ガラス、有機分子をアモルファス状
態にした有機ガラス等が挙げられる。特に、相溶性(お
互いの溶けやすさ)の観点から有機高分子が好ましい。
【0033】使用され得る有機高分子としては、光学的
に不活性であり、ガラス転移温度が100℃以下になる
ように分子量等が設計されたものが好ましいが、特に限
定されない。また、ポッケルス効果等の非線形光学特性
を有していてもよい。例えば、ポリエチレン樹脂、ナイ
ロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、
ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹
脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルア
セタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹
脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹
脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、アルキド樹脂、スチ
レン−無水マレイン酸共重合体樹脂、フェノール樹脂、
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステルカーボ
ネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ
アクリレート、およびパラフィンワックス等が挙げられ
る。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上
を混合して用いてもよい。
【0034】また、高分子酸化防止剤、紫外線吸収剤と
して一般に知られる化合物を、この組成物に混合するこ
ともできる。かかる化合物としては、例えば、ヒンダー
ト・フェノール類、芳香族アミン類、有機硫黄化合物、
亜リン酸エステル、キレート化剤、ベンゾフェノン系、
ベンゾトリアゾール系、およびニッケル錯体などがあ
る。これらの成分の配合量は、例えば、記録層全体に対
して1×10-6〜5×10-2重量部程度とすることが好
ましい。
【0035】本発明において、記録層は、任意の方法を
用いて成膜することができる。成膜法としては、例えば
真空蒸着法、スパッタリング法、グロー放電を利用し
た、例えばプラズマCVD法等から適宜選択して形成す
ることができる。高分子化合物を用いる場合は、電荷輸
送能を有する物質と高分子化合物とともに有機溶媒に溶
解し、所定の割合で均一溶液とした後、例えば浸漬塗布
法等で塗布、乾燥を行なう方法がある。なお、電荷輸送
剤が十分な塗膜性を持っていれば、高分子化合物の配合
量を最小限にとどめることができる。
【0036】層の形成方法としては、具体的には、例え
ばスピンコーティング法、浸漬塗布法、ローラ塗布法、
スプレー塗布法、ワイヤーバーコーティング法、ブレー
ドコーティング法、ローラコーティング法等の各種塗布
法、真空蒸着法、スパッタリング法、グロー放電を利用
した例えばプラズマCVD法等から適宜選択して適用す
ることができる。
【0037】なお、記録層の膜厚は、通常、0.1〜5
00μm程度であるが、組成および記録素子に要求され
る特性に応じて適宜選択することができる。本発明にお
いて、前述の成分を含有する組成物を含む溶液を、塗布
し、成膜すすための支持体としては、適切な厚さ、およ
び硬さを備え、取り扱いに際して十分な強度を有してい
る任意の材料を使用することができる。
【0038】この支持体は、成膜用のみならず、本発明
の記録媒体の基板として使用することもできる。すなわ
ち、本発明の記録媒体は、基板と、この基板上に形成さ
れた記録層とを有する構成としてもよい。この場合に
は、記録素子の構成等に応じて適宜、基板の材質等を選
択することが好ましい。すなわち、記録層が形成された
基板の裏面から光が照射される場合には、基板はある程
度透明であることが好ましい。具体的には、使用される
光源の波長域で透明であれば任意の材料を使用すること
ができる。なお、光源の波長は、半導体レーザーでは、
例えば780nm、LEDでは630nm、ELでは5
80nmである。通常の樹脂は、可視域である400〜
600nmの範囲で透明であり、長波長領域である80
0nm付近まで透明性を維持しているものも多い。した
がって、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエ
チレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミ
ド、アクリル樹脂、およびポリイミドなどが好ましい。
【0039】これらの基板材料は、平板状として、ある
いは必要に応じて円筒状シートとして使用することがで
きる。なお、円筒状シートとして用いる場合には、基板
は適度な屈曲性を有していることが要求される。
【0040】本発明においては、必要に応じて記録層の
上に保護層を形成することもできる。保護層に用いられ
る物質としては、既知のいかなる物質でも構わない。ア
クリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹
脂などの熱硬化性樹脂、光硬化樹脂、EB硬化樹脂、X
線硬化樹脂、およびUV硬化樹脂などが挙げられる。
【0041】このような保護層中には、酸化防止剤、紫
外線吸収剤、老化防止剤等の少量の添加剤を添加しても
よい。例えば、ヒンダート・フェノール類、芳香族アミ
ン類、有機硫黄化合物、亜リン酸エステル、キレート化
剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、および
ニッケル錯体などがある。
【0042】なお、記録層の膜厚および用途等によって
は、上述のようにして適切な支持体上に記録層、および
必要に応じて保護層を形成した後、支持体を剥離して、
本発明の記録媒体を得ることもできる。
【0043】本発明の記録媒体は、光メモリー、ホログ
ラム光学素子、およびホログラフィ干渉計測器などに適
用することができる。図1を参照して、本発明を光メモ
リーの1つであるホログラムメモリーとして用いる場合
について説明する。すなわち、媒体の一面に一括して情
報を書き込み、一面に書き込んだ記録を一度に読み出す
方式である。なお、12は記録媒体を表わし、13は石
英ガラス等からなる支持用基板である。
【0044】図1に示すように、記録媒体12の形状を
直方体とし、三次元の互いに直角の座標(X,Y,Z)
で表示できるとする。本媒体のXY平面に平行に画像表
示素子(ページャ)19を設置し、この媒体を挟んで反
対側には、読み取り装置19をやはりXY平面に平行に
設置する。画像表示素子としては、例えば、液晶素子、
Pockels Readout Optical M
odulator,Multichannel Spa
tial Modulator,CCD液晶素子、Si
−PLZT素子、変形表面型素子、AOまたはEO変調
素子、および磁気光学効果素子などが挙げられる。ま
た、読み取り装置としては、任意の光電変換素子を使用
することができ、例えば、CCD、フォトダイオード、
Photoreceptor、およびフォトマルチプラ
イヤーチューブなどが挙げられる。
【0045】媒体に情報を書き込む際には、例えば以下
の手順で実施できる。書き込み光としては、レーザーに
代表されるコヒーレント光を書き込み光として用いる。
なお、レーザーの波長は、用いる素子によって選択する
ことができ、既存の気体レーザー、液体レーザー、固体
レーザーまたは半導体レーザーのいかなるものでも構わ
ない。
【0046】2つのコヒーレント光を用い、その一方の
みに記録する情報を付加し物体光とし、他方の光と干渉
縞を形成することで情報の書き込みが可能となる。2つ
のコヒーレント光を記録媒体に照射するには、例えば、
レーザー光をビームスプリッタで2つに分け、一方を参
照光とし、他方を物体光として用いることができる。図
1には、この場合を示しており、物体光および参照光
は、それぞれ14および16で表わされる。
【0047】このような構成で情報を媒体に書き込むに
当たっては、例えば、物体光を記録する物体からの反射
光、または液晶表示素子等で構成される透過型の画像表
示素子(ページャ)を透過させた光を媒体に入射し、こ
れに交わり、かつ照射面を被覆するように参照光を照射
する。より具体的には、例えば、以下のような方法で書
き込むことができる。まず、予めデジタル化した画像デ
ータを、画像表示素子19に入射して表示する。その画
像表示素子に、ビームエキスパンダーで平行光に広げた
物体光を照射し、その透過光を媒体に照射する。そのと
き同時に参照光を、角度0.001°から179.99
9°までのいずれかの角度の方向から入射する。この
際、参照光16もビームエキスパンダーで平行光に広げ
たものを用いる。
【0048】なお、参照光の入射角度を変えること等の
手法によって多重記録が可能であり、これについては後
に詳述する。物体光14と参照光16とを記録媒体12
に照射した際、物体光と参照光との重ね合わせで生じた
干渉縞により内部電場が発生し、光学特性の変調が起こ
って回折格子が形成される。
【0049】書き込んだ記録の読み取りに当たっては、
まず、物体光14を遮断し、書き込み時と同様の参照光
16のみを照射する。物体光14の通過成分15の方向
で、かつ参照光が重ならない程度の離れた位置には、読
み取り装置18が設置されているので、この読み取り装
置によって再生像を観測することができる。
【0050】なお、読み取り装置の配置は、上述の説明
に限定されず、例えば、物体光14の反射成分17の方
向で、かつ参照光16が重ならない程度に離れた位置に
配置することもできる。
【0051】素子に書き込まれた記録は、光全面照射に
よる一括消去、レーザービーム照射などによる部分消去
などの方法により消去することができる。このとき、消
去光は、ポリゴンミラーなどで走査してもよい。
【0052】本発明の記録媒体への情報の書き込み方法
および再生方法は、上述の例に限定されるものではな
い。例えば、情報の書き込みは、コンピュータージェネ
レイテッドホログラムのように媒体の一面にポリゴンミ
ラー等でレーザー光を走査することによって行なうこと
もできる。このようにして媒体の一面に書き込まれた記
録は、参照光を媒体に照射することによって、一度に読
み出すことが可能である。
【0053】かかる方法で書き込み、および読み出しを
行なう場合には、まず、媒体のXY平面に平行となるよ
うに、媒体の一方の側にレーザービーム走査装置を設置
し、本媒体を挟んで反対側にCCD素子などの読み取り
装置をやはりXY平面に平行に設置する。書き込みに当
たっては、コンピュータージェネレイテッドホログラム
のように予めフーリエ変換した画像のビットデータを、
レーザービームで本媒体に書き込む。このようにして書
き込んだ記録は、次のように読み出すことができる。ビ
ームエキスパンダーで平行光にしたレーザー光をレーザ
ー操作装置側から入射すると、出射側に配置されたCC
D素子等の読み出し装置によって記録の読み取りを行な
うことができる。
【0054】上述の書き込み方法および再生方法の説明
では、ページャ(画像表示装置)および読み取り装置
を、いずれも媒体のXY平面に平行となるように配置し
たが、このような配置に限定されるものではない。ペー
ジャは、媒体のXY平面に対して角度をもって配置する
ことも可能である。
【0055】また、書き込みに当たっては、1つのレー
ザー光をビームスプリッタで2つに分けた光のみなら
ず、異なる2本のビームを照射してもよい。さらに、物
体光と参照光とは、必ずしも同時に入射する必要はな
く、任意の手法で媒体に干渉縞を形成することができ
る。
【0056】本発明のフォトリフラクティブ記録媒体
は、材料を非晶質状態にすることにより光学主軸をなく
した系において、立体的に異なる3方向に光学軸を有す
るクラスターを非線形光学材料として用いているので、
あらゆる角度の電場に感応させ、角度依存性の小さく高
い回折効率を得ることが可能となった。このため、非線
形光学材料の配合量を従来より大幅に低減して、電荷輸
送能を有する分子等の他の成分の割合が減少するのを回
避することができた。さらに、読み出し時に検出器の感
度を調整する必要がなく、また電場による配向を行なわ
なくてもよい高い回折効率が得られるので、外部電場を
印加しないフォトリフラクティブ素子として用いること
ができる。
【0057】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例および比較
例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明
はこれらの例に限定されるものではない。 (実施例1)以下に示す処方で各成分をトルエンに溶解
して、トルエン溶液を調製した。
【0058】 非線形光学材料:カーボンクラスターC60 0.3重量% 電荷発生剤 :インジコ染料 0.1重量% 電荷輸送剤 :S141 45重量% DEASP 5重量% マトリックス:ポリスチレン樹脂 49.6重量% ここで用いた各成分を以下の化学式に示す。
【0059】
【化1】 なお、式中、Rは塩素を表わす。
【0060】
【化2】
【0061】得られた溶液を乾燥器中に室温で放置して
溶媒を除去して乾燥物質を得た。一方、予め石英基板を
120℃に加熱しておき、この上に膜厚調整用スペーサ
ーおよび前述の乾燥物質を順次配置し、上部から石英基
板を押し当てることにより膜厚100μmの試料を作製
した。
【0062】本実施例において電荷輸送剤として用いた
DEASPは、永久電気双極子モーメントが大きいた
め、フォトリフラクティブ記録媒体の内部にミクロな静
電ポテンシャルが発生する。この静電ポテンシャルは、
DEASPがランダムにならんでいるため電荷輸送材の
電荷輸送に関わるエネルギー準位をランダムに揺らがせ
る(例えば、A.Dieckmann,H.Bassler,and P.M.Borsenbe
rger,Journal of Chemical Physics, 99巻、10号、
8136〜8141頁)。これによって、拡散係数Dと移動度μ
との比(D/μ)が増大し、外部電場の印加がなくても
光照射により発生する内部電場が大きくなるので、フォ
トリフラクティブ効果を発生することができる(例え
ば、Akiko Hirano and Hideyuki Nishizawa,Physical R
eviews B,54巻8号、4755〜4761頁)。
【0063】この試料の吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、個々の材料の吸収スペクトルの和の形になってい
た。また、発光スペクトルを測定した結果、新たな発光
ピークは観測されず、C60と他の分子との間の電荷移動
錯体の形成はないことが確認された。
【0064】次に、フォトリフラクティブ素子の性能を
評価するために通常用いられる、2光子混合法(two be
am coupling)を用いて、得られた試料の特性を評価し
た。用いた装置の概略を図2に示す。図2に示すよう
に、レーザー23から照射された光は、まずビームスプ
リッター24により第1のビーム21と第2のビーム2
2とに分けられる。第1のビーム21はミラー26で、
第2のビーム22はミラー25でそれぞれ反射した後、
レンズ27により2つの反射光は交差し、さらに、交差
する位置に配置された試料28を透過する。透過したビ
ームの強度は、光検出器31で測定される。
【0065】なお、第1および第2のビームは、それぞ
れシャッター30および29によって独立に遮断するこ
とができる。2つのビームを同時に照射している場合に
は、ビームが交差する位置の近傍で干渉縞が生じ、この
光の強弱パターンにより発生した光キャリアが拡散して
光のパターンからπ/2だけ位相のずれた電場のパター
ンが形成される。こうして、ポッケルス効果により電場
の強弱に応じた屈折率の変化(屈折率格子)が発生す
る。このように光の照射により屈折率が変化する、これ
がフォトリフラクティブ効果である。この屈折率格子に
よって、ビーム21はビーム22の方向へ、ビーム22
はビーム21の方向への回折が起こり、光学主軸が存在
しない場合にはビーム強度に変化が生じる。具体的に
は、ビーム強度の大きい方の強度は弱くなり、ビーム強
度の弱い方の光は強くなる(例えば、Boris Ya.Zel'dov
ich,Alexander V.Mamaev and Vladimir V Shkunov 著、
Spekle-Wave Interactions in Application to Hologra
phy and Nonlinear Optics,CRC出版社1995年、 169〜 1
79頁)。
【0066】一方、1つのビームのみが照射されている
場合には何も起こらない。例えば、シャッター29を開
閉することによってビーム22をon/offし、これ
に伴うビーム21の強度を測定すれば、フォトリフラク
ティブ効果の有無を調べることができる。
【0067】本実施例の試料についての測定結果を図3
のグラフに示す。グラフにおいて横軸は、時間を秒で表
わし、縦軸はビーム21の光強度を任意単位で示してい
る。強度の弱いビーム22のON/OFFに伴って、強
度の強いビーム21の強度が変化していることがわか
る。この変化の度合いも非常に大きく、回折効率が高い
ことを示している。
【0068】さらに、光記録媒体としての特性を評価す
るために、光照射によってできる膜内に形成された電場
に起因する光学特性の変化による回折格子の回折効率の
測定を行なった。
【0069】なお、回折効率の測定に当たっては、図1
に示した装置を用い、ヘリウム−ネオンレーザーのビー
ムを物体光14と参照光16との2つに分け、試料上で
これらの光が交わるように照射することにより、試料に
レーザー光による回折パターンを形成した。このまま1
時間放置して書き込みを行なった。この際、物体光14
と参照光16との重ね合わせで生じた干渉縞により内部
電場が発生し、光学特性の変調が起こって媒体に回折格
子が形成される。
【0070】その後、物体光14を遮断し、書き込み時
と同様の参照光16のみを照射することによって再生を
行なった。参照光16は媒体により回折され、参照光1
6の成分と、物体光の反対方向成分17と、物体光の透
過光成分15の成分とに分けられる。
【0071】図1に示すように、物体光が通過してくる
方向15には、再生ビームの強度を測定するための光検
出器18が設置されており、この光検出器によって照射
していないはずの物体光、すなわち再生像が観測され、
光メモリーとして機能する。
【0072】ここで、参照光に再生される物体光の強度
(Iobj )と照射した参照光の強度(Iref )との比
(Iobj /Iref )を回折効率として求めた。前述の手
順にしたがって測定された本実施例の膜の回折効率は、
3.1%であった。
【0073】さらに、インジゴにおけるRがアルキル基
や他のハロゲン元素である以外は、前述と同様の処方で
調製された試料も、前述と同様の回折効率を有してい
た。 (実施例2)本実施例においては、マトリックスとして
の機能を兼ねる材料を電荷輸送剤として用い、以下に示
す処方でジクロロエタンに溶解してジクロロエタン溶液
を得た。
【0074】 非線形光学材料:カーボンクラスターC60 0.6重量% 電荷発生剤 :チタニルフタロシアニン 0.1重量% 電荷輸送剤および マトリックス材料:TTPAE 80重量% OXD−S4 19.3重量% ここで用いた各成分を以下の化学式に示す。
【0075】
【化3】
【0076】得られた溶液を加熱減圧することにより溶
媒を除去して、乾燥物質を得た。一方、予め石英基板を
290℃に加熱しておき、この上に膜厚調整用のスペー
サーおよび前述の乾燥物質を配置して溶解させた。さら
に、その上からもう1枚の石英基板を押し当てることに
より150μmの膜厚の試料を作製した。
【0077】本実施例において、電荷輸送剤およびマト
リックス材料として用いたOXD−S4は、永久双極子
モーメントが大きいので、前述の実施例1の場合と同様
に拡散係数と移動度との比が増大する。これによって、
外部電場の印加がなくても光照射により発生する内部電
場が大きくなるので、フォトリフラクティブ効果を発生
せしめる。また、TTPAEおよびOXD−S4は、い
ずれもガラス転移温度が150℃程度であり、室温(3
0℃)でアモルファス膜を形成する。
【0078】この試料の吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、個々の材料の吸収スペクトルの和の形になってい
た。また、発光スペクトルを測定した結果、新たな発光
のピークは観測されず、C60と他の分子との間に電荷移
動錯体の形成はないことが確認された。
【0079】また、得られた試料に対して実施例1と同
様にして2光子混合の実験を行なったところ、電荷輸送
剤の分子間距離が短いことに起因して書き込み時間は短
くなったものの、確かにフォトリフラクティブ効果が起
きていることがわかった。
【0080】さらに、この膜の回折効率を上述と同様に
して測定した結果、5.7%であった。実施例1の場合
よりも大きいのは、C60以外の分子も非線形光学材料と
して機能したためと考えられる。
【0081】本発明のフォトリフラクティブ記録媒体
は、非線形光学材料として特定のクラスター状物質を配
合したことに起因して、特定方向の光学軸をもたず、あ
らゆる方向の電場に感応できる非線形光学特性を有する
ので、容易に多重記録を行なうことができる。ここで、
本発明のフォトリフラクティブ記録媒体に多重記録を行
なう方法について詳細に説明する。
【0082】図1において説明したように、物体光14
と参照光16とを媒体に照射することによって、媒体内
には干渉縞が形成される。この干渉縞は、物体光の進行
方向と参照光の進行方向との垂直二等分線の方向に発生
するので、強め合う部分および弱め合う部分のいずれ
も、この垂直二等分線の方向につながっている。したが
って、内部電場はこの光の強弱の方向に対して直角に発
生する。記録された情報を再生する際には記録時と同様
の参照光を入射し、この屈折率格子によりブラッグ条件
を満たした回折光または反射光を発生させる。これが物
体光の成分を持つことになる。
【0083】すなわち、入射角度が異なる場合にはブラ
ッグ条件が満足されないので、物体光は再生されない。
媒体内部の干渉縞のつながる方向を変化させれば、内部
電場は以前の電場の向きとは異なる方向に発生し、各点
での内部電場は電場ベクトルの和になるので、その方向
の光による電場を発生させこれを屈折率格子として記録
することができる。具体的には、媒体への物体光の入射
角度および参照光の入射角度の少なくとも一方を変化さ
せることによって、その物体光を先の記録の上に照射し
て、新たな情報を記録することができる。再生する場合
にも、ブラッグ条件が異なるため、互いの記録は干渉し
ない。
【0084】これを実現するには、大きく分けると次の
2つの方法がある。すなわち、a)物体光と参照光との
なす角度を維持したまま入射角度を変える方法と、b)
物体光と参照光とのなす角度を変える方法との2種類で
ある。また、角度を変えるためには、大きく分けると次
の2つの方法がある。c)試料を回転させる方法と、
d)光の進行方向を変える方法である。
【0085】光の進行方向を変えるためには、例えば、
プリズムやミラー等の光学部品に光を照射して、これら
光学部品を回転させる方法、カー効果やポッケルス効果
など磁気光学効果や電気光学効果により透過光または反
射光の方向を変える方法、液晶に回折格子を表示させて
その格子幅を変えるなどして回折方向を変える方法、参
照光と物体光を光強度により焦点距離を変えるセルフフ
ォーカシング(3次の非線形光学特性)機能を有する媒
体を透過させ、2つの光のなす角度を変える方法などを
用いることができる。
【0086】したがって、図2に示した装置に次のよう
な操作等を加えることによって、本発明のフォトリフラ
クティブ記録媒体に多重記録を行なうことができる。例
えば、前述のa)とc)とを組み合わせた場合には、記
録媒体28を回転可能な台に固定し、これを回転させれ
ばよく、a)とd)とを組み合わせた場合には、ミラー
25と26とを同時に回転させ、記録媒体28上での物
体光と参照光とのなす角度を一定にするという手法があ
る。さらに、b)とc)とを組み合わせた場合(この際
は、d)も合わせることになる)には、例えば、レンズ
27を音響光学効果を用いた素子で構成し、レンズの焦
点距離を変えレンズを移動させながら試料28も回転さ
せる方法があり、b)とd)とを組み合わせた場合に
は、ミラー25と26とを同時または一方だけを自由に
回転させればよい。
【0087】以上、2つの方法を組み合わせた例を挙げ
て説明したが、これに限定されるものではなく、前述の
a)ないしd)の方法を任意で組み合わせて用いること
ができる。
【0088】上述した方法のうち、試料を回転させる方
法を用いて、本実施例の試料に多重記録を行なった。ま
ず、前述の2光子波混合で書き込みを行なった試料を、
3°回転させて第2の書き込みを行なった。このときの
回折効率は5.4%であった。この後、試料を元の角度
に回転させて再生光の強度を測定したところ、回折効率
は5.7%であり、第2の書き込み前と同じであった。
さらに、試料を20°回転させて第3の書き込みを行な
った。このときの回折効率は5.7%であった。
【0089】このように、非線形光学材料としての特定
のクラスター状物質、電荷発生剤および電荷輸送剤を含
有する本発明のフォトリフラクティブ記録媒体は、容易
に多重書き込みができることがわかった。 (比較例1)以下に示す処方で各成分をトルエンに溶解
して、トルエン溶液を調製した。
【0090】 非線形光学材料:カーボンクラスターC60 0.3重量% 電荷発生剤 :インジゴ染料 0.l重量% 電荷輸送剤 :DEH 45重量% DEASP 5重量% マトリックス:ポリスチレン樹脂 49.6重量% ここで用いた電荷輸送剤(DEH)の化学式を以下に示
す。
【0091】
【化4】
【0092】得られた溶液を40℃に加熱した乾燥器中
に放置することにより溶媒を除去して乾燥物質を得た。
一方、予め石英基板を120℃に加熱しておき、この上
に膜厚調製用スペーサーおよび前述の乾燥物質を順次配
置し、上部から石英基板を押し当てることにより100
μmの膜厚の試料を作製した。
【0093】この試料の吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、個々の材料の吸収スペクトルの和にならず、600
nm〜700nmの領域にC60とDEHとの電荷移動錯
体に起因する吸収がみられた(例えば、S.M.Silence,C.
A.Walsh,J.C.Scott,and W.E.Moerner,Applied Physics,
Letters,61巻25号、2967〜2969頁)。
【0094】また、得られた試料を用いてに実施例1と
同様の2光子混合の実験を行なったが、変化はみられな
かった。本比較例の試料においては、C60とDEHとの
間に電荷移動策定が形成されたことに起因してフォトリ
フラクティブ効果が起きていないか、起きていても測定
できないほど小さいと結論される。
【0095】しかも本比較例においては、非線形光学材
料を電荷発生剤としても作用させて電荷発生剤としての
成分を別途配合していないので、光を有効に利用するた
めの光の透過率の点でも劣るものであった。つまり、電
荷発生に寄与したC60とDEHとの電荷移動の程度が大
きくなったため、これによる光吸収が増加し、光の透過
率が減少し、仮に弱い再生が行なわれたとしても、この
光が吸収されてしまっている。
【0096】さらに、この膜の回折効率を実施例1と同
様にして測定した結果、0.3%以下であった。 (比較例2)本比較例においては、非線形光学材料を電
荷発生剤としても機能させ、以下に示す処方で各成分を
トルエンに溶解してトルエン溶液を得た。
【0097】 非線形光学材料および電荷発生剤: カーボンクラスターC60 0.3重量% 電荷輸送剤:DEH 45重量% DEASP 5重量% マトリックス:ポリスチレン樹脂 49.6重量% 得られた溶液を室温で真空乾燥することにより溶媒を除
去して乾燥物質を得た。一方、予め石英基板を120℃
に加熱しておき、この上に膜厚調整用スペーサーおよび
前述の乾燥物質を順次配置し、上部から石英基板を押し
当てることにより膜厚100μmの試料を作製した。
【0098】この試料の吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、個々の材料の吸収スペクトルの和にならず、600
nm〜700nmの領域にC60とDEHとの電荷移動錯
体に起因する吸収がみられた。
【0099】実施例1と同様の2光子混合の実験を行な
ったが、変化はみられなかった。フォトリフラクティブ
効果が起きていないか、起きていても測定できないほど
小さいと結論される。
【0100】さらに、この膜の回折効率を実施例1と同
様にして測定した結果、0.1%以下であった。 (比較例3)以下に示す処方で各成分をジクロロエタン
に溶解してジクロロエタン溶液を得た。
【0101】 非線形光学材料:N-methyl-4-nitro-o-toluidine(NMT) 65.0重量% 電荷発生剤:チタニルフタロシアニン 0.1重量% 電荷輸送剤:S141 8.0重量% DEASP 2.0重量% マトリックス:ポリスチレン樹脂 24.9重量% 得られた溶液を加熱減圧することにより溶媒を除去し
て、乾燥物質を得た。一方、予め石英基板を120℃に
加熱しており、この上に膜厚調整用のスペーサーおよび
前述の乾燥物質を順次配置した。その上から、もう1枚
の石英基板を押し当て150μmの膜厚の試料を作製し
た。
【0102】本比較例において非線形光学材料として用
いたMNTは、光学主軸を有するものであり、かかる材
料は結晶化しやすいものが多い。したがって、含有率を
高くすると結晶化して析出し、均一な状態ではなくな
る。この例の試料では、MNTのガラス転移温度が室温
程度であり、かつ含有率が高いため、室温で放置すると
結晶化し不透明な試料となった。そこで、−70℃の温
度に保ち、以下の実験を行なった。
【0103】この試料の吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、個々の材料の吸収スペクトルの和の形になってい
た。また、発光スペクトルを測定しても新たな発光のピ
ークは観測されなかった。したがって、C60と他の分子
との間に電荷移動錯体の形成はない。
【0104】実施例1と同様の2光子混合の実験を行な
ったところ、フォトリフラクティブ効果は起こらなかっ
た。本比較例では、非線形光学材料として光学主軸を有
する材料を用いたため、ポッケルス効果を発現させるた
めにはその含有率を高めなければならなかった。そのた
め、電荷輸送剤の分子間距離が大きくなり、かつ低温で
あるためキャリアの移動速度、拡散速度ともに非常に小
さくなり書き込めなかったものと考えられる。
【0105】さらに、この膜の回折効率を実施例1と同
様にして測定した結果、0.1%以下であり、測定不能
であった。このように、非線形光学材料として光学主軸
を有する材料を配合すると、得られる記録媒体の性能の
低下につながることが明らかである。本発明において
は、立体的に異なる3方向に光学軸を有する原子集合体
を非線形光学材料として含有させているので、従来の非
線形光学材料に起因した問題を全て回避することができ
た。
【0106】
【発明の効果】上述したように、本発明によれば、読み
出し時に検出器の感度を調整する必要がなく、かつ外部
電場を印加して分子を配向せしめなくとも高い回折効率
が得られるフォトリフラクティブ記録媒体が提供され
る。かかる記録媒体は、光照射により高密度の情報を記
録することができるので記録容量の大幅な増加が期待さ
れ、その工業的価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフォトリフラクティブ記録媒体の一例
を示す断面図。
【図2】本発明のフォトリフラクティブ記録装置の一例
を示す概略図。
【図3】本発明のフォトリフラクティブ記録媒体におけ
る2光子混合法の結果を示すグラフ図。
【符号の説明】
12…記録媒体 13…支持用基板 14…物体光 15…物体光の通過成分 16…参照光 17…物体光の反射成分 18…光検出器 19…透過型画像表示素子 21…第1のビーム 22…第2のビーム 23…レーザー 24…ビームスプリッター 25,26…ミラー 27…レンズ 28…記録媒体 29,30…シャッター 31…光検出器

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 立体的に異なる3方向に光学軸を有し、
    直径0.5nm以上1000nm以下のクラスター状物
    質からなる非線形光学材料と、電荷発生剤と、電荷輸送
    剤とを含有し、光伝導性を有することを特徴とするフォ
    トリフラクティブ記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記非線形光学材料の含有量が0.1重
    量%以上80.0重量%以下であることを特徴とする請
    求項1に記載のフォトリフラクティブ記録媒体。
  3. 【請求項3】 立体的に異なる3方向に光学軸を有し、
    直径0.5nm以上1000nm以下のクラスター状物
    質からなる非線形光学材料、電荷発生剤および電荷輸送
    剤を含有し、光伝導性を有するフォトリフラクティブ記
    録媒体と、 前記記録媒体に参照光を照射する第1の光源と、 参照光ビームに情報を付加した物体光を前記記録媒体の
    第1の光源からの照射部の少なくとも一部に照射する第
    2の光源と、 前記第1の光源から照射される参照光のうち、前記フォ
    トリフラクティブ記録媒体によって回折された成分を読
    取る検出器とを具備することを特徴とするフォトリフラ
    クティブ記録装置。
  4. 【請求項4】 前記フォトリフラクティブ記録媒体への
    物体光の入射角度および参照光の入射角度の少なくとも
    一方の角度を変化させるための手段を具備することを特
    徴とする請求項3に記載のフォトリフラクティブ記録装
    置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100471399B1 (ko) * 2001-03-22 2005-03-07 한국과학기술원 상안정성이 우수한 광굴절 고분자 조성물 및 그 제조 방법

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KR100471399B1 (ko) * 2001-03-22 2005-03-07 한국과학기술원 상안정성이 우수한 광굴절 고분자 조성물 및 그 제조 방법

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