JPH11257249A - チューブポンプ - Google Patents

チューブポンプ

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JPH11257249A
JPH11257249A JP10080297A JP8029798A JPH11257249A JP H11257249 A JPH11257249 A JP H11257249A JP 10080297 A JP10080297 A JP 10080297A JP 8029798 A JP8029798 A JP 8029798A JP H11257249 A JPH11257249 A JP H11257249A
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tube
shape
cross
section
hardly
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JP10080297A
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Nagao Tamagawa
長雄 玉川
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AQUA TEC KK
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AQUA TEC KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 チューブポンプにおけるチューブの形状復元
性を向上させ、回転速度を高くしてもポンプの能力を十
分に発揮できるようにする。 【解決手段】 チューブ3の断面を例えば偏平な台形状
とし、底辺に相当する部分34を薄肉として変形しやす
い部分を形成すると共に、他の部分33を厚肉として変
形しにくい部分を形成した。これにより、圧迫時には変
形しやすい部分が引き伸ばされて大きな収縮力が発生
し、圧迫が終わると迅速に元形に復帰するようになり、
元形に戻らないうちに次の圧迫を受けることがなくなっ
てポンプ能力が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、チューブを円形
の円筒室に添わせてリング状に配置し、その内側に設け
た加圧部材でチューブを順次圧迫してポンプ作用を行う
チューブポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】内周面が円形の円筒室を基板に設けてそ
の内周面に添わせて弾性材料からなるチューブをリング
状に配置し、その内側に設けた回転ローラでチューブを
一方向に順次圧迫し、あるいはチューブの内側に設けた
リング状の加圧部材を円筒室の内周面に沿って円運動さ
せてチューブを一方向に順次圧迫することにより、閉塞
部を移動させてポンプ作用を行うチューブポンプは公知
である。このようなポンプの場合、回転ローラや加圧部
材等が通過するとチューブが元の形状に戻ることが必要
であり、一般にはチューブ自身の弾性やチューブ内外の
圧力差などによって元の形状に戻る自然復元方式が採用
されている。
【0003】しかしながら、自然復元の場合には元の形
状に戻るまでにある程度の時間を要するため、回転ロー
ラなどの回転速度を速くするとチューブが元の形状に戻
らないうちに次の圧迫が起こるようになり、効率が著し
く低下してポンプとしての能力を十分に発揮できない状
態となる。これを解決するために、回転ローラなどによ
る圧迫方向に対して直角な方向にチューブを押圧するチ
ューブガイドを回転ローラなどに同期させて回転し、チ
ューブを強制的に元の形状に戻すようにした強制復元方
式が知られている。しかしながら、チューブガイドを設
けると構造が複雑になると共にコストも上昇する結果と
なるので、広く普及するには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明はこのような
問題点に着目し、チューブ自体の形状復元性を向上させ
ることにより、チューブガイドのようなものを用いない
でもポンプの能力を十分に発揮できるようにすることを
課題としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに、この発明では、チューブの長手方向に対して垂直
な断面に、変形しにくい部分と変形しやすい部分が存在
するような構成としている。このような構造により、チ
ューブが圧迫された時には変形しにくい部分よりも変形
しやすい部分が大きく変形して伸ばされるので、その部
分には収縮力が強く作用して元形に復帰しようとする反
発力が生じ、同時に変形しにくい部分は圧迫によって無
理に押しつぶされているので大きな反発力が生ずる。す
なわち、従来の単純な円筒状のチューブを平面状に押し
つぶした場合には、単に円筒状のチューブが平面状にな
ると共に平面状の縁部で360°に折り返された状態と
なり、曲げに対する反発力が作用するだけで大きな復元
力を得られにくいのに対して、この発明では上記のよう
にそれぞれの部分に大きな反発力が生じてチューブ自体
の形状復元性が向上し、圧迫が終わると迅速に元形に復
帰するようになるのである。
【0006】上記の変形しにくい部分と変形しやすい部
分は例えばチューブ断面の肉厚を部分的に変えることで
形成でき、この場合には厚肉部が変形しにくい部分とな
り、薄肉部が変形しやすい部分となる。このように肉厚
を変える構造としては、例えば円形または楕円形の外表
面に対して同じく円形または楕円形の内表面を偏心させ
ることによって実現することができる。また、チューブ
断面の全体の形状を偏平な台形状として底辺に相当する
部分を薄肉部とし、あるいはチューブ断面の全体の形状
を2つの台形が底辺を共有した状態の偏平な六角形状と
し、底辺に相当する共有部分を薄肉部とすることによっ
ても実現することができる。
【0007】また上記の変形しにくい部分と変形しやす
い部分は、チューブ断面に強度の大きい部分と小さい部
分を設けることによっても形成でき、この場合には強度
の大きい部分が変形しにくい部分となり、強度の小さい
部分が変形しやすい部分となる。このように強度を変え
る構造としては、例えば材料の硬度を変えることによっ
て実現することができ、この場合には硬度の大きい部分
が変形しにくい部分となり、硬度の小さい部分が変形し
やすい部分となる。また、例えばチューブ断面の一部を
補強材により補強し、補強された部分で変形しにくい部
分を形成し、補強されない部分で変形しやすい部分を形
成することによっても実現することができる。
【0008】また、変形しにくい部分を多数の独立気泡
を有する気泡部で構成し、あるいはチューブ内の流体流
路には連通しない貫通孔を長手方向に沿って設け、この
貫通孔に流体を封入して変形しにくい部分を構成するこ
とができる。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、リング状の加圧部材を円筒
室の内周面に沿って円運動させてチューブを圧迫する方
式のチューブポンプにこの発明を適用した実施の形態に
ついて説明する。
【0010】図1はポンプ全体の概略正面図であり、図
1において、1は円筒室2を形成した基板であり、円筒
室2の内周面2aは円形で半円周より大きく全円周より
は小さな範囲で形成され、内周面2aが形成されていな
い部分は開口部2bとなっている。3は弾性材料からな
るチューブであり、円筒室2の内周面2aに添わせてリ
ング状に配置すると共に、その両端を基板1の外部に引
き出して流入口3aと流出口3bを構成している。基板
1は例えばNBR等のゴム系材料やABS等の合成樹脂
の成形品で構成され、またチューブ3は移送される流体
に応じてゴム系や各種の合成樹脂製のチューブが適宜選
択使用される。
【0011】4はチューブ3の内側に配置されたリング
状の加圧部材であって、内リング41と外リング42の
二重構造となっており、加圧部材4の内リング41は摩
擦係数の小さい剛体材料、例えばフッ素樹脂系の合成樹
脂成形品で構成され、外リング42はゴムなどの摩擦係
数の大きい弾性材料の成形品で構成されている。内リン
グ41と外リング42は断面が長方形で丁度重なるよう
な寸法で形成されており、内リング41の外周面41b
に設けた突条を外リング42の内周面42aに設けた周
溝に嵌めることによって、外リング42は自由に回転で
きる状態で内リング41に保持されている。
【0012】5は加圧部材4の内側に配置された偏心ロ
ーター、6は偏心ローター5が取り付けられている回転
軸であって、偏心ローター5の先端5aが内リング41
の内周面41aに摺接しながら回転して加圧部材4を円
筒室2の内周面2a側に圧迫し、加圧部材4を内周面2
aに沿って円運動させるように構成されている。なお、
基板1の背面側には回転軸6を駆動するための減速機付
きモータなどが配置されており、また手前側には蓋が設
けられるが、これらは図示してない。
【0013】加圧部材4の外リング42の外周面42b
の半径は、円筒室2の半径からチューブ3の肉厚の2倍
以上を差し引いた寸法に選定されている。また、回転軸
6の軸心から偏心ローター5の先端5aまでの距離と内
リング41の内周面41aから外リング42の外周面4
2bまでの寸法の和は、偏心ローター5の先端5aによ
って加圧部材4が基板1の内周面2a側に押された場合
に、外リング42によってチューブ3が押しつぶされて
内部の流路が完全に閉塞されるように選定されている。
【0014】図2は、変形しにくい部分と変形しやすい
部分を肉厚を変えて形成したものの一例であり、(a)に
示すように円形の外表面3cに対して同じく円形の内表
面3dを偏心させることによって、厚肉部31で変形し
にくい部分を形成し、薄肉部32で変形しやすい部分を
形成してある。外表面3cと内表面3dは真円ではな
く、図の姿勢において横方向に長い楕円形や菱形のよう
な少し偏平な多角形であってもよく、断面形状が比較的
単純であるため製作が容易である。なお、図2以下の各
図面はすべて断面図であるが、この発明におけるチュー
ブ3は各図に示した断面構造が長手方向に連続したもの
となっている。
【0015】図2の(b)は(a)の状態のチューブ3が上
方から加圧部材4に圧迫され、平面状に押しつぶされて
流体流路3eが閉塞されている状態を示したもので、薄
肉部32は肉が薄いために大きく変形して引き伸ばされ
ているのに対して、厚肉部31は肉が厚いためにほとん
ど引き伸ばされず、単に押しつぶされて平面状になって
いるだけである。従って、引き伸ばされた薄肉部32に
は内側方向の収縮力が強く作用する一方、厚肉部31に
は上向きの反発力が生じており、圧迫力がなくなると薄
肉部32は収縮しながら元の円弧状に戻り、厚肉部31
は薄肉部32を両側から押しながら上方に膨らんで元の
円弧状に戻ることになる。そして、この時の復元力は一
様な肉厚のチューブを圧迫した場合とは異なって、薄肉
部32が引き伸ばされたことによる収縮力と、厚肉部3
1が無理に平面状にされたことによる反発力の相乗作用
のために大きなものとなり、圧迫が終わると迅速に元形
に復帰するのである。
【0016】図2の形状の場合には、特に外表面3cが
真円であるとチューブ3の姿勢が一定せず、実際にポン
プとして組み立てられた場合にチューブ3がねじれて、
圧迫力が図の姿勢における上下方向に正しく加わらない
ような状態になると共に圧迫時の厚みが一様にならず、
正常な動作に支障が起きる可能性がある。また圧迫力の
方向にずれがなくても、圧迫時に360°の折り返しを
受ける両端部分はかなりの厚みがあるため大きな圧迫力
が必要となり、またこのかなりの厚みのある部分は変形
を繰り返すことにより亀裂などの損傷が生じやすくな
る。
【0017】図3はこのような問題点を解決するため
に、チューブ断面の全体の形状を偏平な台形状としたも
のの一例である。すなわち、(a)に示すように偏平な台
形状の底辺に相当する部分を薄肉部34としてこれを変
形しやすい部分とし、これに連なる他の3辺を厚肉部3
3としてこれを変形しにくい部分としてある。厚肉部3
3を構成する左右の斜辺33aと上辺33bの境界部分
の外面には曲がりやすくするためにU溝状の凹部33c
を設けてある。また圧迫時につぶれやすいように斜辺3
3aの傾斜は45°〜60°程度に選定し、薄肉部34
である底辺との間に鋭角部33dが形成されている。ち
なみに各部の寸法の例を示すと、流体流路3eの幅wは
12mm、高さhは3mm、上辺33bと薄肉部34の厚み
t1及びt2はそれぞれ1.5mm及び0.5mmである。
【0018】図3の(b)は(a)の状態のチューブ3が上
方から加圧部材4に圧迫されて平面状となり、流体流路
3eが閉塞されている状態を示したもので、全体の形状
が偏平な台形状であるためポンプとして組み立てられた
場合にチューブ3がねじれることはなく、圧迫力は常に
図の姿勢における上下方向に正しく加わり、圧迫時の厚
みも一様なものとなる。この圧迫状態では、厚肉部33
は上下に圧縮されながら斜辺33aの下部が外側に広が
って平面状になるが各辺の長さはあまり変化しないのに
対して、薄肉部34は肉が薄いために斜辺33aの広が
りに応じて引っ張られている。従って、薄肉部34には
元の寸法に戻る方向の収縮力が強く作用し、また厚肉部
33には上方に膨らんで元の台形に戻る反発力が作用す
ることになるので、圧迫力がなくなると迅速に元形に復
帰するのである。
【0019】図3の形状の場合には、薄肉部34が圧迫
体の一方、すなわち(b)図の場合であれば円筒室2に密
着した状態となるので、伸縮時に摩擦が生じて伸縮に要
する時間が長くなり、また薄肉部34が損傷しやすくな
る。図4はこのような問題点を解決するために、図3に
準じた偏平な形状の2つの台形が底辺を共有した状態で
合体した偏平な六角形状としたものである。
【0020】すなわち、共通の底辺に相当する部分が薄
肉部36となり、これを挟んで上下に厚肉部35が設け
られた形状であって、35aは斜辺、35bは上辺、3
5cは凹部であり、流体流路3eは2本形成されてい
る。各部の形状と寸法は例えば図3の場合と同様に選定
される。図4の(b)は(a)の状態のチューブ3が上方か
ら加圧部材4に圧迫された状態を示したものであるが、
このような形状であるため、薄肉部36は流体流路3e
内の流体中で伸縮して固体の円筒室2や加圧部材4には
接触することがない。従って、固体部材との摩擦による
伸縮時間の増大や損傷の発生をなくすことができるので
ある。
【0021】なお、チューブ3を図3や図4の形状とし
た場合には、加圧部材4や円筒室2の加圧面の断面形状
が平面状であると両端の斜辺部分に対する圧迫が不十分
になるため、各図の(b)図に鎖線で例示したように、チ
ューブ3の形状に対応させて少なくとも一方の加圧面の
両端がテーパ状に高くなる形状にするとよく、これによ
って斜辺を十分に押圧することが可能となる。
【0022】次に、チューブ断面に強度の大きい部分と
小さい部分を設けて、強度の大きい部分を変形しにくい
部分とし、強度の小さい部分を変形しやすい部分とした
例を説明する。
【0023】図5は材料の硬度によって強度を変えたも
のの一例であり、2重斜線の部分とそれ以外の部分をそ
れぞれ例えばショア硬度60度の高硬度部39及び硬度
30度の低硬度部40としてある。高硬度部39が強度
が大で変形しにくい部分、低硬度部40が強度が小で変
形しやすい部分であり、高硬度部39は半円を少し越え
る範囲で形成される。このように、材料の硬度によって
強度を変える構成であれば、チューブの成形時に材料を
適切に選択することによって目的とするチューブを得る
ことができるので、製造が容易である。
【0024】図5の形状のものにおける圧迫時と原形復
帰時の作用は図2の場合と同様であり、図5の状態でチ
ューブ3が上下方向に圧迫されると低硬度部40は大き
く変形して引き伸ばされるのに対して、高硬度部39は
ほとんど引き伸ばされず、単に押しつぶされるだけであ
る。従って、引き伸ばされた低硬度部40には収縮力が
強く作用する一方、高硬度部39には上向きの反発力が
生じ、圧迫力がなくなると低硬度部40は収縮しながら
元の円弧状に戻り、高硬度部39は上方に膨らんで元の
円弧状に戻るため、圧迫が終わると迅速に元形に復帰す
るのである。
【0025】図6はチューブ3の一部に補強材を入れて
補強したものの一例である。すなわち、41は補強材4
1aで補強された補強部、42は補強されていない非補
強部であり、補強部41は半円を少し越える範囲で形成
され、補強部41が変形しにくい部分、非補強部42が
変形しやすい部分となる。補強材41aとしては布、金
属薄板などの適宜の材料を使用することができ、この補
強材41aを図示のようにチューブ3の外表面に沿わせ
て一体に成形するほか、内表面に沿わせて一体に成形し
たり、チューブ3の肉厚の内部に埋め込んで一体に成形
したりすることによって補強部41が形成される。この
ように補強材41aによって変形しにくい部分を形成し
たものでは、補強材41aを適宜選択することによって
任意の強度を得ることができ、多様な仕様に応ずること
が容易であると共に、チューブ3の耐久性を高めること
が可能となる。
【0026】この例における圧迫時と原形復帰時の作用
は図2の例と同様である。すなわち、図の状態でチュー
ブ3が上下方向に圧迫されると、非補強部42は大きく
変形して引き伸ばされるのに対して、補強部41はほと
んど引き伸ばされないで単に押しつぶされて平面状にな
る。従って、引き伸ばされた非補強部42には収縮力が
強く作用する一方、補強部41には上向きの反発力が生
じており、圧迫力がなくなると非補強部42は収縮しな
がら元の円弧状に戻り、補強部41は上方に膨らんで元
の円弧状に戻るため、圧迫が終わると迅速に元形に復帰
するのである。
【0027】なお、図5及び図6のチューブ3の断面形
状は図示のように真円であってもよいが、図の姿勢にお
いて横方向に長い楕円形や菱形のような少し偏平な多角
形としてもよく、これによってポンプとして組み立てら
れた場合のチューブのねじれを防止することができる。
【0028】図7は変形しにくい部分を気泡部で構成し
たものの一例である。すなわち、43は変形しにくい部
分となる気泡部、44は気泡部43が設けられないで変
形しやすい部分となる非気泡部である。この気泡部43
は多数の独立気泡を有するものであり、例えばチューブ
3の成形時に発泡材を混入することによって形成される
が、マイクロカプセル等の名称で市販されている熱膨張
性微小球や発泡済みの中空微小球を利用して形成するこ
ともできる。
【0029】図7は全体として偏平な楕円状のチューブ
3の両端部に1個ずつ気泡部43を設けた例であり、
(b)は(a)の状態のチューブ3が上方から加圧部材4に
圧迫された状態を示したものである。チューブ3が圧迫
されると、上下の非気泡部44は圧迫力と流体流路3e
内の流体の圧力によって左右に引き伸ばされ、気泡部4
3は内部の気体が圧縮された状態で押しつぶされる。従
って、引き伸ばされた非気泡部44には収縮力が作用す
る一方、気泡部43には圧縮された気体の圧力による大
きな反発力が生じ、圧迫力がなくなると非気泡部44は
収縮しながら元の長さに戻り、気泡部43は上方に膨ら
んで元の形状に戻るため、圧迫が終わると迅速に元形に
復帰するのである。
【0030】ここで、(b)図の左側はチューブ3の全体
を押圧して気泡部43をほぼ完全に押しつぶす場合、右
側は加圧部材4に逃げ部4aを設けて気泡部43を少し
残す場合を示している。逃げ部は加圧部材4と円筒室2
の両側に形成してもよい。気泡部43をほぼ完全に押し
つぶす場合は、大きな反発力が発生して大きな復元力が
得られる反面、大きな圧迫力が必要となるが、小型で回
転速度が高いモータを使用してポンプを小型化する場合
などにはこの構造が適している。これに対して気泡部4
3を少し残す場合は比較的小さい圧迫力で済むので、多
少大型になってもモータの負荷を軽くして長寿命のポン
プとする場合などにはこの構造が適していると考えられ
る。なお後者の構造でも、圧迫時に気泡部43に膨らみ
が残っていて元形に戻るのが速いために十分な復元性は
得られる。
【0031】なお、気泡部43による元の形状に戻る作
用はチューブ3が円形であっても同様に発揮され、円形
の場合には気泡部43がどこに形成されていてもよいの
で、例えば90°ずつ隔てて4箇所に気泡部を設けた構
造とすることもできる。またこの例の変形として、チュ
ーブ全体を独立気泡を含んだスポンジ状の材料で構成す
ることも可能である。このように、気泡部43で変形し
にくい部分を構成したものでは、主として気泡部43の
気体による復元力を利用するので材料の疲労などによっ
て復元力が低下するようなことがなく、長期間にわたっ
てチューブ自体の形状復元性を維持することができる。
【0032】図8はチューブ内に流体流路とは別に貫通
孔を設けたものの一例である。すなわち、45は流体流
路3eには連通していない貫通孔であり、これに適宜の
液体あるいは空気などの気体を封入して変形しにくい部
分を構成すると共に、他の部分を変形しやすい部分46
としたものであって、この例では図7の気泡部43に相
当する部分が貫通孔45となっている。このように、貫
通孔45に流体を封入して変形しにくい部分を形成した
ものでは、成形時には貫通孔45を設けておくだけでよ
いので気泡部を設ける場合と比較して製作が容易であ
り、低コストでチューブを製作することができる。
【0033】この例における圧迫時と原形復帰時の作用
は図7の場合とほぼ同様であり、図の状態でチューブ3
が圧迫されると、上下の変形しやすい部分46は圧迫力
と流体流路3e内の流体の圧力によって左右に引き伸ば
され、貫通孔45は内部の流体が圧縮された状態で押し
つぶされる。従って、引き伸ばされた変形しやすい部分
46には収縮力が作用する一方、貫通孔45の部分には
圧縮された流体の圧力で大きな反発力が生じ、圧迫力が
なくなると変形しやすい部分46は収縮しながら元の長
さに戻り、貫通孔45は上下方向に膨らんで元の形状に
戻るため、圧迫が終わると迅速に元形に復帰するのであ
る。
【0034】なお、図8の構造において貫通孔45の両
端部が封止されている場合には、圧迫箇所の移動につれ
て移動した貫通孔45内の流体の行き場がなくなること
がないようにするために、例えば図7の(b)のように加
圧部材4に逃げ部4aを設け、あるいは加圧部材4の幅
を少し小さくしてチューブ3の端縁まで完全には押圧し
ないようにして、貫通孔45内の流体が逆方向に戻れる
ようにしておく必要がある。また、貫通孔45の両端部
を図1における流入口3aと流出口3bの近辺で相互に
連結し、内部の流体が圧迫箇所の移動に応じて貫通孔4
5を循環できるようにしてもよい。
【0035】
【発明の効果】上述の説明から明らかなように、この発
明のチューブポンプは、チューブの長手方向に垂直な断
面を、変形しにくい部分と変形しやすい部分で構成した
ものであり、チューブが圧迫された時には変形しやすい
部分が引き伸ばされて収縮力が強く作用し、同時に変形
しにくい部分には圧迫に対する大きな反発力が生じてチ
ューブ自体の形状復元性が向上するので、圧迫が終わる
と迅速に元形に復帰するようになる。
【0036】従って、圧迫用の回転ローラや加圧部材の
回転速度を速くしても、チューブが元の形状に戻らない
うちに次の圧迫が起きて効率が著しく低下するという現
象が起きにくくなり、ポンプの能力を十分に発揮するこ
とが可能となる。またチューブガイドなどを設けて圧迫
されたチューブを強制的に元の形状に戻すような構造は
不要であり、構造が複雑になったりコストが上昇したり
することもない。またチューブの形状復元性が向上する
ので、運転を長時間休止した時に圧迫されたままになっ
ていた部分のチューブ内面が互いに粘着した状態になる
スティッキング現象の防止にも効果がある。
【0037】また、チューブ断面の肉厚を変えて厚肉部
を変形しにくい部分とし、薄肉部を変形しやすい部分と
したものにおいて、円形または楕円形の外表面に対して
内表面を偏心させることによって厚肉部と薄肉部を形成
したものでは、断面形状が比較的単純なものとなって製
作が容易である。
【0038】また、厚肉部を変形しにくい部分とし、薄
肉部を変形しやすい部分としたものにおいて、チューブ
断面の全体の形状を偏平な台形状として底辺に相当する
部分を薄肉部としたものでは、ポンプとして組み立てた
際にチューブがねじれて圧迫方向がずれることがなくな
り、しかもかなりの厚みのある部分を圧迫するために大
きな圧迫力が必要となったり、チューブに損傷が生じや
すくなったりすることもない。
【0039】また、チューブ断面の全体の形状を2つの
台形が底辺を共有した状態の偏平な六角形状とし、底辺
に相当する共有部分を薄肉部としたものでは、薄肉部が
円筒室や加圧部材に接触しないので伸縮時における固体
部材との摩擦がなくなり、摩擦に起因する伸縮時間の増
大や損傷の発生をなくすことができる。
【0040】また、チューブの強度を部分的に変えて強
度の大きい部分を変形しにくい部分とし、強度の小さい
部分を変形しやすい部分としたものにおいて、材料の硬
度によって強度を変えたものでは、チューブの成形時に
おいて材料を適切に選択することによって目的とするチ
ューブを得ることができ、製造が容易である。
【0041】また、チューブの強度を部分的に変えて強
度の大きい部分を変形しにくい部分とし、強度の小さい
部分を変形しやすい部分としたものにおいて、チューブ
断面の一部を補強材により補強して変形しにくい部分を
形成したものでは、補強材の選択によって任意の強度を
得ることができ、しかもチューブの耐久性を向上するこ
ともできる。
【0042】また、多数の独立気泡を有する気泡部で変
形しにくい部分を構成したものでは、材料の疲労などに
よって復元力が低下するようなことがなく、長期間にわ
たってチューブ自体の元形復帰性を維持することができ
る。
【0043】また、流体流路には連通しない貫通孔に流
体を封入して変形しにくい部分を形成したものでは、気
泡部を設けたものと比較して低コストでチューブを製作
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の一例における概略正面
図である。
【図2】同上の実施の形態におけるチューブの断面図と
圧迫時の断面図である。
【図3】同上のチューブの他の構成を示す断面図と圧迫
時の断面図である。
【図4】同上のチューブの更に他の構成を示す断面図と
圧迫時の断面図である。
【図5】他の実施の形態におけるチューブの断面図であ
る。
【図6】同上のチューブの他の構成を示す断面図であ
る。
【図7】更に他の実施の形態におけるチューブの断面図
と圧迫時の断面図である。
【図8】同上のチューブの他の構成を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 基板 2 円筒室 3 チューブ 3e 流体流路 4 加圧部材 31,33,35 厚肉部(変形しにくい部分) 32,34,36 薄肉部(変形しやすい部分) 39 高硬度部(変形しにくい部分) 40 低硬度部(変形しやすい部分) 41 補強部(変形しにくい部分) 41a 補強材 42 非補強部(変形しやすい部分) 43 気泡部(変形しにくい部分) 44 非気泡部(変形しやすい部分) 45 貫通孔(変形しにくい部分) 46 変形しやすい部分
【手続補正書】
【提出日】平成11年2月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 チューブポンプ
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、チューブを円形
の円筒室に添わせてリング状に配置し、その内側に設け
た加圧部材でチューブを順次圧迫してポンプ作用を行う
チューブポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】内周面が円形の円筒室を基板に設けてそ
の内周面に添わせて弾性材料からなるチューブをリング
状に配置し、その内側に設けた回転ローラでチューブを
一方向に順次圧迫し、あるいはチューブの内側に設けた
リング状の加圧部材を円筒室の内周面に沿って円運動さ
せてチューブを一方向に順次圧迫することにより、閉塞
部を移動させてポンプ作用を行うチューブポンプは公知
である。このようなポンプの場合、回転ローラや加圧部
材等が通過するとチューブが元の形状に戻ることが必要
であり、一般にはチューブ自身の弾性やチューブ内外の
圧力差などによって元の形状に戻る自然復元方式が採用
されている。
【0003】しかしながら、自然復元の場合には元の形
状に戻るまでにある程度の時間を要するため、回転ロー
ラなどの回転速度を速くするとチューブが元の形状に戻
らないうちに次の圧迫が起こるようになり、効率が著し
く低下してポンプとしての能力を十分に発揮できない状
態となる。これを解決するために、回転ローラなどによ
る圧迫方向に対して直角な方向にチューブを押圧するチ
ューブガイドを回転ローラなどに同期させて回転し、チ
ューブを強制的に元の形状に戻すようにした強制復元方
式が知られている。しかしながら、チューブガイドを設
けると構造が複雑になると共にコストも上昇する結果と
なるので、広く普及するには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明はこのような
問題点に着目し、チューブ自体の形状復元性を向上させ
ることにより、チューブガイドのようなものを用いない
でもポンプの能力を十分に発揮できるようにすることを
課題としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに、この発明では、次のような構成によってチューブ
の長手方向に対して垂直な断面に、変形しにくい部分と
変形しやすい部分が存在するような構成としている。
【0006】すなわち、第1の発明では断面の全体形状
を偏平な台形状とし、底辺に相当する部分を薄肉として
変形しやすい部分を形成すると共に、他の部分を厚肉と
して変形しにくい部分を形成している。また、第2の発
明は断面の全体形状を2つの台形が底辺を共有した状態
の偏平な六角形状とし、底辺に相当する共有部分を薄肉
として変形しやすい部分を形成すると共に、他の部分を
厚肉として変形しにくい部分を形成している。
【0007】また第3の発明は、チューブの材料の硬度
を変えることによって硬度の大きい部分で変形しにくい
部分を形成し、硬度の小さい部分が変形しやすい部分を
形成しており、第4の発明は、多数の独立気泡を有する
気泡部で変形しにくい部分を形成している。また第5の
発明は、チューブ内に流体流路に連通しない貫通孔を長
手方向に沿って設けてこの貫通孔に流体を封入すること
により、変形しにくい部分を形成している。
【0008】このような構造により、チューブが圧迫さ
れた時には変形しにくい部分よりも変形しやすい部分が
大きく変形して伸ばされるので、その部分には収縮力が
強く作用して元形に復帰しようとする反発力が生じ、同
時に変形しにくい部分は圧迫によって無理に押しつぶさ
れているので大きな反発力が生ずる。すなわち、従来の
単純な円筒状のチューブを平面状に押しつぶした場合に
は、単に円筒状のチューブが平面状になると共に平面状
の縁部が180°折り返された状態となり、曲げに対す
る反発力が作用するだけで大きな復元力を得られにくい
のに対して、上記の各発明では変形しにくい部分と変形
しやすい部分の両方にそれぞれ大きな反発力が生じてチ
ューブ自体の形状復元性が向上し、圧迫が終わると迅速
に元形に復帰するようになるのである。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、リング状の加圧部材を円筒
室の内周面に沿って円運動させてチューブを圧迫する方
式のチューブポンプにこの発明を適用した実施の形態に
ついて説明する。
【0010】図1はポンプ全体の概略正面図であり、図
1において、1は円筒室2を形成した基板であり、円筒
室2の内周面2aは円形で半円周より大きく全円周より
は小さな範囲で形成され、内周面2aが形成されていな
い部分は開口部2bとなっている。3は弾性材料からな
るチューブであり、円筒室2の内周面2aに添わせてリ
ング状に配置すると共に、その両端を基板1の外部に引
き出して流入口3aと流出口3bを構成している。基板
1は例えばNBR等のゴム系材料やABS等の合成樹脂
の成形品で構成され、またチューブ3は移送される流体
に応じてゴム系や各種の合成樹脂製のチューブが適宜選
択使用される。
【0011】4はチューブ3の内側に配置されたリング
状の加圧部材であって、内リング41と外リング42の
二重構造となっており、加圧部材4の内リング41は摩
擦係数の小さい剛体材料、例えばフッ素樹脂系の合成樹
脂成形品で構成され、外リング42はゴムなどの摩擦係
数の大きい弾性材料の成形品で構成されている。内リン
グ41と外リング42は断面が長方形で丁度重なるよう
な寸法で形成されており、内リング41の外周面41b
に設けた突条を外リング42の内周面42aに設けた周
溝に嵌めることによって、外リング42は自由に回転で
きる状態で内リング41に保持されている。
【0012】5は加圧部材4の内側に配置された偏心ロ
ーター、6は偏心ローター5が取り付けられている回転
軸であって、偏心ローター5の先端5aが内リング41
の内周面41aに摺接しながら回転して加圧部材4を円
筒室2の内周面2a側に圧迫し、加圧部材4を内周面2
aに沿って円運動させるように構成されている。なお、
基板1の背面側には回転軸6を駆動するための減速機付
きモータなどが配置されており、また手前側には蓋が設
けられるが、これらは図示してない。
【0013】加圧部材4の外リング42の外周面42b
の半径は、円筒室2の半径からチューブ3の肉厚の2倍
以上を差し引いた寸法に選定されている。また、回転軸
6の軸心から偏心ローター5の先端5aまでの距離と内
リング41の内周面41aから外リング42の外周面4
2bまでの寸法の和は、偏心ローター5の先端5aによ
って加圧部材4が基板1の内周面2a側に押された場合
に、外リング42によってチューブ3が押しつぶされて
内部の流路が完全に閉塞されるように選定されている。
【0014】図2は、変形しにくい部分と変形しやすい
部分を肉厚を変えて形成したものの一例であり、(a)に
示すように円形の外表面3cに対して同じく円形の内表
面3dを偏心させることによって、厚肉部31で変形し
にくい部分を形成し、薄肉部32で変形しやすい部分を
形成してある。
【0015】図2の(b)は(a)の状態のチューブ3が上
方から加圧部材4に圧迫され、平面状に押しつぶされて
流体流路3eが閉塞されている状態を示したもので、薄
肉部32は肉が薄いために大きく変形して引き伸ばされ
ているのに対して、厚肉部31は肉が厚いためにほとん
ど引き伸ばされず、単に押しつぶされて平面状になって
いるだけである。従って、引き伸ばされた薄肉部32に
は内側方向の収縮力が強く作用する一方、厚肉部31に
は上向きの反発力が生じており、圧迫力がなくなると薄
肉部32は収縮しながら元の円弧状に戻り、厚肉部31
は薄肉部32を両側から押しながら上方に膨らんで元の
円弧状に戻ることになる。
【0016】しかしながら、図2のようにチューブ断面
が円形であるとチューブの姿勢が一定せず、実際にポン
プとして組み立てられた場合にチューブがねじれて、圧
迫力が図の姿勢における上下方向に正しく加わらない状
態になる可能性がある。また圧迫力の方向にずれがなく
ても、圧迫時に180°の折り返しを受ける両端部分は
かなりの厚みがあるため大きな圧迫力が必要となり、ま
たこのかなりの厚みのある部分は変形を繰り返すことに
より亀裂などの損傷が生じやすくなる。
【0017】以下、上記の問題を解決した各発明におけ
るチューブの構成について図3乃至図7により説明す
る。なお各図面はすべて断面図であるが、この発明にお
けるチューブ3は各図に示した断面構造が長手方向に連
続したものとなっている。
【0018】図3はチューブ断面の全体の形状を偏平な
台形状としたものの一例を示している。すなわち、(a)
に示すように偏平な台形状の底辺に相当する部分を薄肉
部34としてこれを変形しやすい部分とし、これに連な
る他の3辺を厚肉部33としてこれを変形しにくい部分
としてある。厚肉部33を構成する左右の斜辺33aと
上辺33bの境界部分の外面には曲がりやすくするため
にU溝状の凹部33cを設けてある。また圧迫時につぶ
れやすいように斜辺33aの傾斜は45°〜60°程度
に選定し、薄肉部34である底辺との間に鋭角部33d
が形成されている。ちなみに各部の寸法の例を示すと、
流体流路3eの幅wは12mm、高さhは3mm、上辺33
bと薄肉部34の厚みt1及びt2はそれぞれ1.5mm及
び0.5mmである。
【0019】図3の(b)は(a)の状態のチューブ3が上
方から加圧部材4に圧迫されて平面状となり、流体流路
3eが閉塞されている状態を示したもので、全体の形状
が偏平な台形状であるためポンプとして組み立てられた
場合にチューブ3がねじれることはなく、圧迫力は常に
図の姿勢における上下方向に正しく加わり、圧迫時の厚
みも一様なものとなる。この圧迫状態では、厚肉部33
は上下に圧縮されながら斜辺33aの下部が外側に広が
って平面状になるが各辺の長さはあまり変化しないのに
対して、薄肉部34は肉が薄いために斜辺33aの広が
りに応じて引っ張られている。従って、薄肉部34には
元の寸法に戻る方向の収縮力が強く作用し、また厚肉部
33には上方に膨らんで元の台形に戻る反発力が作用す
ることになるので、圧迫力がなくなると迅速に元形に復
帰するのである。
【0020】図3の形状の場合には、薄肉部34が圧迫
体の一方、すなわち(b)図の場合であれば円筒室2に密
着した状態となるので、伸縮時に摩擦が生じて伸縮に要
する時間が長くなり、また薄肉部34が損傷しやすくな
る。図4はこのような問題点を解決するために、図3に
準じた偏平な形状の2つの台形が底辺を共有した状態で
合体した偏平な六角形状としたものである。
【0021】すなわち、共通の底辺に相当する部分が薄
肉部36となり、これを挟んで上下に厚肉部35が設け
られた形状であって、35aは斜辺、35bは上辺、3
5cは凹部であり、流体流路3eは2本形成されてい
る。各部の形状と寸法は例えば図3の場合と同様に選定
される。図4の(b)は(a)の状態のチューブ3が上方か
ら加圧部材4に圧迫された状態を示したものであるが、
このような形状であるため、薄肉部36は流体流路3e
内の流体中で伸縮して固体の円筒室2や加圧部材4には
接触することがない。従って、固体部材との摩擦による
伸縮時間の増大や損傷の発生をなくすことができるので
ある。
【0022】なお、チューブ3を図3や図4の形状とし
た場合には、加圧部材4や円筒室2の加圧面の断面形状
が平面状であると両端の斜辺部分に対する圧迫が不十分
になるため、各図の(b)図に鎖線で例示したように、チ
ューブ3の形状に対応させて少なくとも一方の加圧面の
両端がテーパ状に高くなる形状にするとよく、これによ
って斜辺を十分に押圧することが可能となる。
【0023】図5はチューブ断面に硬度の大きい部分と
小さい部分を設けて、硬度の大きい部分を変形しにくい
部分とし、硬度の小さい部分を変形しやすい部分とした
ものの一例であり、2重斜線の部分とそれ以外の部分を
それぞれ例えばショア硬度60度の高硬度部39及び硬
度30度の低硬度部40としてある。高硬度部39が硬
度が高くて変形しにくい部分、低硬度部40が硬度が低
くて変形しやすい部分であり、高硬度部39は半円を少
し越える範囲で形成される。このように、材料の硬度を
変える構成であれば、チューブの成形時に材料を適切に
選択することによって目的とするチューブを得ることが
できるので、製造が容易である。
【0024】図5の形状のものでは、図の状態でチュー
ブ3が上下方向に圧迫されると低硬度部40は大きく変
形して引き伸ばされるのに対して、高硬度部39はほと
んど引き伸ばされず、単に押しつぶされるだけである。
従って、引き伸ばされた低硬度部40には収縮力が強く
作用する一方、高硬度部39には上向きの反発力が生
じ、圧迫力がなくなると低硬度部40は収縮しながら元
の円弧状に戻り、高硬度部39は上方に膨らんで元の円
弧状に戻るため、圧迫が終わると迅速に元形に復帰する
のである。
【0025】なお、図5のチューブ3の断面形状は図示
のように真円であってもよいが、図の姿勢において横方
向に長い楕円形や菱形のような少し偏平な多角形として
もよく、これによってポンプとして組み立てられた場合
のチューブのねじれを防止することができる。
【0026】図6は変形しにくい部分を気泡部で構成し
たものの一例である。すなわち、43は変形しにくい部
分となる気泡部、44は気泡部43が設けられないで変
形しやすい部分となる非気泡部である。この気泡部43
は多数の独立気泡を有するものであり、例えばチューブ
3の成形時に発泡材を混入することによって形成される
が、マイクロカプセル等の名称で市販されている熱膨張
性微小球や発泡済みの中空微小球を利用して形成するこ
ともできる。
【0027】図6は全体として偏平な楕円状のチューブ
3の両端部に1個ずつ気泡部43を設けた例であり、
(b)は(a)の状態のチューブ3が上方から加圧部材4に
圧迫された状態を示したものである。チューブ3が圧迫
されると、上下の非気泡部44は圧迫力と流体流路3e
内の流体の圧力によって左右に引き伸ばされ、気泡部4
3は内部の気体が圧縮された状態で押しつぶされる。従
って、引き伸ばされた非気泡部44には収縮力が作用す
る一方、気泡部43には圧縮された気体の圧力による大
きな反発力が生じ、圧迫力がなくなると非気泡部44は
収縮しながら元の長さに戻り、気泡部43は上方に膨ら
んで元の形状に戻るため、圧迫が終わると迅速に元形に
復帰するのである。
【0028】ここで、(b)図の左側はチューブ3の全体
を押圧して気泡部43をほぼ完全に押しつぶす場合、右
側は加圧部材4に逃げ部4aを設けて気泡部43を少し
残す場合を示している。逃げ部は加圧部材4と円筒室2
の両側に形成してもよい。気泡部43をほぼ完全に押し
つぶす場合は、大きな反発力が発生して大きな復元力が
得られる反面、大きな圧迫力が必要となるが、小型で回
転速度が高いモータを使用してポンプを小型化する場合
などにはこの構造が適している。これに対して気泡部4
3を少し残す場合は比較的小さい圧迫力で済むので、多
少大型になってもモータの負荷を軽くして長寿命のポン
プとする場合などにはこの構造が適していると考えられ
る。なお後者の構造でも、圧迫時に気泡部43に膨らみ
が残っていて元形に戻るのが速いために十分な復元性は
得られる。
【0029】なお、気泡部43による元の形状に戻る作
用はチューブ3が円形であっても同様に発揮され、円形
の場合には気泡部43がどこに形成されていてもよいの
で、例えば90°ずつ隔てて4箇所に気泡部を設けた構
造とすることもできる。またこの例の変形として、チュ
ーブ全体を独立気泡を含んだスポンジ状の材料で構成す
ることも可能である。このように、気泡部43で変形し
にくい部分を構成したものでは、主として気泡部43の
気体による復元力を利用するので材料の疲労などによっ
て復元力が低下するようなことがなく、長期間にわたっ
てチューブ自体の形状復元性を維持することができる。
【0030】図7はチューブ内に流体流路とは別に貫通
孔を設けたものの一例である。すなわち、45は流体流
路3eには連通していない貫通孔であり、これに適宜の
液体あるいは空気などの気体を封入して変形しにくい部
分を構成すると共に、他の部分を変形しやすい部分46
としたものであって、この例では図6の気泡部43に相
当する部分が貫通孔45となっている。このように、貫
通孔45に流体を封入して変形しにくい部分を形成した
ものでは、成形時には貫通孔45を設けておくだけでよ
いので気泡部を設ける場合と比較して製作が容易であ
り、低コストでチューブを製作することができる。
【0031】この例における圧迫時と原形復帰時の作用
は図6の場合とほぼ同様であり、図の状態でチューブ3
が圧迫されると、上下の変形しやすい部分46は圧迫力
と流体流路3e内の流体の圧力によって左右に引き伸ば
され、貫通孔45は内部の流体が圧縮された状態で押し
つぶされる。従って、引き伸ばされた変形しやすい部分
46には収縮力が作用する一方、貫通孔45の部分には
圧縮された流体の圧力で大きな反発力が生じ、圧迫力が
なくなると変形しやすい部分46は収縮しながら元の長
さに戻り、貫通孔45は上下方向に膨らんで元の形状に
戻るため、圧迫が終わると迅速に元形に復帰するのであ
る。
【0032】なお、図7の構造において貫通孔45の両
端部が封止されている場合には、圧迫箇所の移動につれ
て移動した貫通孔45内の流体の行き場がなくなること
がないようにするために、例えば図6の(b)のように加
圧部材4に逃げ部4aを設け、あるいは加圧部材4の幅
を少し小さくしてチューブ3の端縁まで完全には押圧し
ないようにして、貫通孔45内の流体が逆方向に戻れる
ようにしておく必要がある。また、貫通孔45の両端部
を図1における流入口3aと流出口3bの近辺で相互に
連結し、内部の流体が圧迫箇所の移動に応じて貫通孔4
5を循環できるようにしてもよい。
【0033】
【発明の効果】上述の説明から明らかなように、第1の
発明のチューブポンプは、チューブ断面の全体の形状を
偏平な台形状とし、底辺に相当する部分を薄肉にして変
形しやすい部分としたものである。従って、チューブが
圧迫された時には変形しやすい部分が引き伸ばされて収
縮力が強く作用し、同時に変形しにくい部分には圧迫に
対する大きな反発力が生じてチューブ自体の形状復元性
が向上するので、圧迫が終わると迅速に元形に復帰する
ようになる。
【0034】このため、圧迫用の回転ローラや加圧部材
の回転速度を速くしても、チューブが元の形状に戻らな
いうちに次の圧迫が起きて効率が著しく低下するという
現象が起きにくくなり、ポンプの能力を十分に発揮する
ことが可能となる。またチューブガイドなどを設けて圧
迫されたチューブを強制的に元の形状に戻すような構造
は不要であり、構造が複雑になったりコストが上昇した
りすることもない。またチューブの形状復元性が向上す
るので、運転を長時間休止した時に圧迫されたままにな
っていた部分のチューブ内面が互いに粘着した状態にな
るスティッキング現象の防止にも効果がある。しかもポ
ンプとして組み立てた際にチューブがねじれて圧迫方向
がずれることがなく、またかなりの厚みのある部分を圧
迫するために大きな圧迫力が必要となったり、チューブ
に損傷が生じやすくなったりすることもない。
【0035】また第2の発明は、チューブ断面の全体の
形状を2つの台形が底辺を共有した状態の偏平な六角形
状とし、底辺に相当する共有部分を薄肉にして変形しや
すい部分としたものであって、薄肉部が円筒室や加圧部
材に接触しないので伸縮時における固体部材との摩擦が
なくなり、摩擦に起因する伸縮時間の増大や損傷の発生
をなくすことができる。
【0036】また第3の発明は、チューブの硬度を部分
的に変えて硬度の大きい部分を変形しにくい部分とし、
硬度の小さい部分を変形しやすい部分としたものであ
り、チューブの成形時において材料を適切に選択するこ
とによって目的とするチューブを得ることができ、製造
が容易である。
【0037】また第4の発明は、多数の独立気泡を有す
る気泡部で変形しにくい部分を構成したものであり、材
料の疲労などによって復元力が低下するようなことがな
く、長期間にわたってチューブ自体の形状復元性を維持
することができる。
【0038】また第5の発明は、流体流路には連通しな
い貫通孔に流体を封入して変形しにくい部分を形成した
ものであり、気泡部を設けたものと比較して低コストで
チューブを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るチューブポンプの概略正面図で
ある。
【図2】上記チューブポンプにおける一般的なチューブ
の断面図と圧迫時の断面図である。
【図3】第1の発明の実施の形態におけるチューブの断
面図と圧迫時の断面図である。
【図4】第2の発明の実施の形態におけるチューブの断
面図と圧迫時の断面図である。
【図5】第3の発明の実施の形態におけるチューブの断
面図である。
【図6】第4の発明の実施の形態におけるチューブの断
面図と圧迫時の断面図である。
【図7】第5の発明の実施の形態におけるチューブの断
面図である。
【符号の説明】 1 基板 2 円筒室 3 チューブ 3e 流体流路 4 加圧部材 31,33,35 厚肉部(変形しにくい部分) 32,34,36 薄肉部(変形しやすい部分) 39 高硬度部(変形しにくい部分) 40 低硬度部(変形しやすい部分) 43 気泡部(変形しにくい部分) 44 非気泡部(変形しやすい部分) 45 貫通孔(変形しにくい部分) 46 変形しやすい部分
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正内容】
【図7】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】削除

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内周面が円形である円筒室内に弾性材料
    からなるチューブを内周面に添わせてリング状に配置
    し、このチューブを長手方向に順次圧迫してチューブ内
    の流体を送出するように構成されたチューブポンプにお
    いて、 上記チューブの長手方向に対して垂直な断面に、変形し
    にくい部分と変形しやすい部分が存在するように構成し
    たことを特徴とするチューブポンプ。
  2. 【請求項2】 チューブ断面の肉厚を不均一にすること
    により、厚肉部で変形しにくい部分を形成し、薄肉部で
    変形しやすい部分を形成した請求項1記載のチューブポ
    ンプ。
  3. 【請求項3】 チューブの外表面と内表面の断面形状が
    それぞれ円形または楕円形であり、外表面に対して内表
    面を偏心させて厚肉部と薄肉部を形成した請求項2記載
    のチューブポンプ。
  4. 【請求項4】 チューブ断面の全体の形状を偏平な台形
    状とし、底辺に相当する部分を薄肉部とした請求項2記
    載のチューブポンプ。
  5. 【請求項5】 チューブ断面の全体の形状を2つの台形
    が底辺を共有した状態の偏平な六角形状とし、底辺に相
    当する共有部分を薄肉部とした請求項2記載のチューブ
    ポンプ。
  6. 【請求項6】 チューブ断面に強度の大きい部分と小さ
    い部分が存在する構成とし、強度の大きい部分を変形し
    にくい部分とし、強度の小さい部分を変形しやすい部分
    とした請求項1記載のチューブポンプ。
  7. 【請求項7】 材料の硬度を変えることにより、硬度の
    大きい部分で変形しにくい部分を形成し、硬度の小さい
    部分で変形しやすい部分を形成した請求項6記載のチュ
    ーブポンプ。
  8. 【請求項8】 チューブ断面の一部が補強材で補強され
    ており、補強された部分で変形しにくい部分を形成し、
    補強されない部分で変形しやすい部分を形成した請求項
    6記載のチューブポンプ。
  9. 【請求項9】 変形しにくい部分を多数の独立気泡を有
    する気泡部で構成した請求項1記載のチューブポンプ。
  10. 【請求項10】 チューブ内の流体流路に連通しない貫
    通孔を長手方向に沿って設け、この貫通孔に流体を封入
    して変形しにくい部分を構成した請求項1記載のチュー
    ブポンプ。
JP10080297A 1998-03-11 1998-03-11 チューブポンプ Pending JPH11257249A (ja)

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