JPH11257029A - 一体式中空プッシュロッドの熱処理方法 - Google Patents

一体式中空プッシュロッドの熱処理方法

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JPH11257029A
JPH11257029A JP6287298A JP6287298A JPH11257029A JP H11257029 A JPH11257029 A JP H11257029A JP 6287298 A JP6287298 A JP 6287298A JP 6287298 A JP6287298 A JP 6287298A JP H11257029 A JPH11257029 A JP H11257029A
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JP
Japan
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push rod
heat treatment
shaft portion
spherical
treatment method
Prior art date
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Application number
JP6287298A
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English (en)
Inventor
Kenji Sekiya
憲二 関屋
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Matsumoto Heavy Industry Co Ltd
Original Assignee
Matsumoto Heavy Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プッシュロッドの両球状支持端部の硬さを十
分に高めることができ、かつ軸部の靭性を十分に確保す
ることができる工数の少ない熱処理方法を提供する。 【解決手段】 プッシュロッド18、21の熱処理にお
いては、まずプッシュロッド18、21全体に浸炭処理
が施され、この後オイルに浸漬され、該プッシュロッド
18、21に焼き入れ処理が施される。その際両球状支
持端部27、29はオイルによって急冷されて完全な浸
炭焼き入れが施され、該球状支持端部27、29の硬さ
が十分に高められる。他方、軸部25はその内表面が中
空部26内の高温の空気と接触しているので、該軸部2
5の内側寄りの部分は徐冷され、軸部25の内側寄りの
部分の硬さはさほど高まらず、その靭性が十分に確保さ
れる。この熱処理においては防炭剤を用いる必要がない
のでその工数が低減される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、中空部を有する薄
肉の軸部と、該軸部の軸線方向の両端部に形成されそれ
ぞれ球面状端面を有する第1及び第2の厚肉の球状支持
端部とが金属材料で一体形成されてなる一体式中空プッ
シュロッドの熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、エンジンにおいては、クランク
シャフトによってこれと同期して回転駆動されるカムシ
ャフトに取り付けられたカムによって、吸排気バルブが
クランクシャフトの回転に同期して開閉されるようにな
っている。そして、カムシャフトをクランクシャフトに
近い位置に配置すると、クランクシャフトからカムシャ
フトへの動力伝達機構を簡素なものとすることができる
ので、カムシャフトはしばしばクランクシャフト近傍に
おいてシリンダブロックに取り付けられる。
【0003】そして、普通のエンジンにおいては、吸排
気バルブが燃焼室の上端部に配置される関係上、カムシ
ャフトをクランクシャフト近傍に配置する場合は、カム
と吸排気バルブとが上下方向にかなり離れることにな
る。そこで、このようなエンジンでは、吸排気バルブ
は、カムによって概ね上下方向に往復移動させられる細
長いプッシュロッドと、吸排気バルブのステムの上端部
近傍に配置されたロッカアームとを介して、カムによっ
て駆動されるようにしている。
【0004】例えば図7に示すように、かかるプッシュ
ロッド100は、その主部をなす細長い軸部101の一
方の端部に、凸状の球面状端面を備えた第1球状支持端
部102が形成される一方、もう一方の端部に、凹部1
04からなる凹状の球面状端面を備えた第2球状支持端
部103が形成された構造とされる。そして、このプッ
シュロッド100においては、両球状支持端部102、
103の球面状端面がそれぞれ他の部材と摺接ないしは
当接する。このため、両球状支持端部102、103は
耐摩耗性が高いこと、すなわち十分な硬さを備えている
ことが要求される。他方、軸部101は、繰り返し圧縮
力が加えられる関係上、靭性(タフネス)が高いことが
要求される。そこで、かかるプッシュロッド100にお
いては、通常、両球状支持端部102、103の硬さを
高める一方、軸部101の靭性を高めるために熱処理が
施される。
【0005】ところで、このようなプッシュロッドは一
般に鉄系金属材料で形成されているが、鉄系金属材料の
硬さを高めるには、浸炭焼き入れ処理を施すのが効果的
である。そこで、従来のプッシュロッドの熱処理に浸炭
焼き入れ処理が広く用いられている。しかしながら、プ
ッシュロッド全体に浸炭焼き入れ処理を施したのでは、
軸部の硬さが不必要に高められ、該軸部の靭性が低下し
てしまう。
【0006】このため、従来のプッシュロッドの熱処理
においては、例えば図7に示すような鉄系金属材料(例
えば、S10C〜S20C)からなるプッシュロッド1
00の軸部101に防炭剤105を塗布した上で、プッ
シュロッド100全体に浸炭焼き入れ処理を施すように
している。なお、この後、必要に応じて低温焼き戻し処
理が施される。かくして、両球状支持端部102、10
3には浸炭焼き入れ処理が施されてその硬さすなわち耐
摩耗性が十分に高められる一方、軸部101は浸炭され
ず、十分な靭性が確保される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
従来のプッシュロッド100の熱処理手法では、浸炭焼
き入れ処理後ないしは焼き戻し処理後に、例えばショッ
トブラスト処理等を施して防炭剤105を除去しなけれ
ばならないので、該熱処理の工数が多くなり、該プッシ
ュロッド100の製造コストが高くなるといった問題が
あった。
【0008】本発明は、上記従来の問題を解決するため
になされたものであって、プッシュロッドの両球状支持
端部ないしはその球面状端面の硬さを十分に高めること
ができ、かつ軸部の靭性を十分に確保することができる
簡便な熱処理方法を提供することを解決すべき課題とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明の第1の態様にかかる一体式中空プ
ッシュロッドの熱処理方法は、中空部を有する薄肉の軸
部と、該軸部の軸線方向の両端部に形成されそれぞれ球
面状端面を有する第1及び第2の厚肉の球状支持端部と
が金属材料(例えば、鉄系金属材料)で一体形成されて
なる一体式中空プッシュロッドの熱処理方法であって、
一体式中空プッシュロッド全体に浸炭処理を施し、この
後該一体式中空プッシュロッド全体に焼き入れ処理を施
すようにしたことを特徴とするものである。ここで、焼
き入れ処理は、浸炭処理に引き続いて連続して施しても
よく(浸炭焼き入れ処理)、また浸炭処理後に別途に施
してもよい。
【0010】なお、中空部を備えた薄肉の軸部と、厚肉
の両球状支持端部とが一体形成されてなる上記の一体式
中空プッシュロッドは、本願出願人が、以前に特願平1
0−7691号の明細書において提案したものである。
したがって、この熱処理方法は、本願出願人にかかる該
一体式中空プッシュロッドの製造方法の改善にかかるも
のといえる。
【0011】この熱処理方法においては、まずプッシュ
ロッド全体に浸炭処理が施されるので、プッシュロッド
全体が浸炭される。この後、プッシュロッドが例えば低
温のオイルに浸漬されて、該プッシュロッド全体に焼き
入れ処理が施されるが、その際両球状支持端部はオイル
によって急冷されて完全な浸炭焼き入れが施され、該球
状支持端部ないしはその球面状端面の硬さが十分に高め
られ、その耐摩耗性が高められる。しかしながら、軸部
はその内周面が中空部内の高温の空気と接触しているの
で、該軸部の内部は急冷されずに徐冷され、したがって
該軸部にはさほど強い浸炭焼き入れは施されない。この
ため、軸部(とくに内部)の硬さはさほど高まらず、そ
の靭性が十分に確保される。また、軸部の疲労強度及び
座屈強度も高められる。この熱処理においては、防炭剤
を用いる必要がないので、その工数が少なくなり、該プ
ッシュロッドの製造コストが低減される。
【0012】上記一体式中空プッシュロッドの熱処理方
法においては、焼き入れ処理の後、一体式中空プッシュ
ロッドの軸部に焼き戻し処理を施すのが好ましい。この
焼き戻し処理は、例えば高周波コイル等を用いて軸部を
加熱し、この後該軸部を徐冷するなどといった手法で行
われる。このようにすれば、軸部の硬さが低下するの
で、該軸部の靭性が一層高められる。なお、この場合、
軸部の靭性を種々設計することができる。
【0013】また、本発明の第2の態様にかかる一体式
中空プッシュロッドの熱処理方法は、中空部を有する薄
肉の軸部と、該軸部の軸線方向の両端部に形成されそれ
ぞれ球面状端面を有する第1及び第2の厚肉の球状支持
端部とが金属材料(例えば、鉄系金属材料)で一体形成
されてなる一体式中空プッシュロッドの熱処理方法であ
って、一体式中空プッシュロッド全体に浸炭処理を施
し、この後該一体式中空プッシュロッドの両球状支持端
部に焼き入れ処理を施すようにしたことを特徴とするも
のである。なお、焼き入れ処理を、両球状支持端部の球
面状端面のみに施すようにしてもよい。また、焼き入れ
処理は、例えば軸部を高周波加熱した後、該軸部を急冷
するなどといった手法で行うことができる。
【0014】この熱処理方法においては、まずプッシュ
ロッド全体に浸炭処理が施されるので、プッシュロッド
全体が浸炭される。そして、この後、プッシュロッドの
両球状支持端部のみに焼き入れ処理が施されるので、両
球状支持端部には完全な浸炭焼き入れ処理が施され、該
球状支持端部ないしはその球面状端面の硬さが十分に高
められ、その耐摩耗性が高められる。しかしながら、軸
部は浸炭されるものの焼き入れが施されないので、十分
な靭性が確保される。また、軸部の疲労強度及び座屈強
度も高められる。この熱処理においては、防炭剤を用い
る必要がないので、その工数が少なくなり、該プッシュ
ロッドの製造コストが低減される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を具体
的に説明する。図6に示すように、オーバーヘッドバル
ブ型のエンジン1においては、シリンダブロック2の上
にシリンダヘッド3がボルト締結(図示せず)されてい
る。そして、シリンダブロック2内に形成されたシリン
ダ4(気筒)にはピストン5が嵌入されている。このエ
ンジン1においては、吸気バルブ6が開かれたときに吸
気ポート7から燃焼室8内に混合気が吸入され、この混
合気が点火プラグ(図示せず)によって着火・燃焼させ
られる。ここで、燃焼ガス(排気ガス)は、排気バルブ
9が開かれたときに排気ポート10と排気通路(図示せ
ず)とを介して外部に排出される。かくして、ピストン
5はシリンダ4内で往復運動し、このピストン5の往復
運動はコネクチングロッド11(コンロッド)とクラン
クアーム12とによってクランクシャフト13の回転運
動に変換される。
【0016】クランクシャフト13の近傍にはカムシャ
フト16が配置され、このカムシャフト16にカム17
が取り付けられている。なお、カムシャフト16はシリ
ンダブロック2によって回転自在に支持されている。そ
してカムシャフト16は、クランクシャフト13に取り
付けられた駆動ギヤ14と、カムシャフト16に取り付
けられ前記駆動ギヤ14と噛み合う被駆動ギヤ15とを
介して、クランクシャフト13によって、これと同期し
て回転駆動されるようになっている。
【0017】吸気バルブ6の軸部の上端部近傍には、回
動軸19回りに回動することができるロッカアーム20
が設けられている。そして、下端部がカム17(吸気用
カム)と当接し、上端部がロッカアーム20の一端に当
接するプッシュロッド18(一体式中空プッシュロッ
ド)が設けられ、吸気バルブ6は、カムシャフト16の
回転に伴って、プッシュロッド18とロッカアーム20
とを介して、カム17によって開閉されるようになって
いる。
【0018】同様に、排気バルブ9の軸部の上端部近傍
には、回動軸22回りに回動することができるロッカア
ーム23が設けられている。そして、下端部がカム17
(排気用カム)と当接し、上端部がロッカアーム23の
一端に当接するプッシュロッド21(一体式中空プッシ
ュロッド)が設けられ、排気バルブ9は、プッシュロッ
ド21とロッカアーム23とを介して、カム17によっ
て開閉されるようになっている。
【0019】ここで、プッシュロッド18、21は、カ
ムシャフト16に取り付けられたカム17のカムプロフ
ィルをロッカアーム20、23に正確に伝達することが
要求される。そして、プッシュロッド18、21は、エ
ンジン1の運転時に、その長さ(上側支持端部と下側支
持端部との距離)が、「座屈」、「へたり」あるいは
「摩耗」によって短くなるようなことがあってはならな
い。プッシュロッド18、21の長さが短くなると、ロ
ッカアーム20、23の作動量が少なくなり、吸・排気
バルブ6、9で要求されるバルブリフトが得られず、吸
気あるいは排気に支障をきたすことがある。さらに、こ
の現象が著しくなると、吸・排気バルブ6、9が完全に
開かなくなってエンジン停止に至るおそれがある。
【0020】また、プッシュロッド18、21は、エン
ジン1の運転時に、その長さが長くなるようなことがあ
ってはならない。プッシュロッド18、21の長さが長
くなると、ロッカアーム20、23の作動量が正常時に
比べて大きくなり、吸・排気バルブ6、9が完全には閉
まらなくなる(吸・排気バルブ6、9がバルブシートに
密着しなくなる)。このため燃焼室8内の混合気ないし
は燃焼ガスが十分に圧縮されないといった現象が生じ
る。燃焼ガスが圧縮されない場合、エンジン1の出力低
下が生じ、エンジン停止に至ることもある。
【0021】したがって、プッシュロッド18、21
は、ロッカアーム20、23を作動させて吸・排気バル
ブ6、9をリフトさせるために、十分な強度ないしは剛
性を備えていることが必要である。他面、動弁系の性能
の向上あるいは信頼性の向上を図るため、プッシュロッ
ド18、21の慣性質量を可及的に小さくすることが必
要である。
【0022】図1(a)に示すように、このプッシュロ
ッド18、21(一体式中空プッシュロッド)において
は、薄肉の軸部25内に中空部26が形成されている。
そして、軸部25の一方の端部には凸状の球面状端面を
備えた第1球状支持端部27が形成され、この第1球状
支持端部27に、中空部26を外部に連通させる小径の
第1穴部28(油孔)が形成されている。また、軸部2
5の他方の端部には、凹部30からなる凹状の球面状端
面を備えた第2球状支持端部29が形成され、この第2
球状支持端部29に、中空部26を外部に連通させる小
径の第2穴部31(油孔)が形成されている。かくし
て、中空部26及び両穴部28、31は、動弁系等に潤
滑油を輸送する油路として利用される。ここで、プッシ
ュロッド18、21は、鉄系金属材料、例えばS10C
〜S20Cで形成されている。なお、中空部26を油路
として用いる必要がなければ、図1(b)に示すよう
に、中空部26を外部に連通させる穴部を備えていない
プッシュロッド18’、21’としてもよい。
【0023】このように、プッシュロッド18、21
(18’、21’)においては、中空部26を有する薄
肉の軸部25と、該軸部25の軸線方向の両端部に形成
されそれぞれ球面状端面を有する第1及び第2の厚肉の
球状支持端部27、29とが一体形成された構造とされ
ているので、その強度が高められるとともに、慣性質量
が低減されている。
【0024】すなわち、プッシュロッド18、21は、
一体形成された単一の部材ないしは一体構造物であり、
機械的接合あるいは冶金的接合を用いていないので、該
プッシュロッド18、21に軸線方向の荷重が作用して
も、部材間の接合の緩みや破壊は起こらない。したがっ
て、該プッシュロッド18、21の強度ひいては信頼性
が大幅に高められている。また、軸部25に中空部26
が設けられているので、該プッシュロッド18、21の
慣性質量が小さくなり、動弁系の性能あるいは信頼性が
大幅に高められる。
【0025】ところで、前記のとおり、プッシュロッド
18、21においては、両球状支持端部27、29ないし
はその球面状端面がそれぞれ耐摩耗性が高いこと、すな
わち十分な硬さを備えていることが要求され、他方軸部
25は靭性(タフネス)が高いことが要求される。そこ
で、このプッシュロッド18、21に対しては、両球状
支持端部27、29の硬さを高める一方、軸部25の靭
性を高めるための熱処理が施される。以下、この熱処理
を説明する。
【0026】この熱処理においては、まず、プッシュロ
ッド18、21全体に浸炭処理が施される。なお、この
浸炭処理は、一般に用いられている普通の浸炭処理でよ
く、例えばオーステナイト生成温度(例えば、880〜
950°C)における、固体浸炭、ガス浸炭、液体浸炭
等を用いることができる。
【0027】次に、浸炭処理が施されたプッシュロッド
18、21全体に焼き入れ処理が施される。この焼き入
れ処理は、浸炭処理によってオーステナイト生成温度ま
で昇温されているプッシュロッド18、21を該浸炭処
理に引き続いて常温(低温)のオイルに浸漬するなどと
いった普通の焼き入れ手法で施される。
【0028】かくして、この熱処理においては、まず浸
炭処理によってプッシュロッド18、21全体が浸炭さ
れる。そして、この後、プッシュロッド18、21がオ
イルに浸漬されて、該プッシュロッド18、21全体に
焼き入れ処理が施されるが、その際両球状支持端部2
7、29はオイルによって急冷されて完全な浸炭焼き入
れが施され、該球状支持端部27、29ないしはその球
面状端面の硬さが十分に高められ、その耐摩耗性が高め
られる。
【0029】しかしながら、軸部25、すなわち図1
(a)、(b)中でLで示された部分は、その内表面が
中空部26内の高温の空気と接触しているので、該軸部
25の内側寄りの部分は急冷されずに徐冷され、したが
って該軸部25にはさほど強い浸炭焼き入れは施されな
い。このため、軸部25の外表面近傍は硬さが高められ
るものの、該軸部25の内側寄りの部分の硬さはさほど
高まらない。
【0030】図2に、このような熱処理が施された場合
における、軸部25内の各部における硬さの実測値を示
す。なお、図2において、横軸は軸部25の外表面から
の径方向の距離を示す。図1(a)に示すように、軸部
25の肉厚はdであり、したがって図2において横軸の
値がdのところは軸部25の内表面を示している。図2
から明らかなとおり、軸部25の内側寄りの部分では、
硬さがさほど高くなっておらず、軸部25の靭性は十分
に確保されているものと推測される。なお、この熱処理
により、軸部25の疲労強度及び座屈強度も高められ
る。この熱処理においては、防炭剤を用いる必要がない
ので、その工数が少なくなり、該プッシュロッド18、
21の製造コストが低減される。
【0031】このように熱処理が施されたプッシュロッ
ド18、21の軸部25に対して、さらに焼き戻し処理
を施してもよい。かかる焼き戻し処理は、例えば高周波
コイル等を用いて軸部25を加熱し、この後該軸部25
を徐冷(空冷)するなどといった手法で行われる。具体
的には、例えば図3に示すように、軸部25の前端部S
1の近傍(周囲)に高周波コイル32(高周波加熱器)
を配置し、該高周波コイル32に通電した後、プッシュ
ロッド18、21をX1方向に移動させ、軸部25の後
端部S2が高周波コイル32の位置に達した時点で通電
を停止し、この後軸部25を徐冷(空冷)するなどとい
った手法で焼き戻し処理が施される。
【0032】あるいは、図4に示すように、軸部25の
前端部から後端部にわたって、適当な間隔で多数の高周
波コイル32を配置し、これらの高周波コイル32に所
定時間だけ通電して軸部25を加熱し、この後通電を停
止して軸部25を徐冷(空冷)するなどといった手法で
焼き戻し処理を施してもよい。このように焼き戻し処理
を施せば、軸部25の硬さが低下するので、該軸部25
の靭性が一層高められる。なお、この場合、軸部25の
靭性を種々設計することができる。
【0033】また、上記の熱処理手法に代えて、次のよ
うな熱処理を施してもよい。すなわち、この熱処理にお
いては、まず、前記の熱処理の場合と同様に、プッシュ
ロッド18、21全体に浸炭処理が施される。次に、図
5に示すように、第1球状支持端部27の近傍(周囲)
と、第2球状支持端部29の近傍(周囲)とに、それぞ
れ、適当な間隔で1個又は2個以上の高周波コイル32
を配置する。そして、これらの高周波コイル32に所定
時間通電して両球状支持端部27、29を加熱し、この
後プッシュロッド18、21を低温のオイルあるいは水
に浸漬し、あるいはプッシュロッド18、21にオイル
あるいは水を噴射して両球状支持端部27、29を急冷
する。かくして、両球状支持端部27、29には、完全
な浸炭焼き入れが施される。なお、焼き入れ処理を、両
球状支持端部27、29の球面状端面のみに施すように
してもよい。
【0034】この熱処理においては、まずプッシュロッ
ド18、21全体が浸炭される。そして、この後、プッ
シュロッド18、21の両球状支持端部27、29のみに
焼き入れ処理が施されるので、両球状支持端部27、2
9には完全な浸炭焼き入れ処理が施され、該球状支持端
部27、29ないしはその球面状端面の硬さが十分に高
められ、その耐摩耗性が高められる。しかしながら、軸
部25は浸炭されるものの焼き入れが施されないので、
十分な靭性が確保される。なお、軸部25の疲労強度及
び座屈強度も高められる。この熱処理においても、防炭
剤を用いる必要がないので、その工数が少なくなり、該
プッシュロッド18、21の製造コストが低減される。
【0035】なお、この第2の熱処理においては、浸炭
処理に引き続いて焼き入れ処理が施されない。このた
め、浸炭処理後、プッシュロッド18、21は空冷さ
れ、あるいは鋼のA1変態温度(約727°C)以下の
温度まで炉内冷却された後空冷され又は冷媒(オイル、
水等)で冷却される。この後、高周波コイル32による
焼き入れ処理が施される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)はそれぞれ、本発明にかかる
熱処理が施される一体式中空プッシュロッドの縦断面図
である。
【図2】 本発明にかかる熱処理が施されたプッシュロ
ッドの軸部の硬さの軸部外表面からの距離に対する変化
特性を示すグラフである。
【図3】 高周波コイルによる焼き戻し処理が施されて
いる一体式中空プッシュロッドの縦断面図である。
【図4】 高周波コイルによる焼き戻し処理が施されて
いる一体式中空プッシュロッドの縦断面図である。
【図5】 高周波コイルによる焼き入れ処理が施されて
いる一体式中空プッシュロッドの縦断面図である。
【図6】 本発明にかかる熱処理が施された一体式中空
プッシュロッドを用いたオーバーヘッドバルブ型のエン
ジンの一部断面立面図である。
【図7】 従来のプッシュロッドの縦断面図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…シリンダブロック、3…シリンダヘ
ッド、4…シリンダ、5…ピストン、6…吸気バルブ、
7…吸気ポート、8…燃焼室、9…排気バルブ、10…
排気ポート、11…コネクチングロッド、12…クラン
クアーム、13…クランクシャフト、14…駆動ギヤ、
15…被駆動ギヤ、16…カムシャフト、17…カム、
18…プッシュロッド、18’…プッシュロッド、19
…回動軸、20…ロッカアーム、21…プッシュロッ
ド、21’…プッシュロッド、22…回動軸、23…ロ
ッカアーム、25…軸部、26…中空部、27…第1球
状支持端部、28…第1穴部、29…第2球状支持端
部、30…凹部、31…第2穴部、32…高周波コイ
ル。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中空部を有する薄肉の軸部と、該軸部の
    軸線方向の両端部に形成されそれぞれ球面状端面を有す
    る第1及び第2の厚肉の球状支持端部とが金属材料で一
    体形成されてなる一体式中空プッシュロッドの熱処理方
    法であって、上記一体式中空プッシュロッド全体に浸炭
    処理を施し、この後該一体式中空プッシュロッド全体に
    焼き入れ処理を施すようにしたことを特徴とする一体式
    中空プッシュロッドの熱処理方法。
  2. 【請求項2】 上記焼き入れ処理の後、上記一体式中空
    プッシュロッドの軸部に焼き戻し処理を施すようにした
    ことを特徴とする請求項1に記載の一体式中空プッシュ
    ロッドの熱処理方法。
  3. 【請求項3】 上記焼き戻し処理を、上記軸部を高周波
    加熱した後、該軸部を徐冷することにより行うことを特
    徴とする請求項2に記載の一体式中空プッシュロッドの
    熱処理方法。
  4. 【請求項4】 中空部を有する薄肉の軸部と、該軸部の
    軸線方向の両端部に形成されそれぞれ球面状端面を有す
    る第1及び第2の厚肉の球状支持端部とが金属材料で一
    体形成されてなる一体式中空プッシュロッドの熱処理方
    法であって、上記一体式中空プッシュロッド全体に浸炭
    処理を施し、この後該一体式中空プッシュロッドの両球
    状支持端部に焼き入れ処理を施すようにしたことを特徴
    とする一体式中空プッシュロッドの熱処理方法。
  5. 【請求項5】 上記焼き入れ処理を、両球状支持端部の
    球面状端面のみに施すようにしたことを特徴とする請求
    項4に記載の一体式中空プッシュロッドの熱処理方法。
  6. 【請求項6】 上記焼き入れ処理を、上記軸部を高周波
    加熱した後、該軸部を急冷することにより行うことを特
    徴とする請求項5に記載の一体式中空プッシュロッドの
    熱処理方法。
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