JPH11246481A - 有機化合物の精製方法 - Google Patents

有機化合物の精製方法

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JPH11246481A
JPH11246481A JP5096898A JP5096898A JPH11246481A JP H11246481 A JPH11246481 A JP H11246481A JP 5096898 A JP5096898 A JP 5096898A JP 5096898 A JP5096898 A JP 5096898A JP H11246481 A JPH11246481 A JP H11246481A
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JP5096898A
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Hideyuki Baba
英幸 馬場
Masanori Nonoguchi
真則 野々口
Noboru Saito
昇 斉藤
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水が共存する有機化合物、例えば、グリオキ
シル酸エステル類やアルデヒド類から水を除去(脱水)
することにより、高純度の該有機化合物を効率的に、し
かも簡便かつ安価、安全に得ることができる、有機化合
物の精製方法を提供する。 【解決手段】 共沸剤を用いて共沸蒸留(共沸脱水)す
ることによって、例えばグリオキシル酸エステル類を精
製する。薄膜蒸発器1で得られた粗グリオキシル酸エス
テル類、および共沸剤を共沸脱水塔2aに供給し、該共
沸剤が塔底部に存在する条件下で、塔頂部から共沸剤お
よび水を含む留出液を留出させる一方、塔底部から共沸
剤およびグリオキシル酸エステル類を含む缶出液を缶出
させる。そして、該缶出液を共沸剤除去塔2bに供給
し、塔頂部から共沸剤を含む留出液を留出させる一方、
塔底部からグリオキシル酸エステル類を含む缶出液を缶
出させる。該缶出液は精留蒸留塔3で精留される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水が共存する有機
化合物、例えば、グリオキシル酸エステル類、ホルムア
ルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類から水を
除去(脱水)することにより、高純度の該有機化合物を
得ることができる、有機化合物の精製方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】アルデヒド酸エステル類の一種であるグ
リオキシル酸エステル類は、各種中間体、例えば界面活
性剤のビルダー成分として有効なポリグリオキシル酸ナ
トリウムを合成するための重合用原料(原料モノマー)
として、好適に用いられている。グリオキシル酸エステ
ル類を重合用原料として用いる場合に、該グリオキシル
酸エステル類が不純物、特に、水やアルコール類、カル
ボン酸類等のプロトン性化合物を含んでいると、得られ
る重合体の分子量が低下するおそれがある。このため、
グリオキシル酸エステル類を重合用原料として用いる場
合には、グリオキシル酸エステル類から上記不純物を除
去する必要がある。
【0003】しかしながら、上記のグリオキシル酸エス
テル類は、特に、水やアルコール類と可逆的に化学結合
して、水和物或いはヘミアセタール等を形成する。この
ため、グリオキシル酸エステル類の精製は、必ずしも容
易ではない。
【0004】これまで、水が共存するグリオキシル酸エ
ステル類の精製方法としては、例えば、 グリオキシル酸エステル類を含む原料に、無水リン酸
(五酸化リン)等の脱水剤を添加して蒸留を行う方法、 グリオキシル酸エステル類を含む原料に、沸点が18
0℃以上の高級アルコールを添加し、800mmHg
(107kPa)を越えない圧力で蒸留する方法(特開
昭62−178541号公報)、 グリオキシル酸エステル類、グリコール酸エステル
類、水、アルコール類等を含む混合物を減圧で蒸留する
ことにより、水およびアルコール類の含有量を1重量%
未満となるように低下させた後、グリオキシル酸エステ
ル類に対するグリコール酸エステル類(例えば、グリコ
ール酸メチル)のモル比が1〜1.4となるように調節
して蒸留を行う方法(特公平5−28694号公報)、 グリオキシル酸エステル類を、相当するグリコール酸
エステルから気相で酸化的脱水素を行うことによって製
造する場合において、この酸化的脱水素で生じたガス状
反応生成物に、ジクロロメタンやクロロホルム、n−ペ
ンタン、シクロヘキサン、ノナン、ジイソプロピルエー
テル、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン等の共
沸剤を添加して、蒸留塔に導入する方法(特開昭60−
97936号公報)、 ベンゼンやジクロロエタン等の共沸剤の存在下で、グ
リオキシル酸1モルに対して低級アルコール0.5モル
〜2モルを反応させてエステル化を行い、系中の水濃度
およびアルコール濃度が、生成したグリオキシル酸エス
テル類に対して何れも10重量%以下となった後に、共
沸蒸留を行う方法(特公平4−66856号公報)、 グリコール酸エステル類を酸化脱水素して得られる反
応生成物を減圧蒸留した後、該反応生成物を、ジクロロ
メタンや1,1,1−トリクロロエタン、ベンゼン等の
共沸剤を塔頂付近に濃縮保持させた多段蒸留塔に供給し
て共沸蒸留し、供給部と塔頂部との間に設けた側抜き部
から、高純度のグリオキシル酸エステル類を抜き取る方
法(特公平7−45435号公報)、等が提案されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
の方法は、脱水剤が例えば水或いはアルコール類と反応
する等して消費され、回収・再利用が困難であるため、
経済的観点等から好ましくない。また、上記の方法
は、グリオキシル酸エステル類と高級アルコールとの間
でエステル交換等の副反応が生じるおそれがある。さら
に、上記の方法は、過剰のグリコール酸エステル類を
必要とするため、この過剰のグリコール酸エステル類の
存在に伴って生産性が低下する。また、本願発明者等が
種々検討した結果、上記〜の方法で用いられている
各種共沸剤は、その性能(効果)が充分ではなく、高純
度のグリオキシル酸エステル類を高収率で得ることがで
きるとは言い難い。また、共沸剤として用いるジクロロ
メタンや1,1,1−トリクロロエタン、ベンゼン等の
化合物は、毒性が強いため、その取り扱いが難しい。つ
まり、上記従来の精製方法では、水を除去(脱水)して
高純度のグリオキシル酸エステル類を効率的に得ること
ができないという問題点を有している。
【0006】また、本願発明者等は、上記従来の精製方
法を改良すべく、以前に、グリオキシル酸エステル類の
精製方法として、グリオキシル酸エステル類を含む原料
から、水等の軽沸点成分を粗蒸留で除去した後、共沸剤
として脂肪族エステル類を添加して、共沸蒸留を行い、
さらに精留する方法を提案した。しかしながら、上記の
精製方法も、その性能(効果)に未だ満足の得られるも
のではない。
【0007】一方、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒ
ド等のアルデヒド類もまた、特に、水やアルコール類と
可逆的に化学結合して、水和物或いはヘミアセタール等
を形成する。このため、アルデヒド類の精製もまた、必
ずしも容易ではない。
【0008】このように、上記従来の精製方法では、水
を除去する性能(効果)が充分ではなく、従って、例え
ば、グリオキシル酸エステル類、ホルムアルデヒドやア
セトアルデヒド等のアルデヒド類等の有機化合物から、
高純度の該有機化合物を得ることができないという問題
点を有している。
【0009】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされ
たものであり、その目的は、水が共存する有機化合物、
例えば、グリオキシル酸エステル類、ホルムアルデヒド
やアセトアルデヒド等のアルデヒド類から水を除去(脱
水)することにより、高純度の該有機化合物を効率的
に、しかも簡便かつ安価、安全に得ることができる、有
機化合物の精製方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、上記の
目的を達成すべく、有機化合物の精製方法について鋭意
検討した。その結果、水が共存する有機化合物と共沸剤
とを第一の蒸留塔に供給し、該共沸剤が塔底部に存在す
る条件下で、塔頂部から共沸剤および水を含む留出液を
留出させる一方、塔底部から共沸剤および上記有機化合
物を含む缶出液を缶出させる第一の工程と、上記缶出液
を第二の蒸留塔に供給し、塔頂部から共沸剤を含む留出
液を留出させる一方、塔底部から有機化合物を含む缶出
液を缶出させる第二の工程とを実施することにより、水
が共存する有機化合物から水を効率的に、しかも簡便か
つ安価、安全に除去(脱水)することができることを見
い出して、本発明を完成させるに至った。
【0011】即ち、請求項1記載の発明の有機化合物の
精製方法は、上記の課題を解決するために、水が共存す
る有機化合物を共沸剤を用いて共沸蒸留することによっ
て該有機化合物を精製する方法であって、上記有機化合
物および共沸剤を第一の蒸留塔に供給し、該共沸剤が塔
底部に存在する条件下で、塔頂部から共沸剤および水を
含む留出液を留出させる一方、塔底部から共沸剤および
上記有機化合物を含む缶出液を缶出させる第一の工程
と、上記缶出液を第二の蒸留塔に供給し、塔頂部から共
沸剤を含む留出液を留出させる一方、塔底部から有機化
合物を含む缶出液を缶出させる第二の工程と、を含むこ
とを特徴としている。
【0012】請求項2記載の発明の有機化合物の精製方
法は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の有
機化合物の精製方法において、第一の工程で得られる缶
出液に含まれる共沸剤の割合が、5重量%〜50重量%
の範囲内であることを特徴としている。
【0013】請求項3記載の発明の有機化合物の精製方
法は、上記の課題を解決するために、請求項1または2
記載の有機化合物の精製方法において、共沸剤が脂肪族
エステル類であることを特徴としている。
【0014】請求項4記載の発明の有機化合物の精製方
法は、上記の課題を解決するために、請求項1、2また
は3記載の有機化合物の精製方法において、有機化合物
がグリオキシル酸エステル類またはアルデヒド類である
ことを特徴としている。
【0015】上記の方法によれば、水が共存する有機化
合物を精製して水を除去(脱水)することにより、高純
度の該有機化合物を効率的に、しかも簡便かつ安価、安
全に得ることができる。上記の精製方法は、水が共存す
るグリオキシル酸エステル類や、水が共存するホルムア
ルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類から水を
除去することにより、高純度の該化合物を得るのに、特
に有効である。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明にかかる有機化合物の精製
方法は、水が共存する有機化合物を共沸剤を用いて共沸
蒸留(共沸脱水)することによって該有機化合物を精製
する方法であって、上記有機化合物および共沸剤を第一
の蒸留塔に供給し、該共沸剤が塔底部に存在する条件下
で、塔頂部から共沸剤および水を含む留出液を留出させ
る一方、塔底部から共沸剤および上記有機化合物を含む
缶出液を缶出させる第一の工程と、上記缶出液を第二の
蒸留塔に供給し、塔頂部から共沸剤を含む留出液を留出
させる一方、塔底部から有機化合物を含む缶出液を缶出
させる第二の工程とを含んでいる。
【0017】上記の有機化合物は、本発明にかかる精製
方法を適用することができる化合物であればよく、特に
限定されるものではないが、グリオキシル酸エステル類
やアルデヒド類が好適である。尚、本発明にかかる有機
化合物は、共沸剤と同一化合物ではない。
【0018】上記のグリオキシル酸エステル類として
は、例えば、一般式(1) H−CO−COOR1 ……(1) (式中、R1 は有機残基を表す)で表される化合物が挙
げられる。上記一般式(1)中、R1 で表される有機残
基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル
基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、
sec−ブチル基、t−ブチル基等の炭化水素基等が挙げ
られるが、特に限定されるものではない。
【0019】つまり、上記のグリオキシル酸エステル類
としては、具体的には、例えば、グリオキシル酸メチ
ル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸n−プロピ
ル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸n−
ブチル、グリオキシル酸 sec−ブチル、グリオキシル酸
t−ブチル等が挙げられるが、特に限定されるものでは
ない。本発明にかかる精製方法は、上記例示の化合物の
うちでも、グリオキシル酸メチルに対して、特に有効で
ある。
【0020】上記のグリオキシル酸エステル類は、各種
中間体、例えば界面活性剤のビルダー成分として有効な
ポリグリオキシル酸ナトリウムを合成するための重合用
原料(原料モノマー)として、好適に用いられる化合物
である。該グリオキシル酸エステル類を製造する方法
は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方
法を採用することができる。例えば、グリオキザールお
よび/またはグリコールアルデヒドと、アルコールまた
はオレフィンとを、酸素および触媒の存在下で気相酸化
させることによって、所望する粗グリオキシル酸エステ
ル類を容易に得ることができる。また、該グリオキシル
酸エステル類の製造条件、即ち、反応温度や反応時間等
の反応条件は、特に限定されるものではなく、上記反応
が完了するように、適宜設定すればよい。反応終了時の
グリオキシル酸エステル類、即ち、未精製の粗グリオキ
シル酸エステル類には、反応時に生成する副生成物とし
て、グリオキシル酸エステル類よりも低沸点である軽沸
点成分等の、数種類の不純物、特に、プロトン性化合物
である水が含まれている。
【0021】上記のアルデヒド類としては、具体的に
は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が
挙げられるが、特に限定されるものではない。該アルデ
ヒド類を製造する方法は、特に限定されるものではな
く、従来公知の種々の方法を採用することができる。ま
た、該アルデヒド類の製造条件、即ち、反応温度や反応
時間等の反応条件は、特に限定されるものではない。未
精製の粗アルデヒド類には、通常、数種類の不純物、特
に、プロトン性化合物である水が含まれている。
【0022】本発明にかかる共沸剤は、有機化合物より
も低沸点であり、かつ、水と共沸組成物を形成する化合
物であればよく、特に限定されるものではないが、有機
化合物がグリオキシル酸エステル類またはアルデヒド類
である場合には、脂肪族エステル類が特に好ましい。水
が共存する有機化合物を脂肪酸エステル類を用いて共沸
蒸留することによって、該有機化合物を効率的に、しか
も簡便かつ安価、安全に該有機化合物を精製することが
できる。
【0023】上記の脂肪酸エステル類としては、例え
ば、一般式(2) R2 COOR3 ……(2) (式中、R2 は水素原子、メチル基またはエチル基を表
し、R3 は炭素数1〜4のアルキル基を表す)で表され
る化合物が挙げられる。上記例示の化合物のうち、グリ
オキシル酸エステル類がグリオキシル酸メチルである場
合には、酢酸n−プロピル、および酢酸イソプロピルが
特に好ましい。脂肪族エステル類は従来の共沸剤と比較
して毒性が弱いので、安全性や取り扱い性等に優れてい
る。
【0024】該脂肪酸エステル類は、何れも、水と共沸
組成物(最低共沸組成物)を形成する。該共沸組成物
は、有機化合物、例えばグリオキシル酸エステル類の沸
点よりも充分に低い共沸点を有している。しかも、脂肪
酸エステル類は、水との相溶性が低く、重力分離によっ
て容易に水と分離することができる。従って、該脂肪酸
エステル類は、必要に応じて別途精製することにより、
再利用することができる。上記の脂肪酸エステル類が共
沸剤として有効に作用する詳細な理由は未だ不明である
が、該脂肪酸エステル類が、グリオキシル酸エステル類
と充分な相溶性を有し、かつ、水との相溶性が低いこと
に関係があると推察される。
【0025】次に、本発明にかかる精製方法、つまり、
上記共沸剤を用いた共沸蒸留工程を含む、一連の蒸留工
程(操作)の一例について、以下に説明する。尚、精製
方法は、下記例示の方法にのみ限定されるものではな
い。
【0026】本発明にかかる共沸蒸留工程を含む一連の
蒸留工程は、(i) 水および各種軽沸点成分が共存する有
機化合物から、上記水および軽沸点成分の大部分を留去
することによって粗精製液を得る粗蒸留工程;(ii)粗蒸
留工程で得た粗精製液に含まれる(共存する)残りの水
を、共沸剤を用いて除去(脱水)する共沸蒸留工程;お
よび、(iii) 共沸蒸留工程で得た精製液を更に高純度に
するために、必要に応じて実施される精留工程;からな
る。
【0027】そして、上記の共沸蒸留工程は、共沸剤を
用いて水を除去する工程と、水の除去に用いた共沸剤を
除去する工程とからなる。つまり、上記の共沸蒸留工程
は、(a) 有機化合物および水を含む粗精製液と、共沸剤
とを第一の蒸留塔に好ましくは連続的に供給しながら、
該共沸剤が塔底部に存在する条件下(共沸剤が塔全体に
分布する条件下)で該蒸留塔を好ましくは連続操作する
ことにより、塔頂部から共沸剤の大部分および水を含む
留出液を留出させる一方、塔底部から残りの共沸剤およ
び上記有機化合物を含む缶出液を缶出させる第一蒸留工
程(第一の工程);および、(b) 上記の缶出液を第二の
蒸留塔に好ましくは連続的に供給しながら、塔頂部から
共沸剤を含む留出液を留出させる一方、塔底部から有機
化合物を含む缶出液を缶出させる第二蒸留工程(第二の
工程);からなる。
【0028】第一蒸留工程において、粗精製液と共沸剤
とを第一の蒸留塔に供給する供給方法としては、具体的
には、例えば、粗精製液と共沸剤とを各々別個に供給す
る方法;粗精製液と共沸剤とを混合した後、該混合液を
供給する方法;等が挙げられるが、特に限定されるもの
ではない。
【0029】上記の共沸剤は、有機化合物と共存する水
と過不足無く共沸組成物を形成することができる量より
も、つまり、水と共沸組成物を形成するに足る量(理論
量)よりも、過剰に用いる。共沸剤を過剰に用いない場
合、つまり、使用量が理論量以下である場合には、有機
化合物から水を充分に除去(脱水)することができな
い。一方、共沸剤を必要量を越えて過剰に用いた場合、
つまり、使用量が理論量よりも遥かに多い場合には、第
一蒸留工程での処理が過大となるので、有機化合物を効
率的に精製することができなくなる。共沸剤の使用量と
しては、具体的には、上記理論量の1.1倍〜3倍の範
囲内がより好ましく、1.2倍〜2.2倍の範囲内が最
も好ましい。
【0030】また、第一蒸留工程で得られる缶出液に含
まれる共沸剤の割合は、特に限定されるものではない
が、5重量%〜50重量%の範囲内がより好ましく、1
0重量%〜35重量%の範囲内が最も好ましい。共沸剤
の割合が5重量%よりも少ない場合には、本発明にかか
る精製方法によって得られる効果が乏しくなり、有機化
合物から水を充分に除去(脱水)することができないお
それがある。一方、共沸剤の割合が50重量%を越える
場合には、第二蒸留工程に供される缶出液の量が多くな
りすぎ、該工程での処理が過大となるので有機化合物を
効率的に精製することができなくなるおそれがある。
【0031】上記一連の蒸留工程は、従来より用いられ
ている各種蒸留装置(蒸留塔)を用いて、回分式或いは
連続式の何れの方式でも行うことができるが、上記第一
蒸留工程に用いられる第一の蒸留塔、並びに、第二蒸留
工程に用いられる第二の蒸留塔は、有機化合物を効率的
に精製することができるように、連続蒸留することがで
きる構成を備えていること、即ち、連続蒸留塔であるこ
とが特に好ましい。尚、第一の蒸留塔の理論段数は、水
を充分に除去することができる段数以上であればよく、
特に限定されるものではない。また、第二の蒸留塔の理
論段数は、共沸剤を分離・除去することができる段数以
上であればよく、特に限定されるものではない。つま
り、第一および第二の蒸留塔の理論段数は、本発明にか
かる精製方法を実施するに足る段数以上であればよく、
特に限定されるものではない。
【0032】さらに、上記一連の蒸留工程に用いられる
蒸留装置(蒸留塔)の操作条件は、特に限定されるもの
ではない。操作温度並びに操作圧は、蒸留装置(蒸留
塔)の構成;精製すべき液(例えば、反応液や粗精製液
等)の組成;有機化合物および共沸剤の種類や組み合わ
せ、物性;次の蒸留装置(蒸留塔)に供すべき液(例え
ば、粗精製液や缶出液等)の好ましい組成;精製効率;
最終的に得るべき有機化合物の純度;等を考慮に入れて
適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。但
し、操作温度は、有機化合物と化学的に結合した形態で
存在している水の遊離・除去を促進することができるよ
うに、副反応が起こらない範囲内で、より高いことが望
ましい。
【0033】次に、有機化合物がグリオキシル酸エステ
ル類であり、共沸剤が脂肪酸エステル類である場合であ
って、しかも、粗蒸留工程、第一蒸留工程および第二蒸
留工程からなる共沸蒸留工程、並びに、精留工程からな
る上記一連の蒸留工程(操作)を、それぞれ連続的に行
う場合を例に挙げて、図1を参照しながら以下に説明す
る。
【0034】図1に示すように、本発明にかかる精製方
法を実施するのに好適な精製装置は、例えば、粗蒸留工
程を行う薄膜蒸発器1、共沸蒸留工程のうちの第一蒸留
工程を行う共沸脱水塔(第一の蒸留塔)2a、共沸蒸留
工程のうちの第二蒸留工程を行う共沸剤除去塔(第二の
蒸留塔)2b、および、精留工程を行う精留蒸留塔3を
備えている。薄膜蒸発器1は共沸脱水塔2aに接続され
ており、共沸脱水塔2aは共沸剤除去塔2bに接続され
ており、共沸剤除去塔2bは精留蒸留塔3に接続されて
いる。尚、精製装置は、上記例示の構成にのみ限定され
るものではない。
【0035】先ず、粗蒸留工程では、粗グリオキシル酸
エステル類を膜状にして連続的に粗蒸留することが好ま
しい。上記の粗グリオキシル酸エステル類は、グリオキ
シル酸エステル類の他に、水および軽沸点成分が共存す
る混合物である。粗蒸留工程においては、薄膜蒸発器
(液膜式蒸留器、低沸点物蒸留器)1を用いて粗蒸留
し、粗グリオキシル酸エステル類と共存する水および軽
沸点成分の大部分を、該粗グリオキシル酸エステル類か
ら留去することが好ましい。
【0036】薄膜蒸発器1の操作条件、即ち、粗グリオ
キシル酸エステル類の供給速度、操作温度並びに操作圧
は、粗グリオキシル酸エステル類の組成等に応じて設定
すればよく、特に限定されるものではないが、粗蒸留時
に受けるグリオキシル酸エステル類の熱履歴をできるだ
け小さくする(抑制する)という観点から、操作圧をで
きるだけ低圧にすると共に、缶出液の缶出温度をより低
くすることが望ましい。しかしながら、操作圧が極端に
低圧であれば、蒸気の状態で連続的に留出する留出液を
凝縮させる凝縮器が備えるべき必要能力が過大となり、
経済的に不利となる。従って、薄膜蒸発器1の操作圧
は、30mmHg〜760mmHg(4kPa〜101
kPa)の範囲内がより好ましく、200mmHg〜5
00mmHg(27kPa〜67kPa)の範囲内がさ
らに好ましい。
【0037】また、薄膜蒸発器1内における粗グリオキ
シル酸エステル類の滞留時間は、特に限定されるもので
はないが、粗蒸留時に受けるグリオキシル酸エステル類
の熱履歴をできるだけ小さくするという観点からは、で
きるだけ均一な液膜が形成される範囲内でより短くする
ことが望ましく、一方、粗蒸留工程での精製効率をでき
るだけ向上させるには、より長くすることが望ましい。
従って、該滞留時間は、具体的には、0.1分間〜20
分間の範囲内がより好ましく、0.1分間〜10分間の
範囲内がさらに好ましい。また、薄膜蒸発器1内に形成
される液膜は、より均一でかつより薄いことが望まし
く、具体的には、0.1mm〜3mmの範囲内がより好
ましく、0.1mm〜2mmの範囲内がさらに好まし
く、0.1mm〜1mmの範囲内が特に好ましい。
【0038】薄膜蒸発器1は、粗グリオキシル酸エステ
ル類を膜状にして連続的に粗蒸留するため、該粗グリオ
キシル酸エステル類に対する伝熱効率を大きくすること
ができる。従って、粗グリオキシル酸エステル類を迅速
に粗蒸留することができるので、滞留時間、即ち、加熱
時間を、従来の蒸留塔を用いた場合と比較して削減する
ことができる。それゆえ、薄膜蒸発器1を用いて粗蒸留
工程を行うことにより、長時間の加熱に起因するグリオ
キシル酸エステル類の加水分解を抑制することができる
ので、粗精製液におけるグリオキシル酸エステル類の含
有量を効率的に高めることができると共に、加水分解に
伴うグリオキシル酸(不純物)の生成を回避することが
できる。
【0039】留出液の留出後に薄膜蒸発器1内に残る粗
精製液、即ち、薄膜蒸発器1の例えば底部から連続的に
抜き出される粗精製液は、次工程である共沸蒸留工程を
行うべく、共沸脱水塔2aに連続的に供給される。そし
て、共沸脱水塔2aに供給される前に、上記の粗精製液
には所定量の、例えば、該粗精製液に対して0.5容量
倍〜4容量倍の共沸剤が添加される。
【0040】共沸蒸留工程では、上記粗精製液および共
沸剤の混合物を連続的に蒸留して、水を除去した後、共
沸剤を分離・除去する。共沸蒸留工程のうちの第一蒸留
工程においては、共沸脱水塔2aを用いて上記粗精製液
および共沸剤の混合物を共沸蒸留する。該共沸脱水塔2
aにおける、塔頂部と塔底部との間に設けられた原料供
給段には、図示しない原料供給管を介して、上記の混合
物が連続的に供給される。共沸脱水塔2aにおける原料
供給管の配設位置、即ち、原料供給段の位置は、特に限
定されるものではない。
【0041】尚、共沸剤の添加方法は、特に限定される
ものではなく、従来公知の種々の添加方法を採用するこ
とができるが、上述したように、薄膜蒸発器1から抜き
出した粗精製液に所定量の共沸剤を予め添加・混合した
後、該混合物を共沸脱水塔2aの例えば中段(原料供給
段)に連続的に供給する方法がより好ましい。また、薄
膜蒸発器1内に残った粗精製液に所定量の共沸剤を添加
・混合した後、該混合物を薄膜蒸発器1から抜き出して
共沸脱水塔2aの例えば中段に連続的に供給する方法を
採用することもできる。
【0042】共沸脱水塔2aの留出液は、図示しない留
出管を介して連続的に系外に抜き出される。共沸脱水塔
2aにおける留出管の配設位置は、例えば共沸脱水塔2
aの塔頂(最上段)とすればよいが、特に限定されるも
のではない。上記の留出液は、共沸剤である脂肪酸エス
テル類、水および軽沸点成分が共存する。
【0043】一方、共沸脱水塔2aの缶出液は、図示し
ない缶出管を介して連続的に抜き出され、第二蒸留工程
を行うべく、共沸剤除去塔2bに連続的に供給される。
共沸脱水塔2aにおける缶出管の配設位置は、例えば共
沸脱水塔2aの塔底(最下段)とすればよいが、特に限
定されるものではない。上記の缶出液は、有機化合物で
あるグリオキシル酸エステル類、および、共沸剤である
脂肪酸エステル類を含んでいる。また、缶出液は、不純
物として、例えばグリコール酸エステル類やエチレング
リコール等を含むアルコール類と、該グリオキシル酸エ
ステル類とのヘミアセタール、および、その他高沸点成
分を含んでいる。
【0044】共沸脱水塔2aの操作条件、即ち、上記混
合物の供給速度、共沸脱水塔2aの段数、操作温度並び
に操作圧は、混合物の組成等に応じて実験的または数学
的に設定すればよく、特に限定されるものではない。但
し、グリオキシル酸エステル類と共沸剤とが共沸脱水塔
2a内で充分に接触することができるように、共沸剤が
塔底部に存在することができる操作条件にする必要があ
る。また、該操作条件は、缶出液に含まれる水の割合が
0.2重量%以下となるように設定することが望まし
い。尚、本発明にかかる精製方法においては、脱水効果
をより一層高めるために、必要に応じて複数の共沸脱水
塔2a…を直列状態に配設することによって、第一蒸留
工程を複数回繰り返して行うこともできる。
【0045】共沸蒸留工程のうちの第二蒸留工程におい
ては、共沸剤除去塔2bを用いて上記缶出液を連続蒸留
する。該共沸剤除去塔2bにおける、塔頂部と塔底部と
の間に設けられた供給段には、図示しない供給管を介し
て、上記の缶出液が連続的に供給される。共沸剤除去塔
2bにおける供給管の配設位置、即ち、供給段の位置
は、特に限定されるものではない。
【0046】共沸剤除去塔2bの留出液は、図示しない
留出管を介して連続的に系外に抜き出される。共沸剤除
去塔2bにおける留出管の配設位置は、例えば共沸剤除
去塔2bの塔頂(最上段)とすればよいが、特に限定さ
れるものではない。上記の留出液は、共沸剤である脂肪
酸エステル類を含んでいる。尚、該脂肪酸エステル類
は、重力分離によって水と分離した後、必要に応じて別
途精製することにより、再利用することが、経済的観点
から好ましい。
【0047】一方、共沸剤除去塔2bの缶出液は、図示
しない缶出管を介して連続的に抜き出され、次工程であ
る精留工程を行うべく、精留蒸留塔3に連続的に供給さ
れる。共沸剤除去塔2bにおける缶出管の配設位置は、
例えば共沸剤除去塔2bの塔底(最下段)とすればよい
が、特に限定されるものではない。上記の缶出液は、有
機化合物であるグリオキシル酸エステル類の他に、前記
の不純物を含んでいる。
【0048】共沸剤除去塔2bの操作条件、即ち、上記
缶出液の供給速度、共沸剤除去塔2bの段数、操作温度
並びに操作圧は、缶出液の組成等に応じて実験的または
数学的に設定すればよく、特に限定されるものではな
い。但し、該操作条件は、缶出液に含まれる共沸剤の割
合が0.5重量%以下となるように設定することが望ま
しい。尚、本発明にかかる精製方法においては、共沸剤
の除去効果をより一層高めるために、必要に応じて複数
の共沸剤除去塔2b…を直列状態に配設することによっ
て、第二蒸留工程を複数回繰り返して行うこともでき
る。
【0049】精留工程では、上記共沸剤除去塔2bの缶
出液を連続的に蒸留して、高純度のグリオキシル酸エス
テル類を得る。精留工程においては、精留蒸留塔3を用
いて上記缶出液を連続蒸留する。該精留蒸留塔3におけ
る、塔頂部と塔底部との間に設けられた供給段には、図
示しない供給管を介して、上記の缶出液が連続的に供給
される。精留蒸留塔3における供給管の配設位置、即
ち、供給段の位置は、特に限定されるものではない。
【0050】精留蒸留塔3の留出液は、図示しない留出
管を介して連続的に系外に抜き出される。精留蒸留塔3
における留出管の配設位置は、例えば精留蒸留塔3の塔
頂(最上段)とすればよいが、特に限定されるものでは
ない。上記の留出液は、高純度のグリオキシル酸エステ
ル類である。
【0051】一方、精留蒸留塔3の缶出液は、図示しな
い缶出管を介して連続的に系外に抜き出される。精留蒸
留塔3における缶出管の配設位置は、例えば精留蒸留塔
3の塔底(最下段)とすればよいが、特に限定されるも
のではない。上記の缶出液は、少量のグリオキシル酸エ
ステル類(残分)の他に、前記の不純物を含んでいる。
尚、本発明にかかる精製方法においては、さらに他の蒸
留塔(図示せず)を用いて精留蒸留塔3の缶出液から前
記不純物のうちのその他高沸点成分を除去することによ
って、グリオキシル酸エステル類残分と前記ヘミアセタ
ールとを回収することが、経済的観点から好ましい。回
収したグリオキシル酸エステル類残分およびヘミアセタ
ールは、例えば共沸脱水塔2aの所定位置に還流させて
利用すればよい。
【0052】精留蒸留塔3の操作条件、即ち、上記缶出
液の供給速度、精留蒸留塔3の段数、操作温度並びに操
作圧は、缶出液の組成等に応じて実験的または数学的に
設定すればよく、特に限定されるものではない。尚、本
発明にかかる精製方法においては、グリオキシル酸エス
テル類の純度をより一層高めるために、必要に応じて複
数の精留蒸留塔3…を直列状態に配設することによっ
て、精留工程を複数回繰り返して行うこともできる。
【0053】本発明にかかる精製方法を、例えば上記構
成の精製装置を用いて実施することにより、水が共存す
る有機化合物から、高純度の該有機化合物を効率的に、
しかも簡便かつ安価、安全に得ることができる。精製さ
れた有機化合物は、例えば、重合用原料(原料モノマ
ー)として、好適に用いることができる。上記の精製方
法は、水が共存するグリオキシル酸エステル類や、水が
共存するホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアル
デヒド類から水を除去することにより、高純度の該化合
物を得るのに、特に有効である。
【0054】尚、上記の薄膜蒸発器1には、従来公知の
各種液膜型蒸発装置を用いることができる。上記の液膜
型蒸発装置は、処理液を薄膜状にして加熱面と接触させ
る形式の蒸発器であり、具体的な形態としては、上昇液
膜型、流下液膜型、および強制撹拌液膜型等がある。こ
のうち、本発明にかかる粗蒸留工程を行うのに好適な液
膜型蒸発装置は、流下液膜型若しくは強制撹拌液膜型の
薄膜蒸発器である。強制撹拌液膜型の薄膜蒸発器は、流
下液膜型の薄膜蒸発器の内部に、処理液を撹拌すると共
に液膜の厚さを制御する回転翼を設けたものである。該
薄膜蒸発器について、図2ないし図4を参照しながら以
下に説明する。
【0055】図2に示すように、薄膜蒸発器1は、その
上部より順に、モータ等の駆動装置部11、駆動装置部
11によって覆われた円筒状の蒸発・凝縮部12、およ
び、蒸発・凝縮部12に連結された有底筒状の受液部1
3を有している。
【0056】蒸発・凝縮部12内には、駆動装置部11
により回転駆動される円筒状のロータ14が、蒸発・凝
縮部12と同軸上に、回転自在となるように設置されて
いる。従って、ロータ14の外周面は、蒸発・凝縮部1
2の内周面である蒸発面、即ち、加熱壁面12aに対
し、ほぼ等間隔となっている。蒸発・凝縮部12には、
温水(熱水)や加圧蒸気等の熱媒体を通過させることに
よって上記加熱壁面12aの温度を制御するためのジャ
ケット12bが、該加熱壁面12aの外周面を覆うよう
に設けられている。
【0057】ジャケット12bの下部には、熱媒体を導
入する熱媒体入口12dが設けられており、上部には、
熱媒体を取り出す熱媒体出口12cが設けられている。
ジャケット12bの下部から熱媒体を導入し、上部から
熱媒体を取り出すことにより、加熱壁面12aにおける
処理液の移動方向に対して逆方向に、該加熱壁面12a
上の温度が徐々に低下する温度勾配を生じさせることが
できる。従って、薄膜蒸発器1は、該温度勾配と、後述
する蒸気出口11bを介した吸引(減圧)とによって、
処理液(粗グリオキシル酸エステル類)の粗蒸留を効率
的に行うことができるようになっている。
【0058】また、図2および図3に示すように、ロー
タ14の外周面には、蒸発・凝縮部12の内周面を摺動
する長方形板状のワイパ15が設けられている。該ワイ
パ15は、その長手方向がロータ14の軸方向に沿っ
て、ロータ14の径方向に出没自在となるように設けら
れている。そして、ロータ14の外周面には、ワイパ1
5を出没自在に保持する溝状のワイパ支持部16が設け
られている。該ワイパ支持部16は、ロータ14の軸方
向に沿って、ロータ14の周方向に、互いに等間隔とな
るように複数設けられている。
【0059】また、図4に示すように、ワイパ15の摺
動面には溝15aが設けられている。該溝15aは、摺
動方向に対し、その前端側が、流下する処理液の上流側
となる一方、その後端側が、処理液の下流側となるよう
に、斜めに、かつ、互いにほぼ平行となるように複数併
設されている。
【0060】図2に示すように、ロータ14の頂部に
は、ロータ14と一体的に回転する円盤状の液分配盤1
7が設けられている。また、液分配盤17の上部、即
ち、薄膜蒸発器1の頂部には、蒸発・凝縮部12内に処
理液を供給する原料入口11a、および、蒸発・凝縮部
12内で発生する蒸気(水や軽沸点成分等)を抜き出す
蒸気出口11bが設けられている。液分配盤17は、処
理液を加熱壁面12aに対して遠心力によって一様に分
配するための切欠ノズル(図示せず)を、その外周部に
複数有している。
【0061】前記の駆動装置部11は、蒸発・凝縮部1
2の大きさ等に応じて、ロータ14が適正な回転数とな
るように、具体的には、例えばロータ14の外周面での
周速度が約4m/s〜5m/sとなるように、その駆動
が設定されている。駆動装置部11の軸封部(図示せ
ず)には、メカニカルシールが取り付けられている。従
って、薄膜蒸発器1は、その内部を10-4Torr
(0.013Pa)の高真空に、容易にシールすること
ができる。
【0062】前記の受液部13には、残留液を装置外部
に缶出液(粗精製液)として取り出すための残留液取出
口13aが設けられている。尚、残留液が高粘度である
場合には、ロータ14の下部に、該残留液を加熱壁面1
2aの下部から受液部13に押し出すためのスクレーパ
(図示せず)を設けてもよい。また、ロータ14の外周
面上における隣り合う各ワイパ15間に、飛散した処理
液を蒸気から分離するためのミストセパレータ(図示せ
ず)を取り付けてもよい。
【0063】また、薄膜蒸発器1の蒸気出口11bに
は、蒸発・凝縮部12内で発生する蒸気(留出液)に含
まれているグリオキシル酸エステル類を回収するための
回収用カラム18が接続されている。該回収用カラム1
8は、段数が1段以上で、かつ必要最小限の蒸留段数を
有しており、充填物が充填されている。また、上記回収
用カラム18の塔頂部には、コンデンサ19が接続され
ている。従って、上記薄膜蒸発器1は、該コンデンサ1
9を介して例えば吸引装置(図示せず)に吸引(Vac.)
されることにより、内部の減圧状態が維持されるように
なっている。尚、回収用カラム18の蒸留段数、および
充填物の充填長は、留出液(蒸留液)の組成、操作条
件、充填物の種類等に応じて適宜決定すればよい。ま
た、吸引装置は、必要に応じて設ければよい。
【0064】次に、上記構成の薄膜蒸発器1の動作につ
いて説明する。先ず、原料入口11aから処理液が投入
されると、液分配盤17は、各切欠ノズルから遠心力に
よって該処理液を加熱壁面12aに対して一様に分配す
る。処理液が分配された蒸発・凝縮部12の加熱壁面1
2aにおいては、ロータ14の回転による遠心力によっ
て、各ワイパ15が該加熱壁面12aを押圧しながら摺
動している。従って、各ワイパ15は、加熱壁面12a
上に均一な膜厚(0.1mm〜3mm)で以て処理液の
薄膜を形成すると同時に、処理液の表面を常時新しい面
に更新する。また、ワイパ15の各溝15aは、各ワイ
パ15での処理液の飛散を防止すると共に、該各溝15
aが摺動方向に対してそれぞれ斜めに形成されているの
で、処理液を流下方向に積極的に押し下げる。
【0065】一方、ジャケット12bの熱媒体入口12
dから熱媒体を導入し、熱媒体出口12cから熱媒体を
取り出す操作を行うことにより、上記加熱壁面12aの
温度を制御する。次いで、加熱壁面12aを流下する処
理液から発生する蒸気を、吸引(減圧)することによっ
て蒸気出口11bから取り出す。つまり、薄膜蒸発器1
は、処理液を加熱壁面12a上を連続的に流下させなが
ら均一な膜厚の薄膜にすると共に、該処理液から発生す
る蒸気を蒸気出口11bから連続的に取り出すことによ
り、処理液である粗グリオキシル酸エステル類に含まれ
る水および軽沸点成分の大部分を蒸発させて、該粗グリ
オキシル酸エステル類から留去することができる。
【0066】薄膜蒸発器1は、簡便な操作で以て粗蒸留
工程を行うことができる。そして、薄膜蒸発器1は、処
理液を膜状にして連続的に粗蒸留するため、排出される
蒸気の組成をほぼ一定に保つことができる。それゆえ、
回収用カラム18の操作条件をほぼ一定に保つことがで
きるので、グリオキシル酸エステル類の回収を簡素化す
ることができると共に、回収効率を向上させることがで
きる。
【0067】尚、流下液膜型の薄膜蒸発器1の代わり
に、上昇液膜型の薄膜蒸発器を用いることもできる。該
薄膜蒸発器は、縦型の長管の内部に処理液を導入した
後、該処理液を沸騰させて蒸気を発生させる構成となっ
ている。処理液の残液は、発生した蒸気の上昇に伴って
押し上げられると共に、長管の上部に移動するに従い沸
騰する。このため、長管の内部においては、上部に向か
うに従い蒸気の量(発生量)が急速に増加するので、該
内部に形成される泡は急激に大きくなり、かつ、該泡の
上昇速度が急激に増大する。従って、処理液の残液は、
長管の内壁に沿った膜状となって上昇する。それゆえ、
処理液である粗グリオキシル酸エステル類に含まれる水
および軽沸点成分を、効率的に留去することができる。
【0068】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら
限定されるものではない。
【0069】〔実施例1〕 (1)粗蒸留工程 先ず、出発原料として、有機化合物としてのグリオキシ
ル酸メチル(グリオキシル酸エステル類)を含む処理液
(粗グリオキシル酸エステル類)を、調製した。即ち、
エチレングリコールを触媒の存在下、気相で酸化的脱水
素することによって得たガス状のグリオキサールを、さ
らに酸素および触媒の存在下、気相でメチルアルコール
と反応(酸化的エステル化)させることにより、処理液
を調製した。該処理液の組成は、メチルアルコール4
0.9重量%、水24.7重量%、ホルムアルデヒド
1.7重量%、グリオキシル酸メチル31.1重量%、
および、グリコール酸メチル1.6重量%であった。上
記の処理液を強制撹拌液膜型の薄膜蒸発器1に供給し
て、所定の操作条件で以て粗蒸留工程を行った。
【0070】そして、薄膜蒸発器1の頂部から、その組
成がメチルアルコール61.5重量%、水34.6重量
%、ホルムアルデヒド1.7重量%、および、グリオキ
シル酸メチル1.7重量%である留出液を抜き出した。
これにより、薄膜蒸発器1の底部から、その組成がメチ
ルアルコール24.7重量%、水16.9重量%、ホル
ムアルデヒド1.7重量%、グリオキシル酸メチル5
3.8重量%、および、グリコール酸メチル2.9重量
%である缶出液(粗精製液)を得た。
【0071】(2)第一蒸留工程(共沸蒸留工程) 上記の粗蒸留工程で得た缶出液と、該缶出液に含まれる
(共存する)水と共沸組成物を形成するのに必要な理論
量の2.0倍の酢酸n−プロピル(共沸剤)とを、共沸
脱水塔2aに連続的に供給して、第一蒸留工程を行っ
た。該共沸脱水塔2aとして、内径50mm、段数50
段の棚段式蒸留塔を用いた。操作条件は、操作圧を大気
圧とし、塔底の温度(液温)が127℃となるように設
定した。
【0072】そして、共沸脱水塔2aの塔頂部から、そ
の組成がメチルアルコール8.6重量%、水6.1重量
%、ホルムアルデヒド1.3重量%、および、酢酸n−
プロピル84.0重量%である留出液を抜き出した。こ
れにより、共沸脱水塔2aの塔底部から、その組成がメ
チルアルコール3.1重量%、水0.2重量%、酢酸n
−プロピル25.1重量%、グリオキシル酸メチル6
8.0重量%、および、グリコール酸メチル3.6重量
%である缶出液を得た。
【0073】(3)第二蒸留工程(共沸蒸留工程) 上記の第一蒸留工程で得た缶出液を、共沸剤除去塔2b
に連続的に供給して、第二蒸留工程を行った。該共沸剤
除去塔2bとして、内径50mm、段数50段の棚段式
蒸留塔を用いた。操作条件は、操作圧を大気圧とし、塔
底の温度(液温)が159℃となるように設定した。
【0074】そして、共沸剤除去塔2bの塔頂部から、
その組成がメチルアルコール0.7重量%、水0.2重
量%、グリオキシル酸メチル1.0重量%、および、酢
酸n−プロピル98.1重量%である留出液を抜き出し
た。これにより、共沸剤除去塔2bの塔底部から、その
組成がメチルアルコール2.5重量%、水0.1重量
%、グリオキシル酸メチル92.3重量%、および、グ
リコール酸メチル5.1重量%である缶出液を得た。
尚、該缶出液には、微量の酢酸n−プロピルが含まれて
いた。
【0075】(4)精留工程 上記の第二蒸留工程で得た缶出液を、精留蒸留塔3に連
続的に供給して、精留工程を行った。該精留蒸留塔3と
して、内径30mm、段数70段の棚段式蒸留塔を用い
た。操作条件は、操作圧を300mmHgとし、塔底の
温度(液温)が145℃となるように設定した。
【0076】これにより、精留蒸留塔3の塔頂部から、
水600ppmおよび酢酸n−プロピル0.1重量%を
含むグリオキシル酸メチルからなる留出液、即ち、純度
99.8重量%である高純度のグリオキシル酸メチルを
連続的に得た。一方、精留蒸留塔3の塔底部から、その
組成がメチルアルコール3.2重量%、水0.1重量
%、グリオキシル酸メチル90.0重量%、および、グ
リコール酸メチル6.4重量%である缶出液を抜き出し
た。
【0077】〔実施例2〕 (1)粗蒸留工程 実施例1と同様の反応および粗蒸留工程を行うことによ
り、その組成がメチルアルコール24.7重量%、水1
6.9重量%、ホルムアルデヒド1.7重量%、グリオ
キシル酸メチル53.8重量%、および、グリコール酸
メチル2.9重量%である缶出液(粗精製液)を得た。
【0078】(2)第一蒸留工程(共沸蒸留工程) 酢酸n−プロピルの代わりに酢酸イソプロピル(共沸
剤)を用いた以外は、実施例1と同様の第一蒸留工程を
行った。酢酸イソプロピルの使用量は、缶出液に含まれ
る水と共沸組成物を形成するのに必要な理論量の2.0
倍とした。そして、共沸脱水塔2aの塔頂部から、その
組成がメチルアルコール6.7重量%、水4.5重量
%、ホルムアルデヒド1.3重量%、および、酢酸イソ
プロピル87.5重量%である留出液を抜き出した。こ
れにより、共沸脱水塔2aの塔底部から、その組成がメ
チルアルコール3.0重量%、水0.2重量%、酢酸イ
ソプロピル22.9重量%、グリオキシル酸メチル7
0.2重量%、および、グリコール酸メチル3.7重量
%である缶出液を得た。
【0079】(3)第二蒸留工程(共沸蒸留工程) 実施例1と同様の第二蒸留工程を行った。共沸剤除去塔
2bの操作条件は、操作圧を大気圧とし、塔底の温度
(液温)が156℃となるように設定した。そして、共
沸剤除去塔2bの塔頂部から、その組成がメチルアルコ
ール0.6重量%、水0.1重量%、グリオキシル酸メ
チル0.3重量%、および、酢酸イソプロピル99.0
重量%である留出液を抜き出した。これにより、共沸剤
除去塔2bの塔底部から、その組成がメチルアルコール
2.4重量%、水0.1重量%、グリオキシル酸メチル
92.6重量%、および、グリコール酸メチル5.0重
量%である缶出液を得た。
【0080】(4)精留工程 実施例1と同様の精留工程を行った。精留蒸留塔3の操
作条件は、操作圧を300mmHgとし、塔底の温度
(液温)が143℃となるように設定した。これによ
り、精留蒸留塔3の塔頂部から、水700ppmを含む
グリオキシル酸メチルからなる留出液、即ち、純度9
9.9重量%である高純度のグリオキシル酸メチルを連
続的に得た。一方、精留蒸留塔3の塔底部から、その組
成がメチルアルコール2.9重量%、水0.1重量%、
グリオキシル酸メチル90.9重量%、および、グリコ
ール酸メチル6.1重量%である缶出液を抜き出した。
【0081】〔実施例3〕 (1)粗蒸留工程 実施例1と同様の反応および粗蒸留工程を行うことによ
り、その組成がメチルアルコール18.9重量%、水1
5.0重量%、ホルムアルデヒド3.2重量%、グリオ
キシル酸メチル52.6重量%、および、グリコール酸
メチル10.3重量%である缶出液(粗精製液)を得
た。
【0082】(2)第一蒸留工程(共沸蒸留工程) 実施例1と同様の第一蒸留工程を行った。共沸脱水塔2
aとして、内径50mm、段数50段の蒸留塔を用い
た。操作条件は、操作圧を大気圧とし、塔底の温度(液
温)が125℃となるように設定した。そして、共沸脱
水塔2aの塔頂部から、その組成がメチルアルコール
6.7重量%、水7.9重量%、ホルムアルデヒド3.
1重量%、および、酢酸n−プロピル82.3重量%で
ある留出液を抜き出した。これにより、共沸脱水塔2a
の塔底部から、その組成がメチルアルコール2.7重量
%、水0.3重量%、酢酸n−プロピル33.5重量
%、グリオキシル酸メチル53.1重量%、および、グ
リコール酸メチル10.4重量%である缶出液を得た。
【0083】(3)第二蒸留工程(共沸蒸留工程) 実施例1と同様の第二蒸留工程を行った。共沸剤除去塔
2bとして、内径50mm、段数50段の蒸留塔を用い
た。操作条件は、操作圧を大気圧とし、塔底の温度(液
温)が160℃となるように設定した。そして、共沸剤
除去塔2bの塔頂部から、その組成がメチルアルコール
0.6重量%、水0.2重量%、グリオキシル酸メチル
1.0重量%、および、酢酸n−プロピル98.2重量
%である留出液を抜き出した。これにより、共沸剤除去
塔2bの塔底部から、その組成がメチルアルコール2.
0重量%、水0.3重量%、グリオキシル酸メチル8
0.6重量%、および、グリコール酸メチル17.1重
量%である缶出液を得た。尚、該缶出液には、微量の酢
酸n−プロピルが含まれていた。
【0084】(4)精留工程 実施例1と同様の精留工程を行った。精留蒸留塔3とし
て、内径30mm、段数70段の蒸留塔を用いた。操作
条件は、操作圧を300mmHgとし、還流比を3と
し、塔底の温度(液温)が140℃となるように設定し
た。これにより、精留蒸留塔3の塔頂部から、水600
ppmを含むグリオキシル酸メチルからなる留出液、即
ち、純度99.9重量%である高純度のグリオキシル酸
メチルを連続的に得た。一方、精留蒸留塔3の塔底部か
ら、その組成がメチルアルコール2.0重量%、水0.
2重量%、グリオキシル酸メチル78.6重量%、およ
び、グリコール酸メチル19.2重量%である缶出液を
抜き出した。
【0085】〔実施例4〕 (1)粗蒸留工程 実施例1と同様の反応および粗蒸留工程を行うことによ
り、その組成がメチルアルコール22.7重量%、水1
6.5重量%、ホルムアルデヒド6.4重量%、グリオ
キシル酸メチル47.2重量%、および、グリコール酸
メチル7.2重量%である缶出液(粗精製液)を得た。
【0086】(2)第一蒸留工程(共沸蒸留工程) 上記の粗蒸留工程で得た缶出液と、該缶出液に含まれる
水と共沸組成物を形成するのに必要な理論量の1.8倍
の酢酸イソプロピルとを混合して、混合液を調製した。
上記混合液の組成は、メチルアルコール6.5重量%、
水4.7重量%、ホルムアルデヒド1.8重量%、酢酸
イソプロピル71.2重量%、グリオキシル酸メチル1
3.6重量%、および、グリコール酸メチル2.1重量
%であった。該混合液を共沸脱水塔2aに連続的に供給
して、第一蒸留工程を行った。該共沸脱水塔2aとし
て、内径30mm、段数50段の蒸留塔を用いた。操作
条件は、操作圧を大気圧とし、還流比を0.5とし、塔
底の温度(液温)が126℃となるように設定した。
【0087】そして、共沸脱水塔2aの塔頂部から、そ
の組成がメチルアルコール7.8重量%、水6.0重量
%、ホルムアルデヒド2.3重量%、および、酢酸イソ
プロピル83.9重量%である留出液を抜き出した。こ
れにより、共沸脱水塔2aの塔底部から、その組成がメ
チルアルコール1.9重量%、水0.2重量%、酢酸イ
ソプロピル23.6重量%、グリオキシル酸メチル6
4.4重量%、および、グリコール酸メチル9.9重量
%である缶出液を得た。
【0088】(3)第二蒸留工程(共沸蒸留工程) 実施例1と同様の第二蒸留工程を行った。共沸剤除去塔
2bとして、内径30mm、段数50段の蒸留塔を用い
た。操作条件は、操作圧を大気圧とし、還流比を3と
し、塔底の温度(液温)が157℃となるように設定し
た。そして、共沸剤除去塔2bの塔頂部から、その組成
がメチルアルコール2.8重量%、水0.4重量%、お
よび、酢酸イソプロピル96.8重量%である留出液を
抜き出した。これにより、共沸剤除去塔2bの塔底部か
ら、その組成がメチルアルコール1.6重量%、水0.
1重量%、グリオキシル酸メチル85.2重量%、およ
び、グリコール酸メチル13.1重量%である缶出液を
得た。
【0089】(4)精留工程 実施例1と同様の精留工程を行った。精留蒸留塔3とし
て、内径30mm、段数70段の蒸留塔を用いた。操作
条件は、操作圧を600mmHgとし、還流比を3と
し、塔底の温度(液温)が165℃となるように設定し
た。これにより、精留蒸留塔3の塔頂部から、水0.1
重量%を含むグリオキシル酸メチルからなる留出液、即
ち、純度99.9重量%である高純度のグリオキシル酸
メチルを連続的に得た。一方、精留蒸留塔3の塔底部か
ら、その組成がメチルアルコール2.0重量%、水0.
1重量%、グリオキシル酸メチル80.9重量%、およ
び、グリコール酸メチル17.0重量%である缶出液を
抜き出した。
【0090】〔比較例1〕 (1)粗蒸留工程 実施例1と同様の反応および粗蒸留工程を行うことによ
り、その組成がメチルアルコール20.9重量%、水1
5.0重量%、ホルムアルデヒド2.1重量%、グリオ
キシル酸メチル56.1重量%、および、グリコール酸
メチル5.9重量%である缶出液(粗精製液)を得た。
【0091】(2)共沸蒸留工程 上記の粗蒸留工程で得た缶出液に酢酸n−プロピルを混
合して、混合液を調製した。上記混合液の組成は、メチ
ルアルコール5.4重量%、水3.9重量%、ホルムア
ルデヒド0.6重量%、酢酸n−プロピル74.1重量
%、グリオキシル酸メチル14.5重量%、および、グ
リコール酸メチル1.5重量%であった。該混合液を、
内径30mm、段数50段の蒸留塔に連続的に供給し
て、共沸蒸留工程を行った。操作条件は、操作圧を30
0mmHgとし、塔底の温度(液温)が150℃となる
ように設定した。
【0092】そして、蒸留塔の塔頂部から、その組成が
メチルアルコール5.2重量%、水4.7重量%、ホル
ムアルデヒド0.6重量%、および、酢酸n−プロピル
89.5重量%である留出液を抜き出した。これによ
り、蒸留塔の塔底部から、その組成がメチルアルコール
6.7重量%、水0.1重量%、酢酸n−プロピル0.
1重量%、グリオキシル酸メチル84.2重量%、およ
び、グリコール酸メチル8.9重量%である缶出液を得
た。即ち、第一および第二蒸留工程を行う代わりに、一
つの工程で以て缶出液を得た。
【0093】(3)精留工程 上記の共沸蒸留工程で得た缶出液を、内径30mm、段
数70段の精留蒸留塔に連続的に供給して、精留工程を
行った。操作条件は、操作圧を600mmHgとし、塔
底の温度(液温)が155℃となるように設定した。こ
れにより、精留蒸留塔の塔頂部から、メチルアルコール
0.1重量%、水0.2重量%、および、酢酸n−プロ
ピル0.3重量%を含むグリオキシル酸メチルからなる
留出液を連続的に得た。一方、精留蒸留塔の塔底部か
ら、その組成がメチルアルコール11.5重量%、水
0.1重量%、グリオキシル酸メチル73.0重量%、
および、グリコール酸メチル15.4重量%である缶出
液を抜き出した。
【0094】従って、第一および第二蒸留工程を行う代
わりに、一つの工程で以て缶出液を得た場合には、該缶
出液を用いて精留工程を行っても、純度99.4重量%
程度の低純度のグリオキシル酸メチルしか得られなかっ
た。
【0095】〔比較例2〕 (1)粗蒸留工程 実施例1と同様の反応および粗蒸留工程を行うことによ
り、その組成がメチルアルコール24.7重量%、水1
6.9重量%、ホルムアルデヒド1.7重量%、グリオ
キシル酸メチル53.8重量%、および、グリコール酸
メチル2.9重量%である缶出液(粗精製液)を得た。
【0096】(2)第一蒸留工程(共沸蒸留工程) 操作条件である塔底の温度(液温)を145℃に変更し
た以外は、実施例1と同様の第一蒸留工程を行った。そ
して、共沸脱水塔2aの塔頂部から、その組成がメチル
アルコール7.9重量%、水5.7重量%、ホルムアル
デヒド1.2重量%、および、酢酸n−プロピル85.
2重量%である留出液を抜き出した。これにより、共沸
脱水塔2aの塔底部から、その組成がメチルアルコール
4.5重量%、水0.2重量%、酢酸n−プロピル3.
0重量%、グリオキシル酸メチル87.7重量%、およ
び、グリコール酸メチル4.7重量%である缶出液を得
た。従って、上記の缶出液に含まれる酢酸n−プロピル
(共沸剤)の割合は、好ましい範囲を下回っている。
【0097】(3)第二蒸留工程(共沸蒸留工程) 実施例1と同様の第二蒸留工程を行った。共沸剤除去塔
2bの操作条件は、操作圧を大気圧とし、塔底の温度
(液温)が157℃となるように設定した。そして、共
沸剤除去塔2bの塔頂部から、その組成がメチルアルコ
ール1.5重量%、水0.2重量%、グリオキシル酸メ
チル1.5重量%、および、酢酸n−プロピル96.8
重量%である留出液を抜き出した。これにより、共沸剤
除去塔2bの塔底部から、その組成がメチルアルコール
4.3重量%、水0.2重量%、グリオキシル酸メチル
90.7重量%、および、グリコール酸メチル4.8重
量%である缶出液を得た。
【0098】(4)精留工程 実施例1と同様の精留工程を行った。精留蒸留塔3の操
作条件は、操作圧を300mmHgとし、塔底の温度
(液温)が144℃となるように設定した。これによ
り、精留蒸留塔3の塔頂部から、水0.2重量%を含む
グリオキシル酸メチルからなる留出液を連続的に得た。
一方、精留蒸留塔3の塔底部から、その組成がメチルア
ルコール5.3重量%、水0.2重量%、グリオキシル
酸メチル88.6重量%、および、グリコール酸メチル
6.0重量%である缶出液を抜き出した。
【0099】従って、第一蒸留工程で得られる缶出液に
含まれる酢酸n−プロピル(共沸剤)の割合が、好まし
い範囲を下回っている場合には、該缶出液を用いて第二
蒸留工程および精留工程を行っても、水を多量に含む低
純度のグリオキシル酸メチルしか得られなかった。
【0100】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の有機化合物の精
製方法は、以上のように、水が共存する有機化合物を共
沸剤を用いて共沸蒸留することによって該有機化合物を
精製する方法であって、上記有機化合物および共沸剤を
第一の蒸留塔に供給し、該共沸剤が塔底部に存在する条
件下で、塔頂部から共沸剤および水を含む留出液を留出
させる一方、塔底部から共沸剤および上記有機化合物を
含む缶出液を缶出させる第一の工程と、上記缶出液を第
二の蒸留塔に供給し、塔頂部から共沸剤を含む留出液を
留出させる一方、塔底部から有機化合物を含む缶出液を
缶出させる第二の工程とを含む方法である。
【0101】本発明の請求項2記載の有機化合物の精製
方法は、以上のように、第一の工程で得られる缶出液に
含まれる共沸剤の割合が、5重量%〜50重量%の範囲
内である方法である。
【0102】本発明の請求項3記載の有機化合物の精製
方法は、以上のように、共沸剤が脂肪族エステル類であ
る方法である。
【0103】本発明の請求項4記載の有機化合物の精製
方法は、以上のように、有機化合物がグリオキシル酸エ
ステル類またはアルデヒド類である方法である。
【0104】それゆえ、水が共存する有機化合物を精製
して水を除去(脱水)することにより、高純度の該有機
化合物を効率的に、しかも簡便かつ安価、安全に得るこ
とができるという効果を奏する。上記の精製方法は、水
が共存するグリオキシル酸エステル類や、水が共存する
ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類
から水を除去することにより、高純度の該化合物を得る
のに、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる有機化合物とし
てのグリオキシル酸エステル類の精製に用いられる精製
装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】上記精製装置において行われる粗蒸留工程に用
いられる強制撹拌液膜型の薄膜蒸発器の概略の構成を示
す縦断面図である。
【図3】上記薄膜蒸発器の概略の構成を示す横断面図で
ある。
【図4】上記薄膜蒸発器におけるワイパおよびワイパ支
持部の斜視図である。
【符号の説明】
1 薄膜蒸発器 2a 共沸脱水塔(第一の蒸留塔) 2b 共沸剤除去塔(第二の蒸留塔) 3 精留蒸留塔

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水が共存する有機化合物を共沸剤を用いて
    共沸蒸留することによって該有機化合物を精製する方法
    であって、 上記有機化合物および共沸剤を第一の蒸留塔に供給し、
    該共沸剤が塔底部に存在する条件下で、塔頂部から共沸
    剤および水を含む留出液を留出させる一方、塔底部から
    共沸剤および上記有機化合物を含む缶出液を缶出させる
    第一の工程と、 上記缶出液を第二の蒸留塔に供給し、塔頂部から共沸剤
    を含む留出液を留出させる一方、塔底部から有機化合物
    を含む缶出液を缶出させる第二の工程と、を含むことを
    特徴とする有機化合物の精製方法。
  2. 【請求項2】第一の工程で得られる缶出液に含まれる共
    沸剤の割合が、5重量%〜50重量%の範囲内であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の有機化合物の精製方法。
  3. 【請求項3】共沸剤が脂肪族エステル類であることを特
    徴とする請求項1または2記載の有機化合物の精製方
    法。
  4. 【請求項4】有機化合物がグリオキシル酸エステル類ま
    たはアルデヒド類であることを特徴とする請求項1、2
    または3記載の有機化合物の精製方法。
JP5096898A 1998-03-03 1998-03-03 有機化合物の精製方法 Withdrawn JPH11246481A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110386906A (zh) * 2019-09-02 2019-10-29 中国天辰工程有限公司 一种表氯醇的分离方法及装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110386906A (zh) * 2019-09-02 2019-10-29 中国天辰工程有限公司 一种表氯醇的分离方法及装置

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