JPH11235578A - 有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法 - Google Patents

有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法

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JPH11235578A
JPH11235578A JP10223122A JP22312298A JPH11235578A JP H11235578 A JPH11235578 A JP H11235578A JP 10223122 A JP10223122 A JP 10223122A JP 22312298 A JP22312298 A JP 22312298A JP H11235578 A JPH11235578 A JP H11235578A
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alloy
aluminum
organic halogen
reducing agent
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Tatsuo Shimomura
達夫 下村
Naoaki Kataoka
直明 片岡
Norimitsu Kitajima
宣光 北嶋
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Ebara Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 還元脱ハロゲン反応において、標準電極電位
が低く、かつ表面が安定な酸化膜で覆われず効率的に還
元反応が行われる還元剤を添加することにより、経済的
かつ効率的に脱ハロゲン化を行う方法を提供する。 【解決手段】 有機ハロゲン化合物の汚染物を浄化する
方法において、該汚染物に標準電極電位が−445mV
以下、−2400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合
物、硫黄化合物、重金属、軽金属、およびそれらの合金
のいづれかまたはその混合物を添加し、還元条件下で分
解浄化することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機塩素化合物に
代表される有機ハロゲン化合物を含む土壌、底質、汚
泥、水などのような有機ハロゲン化合物による汚染物を
浄化する方法に関し、特に還元剤による化学反応および
化学反応と生物反応の組合せを用い脱ハロゲン反応を利
用することによって、短期間で、より確実に浄化が達成
できる有機ハロゲン化合物汚染物の新規な浄化方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機械金属部品の脱脂・洗浄剤
やドライクリ−ニングの洗浄剤として広く使用されてい
るテトラクロロエチレン(以下、「PCE」と略す)、
トリクロロエチレン(以下、「TCE」と略す)、1,
1,1−トリクロロエチレンなどの揮発性有機ハロゲン
化合物による土壌・地下水の汚染が次々と報告されてお
り、大きな社会問題となっている。これらの有機ハロゲ
ン化合物は肝障害を引起し、発がん性を有することが報
告されてきていることから、その分解、浄化、無害化に
対する技術の確立が早急に要求されている。しかしなが
ら、これら有機ハロゲン化合物は自然界では容易に分解
されない難分解性物質であると共に、難水溶性であるた
めに、大多数の汚染域においては土壌中での蓄積、地下
水への浸透が生じている。
【0003】PCE、TCE、ジクロロエチレン(以
下、「DCE」と略す)等の有機塩素化合物で汚染され
た土壌・地下水を浄化する方法については、種々の方法
が実施あるいは開発されている。すなわち、従来から汚
染土壌の掘削除去および焼却や揚水処理法などが多く行
われてきたが、最近では、新しい技術の開発も検討され
ていて、その中に化学反応を用いたものとして、極く最
近では、金属鉄による有機塩素化合物汚染の還元的処理
が報告されている(先崎哲夫、有機塩素化合物汚染地下
水の処理−金属鉄付着活性炭による低温下での処理技
術、「PPM」、1995年、第26巻、第5号、第6
4〜70ペ−ジ)。しかし、金属鉄を化学反応による有
機ハロゲン化合物の脱ハロゲン反応の還元剤として用い
ると、標準電極電位が比較的高く(−440mV)、ま
た表面に酸化膜を形成しやすいために汚染物の酸化還元
電位、周囲からの酸化物の供給条件によっては汚染物の
還元状態の維持が不安定となり、また金属鉄の表面に有
機ハロゲン化合物が接触しないかぎり脱ハロゲン反応が
生じないという問題点があった。
【0004】本発明者はこのような問題点を解決すべく
鋭意研究を行い、特に固体の汚染物の浄化を行うために
は微生物の増殖基質となる炭素源および栄養塩類を添加
して中性条件下で分解浄化することが有効であることを
見いだし、先般、生物反応と化学反応を組合せた脱塩素
反応を利用する浄化方法を特許出願した。しかしこの方
法では金属鉄の他に微生物の増殖基質となる炭素源およ
び栄養塩類を添加しなければならない。また、微生物の
増殖を阻害するような酸性又はアルカリ性のpH条件、
増殖阻害物質の存在、高い塩濃度、10℃以下の低温等
の条件下では利用できない。さらに、微生物が増殖する
まで脱塩素反応が十分には進行しないため、汚染物の浄
化に1〜4ケ月間かかる。このように、従来の還元脱ハ
ロゲン反応を利用する浄化技術は、汚染浄化効率、費用
効果、システム操作性などの要素において改良の余地が
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記汚染物
の浄化方法において、低濃度から高濃度に至るまでの幅
広い化学的汚染濃度に対して、高度な浄化率を達成し、
低コストで、安全に、しかも簡単な処理システムにて、
有機ハロゲン化合物汚染サイトを無害化処理することの
できる、新規な浄化方法を提供することを目的とするも
のである。特に、本発明は、従来の方法とはことなった
方法により、従来得られていない優れた処理効果を得よ
うとするものである。すなわち、具体的には、本発明
は、上記還元脱ハロゲン反応において、標準電極電位が
低く、かつ表面が安定な酸化膜で覆われず効率的に還元
反応が行われる還元剤を添加することにより、経済的か
つ効率的に脱ハロゲン化を行う方法を提供することを課
題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記の手段に
より前記の課題を解決することができた。 (1)有機ハロゲン化合物の汚染物を浄化する方法にお
いて、該汚染物に標準電極電位が−445mV以下、−
2400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合物、硫黄
化合物、重金属、軽金属、およびそれらの合金のいずれ
かまたはその混合物を添加し、還元条件下で分解浄化す
ることを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方
法。
【0007】(2)前記標準電極電位が−445mV以
下、−2400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合
物、硫黄化合物、重金属、軽金属、およびそれらの合金
が、カルシウム合金、カルシウム−シリコン合金、アル
ミニウム合金、アルミニウム−シリコン合金、鉄−シリ
コン合金、次亜リン酸塩、硫化ナトリウム、硫化カリウ
ム、チタン、チタン合金、チタン−シリコン合金、チタ
ン−アルミニウム合金、マンガン、マンガン合金、亜
鉛、亜鉛合金、マグネシウム、マグネシウム合金、カル
シウム、マグネシウム−マンガン合金、亜鉛−アルミニ
ウム合金、アルミニウム−亜鉛合金、アルミニウム−亜
鉛−カルシウム合金、アルミニウム−スズ合金のいずれ
かまたはその混合物であることを特徴とする前記(1)
記載の有機ハロゲン化合物汚染物浄化方法。
【0008】(3)前記汚染物を浄化する方法におい
て、該汚染物に標準電極電位が−445mV以下、−2
400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合物、硫黄化
合物、重金属、軽金属、およびそれらの合金のいずれか
またはその混合物および微生物の増殖基質となる有機炭
素源を添加し、中性条件下で分解浄化することを特徴と
する前記(1)又は(2)記載の有機ハロゲン化合物汚
染物浄化方法。なお上記標準電極電位は、25℃におけ
る標準水素電極に対するものである。
【0009】次に、本発明の作用機構を詳しく説明す
る。本発明は、標準電極電位が−445mV以下、−2
400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合物、重金
属、軽金属、およびそれらの合金のいずれかまたはその
混合物を添加し、汚染物中を水で飽和もしくはそれに準
じる状態とすることにより、汚染物中を還元状態とし、
化学的還元反応により汚染物質である有機ハロゲン化合
物の脱ハロゲン化を進行させる。化学的な還元反応によ
る有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法では通常、金属
鉄を還元剤として用いるが、汚染物の酸化還元電位、周
囲からの酸化物の供給条件によっては汚染物の還元状態
の維持が不安定となり、また金属鉄の表面に有機ハロゲ
ン化合物が接触しないかぎり脱ハロゲン反応がおこら
ず、効率的な脱ハロゲンが達成できない可能性がある。
【0010】本発明ではこの脱ハロゲン化反応をより確
実に進行させるために、標準電極電位が−445mV以
下、−2400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合
物、硫黄化合物、重金属、軽金属、およびそれらの合金
のいずれかまたはその混合物を還元剤として用い、化学
的な脱ハロゲン化を進行させる。この反応においては、
汚染物中が金属鉄を用いた場合よりも低い酸化還元電位
状態に維持されるため、有機ハロゲン化合物との電位差
がより大きくなり、脱ハロゲン化反応が加速される。ま
た汚染物中の酸化鉄が還元されて金属鉄としてふるまう
ため、添加した還元剤の持つ表面積よりもより多くの表
面積において脱ハロゲン化反応が進行することとなり、
特に土壌のような固体物で、有機ハロゲン化合物の移動
が制限されている場合には浄化効率が有意に高められ
る。
【0011】さらに、マグネシウム−マンガン合金、亜
鉛−アルミニウム合金、アルミニウム−亜鉛合金、アル
ミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アルミニウム−スズ
合金などの合金を用いると、酸化膜や腐食生成物の金属
表面への付着を生じないか、又は付着はしても反応を阻
害するような緻密な膜にはならない(不動態化していな
い)ため、還元反応により接触効率が低下する問題が生
ぜず、浄化反応が効率よく行なえる利点がある。いずれ
の場合も、還元剤と汚染物との接触効率を高めるために
還元剤は粉末状または溶液状のものを用いることが好ま
しい。ただし上述した物質の多くは水と反応して容易に
酸化態へ変化するので、その場合は汚染物と直接混合す
るか、混合する直前に水に溶解させても良い。
【0012】還元剤が粉末状の場合には、500μm以
下の粒径を有することが好ましい。粒径が小さい場合に
は、ハロゲン化有機化合物の分解率が向上するためであ
る。また、用途によっては、還元剤は、粒径が0.00
1mmから5mmの粉末であることが好ましく、0.0
1mmから1mmの粉末であることが更に好ましい。粒
子径は化学的還元反応の速度を支配し、粒子径が増加す
るのに比例して単位重量あたりの還元反応速度は低下す
るので注意を要する。さらに、粒子径が5mm以上であ
り、かつ、金属物質である場合には金属粒子の表面が比
較的厚い酸化膜で覆われる結果、中心部の還元状態の金
属は利用されない可能性が大きい。また一方、粒子径が
0.001mm以下である場合には非常に酸化速度が速
いので、輸送中及び混合時に水分と接触して酸化されて
しまう危険性が高くなるからである。なお、還元剤が金
属物質の場合には、粉末の表面が酸化されていても、内
部が還元状態であり酸化されていなければ利用可能であ
る。
【0013】標準電極電位が−2400mVよりも低い
物質としては、例えばアルカリ金属類の金属ナトリウ
ム、金属カリウムなどが挙げられる。これらの物質は還
元力において上記還元剤を凌ぐが、逆に還元力が強すぎ
るため水と反応して爆発的に水素ガスを発生し、非常に
危険であるため、使用は避けるべきである。
【0014】なお、本明細書で述べる標準電極電位と
は、ある電池反応に関して、その電池反応に関与する全
ての化学種が標準状態(純固相、標準濃度、標準圧力な
ど)にあるとき、比較電極として水素電極を用いて測定
を行った場合に測定される電位であり標準電位E0 に等
しい。この値は次式を用いて表される。 E0 =−△G0 /nF ここで△G0 とは電池反応の標準ギブス自由エネルギ−
変化、nはその反応に関与する電子数、Fはファラデ−
定数である。通常、酸化還元電位は比較電極として飽和
塩化銀電極を用いて測定した電位で示される場合が多い
が、この場合測定された数値は水素標準電極を比較電極
として測定した標準電位と比べ約200mV程度低い値
を示すので注意が必要である。本明細書中では酸化還元
電位も25℃において水素電極を比較電極として用いた
場合の値(Eh)に統一して示している。
【0015】本発明で述べる重金属とは、比重が4.0
g/cm3 以上の金属のことを指し、具体的にはスカン
ジウム以外の3A〜7A、8、1Bおよび2B族の全て
の元素、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、
アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、フ
ランシウム、ラジウムを指す。ただし重金属でかつ標準
電極電位が−445mV以下、−2400mV以上の金
属のなかでも、クロム、カドミウム等の環境に悪影響を
及ぼす金属を使用するべきではないことは、汚染浄化の
目的から考えて言うまでもない。また軽金属とは、水
素、フランシウム、ラジウム以外の1A、2A族の全て
の元素と、スカンジウム、アルミニウムを指す。なお、
汚染物が粘土質土壌や固結したシルト質などの透水性の
低い物質であった場合、還元剤のみを用いた脱ハロゲン
化処理は接触効率が低いことから長時間を要し、外部か
らの酸化物の供給条件によっては還元状態が不安定にな
ることが考えられる。この場合には還元剤のほかに微生
物の増殖基質となる有機炭素源を添加し、中性条件下で
分解浄化することにより還元状態を安定化し、完全な脱
ハロゲン化浄化を達成することができる。
【0016】本発明では、前記還元剤が、鉄−金属鉄、
還元鉄、鋳鉄、カルシウム、鉄−シリコン合金、チタン
合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合金、マ
グネシウム合金、カルシウム合金、マンガン、ニッケ
ル、マグネシウム、銅、亜鉛、及び水溶性化合物からな
る群から選ばれた少なくとも1種である。前記還元剤
が、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位
がー400mV〜ー2400mVである金属物質である
ことが好ましい。本発明の一実施態様としては、還元剤
としては、還元鉄を用いる。鉄粉は通常表面が酸化され
て酸化皮膜が形成されている。これに対して、還元鉄で
は、酸化被膜が少なく、酸化されやすく、反応性が高
い。ここで、還元鉄とは、酸化物の還元によって製造さ
れた金属鉄の一種をいい、きわめて細かい粉末状であり
きわめて酸化されやすい(化学大辞典2、化学大辞典編
集委員会、共立出版株式会社)。典型的には、高温下、
水素ガスで還元されたものである。酸化鉄が還元されて
もよいが、酸化物は酸化鉄には限られない。還元鉄に
は、Feの含有量が90%以上のものがある。例えば、
和光純薬工業株式会社から入手できる。
【0017】本発明の他の実施態様としては、還元剤と
して、鋳鉄も好ましく用いられる。鋳鉄は、安全で、取
り扱いが容易であり、且つ高い浄化率を達成できるから
である。また、鋳物製品の削り屑、即ち、鋳鉄屑が更に
好ましい。削り屑を再利用することができるからであ
る。一般に、鉄鉱石を還元して製造される銑鉄から、さ
らに不純物を除いて産業利用される鉄のうち、炭素濃度
が約2%(重量)以下のものを鋼、これ以上の炭素を含
む物を鋳鉄という(「理化学辞典」第4版 1987
年、第411頁)。鋼は機械的性質に優れているため、
多くの工業製品に加工利用されている。その際に放出さ
れる鋼の削り屑を、ハロゲン化有機化合物で汚染を受け
た物質の浄化方法に用い得るかを検討したところ、その
切削加工には油を用いるため、鋼製品の削り屑には油が
含まれている。これを用いて本発明の有機塩素を化合物
による汚染物の浄化方法を行なおうとすれば、油による
2次汚染を引き起こすおそれがある。これに対し、鋳物
用に用いられる鋳鉄は、切削加工時に油を使用しないの
で、鋳物製品削り屑(鋳鉄屑)は前記鋼製品削り屑のよ
うな2次汚染を引き起こすおそれがない。
【0018】本発明の他の実施態様としては、還元剤と
しては、合金が用いられる。即ち、鉄−シリコン合金、
チタン合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合
金、マグネシウム合金、及び、カルシウム合金も用いら
れる。チタン合金としては、例えば、チタン−シリコン
合金、チタン−アルミニウム合金が挙げられる。亜鉛合
金としては、例えば、亜鉛−アルミニウム合金が挙げら
れる。マンガン合金としては、例えば、マンガン−マグ
ネシウム合金が挙げられる。アルミニウム合金として
は、例えば、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、ア
ルミニウム−スズ合金、アルミニウム−シリコン合金等
が挙げられる。マグネシウム合金としては、例えば、マ
グネシウム−マンガン合金が挙げられる。カルシウム合
金としては、例えば、カルシウム−シリコン合金が挙げ
られる。
【0019】還元剤の作用について、還元鉄の場合で例
示して説明する。金属鉄による嫌気脱ハロゲン化反応の
反応機構は、還元鉄の反応について述べた先崎の報告
(「有機塩素化合物汚染地下水の処理−金属鉄付着活性
炭による低温下での処理技術」、PPM、1995年、
第26巻、第5号、第64〜70頁)によれば、還元鉄
表面にハロゲン化有機化合物の吸着が起こり、同時に還
元鉄表面において金属側と環境側の条件の差異によって
アノードとカソードの分極が生じ、これによって電流が
ながれる。これに伴って、アノードでは鉄が鉄イオンと
なって溶出し、一方、カソードには電子が流入し、脱ハ
ロゲン化反応等の還元反応が生じるものと思われる。 アノード: Fe → Fe2+ + 2e-
【0020】鋳鉄は前記のように炭素濃度2%以上のも
のを言うが、一般には重量で3〜3.5%、容量では1
3〜14%の多量の炭素をグラファイトとして含有して
いる。いわゆるヅクと呼ばれる鋳物製品削り屑(鋳鉄
屑)は、廃棄物として排出される前に、一般にミルで粉
砕されている。その粉砕時に一部のグラファイトは、離
脱して鋳鉄粉の表面に付着する。このためこの鋳鉄粉が
水膜で覆われるとグラファイトがカソードとして作用
し、一方鉄がアノードとして作用し、前記のように電流
が流れ、アノードで鉄が溶出し、カソードで脱ハロゲン
化反応等の還元反応が生じると考えられる。上記合金も
アノードとして作用し、合金が溶出するものと思われ
る。一方、カソードで脱ハロゲン化反応が生じると思わ
れる。また、金属鉄よりも還元力が強い合金の場合に
は、より還元雰囲気を維持し易く、ハロゲン化有機化合
物との電位差がより大きくなり、脱ハロゲン化反応が加
速される。
【0021】さらに、マグネシウム−マンガン合金、亜
鉛−アルミニウム合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウ
ム合金、アルミニウム−スズ合金などの合金を用いる
と、酸化膜や腐食生成物の金属表面への付着を生じない
か、又は付着はしても反応を阻害するような緻密な膜に
はならない(不動態化していない)ため、還元反応によ
り接触効率が低下する問題が生ぜず、浄化反応が効率よ
く行える。また、前記還元剤が、水溶性化合物であるこ
とが好ましい。粉末等の固体を添加する場合と比較して
ハロゲン化有機化合物との接触効率が飛躍的に増大し、
脱ハロゲン化反応が加速される。また、水溶性の還元剤
は土壌等に浸透するため、注入井戸等を用いて還元剤を
注入することができ、物理的な掘削混合作業を必要とし
ない。さらに浄化運転中に還元状態が不安定になった場
合には、汚染物の浸出水を回収して水溶性の還元剤を添
加し、再注入することにより還元状態を容易に回復する
ことも可能である。
【0022】水溶性還元剤としては、有機酸若しくはそ
の誘導体、次亜リン酸若しくはその誘導体、又は、硫化
物塩が挙げられる。有機酸としては、カルボン酸、スル
ホン酸、フェノール若しくはその誘導体等が挙げられ
る。カルボン酸としては、例えば、1〜20の炭素原子
を有し、かつ、水酸基で置換されていてもよい、モノカ
ルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又は、テト
ラカルボン酸が挙げられる。具体的には、蟻酸、酢酸、
クエン酸、シュウ酸、テレフタル酸等が好ましく、特
に、クエン酸、シュウ酸等の2〜10の炭素原子を有す
る脂肪族ジカルボン酸が好ましい。フェノール誘導体と
しては、ポリヒドロキシアリールが好ましい。ポリヒド
ロキシアリールとは、2以上の水酸基で置換されたアリ
ールをいい、アリールとしては、ベンゼン、ナフタレ
ン、アントラセン等が挙げられる。また、ナフタレン、
インデンのように縮合環が形成されていてもよい。ポリ
ヒドロキシアリールとしては、例えば、1,2,3−ト
リヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン
が好ましい。ここで、1,2,3−トリヒドロキシベン
ゼンは、焦性没食子酸、ピロガロールとも呼ばれる。そ
のアルカリ性溶液は、酸素と反応して酸化物を生成す
る。
【0023】有機酸の誘導体としては、塩、エステル、
アミド、酸無水物等が挙げられ、塩が好ましい。反対イ
オンとしては、特に制限がなく、ナトリウムイオン等の
アルカリ金属イオン;カルシウムイオン等のアルカリ土
類金属イオン;鉄イオン、チタンイオン等の遷移金属イ
オン等の無機イオン、又は、テトラアルキルアンモニウ
ムイオン等の有機イオンであってもよい。次亜リン酸の
誘導体としては、塩、エステル等が挙げられ、塩が好ま
しい。反対イオンとしては、特に制限がなく、ナトリウ
ムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン等
のアルカリ土類金属イオン;鉄イオン、チタンイオン等
の遷移金属イオン等の無機イオン、又は、テトラアルキ
ルアンモニウムイオン等の有機イオンであってもよい。
また、前記還元剤が、有機酸又は次亜リン酸と、鉄、チ
タン、亜鉛、マンガン、アルミニウム又はマグネシウム
とからなる塩であってもよい。
【0024】これらの還元剤を添加した場合では、嫌気
的脱ハロゲン化反応で多く報告されている塩化ビニル等
の中間代謝産物の生成・蓄積は全く認められず、反応生
成物はいずれも完全に脱ハロゲン化された物質へと転換
されて気相部へ放出されることがわかった。また、標準
電極電位が金属鉄と同等もしくはそれ以下の還元剤を用
いた場合には、ハロゲン化有機化合物との電位差がより
大きくなり、脱ハロゲン化反応が促進され、好ましい。
【0025】還元剤の使用量は、汚染物が土壌の場合、
土壌100g当たり0.01〜20gが好ましく、更に
好ましくは0.05〜10gである。また汚染物が水の
場合、水100ml当たり0.1〜30gが好ましく、
更に好ましくは0.2〜20gである。いずれの場合
も、脱ハロゲン化の対象となるハロゲン化有機化合物の
汚染濃度が50mg/kg(または50mg/l)を越
える場合には、ハロゲン化有機化合物1mgに対し、
0.05〜0.1gの比率で金属粉末等の還元剤の添加
量を増加させることが必要となる。ただしこれはあくま
でも理想条件下での数値であり、実際の汚染現場におい
ては、微生物による酸素消費が順調に行われなかった場
合には還元剤の還元力がむだに消耗されることも起こり
うる。また、雨水や外気による酸素等の供給によっても
還元剤の還元力は容易に消耗するため、実施に当たって
は現場で予備試験を行い、現場の条件に合わせて個々に
添加濃度を決定すべきである。還元剤と汚染物との接触
効率を高めるために還元剤は粉末状又は溶液状のものが
好ましい。ただし上述した物質の多くは水と反応して容
易に酸化態へ変更するので、その場合は汚染物と還元剤
を直接混合することか、混合する直前に水に溶解させる
ことが望ましい
【0026】還元剤が粉末状の場合には、500μm以
下の粒径を有することが好ましい。粒径が小さい場合に
は、ハロゲン化有機化合物の分解率が向上するためであ
る。また、用途によっては、還元剤は、粒径が0.00
1mmから5mmの粉末であることが好ましく、0.0
1mmから1mmの粉末であることが更に好ましい。粒
子径は化学的還元反応の速度を支配し、粒子径が増加す
るのに比例して単位重量あたりの還元反応速度は低下す
るので注意を要する。さらに、粒子径が5mm以上であ
り、かつ、金属物質である場合には金属粒子の表面が比
較的厚い酸化膜で覆われる結果、中心部の還元状態の金
属は利用されない可能性が大きい。また一方、粒子径が
0.001mm以下である場合には非常に酸化速度が速
いので、輸送中及び混合時に水分と接触して酸化されて
しまう危険性が高くなるからである。なお、還元剤が金
属物質の場合には、粉末の表面が酸化されていても、内
部が還元状態であり酸化されていなければ利用可能であ
る。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明により処理することができ
る有機ハロゲン化合物としては、有機ハロゲン化合物に
より汚染された土壌、底質、汚泥や水が挙げられる。処
理する汚染物が土壌、汚泥などの固形物である場合、そ
れの含水率は少なくとも25%(wt)以上であること
が好ましい。理想的には、40〜60%(wt)が望ま
しい。これは土壌、汚泥などの内部に外気が入りにく
く、還元状態を維持しやすい条件であり、また還元性の
微生物の増殖にも好適である。なお、この含水率の定義
としては、(水分重量/湿潤土壌重量)×100によっ
て求められる値を含水率(%)として表した。また、前
記汚染物が水の場合には、全部が水であるから、含水率
という問題は無い。
【0028】本発明において処理を行う際には、還元雰
囲気状態を維持することが重要である。この条件は、化
学的脱ハロゲン反応および生物的脱ハロゲン反応の両方
の反応を生じさせる上で必須である。この還元雰囲気状
態を具体的に言うと、酸化還元電位が−100mV以下
の範囲と言うことができる。この酸化還元電位は、測定
方法によってかなりの幅で差があるが、本発明で示す酸
化還元電位値は、全て水素標準電極を比較電極として用
いて測定された場合の標準電位値(Eh)を指すもので
ある。よって、他の測定法で得られる電位値に対しては
本発明で言う酸化還元電位値に換算して比較を行う必要
があることは言うまでもない。
【0029】本発明に用いられる金属粉末等の還元剤の
使用量は汚染物が土壌の場合、土壌1kgあたり0.1
〜200g、好ましくは0.5〜100gであり、また
汚染物が水の場合、水1リットルに対し1〜300g、
好ましくは2〜200gである。いずれの場合も、脱ハ
ロゲン化の対象となる有機ハロゲン化合物の汚染濃度が
50mg/kg(又は50mg/リットル)を越える場
合には、有機ハロゲン化合物1mgに対し0.05〜
0.1gの比率で還元剤の添加量を増加させることが必
要となる。ただしこれはあくまでも理想条件下での数値
であり、実際の汚染現場においては、微生物による酸素
消費が順調に行われなかった場合には還元剤の還元力が
無駄に消耗されることも起こりうる。
【0030】また、雨水や外気による酸素等の供給によ
っても還元力は容易に消耗するため、実施に当たっては
現場で予備試験を行い、現場の条件に合わせて個々に添
加濃度を決定すべきである。なお、ここで言う金属粉末
とは粒子直径が0.001mmから5mmの還元状態の
金属であり、望ましくは0.01mmから1mmの還元
状態の金属である。粒子径は化学的還元反応の速度を支
配し、粒子径が増加するのに比例して単位重量あたりの
還元反応速度は低下するので注意を要する。さらに、粒
子径が1mm以上である場合には金属の種類によっては
金属粒子の表面が比較的厚い酸化膜で覆われる結果、中
心部の還元状態の金属は利用されない可能性が大きい。
また一方、粒子径が0.01mm以下である場合には非
常に酸化速度が速いので、輸送中および混合時に水分と
接触して酸化されてしまう危険性が高くなる。
【0031】使用する還元剤の種類は、上述した標準電
極電位が−445mV以下、−2400mV以上のケイ
素化合物、リン酸化合物、硫黄化合物、重金属、軽金
属、およびそれらの合金の中から環境への影響や作業の
安全性を考慮して任意に選択すればよく、具体的にはカ
ルシウム合金、カルシウム−シリコン合金、アルミニウ
ム合金、アルミニウム−シリコン合金、次亜リン酸塩、
硫化ナトリウム、硫化カリウム、チタン、チタン合金、
チタン−シリコン合金、チタン−アルミニウム合金、マ
ンガン、マンガン合金、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウ
ム、マグネシウム合金、カルシウム、マグネシウム−マ
ンガン合金、亜鉛−アルミニウム合金、アルミニウム−
亜鉛合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アル
ミニウム−スズ合金などが実用的であり、いずれも工業
的に生産されている。中でもカルシウム−シリコン合
金、アルミニウム−シリコン合金、マグネシウム−マン
ガン合金、亜鉛−アルミニウム合金、アルミニウム−亜
鉛合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アルミ
ニウム−スズ合金は単独の金属を使用した場合と較べ安
定な酸化膜を形成しにくく、腐食生成物が付着せずに順
次均一に溶解するので常に新しい金属表面を維持するこ
とができ、有機ハロゲン化合物との接触効率において優
れている。また、チタン、マンガン、マグネシウム、カ
ルシウムはいずれも標準電極電位が−1000mV以下
と非常に低く、汚染物中に存在する酸化鉄を還元して金
属鉄とするだけの電位差を持つ。その結果添加した還元
剤の持つ表面積よりもより多くの表面積において脱ハロ
ゲン化反応が進行することとなり、特に土壌のような固
体物で、有機ハロゲン化合物の移動拡散が制限されてい
る場合には浄化効率が高められる。
【0032】上述した合金の組成については任意に設定
すれば良いが、特に亜鉛−アルミニウム合金については
亜鉛にアルミニウムを0.1〜0.3%程度合金化した
もの、アルミニウム−亜鉛合金についてはアルミニウム
に亜鉛を5%程度合金化したものが酸化還元反応の際に
均一に溶解し、効果的である。またアルミニウム−スズ
合金についてはアルミニウムにスズを1%未満程度合金
化すれば皮膜の形成を完全に抑制できる。また、アルミ
ニウム−シリコン合金についてはアルミニウムにシリコ
ンを14%程度合金化すればアルミニウムとシリコンの
共晶点に相当するので結晶粒が微細となり、また破砕し
て粉末にする場合に延展性がなく細粒化が容易である。
本発明による嫌気脱ハロゲン反応を実際の汚染現場に適
用するに際しては何ら大規模な設備を建設する必要は無
く、対象とする汚染土壌と金属粉末等の還元剤を混合し
た後、水分蒸散や雨水混入の防止、保温の目的で浄化区
域をビニルシ−トで覆うことで十分である。また、水分
蒸散の抑制のため、必要に応じて腐葉土、コンポストも
しくは粘土を土壌表層に敷き詰めることも効果的であ
る。
【0033】本発明による還元脱ハロゲン反応の反応機
構は、現時点では全ては解明されていないが本発明者ら
は以下のように考えている。まず、汚染物中の酸化還元
電位が−100mV以下の還元状態を確保するために、
金属粉末等の還元剤を汚染物に添加して、還元的状態を
作る。金属粉末による還元脱ハロゲン反応の原理に関し
ては、先崎の報告(有機ハロゲン化合物汚染地下水の処
理−金属粉末付着活性炭による低温下での処理技術、
「PPM」、1995年、第5巻、65〜70ペ−ジ)
によれば金属表面において金属の溶出(酸化)と有機ハ
ロゲン化合物の還元脱ハロゲン化反応が共役的に生じる
という反応である。本発明者らはこの反応について鋭意
検討した結果、脱ハロゲン反応は必ずしも金属表面に限
定されず、−1000mV以下の低い酸化還元電位雰囲
気下での還元物質と有機ハロゲン化合物との間の電子の
授受反応によるものであること、有機ハロゲン化合物と
還元剤との電位差が大きければ大きいほど電子の授受が
加速されること、電子の授受を効率良く行うためには還
元剤の表面に水酸化膜などの安定な酸化膜を形成させな
いことが重要であること等の知見を得て本発明に到っ
た。すなわち本発明では還元剤として標準電極電位が低
く、かつ表面が安定な酸化膜で覆われないものを選択し
たため、有機ハロゲンとの還元電位差、接触の効率とも
により有利となり、効率的に還元脱ハロゲン化反応が行
われる効果が得られた。その結果、前記した脱ハロゲン
の反応を完全にハロゲンを含まない有機化合物が主な生
成物として得られるまで急速に進行させることができる
ので、非常に好ましい結果が得られる。
【0034】また、微生物による還元脱ハロゲン化を併
用する場合は還元剤のほかに微生物の増殖基質となる有
機炭素源を添加し中性条件とすることが必要であるが、
その中性条件をpH値で表すとpH5.8〜8.5であ
り、好ましくはpH6〜8であり、さらに好ましくはp
H6.2〜7.8である。この処理を行う場合には、中
性条件を維持するためにpH調整剤を添加することがで
き、そのようなpH調整剤としては、アルカリ金属化合
物やアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましく、
具体的には石灰石、硝石灰、生石灰、硫酸カルシウム、
酸化マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウ
ム、ベントナイト、パ−ライト、ゼオライト等が挙げら
れる。さらに、汚染物の高分子有機物含量が低い及び/
又は微生物が少ない場合には、各種コンポスト、堆肥化
有機物や落葉土、腐植質等、枯葉類を混合させることが
好ましい。これらは、主として微生物添加効果や徐放性
の有機炭素供給源、水分保持に作用するものである。ま
た、悪臭ガスの分解、除去効果も期待できるものであ
る。
【0035】本発明の汚染土壌等の生物的有機ハロゲン
化合物汚染浄化に寄与する嫌気性微生物としては、土壌
中に一般的に存在する酸化態窒素還元活性を有する微生
物を利用すればよく、例えばBacillus属、Pseudomonas
属、Aeromonas 属、Streptococcus 属、Micrococcus 属
などの一般的な微生物が挙げられる。さらに、これらの
微生物は還元剤と併用されるものであるから、還元性の
雰囲気で脱ハロゲン化効率を向上させる嫌気性微生物が
好ましいことは言うまでもないが、特にこれに限定され
るものではない。
【0036】前記の微生物を増殖させるための増殖基質
としては、有機炭素源としてぶどう糖、しょ糖などの糖
類、酢酸、クエン酸、乳酸などの有機酸または有機酸
塩、モラセス廃液、醸造廃液、ビ−ル粕、おから等の有
機性廃液、廃棄物を利用することができる。有機炭素の
添加量は汚染物の持つ酸化力および有機ハロゲン化合物
の汚染濃度を考慮して決定すべきであるが、汚染物が通
常の不飽和土壌である場合、土壌1kgに対して1g程
度の有機炭素が還元状態維持のために必要である。さら
に、脱ハロゲン化の対象となる有機ハロゲン化合物の汚
染濃度が50mg/kgを越える場合には、有機ハロゲ
ン化合物1mgに対し10〜20mgの比率で有機炭素
の添加量を増加させることが必要となる。ただしこれは
あくまでも目安であり、実際の汚染現場においては汚染
物の酸化力だけでなく雨水や空気による酸素等の供給に
よっても有機炭素や上述した還元剤の還元力が消耗され
るため、現場で予備試験を行って個々に添加濃度を決定
すべきである。
【0037】以上のように本発明では標準電極電位が低
く、かつ表面が安定な酸化膜で覆われず溶解し易く効率
的に還元反応が行われる還元剤を添加することにより、
汚染物中の還元状態を安定に維持し、前記した脱ハロゲ
ンの反応を経済的かつ効率的に行うことができるので、
非常に好ましい結果が得られる。また、上述の還元剤と
還元性微生物による生物学的脱ハロゲン化を組合せるこ
とにより、より確実に脱ハロゲン化処理を行うことも可
能である。
【0038】
【実施例】以下に、本発明を実施例により具体的に説明
する。ただしこれら実施例により本発明が限定されるも
のではない。 実施例1 還元剤として(1)金属鉄、(2)マンガン、(3)ア
ルミニウム−シリコン合金、(4)次亜リン酸ナトリウ
ムの4種類を用いたものの比較。各還元剤の標準電極電
位を示す。 還元剤の種類 標準電極電位(mV) (1)金属鉄 − 440 (2)マンガン −1180 (3)アルミニウム−シリコン合金 −1600 (4)次亜リン酸ナトリウム − 499 テトラクロロエチレン(PCE)を150mg/kg含
有するロ−ム質土壌6500g(含水率60%)に対
し、還元剤として(1)金属鉄20g、(2)マンガン
10g、(3)アルミニウム−シリコン合金10g、ま
たは(4)次亜リン酸ナトリウム20g、を添加し、温
度20℃に維持し、以後の状態を測定した。
【0039】(2)と(3)は1時間以内に酸化還元電
位が−500mV以下に低下し、その後10日間−50
0mV以下に維持された。PCEは10日後までに完全
にエチレン、エタンまで脱ハロゲン化された。(4)で
は1時間以内に酸化還元電位が−450mV以下に低下
し、その後10日間−450mV以下に維持された。P
CEは10日後までに完全にエチレン、エタンまで脱ハ
ロゲン化された。これに対して(1)では酸化還元電位
が−400mVに低下するまでに5日間かかり、その後
5日間−400mV以下に維持された。PCEは10日
後までに2割がエチレン、エタンまで脱ハロゲン化され
るに留まった。
【0040】実施例2 (1)還元剤のみの系と、(2)還元剤と有機炭素源を
併用した系の比較 還元剤としてカルシウム−シリコン合金(標準電極電位
−1900mV)を、有機炭素源として酢酸ナトリウム
を使用した。トリクロロエチレン(TCE)が200m
g/kg吸着している粘土質土壌65kg(含水率55
%)に対し、(1)カルシウム−シリコン合金100
g、(2)これに加えて酢酸ナトリウム70gを添加
し、他に栄養塩類7gを添加し、温度20℃に維持し
て、以後の状態を測定した。(1)、(2)ともに1時
間以内に酸化還元電位が−500mV以下に低下した。
(1)は酸化還元電位を10日間−500mV以下に維
持し、その後徐々に酸化状態に移行し40日後までに0
mVまで酸化還元電位が上昇した。TCEは8割がエチ
レン、エタンに還元されたが2割が土壌中に残留した。
これに対し(2)は酸化還元電位を40日間−500m
V以下に維持し、TCEは99.9%がエチレン、エタ
ンに還元された。
【0041】実施例3 本発明により、ハロゲン化芳香族化合物が分解できるこ
とを示す。ペンタクロロフェノール(以下、PCTと略
す。)濃度10mg/kgのローム土壌6kgに金属鉄
20g添加した。系3−1では、更に、表−1に示す硝
酸還元性微生物用培地1リットル添加した。これに対し
て、系3−2では、コントロールとして、水1リットル
を添加した。
【0042】
【表1】
【0043】次いで、混練後28℃に維持し、PCP濃
度及び生成物濃度の変化を調べた。結果を表−2及び表
−3に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】表−2及び3中、TeCP及びCPは、そ
れぞれ、2,3,5,6−テトラクロロフェノール及び
3−クロロフェノールを示す。また、Ehは、標準水素
電極に対する標準電極電位に換算した値である。系3−
1では、系3−2と比較して、ペンタクロロフェノール
が速やかに分解されたことが分かる。系3−1では、ペ
ンタクロロフェノールは、2,3,5,6−テトラクロ
ロフェノール及び/又は3−クロロフェノールを経て、
フェノールに分解されたものと思われる。また、2,
3,5,6−テトラクロロフェノール及び3−クロロフ
ェノールも最終的に脱ハロゲン化され、蓄積されなかっ
た。なお、フェノールは、更に他の化合物に分解された
ものと思われる。
【0047】
【発明の効果】本発明は、有機ハロゲン化合物により汚
染された土壌、底質、汚泥および水等の汚染物から高い
効率でかつ高い分解率で脱ハロゲン化を行うことができ
る。標準電極電位や酸化還元電位が低く、かつ表面が安
定な酸化膜で覆われず、溶解し易い還元剤を用いている
ため、有機ハロゲンとの還元電位差、接触の効率ともに
より有利となり、完全にハロゲンを含まない有機化合物
が主生成物として得られるまで脱ハロゲン反応を急速に
進行させることができる。また、汚染物が粘土質土壌や
固結したシルト質などの透水性の低い物質であった場
合、上述の還元剤と還元性微生物による生物学的脱ハロ
ゲンを組合せることにより、脱ハロゲン化反応も早く行
われ、安定な還元状態のもとにより確実に脱ハロゲン化
処理を行うことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C02F 3/00 C02F 11/02 11/02 11/12 E 11/12

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機ハロゲン化合物の汚染物を浄化する
    方法において、該汚染物に標準電極電位が−445mV
    以下、−2400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合
    物、硫黄化合物、重金属、軽金属、およびそれらの合金
    のいづれかまたはその混合物を添加し、還元条件下で分
    解浄化することを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染物
    の浄化方法。
  2. 【請求項2】 前記標準電極電位が−445mV以下、
    −2400mV以上のケイ素化合物、リン酸化合物、硫
    黄化合物、重金属、軽金属、およびそれらの合金がカル
    シウム−シリコン合金、アルミニウム−シリコン合金、
    鉄−シリコン合金、次亜リン酸塩、硫化ナトリウム、硫
    化カリウム、チタン、マンガン、亜鉛、マグネシウム、
    カルシウム、マグネシウム−マンガン合金、亜鉛−アル
    ミニウム合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、
    アルミニウム−スズ合金のいずれかまたはその混合物で
    あることを特徴とする請求項1記載の有機ハロゲン化合
    物汚染物の浄化方法。
  3. 【請求項3】 該汚染物に、標準電極電位が−445m
    V以下、−2400mV以上のケイ素化合物、リン酸化
    合物、硫黄化合物、重金属、軽金属、およびそれらの合
    金のいずれかまたはその混合物および微生物の増殖基質
    となる有機炭素源を添加し、中性条件下で分解浄化する
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の有機ハロゲン化
    合物汚染物の浄化方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004083129A1 (ja) * 2003-03-18 2004-09-30 Minaki Advance Co. Ltd. 糞尿分解処理剤及び微生物の活性化による糞尿の分解処理方法
JP2014014742A (ja) * 2012-07-06 2014-01-30 Terumu:Kk 1,4−ジオキサンの分解方法
JP2014236779A (ja) * 2013-06-06 2014-12-18 公立大学法人県立広島大学 有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤

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