JPH11169834A - 有機ハロゲン汚染物の浄化方法 - Google Patents

有機ハロゲン汚染物の浄化方法

Info

Publication number
JPH11169834A
JPH11169834A JP22312998A JP22312998A JPH11169834A JP H11169834 A JPH11169834 A JP H11169834A JP 22312998 A JP22312998 A JP 22312998A JP 22312998 A JP22312998 A JP 22312998A JP H11169834 A JPH11169834 A JP H11169834A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
soil
reducing agent
organic
contaminant
added
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP22312998A
Other languages
English (en)
Inventor
Tatsuo Shimomura
達夫 下村
Naoki Seki
直樹 関
Koji Niimura
浩司 新村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ebara Corp
Original Assignee
Ebara Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ebara Corp filed Critical Ebara Corp
Priority to JP22312998A priority Critical patent/JPH11169834A/ja
Publication of JPH11169834A publication Critical patent/JPH11169834A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • Y02W10/12

Landscapes

  • Processing Of Solid Wastes (AREA)
  • Purification Treatments By Anaerobic Or Anaerobic And Aerobic Bacteria Or Animals (AREA)
  • Treatment Of Sludge (AREA)
  • Fire-Extinguishing Compositions (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 硫黄系の悪臭ガスや可燃性ガスの生成、およ
び土壌の過度の変色等を防ぎ、経済的かつ効率的に脱塩
素化を行う方法を提供する。 【解決手段】 有機ハロゲン化合物による汚染物と、少
なくとも有機態炭素を含んだ水溶液と、還元剤とを、p
H中性条件下で均一に混練し、低通気条件下で静置する
ことを特徴とし、前記還元剤が粉末形態であり、前記水
溶液を前記汚染物に添加し、次いで、混合し、そして、
前記還元剤を前記混合物に添加し、次いで、混合するこ
とが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テトラクロロエチ
レン等の有機塩素化合物に代表される有機ハロゲン化合
物によって汚染された土壌、底質、汚泥、水などを原位
置で浄化する方法に関し、特に、化学的並びに生物学的
反応を組み合わせた還元脱ハロゲン反応を利用すること
によって短期間で簡便に当該汚染物質の浄化を達成し、
かつ浄化の過程で周辺環境に対し負荷となりうるような
悪臭、可燃性ガスの発生、および土壌の変色を抑制する
ことを特徴とする有機ハロゲン化合物による汚染物の新
規な浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、テトラクロロエチレン等の有機ハ
ロゲン化合物系溶剤による地下水や土壌への汚染が深刻
な社会問題となっている。土壌、地下水汚染の有効かつ
効率的な除去・無害化方法として、土壌、地下水中の微
生物を活性化させて汚染土壌、地下水を浄化する原位置
浄化技術が現在検討されており、汚染物質の掘削や抽出
の費用がかからないことから低コストで浄化可能な新技
術として期待されている。従来、原位置浄化技術により
テトラクロロエチレン、ペンタクロロフェノール、四塩
化炭素等のハロゲン数の大きい化合物による汚染物(以
下、単に有機ハロゲン汚染物ともいう)の浄化運転を行
う場合には、汚染土壌に還元力を持つ基質を添加し、土
壌を還元状態として嫌気性微生物により還元脱ハロゲン
分解する方法が検討されてきた。
【0003】しかしこの方法は、嫌気性微生物による還
元状態の形成のために数ケ月から1年に及ぶ期間を必要
とし、また脱ハロゲン化反応が途中までしか進行しない
ことが多いという問題点があった。このように脱ハロゲ
ン化反応が途中で停止した場合には、塩化ビニールモノ
マーなどの発癌性物質が蓄積し、逆に環境影響を悪化さ
せる危険性もあった。また、土壌中で硫化水素、メルカ
プタンなどの硫黄系の悪臭ガスや、メタンガスなどの可
燃性ガスが発生する可能性があった。
【0004】有機ハロゲン化合物の原位置浄化方法とし
ては上記のほかに化学反応を用いたものが提案されてい
る(先崎哲夫、有機塩素化合物汚染地下水の処理−金属
鉄付着活性炭による低温下での処理技術、「PPM」、
1995年、第26巻、第5号、64〜70頁)。この
方法は担体に担持した金属鉄と有機ハロゲン化合物によ
る汚染水を接触させ、金属表面において金属の溶出(酸
化)と有機ハロゲン化合物の還元脱ハロゲン化反応を共
役的に生じさせることを特徴とする。なお、この反応は
単純な酸化還元電位の差による還元反応であることか
ら、使用する還元剤としては、金属鉄のほかに金属マン
ガン、ニッケル等の同等の還元電位を持つ金属も同様に
利用可能であることは言うまでもない。この反応により
有機ハロゲン化合物は、密閉容器内の適当な条件下では
完全に脱ハロゲン化することが知られている。しかし実
際に現場の汚染土壌、底質、汚泥、水などに還元剤を添
加した場合には、環境中の酸化物質による金属の酸化、
pHの低下などにより金属が有効に利用されず、酸化還
元電位も不安定であり十分な脱ハロゲン化反応が認めら
れなかった。
【0005】本発明者らは、種々の微生物が多数共存す
る土壌中においては、化学的並びに生物的反応を組み合
わせた還元脱ハロゲン反応が、実用的に有機ハロゲン化
合物を浄化分解することを見いだし、有機ハロゲン化合
物の浄化方法として特許出願を行った(特願平9−25
367号)。この特許出願の内容は、有機ハロゲン化合
物の汚染物を浄化する方法において、該汚染物を還元雰
囲気状態でかつpH中性条件で、従属栄養型嫌気性微生
物の少なくとも1種及び還元剤の存在下で脱ハロゲンさ
せることを特徴とするものである。上記の発明を用いる
ことにより有機ハロゲン化合物を安定した条件下で完全
に脱ハロゲン化し、汚染物を浄化することが可能となっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこの浄化
方法では、添加する微生物の栄養源の組成によっては従
来の方法と同様に土壌中で硫酸還元、メタン発酵等の生
物的還元反応が生じるため、硫化水素、メルカプタンな
どの硫黄系の悪臭ガスや、メタンガスなどの可燃性ガス
が発生する可能性が残っていた。また、土壌が硫化鉄な
どにより黒色に変色する可能性があった。さらに還元剤
と水との反応により可燃性の水素ガスが発生する問題が
あった。
【0007】すなわち、テトラクロロエチレンのような
塩素数の大きい有機塩素化合物(有機ハロゲン化合物)
による汚染物を原位置で効率的かつ経済的に、また周辺
環境に悪臭等の負荷を与えないやり方で浄化する方法が
求められていた。従って本発明は、上記還元脱ハロゲン
反応において副次的に生じる硫黄系の悪臭ガスや可燃性
ガスの生成、および土壌の過度の変色等を防ぎ、原位置
で経済的かつ効率的に脱ハロゲン化を行う方法を提供す
ることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の本発
明の構成により解決された。 (1)有機ハロゲン化合物による汚染物と、少なくとも
有機態炭素を含んだ水溶液と、還元剤とを、pH中性条
件下で均一に混練し、低通気条件下で静置することを特
徴とする有機ハロゲン汚染物の浄化方法。 (2)前記還元剤が粉末形態であり、前記水溶液を前記
汚染物に添加し、次いで、混合し、そして、前記還元剤
を前記混合物に添加し、次いで、混合する前記(1)の
方法。 (3)第1段階として、前記汚染物に基づいて1〜10
vol%の前記水溶液を前記汚染物に添加し、混合する
工程と、次いで、更に少なくとも水分を前記汚染物に一
回または複数回添加し、混合する工程を有する前記
(1)または(2)の方法。
【0009】本発明では、有機ハロゲン化合物(ここで
いうハロゲン化合物とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素
およびこれらの化合物をいう)によって汚染された土
壌、底質、汚泥及び水を処理する方法において、該汚染
物に少なくとも有機態炭素の水溶液と還元剤とを添加
し、pH中性条件下で分解浄化することにより、悪臭等
の発生を防ぎかつ有機ハロゲン化合物の分解を効率化す
ることを特徴とする土壌、地下水汚染の浄化方法とした
ものである。また、このとき少なくとも有機態炭素を含
む水溶液を最終段階として好ましくは汚染物の15〜2
5vol%混練することにより、酸化態窒素還元反応終了時
に有機態炭素源を残留させず、また有機態炭素源消費完
了時に酸化態窒素を残留させないことが可能となり、残
留した有機態炭素源による有機酸発酵やメタン発酵を抑
え、逆に酸化態窒素が残留することによる地下水の酸化
態窒素汚染や還元脱ハロゲン反応の阻害をも防ぐことが
できる。また、酸化態窒素還元反応による窒素ガス発生
により、還元剤と水との反応により発生する水素ガスを
不活性ガスである窒素ガスで希釈し、引火等の危険性を
無くすよう発明したものである。さらに、硫黄分または
硫酸根を含む塩類を添加する成分として加えないことに
より、硫化水素等の硫黄系のガスの発生による悪臭や、
硫化鉄の生成による土壌等の黒変を抑制できる土壌、地
下水汚染浄化方法としたものでもある。
【0010】本発明では、前記還元剤が、鉄−金属鉄、
還元鉄、鋳鉄、カルシウム、鉄−シリコン合金、チタン
合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合金、マ
グネシウム合金、カルシウム合金、マンガン、ニッケ
ル、マグネシウム、銅、亜鉛、及び水溶性化合物からな
る群から選ばれた少なくとも1種である。前記還元剤
が、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位
がー400mV〜ー2400mVである金属物質である
ことが好ましい。本発明の一実施態様としては、還元剤
としては、還元鉄を用いる。鉄粉は通常表面が酸化され
て酸化皮膜が形成されている。これに対して、還元鉄で
は、酸化被膜が少なく、酸化されやすく、反応性が高
い。
【0011】ここで、還元鉄とは、酸化物の還元によっ
て製造された金属鉄の一種をいい、きわめて細かい粉末
状でありきわめて酸化されやすい(化学大辞典2、化学
大辞典編集委員会、共立出版株式会社)。典型的には、
高温下、水素ガスで還元されたものである。酸化鉄が還
元されてもよいが、酸化物は酸化鉄には限られない。還
元鉄には、Feの含有量が90%以上のものがある。例
えば、和光純薬工業株式会社から入手できる。
【0012】本発明の他の実施態様としては、還元剤と
して、鋳鉄も好ましく用いられる。鋳鉄は、安全で、取
り扱いが容易であり、且つ高い浄化率を達成できるから
である。また、鋳物製品の削り屑、即ち、鋳鉄屑が更に
好ましい。削り屑を再利用することができるからであ
る。一般に、鉄鉱石を還元して製造される銑鉄から、さ
らに不純物を除いて産業利用される鉄のうち、炭素濃度
が約2%(重量)以下のものを鋼、これ以上の炭素を含
む物を鋳鉄という(「理化学辞典」第4版 1987
年、第411頁)。鋼は機械的性質に優れているため、
多くの工業製品に加工利用されている。その際に放出さ
れる鋼の削り屑を、ハロゲン化有機化合物で汚染を受け
た物質の浄化方法に用い得るかを検討したところ、その
切削加工には油を用いるため、鋼製品の削り屑には油が
含まれている。これを用いて本発明の有機塩素を化合物
による汚染物の浄化方法を行なおうとすれば、油による
2次汚染を引き起こすおそれがある。これに対し、鋳物
用に用いられる鋳鉄は、切削加工時に油を使用しないの
で、鋳物製品削り屑(鋳鉄屑)は前記鋼製品削り屑のよ
うな2次汚染を引き起こすおそれがない。
【0013】本発明の他の実施態様としては、還元剤と
しては、合金が用いられる。即ち、鉄−シリコン合金、
チタン合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合
金、マグネシウム合金、及び、カルシウム合金も用いら
れる。チタン合金としては、例えば、チタン−シリコン
合金、チタン−アルミニウム合金が挙げられる。亜鉛合
金としては、例えば、亜鉛−アルミニウム合金が挙げら
れる。マンガン合金としては、例えば、マンガン−マグ
ネシウム合金が挙げられる。アルミニウム合金として
は、例えば、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、ア
ルミニウム−スズ合金、アルミニウム−シリコン合金等
が挙げられる。マグネシウム合金としては、例えば、マ
グネシウム−マンガン合金が挙げられる。カルシウム合
金としては、例えば、カルシウム−シリコン合金が挙げ
られる。
【0014】還元剤の作用について、還元鉄の場合で例
示して説明する。金属鉄による嫌気脱ハロゲン化反応の
反応機構は、還元鉄の反応について述べた先崎の報告
(「有機塩素化合物汚染地下水の処理−金属鉄付着活性
炭による低温下での処理技術」、PPM、1995年、
第26巻、第5号、第64〜70頁)によれば、還元鉄
表面にハロゲン化有機化合物の吸着が起こり、同時に還
元鉄表面において金属側と環境側の条件の差異によって
アノードとカソードの分極が生じ、これによって電流が
ながれる。これに伴って、アノードでは鉄が鉄イオンと
なって溶出し、一方、カソードには電子が流入し、脱ハ
ロゲン化反応等の還元反応が生じるものと思われる。 アノード: Fe → Fe2+ + 2e-
【0015】鋳鉄は前記のように炭素濃度2%以上のも
のを言うが、一般には重量で3〜3.5%、容量では1
3〜14%の多量の炭素をグラファイトとして含有して
いる。いわゆるヅクと呼ばれる鋳物製品削り屑(鋳鉄
屑)は、廃棄物として排出される前に、一般にミルで粉
砕されている。その粉砕時に一部のグラファイトは、離
脱して鋳鉄粉の表面に付着する。このためこの鋳鉄粉が
水膜で覆われるとグラファイトがカソードとして作用
し、一方鉄がアノードとして作用し、前記のように電流
が流れ、アノードで鉄が溶出し、カソードで脱ハロゲン
化反応等の還元反応が生じると考えられる。上記合金も
アノードとして作用し、合金が溶出するものと思われ
る。一方、カソードで脱ハロゲン化反応が生じると思わ
れる。また、金属鉄よりも還元力が強い合金の場合に
は、より還元雰囲気を維持し易く、ハロゲン化有機化合
物との電位差がより大きくなり、脱ハロゲン化反応が加
速される。
【0016】さらに、マグネシウム−マンガン合金、亜
鉛−アルミニウム合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウ
ム合金、アルミニウム−スズ合金などの合金を用いる
と、酸化膜や腐食生成物の金属表面への付着を生じない
か、又は付着はしても反応を阻害するような緻密な膜に
はならない(不動態化していない)ため、還元反応によ
り接触効率が低下する問題が生ぜず、浄化反応が効率よ
く行える。また、前記還元剤が、水溶性化合物であるこ
とが好ましい。粉末等の固体を添加する場合と比較して
ハロゲン化有機化合物との接触効率が飛躍的に増大し、
脱ハロゲン化反応が加速される。また、水溶性の還元剤
は土壌等に浸透するため、注入井戸等を用いて還元剤を
注入することができ、物理的な掘削混合作業を必要とし
ない。さらに浄化運転中に還元状態が不安定になった場
合には、汚染物の浸出水を回収して水溶性の還元剤を添
加し、再注入することにより還元状態を容易に回復する
ことも可能である。
【0017】水溶性還元剤としては、有機酸若しくはそ
の誘導体、次亜リン酸若しくはその誘導体、又は、硫化
物塩が挙げられる。有機酸としては、カルボン酸、スル
ホン酸、フェノール若しくはその誘導体等が挙げられ
る。カルボン酸としては、例えば、1〜20の炭素原子
を有し、かつ、水酸基で置換されていてもよい、モノカ
ルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又は、テト
ラカルボン酸が挙げられる。具体的には、蟻酸、酢酸、
クエン酸、シュウ酸、テレフタル酸等が好ましく、特
に、クエン酸、シュウ酸等の2〜10の炭素原子を有す
る脂肪族ジカルボン酸が好ましい。フェノール誘導体と
しては、ポリヒドロキシアリールが好ましい。ポリヒド
ロキシアリールとは、2以上の水酸基で置換されたアリ
ールをいい、アリールとしては、ベンゼン、ナフタレ
ン、アントラセン等が挙げられる。また、ナフタレン、
インデンのように縮合環が形成されていてもよい。ポリ
ヒドロキシアリールとしては、例えば、1,2,3−ト
リヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン
が好ましい。ここで、1,2,3−トリヒドロキシベン
ゼンは、焦性没食子酸、ピロガロールとも呼ばれる。そ
のアルカリ性溶液は、酸素と反応して酸化物を生成す
る。
【0018】有機酸の誘導体としては、塩、エステル、
アミド、酸無水物等が挙げられ、塩が好ましい。反対イ
オンとしては、特に制限がなく、ナトリウムイオン等の
アルカリ金属イオン;カルシウムイオン等のアルカリ土
類金属イオン;鉄イオン、チタンイオン等の遷移金属イ
オン等の無機イオン、又は、テトラアルキルアンモニウ
ムイオン等の有機イオンであってもよい。次亜リン酸の
誘導体としては、塩、エステル等が挙げられ、塩が好ま
しい。反対イオンとしては、特に制限がなく、ナトリウ
ムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン等
のアルカリ土類金属イオン;鉄イオン、チタンイオン等
の遷移金属イオン等の無機イオン、又は、テトラアルキ
ルアンモニウムイオン等の有機イオンであってもよい。
また、前記還元剤が、有機酸又は次亜リン酸と、鉄、チ
タン、亜鉛、マンガン、アルミニウム又はマグネシウム
とからなる塩であってもよい。
【0019】これらの還元剤を添加した場合では、嫌気
的脱ハロゲン化反応で多く報告されている塩化ビニル等
の中間代謝産物の生成・蓄積は全く認められず、反応生
成物はいずれも完全に脱ハロゲン化された物質へと転換
されて気相部へ放出されることがわかった。また、標準
電極電位が金属鉄と同等もしくはそれ以下の還元剤を用
いた場合には、ハロゲン化有機化合物との電位差がより
大きくなり、脱ハロゲン化反応が促進され、好ましい。
【0020】還元剤の使用量は、汚染物が土壌の場合、
土壌100g当たり0.01〜20gが好ましく、更に
好ましくは0.05〜10gである。また汚染物が水の
場合、水100ml当たり0.1〜30gが好ましく、
更に好ましくは0.2〜20gである。いずれの場合
も、脱ハロゲン化の対象となるハロゲン化有機化合物の
汚染濃度が50mg/kg(または50mg/l)を越
える場合には、ハロゲン化有機化合物1mgに対し、
0.05〜0.1gの比率で金属粉末等の還元剤の添加
量を増加させることが必要となる。ただしこれはあくま
でも理想条件下での数値であり、実際の汚染現場におい
ては、微生物による酸素消費が順調に行われなかった場
合には還元剤の還元力がむだに消耗されることも起こり
うる。また、雨水や外気による酸素等の供給によっても
還元剤の還元力は容易に消耗するため、実施に当たって
は現場で予備試験を行い、現場の条件に合わせて個々に
添加濃度を決定すべきである。還元剤と汚染物との接触
効率を高めるために還元剤は粉末状又は溶液状のものが
好ましい。ただし上述した物質の多くは水と反応して容
易に酸化態へ変更するので、その場合は汚染物と還元剤
を直接混合することか、混合する直前に水に溶解させる
ことが望ましい
【0021】還元剤が粉末状の場合には、500μm以
下の粒径を有することが好ましい。粒径が小さい場合に
は、ハロゲン化有機化合物の分解率が向上するためであ
る。また、用途によっては、還元剤は、粒径が0.00
1mmから5mmの粉末であることが好ましく、0.0
1mmから1mmの粉末であることが更に好ましい。粒
子径は化学的還元反応の速度を支配し、粒子径が増加す
るのに比例して単位重量あたりの還元反応速度は低下す
るので注意を要する。さらに、粒子径が5mm以上であ
り、かつ、金属物質である場合には金属粒子の表面が比
較的厚い酸化膜で覆われる結果、中心部の還元状態の金
属は利用されない可能性が大きい。また一方、粒子径が
0.001mm以下である場合には非常に酸化速度が速
いので、輸送中及び混合時に水分と接触して酸化されて
しまう危険性が高くなるからである。なお、還元剤が金
属物質の場合には、粉末の表面が酸化されていても、内
部が還元状態であり酸化されていなければ利用可能であ
る。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明を詳しく説明する。
本発明では、有機ハロゲン化合物による汚染物を浄化す
る。有機ハロゲン化合物による汚染物としてはたとえば
汚染土壌を挙げることができる。たとえばそのような汚
染土壌に、金属粉末等の還元剤と、嫌気性微生物の増殖
基質となるようなグルコース、酢酸塩、モラセス廃液、
醸造廃液等の有機態炭素および栄養塩類(酸化態窒素を
含む)を添加し、土壌中を水で飽和もしくはそれに準じ
る状態とすることにより、汚染土壌中を通常の通気状態
よりは酸素が不足している低通気状態の還元状態とし、
嫌気性微生物により汚染物質である有機ハロゲン化合物
の脱ハロゲン化反応を進行させる。グルコース、酢酸
塩、モラセス廃液、醸造廃液等の有機態炭素はいずれも
水溶液状態で用いるとよい。
【0023】土壌中を水で飽和もしくはそれに準じる状
態にするには、たとえば次のようにするとよい。すなわ
ち、周囲から離隔できるコンクリートピットなどの離隔
手段を形成し、その中に汚染物とともに有機態炭素など
を導入し、水封またはビニールシートなどでその上を覆
う。そして静置する。離隔手段を形成する場所は、原位
置ともいうべき汚染地直近がよい。水封というのは、浄
化槽内で固形成分の上面より更にその上まで高く水を張
ることをいう。水封とビニールシートによる被覆とは、
両者を併用すれば更に効果が上がってよい。この方法で
は通常、増殖基質の組成に応じて土壌中で硫酸還元、メ
タン発酵等の生物的還元反応が生じるため、硫化水素、
メルカプタンなどの悪臭ガスや、メタンガスなどの可燃
性ガスが発生する可能性がある。また、低通気状態の還
元条件下では還元剤と水とが反応することにより水素ガ
スが発生する。さらに、硫酸還元の結果硫化鉄が生成し
て土壌が黒変する場合もある。
【0024】本発明ではこれらの反応を抑制するため
に、栄養塩類中に硝酸塩等の酸化態窒素を水溶液の状態
で添加し、土壌中を酸化態窒素還元反応状態に維持す
る。酸化態窒素塩が共存している状態では、増殖基質で
ある有機態炭素源は主に酸化態窒素還元活性を持つ微生
物によって利用され、メタン発酵や硫酸還元反応は生じ
ないことを土壌を用いた試験により確認している。土壌
からは主に窒素ガスが発生し、水素ガスも発生するもの
の窒素ガスにより希釈されているため、引火爆発等の恐
れがない。さらに栄養塩として添加する物質として硫黄
分もしくは硫酸根を含む塩類を使用しないことにより、
硫化水素、メルカプタン系のガスや硫化鉄の発生をより
確実に抑制することができる。
【0025】ただし単に酸化態窒素塩を過剰に汚染物に
加えた場合は、酸化態窒素塩が有機態炭素の消費後も残
留するため酸化還元電位が+100mV程度までしか低下
せず、還元脱ハロゲン化反応が殆ど進行しなくなるので
注意を要する。また逆に、有機態炭素源の添加量に対し
酸化態窒素塩が極端に不足した場合は、初期の窒素ガス
発生により酸化態窒素塩が消費し尽くされてしまい、そ
の後メタン発酵などの通常の生物的還元反応が生じるこ
ととなる。このため、添加する有機態炭素源と酸化態窒
素塩との比率が重要となる。一般に酸化態窒素還元活性
を持つ微生物として知られるアルカリゲネス・ユートロ
ファスやパラコッカス・デニトリフィカンスでは水溶液
中での酸化態窒素の消費比率は有機態炭素源の40〜5
0wt%であるが、発明者らが各種土壌中で土着菌を用い
て本発明の還元反応を行なわせた結果では、酸化態窒素
を有機態炭素源の20〜50wt%、望ましくは20〜3
0wt%の比率で添加した場合にメタン、硫黄系の悪臭ガ
スの発生がなく、かつ酸化態窒素塩が完全に消失して有
機ハロゲン化合物の完全な脱ハロゲン化が達成された。
【0026】従来、還元脱ハロゲン化反応を進行させる
に当たって酸化態窒素を添加することは、反応を阻害す
るものであると見なされていた(藤田らProc. 8th Inte
rnational Cont. on Anaerobic Digestion, 1997年、第
2巻、492〜499頁)。しかし本発明では、酸化態
窒素と有機態炭素の添加比率を適正に調節することによ
り、酸化態窒素還元活性を持つ微生物を優占化させて硫
黄系の悪臭ガスやメタンなどの可燃性ガスの発生を防
ぎ、かつ汚染物中の還元状態を安定に維持して還元剤の
みでは達成できない安定して効率的な脱ハロゲン化反応
を可能とした。このように本発明は従来の常識を打ち破
る新規な浄化方法であるといえる。
【0027】本発明により処理することができる有機ハ
ロゲン汚染物としては、有機ハロゲン化合物により汚染
された土壌、底質、汚泥や水が挙げられる。処理する汚
染物が土壌、汚泥などの固形物である場合、それの含水
率は少なくとも25Wt%以上であることが好ましい。理
想的には、40〜60Wt%が望ましい。これは目的とす
る微生物の増殖に好適であるとともに、土壌、汚泥など
の内部に外気が入りにくく、還元状態を維持しやすい条
件である。なお、この含水率の定義としては、(水分重
量/湿潤土壌重量)×100によって求められる値を含
水率(%)として表した。また、前記汚染物が水の場合
には、全体が水であるから、含水率という問題を気にす
る必要は無い。
【0028】本発明において処理を行なう際には、還元
雰囲気状態を維持することが重要である。この条件は、
化学的脱ハロゲン反応及び生物的脱ハロゲン反応の両方
の反応を生じさせる上で必須である。この還元雰囲気状
態を具体的に言うと、酸化還元電位が0〜−600mVの
範囲と言うことができる。この酸化還元電位は、測定方
法によってかなりの幅で差があるが、本発明で示す酸化
還元電位値は、金属電極として白金電極、比較電極に飽
和塩化銀電極を用いて測定された場合の電位値を指すも
のである。よって、他の測定法で得られる電位値に対し
ては本発明で言う酸化還元電位値に換算して比較を行な
う必要があることは言うまでもない。
【0029】また、その処理の条件は、pH中性条件で
あることが必要であるが、そのpH中性条件をpH値で
表すとpH5.8〜8.5であり、好ましくはpH6〜
8であり、さらに好ましくはpH6.2〜7.6であ
る。本発明の汚染土壌等の生物的有機ハロゲン化合物汚
染浄化に寄与する嫌気性微生物としては、土壌中に一般
的に存在する酸化態窒素還元活性を有する微生物を利用
すればよく、例えばバチルス(Bacillus)属、シュードモ
ナス(Pseudomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、ス
トレプトコッカス(Streptococcus)属、ミクロコッカス
(Micrococcus)属などの一般的な微生物が挙げられる。
【0030】前記の微生物を増殖させるための増殖基質
としては、有機態炭素源としてブドウ糖、ショ糖などの
糖類、酢酸、クエン酸、乳酸などの有機酸または有機酸
塩、モラセス廃液、醸造廃液、ビール粕、おから等の有
機性廃液、廃棄物を利用することができる。有機態炭素
の添加量は汚染物の持つ酸化力及び有機ハロゲン化合物
の汚染濃度を考慮して決定すべきであるが、汚染物が通
常の不飽和土壌である場合、土壌1kgに対して1g程
度の有機態炭素が還元状態維持のために必要である。さ
らに、脱ハロゲン化の対象となる有機ハロゲン化合物の
汚染濃度が50mg/kg を越える場合には、有機ハロゲン
化合物1mgに対し10〜20mgの比率で有機態炭素の添
加量を増加させることが必要となる。ただしこれはあく
までも目安であり、実際の汚染現場においては汚染物の
酸化力だけでなく雨水や空気による酸素等の供給によっ
ても有機態炭素や後述する還元剤の還元力が消耗される
ため、現場で予備試験を行なって個々に添加濃度を決定
すべきである。
【0031】前記の有機態炭素源に対し、上述したよう
に酸化態窒素を有機態炭素源の20〜50wt%、好まし
くは20〜30wt%の比率で添加する。使用する酸化態
窒素源としては硝酸もしくは硝酸塩(硝酸ナトリウム、
硝酸カリウム、硝酸カルシウム等)を用いることが現実
的である。汚染物中に有機態炭素及び/又は酸化態窒素
が予め存在している場合には、有機態炭素の添加量との
比率を計算し、混合後の最終濃度比率が上記の設定範囲
内となるよう調節することが重要である。
【0032】本発明に用いられる還元剤の種類として
は、金属鉄、金属マンガン、金属ニッケル、金属マグネ
シウム、金属銅などが考えられる。これらの中でも、金
属鉄または金属マンガンは、酸化状態で天然に土壌中に
多く存在しているため、添加しても生態系への影響が少
なく、安全である。また、市販されているため容易に入
手できる。還元剤の使用量は汚染物が土壌の場合、土壌
1kgあたり0.1〜200g、好ましくは0.5〜1
00gであり、また汚染物が水の場合、水1リットルに
対し1〜300g、好ましくは2〜200gである。い
ずれの場合も、脱ハロゲン化の対象となる有機ハロゲン
化合物の汚染濃度が50mg/kg(または50mg/l)を越
える場合には、有機ハロゲン化含物1mgに対し0.05
〜0.1gの比率で還元剤の添加量を増加させることが
必要となる。ただしこれはあくまでも理想条件下での数
値であり、実際の汚染現場においては、微生物による酸
素消費が順調に行なわれなかった場合には還元剤の還元
力が無駄に消耗されることも起こりうる。また、雨水や
外気による酸素等の供給によっても金属の還元力は容易
に消耗するため、実施に当たっては現場で予備試験を行
ない、現場の条件に合わせて個々に添加濃度を決定すべ
きである。
【0033】なお、ここで言う還元剤とは粒子直径が
0.001mmから5mmの還元状態の金属であり、望まし
くは0.01mmから1mmの還元状態、乾燥状態の金属で
ある。表面が酸化されているものも内部が還元状態であ
れば利用可能である。粒子径は化学的還元反応の速度を
支配し、粒子径が増加するのに比例して単位重量あたり
の還元反応速度は低下するので注意を要する。さらに、
粒子径が1mm以上である場合には金属粒子の表面が比較
的厚い酸化膜で覆われる結果、中心部の還元状態の金属
は利用されない可能性が大きい。また一方、粒子径が
0.01mm以下である場合には非常に酸化速度が速いの
で、輸送中及び混合時に水分と接触して酸化されてしま
う危険性が高くなる。
【0034】また、この処理を行なう場合には、pH中
性条件を維持するためにpH調整剤を添加することがで
き、そのようなpH調整剤としては、アルカリ金属化合
物やアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましく、
具体的には石灰石、消石灰、生石灰、硫酸カルシウム、
酸化マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウ
ム、ベントナイト、パーライト、ゼオライト等が挙げら
れる。さらに、汚染物の高分子有機物含量が低い及び/
又は微生物が少ない場合には、各種コンポスト、堆肥化
有機物を混合させることが好ましい。これらは、主とし
て微生物添加効果や徐放性の有機態炭素供給源、水分保
持に作用するものである。また、悪臭ガスの分解、除去
効果も期待できるものである。
【0035】本発明による嫌気脱ハロゲン反応を実際の
汚染現場に適用するに際しては何ら大規模な設備を建設
する必要は無く、対象とする汚染土壌と増殖基質となる
栄養剤、還元剤を混合した後、水分蒸散や雨水混入の防
止、保温、低通気条件を確保する目的で浄化区域をビニ
ルシートで覆うことだけでも十分である。また、水分蒸
散の抑制のため、必要に応じて腐葉土、コンポストもし
くは粘土を土壌表層に敷き詰めることも効果的である。
汚染土壌と増殖基質となる栄養剤、還元剤などの混合
は、たとえば鋼板などで非漏水性のバケットを形成し、
pH中性条件下で均一に混練すればいい。混練は三段階
に分けて行うとよい。第1段階では、汚染物の1〜5vo
l%の比率で酸化態窒素、有機態炭素を含む水溶液を導
入し、均一に混練する。第2段階では該水溶液を追加
し、第1段階と併せて染物の5〜10vol%の比率にす
る。均一に混練し、最終段階では第1、2段階と併せて
汚染物の15〜25vol%となるように更に水溶液を添加
し、混練する。
【0036】本発明による還元脱ハロゲン反応の反応機
構は、現時点では全ては解明されていないが本発明者ら
は以下のように考えている。まず、汚染物中のpH7付
近の中性的、酸化還元電位0〜−600mVの還元状態を
確保するために、還元剤ならびに酸化態窒素還元微生物
の増殖基質となる栄養剤を汚染物に添加して、汚染物中
微生物の増殖反応を利用した還元的状態を作る。この場
合、汚染物中の酸化態窒素還元微生物は速やかに増殖す
るために、化学的脱ハロゲン反応を抑制することは殆ど
なく、生物的脱ハロゲン反応と化学的脱ハロゲン反応は
ほぼ同時に開始する。
【0037】生物的脱ハロゲン反応のメカニズムについ
ては微生物学的、酵素反応学的に十分に追及されている
ものではないために明らかではないが、還元状態での呼
吸反応に直接共役するか、もしくは呼吸反応の最終産物
から電子を受容することにより有機ハロゲン化合物のハ
ロゲンが水素置換され、還元脱ハロゲン化されるものと
考えられる。通常の生物的還元反応においてはメタン生
成微生物や硫酸還元微生物が有効に働くとされている
が、本発明者らは鋭意検討の結果、酸化態窒素還元微生
物を用いても還元剤と組み合わせることにより同様の効
果が得られ、かつ悪臭や着色の問題を回避できることを
見い出した。すなわち、反応開始後の数日間においては
酸化態窒素還元微生物が酸素及び酸化態窒素を電子受容
体として消費しつつ急激に増殖する。この時点では酸化
態窒素が共存しているため生物的な完全脱ハロゲン化反
応は生じないが、部分的脱ハロゲン化反応(例えばテト
ラクロロエチレンの場合、シスジクロロエチレンまでの
脱ハロゲン化)が生じる。
【0038】次いで酸化態窒素が完全に消費されると生
物的な完全脱ハロゲン化反応が開始されるが、この時点
で急激な増殖に必要な可溶性の低分子の有機態炭素源は
ほぼ消費されてしまっているため、その後もメタン発酵
や硫酸還元などの反応は起こらず、増殖した酸化態窒素
還元微生物は還元剤表面で発生する水素、高分子の有機
物、微生物体内に蓄積した還元力などにより穏やかな脱
ハロゲン化反応を進行させるものと考える。この状態は
水田の底部で脱窒反応が生じ、複雑な微生物相により還
元状態が維持されて土壌中の鉄が第一鉄となって青色を
呈している状態と酷似しており、水田耕作が盛んな我が
国の土壌にとってなじみ深い一般的な微生物のみを利用
することができる。この状態は特殊な微生物を用いる場
合と比較して安定であり、微生物の安全性という観点か
らも適当である。
【0039】一方、還元剤による還元脱ハロゲン反応の
原理に関しては、先崎の報告(有機ハロゲン化合物汚染
地下水の処理−還元剤付着活性炭による低温下での処理
技術、「PPM」、1995年、第26巻、第5号、6
4〜70頁)によれば金属表面において金属の溶出(酸
化)と有機ハロゲン化合物の還元脱ハロゲン化反応が共
役的に生じるという反応である。換言すれば、本発明を
化学的脱ハロゲン反応の部分に注目して言えば、汚染物
質の還元的環境を酸化態窒素還元微生物の作用で安定に
確保することによって、金属表面における有機ハロゲン
化合物の脱ハロゲン活性を高く保持することを特徴とし
た発明ということでもある。以上のように本発明では酸
化態窒素還元微生物による生物反応と還元剤による化学
反応を組み合わせることにより、前記した脱ハロゲンの
反応を完全にハロゲンを含まない有機化合物が主な生成
物として得られるまで進行させることができ、かつその
過程において硫黄系の悪臭や汚染物の着色、特殊な微生
物の増殖を抑制することができるので、非常に好ましい
結果が得られる。
【0040】
【実施例】以下に、本発明を実施例により具体的に説明
する。ただしこれら実施例により本発明が限定されるも
のではない。 〔実施例1〕本実施例で記すテトラクロロエチレン(P
CE)汚染土壌浄化実験においては酸化態窒素として表
−1の酸化態窒素還元用微生物培地及び有機態炭素源と
して表−2のメタン生成用微生物培地を用いた。なお、
表−1の培地組成中の硝酸態窒素(酸化態窒素)濃度は
有機態炭素濃度の23%(重量比)に相当する。浄化試
験は室温(12〜23℃)にて30日間実施し、土壌諸
性質の変化状態等(表−3)を測定観測した。pHの測
定は土壌:純水=1:1(Wt)に調整し、東亜電波工業
製pHメータHM−5B型にて測定した。また、酸化還
元電位(ORP)の測定では、土壌:無酸素水=1:1
(Wt)に調整し、セントラル科学製ORPメータUK−
2030にて電極を浸して30分放置後に測定した。
【0041】なお、本実施例で示す酸化還元電位は、金
属電極として白金電極を、比較電極として飽和塩化銀電
極を用いて測定した電位を示す。土壌中塩化エチレン類
の分析は横浜国立大学で開発された方法(宮本健一ら、
「土壌の低沸点有機塩素化合物含有量の測定方法」、水
環境学会誌、1995年、第18巻、第6号、477〜
488頁)に従い、エタノール抽出後にデカンへ転換し
て日立ガスクロマトグラフG-5000型、FlD検出器にて
20%TCP Chromosorb WAW DMCS60-80 mesh カラムにより
分析した。一方、気相中に発生したエチレン、エタンガ
スの測定には、日立ガスクロマトグラフG-5000型、Fl
D検出器にて、Porapack Qカラムにより分析した。さ
らに、気相中に発生した水素、炭酸ガス、メタン、窒素
の測定には、GLサイエンスガスクロマトグラフGC-320
型、TCD検出器にて、Active carbon 30/60またはMo
lecular sieve 13X を使用した。また、土壌中の硝酸態
窒素、亜硝酸態窒素イオン濃度は土壌:純水=1:1
(Wt)に調整した抽出水について、日立陰イオンクロ
マトグラフ2010iを用いて測定を行なった。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】化学工場から採取したPCE汚染土壌(汚
染濃度約25mg/kg−乾燥土壌)について浄化実験を行
なった。実験は、50ml容のバイアル瓶に汚染土壌30
gを分取し、培地、還元剤を以下に示す条件で混合して
30日後におけるPCE分解をはじめとする土壌諸性質
の変化状態等(表−3)を調べた。還元剤としては和光
純薬製の1級還元鉄粉末を使用した。なお、試料調製時
にはバイアル瓶の気相部をへリウムガスで置換した。
【0045】実験条件 汚染土壌30g 汚染土壌30g+水9.0ml十金属鉄0.07g 汚染土壌30g+酸化態窒素還元用微生物培地9.0
ml+金属鉄0.07g 汚染土壌30g+メタン生成用微生物培地9.0ml+
金属鉄0.07g
【0046】試験結果を表−3に示す。これより、メタ
ン生成微生物培地と同様に酸化態窒素還元菌培地を用い
てもPCEをエチレン、エタンヘと脱ハロゲンすること
が可能であり、かつ酸化態窒素還元培地を用いた場合に
は土壌の黒変やメタンガスの発生、メルカプタン系の臭
気の発生を抑制できることが確認された。また、窒素ガ
スが発生することにより発生する水素ガスが希釈される
ことが見いだされた。また、土壌中に酸化態窒素、亜酸
化態窒素の残留は見られなかった。
【0047】一方金属鉄と水のみを添加した系ではpH
が大幅に低下し、酸化還元電位も30日後には+2mVま
で上昇してしまったため十分な還元脱ハロゲン分解を行
なうことができなかった。その結果PCEが一部土壌中
に残留し、エチレンヘの転換率も26%に留まった。こ
れらのことから、還元剤のみを添加した系では長期間に
渡って適当な還元状態を維持することは困難であり、栄
養剤の添加による生物反応と共存させることにより初め
て、安定した分解が可能となることが示された。さら
に、還元剤のみを添加した系ではほぼ100%の濃度の
水素ガスが発生し、爆発の危険性が考えられた。これに
対し酸化態窒素還元用微生物培地を添加した系では窒素
が、メタン生成微生物培地を添加した系では二酸化炭素
が発生して水素ガスを希釈するため、安全性が高いこと
が示された。ただしメタン生成微生物培地を添加した系
では、臭気の発生や土壌の変色が観られた。
【0048】
【表3】
【0049】〔実施例2〕ハロゲン化有機化合物による
汚染物を原位置で浄化する汚染土壌浄化工事を行った。
化学工場敷地から掘削し、コンクリートピット内に貯留
してあるテトラクロロエチレン汚染土壌(平均汚染濃度
約11mg/kg−土壌)について浄化を実施した。本
浄化工事は下記の3つの方法で行った。
【0050】[方法1]コンクリートピット中の汚染土
壌5m3 を非漏水性容器である容積10m3 の鋼板製バ
ケットに、バックホウを使用して投入した。次に、表−
1の酸化態窒素還元用微生物培地と表−2のメタン生成
微生物用培地とを混合した栄養液(以下栄養剤Aとい
う)0.2m3 (土壌の4vol.%)を鋼板製バケッ
トに添加し、バックホウを使用して土壌と栄養剤Aを混
練した。さらに、栄養剤A0.2m 3 (土壌の4vo
l.%)を鋼板製バケットに添加し、バックホウを使用
して土壌と栄養剤Aを混練した。そしてさらに、栄養剤
A0.7m3 (土壌の14vol.%)を鋼板製バケッ
トに添加して、土壌と栄養剤Aとを混合した。土壌と栄
養剤Aが十分に混ざった後、還元鉄を鋼板製バケット中
の土壌に散布し、再度混練を行った。混練した土壌はコ
ンクリートピットに戻した。
【0051】[方法2]コンクリートピット中の汚染土
壌5m3 を前記鋼板製バケットに、バックホウを使用し
て投入した。次に、前記栄養剤A1.1m3 (土壌の2
2vol.%)を鋼板製バケットに添加し、バックホウ
を使用して土壌と栄養剤Aを混練した。土壌と栄養剤A
が十分に混ざった後、還元鉄を鋼板製バケット中の汚染
土壌に散布し、再度混練を行った。混練した土壌はコン
クリートピットに戻した。
【0052】[方法3]コンクリートピット中の汚染土
壌5m3 を前記鋼板製バケットに、バックホウを使用し
て投入した。次に添加15〜20時間前に、表−1の酸
化態窒素還元用微生物培地と表−2のメタン生成微生物
用培地とに還元鉄を懸濁した懸濁液(以下、栄養剤Bと
いう)0.2m3 (土壌の4vol.%)を鋼板製バケ
ットに添加し、バックホウを使用して土壌と栄養剤Bを
混練した。さらに、栄養剤B0.2m3 (土壌の4vo
l.%)を鋼板製バケットに添加し、バックホウを使用
して土壌と栄養剤Bを混練した。そしてさらに、栄養剤
B0.7m3 (土壌の14vol.%)を鋼板製バケッ
トに添加して、これとこれらを十分に混練した。混練し
た土壌はコンクリートピットに戻した。
【0053】方法1〜3で混練した土壌の一部を取り出
して10mmメッシュの篩にかけて、混練後の土壌に含
まれている土壌塊の量を目視により確認した結果、方法
1及び3で行った土壌は土壌塊が土壌量の1〜10%で
あったのに対して、方法2で行った土壌は15〜30%
であり、栄養剤の添加方法並びに混練方法により混練度
合いが異なることが示された。方法1〜3の何れでも、
混練後、外部との酸素の出入りを抑制するために、コン
クリートピット中の土壌の上面全てをビニールシートで
多い、鉄板にてこれを固定した。なお、ビニールシート
で被覆する方法以外に、外部との酸素の出入りを抑制し
土壌内の水分が十分に保たれるように土壌上面から5〜
15cm程度まで水を冠水させ、土壌を水封してもよ
い。
【0054】なお、方法1〜3の何れでも、コンクリー
トピットに土壌を戻しているが、これは、テトラクロロ
エチレン等が流出するのを防止するためである。実際に
は、地中の汚染土壌をバケットに投入し、バケット内で
汚染土壌と栄養液とを混練し、次いで、汚染土壌を除去
した穴に混練物を戻してもよい。あるいは、バケットで
混練せず、現場の地中で混練してもよい。ビニールシー
トによる覆面時から2ヶ月経過後、土壌中のテトラクロ
ロエチレン濃度を測定した。この結果を表−4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】方法1により混練した土壌では、その9
9.8%が分解し、方法2では89%、方法3では62
%が分解した。このことから、方法1のように、栄養剤
を数回に分けて添加して、混練をその都度行う場合に
は、分解率が向上することが分かる。また、方法2のよ
うに、栄養液と土壌とを混練後に、粉末形態の還元剤を
添加する場合には、分解率が向上することが分かる。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように本発明により、テト
ラクロロエチレンのような有機ハロゲン化合物による汚
染を原位置で効率的かつ経済的に、また周辺環境に悪臭
等の負荷を与えないやり方で浄化修復することが可能で
ある。本発明は、有機ハロゲン化合物系溶剤による地下
水、土壌、底質、汚泥等の汚染の浄化方法として広く利
用されていくものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C02F 11/04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機ハロゲン化合物による汚染物と、少
    なくとも有機態炭素を含んだ水溶液と、還元剤とを、p
    H中性条件下で均一に混練し、低通気条件下で静置する
    ことを特徴とする有機ハロゲン汚染物の浄化方法。
  2. 【請求項2】 前記還元剤が粉末形態であり、前記水溶
    液を前記汚染物に添加し、次いで、混合し、そして、前
    記還元剤を前記混合物に添加し、次いで、混合する請求
    項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 第1段階として、前記汚染物に基づいて
    1〜10vol%の前記水溶液を前記汚染物に添加し、
    混合する工程と、次いで、更に少なくとも水分を前記汚
    染物に一回または複数回添加し、混合する工程を有する
    請求項1または2記載の方法。
JP22312998A 1997-10-07 1998-08-06 有機ハロゲン汚染物の浄化方法 Pending JPH11169834A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP22312998A JPH11169834A (ja) 1997-10-07 1998-08-06 有機ハロゲン汚染物の浄化方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27457597 1997-10-07
JP9-274575 1997-10-07
JP22312998A JPH11169834A (ja) 1997-10-07 1998-08-06 有機ハロゲン汚染物の浄化方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11169834A true JPH11169834A (ja) 1999-06-29

Family

ID=26525288

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP22312998A Pending JPH11169834A (ja) 1997-10-07 1998-08-06 有機ハロゲン汚染物の浄化方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11169834A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006198476A (ja) * 2005-01-18 2006-08-03 Penta Ocean Constr Co Ltd 汚染底質の無害化処理方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006198476A (ja) * 2005-01-18 2006-08-03 Penta Ocean Constr Co Ltd 汚染底質の無害化処理方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100477771B1 (ko) 할로겐화 유기화합물에 의한 오염물을 정화하는 방법
US5370801A (en) Method for treating polluted material
Higgins et al. In situ reduction of hexavalent chromium in alkaline soils enriched with chromite ore processing residue
JP3820180B2 (ja) 汚染土壌の浄化方法
EP0436254A1 (en) Treatment of aqueous waste streams
Zhou et al. Removal of Cr from tannery sludge by bioleaching method
RU2133632C1 (ru) Способ обработки загрязненного материала
JP3401191B2 (ja) ハロゲン化有機化合物による汚染物を浄化する方法
JPH10216694A (ja) 有機塩素化合物汚染物の浄化方法
JP2004066195A (ja) 汚染土壌の浄化方法
JPH11169834A (ja) 有機ハロゲン汚染物の浄化方法
JP3919949B2 (ja) 有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法
JP2003071431A (ja) ハロゲン化有機化合物による汚染物を浄化する方法
JPH11239783A (ja) 有機ハロゲン化合物汚染物の脱ハロゲン化浄化方法
JPH11197645A (ja) 有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法
JP2004066193A (ja) 汚染土壌の浄化方法
JPH11235578A (ja) 有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法
JP2003039059A (ja) ハロゲン化有機化合物による汚染物を浄化する方法
KR100290577B1 (ko) 황산화 세균 티오바실러스 티오옥시단스 엠이티 및 이를 이용한 생물학적 중금속 용출방법
Lu et al. The utilization efficiency of hydrogen peroxide on the removal of volatile organic acids in sand columns
JP3698388B2 (ja) 有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法
JP2004097962A (ja) 汚染土壌の浄化方法
Jang et al. Decontamination of heavy metals from dewatered sludge by Acidithiobacillus ferrooxidans
Bansal et al. Potential role of zeolites: Chemical adsorbent for removal of heavy metals in sewage sludge compost
CN115784412A (zh) 一种磷掺杂零价铁改性材料、其制备方法及其高效还原去除污染物的方法