JPH1121903A - 補強土構造体 - Google Patents

補強土構造体

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JPH1121903A
JPH1121903A JP9177399A JP17739997A JPH1121903A JP H1121903 A JPH1121903 A JP H1121903A JP 9177399 A JP9177399 A JP 9177399A JP 17739997 A JP17739997 A JP 17739997A JP H1121903 A JPH1121903 A JP H1121903A
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soil
front wall
earth retaining
slope
earth
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Shigeru Inoguchi
茂 猪口
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Geosystem Co Ltd Japan
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 急勾配の法面を安定して形成することができ
る補強土構造体を提供する。 【解決手段】 略L字状に形成される格子状の土留体の
前壁部の背後に、背後土を収容して土留層を形成し、こ
の土留層を複数積層して一体化し、補強土構造体が構築
される。この状態で、土留体が格子状であるので、上下
に隣接する土留層の背後土がアンカー部を通して関連性
を有し、アンカー部が背後土中に埋設された状態とな
る。このような補強土構造体は、その法面の高さに対応
した荷重に対して少なくとも転倒、滑動、地耐力および
円弧滑りに対する所定の安定性を満たすように、安定計
算されているとともに、各土留層は、前方への引抜きお
よび前壁部の曲げに対する所定の安定性を満たすように
安定計算されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、斜面が崩れ落ちて
崩壊することを防止し、安定した法面を形成するための
補強土構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】図6は、従来技術の盛土構造体1を示す
鉛直断面図である。たとえば道路を敷設する場合に、盛
土構造体1が構築される。盛土構造体1は、たとえば現
地盤2上に砂質土を盛土することによって構築され、こ
の盛土構造体1の上部に、道路が敷設される。この盛土
構造体1は、砂質土を盛土するだけであり、法面3は、
補強されていない。このため、安定した法面3を形成す
るために、法面3の傾斜角が、盛土される土砂の土質に
応じた崩壊角よりも小さくなるように、法面勾配をたと
えば1:1.7などに設定している。
【0003】このような盛土構造体1では、法面勾配を
緩やかに設定しているので、法面3を形成するための領
域幅Lが大きくなり、所定の幅員の道路を敷設しようと
すると、盛土構造体1の幅が大きくなってしまう。しか
しながら、たとえば仮想線で示すような官民境界4が存
在する場合には、図6において官民境界4の左側となる
民間所有の領域にわたって盛土構造体1を構築すること
ができないので、たとえば仮想線で示す位置5に官民境
界を移動させるために、用地買収をしなければならな
い。また、用地買収が不可能、または困難な場合には、
盛土構造体1全体を図6において右方へずらすように平
面線形の変更を必要とし、あるいは、この平面線形の変
更が不可能な場合には、盛土高さを小さくして、縦断面
線形を変更しなければならない。
【0004】図7は、他の従来技術の擁壁補強構造体1
0を示す鉛直断面図である。擁壁補強構造体10は、盛
土構造体1の前述のような問題を解決するために、急勾
配、たとえば1:0.2の法面11を形成することがで
きる構造体であって、現地盤12上に鉄筋コンクリート
から成るもたれ擁壁13を設け、このもたれ擁壁13の
背後に砂質土を収容して構築される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図7に示される擁壁構
造体10では、鉄筋コンクリートから成るもたれ擁壁1
3を用いているので、法面11を緑化することができ
ず、環境保全が困難である。また、もたれ擁壁13を設
ける場合には、そのもたれ擁壁13の体積に対応する量
の土砂が不要となるので、現地盤12の一部を切土した
ときに、切土した土砂をもたれ擁壁13の背後に収容す
る、いわゆる埋め戻しをしても、切土した土砂の一部が
余剰する場合があり、この場合には、余剰した土砂を他
所へ搬出しなければならない。すなわち、現場に搬入さ
れるもたれ擁壁13用のコンクリートによって、切土し
た土砂が余剰する場合があり、現場への搬入および現場
からの搬出の手間が多くなる。
【0006】このように、図7に示される擁壁構造体1
0は、盛土構造体1の問題を解決することはできるけれ
ども、前述のような新たな問題が生じる。このため、従
来から、図6に示す盛土構造体1の問題点、および図7
に示す擁壁構造体10の問題点を同時に解決できる構造
体が望まれている。
【0007】したがって本発明の目的は、急勾配の法面
を安定して形成することができるとともに、環境保全が
可能であり、さらに現場への搬入および現場からの搬出
の手間を少なくすることができる補強土構造体を提供す
ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明
は、前壁部と前壁部の下端部から背後側に屈曲して延び
るアンカー部とを有して略L字状に構成される格子状の
土留体と、この土留体の前壁部の背後に収容される背後
土とを備え、土留体の前方への引抜きおよび前壁部の曲
げに対する所定の耐力を満たす土留層を構成し、この土
留層を複数積層して一体化し、所定の安定条件を満たす
ように構築することを特徴とする補強土構造体である。
【0009】本発明に従えば、略L字状に形成される格
子状の土留体の前壁部の背後に、背後土を収容して土留
層を形成し、この土留層を複数積層して一体化し、補強
土構造体が構築される。この状態で、土留体が格子状で
あるので、上下に隣接する土留層の背後土がアンカー部
を通して関連性を有し、アンカー部が背後土中に埋設さ
れた状態となる。このような補強土構造体は、たとえば
その法面の高さに対応した荷重に対して少なくとも転
倒、滑動、地耐力および円弧滑りに対する安定性の計算
をするなど、所定の安定条件を満たすように、安定計算
されているとともに、各土留層は、土留体の前方への引
抜きおよび前壁部の曲げに対する所定の耐力を満たすよ
うに安定計算および強度計算されている。このように、
土留体を用いて法面を補強しているので、単に土砂を盛
土しただけの構造体に比べて、急勾配の法面を安定して
形成することができ、しかも、前述のように安定計算さ
れるので、可及的に急勾配の法面を安定して形成するこ
とが可能になる。
【0010】また土留体が格子状であるので、前壁部か
ら背後土を露出させることができ、この前壁部から露出
した背後土を利用して、たとえば芝などを植生して、法
面を緑化することができ、環境保全することができる。
土留体が格子状であることによってさらに、背後土中に
埋設されるアンカー部において、周囲の土砂から支圧抵
抗力を受けて、その支圧抵抗力を利用して前壁部の前方
への変位を阻止し、法面を安定しているので、アンカー
部が支圧抵抗力を得ることができる土質の土砂であれ
ば、現場で発生する土砂を背後土として利用することが
可能であり、別途に搬入しなければならない頻度を少な
くすることができる。これに伴って、現場への搬入およ
び現場からの搬出の手間を少なくすることができる。
【0011】さらに前壁部とアンカー部とを有して略L
字状に構成される土留体を用い、背後土を収容して土留
層を構成するので、現場での施工作業は、手間が少なく
短時間で行うことが可能であり、かつ容易である。さら
にまた土留体が格子状であり、軽量であることによって
も、作業が容易であるとともに、人力による作業が可能
である。
【0012】請求項2記載の本発明は、請求項1記載の
発明の構成において、前記各土留層は、一端部が前記前
壁部の上端部に係止され、他端部が前壁部の上端部より
も背後側でアンカー部に係止される係止部材を備えるこ
とを特徴とする。
【0013】本発明に従えば、各土留層は係止部材を備
え、この係止部材によって前壁部の上端部が前方へ変位
することを阻止することができる。これによって、前壁
部の前方への倒れ、および上端部が前方へ変位するよう
な前壁部の曲げを防止することができ、各土留層の安定
性を向上することができる。
【0014】請求項3記載の本発明は、請求項1または
2記載の発明の構成において、前記各土留層は、前記前
壁部の背後側に、少なくとも土留体の分断部分を覆うよ
うに設けられる格子状の背後壁を備えることを特徴とす
る。
【0015】本発明に従えば、各土留層は前壁部の背後
側に背後壁を備え、この背後壁は前壁部の背後側に、少
なくとも土留体の分断部分を覆うように設けられる。こ
れによって、補強土構造体の延在方向に関して分割され
る土留体に、前記延在方向の関連性を与えることができ
る。したがって、土圧を隣接する土留体に分配すること
ができ、1つの土留体に局所的に大きな土圧が作用する
ことを防ぐことができる。しかも、この背後壁は、格子
状であり、法面の緑化の妨げとなることがない。
【0016】請求項4記載の本発明は、請求項1〜3の
いずれかに記載の発明の構成において、前記各土留層
は、前記前壁部の背後側に、背後土の流出を防止するネ
ットを備えることを特徴とする。
【0017】本発明に従えば、各土留層は前壁部の背後
側にネットを備え、このネットによって背後土の流出を
防止することができる。これによって、補強土構造体を
構成する背後土が流出し、補強土構造体の崩壊の原因と
なることを防ぐことができる。
【0018】請求項5記載の本発明は、請求項1〜4の
いずれかに記載の発明の構成において、前記各土留層
は、前記前壁部の背後側に、植物の種子が収納または付
着された植生マットを備えることを特徴とする。
【0019】本発明に従えば、各土留層は前壁部の背後
側に植生マットを備え、この植生マットには、たとえば
芝などの植物の種子が収納または付着されている。これ
によって、植生マットに収納または付着された種子が、
背後土から水分等を吸収し、発芽して成育し、補強土構
造体の法面が緑化される。したがって、法面を緑化する
ための現場での作業は、この植生マットを設けるだけで
よく、現場では、たとえば法面に種子を吹き付けるなど
の手間を要する作業を必要としない。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態の
補強土構造体20を示す断面図である。補強土構造体2
0は、複数の土留層22が現地盤の斜面24に沿って階
段状に積層されて構築される。土留層22は、前壁部2
6と前壁部26の下端部から背後側に屈曲して延びるア
ンカー部28とを有して略L字状に構成される格子状の
土留体30と、この土留体30の前壁部26の背後に収
容される背後土32とを備え、土留体30の前方Aへの
引抜きおよび前壁部26の曲げに対する所定の耐力を満
たすように構成されている。補強土構造体20は、この
ような土留層22を複数積層して一体化し、法面34の
高さHに対応した荷重に対して少なくとも転倒、滑動、
地耐力および円弧滑りに対する所定の安定性を満たすよ
うに構築される。また補強土構造体20は、各土留層2
2のうち少なくとも最下層、本形態においては最下層と
中間の1層とが排水層36とされている。
【0021】図2は補強土構造体20の一部を拡大して
示す断面図であり、図3は補強土構造体20の一部を簡
略化して示す斜視図である。各土留層22は、前述の土
留体30と、背後土32に加えてさらに、背後壁42
と、ネット44と、植生マット46と、係止部材48と
を備える。土留体30は、略L字状であり、相互に間隔
をあけて設けられる複数の縦筋38と、各縦筋38にほ
ぼ垂直に配置され相互に間隔をあけて設けられる複数の
横筋40とを有し、各縦筋38と各横筋40とが相互に
たとえば溶接によって連結されて、前壁部26とアンカ
ー部28とを有する略L状を成す格子状に形成される。
この土留体30は、アンカー部28をほぼ水平に配置
し、前壁部26がほぼ鉛直上方に立上がる状態で、補強
土構造体20の延在方向(図1の紙面に垂直な方向)に
複数設けられる。
【0022】たとえば、各縦筋38にはφ6、φ7.5
またはφ9の鉄筋が用いられ、各縦筋38は150mm
毎に配置される。また各横筋40にはφ6またはφ7.
5の鉄筋が用いられ、各横筋40は225mm毎に配置
される。これらの各縦筋38および各横筋40によって
形成される土留体30は、補強土構造体20の延在方向
(図1の紙面に垂直な方向)の幅が1800mmに選ば
れ、前壁部26の高さが450mmに選ばれ、奥行き
(図1の左右方向)が後述する安定計算に基づいて選ば
れる。
【0023】背後壁42は、土留体30の前壁部26の
背後側に、少なくとも土留体30の分断部分50を覆う
ように設けられる。背後壁42は、略鉛直方向に延び、
相互に間隔をあけて設けられる複数の縦筋52と、各縦
筋52にほぼ垂直に、すなわち水平に設けられ、相互に
間隔をあけて配置される複数の横筋54とを有し、各縦
筋52と横筋54とが相互にたとえば溶接によって連結
されて、平坦状を成す格子状に形成される。
【0024】たとえば、各縦筋52にはφ7.5の鉄筋
が用いられ、各縦筋52は150mm毎に配置される。
また各横筋54にはφ6の鉄筋が用いられ、各横筋54
は70.5mm毎に配置される。これらの各縦筋52お
よび各横筋54によって形成される背後壁42は、幅が
1950mmに選ばれ、高さが423mmに選ばれる。
【0025】ネット44は、土留体30の前壁部26の
背後側に設けられる背後壁42のさらに背後側に設けら
れ、背後土32の前方Aへの流出を防止する。このネッ
ト44は、たとえば高密度ポリエチレンから成り、網目
のピッチは縦および横ともに10mmに選ばれ、幅が4
40mmに選ばれている。
【0026】植生マット46は、たとえばポリエステル
から成る不織布に、植物の種子が付着されて構成され
る。不織布は、幅が500mmに選ばれ、厚みが1.2
mmに選ばれ、透水係数が1.6×10-1cm/sec
に選ばれている。この不織布に付着させる植物の種子に
は、たとえばトールフェスク、クリーピング・レッド・
フェスク、オーチャードグラス、ペレニアルライグラ
ス、レッド・トップ、ウィーピングラブグラス、バヒア
グラス、バーミューダグラス、ヨモギ、メドハギなどが
適宜選択されて用いられる。
【0027】他の形態として、植生マットは、収納袋に
前述のような植物の種子を収納するようにしてもよく、
さらにエステムなどと呼ばれる保水材を種子とともに収
納して、種子の発芽および成育を促進するようにしても
よく、さらに有機質肥料などの肥料を種子とともに収納
して、種子の発芽および成育を促進するようにしてもよ
い。
【0028】係止部材48は、棒状であり、長手方向両
端部が大略的にU字状に曲成されて鉤状に形成されてお
り、長手方向一端部が土留体30の前壁部26の上端部
に配置されている横筋40と縦筋38との交差部に係止
され、長手方向他端部が前壁部26の上端部よりも背後
側でアンカー部28の横筋40と縦筋38との交差部に
係止される。この係止部材48は、2つの係止部48
a,48bが連結部48cに、ネジを利用してそれぞれ
螺合されて連結されており、このネジを利用して各係止
部48a,48bと連結部48cとの連結位置を調節し
て、長さを調節することができる。したがって好適な状
態で、前壁部26の上端部とアンカー体28とを連結す
ることができる。
【0029】背後土32は、土留体30を敷設し、土留
体30のアンカー部28上に盛土するようにして、前壁
部26の背後側に収容される。この背後土32は、補強
土構造体30が格子状の土留体30を用いて面的に補強
するため、適用範囲が広く、基本的に現地発生土を用い
ることができる。背後土32として用いる土砂(以下、
「盛土材」と記す場合がある)のせん断強度が低い場合
には、土留体30のアンカー部28の奥行きが長くなる
ので、好適にはせん断強度の高い土砂を用いることが好
ましく、表1に示すような盛土材が用いられる。
【0030】
【表1】 補強土構造体20に適用される盛土材
【0031】通常、盛土法面は、表2に示すような、盛
土材および盛土高に応じた経験的な標準値が「道路土工
のり面工・斜面安定工指針」(社団法人 日本道路協
会)に基づいて規定される。表2において、勾配(法面
標準勾配)とは基礎地盤(現地盤)の支持力(地耐力)
が充分にあり、基礎地盤からの地下水の流入または浸水
のおそれがなく、水平薄層に敷きならして転圧された盛
土で、必要に応じて侵食の対策(土羽土、植生工、簡易
のり枠、ブロック張工などによる保護工)を施した法面
の安定確保に必要な最急勾配を示す。
【0032】
【表2】 盛土材および盛土高H1に対する標準法面
勾配 1:n
【0033】盛土材が砂質土の場合、通常土質定数とし
ては、盛土材の内部摩擦角φ=30°、盛土材の粘着力
c=0とする場合が多い。この砂質土を使用した盛土
高、すなわち法面の高さHが5mで法面勾配1:nが
1:1.5の盛土に対して、円弧滑り計算を行うと、後
述の式に基づいた安全率FS=0.87となり、表2に
対して整合性が取れないが、これは砂質土の土質定数を
過小評価していると考えられる。実際に表2に示す盛土
材および盛土高Hに対する標準法面勾配で良好に施工さ
れた盛土は、従来からある程度の降雨および地震に耐え
ることができることが認められている。ここでこれらの
常時における円弧滑り安全率は1.2以上あると仮定し
て盛土材毎にせん断定数(土質定数)を算出すると、表
3に示すような値を取る。ここでの盛土材の内部摩擦角
φは、各公的機関の設計指針および設計マニュアルに示
される平均的な値を用いている。補強土構造体20の安
全率を計算するにあたって、盛土材の土質定数は、土質
試験を行って表3に示す値を採用する。
【0034】
【表3】 盛土材のせん断強度定数
【0035】補強土構造体20は、基本的には盛土の中
に一定間隔毎に土留体30を敷設することによって、両
者の間に発生する支圧抵抗力と摩擦抵抗力とで盛土の安
定性を高める補強盛土工法である。したがって補強土構
造体20の設計、すなわち安定計算は、補強盛土工法と
して計算される。この補強土構造体20の安定計算は、
想定される破壊パターン基づいて、次に挙げる事項につ
いて検討し、所定の安全率を確保することができるよう
に計算される。
【0036】1、土留体30の強度、配置の検討 ・土留体30の破断に対する検討 ・土留体30の引抜きに対する検討 ・土留体30の前壁部26の曲げに対する検討 2、補強領域となる土留層22を積層した構造物を疑似
擁壁とした安定検討 ・滑動に対する検討 ・転倒に対する検討 3、補強土構造体20全体での安定検討 ・円弧滑りに対する検討 ・現地盤が軟弱な場合における沈下および液状化に対す
る検討 すなわち、土留体30の所定の耐力である前方への引抜
きおよび前壁部26の曲げに対する検討を含めた土留体
30の強度、配置の検討、さらに補強土構造体20の所
定の安定条件として疑似擁壁用とした安定検討および全
体での検討をする。このような検討は、表4に示す設計
安全率および許容応力度に基づいて成される。
【0037】
【表4】 設計安全率および許容応力度
【0038】図4は、安定計算の一例を示すために模式
的に示す補強土構造体20aの断面図である。ここで
は、図1に示した補強土構造体20の一部である土留層
22を11段積層した補強土構造体22aを例に取り、
対応する各部分に同一の参照符号を付して説明する。こ
の補強土構造体22aは、高さ、すなわち法面34の高
さH=4.95m(0.45m×11段)、壁面勾配、
すなわち法面勾配1:n=1:0.5とする。また盛土
材、すなわち背後土32は砕石を用いてその土質条件
は、内部摩擦角φ=40°、単位体積重量γ=2.0t
f/m3とし、基礎地盤、すなわち現地盤は安定した地
盤とする。
【0039】このような条件に基づいて土圧力を計算す
ると、試行くさび法と同様に滑り面を円弧と考えて、最
大土圧力PAは、
【0040】
【数1】
【0041】となる。ここで、 I:分割片で切られた滑り面の弧長[m] W:分割片の土塊重量[tf/m] c:盛土材の粘着力[tf/m2 ] φ:盛土材の内部摩擦角[°] θ:土留体30の位置での滑り面の交点および滑り円中
心を結ぶ直線と鉛直線との成す角度[°] H:補強土構造体20aの高さ[m] z:各分割片で切られた滑り面50の中点の盛土天端5
2からの深さ[m] b:分割片の幅[m] であり、上式(1)に基づいて求められる最大土圧力P
Aは、2.125tf/mとなる。また主働土圧係数KA
は、
【0042】
【数2】
【0043】となる。次に土留体30の破断に対する検
討をする。土留体30が分担する土圧力Tiが土留体3
0の許容引張力TA以内にあることを確認する。式
(1)により求めた土圧力PAを基に、盛土天端からの
任意の深さに一定垂直間隔ΔHで敷設された土留体30
が分担する土圧力Tiは、
【0044】
【数3】
【0045】となる。ここで、 Ti :i段目の土留体30が分担する単位幅当たりの土
圧力[tf/m] Pi :i段目の土留体位置における水平土圧[tf/m
2 ] ΔH:土留体30の垂直間隔[m](ΔH=0.45
m) である。
【0046】これに対して、許容引張力TAは、 TA = An・σSA・M …(4) となる。
【0047】ここで、 TA :土留体30の許容引張力[tf/m] An :土留体30の縦筋38一本当たりの純断面積[c
2 /本] σSA:土留体30の許容引張応力度 SS400の場合1400kgf/cm2 M :土留体30当たりのの縦筋38の本数 であり、土留体30の縦筋38一本当たりの純断面積A
nは、
【0048】
【数4】
【0049】となる。ここで、 Dl :土留体30の縦筋38の直径[cm] cm :土留体30の腐食代(通常0.1cm) であり、これに基づく判定結果を表5に示す。
【0050】
【表5】 作用する土圧力Tiと許容引張力T
【0051】次に土留体30の引抜きに対する検討をす
る。土留体30の単位幅あたり、すなわち補強度構造体
20の延在方向(図4において紙面に垂直な方向)に単
位長さ(=1m)当たりの引抜き抵抗力Rは、
【0052】
【数5】
【0053】となる。ここで、 Ri :i段目の土留体30の引抜き抵抗力[tf/m
2 ] Rfi:i段目の土留体30の縦筋38と盛土材との摩擦
抵抗力[tf/m2] Rbi:i段目の土留体30の縦筋38の支圧抵抗力[t
f/m2 ] σvi:i段目の土留体30における盛土材の鉛直応力
[tf/m2 ] Dli:i段目の土留体30の縦筋38の直径[mm] cm :土留体の腐食代(=1.00mm) f :摩擦係数=tan(φ/2) φ :盛土材の内部摩擦角[°] Mi :単位幅当たりの縦筋38の本数(=13/1.9
5本/m) D2i:i段目の土留体30の横筋40の直径[mm] γ :盛土材の単位体積重量[tf/m3 ] β :土留体30の横筋40の単位長さ当たりの比率
(=1.8/1.95) N :単位長さ(奥行き)当たりの土留体30の横筋4
0の本数(= 1/0.225[本/mm]) Nq :プランドルの支持力係数 であり、盛土材の内部摩擦角とプランドルの支持力係数
との関係は、表6に示される。
【0054】
【表6】 盛土材の内部摩擦角とプランドルの支持力
係数
【0055】式(6)によって求められる引抜き抵抗力
iに基づて、土留体30の有効長さLeiが、
【0056】
【数6】
【0057】として求まる。ここで Lei:i段目の土留体30の有効長さ[m] FS :引抜きに対する安全率=2.00 Ti :i段目の補強材に作用する土圧力[tf/m] であり、式(7)の演算結果が表7に示される。
【0058】
【表7】 土留体30の有効長さ
【0059】式(7)によって求まる土留体30の有効
長さLeiに基づいて、土留体30の必要長さLiが、 Li = Loi+Lei …(8) として求まる。
【0060】ここで、 Li :i段目の土留体30の必要長さ[m] Loi:i段目の土留体30の主働領域長さ[m] Lei:i段目の土留体30の有効長さ[m] であり、式(8)の演算結果が表8に示される。
【0061】
【表8】 土留体30の必要長さ
【0062】次に土留体30の前壁部26の曲げに対す
る検討をする。本形態では前述のように土留体30の前
壁部26の上端部は、係止部材48によってアンカー部
28に係止されている。ここでは、係止部材48が係止
される土留体30の各横筋40は充分なせん断強度を有
し、さらに前壁部26は上端部および下端部で、支持さ
れているものとみなし、かつ前壁部26の上端部では土
留体30に作用する土圧力の2分の1を支持しているも
のとして、検討する。
【0063】i段目の土留体30に作用する土圧力Ti
は、式(3)によって求められ、この土圧力Tiの2分
の1が係止部材48に引張力TiBとして作用し、この引
張力TiBに抗して係止部材48が前壁部26を支持し、
前壁部26の前方Aへの曲げが阻止されている。したが
って各係止部材48の破断について検討する。係止部材
48に作用する引張力TiBが係止部材48の許容引張力
B以内にあることを確認する。係止部材48に作用す
る引張力TiBは、
【0064】
【数7】
【0065】となる。ここで、 TiB:係止部材48に作用する引張力[tf/m] Ti :i段目の土留体30に作用する引張力[tf/
m] β :係止部材48が水平面と成す角度(本形態では4
5°) ある。これに対して、各係止部材48による前壁部26
の曲げ防止のための許容引張応力TBは、 TB = AB・σSB・MB …(10) となる。
【0066】ここで、 TB :係止部材48による許容引張力[tf/m] AB :係止部材48一本当たりの純断面積[cm2
本] σSB:係止部材48の許容引張応力度 SS400の場合1400kgf/cm2B :土留体30当たりの係止部材48の本数 であり、係止部材48一本当たりの純断面積ABは、
【0067】
【数8】
【0068】となる。ここで、 DB :係止部材48の直径[cm] cB :係止部材48のの腐食代(通常0.1cm) であり、これに基づく判定結果を表9に示す。
【0069】
【表9】 作用する土圧力TiBと許容引張力T
【0070】また他の形態として、係止部材48を用い
ない場合には、前壁部26を片持ちはりとみなして曲げ
強度を検討するようにしてもよい。
【0071】次に外的安定円弧滑りの検討をする。ここ
では土留体30によって補強される領域の背後の裏込め
盛土、および現地盤を含む全ての円弧滑りに対して所定
の滑り安全率が確保できる土留体30の密度および長さ
を決定する。土留体30の引張力の算出をする。定着部
の引抜き抵抗力Tは、
【0072】
【数9】
【0073】となる。ここで、 Tp :引抜き抵抗力[tf/m] Lei:i段目の土留体30の滑り面50より奥の定着長
[m] Ri :i段目の土留体30の引抜き抵抗力[tf/m
2 ] Fs :土留体30の引抜きに対する安全率(=2.0
0) である。
【0074】また土留体30の発揮可能引張強さT
availは、 Tavail = MIN(TA,Tp) …(13) となる。
【0075】ここで、 Tavail:土留体30の発揮可能引張強さ[tf/m] TA :土留体30の設計引張強さ[tf/m] Tp :土留体30の定着部の引抜き抵抗力[tf/m] である。補強度構造体20の天端、すなわち盛土天端5
2からの深さをzとして、土留体30の引張強さの計算
結果を表10に示す。
【0076】
【表10】 土留体30の引張強さ
【0077】土留体30による補強土壁の円弧滑りに対
する安定を検討する。円弧滑りに対する安全率FSは、
【0078】
【数10】
【0079】となる。ここで、 FS :円弧滑りに対する安全率 l :分割片で切られた滑り面の弧長さ[m] W :分割片の土塊重量[tf/m] W’:浮力を考慮した分割片の有効土塊重量[tf/
m] α :各分割片で切られた滑り面の中点および滑り円中
心を結ぶ直線と鉛直線との成す角度[°] c :盛土材の粘着力[tf/m2 ] r :滑り円弧の半径[m] Tavail:土留体30の発揮可能引張強さ[tf/m] θ :土留体位置での滑り面の交点および滑り円中心を
結ぶ直線と鉛直線との成す角度[°] である。円弧滑り安定計算の結果を表11に示す。
【0080】
【表11】 円弧滑りの安定計算結果
【0081】次に疑似擁壁としての検討をする。土留体
30が敷設された補強領域を疑似的に重力式擁壁と仮定
し、これに作用する外力に対して、重力式擁壁と同様な
考え方である安定性を検討する。滑動に対する検討にあ
たって、滑動に対する安全率FSは、
【0082】
【数11】
【0083】となる。ここで、 FS :滑動に対する安全率 Fas:滑動に対する許容安全率 ΣV:疑似擁壁の底面における全鉛直荷重(=18.8
02tf/m) ΣH:疑似擁壁の底面における全水平荷重(=1.58
1tf/m) μ :疑似擁壁の底面と現地盤との摩擦係数(=0.
6) であり、安定していることが確認される。
【0084】転倒に対する検討をする。疑似擁壁のつま
先から合力Gの作用点までの距離dは、
【0085】
【数12】
【0086】となる。ここで、 d :疑似擁壁のつま先から合力Gの作用点までの距
離[m] ΣMr:つま先まわりの抵抗モーメント(=41.59
9tf・m/m) ΣMd:つま先まわりの転倒モーメント(=2.582
tf・m/m) ΣV :疑似擁壁の底面における全鉛直荷重(=18.
802tf/m) である。また偏心距離eは、
【0087】
【数13】
【0088】となる。ここで、 e :合力Gの作用点の底面中央からの偏心距離[m] L :土留体30の長さ(=2.0m) であり、また各縦筋38および各横筋40にφ6の鉄筋
を用いたときの盛土材、 法面勾配1:n、法面高さHに応じた土留体30の長さ
L[m]を表12に示す。
【0089】
【表12】 一般的な土留体30の長さ
【0090】設計においては、このような横断的な構造
計算上の安定を確保することに加えて、構造の細部につ
いても、以下のように配慮することが好ましい。第1
に、補強土構造体20の根入れ深さは30cm以上とす
る。ただし、現地盤が岩盤などの強固な場合で、基礎が
洗掘されることがない場合は、この限りではない。第2
に、土留体30の最小長さは、設計計算によって、安定
上余裕のある場合でも1.5m以上の長さとする。第3
に、垂直距離5m毎(本形態では、11段で4.95
m)に1.5mの奥行き方向の小段を設ける。第4に、
最下段層には、前述のような背後土として砕石(クラッ
シャーランなど)詰めをした排水層36として排水性を
向上する。また垂直距離5m毎(本形態では、11段
毎)に排水層36を設ける。さらに疑似擁壁部と現地盤
の斜面24との間に排水層60を設ける。これによっ
て、排水性を良好にして、土留体30による補強領域へ
の地下水などの浸入を少なくし、安定性を向上すること
ができる。
【0091】このように補強土構造体20,20aは、
安定計算されているので、可及的に急勾配の法面34を
安定して形成することが可能である。また格子状の土留
体30を用いて盛土補強する構成であり、現地発生土の
多くを利用できる。さらに背後壁42を用いて各土留体
30に関連性を与えることができ、補強土構造体20,
20a全体の安定性を向上することができる。しかも背
後壁42は、土留体30の前壁部26のすぐ背後に設け
られるので、背後壁42を介して隣接する土留体30を
強固に連結することができる。また植生マット46のす
ぐ背後に背後土32が収容されるので、植生マット46
に付着または収納される種子が背後土32から水分等を
吸収しやすく、種子の発芽が良好になる。さらに土留層
22は階段状であり、各土留層22に前方A寄りの部分
で上方に露出する領域を形成することが可能であり、作
業者の足場を確保できる。しかもその1段が高さ45c
mであり、昇降も容易である。さらにこの領域には、ツ
ツジなどの低木を植生することも可能であり、法面34
を緑化しやすくなる。
【0092】図5は、補強土構造体の施工手順を示すフ
ローチャートである。補強土構造体20の施工は、まず
ステップa1で、土留体30を敷設し、背後壁42、ネ
ット44、植生マット46および係止部材48の組み立
てをする。掘削および整地が行われる。設計図書に示さ
れる高さ(深さ)まで掘削を行い、現地盤が補強土構造
体20の重量に耐え得るか確認する。この確認を行った
後に、基礎砕石を投入し、敷き均しおよび締固めを行
い、補強土構造体20の設置高さに仕上げる。基礎砕石
の締固めは入念に行い不陸整正を行う。
【0093】土留体30は、相互に150mm間隔をあ
けて設置する。背後壁42は、設置された土留体30の
前壁部26の背後側に全面にわたって設ける。この背後
壁42は、補強土構造体20の延在方向につながりのな
い土留体30同士に関連性を与えて一体化するために、
各土留体30にまたがって設置する。特に関連線を大き
くするために、隣接する各土留体30のセンター間にわ
たって設けることが好ましい。さらに土留体30の縦筋
38間に背後壁42の縦筋52が配置することによって
背後壁42から土留体30に均一かつ効率良く土圧を伝
えることができる。また背後壁42は、縦筋52を前方
A側に配置して、横筋54によって受ける土圧を縦筋5
2に好適に伝えることができるようにし、各背後壁42
同士は、相互に間隔をあけることなく設置する。この背
後壁42は、結束線によって、上側および下側でそれぞ
れ複数箇所、たとえば6箇所結束して、前壁部26に固
定し、背後壁42の移動を防止することができる。
【0094】ネット44は、背後壁42の背後側に全面
にわたって設ける。このネット44は、結束線によっ
て、前壁部26または背後壁42に複数箇所結束して、
前壁部26または背後壁42に固定し、背後壁42の移
動を防止することができる。植生マット46は、ネット
44を固定した後に、結束線によって前壁部26、背後
壁42またはネット44に、複数箇所結束して、前壁部
26、背後壁42またはネット44に固定し、背後壁4
2の移動を防止することができる。係止部材48は、一
端部を前壁部26の最上段の横筋40と縦筋38とが交
差する箇所に係止し、他端部を前壁部26から2本目の
横筋40と縦筋38とが交差する箇所に係止する。この
ように、係止部材48を縦筋38と横筋40との交差部
に係止することによって、係止位置のずれを防止するこ
とができるとともに、縦筋38と横筋40とが相互に離
反してしまうおそれがない。また係止部材48は、前述
ような連結部48cを備える構成であって、長さ調整が
できるので、利便性を有し、さらに前壁部26の勾配を
調整することも可能である。また連結部48cは上部側
に設けられるので、作業者は楽な姿勢で作業することが
可能になり、このような調整作業の作業性に優れてい
る。
【0095】次に盛土材のまき出しおよび敷き均しを行
い、締固めを行うが、土留層22は高さが45cmであ
るので、2回に分けて行う。他の形態として、土留層2
2の高さに応じて、1回または3回以上に分けて行って
もよい。
【0096】ステップa2で、1回目の盛土材のまき出
しおよび敷き均しを行う。このまき出しおよび敷き均し
は、前壁部26から1m以内では人力によって行い、前
壁部26から1mを超える領域では、所定の機械、たと
えばブルドーザおよびバックホウなどによって行う。ま
たまき出しおよび敷き均しは、土工機械5原則に基づい
て行う。このまき出しおよび敷き均しが終了すると、ス
テップa3で、1回目の締固めを行う。この締固めは、
前壁部26から1m以内では人力によってタンパによっ
て入念に行い、前壁部26から1mを超える領域では、
所定の機械、たとえば振動ローラ、タイヤローラなどに
よって行う。また締固めは、土工機械5原則に基づいて
行う。この1回目のまき出しおよび敷き均しならびに締
固めが終了すると、ステップa4およびステップa5
で、前述のステップa2およびステップa3の作業をそ
れぞれ繰り返す。さらに上方に積層される土留層22の
土留体30を設置するための準備をもかねて、不陸整正
および完成時に露出する部分の整地を行う。
【0097】次に、ステップa6で設計高さまで土留層
22積層されたか判断され、設計高さに達すると所定の
天端形状に盛土して補強土構造体20が完成され、作業
を終了し、設計高さに達していないときには、ステップ
a1に戻り、前述の作業を繰り返す。
【0098】また、盛土材の締固めを十分に行うことは
安定性の高い盛土を構築するために必要である。施工管
理基準値および管理頻度の目安を表13に示す。
【0099】
【表13】 盛土材の締固め管理基準値
【0100】さらに次の点を考慮することによって、好
ましい補強土構造体20,20aを構築することができ
る。まず補強土構造体20,20aは盛土材を主体とし
た補強土であるので、使用する盛土材は事前に土質試験
(粒度試験、含水比試験、締固め試験等)をして、盛土
材の特性およびせん断強度を把握することが好ましい。
すなわち安定性を向上できる。次に、補強土構造体2
0,20aの崩壊の大部分は、降雨・地下水・湧水等の
水が浸入するために発生する。したがって、土留体30
が敷設されている範囲には水が侵入しないような図示し
ない地下排水溝を設置して崩壊の可能性を少なく、ある
いは無くすことが好ましい。さらに、現地では、設計条
件を満足する盛土材を使用し、かつ定められた締固め度
を満足するような転圧を行い、設計通りの安定性を得
る。さらに、植生マット46の植物が発芽するための必
須3要件は、水・酸素・温度であり、なお成長するには
さらに光・炭酸ガス・養分の3要件を必要とし、定着す
るには生育基盤の存在が条件となる。したがって、以下
の点に留意することによって緑化が良好になる。第1
に、気温による夏枯れ現象や水不足による乾燥を防止す
る構成を付加する。第2に、背後土32には、排水層3
6を除いては、岩砕や砂利等は避けて植生に適した盛土
材を使用する。また、盛土材のpHは5〜7程度にして
植物の発芽および成育に適した環境にする。
【0101】
【発明の効果】請求項1記載の本発明によれば、略L字
状に形成される格子状の土留体の前壁部の背後に、背後
土を収容して土留層を形成し、この土留層を複数積層し
て一体化し、補強土構造体が構築される。この状態で、
土留体が格子状であるので、上下に隣接する土留層の背
後土がアンカー部を通して関連性を有し、アンカー部が
背後土中に埋設された状態となる。このような補強土構
造体は、たとえばその法面の高さに対応した荷重に対し
て少なくとも転倒、滑動、地耐力および円弧滑りに対す
る安定性の計算をするなど、所定の安定条件を満たすよ
うに、安定計算されているとともに、各土留層は、土留
体の前方への引抜きおよび前壁部の曲げに対する所定の
耐力を満たすように安定計算および強度計算されてい
る。このように、土留体を用いて法面を補強しているの
で、単に土砂を盛土しただけの構造体に比べて、急勾配
の法面を安定して形成することができ、しかも、前述の
ように安定計算されるので、可及的に急勾配の法面を安
定して形成することが可能になる。
【0102】また土留体が格子状であるので、前壁部か
ら背後土を露出させることができ、この前壁部から露出
した背後土を利用して、たとえば芝などを植生して、法
面を緑化することができ、環境保全することができる。
土留体が格子状であることによってさらに、背後土中に
埋設されるアンカー部において、周囲の土砂から支圧抵
抗力を受けて、その支圧抵抗力を利用して前壁部の前方
への変位を阻止し、法面を安定しているので、アンカー
部が支圧抵抗力を得ることができる土質の土砂であれ
ば、現場で発生する土砂を背後土として利用することが
可能であり、別途に搬入しなければならない頻度を少な
くすることができる。これに伴って、現場への搬入およ
び現場からの搬出の手間を少なくすることができる。
【0103】さらに前壁部とアンカー部とを有して略L
字状に構成される土留体を用い、背後土を収容して土留
層を構成するので、現場での施工作業は、手間が少なく
短時間で行うことが可能であり、かつ容易である。さら
にまた土留体が格子状であり、軽量であることによって
も、作業が容易であるとともに、人力による作業が可能
である。
【0104】請求項2記載の本発明によれば、各土留層
は係止部材を備え、この係止部材によって前壁部の上端
部が前方へ変位することを阻止することができる。これ
によって、前壁部の前方への倒れ、および上端部が前方
へ変位するような前壁部の曲げを防止することができ、
各土留層の安定性を向上することができる。
【0105】請求項3記載の本発明によれば、各土留層
は前壁部の背後側に背後壁を備え、この背後壁は前壁部
の背後側に、少なくとも土留体の分断部分を覆うように
設けられる。これによって、補強土構造体の延在方向に
関して分割される土留体に、前記延在方向の関連性を与
えることができる。したがって、土圧を隣接する土留体
に分配することができ、1つの土留体に局所的に大きな
土圧が作用することを防ぐことができる。しかも、この
背後壁は、格子状であり、法面の緑化の妨げとなること
がない。
【0106】請求項4記載の本発明によれば、各土留層
は前壁部の背後側にネットを備え、このネットによって
背後土の流出を防止することができる。これによって、
補強土構造体を構成する背後土が流出し、補強土構造体
の崩壊の原因となることを防ぐことができる。
【0107】請求項5記載の本発明によれば、各土留層
は前壁部の背後側に植生マットを備え、この植生マット
には、たとえば芝などの植物の種子が収納または付着さ
れている。これによって、植生マットに収納または付着
された種子が、背後土から水分等を吸収し、発芽して成
育し、補強土構造体の法面が緑化される。したがって、
法面を緑化するための現場での作業は、この植生マット
を設けるだけでよく、現場では、たとえば法面に種子を
吹き付けるなどの手間を要する作業を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の補強土構造体20を示
す断面図である。
【図2】補強土構造体20の一部を拡大して示す断面図
である。
【図3】補強土構造体の一部を簡略化して示す分解斜視
図である。
【図4】安定計算の一例を示すための補強土構造体20
aの断面図である。
【図5】補強土構造体20の施工手順を説明するための
フローチャートである。
【図6】従来技術の盛土構造体1を示す断面図である。
【図7】他の従来技術の擁壁構造体10を示す断面図で
ある。
【符号の説明】
20,20a 補強土構造体 22 土留層 26 前壁部 28 アンカー部 30 土留体30 34 法面 42 背後壁 44 ネット 46 植生マット 48 係止部材

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前壁部と前壁部の下端部から背後側に屈
    曲して延びるアンカー部とを有して略L字状に構成され
    る格子状の土留体と、この土留体の前壁部の背後に収容
    される背後土とを備え、土留体の前方への引抜きおよび
    前壁部の曲げに対する所定の耐力を満たす土留層を構成
    し、 この土留層を複数積層して一体化し、所定の安定条件を
    満たすように構築することを特徴とする補強土構造体。
  2. 【請求項2】 前記各土留層は、一端部が前記前壁部の
    上端部に係止され、他端部が前壁部の上端部よりも背後
    側でアンカー部に係止される係止部材を備えることを特
    徴とする請求項1記載の補強土構造体。
  3. 【請求項3】 前記各土留層は、前記前壁部の背後側
    に、少なくとも土留体の分断部分を覆うように設けられ
    る格子状の背後壁を備えることを特徴とする請求項1ま
    たは2記載の補強土構造体。
  4. 【請求項4】 前記各土留層は、前記前壁部の背後側
    に、背後土の流出を防止するネットを備えることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載の補強土構造体。
  5. 【請求項5】 前記各土留層は、前記前壁部の背後側
    に、植物の種子が収納または付着された植生マットを備
    えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の
    補強土構造体。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015094169A (ja) * 2013-11-13 2015-05-18 共和ハーモテック株式会社 土留め構造及びその形成方法
JP2015151753A (ja) * 2014-02-14 2015-08-24 大成建設株式会社 もたれ擁壁の施工方法
JP2017141543A (ja) * 2016-02-08 2017-08-17 Jfeスチール株式会社 人工浅場又は干潟
CN113863125A (zh) * 2021-09-29 2021-12-31 中国建筑一局(集团)有限公司 一种用于易滑移边坡的坡上桥梁支撑结构及其施工方法

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