JPH11210767A - 転がり軸受 - Google Patents
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- JPH11210767A JPH11210767A JP1429298A JP1429298A JPH11210767A JP H11210767 A JPH11210767 A JP H11210767A JP 1429298 A JP1429298 A JP 1429298A JP 1429298 A JP1429298 A JP 1429298A JP H11210767 A JPH11210767 A JP H11210767A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 近い将来における予測使用温度である300
℃から400℃でも硬さHRC60以上を確保し、高い
心部靱性と優れた転動疲労寿命特性とを有する高温高速
回転用軸受材料を用いた転がり軸受を提供する。 【解決手段】 内輪1と外輪2との間に複数個の転動体
3を保持器4により転動自在に保持してなる転がり軸受
において、前記内輪1、外輪2のいずれか一方または両
方が、重量%でC≦0.05,0.15≦Si≦1.
0,0.15≦Mn≦1.5,2.5≦Cr≦5.5,
12.5≦(2×Mo+W)≦20,V≦1.5,Co
≦20.0,Ni≦5.0,残部Feおよび不可避不純
物からなり、かつ浸炭または浸炭窒化処理及び二次硬化
処理が施されているとともに、常温における表面硬さが
HRC66以上であり、かつ非浸炭部または非浸炭窒化
部にδ−フェライトを実質的に含まない軸受材料により
形成されていることを特徴とする転がり軸受。
℃から400℃でも硬さHRC60以上を確保し、高い
心部靱性と優れた転動疲労寿命特性とを有する高温高速
回転用軸受材料を用いた転がり軸受を提供する。 【解決手段】 内輪1と外輪2との間に複数個の転動体
3を保持器4により転動自在に保持してなる転がり軸受
において、前記内輪1、外輪2のいずれか一方または両
方が、重量%でC≦0.05,0.15≦Si≦1.
0,0.15≦Mn≦1.5,2.5≦Cr≦5.5,
12.5≦(2×Mo+W)≦20,V≦1.5,Co
≦20.0,Ni≦5.0,残部Feおよび不可避不純
物からなり、かつ浸炭または浸炭窒化処理及び二次硬化
処理が施されているとともに、常温における表面硬さが
HRC66以上であり、かつ非浸炭部または非浸炭窒化
部にδ−フェライトを実質的に含まない軸受材料により
形成されていることを特徴とする転がり軸受。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は転がり軸受に関し、
特に航空機ジェットエンジン、ガスタービン等の高温高
速回転下で使用される転がり軸受の長寿命化に関する。
特に航空機ジェットエンジン、ガスタービン等の高温高
速回転下で使用される転がり軸受の長寿命化に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギーおよび環境問題の観
点から、航空機ジェットエンジン、ガスタービン等の高
効率化が目指されており、軸受の使用条件はより高温高
速化しつつある。従来、高温高速回転用軸受材料として
セミハイス系のAISIM50が用いられてきたが、現
状の使用温度200℃においては軸受として必要な硬さ
HRC60をほぼ確保できるものの、それ以上の高温化
に対しては硬さが不足してくる。近い将来、航空機ジェ
ットエンジン、ガスタービン等の軸受の使用温度は30
0℃から400℃になることが予測されており、この温
度範囲ではAISIM50ではHRC55から59程度
の硬さしか得られず、非常に短寿命となってしまう。し
かも、ジェットエンジンの事故は人命にかかわり、発電
用タービンの事故は大きな社会問題となることから、安
全面でも十分に注意を払わなければならない。従って、
軸受表面のわずかな圧痕や剥離等が直ちに軸受全体の破
壊につながるようなことがあってはならない。
点から、航空機ジェットエンジン、ガスタービン等の高
効率化が目指されており、軸受の使用条件はより高温高
速化しつつある。従来、高温高速回転用軸受材料として
セミハイス系のAISIM50が用いられてきたが、現
状の使用温度200℃においては軸受として必要な硬さ
HRC60をほぼ確保できるものの、それ以上の高温化
に対しては硬さが不足してくる。近い将来、航空機ジェ
ットエンジン、ガスタービン等の軸受の使用温度は30
0℃から400℃になることが予測されており、この温
度範囲ではAISIM50ではHRC55から59程度
の硬さしか得られず、非常に短寿命となってしまう。し
かも、ジェットエンジンの事故は人命にかかわり、発電
用タービンの事故は大きな社会問題となることから、安
全面でも十分に注意を払わなければならない。従って、
軸受表面のわずかな圧痕や剥離等が直ちに軸受全体の破
壊につながるようなことがあってはならない。
【0003】一方において、耐熱性に優れた材料として
セラミックがあるが、転動体としては使用可能であるも
のの、軸との嵌め合いや大型製品に適用した時の信頼性
及び靱性の点等から軸受軌道輪としては適用が難しい。
また、近年AISIM50の炭素含有量を減らし、かつ
組織のバランスを取るためにNiを添加したM50Ni
Lが提案され、使用されつつあるが、心部の靱性は改善
されるものの、表面の高温硬さが不足することは改善さ
れていない。また、特開平7−19252号公報には、
特定の合金組成の高速度鋼に浸炭または浸炭窒化処理を
施すとともに、高速度鋼としては低めの温度で焼入れる
ことにより、300℃から400℃においてもHRC6
0の表面硬さを確保しつつ、AISIM50の2倍以上
の心部靱性を備えた転動用部材が開示されている。しか
し、この高速度鋼には巨大炭化物が存在しており、これ
に応力の集中が生じて転動疲労寿命特性が低下してしま
うという問題を抱えている。
セラミックがあるが、転動体としては使用可能であるも
のの、軸との嵌め合いや大型製品に適用した時の信頼性
及び靱性の点等から軸受軌道輪としては適用が難しい。
また、近年AISIM50の炭素含有量を減らし、かつ
組織のバランスを取るためにNiを添加したM50Ni
Lが提案され、使用されつつあるが、心部の靱性は改善
されるものの、表面の高温硬さが不足することは改善さ
れていない。また、特開平7−19252号公報には、
特定の合金組成の高速度鋼に浸炭または浸炭窒化処理を
施すとともに、高速度鋼としては低めの温度で焼入れる
ことにより、300℃から400℃においてもHRC6
0の表面硬さを確保しつつ、AISIM50の2倍以上
の心部靱性を備えた転動用部材が開示されている。しか
し、この高速度鋼には巨大炭化物が存在しており、これ
に応力の集中が生じて転動疲労寿命特性が低下してしま
うという問題を抱えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上述べてきたよう
に、現状では、今後の高温高速化に十分対応できる表面
硬さを有し、かつ心部靱性が高い長寿命材料は開発され
ていない。そこで本発明は、AISIM50よりも高温
硬さに優れ、近い将来における予測使用温度である30
0℃から400℃でも硬さHRC60以上を確保し、高
い心部靱性と優れた転動疲労寿命特性とを有する高温高
速回転用軸受材料を用いた転がり軸受を提供することを
目的とする。
に、現状では、今後の高温高速化に十分対応できる表面
硬さを有し、かつ心部靱性が高い長寿命材料は開発され
ていない。そこで本発明は、AISIM50よりも高温
硬さに優れ、近い将来における予測使用温度である30
0℃から400℃でも硬さHRC60以上を確保し、高
い心部靱性と優れた転動疲労寿命特性とを有する高温高
速回転用軸受材料を用いた転がり軸受を提供することを
目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明においては、高温
での使用を目的としているため、二次硬化型の材料であ
る必要がある。また、目的とする使用温度400℃で必
要とされる表面硬さH RC60を確保するためには、二
次硬化に寄与する炭化物形成元素であるMoおよびWを
多量に添加する必要があるが、炭化物形成元素を多量に
添加し、かつ、心部に巨大炭化物が析出することを極力
抑えるためには、素材の炭素(C)量を低くする必要が
ある。しかしながら、素材のC量を低くすると、靱性に
有害なδ−フェライトが生成しやすくなるという問題が
生じるため、炭素と同様にδ−フェライトの生成を抑制
する作用のあるCoおよびNiの添加量を調整する必要
がある。本発明者等は、これらの様々な問題を解決する
ため、添加する成分のバランスについて鋭意研究を行っ
て来た結果、本発明を完成するに至った。
での使用を目的としているため、二次硬化型の材料であ
る必要がある。また、目的とする使用温度400℃で必
要とされる表面硬さH RC60を確保するためには、二
次硬化に寄与する炭化物形成元素であるMoおよびWを
多量に添加する必要があるが、炭化物形成元素を多量に
添加し、かつ、心部に巨大炭化物が析出することを極力
抑えるためには、素材の炭素(C)量を低くする必要が
ある。しかしながら、素材のC量を低くすると、靱性に
有害なδ−フェライトが生成しやすくなるという問題が
生じるため、炭素と同様にδ−フェライトの生成を抑制
する作用のあるCoおよびNiの添加量を調整する必要
がある。本発明者等は、これらの様々な問題を解決する
ため、添加する成分のバランスについて鋭意研究を行っ
て来た結果、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明の転がり軸受は、内輪と外輪
との間に複数個の転動体を保持器により転動自在に保持
してなる転がり軸受において、前記内輪、外輪のいずれ
か一方または両方が、重量%でC≦0.05,0.15
≦Si≦1.0,0.15≦Mn≦1.5,2.5≦C
r≦5.5,12.5≦(2×Mo+W)≦20,V≦
1.5,Co≦20.0,Ni≦5.0,残部Feおよ
び不可避不純物からなり、かつ浸炭または浸炭窒化処理
及び二次硬化処理が施されているとともに、常温におけ
る表面硬さがHRC66以上であり、かつ非浸炭部また
は非浸炭窒化部にδ−フェライトを実質的に含まない軸
受材料により形成されていることを特徴とする。
との間に複数個の転動体を保持器により転動自在に保持
してなる転がり軸受において、前記内輪、外輪のいずれ
か一方または両方が、重量%でC≦0.05,0.15
≦Si≦1.0,0.15≦Mn≦1.5,2.5≦C
r≦5.5,12.5≦(2×Mo+W)≦20,V≦
1.5,Co≦20.0,Ni≦5.0,残部Feおよ
び不可避不純物からなり、かつ浸炭または浸炭窒化処理
及び二次硬化処理が施されているとともに、常温におけ
る表面硬さがHRC66以上であり、かつ非浸炭部また
は非浸炭窒化部にδ−フェライトを実質的に含まない軸
受材料により形成されていることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の転がり軸受に関し
て参照して詳細に説明する。本発明の転がり軸受は、図
1に示すように、内輪1と外輪2との間に複数個の転動
体(玉)3を保持器4により転動自在に保持して概略構
成され、構成自体は公知である。本発明においては、内
輪1、外輪2の少なくとも一方が下記に示す合金組成か
らなり、かつ浸炭または浸炭窒化処理及び二次硬化処理
が施されており、それにより常温における表面硬さがH
RC66以上であり、非浸炭部または非浸炭窒化部(以
下、心部と呼ぶ。)にδ−フェライトを実質的に含まな
い軸受材料により形成されている。
て参照して詳細に説明する。本発明の転がり軸受は、図
1に示すように、内輪1と外輪2との間に複数個の転動
体(玉)3を保持器4により転動自在に保持して概略構
成され、構成自体は公知である。本発明においては、内
輪1、外輪2の少なくとも一方が下記に示す合金組成か
らなり、かつ浸炭または浸炭窒化処理及び二次硬化処理
が施されており、それにより常温における表面硬さがH
RC66以上であり、非浸炭部または非浸炭窒化部(以
下、心部と呼ぶ。)にδ−フェライトを実質的に含まな
い軸受材料により形成されている。
【0008】C:C≦0.05 Cは、δ−フェライトの生成を抑制して靱性を向上させ
る効果があるが、十分な心部靱性(破壊靱性)を得るた
めには、心部組織に存在する炭化物を極力減らす必要が
ある。このため、素材のCは0.05%以下とすること
が必要である。好ましくは0.03%以下である。一
方、このCは炭化物を形成して基地をマルテンサイト化
することにより強度を増加させる元素でもあり、本発明
においては、表面部を強化するためにC浸炭あるいは浸
炭窒化処理により導入する。尚、浸炭窒化処理の場合
は、窒素も同意に導入され、表面部をより強化させるこ
とができる。
る効果があるが、十分な心部靱性(破壊靱性)を得るた
めには、心部組織に存在する炭化物を極力減らす必要が
ある。このため、素材のCは0.05%以下とすること
が必要である。好ましくは0.03%以下である。一
方、このCは炭化物を形成して基地をマルテンサイト化
することにより強度を増加させる元素でもあり、本発明
においては、表面部を強化するためにC浸炭あるいは浸
炭窒化処理により導入する。尚、浸炭窒化処理の場合
は、窒素も同意に導入され、表面部をより強化させるこ
とができる。
【0009】Si:0.15≦Si≦1.0 Siは脱酸剤として必要であり、0.2%程度、少なく
とも0.15%添加するが、多量に添加してもその効果
は上がらず、また、あまりに多く含有すると浸炭性およ
び鍛造性を阻害し、かつ、靱性を低下させる恐れがある
ため、上限を1.0%とすることが好ましい。
とも0.15%添加するが、多量に添加してもその効果
は上がらず、また、あまりに多く含有すると浸炭性およ
び鍛造性を阻害し、かつ、靱性を低下させる恐れがある
ため、上限を1.0%とすることが好ましい。
【0010】Mn:0.15≦Mn≦1.5 Mnは脱酸剤として必要であり、0.2%程度、少なく
とも0.15%添加するが、多量に添加してもその効果
は上がらず、また、靱性を低下させる恐れがあるため、
上限を1.5%とすることが好ましい。
とも0.15%添加するが、多量に添加してもその効果
は上がらず、また、靱性を低下させる恐れがあるため、
上限を1.5%とすることが好ましい。
【0011】Cr:2.5≦Cr≦5.5 Crは、析出する炭化物をM3C型の粗大な炭化物から
M7C3型やM23C6 型の微細な炭化物に変える作用があ
り、転動疲労寿命の向上に有効な元素である。その添加
量が2.5%未満では、炭化物をM7C3 型やM23C6型
の微細な炭化物に変える作用を十分に付与することがで
きないため、下限を2.5%とする。しかしながら、あ
まりに多量に含有すると耐焼付き性が低下し、また心部
組織に靱性有害なδ−フェライトが生成し易くなるた
め、上限を5.5%とすることが好ましい。
M7C3型やM23C6 型の微細な炭化物に変える作用があ
り、転動疲労寿命の向上に有効な元素である。その添加
量が2.5%未満では、炭化物をM7C3 型やM23C6型
の微細な炭化物に変える作用を十分に付与することがで
きないため、下限を2.5%とする。しかしながら、あ
まりに多量に含有すると耐焼付き性が低下し、また心部
組織に靱性有害なδ−フェライトが生成し易くなるた
め、上限を5.5%とすることが好ましい。
【0012】 Mo.W:12.5≦(2×Mo+W)≦20 MoおよびWは、高温焼戻しによる二次硬化に寄与し、
最終的に得られる硬さに最も大きな影響を及ぼし、本発
明が目的とする使用温度300〜400℃でH RC60
以上の表面硬さを得るためには、12.5≦(2×Mo
+W)の添加量が必要である。しかしながら、あまりに
多量に含有すると心部組織に靱性に有害なδ−フェライ
トが生成し易くなるため、上限を(2×Mo+W)≦2
0とすることが好ましい。
最終的に得られる硬さに最も大きな影響を及ぼし、本発
明が目的とする使用温度300〜400℃でH RC60
以上の表面硬さを得るためには、12.5≦(2×Mo
+W)の添加量が必要である。しかしながら、あまりに
多量に含有すると心部組織に靱性に有害なδ−フェライ
トが生成し易くなるため、上限を(2×Mo+W)≦2
0とすることが好ましい。
【0013】V:V≦1.5 Vは、焼戻し軟化抵抗を増大し、高高度炭化物を生成し
て高温硬さを増大させ、少量の添加でも耐摩耗性の向上
に有効な元素であり、選択的に添加される。耐摩耗性を
向上させるには、1%程度添加することが好ましい。し
かしながら、あまりに多量に添加量すると靱性が低下す
るため、その添加量は1.5%以下とすることが好まし
い。
て高温硬さを増大させ、少量の添加でも耐摩耗性の向上
に有効な元素であり、選択的に添加される。耐摩耗性を
向上させるには、1%程度添加することが好ましい。し
かしながら、あまりに多量に添加量すると靱性が低下す
るため、その添加量は1.5%以下とすることが好まし
い。
【0014】Co:Co≦20.0 Coは、δ−フェライトの生成を防止するために積極的
に添加される。また、Coは、基地に固溶してCの固溶
量を増加し、高温硬さを増大するため、6%以上添加す
ることが好ましい。しかしながら、あまりに多量に含有
すると返って靱性を低下させる恐れがあること、および
高価であるため、添加量の上限を20.0%とすること
が好ましい。
に添加される。また、Coは、基地に固溶してCの固溶
量を増加し、高温硬さを増大するため、6%以上添加す
ることが好ましい。しかしながら、あまりに多量に含有
すると返って靱性を低下させる恐れがあること、および
高価であるため、添加量の上限を20.0%とすること
が好ましい。
【0015】Ni:Ni≦5.0 Niは、Coと同様にδ−フェライトの生成を防止する
ために有効な元素であり、積極的に添加される。また、
炭化物微細化効果が有るため、好ましくは0.5%以上
添加する。しかしながら、あまりに多量に添加するとA
1 変態点が下がり、焼き鈍し硬さが高くなって被削性を
低下させるため、添加量の上限を5.0%とすることが
好ましい。
ために有効な元素であり、積極的に添加される。また、
炭化物微細化効果が有るため、好ましくは0.5%以上
添加する。しかしながら、あまりに多量に添加するとA
1 変態点が下がり、焼き鈍し硬さが高くなって被削性を
低下させるため、添加量の上限を5.0%とすることが
好ましい。
【0016】また、残部は鉄及び不可避不純物である。
上記した合金組成を有する素材を内輪1、外輪2の形状
に加工した後、浸炭または浸炭窒化処理を施し、次いで
二次硬化処理が施される。浸炭処理、浸炭窒化処理及は
それ自体公知の方法で行うことができるが、浸炭処理ま
たは浸炭窒化処理は800℃以上1200℃未満の温度
で行うことが好ましい。浸炭温度または浸炭窒化温度が
800℃未満の場合には、浸炭速度または浸炭窒化速度
が非常に遅くなり、生産性に劣り、コスト増を招く。一
方、1200℃を越える高温での処理は、心部の靱性が
確保し難くなる。但し、浸炭処理をプラズマ浸炭するこ
とにより、より迅速な浸炭速度を得ることも可能であ
る。この浸炭処理または浸炭窒化処理により、固溶C及
び/または固溶Nを与えることにしたため、心部と表層
部とで固溶C及び/または固溶Nの差が大きくなり、そ
の後の二次硬化のための熱処理後の表面圧縮残留応力が
大きくなる。また、表面圧縮残留応力域の深さもAIS
IM50に比べて非常に大きくなる。従って、高温高速
回転時に発生する高フープ応力に対する抵抗力を増大さ
せることができる。二次硬化処理も公知の方法で行うこ
とができ、1100〜1200℃での焼入れの後、50
0〜600℃で焼戻しを行う。
上記した合金組成を有する素材を内輪1、外輪2の形状
に加工した後、浸炭または浸炭窒化処理を施し、次いで
二次硬化処理が施される。浸炭処理、浸炭窒化処理及は
それ自体公知の方法で行うことができるが、浸炭処理ま
たは浸炭窒化処理は800℃以上1200℃未満の温度
で行うことが好ましい。浸炭温度または浸炭窒化温度が
800℃未満の場合には、浸炭速度または浸炭窒化速度
が非常に遅くなり、生産性に劣り、コスト増を招く。一
方、1200℃を越える高温での処理は、心部の靱性が
確保し難くなる。但し、浸炭処理をプラズマ浸炭するこ
とにより、より迅速な浸炭速度を得ることも可能であ
る。この浸炭処理または浸炭窒化処理により、固溶C及
び/または固溶Nを与えることにしたため、心部と表層
部とで固溶C及び/または固溶Nの差が大きくなり、そ
の後の二次硬化のための熱処理後の表面圧縮残留応力が
大きくなる。また、表面圧縮残留応力域の深さもAIS
IM50に比べて非常に大きくなる。従って、高温高速
回転時に発生する高フープ応力に対する抵抗力を増大さ
せることができる。二次硬化処理も公知の方法で行うこ
とができ、1100〜1200℃での焼入れの後、50
0〜600℃で焼戻しを行う。
【0017】上記の如く特定の合金組成を有し、かつ各
処理が施された軸受材料は、常温における表面硬さがH
RC66以上であり、心部にδ−フェライトを実質的に
含まないものとなる。ここで、「実質的に含まない」と
は、大径部として2μmを越える組織片が存在しないこ
とを意味する。また、この軸受材料は、400℃におけ
る表面硬さもHRC60以上を有しており、将来の予測
使用温度300〜400℃にも十分に対応できる。
処理が施された軸受材料は、常温における表面硬さがH
RC66以上であり、心部にδ−フェライトを実質的に
含まないものとなる。ここで、「実質的に含まない」と
は、大径部として2μmを越える組織片が存在しないこ
とを意味する。また、この軸受材料は、400℃におけ
る表面硬さもHRC60以上を有しており、将来の予測
使用温度300〜400℃にも十分に対応できる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の転がり軸受に関して、実施例
及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明は本実施例
により何ら限定されるものではない。表1に示す合金組
成からなる鋼を作製した。尚、記号A〜Nは本発明の組
成範囲であり、また記号U(従来例)はM50NiL材
である。そして、各鋼毎に、外径φ60×内径φ5.5
×厚さ6mmの寿命試験片を各16枚作製した。試験片
は、旋削加工により、外径φ60×内径φ5.5×厚さ
6.3mmの粗形状にした後、熱処理を行い、平面を片
面0.15mmの取り代で研削を行い、更に、試験面は
ラップ仕上を施して試験に用いた。熱処理条件として
は、930〜950℃で浸炭を行った後、1100〜1
200℃で焼入れを行い、540〜580℃で2時間の
焼戻しを3回行った。尚、記号Uで示す試験片には、1
回目の焼戻しの後、−80℃でサブゼロ処理を施してあ
る。
及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明は本実施例
により何ら限定されるものではない。表1に示す合金組
成からなる鋼を作製した。尚、記号A〜Nは本発明の組
成範囲であり、また記号U(従来例)はM50NiL材
である。そして、各鋼毎に、外径φ60×内径φ5.5
×厚さ6mmの寿命試験片を各16枚作製した。試験片
は、旋削加工により、外径φ60×内径φ5.5×厚さ
6.3mmの粗形状にした後、熱処理を行い、平面を片
面0.15mmの取り代で研削を行い、更に、試験面は
ラップ仕上を施して試験に用いた。熱処理条件として
は、930〜950℃で浸炭を行った後、1100〜1
200℃で焼入れを行い、540〜580℃で2時間の
焼戻しを3回行った。尚、記号Uで示す試験片には、1
回目の焼戻しの後、−80℃でサブゼロ処理を施してあ
る。
【0019】
【表1】
【0020】次に、試験片の表面硬さ、および心部組織
の調査を行った。心部組織の調査は、各鋼種1枚の試験
片を切断し、断面組織について調査を行った。その調査
結果を、表2に示す。心部組織の評価としては、光学顕
微鏡により観察を行い、非浸炭部に粒径2μmを越える
炭化物が認められた場合を「×」、それ以外を「○」と
して示している。心部δ−フェライトについても、光学
顕微鏡により観察を行い、非浸炭部にδ−フェライトが
認められない場合を「○」、δ−フェライトが認められ
た場合を「×」で示している。
の調査を行った。心部組織の調査は、各鋼種1枚の試験
片を切断し、断面組織について調査を行った。その調査
結果を、表2に示す。心部組織の評価としては、光学顕
微鏡により観察を行い、非浸炭部に粒径2μmを越える
炭化物が認められた場合を「×」、それ以外を「○」と
して示している。心部δ−フェライトについても、光学
顕微鏡により観察を行い、非浸炭部にδ−フェライトが
認められない場合を「○」、δ−フェライトが認められ
た場合を「×」で示している。
【0021】
【表2】
【0022】表2より明らかなように、本発明例である
記号A〜Nは、常温における表面硬さがHRC66以上
と高く、しかも心部組織に2μmを越える炭化物、及び
δ−フェライトは認められなかった。
記号A〜Nは、常温における表面硬さがHRC66以上
と高く、しかも心部組織に2μmを越える炭化物、及び
δ−フェライトは認められなかった。
【0023】続いて、心部に異常が認められなかった鋼
種について、寿命試験を行った。試験には、森式スラス
ト型転がり寿命試験機を用い、下記条件にて行った。 面 圧:5.5GPa 回転数:1000rpm 潤滑油:Ro150(142cSt/40℃) 油 温:130℃ 尚、試験は、SUS420J2鋼粉を300ppm混入
した異物混入条件下で剥離が生じるまで行い、剥離が生
じるまでの応力繰り返し数を寿命とし、各鋼種それぞれ
15個の試験片について試験を行い、ワイブルブロット
することにより累積破損確率が10%となるL10寿命を
求め、表2に示した。尚、応力繰り返し数が3×107
を越えても剥離が生じない場合は、試験を打ち切った。
表2に示す通り、本発明例である記号A〜Nは、L10寿
命が何れも30.0×106 以上であり、従来例である
記号Uに比べ非常に長寿命である。また、Crが本発明
の下限を満たしていない比較例である記号Oは、表面に
粗大で脆弱なM3C型の炭化物が析出しているため、短
寿命となっている。W当量が本発明の下限を満たしてい
ない比較例である記号Qおよび記号Rは、表面硬さが不
足しているため、寿命向上の効果が不足している。
種について、寿命試験を行った。試験には、森式スラス
ト型転がり寿命試験機を用い、下記条件にて行った。 面 圧:5.5GPa 回転数:1000rpm 潤滑油:Ro150(142cSt/40℃) 油 温:130℃ 尚、試験は、SUS420J2鋼粉を300ppm混入
した異物混入条件下で剥離が生じるまで行い、剥離が生
じるまでの応力繰り返し数を寿命とし、各鋼種それぞれ
15個の試験片について試験を行い、ワイブルブロット
することにより累積破損確率が10%となるL10寿命を
求め、表2に示した。尚、応力繰り返し数が3×107
を越えても剥離が生じない場合は、試験を打ち切った。
表2に示す通り、本発明例である記号A〜Nは、L10寿
命が何れも30.0×106 以上であり、従来例である
記号Uに比べ非常に長寿命である。また、Crが本発明
の下限を満たしていない比較例である記号Oは、表面に
粗大で脆弱なM3C型の炭化物が析出しているため、短
寿命となっている。W当量が本発明の下限を満たしてい
ない比較例である記号Qおよび記号Rは、表面硬さが不
足しているため、寿命向上の効果が不足している。
【0024】続いて、試験片表面の高温硬さを測定し
た。その結果を図2に示すが、本発明例である記号A〜
Nは、540℃以上という高温で二次硬化することによ
り、常温でHRC66以上の高い表面硬さを有している
ため、温度400℃においてもHRC60を越える硬さ
を維持していることが分かる。しかしながら、比較例で
ある記号Qおよび記号Rは、温度400℃ではHRC5
8以下に軟化しており、従来例である記号Uと同等の表
面硬さしか得られない。
た。その結果を図2に示すが、本発明例である記号A〜
Nは、540℃以上という高温で二次硬化することによ
り、常温でHRC66以上の高い表面硬さを有している
ため、温度400℃においてもHRC60を越える硬さ
を維持していることが分かる。しかしながら、比較例で
ある記号Qおよび記号Rは、温度400℃ではHRC5
8以下に軟化しており、従来例である記号Uと同等の表
面硬さしか得られない。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
近い将来における予測使用温度である300℃から40
0℃でも硬さHRC60以上を確保し、高い心部靱性と
優れた転動疲労寿命特性とを有する高温高速回転用軸受
材料を用いた転がり軸受を提供することができる。
近い将来における予測使用温度である300℃から40
0℃でも硬さHRC60以上を確保し、高い心部靱性と
優れた転動疲労寿命特性とを有する高温高速回転用軸受
材料を用いた転がり軸受を提供することができる。
【図1】本発明に係る転がり軸受を説明するための概略
断面図である。
断面図である。
【図2】実施例において、温度を変えて硬さを測定した
結果を示すグラフである。
結果を示すグラフである。
1 内輪 2 外輪 3 転動体(玉) 4 保持器
Claims (1)
- 【請求項1】 内輪と外輪との間に複数個の転動体を保
持器により転動自在に保持してなる転がり軸受におい
て、前記内輪、外輪のいずれか一方または両方が、重量
%でC≦0.05,0.15≦Si≦1.0,0.15
≦Mn≦1.5,2.5≦Cr≦5.5,12.5≦
(2×Mo+W)≦20,V≦1.5,Co≦20.
0,Ni≦5.0,残部Feおよび不可避不純物からな
り、かつ浸炭または浸炭窒化処理及び二次硬化処理が施
されているとともに、常温における表面硬さがHRC6
6以上であり、かつ非浸炭部または非浸炭窒化部にδ−
フェライトを実質的に含まない軸受材料により形成され
ていることを特徴とする転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1429298A JPH11210767A (ja) | 1998-01-27 | 1998-01-27 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1429298A JPH11210767A (ja) | 1998-01-27 | 1998-01-27 | 転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11210767A true JPH11210767A (ja) | 1999-08-03 |
Family
ID=11857026
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1429298A Pending JPH11210767A (ja) | 1998-01-27 | 1998-01-27 | 転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11210767A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017508060A (ja) * | 2013-12-02 | 2017-03-23 | エラスティール | 鋼合金およびそのような鋼合金を含む部品 |
FR3078978A1 (fr) * | 2018-03-14 | 2019-09-20 | Aubert & Duval | Composition d'acier |
CN110423955A (zh) * | 2019-07-29 | 2019-11-08 | 中国航发北京航空材料研究院 | 表层超硬化型超高强度耐热齿轮轴承钢及制备方法 |
CN114032470A (zh) * | 2022-01-07 | 2022-02-11 | 北京科技大学 | 一种渗碳轴承钢及其制备方法 |
-
1998
- 1998-01-27 JP JP1429298A patent/JPH11210767A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017508060A (ja) * | 2013-12-02 | 2017-03-23 | エラスティール | 鋼合金およびそのような鋼合金を含む部品 |
FR3078978A1 (fr) * | 2018-03-14 | 2019-09-20 | Aubert & Duval | Composition d'acier |
WO2019186016A1 (fr) * | 2018-03-14 | 2019-10-03 | Aubert & Duval | Composition d'acier |
CN110423955A (zh) * | 2019-07-29 | 2019-11-08 | 中国航发北京航空材料研究院 | 表层超硬化型超高强度耐热齿轮轴承钢及制备方法 |
CN114032470A (zh) * | 2022-01-07 | 2022-02-11 | 北京科技大学 | 一种渗碳轴承钢及其制备方法 |
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