JPH11209194A - 複合硬質膜、その膜の形成方法および耐摩耗性部品 - Google Patents

複合硬質膜、その膜の形成方法および耐摩耗性部品

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JPH11209194A
JPH11209194A JP1086298A JP1086298A JPH11209194A JP H11209194 A JPH11209194 A JP H11209194A JP 1086298 A JP1086298 A JP 1086298A JP 1086298 A JP1086298 A JP 1086298A JP H11209194 A JPH11209194 A JP H11209194A
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JP
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diamond particles
composite hard
substrate
composite
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JP1086298A
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Yoshinori Irie
美紀 入江
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材との密着性にすぐれたダイヤモンド粒子
を複合させた耐摩耗性硬質膜を得る。 【解決手段】 4a、5a、6a族及びFe、Coのう
ち少なくとも一種類の窒化物、炭化物、酸化物、炭窒化
物、ホウ化物よりなる粒状の鋳型物質と、ダイヤモンド
粒子が50体積%未満となるように複合されている。そ
のダイヤモンド粒子の粒径が30nm以下で、ダイヤモ
ンド粒子の粒界が前記鋳型物質と接している。炭化タン
グステン(WC)基超硬合金、セラミックス、サーメッ
ト、高速度鋼の基材上に、若しくは該基材の表面上に形
成したの中間層の表面上に、その複合硬質膜を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複合硬質膜とその
形成方法に関する。より詳細には、本発明は、高硬度
化、及び耐摩耗性等の表面保護機能向上のため、各種工
具、機械部品等の基材表面の耐磨耗性を著しく向上させ
ることができると同時に、基材に形成された硬質膜と基
材との密着力を高めた新規な硬質膜とそれを形成するた
めの方法に関する。また、本発明は、複合硬質膜を表面
に形成された耐摩耗性部品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、切削工具や耐摩耗工具におけ
る耐摩耗性等の表面保護機能の改善のため、前記工具の
炭化タングステン(WC)基超硬合金、サーメット、セ
ラミックス、高速度鋼等の基材の表面に、PVD法(P
hysical VaporDepositionの
略、物理的気相蒸着法)やCVD法(Chemical
Vapor Depositionの略、化学的気相蒸
着法)によって、Ti(チタン)、Hf(ハフニウ
ム)、Zr(ジルコニウム)の炭化物、窒化物または炭
窒化物、あるいはAlの酸化物からなる少なくとも一層
以上の積層膜である硬質膜を形成している。
【0003】一方、ダイヤモンドは、高硬度であること
が知られており、工具材料として使用できるのではとの
期待がある。そこで、工具全体に、または工具の部位の
中で高硬度、及び高硬度がもたらす耐摩耗性が必要であ
るところに、高圧法などによって作製したダイヤモンド
粒子を焼結法によって所望の形状に固めたものが利用さ
れている。
【0004】しかし、この方法では、焼結のためのバイ
ンダーが存在していること、ダイヤモンド粒子同志のバ
インダーを介した結合力が弱いことなどより、ダイヤモ
ンド本来の特性を発揮した工具とはなっていない。
【0005】このバインダーの影響を受けない点では、
CVD法によって基材上にダイヤモンド硬質膜を作製し
耐磨耗性等を向上させる試みが有利である。この場合、
表面のダイヤモンド硬質膜内では、ダイヤモンド粒子は
相互に強く結合しており、その硬度は単結晶ダイヤモン
ドには劣るものの、焼結法に比べると向上している。し
かし、CVD法においてダイヤモンド粒子を析出するた
めに必要な温度は700℃以上という高温であるので、
基材が熱の影響で軟化したり、脆化したりする心配があ
る。
【0006】また、ダイヤモンド硬質膜と基材との熱膨
張係数の差が大きい状況では、基材にダイヤモンド硬質
膜を形成後、常温への冷却時に、基材とダイヤモンド硬
質膜との界面でダイヤモンド硬質膜の剥離が生じる場合
もある。
【0007】したがって、特にドリル、エンドミル、フ
ライス用スローアウェイチップ等の高硬度、さらには耐
摩耗性が要求される切削工具に対しては、一般に硬質膜
の形成過程で基材の温度が高くならないPVD法を用い
て耐磨耗性の硬質膜が基材に形成される。一方、硬質膜
と基材との熱膨張係数の差を大きくしないために、T
i、Hf、Zrなどの窒化物を主成分とする耐磨耗性の
硬質膜がもっとも普及している。
【0008】CVD法の問題点である硬質膜の形成時の
高温については、PVD法による硬質膜の形成で解決す
ることができる。しかし、PVD法では、析出してくる
炭素はアモルファスであり、ダイヤモンド粒子は得られ
ていない。そして、PVD法でダイヤモンド粒子の得ら
れない理由は明らかになっていない。
【0009】また、PVD法で、ダイヤモンド粒子を低
温で析出できたとしても、基材と硬質膜との密着性が悪
いことが問題となってくる。基材との密着性が十分でな
いと、基材との界面で硬質膜が剥離してしまい、硬質膜
の性能を十分に発揮できない。したがって、硬質膜と基
材との密着性を高めるために、基材との密着性の良い材
料が複合された硬質膜が考えられる。
【0010】また、CVD法においても、ダイヤモンド
粒子を得ることができるのは、プラズマ状態を利用した
非平衡化での硬質膜の形成時だけである。しかも、ダイ
ヤモンド粒子と同時にグラファイトやアモルファス成分
が析出してくるので、これを除去しながらダイヤモンド
粒子のみを成長させている。ダイヤモンド自体は気相法
などで析出させることが難しい物質と考えられている。
【0011】ここで、前記焼結法のようにダイヤモンド
粒子間の結合性が十分でないと、得られた工具の性能が
ダイヤモンド粒子間の結合性で決定される。したがっ
て、ダイヤモンド粒子との結合性が良い材料で、且つ基
材との密着性の良い材料の複合された硬質膜を作製しな
ければならない。このような硬質膜を形成すれば、ダイ
ヤモンド単体の高硬度には適わないものの、CVD法に
よる基材と硬質膜との界面の密着性及び焼結体によるダ
イヤモンド粒子の結合性を各々上回るような、ダイヤモ
ンド粒子と他の材料(例えば、セラミックス)が複合さ
れた硬質膜を得ることとなる。
【0012】合成の極めて難しい材料をPVD法で得る
ために、結晶質のものと積層させ超格子構造をとらせる
ことで、その材料を結晶化させて得ようとの試みが報告
されている(日本金属学会秋期大会講演概要集、47
7、「窒化Cr/窒化炭素人工格子膜の構造と微小硬
度」(1996))。しかしながら、結晶化には成功し
ているものも組成的に問題があったり、まったく逆に組
成的に満足なものは、結晶化しないとの報告である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、従来のP
VD法では形成が困難であったダイヤモンド粒子を複合
させた硬質膜を得て、その複合硬質膜の耐摩耗性、基材
との密着性にすぐれた特性を生かし、その複合硬質膜の
形成した切削工具、耐摩耗性工具、機械部品を提供する
ことを目的にする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明による硬質膜は、
4a、5a、6a族及び鉄(Fe)、コバルト(Co)
のうち少なくとも一種類の窒化物、炭化物、酸化物、炭
窒化物、ホウ化物よりなる粒状の物質(以下、鋳型物質
という)とダイヤモンド粒子とが、該ダイヤモンド粒子
の体積%で50未満で複合されている。そして、ダイヤ
モンド粒子の粒径が30nm以下で、粒界が前記鋳型物
質と接しており、Cu−Kα線によるX線回折ピークを
持つ結晶である。そして、膜厚が、5nm〜20μmで
あるものが有用である。
【0015】また、WC基超硬合金、セラミックス、サ
ーメット、高速度鋼のいずれかから選ばれた材料からな
る基材の表面上に、若しくは該基材の表面上に形成され
た中間層の表面上に前記の複合硬質膜を形成した部品が
耐摩耗性に優れる。なお、中間層が窒化チタン(Ti
N)が有用である。
【0016】なお、基材の表面上に、若しくは該基材の
表面上に形成した中間層の表面上に、PVD法を用いて
ダイヤモンド粒子の複合された複合硬質膜を形成する。
その場合、複合硬質膜を構成する各成分を基材の表面上
に、若しくは中間層の表面上へ供給するステップを個別
に行なう。すなわち、このステップを各成分が前記基材
の表面、若しくは前記中間層の表面を連続して覆う前ま
で短時間で行ない、それを繰り返すのが有用である。
【0017】
【発明の実施の形態】非平衡物質であるダイヤモンド粒
子がグラファイトやアモルファスのような平衡物質に移
行しようとするエネルギーと、鋳型物質による拘束のエ
ネルギーを考えた場合、平衡物質に移行しようとするエ
ネルギーが鋳型物質による拘束のエネルギーより大きけ
れば、平衡物質が生成される。
【0018】また、逆に、鋳型物質による拘束のエネル
ギーのほうが大きければ、非平衡物質が得られることに
なる。ダイヤモンド粒子は、複合硬質膜の一部に平均粒
径30nm以下の領域をもち、ダイヤモンド粒子の粒界
の少なくとも一部が鋳型物質と隣接している必要があ
る。
【0019】高分解能走査型電子顕微鏡や透過型電子顕
微鏡による微細構造の観察によると、従来の耐磨耗性の
硬質膜は平均粒径が数100nm以上の粒子によって形
成されていることが判る。このような平均粒径が数10
0nm以上の粒子においては、ダイヤモンド粒子の結晶
格子を拘束する鋳型物質のエネルギーが、ダイヤモンド
粒子の内部まで作用しないために、ダイヤモンド粒子の
粒子内部で相変態が起こり硬質膜が得られない。
【0020】ここで、ダイヤモンド粒子と鋳型物質が平
均粒径30nm以下の粒径で複合することで、鋳型物質
がダイヤモンド粒子の結晶格子を拘束するエネルギーを
ダイヤモンド粒子内部まで到達することができ、ダイヤ
モンド粒子のグラファイトやアモルファスのような平衡
物質への移行、すなわち、ダイヤモンド粒子の相変態や
非晶質化を抑えることができる。
【0021】ダイヤモンド粒子の粒界の一部が鋳型物質
と接していない、つまりダイヤモンド粒子の周りがすべ
て別のダイヤモンド粒子に取り囲まれている場合、ダイ
ヤモンド粒子に鋳型物質の結晶格子拘束エネルギーが到
達するためには、そのエネルギーは後者のダイヤモンド
粒子の粒界、あるいは前者及び後者のダイヤモンド粒子
の粒界を介さねば到達しない。ダイヤモンド粒子の粒界
は、欠陥の一種と考えられるため、鋳型物質の拘束エネ
ルギーを吸収してしまう。
【0022】したがって、鋳型物質が後者のダイヤモン
ド粒子を介して前者のダイヤモンド粒子の結晶格子を拘
束する場合、その拘束力は小さくなり、前者のダイヤモ
ンド粒子が相変態、非晶質化を起こす可能性が高くな
る。
【0023】また、ダイヤモンド粒子と鋳型物質とを、
例えば各々の集合体を積層させた場合、鋳型物質の集合
体と接触する2次元的な面で、ダイヤモンド粒子の集合
体は拘束される。つまり、ダイヤモンド粒子と鋳型物質
との各々の集合体が2次元的に接触する面の垂直方向に
は、ダイヤモンド粒子は拘束されず、全く自由な状態で
ある。したがって、この拘束のない部分からダイヤモン
ド粒子の相変態や非晶質化が始まり、安定な構造である
平衡物質のグラファイトやアモルファスへとダイヤモン
ド粒子は相変態あるいは非晶質化すると考えられる。
【0024】本発明では、ダイヤモンド粒子と鋳型物質
を粒子状の複合構造とすることで、ダイヤモンド粒子を
3次元で拘束し原子の自由度を減少させ、これによっ
て、平衡物質(アモルファスまたはグラファイトなど)
への相変態や非晶質化を抑え、非平衡物質であるダイヤ
モンド粒子を析出させる。
【0025】この複合構造による複合硬質膜は、Cu−
Kα線による回折により、回折ピークがみられる結晶質
であり、ヌープ硬度の高い耐摩耗性の硬質膜であるとい
える。
【0026】また、本発明に係る複合硬質膜は、その膜
厚が0.1μm未満の場合は耐磨耗性の有意な向上がみ
られない。一方、膜厚が15μmを越えると、複合硬質
膜の残留応力が大きくなり、逆に基材との密着性が低下
する。従って、特に工具に対して本発明に係る複合硬質
膜を適用する場合には、基材に形成させる複合硬質膜の
膜厚を0.5μm〜15μmの範囲とすることが望まし
い。一方、耐磨耗性機械部品に対する潤滑や保護の用途
の複合硬質膜は、膜厚が5nm〜2μm程度で充分であ
る。
【0027】ところで、ダイヤモンド粒子を基材の表面
に直接形成させた場合、ダイヤモンド粒子を含んだ複合
硬質膜の実用上の密着性が従来の耐磨耗性の硬質膜より
も低くなることがある。これは、基材と複合硬質膜との
界面において物性が急激に変化するためと考えられる。
【0028】しかるに、本発明においては、4a、5
a、6a族及びFe、Coの元素から選ばれた少なくと
も1種の窒化物、炭化物、炭窒化物、ホウ化物は、切削
工具、あるいは機械部品の一般の基材に対して、良好な
密着力を有する材料である。従って、これら材料と、ダ
イヤモンド粒子とを複合させた複合硬質膜は、基材と複
合硬質膜との界面の密着性を改善することができると考
えられる。
【0029】さらに、本発明の一実施様態に従うと、基
材とダイヤモンド粒子を含む微粒子の複合硬質膜との間
に、両者の中間の物性を有する中間層を設けることによ
り、基材と複合硬質膜との界面における急激な特性(例
えば、熱膨張特性)の変化を避けられる。従って、例え
ば、形成した耐磨耗性の複合硬質膜の残留応力の影響を
緩和できる。
【0030】さらに、本発明の一実施様態に従うと、本
発明に係る耐磨耗性の複合硬質膜に、厚さ0.1μm以
上、5μm以下の表面層を設けることも好ましい。この
表面層を設けることによって、耐摩耗性の劣化を防ぐこ
とができる。即ち、耐磨耗性の硬質膜の表面は過酷な環
境に曝されることが多く、雰囲気ガスあるいは直接接触
している物質との反応が起こりやすい。このため、硬質
膜の表面が変質して耐磨耗性が劣化する場合もある。
【0031】一方、微粒子の複合硬質膜を構成する成分
は必ずしも雰囲気ガスあるいは直接接触している物質と
の反応性の低い成分の材料に限定されるわけではないの
で、表面に雰囲気ガスあるいは直接接触している物質と
の反応が起こりにくい表面層を装荷する事により、複合
硬質膜の表面の反応に起因する特性の劣化を効果的に防
止することが出来る。
【0032】以上のような構成を有する本発明に係る耐
磨耗性の硬質複合膜は、対象とする基材の全ての表面に
形成させても良いが、実際に保護すべき部分、例えば、
切削工具や耐磨耗工具の切刃部分にのみ形成させても所
期の効果を上げることが出来る。
【0033】上記のような本発明に係る耐磨耗性の複合
硬質膜は、基本的に、公知の各種成膜方法を利用できる
が、基材の強度を容易に維持できる点や微粒子間での拡
散の影響を小さくできる点で、4a、5a、6a族及び
Fe、Coの元素から選ばれた少なくとも1種の窒化
物、炭化物、炭窒化物、ホウ化物はスパッタリング法や
イオンプレーティング法などのPVD法で形成し、ダイ
ヤモンド粒子の原料は、上記PVDの手法または気体に
よって供給することが望ましい。
【0034】図1は、本発明を実施して耐磨耗性硬質膜
を形成する事が出来る装置の具体的な構成例を示す図で
ある。同図に示すように、この装置は、給排気手段を備
えた真空槽1と、真空槽1の上面壁中央に基材2を保持
するホルダー3と、基材正面の真空槽下部にターゲット
4−a、bを備えている。
【0035】ターゲット4−a、bを、高周波スパッタ
リングおよび直流スパッタリングにより蒸発させ、基材
2に硬質膜を形成させる。各ターゲット正面にシャッタ
ー5−a、bを設置し、一定時間毎にシャッターの開け
閉めを繰り返すことで、基材に到達する蒸発したターゲ
ット4−a、b(スパッタ粒子)の量を制御した。
【0036】該切削チップを基材として基板ホルダーに
設置し、図1に示した装置を用いて、Ti窒化物及びダ
イヤモンド粒子の2成分を含む硬質膜をこの基材に形成
させた。即ち、図1に示した装置において、ターゲット
4−aとしてTiターゲットを、ターゲット4−bとし
て炭素ターゲットをそれぞれセットした。
【0037】次に、真空槽中に数ミリトール(mTor
r)となるように、Ar、H2およびN2を導入した。
ターゲット表面では、スパッタリングが連続的におこっ
ており、ターゲット正面のシャッターを交互に開け閉め
することで、ターゲット4−a、bからのスパッタ粒子
が基材へ交互に到達することになる。各ターゲットの一
回あたりの照射時間が長いと、各ターゲットから生成さ
せる析出物は一層以上の積層膜である硬質膜を形成し、
逆に短いと両者は粒状に複合した。
【0038】以下に本発明のさらに具体的な上記装置に
よる実施例、及びその他の比較例を示す。なお、本発明
の実施例は、本発明の技術的範囲を何ら限定するもので
はない。
【0039】
【表1】
【0040】表1に本発明の実施例1〜6を示す。な
お、○印は、その欄に該当することを、−印は該当しな
いことを示している。実施例1、2は、基材としてWC
基超硬(組成はP30)、実施例3、4はサーメット
(組成はP10)、実施例5、6は高速度鋼(組成はS
KH54)である。なお、実施例、従来例は全て切削チ
ップである。また、実施例1〜4には中間層としてTi
Nを薄く(3〜4μm)形成している。
【0041】実施例1〜6の複合硬質膜を、透過型電子
顕微鏡で観察すると、3〜5nmの粒径を持つ粒子であ
る。そして、複合硬質膜の生成物を、透過型電子顕微鏡
の観察とXRD(X−ray Diffractome
tryの略。)及びラマン分光法により同定した。この
実施例では、いずれもアモルファスやグラファイトのよ
うな平衡物質は検出できず、その生成物は、ダイヤモン
ド粒子とTiCxNy(但し、x、y<1、xとyは同
じではない。)であった。
【0042】併せて、透過型電子顕微鏡とSIMS(S
econdary Ion Mass Spectro
metryの略。2次イオン質量分析法。)で観察した
生成物のTiとCとの比(体積比)を示している。この
Cは、生成物であるダイヤモンド粒子のC(炭素)に該
当している。ダイヤモンド粒子に該当するCの体積比
が、多くて30%であることが判る。なお、複合硬質膜
の膜厚は、5μmから20μmであった。(各実施例の
膜厚の測定値の記載は省略している。)
【0043】
【表2】
【0044】表2に、比較例1〜9を示す。比較例1〜
6は、中間層としてTiNを薄く(3〜4μm)形成し
ている。比較例1〜3は、基材としてWC基超硬(組成
はP30)、比較例4〜6はサーメット(組成はP1
0)、比較例7〜9は高速度鋼(組成はSKH54)で
ある。比較例3、6、9の複合硬質膜を、透過型電子顕
微鏡で観察すると、3〜5nmの粒径を持つ粒子からな
っている。一方、比較例1、2、4、5、7、8はダイ
ヤモンド粒子と、鋳型物質の各集合体が周期10〜20
nmの層状をなす積層を形成している。
【0045】この比較例は、いずれもアモルファスやグ
ラファイトのような平衡物質が検出されている。そし
て、透過型電子顕微鏡とSIMSで観察した生成物のT
iとCとの比(体積比)を示している。なお、複合硬質
膜の膜厚は、実施例と同様に、5μmから20μmであ
った。(各膜厚の測定値の記載は省略する。)
【0046】
【表3】
【0047】表3には、以上の実施例と、比較例のヌー
プ硬度(荷重15gf,3点の平均値)及びダイヤモン
ド圧子によるスクラッチ試験の剥離臨界荷重(N)で表
した複合硬質膜の基材に対する密着力を示す。実施例は
硬度が1600から3800、密着力は、30〜45の
良好な値である。比較例は、特にその密着力が悪く、比
較例4、5、7、9では、その膜の剥離が肉眼でも確認
できた。硬度は600から1400、剥離のないもので
もその膜の基材に対する密着力は10〜20と低く、剥
がれ易いものである。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】次に、基材にWC基超硬合金、及びサーメ
ットを用いたものでの表4の切削条件によって、切削試
験を行った。その時の、逃げ面の摩耗幅を、表5に示
す。実施例1、2での逃げ面摩耗幅の値は、0.10
1、0.122(断続試験では、0.109、0.13
0)であって、従来の硬質膜(TiN、及びTiAlN
で、いずれも3〜4μmの膜厚。)の形成された切削工
具の摩耗幅と比べても、きわめて良好な値である。サー
メット基材でも、本発明の実施例3、4がきわめて良好
であることが判明した。
【0051】なお、本願実施例では、ダイヤモンド粒子
に該当するCの体積比が多くて30%のもの、すなわ
ち、複合硬質膜の中にダイヤモンド粒子が体積%で多く
て30で複合されたものを示しているが、50%未満の
ものでも、同様に良好な複合硬質膜を得ることができ
た。
【0052】
【発明の効果】本発明では、ダイヤモンド粒子を複合さ
せた硬質膜であって、耐摩耗性に優れた、且つ基材との
密着性にすぐれた硬質膜を得ることにより、その硬質膜
を切削工具、耐摩耗性工具、機械部品に形成して、耐摩
耗性にすぐれた部品を得ることができる。
【0053】耐磨耗性の複合硬質膜を構成する各成分
を、基材へ個別に供給し、且つ、各成分の硬質膜の本来
の形成時間に比べて極めて短い時間の硬質膜の形成を行
い、これを連続的に繰り返したり、あるいは、複合硬質
膜を構成する各成分の比率を、各成分の本来の硬質膜の
形成時間に比べて極めて短い時間に変化させながら複合
硬質膜を形成を行う。
【0054】この方法により、異なる成分の結晶粒が混
在した薄い複合硬質膜を形成することができると同時
に、複数の成分の結晶粒がお互いに影響しあって結晶粒
の成長が妨げられ、超微粒の薄い複合硬質膜を形成する
ことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパッタ装置の側面図である。
【符号の説明】
1:真空槽 2:基材 3:基材ホルダー 4−a、b:ターゲット 5−a、b:シャッター

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 4a、5a、6a族及び鉄、コバルトの
    うち少なくとも一種類の窒化物、炭化物、酸化物、炭窒
    化物、ホウ化物よりなる粒状の鋳型物質とダイヤモンド
    粒子とが、該ダイヤモンド粒子の体積%で50未満で複
    合されていることを特徴とする複合硬質膜。
  2. 【請求項2】 前記ダイヤモンド粒子の粒径が30nm
    以下で、粒界が前記鋳型物質と接していることを特徴と
    する請求項1記載の複合硬質膜。
  3. 【請求項3】 Cu−Kα線によるX線回折ピークを持
    つ結晶であることを特徴とする請求項1記載の複合硬質
    膜。
  4. 【請求項4】 膜厚が、5nm以上20μm以下である
    ことを特徴とする請求項1記載の複合硬質膜。
  5. 【請求項5】 炭化タングステン基超硬合金、セラミッ
    クス、サーメット、高速度鋼のいずれかから選ばれた材
    料からなる基材の表面上に、若しくは該基材の表面上に
    形成された中間層の表面上に請求項1〜4のいずれか1
    項に記載の複合硬質膜を形成したことを特徴とする耐摩
    耗性部品。
  6. 【請求項6】 前記中間層が窒化チタンであることを特
    徴とする請求項5記載の耐摩耗性部品。
  7. 【請求項7】 基材の表面上に、若しくは該基材の表面
    上に形成した中間層の表面上に、ダイヤモンド粒子を複
    合した複合硬質膜を形成する方法において、前記複合硬
    質膜を構成する4a、5a、6a族及び鉄、コバルトの
    うち少なくとも一種類の窒化物、炭化物、酸化物、炭窒
    化物、ホウ化物よりなる鋳型物質とダイヤモンド粒子の
    各成分を前記基材の表面上に、若しくは前記中間層の表
    面上へ各成分ごとに個別に物理的気相蒸着法を用いて供
    給するステップであって、前記各成分が前記基材の表
    面、若しくは前記中間層の表面を覆う前までの時間で前
    記ステップを繰り返して、ダイヤモンド粒子を複合する
    ことを特徴とする複合硬質膜の形成方法。
JP1086298A 1998-01-23 1998-01-23 複合硬質膜、その膜の形成方法および耐摩耗性部品 Pending JPH11209194A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007160465A (ja) * 2005-12-14 2007-06-28 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質潤滑層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2007524554A (ja) * 2003-02-06 2007-08-30 ジェンヴァック エアロスペイス コーポレイション 自立ダイヤモンド構造および方法
JP2009062607A (ja) * 2007-09-10 2009-03-26 Sumitomo Electric Ind Ltd 被覆体

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