JPH11199969A - 耐粗粒化肌焼鋼材並びに強度と靭性に優れた表面硬化部品及びその製造方法 - Google Patents

耐粗粒化肌焼鋼材並びに強度と靭性に優れた表面硬化部品及びその製造方法

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JPH11199969A
JPH11199969A JP362198A JP362198A JPH11199969A JP H11199969 A JPH11199969 A JP H11199969A JP 362198 A JP362198 A JP 362198A JP 362198 A JP362198 A JP 362198A JP H11199969 A JPH11199969 A JP H11199969A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】1050℃での表面硬化処理時の粗粒化がなく熱処
理歪の少ない高強度・高靭性の表面硬化部品とその素材
となる被削性に優れた耐粗粒化肌焼鋼材及びその表面硬
化部品の製造方法を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.01〜
0.5%、Mn:0.6〜2.0%、P≦0.03%、S:0.002〜0.2
%、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0.04〜1.0%、N:0.002〜
0.008%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%、
Al: 0〜0.10%、残部はFe及び不純物からなる化学組成
で、鋼中のTi炭硫化物の最大直径が10μm以下で、その
量が清浄度で0.05%以上である被削性に優れた耐粗粒化
肌焼鋼材。 表面硬化処理後にHv300以上の芯部硬度と20J/cm2
上の衝撃値を有する表面硬化部品。表面硬化処理に先
立って1150℃以上に加熱してから熱間鍛造する表面硬化
部品の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、肌焼鋼材及び表面
硬化部品と、その表面硬化部品の製造方法に関し、より
詳しくは、被削性に優れた耐粗粒化肌焼鋼材並びに強度
と靭性に優れた表面硬化部品及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車用や産業機械用などの各種
機械構造部品、特に歯車を代表とする表面硬化部品は、
肌焼鋼を素材として、これを熱間鍛造や冷間鍛造した後
に切削加工して所望の形状に成形加工し、次いで、耐摩
耗性や疲労強度を向上させる目的で部品表面に浸炭処理
や浸炭窒化処理などの表面硬化処理を施してから使用に
供されている。
【0003】表面硬化部品の素材鋼となる機械構造用肌
焼鋼としては、従来、JIS G 4106に規格された機械構造
用マンガン鋼(SMn鋼)及びマンガンクロム鋼(SM
nC鋼)、JIS G 4105に規格されたクロムモリブデン鋼
(SCM鋼)、JIS G 4104に規格されたクロム鋼(SC
r鋼)、JIS G 4103に規格されたニッケルクロムモリブ
デン鋼(SNCM鋼)、JIS G 4102に規格されたニッケ
ルクロム鋼(SNC鋼)などが用いられてきた。
【0004】しかし、前記のJIS規格鋼を母材として
所定の部品形状に加工された鋼材の場合には、浸炭処理
や浸炭窒化処理などの表面硬化処理時に900〜950
℃の温度に加熱されると結晶粒の粗大化や異常粒成長
(以下、結晶粒の粗大化と異常粒成長をまとめて「粗粒
化」という)が生じ易い。このため、焼入れ時の歪発生
や強度や靭性など材料特性の低下が生ずるという問題が
ある。
【0005】このため、従来のJIS規格鋼に代わっ
て、Nbを添加した鋼、例えば、特開昭60−2135
9号公報に記載のNb添加鋼などが浸炭部品の母材とな
る肌焼鋼として重用されてきた。こうした鋼は、Nbの
添加によって析出した微細なNbCのピン止め効果を利
用することで、浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面硬化
処理における加熱時のオーステナイト粒の粗粒化を防止
しようとするものである。既に述べたように、従来の浸
炭処理や浸炭窒化処理などの表面硬化処理は900〜9
50℃程度の温度で行われていたために、NbCのピン
止め効果によって粗粒化を防止することが可能であっ
た。しかしながら、単にNbを添加しただけの鋼の場合
には鋼塊(ここでいう「鋼塊」にはJIS G 0203に規定さ
れているように連鋳鋼片(鋳片)を含む)の表面性状が
悪いという問題がある。したがって、鋼片や各種の鋼材
に加工した後に疵が生じるので、疵の手入れをしなけれ
ばならず、この疵手入れのために歩留まりが低下すると
ともにコストが嵩んでいた。
【0006】更に近年、表面硬化処理の能率を大幅に向
上させるために、所謂「プラズマ浸炭処理」など高温で
の表面硬化処理が採用されるようになってきた。この
「プラズマ浸炭処理」は、1050℃もの高温で浸炭処
理を行うものであり、こうした高温に加熱される場合に
は、前記の単にNbを添加しただけの鋼では粗粒化を防
止することは不可能であった。すなわち、1050℃で
のプラズマ浸炭処理時には、従来の900〜950℃程
度の処理の場合には粗粒化防止に有効であったNbCが
凝集・粗大化してしまい、ピン止め効果を十分に発揮す
ることができないからである。
【0007】そこで、例えば特開平4−176816号
公報に記載されているような、Nbと、Ti及び/又は
Vとを複合添加した浸炭用鋼が提案されている。しか
し、前記公報に記載されているような単に、Nbと、T
i及び/又はVとを複合添加しただけの浸炭用鋼の場合
には、浸炭時に粗粒化が生じてしまう場合もあった。
【0008】又、近年、機械構造部品の高強度化に伴っ
て、熱間鍛造や冷間鍛造した後に所望の形状に成形する
ための切削加工のコストが嵩むという問題が生じてい
る。このため、切削加工を容易にし、低コスト化を図る
ために被削性に優れた快削肌焼鋼に対する要求がますま
す大きくなっている。
【0009】従来、被削性を高めるために、鋼にPb、
Te、Bi、Ca及びSなどの快削元素を単独あるいは
複合添加することが行われてきた。しかし、JIS規格
鋼である機械構造用鋼や、前記した特開昭60−213
59号公報に記載のNb添加鋼や、特開平4−1768
16号公報に記載されているような、Nbと、Ti及び
/又はVとを複合添加した浸炭用鋼などに、単に上記の
快削元素を添加しただけの場合には、所望の機械的性
質、なかでも靭性を確保できないことが多い。
【0010】鉄と鋼(vol.57(1971年)S4
84)には、脱酸調整快削鋼にTiを添加すれば被削性
が高まる場合のあることが報告されている。しかし、T
iの多量の添加はTiNが多量に生成することもあって
工具摩耗を増大させ、被削性の点からは好ましくないこ
とも述べられている。例えば、C:0.45%、Si:
0.29%、Mn:0.78%、P:0.017%、
S:0.041%、Al:0.006%、N:0.00
87%、Ti:0.228%、O:0.004%及びC
a:0.001%を含有する鋼では却ってドリル寿命が
低下して被削性が劣っている。このように、鋼に単にT
iを添加するだけでは被削性は向上するものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記現状に鑑
みなされたもので、充分な強度−靭性バランスを有し
て、過酷な環境下での使用に充分耐え得る表面硬化部品
及びその素材となる耐粗粒化肌焼鋼材と、その表面硬化
部品の製造方法を提供することを目的とする。なかで
も、本発明は、鋼材表面の温度が1050℃にも到るよ
うなプラズマ浸炭処理を初めとする高い温度での表面硬
化処理を受ける場合にも粗粒化を生ずることがなく、熱
処理歪の小さい高強度・高靭性の表面硬化部品と、その
素材となる鋼塊の表面性状が良好で且つ被削性にも優れ
た耐粗粒化肌焼鋼材及びその表面硬化部品の製造方法を
提供することを目的とする。
【0012】なお、本発明でいう「耐粗粒化鋼材」と
は、「JIS G 0551の表1に示されるオーステナイト結晶
粒度番号5以上の整細粒鋼材」のことを指す。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)に示す化学組成を有する被削性に優れた耐粗粒化
肌焼鋼材、(2)に示す強度と靭性に優れた表面硬化部
品及び(3)、(4)に示す強度と靭性に優れた表面硬
化部品の製造方法にある。
【0014】(1)重量%で、C:0.1〜0.3%、
Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.0%、
P:0.03%以下、S:0.002〜0.2%、N
b:0.005〜0.10%、Ti:0.04〜1.0
%、N:0.002〜0.008%、Cr:0〜2.0
%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%、Al:0
〜0.10%、残部はFe及び不可避不純物からなる化
学組成で、鋼中のTi炭硫化物の最大直径が10μm以
下で、且つ、その量が清浄度で0.05%以上である耐
粗粒化肌焼鋼材。
【0015】(2)素材が、上記(1)に記載の鋼材で
あって、表面硬化処理後にHv300以上の芯部硬度と
20J/cm2 以上の衝撃値を有する表面硬化部品。
【0016】(3)上記(1)に記載の鋼材を、表面硬
化処理に先立って1150℃以上に加熱してから熱間鍛
造することによる表面硬化部品の製造方法。
【0017】(4)上記(1)に記載の鋼材を、分塊、
圧延及び熱処理の少なくとも1つの工程を1150℃以
上に加熱して行い、その後鍛造し、更に表面硬化処理す
ることによる表面硬化部品の製造方法。
【0018】以下、上記(1)〜(4)に記載のものを
(1)〜(4)の発明ということがある。
【0019】なお、本発明でいう「Ti炭硫化物」には
単なるTi硫化物をも含むものとする。又、「(Tiの
炭硫化物の)最大直径」とは「個々のTiの炭硫化物に
おける最も長い径」のことを指す。Ti炭硫化物の清浄
度は、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G 0555
に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」に
よって60視野測定した値をいう。
【0020】表面硬化処理後の芯部とは表面硬化されて
いない部分のことをいう。
【0021】(4)の発明における鍛造は、熱間、温
間、冷間のいずれかで行われるもの、又は、これらを組
み合わせたものを指す。
【0022】本発明者らは、プラズマ浸炭処理を初めと
する高い温度での表面硬化処理時にも粗粒化を防止する
ことができるように、1050℃でも成長・凝集せず微
細に分散している析出物について調査・研究を行った。
【0023】その結果、NbとTiを複合添加した鋼に
おいて、NbとTiの複合炭窒化物〔NbTi(C
N)〕が1050℃でも成長・凝集せず、微細に分散し
ている場合があることがわかった。
【0024】そこで本発明者らは更に詳細な研究を続
け、その結果、次の知見を得るに到った。
【0025】(a)NbとTiを複合添加した鋼におい
て、凝固時に析出する合金炭窒化物はNbC、TiC、
NbN、TiN、Nb(CN)及びTi(CN)といっ
た単独合金による炭化物、窒化物や炭窒化物ではなく、
NbとTiの複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕であ
る。しかし、凝固時に析出した複合炭窒化物〔NbTi
(CN)〕は粗大であるので、粗粒化防止のためのピン
止め作用を有しない。
【0026】(b)複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕
の固溶と加熱温度(T)の関係は以下のとおりである。
【0027】(イ)T<1150℃の場合:上記の複合
炭窒化物は鋼中で安定に存在する。
【0028】(ロ)1150℃≦T≦1350℃の場
合:上記の複合炭窒化物のNbだけが固溶し、Tiが濃
化する。
【0029】(ハ)1350℃<Tの場合:上記の複合
炭窒化物は完全に固溶する(Tiも固溶する)。
【0030】(c)表面硬化処理の前に素材鋼及び/又
は表面硬化部品が1150℃以上の温度域に加熱される
と、凝固時に析出した粗大な〔NbTi(CN)〕が固
溶するとともに、その後の冷却過程、あるいは冷却後に
行われる処理の加熱過程で〔NbTi(CN)〕が微細
に再析出し、そのピン止め効果で表面硬化処理時の異常
粒成長を防止することができる。なお、複合炭窒化物
〔NbTi(CN)〕が完全に固溶しなくても、複合炭
窒化物中のNbが優先的に固溶しさえすれば、その後の
冷却過程、あるいは冷却後に行われる処理の加熱過程で
〔NbTi(CN)〕が微細に再析出する。
【0031】(d)表面硬化処理後、Hv300以上の
芯部硬度と20J/cm2 以上の衝撃値を有すれば、そ
の表面硬化部品は自動車や産業機械が使用される過酷な
環境においても充分な耐久性を示す。
【0032】(e)鋼に適正量のTiを添加し、鋼中の
介在物制御として硫化物をTi炭硫化物に変え、更にT
i炭硫化物を鋼材に微細に分散させれば、鋼材の被削性
が飛躍的に向上する。そこで、更に研究を続けた結果、
下記の事項を見いだした。
【0033】(f)Sとのバランスを考慮して鋼にTi
を積極的に添加して行くと、鋼中にTi炭硫化物が形成
される。
【0034】(g)鋼中に上記のTi炭硫化物が生成す
ると、MnSの生成量が減少する。
【0035】(h)鋼中のS含有量が同じ場合には、T
i炭硫化物はMnSよりも大きな被削性改善効果を有す
る。これは、Ti炭硫化物の融点がMnSのそれよりも
低いため、切削加工時に工具のすくい面での潤滑作用が
大きくなることに基づく。
【0036】(i)Ti炭硫化物の効果を充分発揮させ
るためには、N含有量を低く制限することが重要であ
る。これは、N含有量が多いとTiNとしてTiが固定
されてしまい、Ti炭硫化物の生成が抑制されてしまう
ためである。
【0037】(J)製鋼時に生成したTi炭硫化物は、
通常の熱間加工のための加熱温度及びプラズマ浸炭処理
を初めとする高温の表面硬化処理における1050℃程
度の温度では基地に固溶しないし、凝集もしない。した
がって、オーステナイト領域において所謂「ピン止め作
用」が発揮されるので、オーステナイト粒の粗大化防止
に有効である。
【0038】(K)Ti炭硫化物によって被削性を高め
るとともに大きな強度、特に、大きな疲労強度を確保す
るためには、Ti炭硫化物のサイズと、その清浄度で表
される量(以下、単に「清浄度」という)を適正化して
おくことが重要である。
【0039】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものである。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各要件について詳
しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「重
量%」を意味する。
【0041】(A)素材鋼の化学組成 C:0.1〜0.3% Cは、SとともにTiと結合してTiの炭硫化物を形成
し、被削性を高める作用を有する。更に、Cは鋼の強度
を確保するとともに複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕
を形成させるのにも有効な元素である。しかし、その含
有量が0.1%未満では添加効果に乏しく、一方、0.
3%を超えて含有させると鋼の靭性が低下することにな
るので、その含有量を0.1〜0.3%とした。
【0042】Si:0.01〜0.5% Siは、鋼の脱酸及び焼入れ性を高める作用を有する。
更に、強度の向上及び高温での表面酸化の防止にも有効
な元素である。しかし、その含有量が0.01%未満で
は所望の静的強度が確保できないことに加えて高温での
表面の耐酸化性が劣化し、0.5%を超えると靭性の劣
化を招くこととなる。したがって、Siの含有量を0.
01〜0.5%とした。
【0043】Mn:0.6〜2.0% Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともに熱間延性を向上
させる効果を有する。しかし、その含有量が0.6%未
満では充分な焼入れ性が得られず、2.0%を超えて含
有させると偏析を生じ、却って熱間延性が低下するよう
になる。したがって、Mnの含有量を0.6〜2.0%
とした。
【0044】P:0.03%以下 Pは、鋼の靭性を劣化させるとともに、冷間及び熱間で
の鍛造性を低下させてしまう。特に、その含有量が0.
03%を超えると靭性及び冷間・熱間鍛造性の劣化が著
しくなる。したがって、Pの含有量を0.03%以下と
した。
【0045】S :0.002〜0.2% SはCとともにTiと結合してTiの炭硫化物を形成
し、被削性を高める作用を有する。しかし、その含有量
が0.002%未満では所望の効果が得られない。
【0046】従来、快削鋼にSを添加する目的は、Mn
Sを形成させて被削性を改善させることにあった。しか
し、本発明者らの検討によると、上記のMnSの被削性
向上作用は、切削時の切り屑と工具表面との潤滑性を高
める機能に基づくことが判明した。しかもMnSは巨大
化し、鋼材本体の地疵を大きくし、欠陥となる場合があ
る。本発明におけるSの被削性改善作用は、適正量のC
とTiとの複合添加によってTiの炭硫化物を形成させ
ることで初めて得られる。このためには、上記したよう
に0.002%以上のSの含有量が必要である。一方、
Sを0.2%を超えて含有させても被削性に与える効果
に変化はないが、鋼中に粗大なMnSが再び生じるよう
になり、地疵等の問題が生じる。更に、熱間での加工性
が著しく劣化し熱間での塑性加工が困難になるし、靭性
が低下することもある。したがって、Sの含有量を0.
002〜0.2%とした。Sの好ましい含有量は0.0
05〜0.1%である。
【0047】Nb:0.005〜0.10% Nbは、Tiとともに複合炭窒化物〔NbTi(C
N)〕を形成し、鋼の結晶粒を微細にして靭性を高める
とともに、表面硬化処理のための加熱時の粗粒化を防止
するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.
005%未満では添加効果に乏しく、一方、0.10%
を超えて含有させても結晶粒微細化の効果が飽和して経
済性を損なうばかりであるし、変形抵抗が上昇して冷間
鍛造性や熱間鍛造性が劣化するようにもなる。したがっ
て、Nbの含有量を0.005〜0.10%とした。
【0048】Ti:0.04〜1.0% Tiは、C及びSと結合してTi炭硫化物を形成し、被
削性を高める作用を有する。更に、Tiは、Nbととも
に複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕を形成し、鋼の結
晶粒を微細にして靭性を向上させる作用も有する。複合
炭窒化物〔NbTi(CN)〕は前記のTi炭硫化物と
ともに、表面硬化処理のための加熱時の粗粒化を防止す
るのに有効である。なお、Tiには、Nb添加鋼の鋼塊
の表面性状を改善する作用もある。しかし、その含有量
が0.04%未満では所望の効果が得られない。一方、
1.0%を超えて含有させても、Ti炭硫化物による被
削性改善効果が飽和してコストが嵩むばかりか、靭性及
び熱間加工性が著しく劣化してしまう。したがって、T
i含有量を0.04〜1.0%とした。なお、良好な被
削性と靭性を安定して得るためには、Tiの含有量を
0.06〜0.8%とすることが好ましい。
【0049】N :0.002〜0.008% Nは、Nb、Ti及びCと結合して複合炭窒化物〔Nb
Ti(CN)〕を形成し、鋼の結晶粒を微細化して靭性
を向上させるとともに、表面硬化処理のための加熱時の
粗粒化を防止するのに有効な元素である。しかし、その
含有量が0.002%未満では添加効果に乏しい。一
方、NはTiとの親和力が大きいために容易にTiと結
合してTiNを形成し、Tiを固定してしまうので、N
を多量に含有する場合には前記したTi炭硫化物の被削
性向上効果が充分に発揮できないこととなる。更に、粗
大なTiNは靭性及び被削性を低下させてしまう。特
に、N含有量が0.008%を超えると靭性及び被削性
の低下が著しくなる。したがって、Nの含有量を0.0
02〜0.008%とした。なお、Ti炭硫化物の効果
を高めるために、N含有量の上限は0.006%とする
ことが好ましい。
【0050】Cr:0〜2.0% Crは添加しなくても良い。添加すれば鋼の焼入れ性を
向上させるとともに、浸炭処理などの表面硬化処理時に
Cと結合して複合炭化物を形成するので耐摩耗性を向上
させる効果がある。この効果を確実に得るには、Crは
0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しか
し、その含有量が2.0%を超えると靭性が劣化する。
したがって、Cr含有量を0〜2.0%とした。
【0051】Mo:0〜1.0% Moは添加しなくても良い。添加すれば鋼の焼入れ性を
向上させるとともに、表面硬化処理後の芯部硬度を上げ
る作用がある。この効果を確実に得るには、Moは0.
05%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、そ
の含有量が1.0%を超えると、Ti炭硫化物を微細に
分散させた場合においても被削性が大幅に劣化するよう
になる。したがって、Mo含有量を0〜1.0%とし
た。
【0052】W:0〜1.0% Wは添加しなくても良い。添加すれば鋼の焼入れ性を向
上させるとともに、表面硬化処理後の芯部硬度を上げる
作用がある。この効果を確実に得るには、Wは0.10
%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、その含
有量が1.0%を超えると、Ti炭硫化物を微細に分散
させた場合においても被削性が大幅に劣化するようにな
る。したがって、W含有量を0〜1.0%とした。
【0053】Al:0〜0.10% Alは添加しなくてもよい。添加すれば鋼の脱酸の安定
化及び均質化を図る作用がある。この効果を確実に得る
には、Alは0.005%以上の含有量とすることが望
ましい。しかし、その含有量が0.10%を超えると前
記効果が飽和することに加えて靭性が劣化するようにな
る。したがって、Alの含有量を0〜0.10%とし
た。なお、Ti炭硫化物のサイズと清浄度を所定の値と
するためにはTiの酸化物が過剰に生成することを防ぐ
ことが重要であるので、Si含有量が0.05%未満の
場合には、少なくとも0.005%のAlを含有させる
こととするのが良い。
【0054】上記の化学組成を有する素材鋼は、例えば
熱間で分塊されて鋼片となり、次いで熱間で圧延された
後、熱間あるいは冷間で鍛造され、必要に応じて焼準を
施され、更に切削加工が施されて所定の表面硬化部品の
形状に加工される。そして最終的に表面硬化処理を施さ
れることとなる。
【0055】(B)Ti炭硫化物のサイズと清浄度 上記の化学組成を有する鋼の被削性をTi炭硫化物によ
って高めるとともに大きな強度と良好な靭性をも確保す
るためには、Ti炭硫化物のサイズと清浄度を適正化し
ておくことが重要である。
【0056】Ti炭硫化物の最大直径が10μmを超え
ると疲労強度や靭性が低下してしまう。なお、Ti炭硫
化物の最大直径は7μm以下とすることが好ましい。こ
のTi炭硫化物の最大直径が小さすぎると被削性向上効
果が小さくなってしまうので、Ti炭硫化物の最大直径
の下限値は0.5μm程度とすることが好ましい。
【0057】最大直径が10μm以下のTi炭硫化物の
量が清浄度で0.05%未満の場合には、Ti炭硫化物
による被削性向上効果が発揮できない。前記の清浄度は
0.08%以上とすることが好ましい。上記のTi炭硫
化物の清浄度の値が大きすぎると疲労強度が低下する場
合があるので、上記のTi炭硫化物の清浄度の上限値は
2.0%程度とすることが好ましい。
【0058】Ti炭硫化物のサイズと清浄度を前記の値
とするためには、Tiの酸化物が過剰に生成することを
防ぐことが重要である。このための製鋼法としては、例
えば、Si及びAlで充分脱酸し、最後にTiを添加す
る方法がある。
【0059】なお、Ti炭硫化物は、鋼材から採取した
試験片を鏡面研磨し、その研磨面を被検面として倍率4
00倍以上で光学顕微鏡観察すれば、色と形状から容易
に他の介在物と識別できる。すなわち、前記の条件で光
学顕微鏡観察すれば、Ti炭硫化物の「色」は極めて薄
い灰色で、「形状」はJISのB系介在物に相当する粒
状(球状)として認められる。Ti炭硫化物の詳細判定
は前記の被検面をEDX(エネルギ−分散型X線分析装
置)などの分析機能を備えた電子顕微鏡で観察すること
によって行うこともできる。
【0060】前記のTi炭硫化物の清浄度は、既に述べ
たように、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G
0555に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方
法」によって60視野測定した値をいう。
【0061】(C)熱間鍛造、分塊、圧延及び熱処理 本発明は、1050℃にも到る高温での表面硬化処理の
加熱時に、複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕を微細に
析出させておき、そのピン止め効果により表面硬化処理
時の粗粒化の発生を抑制しようとするものである。そし
て、表面硬化処理の加熱時に、複合炭窒化物〔NbTi
(CN)〕を微細に析出させておくためには、溶製後の
凝固時に粗大に析出した複合炭窒化物〔NbTi(C
N)〕を、表面硬化処理の前段階で一旦鋼中に固溶さ
せ、微細な〔NbTi(CN)〕析出の素地を作ってお
く必要がある。このためには、表面硬化処理の前工程
で、一旦高温に加熱しておけばよい。
【0062】既に述べたように、NbとTiを複合添
加した鋼において凝固時に析出する粗大な合金炭窒化物
は、NbとTiの複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕で
ある。複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕の固溶と加
熱温度(T)の関係については以下のとおりである。
【0063】(イ)T<1150℃の場合:上記の複合
炭窒化物は鋼中で安定に存在する。
【0064】(ロ)1150℃≦T≦1350℃の場
合:上記の複合炭窒化物のNbだけが固溶し、Tiが濃
化する。
【0065】(ハ)1350℃<Tの場合:上記の複合
炭窒化物は完全に固溶する(Tiも固溶する)。
【0066】したがって、本発明においては、微細に再
析出した〔NbTi(CN)〕のピン止め作用を利用し
て粗粒化の発生を防止するために、表面硬化処理の前の
工程で一旦1150℃以上に加熱する。
【0067】そこで、表面硬化部品への加工工程に熱間
鍛造が含まれる場合には、少なくともこの熱間鍛造にお
ける加熱温度を1150℃以上としてNbを固溶させれ
ば良いことになる((3)の発明)。
【0068】あるいは、既に述べた表面硬化処理の前工
程のうち、熱間鍛造以外で「加熱」処理を伴うものは分
塊、圧延及び所謂「熱処理」であるため、これら分塊、
圧延及び熱処理の少なくとも1つの工程において加熱温
度を1150℃以上とすれば良いことになる((4)の
発明)。
【0069】なお、本発明においては、微細に再析出し
た〔NbTi(CN)〕のピン止め作用を利用すること
に加えて、Ti炭硫化物のピン止め作用も利用して表面
硬化処理時の異常粒成長の防止を図る。このTi炭硫化
物は1350℃以下の温度では基地に固溶し難い。この
ため、上記した請求項3の発明及び同4の発明における
加熱温度の上限は、Ti炭硫化物のピン止め作用を確保
するために1350℃とするのが良い。加熱温度の上限
を1350℃とすれば、加熱時の表面酸化を低減するこ
ともできる。
【0070】なお、プラズマ浸炭処理を初めとする高い
温度での表面硬化処理のための加熱時に、NbとTiの
複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕を微細に析出させて
おくためには、上記の加熱後の冷却速度は0.2℃/s
以上とすることが望ましい。
【0071】(D)表面硬化処理 本発明が対象とする表面硬化処理は、処理の能率を大幅
に高めることができる「プラズマ浸炭処理」を初めとす
る高温での表面硬化処理である。この表面硬化処理は、
所定の表面硬化部品の表面を硬化させ、製品として必要
な耐摩耗性や疲労強度を確保するのに必要不可欠の処理
である。この処理方法は特に規定されるものではなく、
通常の方法で行えば良い。なお、当然のことながら、本
発明は、表面硬化処理が900〜950℃の温度に加熱
される従来の浸炭処理や浸炭窒化処理などの場合にも適
用できる。
【0072】(E)表面硬化処理後の表面硬化部品の芯
部硬度と靭性 表面硬化部品が、自動車や産業機械が使用される過酷な
環境においても充分な耐久性を発揮するためには、表面
硬化処理後、Hv300以上の芯部硬度と20J/cm
2 以上の衝撃値を有することが必要である。これらの一
方及び/又は両方から外れる場合は表面硬化部品の実環
境での耐久性は極めて劣化したものとなってしまう。し
たがって、表面硬化部品の芯部硬度はHv300以上、
且つ、衝撃値は20J/cm2 以上とした。
【0073】(F)焼戻し 低温で焼戻しを行うと表面硬度の大きな低下を伴うこと
なく靭性を改善できるので、本発明の表面硬化部品は、
表面硬化処理の後に必要に応じて焼戻しを実施したもの
であっても良い。焼戻しをする場合は、表面硬度を確保
するためにその温度を150〜200℃とするのが望ま
しい。
【0074】
【実施例】(実施例1)表1、表2に示す化学組成の鋼
を通常の方法によって試験炉を用いて溶製した。なお、
鋼Oを除いて、Ti酸化物の生成を防ぐために、Si及
びAlで充分脱酸し種々の元素を添加した最後にTiを
添加して、Ti炭硫化物のサイズと清浄度を調整するよ
うにした。鋼OについてはSi及びAlで脱酸する際に
同時にTiを添加した。
【0075】表1、表2において、鋼A〜Hは化学組成
が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼、鋼I〜
Sは成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲か
ら外れた比較例の鋼である。なお、比較例の鋼におい
て、鋼Q、鋼R及び鋼SはそれぞれJISのSMn42
0鋼、SCr420鋼及びSCM420鋼に相当するも
のである。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】次いで、これらの鋼を1140℃に加熱し
た後に通常の方法によって鋼片とし、更に1100℃に
加熱して、1100〜1000℃の温度で直径30mm
の丸棒に熱間鍛造した。なお、鋼片に加工した後、一部
のものについては表面の手入れを行った。この表面の手
入れの有無を表1、表2に併せて示す。
【0079】こうして得られた熱間鍛造後の丸棒からJI
S G 0555の図1に則って試験片を採取し、鏡面研磨した
幅が15mmで高さが20mmの被検面を、倍率が40
0倍の光学顕微鏡で60視野観察して、Ti炭硫化物を
他の介在物と区分しながらその清浄度を測定した。Ti
炭硫化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で
60視野観察して調査した。
【0080】又、上記の熱間鍛造後の丸棒から8mm直
径×12mm長さの粗粒化測定試験片を切り出し、この
試験片を用いて下記の4条件の加工熱処理試験を行い、
粗粒化の発生率を倍率100倍の光学顕微鏡で10視野
観察して調査した。
【0081】(条件1)真空中で、試験片を1100
℃、1175℃及び1250℃の温度でそれぞれ15分
間加熱した後、圧縮加工により30%の変形量を与えて
常温(室温)まで1.0℃/sの冷却速度で冷却した。
この後、1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:0.
8%)の浸炭処理を行った後油焼入した。
【0082】(条件2)真空中で、試験片を1100℃
で15分間加熱し、続いて圧縮加工により30%の変形
量を与え、一旦常温まで2.0℃/sの冷却速度で冷却
した。この後、更に、1100℃、1175℃及び12
50℃の温度で15分間加熱した後、常温まで1.0℃
/sの冷却速度で冷却した。次いで、1050℃×4h
r(炭素ポテンシャル:0.8%)の浸炭処理を行った
後油焼入した。
【0083】(条件3)大気中で、試験片に常温で圧縮
加工により30%の変形量を与えた。次いで、真空中
で、1100℃、1175℃及び1250℃の温度でそ
れぞれ15分間加熱した後、常温まで1.0℃/sの冷
却速度で冷却した。この後、1050℃×4hr(炭素
ポテンシャル:0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入
した。
【0084】(条件4)真空中で、試験片を1100
℃、1175℃及び1250℃の温度でそれぞれ15分
間加熱した後、一旦常温まで1.0℃/sの冷却速度で
冷却した。次いで、真空中で1100℃で15分間加熱
し、更に、圧縮加工により30%の変形量を与え、常温
まで2.0℃/sの冷却速度で冷却した。この後、10
50℃×4hr(炭素ポテンシャル:0.8%)の浸炭
処理を行った後油焼入した。
【0085】表3に、熱間鍛造後の丸棒におけるTi炭
硫化物の清浄度及び最大直径の調査結果、並びに条件1
〜4の加工熱処理試験を行った場合の粗粒化発生率の調
査結果を示す。なお、粗粒化の発生率は100倍の倍率
で10視野検鏡した場合の面積割合で表示した。
【0086】
【表3】
【0087】表3から、化学組成及び最大直径が10μ
m以下のTi炭硫化物の清浄度が本発明で規定する範囲
内にある本発明例の鋼A〜Hを素材とするものと、比較
例の鋼のうち鋼L及び鋼Oを素材とするものだけが本発
明で規定した条件で加熱処理した場合に異常粒成長しな
いことが明らかである。
【0088】(実施例2)前記の実施例1で作製した鋼
A〜Sの鋼片を1190℃に加熱してから、1190〜
1000℃の温度で30mm直径の丸棒に熱間鍛造し
た。
【0089】こうして得られた熱間鍛造後の丸棒から実
施例1の場合と同様に、JIS G 0555の図1に則って試験
片を採取し、鏡面研磨した幅が15mmで高さが20m
mの被検面を、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野
観察して、Ti炭硫化物を他の介在物と区分しながらそ
の清浄度を測定した。Ti炭硫化物の最大直径も、倍率
が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査した。
【0090】又、上記の熱間鍛造後の丸棒の中心部から
JIS3号シャルピ−衝撃試験片を切り出し、表面硬化
処理として1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:
0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入れし、更に、1
60℃で焼戻しを行った。次いで、常温で衝撃試験を行
うとともに試験片中心部すなわち芯部の硬度測定を行っ
た。
【0091】被削性評価のため、ドリル穿孔試験も実施
した。すなわち、前記した熱間鍛造後の30mm直径の
丸棒を25mmの長さに輪切りにしたものを用いて、R
/2部(Rは丸棒の半径)についてその長さ方向に貫通
孔をあけ、刃先摩損により穿孔不能となったときの貫通
孔の個数を数え、被削性の評価を行った。穿孔条件は、
JIS高速度工具鋼SKH51のφ5mmストレ−トシ
ャンクドリルを使用し、水溶性の潤滑剤を用いて、送り
0.15mm/rev、回転数980rpmで行った。
【0092】表4に各種試験の結果を示す。
【0093】
【表4】
【0094】表4から、化学組成及び最大直径が10μ
m以下のTi炭硫化物の清浄度が本発明で規定する範囲
内にある本発明例の鋼A〜Hを素材とするものはHv3
00以上の芯部硬度と20J/cm2 以上の衝撃値を有
している。更に、被削性も良好なことが明らかである。
したがって、これらの鋼を素材とする表面硬化部品は自
動車や産業機械が使用される過酷な環境においても充分
な耐久性を発揮できることになる。
【0095】一方、前記実施例1において本発明で規定
した条件で加熱処理した場合に異常粒成長しなかった比
較例の鋼の鋼L及び鋼Oを素材とするものは、芯部硬度
と衝撃値のいずれかが低く、表面硬化部品の実環境での
耐久性は極めて劣化したものとなってしまう。
【0096】又、比較例の鋼のうち最大直径が10μm
以下のTi炭硫化物の量が清浄度で0.05%を下回る
鋼O、並びにTiの含有量が本発明で規定する値を下回
る鋼K、鋼N及び鋼P〜Sではドリル貫通孔の個数が1
00個に達せず被削性が劣っている。
【0097】(実施例3)前記の実施例1で作製した鋼
A〜H、鋼L及び鋼Nの鋼片を1180℃で真空中の熱
処理を行い、一旦常温まで0.25℃/sの冷却速度で
冷却した。その後、1100℃に加熱してから、110
0〜1000℃の温度で30mm直径の丸棒に熱間鍛造
した。
【0098】こうして得られた熱間鍛造後の丸棒から実
施例1の場合と同様に、JIS G 0555の図1に則って試験
片を採取し、鏡面研磨した幅が15mmで高さが20m
mの被検面を、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野
観察して、Ti炭硫化物を他の介在物と区分しながらそ
の清浄度を測定した。Ti炭硫化物の最大直径も、倍率
が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査した。
【0099】又、上記の熱間鍛造後の丸棒の中心部から
JIS3号シャルピ−衝撃試験片を切り出し、表面硬化
処理として1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:
0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入れし、更に、1
70℃で焼戻しを行った。次いで、常温での衝撃試験と
ともに試験片中心部硬度すなわち芯部硬度の測定を行っ
た。
【0100】被削性評価のためのドリル穿孔試験も実施
した。その試験片、試験方法及び評価方法は実施例2で
述べたとおりである。
【0101】表5に各種試験の結果を示す。
【0102】
【表5】
【0103】表5から、化学組成及び最大直径が10μ
m以下のTi炭硫化物の清浄度が本発明で規定する範囲
内にある本発明例の鋼A〜Hを素材とするものはHv3
00以上の芯部硬度と20J/cm2 以上の衝撃値を有
している。更に、被削性も良好なことが明らかである。
したがって、これらの鋼を素材とする表面硬化部品は自
動車や産業機械が使用される過酷な環境においても充分
な耐久性を発揮できることになる。
【0104】一方、前記実施例1において本発明で規定
した条件で加熱処理した場合に粗粒化が生じなかった比
較鋼の鋼L及び鋼Nを素材とするものは、芯部硬さと衝
撃値のいずれかが低く、表面硬化部品の実環境での耐久
性は極めて劣化したものとなってしまう。
【0105】
【発明の効果】本発明による表面硬化部品は強度と靭性
に優れ、粗粒化も生じないので、自動車や産業機械など
の各種機械構造部品、特に歯車を代表とする表面硬化部
品として利用することができる。本発明の耐粗粒化肌焼
鋼材は被削性に優れるので、上記の表面硬化部品は、本
発明の耐粗粒化肌焼鋼材を素材とし、これに本発明方法
を適用することによって、比較的容易に製造することが
できる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.1〜0.3%、Si:
    0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.0%、P:
    0.03%以下、S:0.002〜0.2%、Nb:
    0.005〜0.10%、Ti:0.04〜1.0%、
    N:0.002〜0.008%、Cr:0〜2.0%、
    Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%、Al:0〜
    0.10%、残部はFe及び不可避不純物からなる化学
    組成で、鋼中のTi炭硫化物の最大直径が10μm以下
    で、且つ、その量が清浄度で0.05%以上であること
    を特徴とする被削性に優れた耐粗粒化肌焼鋼材。
  2. 【請求項2】素材が、請求項1に記載の鋼材であって、
    表面硬化処理後にHv300以上の芯部硬度と20J/
    cm2 以上の衝撃値を有することを特徴とする強度と靭
    性に優れた表面硬化部品。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の鋼材を、表面硬化処理に
    先立って1150℃以上に加熱してから熱間鍛造するこ
    とを特徴とする強度と靭性に優れた表面硬化部品の製造
    方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の鋼材を、分塊、圧延及び
    熱処理の少なくとも1つの工程を1150℃以上に加熱
    して行い、その後鍛造し、更に表面硬化処理することを
    特徴とする強度と靭性に優れた表面硬化部品の製造方
    法。
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JP2014101565A (ja) * 2012-11-22 2014-06-05 Jfe Bars & Shapes Corp 熱間鍛造後の焼ならし省略可能で、高温浸炭性に優れた肌焼鋼および部品の製造方法

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