JPH11197597A - 金属表面の耐食被覆方法 - Google Patents

金属表面の耐食被覆方法

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JPH11197597A
JPH11197597A JP10006078A JP607898A JPH11197597A JP H11197597 A JPH11197597 A JP H11197597A JP 10006078 A JP10006078 A JP 10006078A JP 607898 A JP607898 A JP 607898A JP H11197597 A JPH11197597 A JP H11197597A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 自己析出型水性樹脂組成物により、金属表面
に形成された樹脂被膜の耐食性・密着性を向上させ、か
つその品質を均一化し得る金属表面耐食被覆方法の提
供。 【解決手段】 金属表面上に、カルボキシル基及び/又
はヒドロキシル基含有水分散性又は水溶解性樹脂、酸、
酸化物、(必要により金属イオン)を含有する自己析出
新型水性樹脂組成物により樹脂被膜を形成し、この被膜
を、それが未硬化状態にある間に、アルコキシメチル
基、メチロール基、イミノ基の2個以上を有する水溶性
アミノ樹脂(10〜100g/l)と、アミン化合物
(0.5〜5.0g/l)を含む水溶液により後処理
し、得られた被膜を乾燥硬化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属表面の耐食被
覆方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、
金属表面上に自己析出型樹脂組成物による樹脂被膜を形
成し、これにそれが未硬化の状態にある間に、ランニン
グ性に優れた後処理剤水溶液による後処理を施して、得
られる樹脂被膜の耐食性及び密着性を向上させる金属表
面の耐食被覆方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属表面を有機被膜形成用樹脂を含む酸
性の水性組成物に接触させることにより、この金属表面
に樹脂被膜を形成せしめることができる樹脂組成物は、
自己析出型被覆用樹脂組成物として知られており、これ
らの種々の例が特公昭47−17630号、特公昭52
−21006号、特公昭54−13435号、および特
開昭61−168673号等に開示されている。これら
従来公知の被覆用樹脂組成物の特徴は、樹脂組成物を清
浄な金属表面に接触させることにより、接触時間ととも
に、厚さあるいは重量が増大する樹脂被膜を形成せしめ
ることができることである。さらに、この被膜形成は、
金属表面上の樹脂組成物の化学作用(エッチングにより
金属表面から溶出した金属イオンが樹脂粒子に作用して
これを金属表面上に析出させる)により達成されるもの
であるから、電着のように反応系に外部から電気を作用
させることなく、金属表面上に樹脂被膜を効果的に形成
せしめることができる。
【0003】しかしながら、従来の自己析出型樹脂組成
物による被膜は、その耐食性や密着性等が十分ではない
ため、金属表面上に形成される自己析出型樹脂被膜の耐
食性及び密着性を一層改良するための種々の手段が開発
された。例えば、未硬化の自己析出型樹脂被膜に対して
化学的処理(後処理)を施す種々の方法が知られてい
る。
【0004】米国特許3795546号には、未硬化の
自己析出型樹脂被膜に、それを加熱乾燥する前に、六価
のクロムとポリアクリル酸を約2.5〜50g/リット
ル含有する水溶液を接触させることにより前記樹脂被膜
の乾燥後の耐食性を改良することが開示されている。し
かしながら、クロムを含有する処理液の使用は環境衛生
上好ましくない。
【0005】特開昭52−68240号には、未硬化の
自己析出型樹脂被膜に、それを加熱乾燥する前に、含窒
素有機化合物、例えばアミン類、カルボン酸アミン塩、
アミノ酸、メラミンおよびアミドの群から選ばれた少な
くとも1種を、主成分として、5〜100g/リットル
の濃度で含有する水溶液、もしくは水分散液を接触させ
ることにより前記樹脂被膜の乾燥後の耐食性を向上させ
ることが開示されている。
【0006】含窒素有機化合物等を用いて、自己析出型
樹脂被膜を後処理することは、得られる樹脂被膜の耐食
性や密着性を改良するために有効な手段である。しかし
ながら、自己析出による被覆法は一般に浸漬法によるた
め、後処理剤として使用する処理液(後処理液)中に、
未硬化自己析出樹脂被膜中の酸成分及び/又は金属イオ
ン(例えば鉄イオン)成分等が溶出し、このため、しば
しば後処理液の安定性が損なわれ(ランニング性が低下
し)、このため常に安定した品質を有する樹脂被膜を得
るという点では必ずしも十分とは言えなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐食性およ
び密着性に優れ、かつこれらの性能を常に安定にして得
ることができる金属表面の耐食被覆方法を提供しようと
するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来技術
の有する上記問題点を解決するための手段について鋭意
検討した結果、金属表面に自己析出型被覆組成物を接触
させ、この金属表面上に未硬化の樹脂被膜を形成させ、
次いで該未硬化の樹脂被膜に、それを加熱乾燥させる前
に、特定の反応性官能基を有する水溶性アミノ樹脂を主
成分としさらにアミン化合物を含有し、ランニング性に
優れた後処理液による後処理液を施し、その後、後処理
された樹脂被膜を乾燥硬化させると、優れた品質を有す
る自己析出型樹脂被膜が得られることを見い出し、本発
明を完成させた。
【0009】本発明の金属表面の耐食被覆方法は、カル
ボキシル基含有モノマー及びヒドロキシル基含有モノマ
ーから選ばれた少なくとも1種の重合生成物を含有する
水分散性又は水溶性有機樹脂と、酸と、酸化剤とを含有
する自己析出型水性樹脂組成物を、金属表面に接触させ
て、前記金属表面上に樹脂被膜を形成し、前記樹脂被膜
に、それが未硬化状態にある間に、1分子当り、アルコ
キシメチル基、メチロール基及びイミノ基から選ばれた
少なくとも2個以上の反応性官能基を有する10〜10
0g/リットルの水溶性アミノ樹脂及び0.5〜5.0
g/リットルの少なくとも1種のアミン化合物を含有す
る水溶液を接触させて、前記未硬化樹脂被覆に後処理を
施し、この後処理された樹脂被覆を乾燥硬化する、こと
を特徴とするものである。本発明の金属表面の耐食被覆
処理方法において、前記アミン化合物は、エチルアミ
ン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミ
ン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミ
ン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピル
アミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルア
ミン、ジメメルエタノールアミン、ジエエルエタノール
アミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ
エタノールアミンから選ばれることが好ましい。本発明
に係る自己析出型水性樹脂組成物用後処理剤は、1分子
当り、アルコキシメチル基、メチロール基及びイミノ基
から選ばれた2個以上の反応性官能基を有する水溶性ア
ミノ樹脂及び、少なくとも1種のアミン化合物とを、1
0:5〜100:0.5の重量比で含むことを特徴とす
るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明方法に用いられる自己析出
型水性樹脂組成物は、カルボキシル基含有モノマー及び
ヒドロキシル基含有モノマーから選ばれた少なくとも1
種の重合生成物を含有する水分散性又は水溶性被膜形成
性有機樹脂と、酸と、酸化剤と、金属イオンとを含有す
るものである。
【0011】本発明方法に用いられる前記被膜形成性有
機樹脂の生成に用いられるカルボキシル基含有モノマー
〔1〕は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイ
ン酸、イタコン酸、及びフマル酸などから選ばれるエチ
レン性不飽和カルボキシモノマーでありまた、ヒドロキ
シル基含有モノマー〔2〕は、例えば、2−ヒドロキシ
エチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレ
ート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒド
ロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアク
リレート及びヒドロキシブチルメタクリレートなどから
選ばれるエチレン性不飽和ヒドロキシルモノマーであ
る。本発明方法に用いられる被膜形成性有機樹脂の重合
生成には、前記カルボキシル基含有モノマー〔1〕及び
ヒドロキシル基含有モノマー〔2〕に加えて、これらと
は異種の1種以上のエチレン性不飽和モノマー〔3〕が
共重合成分として用いられてもよく、このエチレン性不
飽和モノマー〔3〕は、例えば、メチルアクリレート、
エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エ
チルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エ
チルメタクリレート、及びn−ブチルメタクリレートな
どから選ぶことができる。
【0012】また、本発明方法に用いられる被膜形成性
有機樹脂は、多塩基性有機酸、例えばフタル酸、イソフ
タル酸、テレフタル酸などのように、2個以上のカルボ
キシル基を有する有機酸と、多価アルコール、例えば、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−
ヘキサンジオールなどのように2個以上のヒドロキシル
基を有する多価アルコールとのエステル化重合により得
られたポリエステルポリオール化合物から選ぶことがで
きる。本発明方法に用いられる被膜形成性有機樹脂は、
前記重合体共重合体、及びポリエステルポリオールから
選ばれた1種以上からのものである。
【0013】本発明方法に用いられる被膜形成性有機樹
脂は、その分子量に格別の制限はなく、例えば、2〜1
00万の分子量を有することが好ましくは、より好まし
くは10〜100万である。この分子量は、ポリエチレ
ン又はポリアクリル酸エステルを標準物質として用い
て、テトラヒドロフラン中におけるゲルパーミュエーシ
ョンクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0014】本発明方法に用いられる被膜形成性有機樹
脂は、水性エマルジョンとして用いられることが好まし
く、この水性エマルジョンは、通常乳化重合法により得
られることが多いが、その他の重合法により得られた被
膜形成性有機樹脂を水中に乳化分散したものであっても
よい。
【0015】乳化重合により前記樹脂エマルションを得
る場合の重合条件にも特に制限はなく、常法に従えばよ
いが、一例として、少なくとも水、アニオン性界面活性
剤および/またはノニオン性界面活性剤、上記樹脂成分
モノマー、および重合開始剤よりなる混合物を重合反応
に付すことにより、被膜形成用樹脂エマルションを得る
ことができる。
【0016】本発明で使用する自己析出型樹脂組成物
は、上述のようにし得られる被膜形成用有機樹脂と、酸
および酸化剤、および必要に応じ金属イオンを供給しう
る化合物とを混合し、必要に応じさらに水を添加するこ
とにより得ることができる。
【0017】自己析出型樹脂組成物用酸としては、例え
ばジルコンフッ化水素酸、チタンフッ化水素酸、ケイフ
ッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、リン
酸、硝酸等から選ばれる少なくとも1種を使用できる
が、フッ化水素酸を使用することがより好ましい。酸化
剤としては、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、亜硝
酸ナトリウム等を用いることができるが、過酸化水素を
使用するのがより好ましい。金属イオンを供給し得る化
合物としては、それが、樹脂組成物中で安定であれば特
に限定はなく、例えばフッ化第二鉄、硝酸第二鉄、リン
酸第一鉄、硝酸第一コバルト等が挙げられるが、フッ化
第二鉄を用いるのがより好ましい。
【0018】本発明方法に使用される自己析出型水性樹
脂組成物において、前記被膜形成性有機樹脂の含有量
は、樹脂固形分濃度として5〜550g/リットルであ
ることが好ましく、さらに好ましくは50〜100g/
リットルである。また酸の濃度は0.1〜5.0g/リ
ットルであることが好ましく、さらに好ましくは0.5
〜3.0g/リットルである。さらに酸化剤の濃度は、
0.01〜3.0g/リットルであることが好ましく、
さらに好ましくは0.03〜1.0g/リットルであ
る。さらに金属イオンを供給し得る化合物は含まれてい
なくてもよいが、含まれていることが好ましく、それを
用いる場合の濃度は、50g/リットル以下であること
が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0g/リット
ルである。
【0019】本発明方法に使用される自己析出型水性樹
脂組成物は、上記成分の他に、任意成分としてはさら
に、造膜助剤として、例えばトリアルキルペンタンジオ
ールイソブチレート、又はアルキルカルビトール等を含
んでいてもよく、さらに顔料、例えばカーボンブラッ
ク、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、
キナフリドンレッド,ハンザイエロー、又はベンジンイ
エロー等を含有していてもよい。前記造膜助剤は、析出
樹脂被膜を形成するときの最低造膜温度を低下させ、析
出した樹脂の融着をより容易にするために有効なもので
ある。
【0020】本発明方法において、自己析出型水性樹脂
組成物を金属表面に接触させる方法については特に制限
はなく、浸漬法、塗布法、スプレー法などを用いること
ができるが、浸漬法を用いることが好ましい。また、処
理温度、処理時間についても特に制限はないが、浸漬処
理の場合、一般に金属材料を常温、例えば18〜25℃
の組成物中に30〜300秒、好ましくは90〜180
秒浸漬することが好ましい。
【0021】金属表面における樹脂被膜の形成量につい
ても特に制限はないが、乾燥後の被膜の厚さが10〜4
0μmであることが好ましく、20〜30μmがさらに
好ましい。なお、通常、樹脂組成物を金属表面に接触さ
せる前に、この金属表面に脱脂、水洗を施しておくこと
が好ましい。
【0022】本発明方法において、金属表面上に形成さ
れた析出樹脂被膜に対し、それが未硬化状態にある間
に、後処理液による後処理が施される。この後処理液
は、本発明の後処理液を含む水性溶液であって、この後
処理液は、1分子当りアルコキシメチル基、メチロール
基及びイミノ基から選ばれた2個以上の反応性官能基を
有する水溶性アミノ樹脂と、少なくとも11種のアミン
化合物とを、10:5〜100:0.5、好ましくは2
0:2.0〜50:1.0の重量比で含むものである。
【0023】本発明方法において用いられる後処理液
は、前記水溶性アミノ樹脂を、10〜100g/リット
ル、好ましくは20〜50g/リットルの濃度で含み、
かつ前記アミノ化合物を0.5〜5.0g/リットル、
好ましくは1.0〜2.0g/リットルの濃度で含むも
のである。後処理剤及び後処理液において水溶性アミノ
樹脂の含有量が過少であると、得られる樹脂被膜の耐食
性及び密着性が不十分になり、また、それが過多になる
と、その効果が飽和し、かつ相対的に、アミン化合物の
含有量が過少になることによる不都合を生ずる。すなわ
ち、アミン化合物の含有量が過少であると、得られる後
処理液のランニング性(継続使用中の安定性)が不十分
となり、得られる樹脂被膜の品質に変動を生ずる。また
それが過多になると、相対的に水溶性アミノ樹脂の含有
量が過少になることによる上記不都合を生ずる。
【0024】本発明に用いられる水溶性アミノ樹脂は1
分子当り、下記式(1),(2)及び(3)により表さ
れるアルコキシメチル基、メチロール基、及びイミノ基
から選ばれた2個以上の反応性官能基を有するものであ
る。
【化1】 〔但し、上式中、Rは−CH3 ,−C2 5 、又は−C
4 9 基を表す〕本発明において、水溶性アミノ樹脂
は、メチル化メラミン樹脂(メチル化度に限定はなく、
高メチル化体であってもよく、部分メチル化体であって
もよい)、イミノ型メチルメラミン樹脂、イミノ型メチ
ル化メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂、ベンゾ
グアナミン樹脂及びグリコールウリル樹脂などから選ぶ
ことができる。
【0025】本発明において、後処理剤又は後処理液に
用いられるアミン化合物は、モノアルキルアミン、ジア
ルキルアミン、トリアルキルアミン、モノアルケニルア
ミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、モ
ノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、及びト
リアルカノールアミン、例えばエチルアミン、プロピル
アミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジメチル
アミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチル
アミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、アリ
ルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジメチ
ルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エタ
ノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールア
ミンから選ぶことができる。上記アルキルアミン、アル
ケニルアミン及びアルカノールアミンにおけるアルキル
基、アルケニル基及びアルカノール基の各々は、1〜1
5個の炭素原子を有していることが好ましい。
【0026】本発明に用いられる後処理剤又は後処理液
には、必要により1種以上のアンモニウム塩が含まれて
いてもよい。このアンモニウム塩は、特開平3−505
841号公報及び特開平5−186889号公報に記載
のもの、例えば、炭酸水素アンモニウム及び水酸化アン
モニウムから選ぶことができる。
【0027】本発明方法において、後処理工程の作用と
して、未硬化状態の自己析出樹脂被膜を後処理液に接触
させることにより、この後処理液中の水溶性アミノ樹脂
成分が、未硬化状態の自己析出樹脂被膜中に浸透し、被
膜の加熱乾燥時に樹脂被膜と反応し(水溶性アミノ樹脂
中のアルコキシメチル基、メチロール基、及び/又はイ
ミノ基と、樹脂被膜中のカルボキシル基、及び/又は水
酸基との架橋反応)、さらには樹脂被膜の最表面にアミ
ノ樹脂成分の自己縮合被膜層が形成され、よりバリヤー
性のある被膜が形成され、それによって、樹脂被膜の耐
食性及び密着性を向上させると考えられる。
【0028】本発明方法の大きな特徴の一つは、後処理
液がランニング性に優れていることである。後処理液に
よる樹脂被膜の後処理に伴い、後処理液中に、フッ化水
素酸(酸成分)や鉄イオン(金属イオン)などが溶出混
合する。これらの溶出物は後処理液中の水溶性アミノ樹
脂成分の凝集を引き起こし後処理液の安定性を著しく低
下させる。そのため後処理された被膜の品質が変動す
る。しかし、使途処理液中に、アミン化合物が含有され
ることにより、溶出する酸成分が中和され、および鉄イ
オンがキレート化され、それにより、水溶性アミノ樹脂
に対する悪影響が防止され、後処理液が安定化される。
【0029】本発明方法の後処理工程において、通常後
処理液温は10〜40℃であることが好ましく、より好
ましくは20〜25℃であり、処理時間は20〜180
秒の範囲内にあることが好ましい。液温が10℃未満で
は、加熱乾燥時に樹脂被膜にクラックが生じやすく、ま
たそれが40℃を超えると加熱乾燥後の被膜が白化しや
すく被膜外観上好ましくない傾向を生ずる。また、処理
時間が20秒未満では十分な後処理の効果が得られず、
それが180秒を超えると被膜の密着性および被膜外観
(被膜にムラが生じる)が損なわれる傾向を生ずる。
【0030】上述の後処理工程を経て樹脂被膜は乾燥硬
化に供される。この乾燥硬化条件は、自己析出型樹脂組
成物に使用される被膜形成用有機樹脂の種類によって異
なるが、通常110〜200℃の温度において、5〜3
0秒の範囲の加熱乾燥が施される。
【0031】
【実施例】本発明を下記実施例および比較例によりさら
に説明する。
【0032】下記実施例及び比較例において用いられる
自己析出型水性樹脂組成物用被膜形成性有機樹脂を下記
のようにして製造した。 〔被膜形成性有機樹脂の製造例〕 <樹脂(A)>メタクリル酸5部、2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレート5部、スチレン12部、アクリロニト
リル40部、及びアクリル酸エチル38部より成る単量
体成分に、アクリル酸エステル系反応性界面活性剤1部
(樹脂重量に対して1重量%)、過硫酸アンモニウム
0.3部、並びに水398.7部を混合し、この混合物
を75℃における乳化重合に供して、樹脂固形分含有量
が20%の被膜形成性有機樹脂(A)を製造した。
【0033】<樹脂(B)>メタクリル酸8部、メタク
リル酸メチル12部、アクリロニトリル40部、アクリ
ル酸エチル20部、及びアクリル酸ブチル20部より成
る単量体成分に、アクリル酸エステル系反応性界面活性
剤1部(樹脂重量に対して1重量%)、過硫酸アンモニ
ウム0.3部、並びに水398.7部を混合し、この混
合物を75℃における乳化重合に供して、樹脂固形分含
有量が20%の被膜形成性有機樹脂(B)を製造した。
【0034】〔後処理液の調製例〕 <後処理液(A)>メチロール基含有水溶性樹脂(固形
分:88%)(*)1 を、樹脂の濃度が10g/リット
ルになるように脱イオン水に溶解し、次にこの溶液中
に、トリエタノールアミンを、その濃度が0.2g/リ
ットルになるように加え、全量の脱イオン水により1リ
ットルに調整して後処理液(A)を得た。 〔註〕(*)1 …部分メチル化メラミン樹脂(三井サイ
テック社製)
【0035】<後処理液(B)〜(G)>後処理液
(B)〜(G)の各々を、前記後処理液(A)と同様に
して調製した。但し、成分及びその添加量を表1に記載
されているように変更した。
【0036】実施例1 下記組成物を有する自己析出型樹脂組成物(1)からな
る処理浴の浴温を20〜22℃に保ち、その中に、あら
かじめ清浄された冷延鋼板(70×150×1mmサイ
ズ)を180秒間浸漬して塗装し、次にこれを水洗した
のち、得られた未硬化の自己析出樹脂被膜を、前記後処
理液(A)中に24℃において浸漬処理し、熱風オーブ
ンにより180℃×20分乾燥した。得られた被膜塗装
板を、後記被膜性能試験に供した。 〔供試自己析出型被覆組成物(1)〕 成分 配合量〔g/リットル〕 樹脂(A) 250.00 造膜助剤(A) 4.00 フッ化水素酸 1.00 フッ化第二鉄 3.00 過酸化水素 0.10 脱イオン化 (全量が1リットルになる量) 上記造膜助剤(A)は、トリアルキルペンタンジオール
イソブチレートであり、これを添加することにより、得
れた組成物(1)の最低造膜温度が20℃付近となっ
た。
【0037】実施例2 実施例1と同様にして、樹脂被膜塗装板を作製した。但
し、前記の自己析出型被覆組成物(1)を用いて得られ
た未硬化の自己析出型樹脂被膜を、表1に示される組成
にて調製した後処理液(B)中に24℃にて浸漬処理
し、熱風オーブンで180℃×20分乾燥後、各被膜性
能試験に供した。
【0038】実施例3 実施例1と同様にして樹脂被膜塗装板を作製した。但
し、下記組成にて調製した自己析出型被覆組成物(2)
を用いて塗装を実施し、得られた未硬化の自己析出型樹
脂被膜を表1に示される組成にて調製した後処理液
(C)中に24℃にて浸漬処理し、熱風オーブンで18
0℃×20分乾燥後、各被膜性能試験に供した。 〔供試自己析出型被覆組成物(2)〕 成分 配合量〔g/リットル〕 樹脂(B) 250.00 造膜助剤(A) 5.00 フッ化水素酸 1.00 フッ化第二鉄 3.00 過酸化水素 0.10 脱イオン化 (全量が1リットルになる量) 上記造膜助剤(A)は、トリアルキルペンタンジオール
イソブチレートであり、これを添加することにより、組
成物(2)の最低造膜温度が20℃付近となった。
【0039】実施例4 実施例1と同様にして樹脂被膜塗装板を作製した。但
し、自己析出型水系ポリエステル樹脂(商標:アロンメ
ルト、固形分30%;東亞合成社製)を用い下記の組成
にて調製した自己析出型被覆組成物(3)を用いて塗装
を実施し、得られた未硬化の自己析出型樹脂被膜を表1
に示される組成にて調製した後処理液(D)に24℃に
て浸漬処理し、熱風オーブンで180℃×20分乾燥
後、各被膜性能試験に供した。 〔供試自己析出型被覆組成物(3)〕 成分 配合量〔g/リットル〕 水系ポリエステル樹脂 165.00 フッ化水素酸 1.00 フッ化第二鉄 3.00 過酸化水素 0.10 脱イオン化 (全量が1リットルになる量)
【0040】比較例1〜3 実施例3と同様にして樹脂被膜塗装板を作製した。但
し、前記の自己析出型被覆組成物(2)を用いて塗装を
実施し、得られた未硬化の自己析出型樹脂被膜を表1に
示される組成にて調製した後処理液(E)〜(G)の各
々の中に24℃にて浸漬処理し、熱風オーブンで180
℃×20分乾燥後、各被膜性能試験に供した。
【0041】比較例4 実施例1と同様にして、樹脂被膜塗装板を作製した。但
し、前記の自己析出型被覆組成物(1)を用いて塗装を
実施し、得られた未硬化の自己析出型樹脂被膜を、後処
理を施すことなく熱風オーブンで180℃×20分乾燥
後、各被膜性能試験に供した。
【0042】被膜性能試験方法を下記に説明する。 (1)被膜の厚さ 供試板の上部、中部及び下部3箇所の厚さを測定し、そ
の平均値を表1に示す。 (2)密着性(ゴバン目テープ剥離試験) 供試板に40℃において、240時間の温水浸漬を施
し、その前後の供試板にたて、よこ、1mm間隔の100
個のます目を刻み、粘着テープを貼着して、これを剥離
し、被膜の残存する目数を測定した。その結果浸漬前及
び浸漬後を表1に表示する。 (3)耐食性 供試板の樹脂被膜に、金属素地まで達するクロスカット
を施し、これを240時間の塩水噴霧試験(JISZ−
2371)に供した。試験後、クロスカット部に発生し
た錆又はふくれの巾(両側最大:mm)を測定した。
【0043】〔後処理後の安定性評価〕実施例1〜4及
び比較例1〜3の各々において、1リットル当り樹脂被
膜組成板(未硬化)の0.05m2 〜1.0m2 及び
2.0m2 の面積に対して後処理を施し、使用後の後処
理液を室温において1週間経過し、液の性状を目視にて
判定した。その結果を表2に示す。 ○:異常なし △:白濁あり ×:固化物あり
【0044】実施例2及び3において、1リットル当り
2.0m2 の面積について後処理を施した後、得られた
樹脂被膜を前記被膜性能試験に供した。その結果を表3
に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】表1〜3の結果より明らかなように、本発
明方法に従って、実施例1〜4において使用された後処
理液は、安定性が良好で、得られた樹脂被膜の耐食性お
よび密着性も優れていた。しかし、比較例1〜3では、
得られた樹脂被膜の耐食性及び密着性、並びに後処理液
の安定性のいずれか一つ以上が不満足なものであった。
【0049】
【発明の効果】本発明の金属表面の耐食被覆方法は、本
発明に係る特定の後処理液を用いることにより耐食性お
よび付着性に優れ、かつ常に安定な品質(耐食性、付着
性)を提供できる自己析出型樹脂被膜を形成することが
できる。また本発明方法に用いる後処理液は、安定性に
優れ、樹脂被膜を継続して後処理することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09D 201/08 C09D 201/08 C23C 22/06 C23C 22/06 22/74 22/74

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボキシル基含有モノマー及びヒドロ
    キシル基含有モノマーから選ばれた少なくとも1種の重
    合生成物を含有する水分散性又は水溶性有機樹脂と、酸
    と、酸化剤とを含有する自己析出型水性樹脂組成物を、
    金属表面に接触させて、前記金属表面上に樹脂被膜を形
    成し、 前記樹脂被膜に、それが未硬化状態にある間に、1分子
    当り、アルコキシメチル基、メチロール基及びイミノ基
    から選ばれた少なくとも2個以上の反応性官能基を有す
    る10〜100g/リットルの水溶性アミノ樹脂、及び
    0.5〜5.0g/リットルの少なくとも1種のアミン
    化合物を含有する水溶液を接触させて、前記未硬化樹脂
    被覆に後処理を施し、 この後処理された樹脂被覆を乾燥硬化する、ことを特徴
    とする金属表面の耐食被覆方法。
  2. 【請求項2】 前記アミン化合物が、エチルアミン、プ
    ロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジ
    メチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ
    ブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミ
    ン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミ
    ン、ジメメルエタノールアミン、ジエエルエタノールア
    ミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエ
    タノールアミンから選ばれる、請求項1に記載の金属表
    面の耐食被覆処理方法。
  3. 【請求項3】 1分子当り、アルコキシメチル基、メチ
    ロール基及びイミノ基から選ばれた2個以上の反応性官
    能基を有する水溶性アミノ樹脂、及び少なくとも1種の
    アミン化合物とを10:5〜100:0.5の重量比で
    含むことを特徴とする自己析出型水性樹脂組成物用後処
    理剤。
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