JPH1118767A - 新規モノクローナル抗体およびその用途 - Google Patents

新規モノクローナル抗体およびその用途

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JPH1118767A
JPH1118767A JP9181319A JP18131997A JPH1118767A JP H1118767 A JPH1118767 A JP H1118767A JP 9181319 A JP9181319 A JP 9181319A JP 18131997 A JP18131997 A JP 18131997A JP H1118767 A JPH1118767 A JP H1118767A
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JP
Japan
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monoclonal antibody
antibody
cryptosporidium
oocysts
oocyst
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JP9181319A
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English (en)
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Motohiro Izeki
基弘 井関
Isao Kimata
勲 木俣
Shigehiko Uni
茂彦 宇仁
Yoshinobu Oga
喜信 大賀
Takahiro Nakamura
隆広 中村
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Fujifilm Wako Pure Chemical Corp
Original Assignee
Wako Pure Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 クリプトスポリジウム属原虫のオーシス
トに特異的なIgMクラスに属する新規モノクローナル
抗体およびそれを産生するハイブリドーマ。蛍光物質、
特に多分子のFITCで標識された該モノクローナル抗
体、該モノクローナル抗体を用いた検体中のクリプトス
ポリジウム属原虫オーシストの測定方法、並びにそのた
めの試薬。 【効果】 本発明の新規モノクローナル抗体は、従来の
抗体よりも多分子の蛍光物質で標識可能なため、クリプ
トスポリジウム属原虫オーシストが極微量しか含まれな
い検体についても直接法を用いることができ、したがっ
て、該原虫オーシストをより簡便かつ迅速に、精度よく
測定することが可能となり、クリプトスポリジウム症の
水系集団発生の予防に特に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クリプトスポリジ
ウム属原虫のオーシスト抗原特異的な新規モノクローナ
ル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドー
マ、該モノクローナル抗体を用いたクリプトスポリジウ
ム属原虫オーシストの測定方法およびそのための試薬に
関する。特に、本発明は、多分子の蛍光物質で標識され
た該モノクローナル抗体、およびそれを用いたクリプト
スポリジウム属原虫オーシストの測定方法およびそのた
めの試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】クリプトスポリジウム症は、クリプトス
ポリジウム属(Cryptosporidium )に属する原虫を病原
体とする原虫感染症であり、激しい下痢や腹痛を引き起
こす。該疾患に対する有効な薬剤や治療方法は未だ開発
されておらず、対症療法を行いつつ自己の免疫力による
自然治癒を待つほかないのが現状である。したがって、
エイズ患者や癌または臓器移植で免疫抑制剤の投与を受
けている患者などが本原虫に感染すると、免疫機能が著
しく低下しているために、下痢が長時間持続して極めて
重篤な症状を示し、死に至る場合も少なくない。
【0003】クリプトスポリジウム属原虫は、哺乳類、
鳥類等の胃や腸管の粘膜等に寄生する消化管寄生原虫で
ある。このうち、ヒトに寄生して下痢症を引き起こすの
はC.パルブム(C. parvum )であるが、ニワトリに自
然感染しているC.ベイレイ(C. baileyi)やウシやネ
ズミに自然感染しているC.ミューリス(C. muris)な
どもヒトへの感染あるいはその可能性が報告されてい
る。
【0004】クリプトスポリジウム属原虫は宿主体内で
無性生殖と有性生殖を繰り返しながら増殖する。有性生
殖によって形成されるオーシスト(接合子嚢)の多く
は、糞便とともに宿主の体外に放出されて他の個体への
感染源となる。感染者の糞便中には、ピーク時で約10
7 個/mlものオーシストが含まれる。感染経路として
は、患者の手指などを介してのオーシストの経口摂取に
よるヒトからヒトへの感染、患畜との接触を介しての酪
農または獣医関係者の感染などがあげられるが、最も問
題となるのは飲料水あるいは公園の池やプールの水を介
した集団感染である。アメリカでは既にこの種の水系感
染による本原虫症の集団発生が多数報告されており、日
本でも、最近、水道水汚染による発症例が報告され、水
道業界に衝撃を与えた。
【0005】クリプトスポリジウム属原虫のオーシスト
は、塩素消毒やオゾン処理に対して著しく強い抵抗性を
有し、また、通常の浄水処理では原水中に含まれるオー
シストを完全に除去することはできない。したがって、
クリプトスポリジウム症の水系集団発生を予防するため
には、原水および最終処理水の迅速且つ確実な検査モニ
タリング方法を確立することが必須である。
【0006】現在、唯一利用可能な本原虫の検出用キッ
ト(Hydrofluor Combo Testkit;ENSYS社,米国)
は、クリプトスポリジウムのオーシストに対するIgG
クラスのモノクローナル抗体を一次抗体とし、フルオレ
セインイソチオシアネート(以下、FITCと称する)
標識した抗IgGを二次抗体として用いる間接免疫蛍光
法を利用したものである。しかしながら、本キットは、
(1)操作がひじょうに煩雑で検出までに時間を要す
る、並びに(2)使用されるモノクローナル抗体が特異
性に欠けるなどの欠点を有しており、迅速且つ高感度・
高精度という上記の要件を満足するものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、操作が簡便で検出までに要する時間が短く、ク
リプトスポリジウム属原虫のオーシストをより特異的に
検出することができる新規クリプトスポリジウム属原虫
オーシストの測定方法、該測定方法に好適に使用される
新規抗クリプトスポリジウムオーシストモノクローナル
抗体、該抗体を産生するハイブリドーマおよび該抗体を
含んでなる新規クリプトスポリジウム属原虫オーシスト
の測定用試薬を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、C.パルブムお
よびC.ミューリスのオーシストのそれぞれに対して特
異的親和性を有する、IgMクラスに属する新規モノク
ローナル抗体を作製することに成功した。さらに、該モ
ノクローナル抗体の蛍光標識化を試みたところ、従来の
IgGクラス抗体に比してひじょうに多分子の蛍光物質
で標識することができた。従来の抗体は標識できる蛍光
物質の数が少なく、水中に含まれるようなごく微量のク
リプトスポリジウム属原虫オーシストを検出するために
は、より高感度な間接免疫蛍光法を採用しなければなら
なかった。これに対し、本発明者らが作製した該新規モ
ノクローナル抗体では、多分子蛍光標識が可能なため、
より簡便な直接法によっても高感度に該原虫オーシスト
を検出することができ、検出までに要する時間を大きく
短縮することに成功した。また、該新規モノクローナル
抗体は、従来の抗体にみられるような検体中に含まれる
妨害物質との非特異的な交差反応性を示さず、該原虫オ
ーシストを精度よく測定できることを確認して本発明を
完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、クリプトスポリジウ
ム属に属する原虫のオーシスト抗原に対して特異的に親
和性を有し、且つIgMクラスに属するモノクローナル
抗体、および該モノクローナル抗体を産生するハイブリ
ドーマである。また、本発明は、蛍光物質、特にFIT
Cで標識された上記モノクローナル抗体、就中、抗体1
分子あたりに標識される蛍光物質の数が4〜25分子で
ある上記蛍光標識モノクローナル抗体である。さらに、
本発明は、検体、特に水または糞便を、上記のいずれか
のモノクローナル抗体と反応させる工程を含む検体中の
クリプトスポリジウム属原虫オーシストの測定方法であ
る。特に、本発明は、検体を上記のいずれかの蛍光標識
モノクローナル抗体と反応させ、形成される免疫複合体
の発する蛍光を測定する工程を含む検体中のクリプトス
ポリジウム属原虫オーシストの測定方法であり、就中、
蛍光を発する該免疫複合体を、蛍光顕微鏡にて検出・計
数することを特徴とする上記測定方法である。また、本
発明は、上記のいずれかのモノクローナル抗体を含む、
検体、特に水または糞便中のクリプトスポリジウム属原
虫オーシストの測定用試薬である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の新規モノクローナル抗体
は、下記性状を有することを特徴とする。 (1)クリプトスポリジウム属に属する原虫のオーシス
トに対して特異的に親和性を有する。 (2)免疫グロブリンクラスがIgMに属する。
【0011】本発明のモノクローナル抗体が親和性を有
するオーシストは、クリプトスポリジウム属に属する原
虫由来のものであれば特に限定されないが、例えば、ヒ
トあるいはウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サル、ウ
サギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター等の哺
乳動物またはニワトリ等の鳥類に感染して下痢症を引き
起こす原虫のオーシスト、より具体的にはC.パルブ
ム、C.ミューリスおよびC.ベイレイからなる群より
選ばれる原虫由来のオーシストが例示される。
【0012】本発明のモノクローナル抗体が認識する抗
原決定基は、該モノクローナル抗体がクリプトスポリジ
ウムのオーシストを特異的に認識し得る限り、オーシス
トを構成するいかなる抗原性物質上に存在してもよく、
例えば、オーシスト壁を構成するタンパク質、抗原性ペ
プチド、糖鎖抗原等の一領域が挙げられる。
【0013】本発明のモノクローナル抗体は、以下の方
法により調製されるクリプトスポリジウムオーシストに
特異的に親和性を有する抗体産生細胞を、骨髄腫細胞と
融合させてハイブリドーマを形成させ、該ハイブリドー
マをクローン化し、上記クリプトスポリジウムオーシス
ト特異的抗体を産生するクローンを選択することによっ
て製造される。抗原となるオーシストは、クリプトスポ
リジウム属原虫に感染した動物の糞便から、ショ糖遠心
浮遊法などの常法を用いて処理することにより単離精製
してもよいし、あるいは該感染動物から原虫株を分離、
維持しながら、要時調製することもできる。C.パルブ
ム原虫株は該原虫に感染した下痢症患者やウシ、ヒツ
ジ、ブタなどから、C.ミューリス原虫株は該原虫に感
染したネズミまたはウシなどから、またC.ベイレイ原
虫株は該原虫に感染したニワトリやハトなどからそれぞ
れ常法により分離することができ、該分離株はマウス等
の感染し得る実験動物を感染させることにより維持する
ことができる。オーシストは、必要に応じて、該感染動
物から採取した糞便を常法で処理して単離精製すればよ
い。
【0014】感作抗原としては、得られたオーシストを
PBS等の適当な緩衝液中に懸濁してそのまま用いて
も、ホモジナイズしたものを用いてもよい。オーシスト
懸濁液は通常107 〜109 個/ml程度に調製する。
また、該オーシストから所望の抗原性物質をさらに単離
精製し、適当な緩衝液中に溶解して感作抗原とすること
もできる。抗原溶液は通常100〜1000μg/ml
程度に調製すればよい。また、抗原性物質の抗原決定基
(エピトープ)が既知であれば、該エピトープ配列を合
成してアルブミンなどの適当なキャリヤータンパク質に
架橋して用いることも可能である。
【0015】該抗原を免疫感作させる動物としてはマウ
ス、ラット、ウマ、ヤギ、ウサギなどが例示される。好
ましくはマウス、より好ましくはBALB/cマウスで
ある。このとき、可溶性抗原は、被免疫動物の抗原への
応答性を高めるため、アジュバントと混合して投与する
ことができる。本発明において用いられるアジュバント
としては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フ
ロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(M
PL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TD
M)、百日咳ワクチン(Bordetella pertussis vaccin
e)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジ
ュバント(ALUM)、およびこれらの組合せが例示さ
れるが、初回免疫時にFCA、追加免疫時にFIAを使
用する組み合わせが特に好ましい。
【0016】免疫方法は、使用する抗原の種類やアジュ
バント混合の有無等により、注射部位、スケジュールな
どを適宜変化させることができるが、例えば、不溶性抗
原懸濁液またはアジュバント混合抗原溶液0.1〜1m
l(オーシスト107 〜10 8 個またはオーシスト由来
抗原物質1〜100μg)を腹腔内、皮下、筋肉内また
は(尾)静脈内に注射し、初回免疫から約4〜14日毎
に1〜4回追加免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最
終免疫を行う。可溶性抗原をアジュバントを使用せず用
いる場合には、抗原量を多くして腹腔内注射してもよ
い。抗体価は追加免疫の約5〜6日後に採血して調べ
る。最終免疫より約3〜5日後、該免疫動物から脾細胞
を分離して抗体産生細胞を得る。
【0017】骨髄腫細胞としては、マウス、ラット、ヒ
ト等由来のものが使用される。例えばマウスミエローマ
P3X63−Ag8、P3X63−Ag8−U1、P3
NS1−Ag4、SP2/0−Ag14、P3X63−
Ag8・653等が例示されるが、抗体産生細胞と骨髄
腫細胞とは同種動物、特に同系統の動物由来であること
が好ましい。骨髄腫細胞は凍結保存するか、ウマ、ウサ
ギまたはウシ胎児血清を添加した一般的な培地で継代し
て維持することができる。細胞融合には対数増殖期の細
胞を用いるのが好ましい。
【0018】抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させて
ハイブリドーマを形成させる方法としては、ポリエチレ
ングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイル
スを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが例示
される。例えばPEG法の場合、約30〜50%のPE
G(平均分子量1,000 〜4,000 )を含む適当な培地また
は緩衝液中に脾細胞と骨髄腫細胞を1〜10:1、好ま
しくは2〜8:1の混合比で懸濁し、温度約30〜40
℃、pH7〜8の条件下で、約1〜3分間程度反応させ
ればよい。反応終了後、PEG溶液を除いて培地に再懸
濁し、セルウェルプレート中に播種して培養を続ける。
【0019】融合操作後の細胞を選択培地で培養して、
ハイブリドーマの選択を行う。選択培地は、親細胞株が
死滅し、融合細胞のみが増殖し得る培地であり、通常ヒ
ポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培
地が使用される。ハイブリドーマの選択は、通常融合操
作の1〜7日後に、培地の一部、好ましくは約半量を選
択培地と交換することによって開始し、さらに2、3日
毎に同様の培地交換を繰り返しながら培養することによ
り行う。顕微鏡観察によりコロニーが生育しているウェ
ルをチェックする。
【0020】生育しているハイブリドーマが所望の抗体
を産生しているかどうかを知るには、培養上清を採取し
て抗体アッセイを行えばよい。抗体価は、例えば固相化
したクリプトスポリジウムオーシストに該上清を加えて
反応させ、さらに蛍光物質、酵素、RI等で標識した二
次抗体(抗グロブリン、抗IgG、抗IgM血清等)を
反応させて測定することができる。このようにして適切
な抗体を産生しているウェルを得る。しかしながら、該
ウェル中のコロニーはなお、抗体産生能において不均一
な細胞集団であると考えられるので、さらに限界希釈
法、軟寒天法、蛍光励起セルソーターを用いた方法等に
より単一クローンを分離する必要がある。例えば限界希
釈法の場合、ハイブリドーマコロニーを1細胞/ウェル
前後となるように培地で希釈して培養することにより目
的とするモノクローナル抗体を産生するクローンを単離
することができる。得られた抗クリプトスポリジウムオ
ーシストモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、約
10%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)あ
るいはグリセリン等の凍結保護剤の共存下に凍結させて
−70〜−196℃で保存すると、約半年〜半永久的に
保存可能である。細胞は用時37℃前後の恒温槽中で急
速融解して使用する。凍結保護剤の細胞毒性が残存しな
いようによく洗浄してから使用するのが望ましい。
【0021】本発明の新規モノクローナル抗体はIgM
クラスに属する。上記のようにして得られるハイブリド
ーマが産生する抗クリプトスポリジウムオーシストモノ
クローナル抗体がIgM抗体であるかどうかは、該ハイ
ブリドーマを一般的な条件で培養し、その培養上清中に
分泌された抗体のクラスを市販の抗体クラス・サブクラ
ス判定用キットなどを用いて分析することにより知るこ
とができる。
【0022】本発明のIgMクラスに属する新規抗クリ
プトスポリジウムオーシストモノクローナル抗体を産生
するハイブリドーマのうち、C.パルブムのオーシスト
に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ
Cp−OW−1株およびC.ミューリスのオーシストに
対するモノクローナル抗体を産生するCm−19株は本
発明者らによって新たに分離され、ブダペスト条約に基
づく国際寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学
工業技術研究所(〒305 茨城県つくば市東1丁目1
番3号)に1997年6月25日付で国内寄託され、そ
れぞれ受託番号として生命研菌寄第956号(FERM
P−16285)および生命研菌寄第957号(FE
RM P−16286)が付されている。
【0023】モノクローナル抗体の取得は、その必要量
やハイブリドーマの性状等によってマウス腹水から取得
するか、細胞培養によるか適宜選択できる。マウス腹腔
内で増殖可能なハイブリドーマは腹水から数mg/ml
の高濃度で得ることができる。インビボで増殖できない
ハイブリドーマは細胞培養の培養上清から取得する。細
胞培養によれば、抗体産生量はインビボより低いが、腹
腔内に含まれる免疫グロブリンや他の夾雑物質の混入が
ないという利点がある。
【0024】マウス腹腔内から取得する場合、例えば、
予めプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペ
ンタデカン)を投与したBALB/cマウスの腹腔内へ
ハイブリドーマ(約106 個以上)を移植し、約1〜3
週間後に貯留した腹水をタッピングにより採取する。異
種ハイブリドーマ(例えばマウスとラット)の場合に
は、ヌードマウス、放射線処理マウスを使用する。マウ
スは生存させておけば再度使用可能である。
【0025】一方、細胞培養上清から抗体を取得する場
合、例えば、細胞維持に用いられる静置培養法をそのま
まスケールアップして行えばよい。血清は抗体精製に不
便な点が多いので少なくすることが望ましい。
【0026】腹水、培養上清からのモノクローナル抗体
の精製は、免疫グロブリンの精製法として従来既知の硫
安分画法、ポリエチレングリコール分画法、エタノール
分画法、陰イオン交換クロマトグラフィー法、ゲル濾過
法等を応用することで、容易に達成される。本発明のモ
ノクローナル抗体はIgMクラスに属することから、例
えば、セファデックスG200のようなIgM精製用カ
ラムを用いて精製することができる。夾雑するIgGを
除くためにプロテインA−セファロースカラム等を用い
ることもできる。
【0027】本発明の新規モノクローナル抗体を用いて
検体中のクリプトスポリジウム属原虫オーシストを迅速
に測定するには、該モノクローナル抗体を標識物質で直
接標識して検体と反応させる直接法(1ステップ法)
で、しかも該標識を最も簡便に検出し得る方法を採用す
ることが望ましい。かかる条件に適した標識物質として
蛍光物質が例示される。したがって、本発明はまた、蛍
光物質で標識された上記の抗クリプトスポリジウムオー
シストモノクローナル抗体である。
【0028】本発明において用いられる蛍光物質は、免
疫蛍光法において一般的に使用されるいかなる物質であ
ってもよく、例えば、フルオレセイン、FITC、ロー
ダミン、ローダミンXイソチオシアネート、スルフォロ
ーダミン101、ルシファーイエロー、アクリジン、ア
クリジンイソチオシアネート、リボフラビン等が挙げら
れる。好ましくは、FITCが例示される。
【0029】本発明の蛍光標識モノクローナル抗体は、
好ましくは1分子あたりに標識される蛍光物質の数が4
〜25分子のものである。従来公知のモノクローナル抗
体では抗体1分子あたりに標識される蛍光物質はせいぜ
い2分子であり、そのため、極微量のクリプトスポリジ
ウムを検出するにはより高感度な間接免疫蛍光法(2ス
テップ法)を採用しなければならなかったが、本発明の
蛍光標識モノクローナル抗体は標識される蛍光物質数が
飛躍的に増大したことによって、直接法によっても微量
の該原虫オーシストを検出することが可能である。本発
明のモノクローナル抗体にはさらに多くの蛍光物質を標
識することも可能であるが、逆に抗原との反応性が低下
するので好ましくない。
【0030】蛍光物質の標識は、当分野で一般に使用さ
れる方法により行うことができる。すなわち、適当な緩
衝液中に本発明のモノクローナル抗体と蛍光物質とを
1:10〜100のモル比で混合、遮光下に数時間攪拌
した後、予め平衡化しておいたセファデックスカラム等
を用いて遊離の蛍光物質を除去することによって調製す
ることができる。
【0031】本発明はまた、上記の新規抗クリプトスポ
リジウムオーシストモノクローナル抗体を用いた検体中
のクリプトスポリジウム属原虫オーシストの測定方法で
ある。該方法は検体と該抗体とを反応させ、形成される
免疫複合体を測定する工程を含むものであれば特に限定
されず、直接法と間接法、ホモジニアス法とヘテロジニ
アス法のいずれを使用してもよく、また、免疫複合体の
検出に標識としてRIを用いるラジオイムノアッセイ、
アルカリホスファターゼやパーオキシダーゼ等の酵素を
用いるエンザイムイムノアッセイ、蛍光物質を用いる蛍
光イムノアッセイのいずれを採用してもよい。間接法を
用いる場合、二次抗体として、例えば抗マウスIgMポ
リクローナル抗体等を使用すればよい。該二次抗体の調
製法、並びに抗体のRIおよび酵素標識法は、当分野で
慣用の方法を用いて行うことができる。
【0032】本発明の測定方法の好ましい態様は、検体
を上記のいずれかの新規蛍光標識モノクローナル抗体と
反応させ、形成される免疫複合体の発する蛍光を測定す
る工程を含むものである。例えば、検体中の抗原を適当
な固相に結合させ、これに該蛍光標識モノクローナル抗
体溶液を加えて室温下で20〜60分インキュベートし
た後、反応液を除き、よく洗浄して未反応の抗体を除去
してから、固相に結合した免疫複合体の発する蛍光を測
定する方法が挙げられる。蛍光の測定は、蛍光光度計に
よって定量的に測定し、標準曲線からクリプトスポリジ
ウム属原虫オーシストの数を算出する方法、あるいは蛍
光顕微鏡を用いて直接的に蛍光を発する該原虫オーシス
トを計数する方法がある。
【0033】本発明の測定方法のより好ましい態様は、
検体を上記のいずれかの新規蛍光標識モノクローナル抗
体と反応させ、形成される免疫複合体の発する蛍光を蛍
光顕微鏡にて検出・計数する工程からなる方法である。
具体的な例として、検体をスライドグラスに塗抹、乾燥
させ、これに該蛍光標識モノクローナル抗体溶液を加え
て室温下で20〜60分インキュベートした後、反応液
を除き、よく洗浄して未反応の抗体を除去してから、適
当な封入剤で封入し、蛍光顕微鏡下で観察して蛍光を発
する原虫オーシストを計数する方法が挙げられる。
【0034】本発明の測定方法により測定される検体は
特に制限はないが、好ましくは水または糞便が例示され
る。検体が水の場合、例えば、クリプトスポリジウム属
原虫が通過できない孔径(4μm以下、好ましくは1μ
m以下)の濾過膜、好ましくはセルロースアセテート膜
またはオムニポア膜を、適当な洗浄液で十分洗浄した
後、好ましくはさらに適当なブロッキング液でブロッキ
ングした後、検体をアプライし、好ましくはブロッキン
グを行った後、本発明の蛍光標識モノクローナル抗体を
添加し、上記と同様に反応させて蛍光顕微鏡で観察すれ
ばよい。検体が糞便の場合は、スライドグラスに塗抹し
て上記と同様に測定することができる。
【0035】さらに、本発明は上記のいずれかの新規抗
クリプトスポリジウムオーシストモノクローナル抗体を
含む検体中のクリプトスポリジウム属原虫オーシストの
測定用試薬である。測定原理として直接法を用いる場
合、該試薬は、例えばRI、酵素、蛍光物質等で標識さ
れた該モノクローナル抗体を適当な緩衝液中に溶解した
溶液の他、標識検出用試薬、陽性対照としてのクリプト
スポリジウム原虫オーシスト、好ましくは不活化した該
原虫オーシスト、ブロッキング液、洗浄液等から構成さ
れる。洗浄液としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SD
S)やポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートな
どのイオン性または非イオン性界面活性剤あるいはゼラ
チン等を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の
緩衝液(さらにアジ化ナトリウムを含有してもよい)
が、ブロッキング液としてはウシ血清アルブミン(BS
A)や非イオン性界面活性剤(例えばポリオキシエチレ
ンソルビタンモノラウレート等)などを含有するPBS
等の緩衝液(さらにアジ化ナトリウムを含有してもよ
い)が例示される。バックグラウンドの高い検体を測定
する場合などには、ブロッキング液はさらにヤギ等の動
物由来血清を含んでいることが好ましい。一方、間接法
を用いる場合には、該試薬は、例えば未標識の該モノク
ローナル抗体および該モノクローナル抗体に特異性を有
する、RI、酵素、蛍光物質等で標識された二次抗体、
好ましくは抗IgM抗体、陽性対照としてのクリプトス
ポリジウム原虫オーシスト、好ましくは不活化した該原
虫オーシスト、ブロッキング液、洗浄液等から構成され
る。
【0036】好ましくは、本発明の測定試薬は、上記の
いずれかの新規蛍光標識モノクローナル抗体を含む検体
中のクリプトスポリジウム属原虫オーシストの測定用試
薬である。該試薬は、例えば該蛍光標識モノクローナル
抗体を適当な緩衝液中に溶解した溶液の他、陽性対照と
してのクリプトスポリジウム原虫オーシスト、好ましく
は不活化した該原虫オーシスト、ブロッキング液、洗浄
液等から構成される。
【0037】本発明の測定試薬のより好ましい態様は、
上記のいずれかの新規蛍光標識モノクローナル抗体を適
当な緩衝液中に溶解した溶液、陽性対照としてのクリプ
トスポリジウム原虫オーシスト、好ましくは不活化した
該原虫オーシスト、ブロッキング液、洗浄液等の他、さ
らに蛍光顕微鏡による蛍光測定のための検体の封入剤を
含むものである。かかる封入剤としては、グリセロール
含有PBS、ポリビニルアルコール含有PBS等が好ま
しく例示される。
【0038】本発明の測定試薬は、いかなる検体中のク
リプトスポリジウム属原虫オーシストの測定にも適用可
能であるが、水または糞便中のクリプトスポリジウム属
原虫オーシストの測定に好ましく適用される。
【0039】
【実施例】以下に実施例を示して本発明をより詳細に説
明するが、本発明の範囲はこれらによって何ら限定され
るものではない。
【0040】実施例1 抗クリプトスポリジウムオーシ
ストモノクローナル抗体の作製 (1)感作抗原の調製 C.パルブム NH株は免疫学的に正常な本原虫起因性
の下痢症患者から分離し、SCIDマウスに感染させて
維持した。また、C.ミューリス RN66株はドブネ
ズミから分離し、ICRマウスに感染させて維持した。
各感染マウスの糞便中のオーシストをショ糖遠心浮遊法
を用いて精製し、1×108 個/0.5mlとなるよう
にPBS中に懸濁した。該懸濁液について3回凍結融解
を繰り返し、さらに超音波破砕して抗原溶液とした。 (2)免疫および免疫脾細胞の採取 (1)で調製した抗原溶液0.5mlを同量のFCAと
混合してその0.3mlをBALB/cマウス(8週
齢,雌)に腹腔内注射した。初回免疫から14日後、該
抗原溶液0.5mlを同量のFIAと混合してその0.
3mlを腹腔内に追加免疫した。さらに14日後、同様
に追加免疫を行った。最終免疫から3日後に抗体価を調
べ、最も抗体価の高いマウスを安楽死させて開腹し、脾
臓を摘出して脾細胞を得た。細胞は無血清の最少必須培
地(SF−MEM;GIBCO社製)に懸濁した。 (3)細胞融合およびハイブリドーマの選択 細胞融合はケーラーおよびミルスタイン[Nature, 256:
495 (1975)] に準じて行った。骨髄腫細胞として市販の
SP2細胞(大日本製薬)を一旦増殖させた後液体窒素
中で保存し、これを融解後さらに増殖させて細胞融合に
供した。該細胞の培養には、Iscoveの改変ダルベッコ培
地(IMDM;GIBCO社製)に10%ウシ胎児血清
(FBS)を添加したものを用いた。免疫脾細胞1×1
8 個および骨髄腫細胞2×107 個を混合してSF−
MEMに懸濁し、遠心により上清を除いた。沈殿をよく
ほぐした後予め37℃に加温した細胞融合用50%PE
G(ベーリンガー・マンハイム社)を1分かけて滴下
し、その1分後より37℃に加温したMEMを1ml/
分の速度で添加し全量を10mlとした後、室温下、6
00rpmで15分遠心して上清を除去した。得られた
細胞沈殿物を20%FBSを含むIMDMに懸濁し、9
6穴マイクロプレート(コースター社)に0.1mlず
つ播種した。1日後、1×10-4Mヒポキサンチン、4
×10-7Mアミノプテリン、1.6×10-5Mチミジン
を含む20%FBS添加IMDM(以下、単にHAT培
地と略称する)を各ウェルに0.1mlずつ添加し、さ
らに3日毎に培地の1/2量をHAT培地と交換した。 (4)抗体産生細胞のクローニング 上記選択培地での培養により生育したハイブリドーマコ
ロニーについて蛍光抗体法にて所望の抗体産生の有無を
調べた。精製した生鮮オーシストをスライドグラスに塗
抹し、乾燥、さらにメタノール固定し、これに試験する
ウェルの培養上清30μlをアプライして、室温で1時
間反応させた。スライドグラスを洗浄後、二次抗体とし
てFITC標識抗マウスIgA+IgG+IgM(H+
L鎖)抗体(カッペル社)の200倍希釈液を加え、室
温で1時間反応させた。洗浄後、50%グリセロール含
有PBSで封入し、蛍光顕微鏡で観察、該オーシストに
特異的に反応する抗体を産生するウェルをスクリーニン
グした。強い陽性を呈する細胞群を20%FBS添加I
MDMでさらに培養し、細胞106 個程度を10%DM
SO添加培地中で凍結保存した。細胞のクローニングは
限界希釈法にて行った。ハイブリドーマを0.5個/
0.1mlとなるように、別に用意した骨髄腫細胞培養
上清:20%FBS添加IMDM(2:8)混合培地に
懸濁し、96穴マイクロプレートに0.1mlずつ播種
した。顕微鏡下に単一コロニーと観察されるウェルから
上清を採取し、上記の蛍光抗体法にて抗体産生を確認し
た。該操作を3回繰り返してクローンを確立した。クロ
ーニングされた細胞は培地中に10%DMSOを添加し
て液体窒素中に凍結保存した。このようにして得られた
C.パルブム NH株およびC.ミューリス RN66
株のオーシストをそれぞれと抗原とするモノクローナル
抗体産生ハイブリドーマ株を、それぞれCp−OW−1
株およびCm−19株と命名した。 (5)抗体のクラス判定 得られた2つのハイブリドーマクローンが産生する抗体
クラスを、Mouse monoAb ID/SP Kit(Zymed社)を
用いて以下のように調べた。各クローンをそれぞれ10
%FBS添加RPMI1640培地中、5%CO2 、3
7℃の条件で培養した。該培養上清を8群に分け、それ
ぞれにIgG1 、IgG2a、IgG2b、IgG3 、Ig
A、IgM、κ鎖およびλ鎖に対する抗体のいずれか1
つを添加して492nmでの吸光度を測定し、標準ウサ
ギ血清の吸光度に対する各サンプルの吸光度の比を算
出、該吸光度比が5.0以上のものをクラス陽性とした
(陰性対照としてマウスミエローマP3U1を用い
た)。その結果、2つのハイブリドーマクローンが産生
するモノクローナル抗体はいずれもL鎖がκ鎖タイプの
IgMクラスであることが示された(表1)。
【0041】
【表1】
【0042】(6)ハイブリドーマの長期保存 ハイブリドーマCp−OW−1株およびCm−19株
は、対数増殖期にある細胞培養液を600rpmで2分
間遠心して上清を除き、これに10%DMSO含有FB
Sを添加して5×106 個となるように調整し、−80
℃で約1週間凍結保存した後、液体窒素中でさらに長期
間保存した。 (7)マウス腹水の作製 上記凍結保存したハイブリドーマを水浴中で融解後培地
に移し、600rpmで2分間遠心して上清を除いた。
細胞沈殿物を培地に移して5%CO2 、37℃の条件で
培養した。適宜継代培養を行い、対数増殖期にある細胞
を600rpmで2分間遠心して上清を除いた後、細胞
沈殿物をダルベッコPBSに懸濁した。遠心処理および
細胞懸濁を繰り返した後、PBSで細胞数1×107
/mlに調整した。プリスタンをBALB/cマウス
(8週齢,雄)に0.5ml/匹腹腔内投与し、約1週
間後に上記のように調製したハイブリドーマを0.5m
l/匹(0.5×106 個/匹)腹腔内に移植した。移
植から1〜3週間後に貯留してくる腹水をタッピングに
より採取した。 (8)モノクローナル抗体の精製 ハイブリドーマCp−OW−1株およびCm−19株を
それぞれ移植したマウス由来の腹水を、3000rpm
で10分間遠心して上清を回収し、HEPES、NaC
lおよび硫酸アンモニウムをそれぞれ20mM、0.5
Mおよび7.5%となるように添加し、5N NaOH
でpH7.5に調整後、孔径0.45μmのフィルター
で濾過した。得られた濾液をPROSEP−THIOS
ORBO−M(IgM精製用カラム)にアプライし、洗
浄液(20mM HEPES,0.5M NaCl,p
H7.5)で洗浄後、溶出液1(20mM HEPE
S,1M NaCl,pH7.5)、溶出液2(20m
M HEPES,2M NaCl,pH7.5)および
溶出液3(60%エチレングリコール)で溶出した。溶
出液2および溶出液3の溶出画分をそれぞれPBSに対
して透析した後、4℃、15000rpmで10分間遠
心して上清を回収した。該上清を濃縮、濃縮液の3倍量
の(1.5M グリシン,3.0M NaCl,pH
8.9)を加えてプロテインAカラムにアプライし、素
通り画分を回収した。これをPBSに対して透析して精
製IgMを得た。以下、Cp−OW−1株由来の抗オー
シスト抗体を抗Cp、Cm−19由来の抗オーシスト抗
体を抗Cmとそれぞれ略称する。
【0043】実施例2 モノクローナル抗体のFITC
標識 2種の抗クリプトスポリジウムオーシストモノクローナ
ル抗体、抗Cpおよび抗Cmをそれぞれ0.25M 炭
酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に対して透析した。
透析終了後、該抗体溶液に、同緩衝液に溶解したFIT
Cを抗体:FITC=1:1〜100(モル比)となる
ように加え、遮光下で2.5時間攪拌した。該反応液
を、PBSで平衡化したセファデックスG−25カラム
にアプライして遊離のFITCを除去し、FITC標識
モノクローナル抗体を得た。分光光度計を用いて280
nmおよび495nmでの吸光度を測定し、FITCの
IgMへの結合モル比を算出した結果、IgM(5量
体)1分子あたりに標識されるFITC分子数(以下、
便宜的にFITC価と称す)は4〜25個であった。
【0044】実施例3 FITC標識抗Cm抗体の力価
測定 C.ミューリスオーシスト含有標準溶液をネオプレン処
理したスライドグラスに固着させた。これを洗浄液
(0.05% Tween20および0.05%アジド
含有PBS)で数分間処理した後、洗浄液を除いてさら
にブロッキング液(1% BSA含有洗浄液)で数分間
処理した。該試料中のC.ミューリスオーシストを
(a)直接免疫蛍光法(本発明)および(b)間接免疫
蛍光法(比較例)により測定した。 (a)直接免疫蛍光法 FITC標識抗Cm抗体として、FITC価が4.2お
よび19.6の2種の抗体を使用した。各抗体につき、
抗体濃度が20,10,5,2.5および1.25μg
/mlとなるようにブロッキング液で調整し、上記のよ
うに調製した試料に添加し、湿室内、室温で30分間イ
ンキュベートした。反応終了後、抗体溶液を除去し、洗
浄液で洗浄した後試料で封入し、蛍光顕微鏡下で蛍光の
強さを観察した。 (b)間接免疫蛍光法 未標識の抗Cm抗体をブロッキング液で20,10,
5,2.5および1.25μg/mlとなるように調整
し、上記のように調製した試料に添加し、湿室内、室温
で30分間インキュベートした。反応終了後、抗体溶液
を除去し、洗浄液で洗浄した後、ブロッキング液で10
0倍に希釈したFITC標識抗マウスIgA+IgG+
IgM(H+L)ポリクローナル抗体またはFITC標
識抗マウスIgG(H+L)ポリクローナル抗体(とも
にカッペル社)を加えて、湿室内、室温で30分間イン
キュベートした。反応終了後、抗体溶液を除去し、洗浄
液で洗浄した後試料で封入し、蛍光顕微鏡下で蛍光の強
さを観察した。その結果、蛍光の強さは直接法の方が間
接法よりも明らかに大であった(表2)。したがって、
本発明のFITC標識モノクローナル抗体によれば、直
接法でも従来の間接法よりも高い感度が得られ、しかも
直接法であるため従来より大幅に測定操作が簡便化され
て、測定に要する時間を大幅に短縮できることが示され
た。
【0045】
【表2】
【0046】実施例4 検体中のクリプトスポリジウム
属原虫オーシストの測定用試薬の構成例 以下の試薬により構成される検体中のクリプトスポリジ
ウム属原虫オーシストの測定用試薬を調製した。構成1 1バイアル中(50検体分) ・陽性対照 5ml (不活化C.パルブムオーシストおよび0.05% アジド 含有PBS) ・×10(25μg/ml)FITC標識抗Cpまたは抗Cm 2.7ml ・ブロッキング液 50ml (1.0% BSA,0.05% ポリオキシエチレンソルビ タンモノラウレートおよび0.05% アジド含有PBS) ・×10 洗浄液 100ml (0.5% ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート および0.5% アジド含有×10 PBS) ・封入剤1(2% DABCO1)−グリセロール) 5ml ・封入剤2 5ml (2% DABCO−5%ポリビニルアルコールおよび 0.05% アジド含有PBS) (試薬はすべて冷蔵保存) 1)DABCO:1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン構成2 1バイアル中(50検体分) ・陽性対照 5ml (不活化C.パルブムオーシストおよび0.05% アジド 含有PBS) ・×10(25μg/ml)FITC標識抗Cpまたは抗Cm 2.7ml ・ブロッキング液 50ml (1.0% BSA,10% ヤギ血清,0.05% ポリオ キシエチレンソルビタンモノラウレートおよび0.05% アジド含有PBS) ・×10 洗浄液 100ml (0.5% ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート および0.5%アジド含有×10 PBS) ・封入剤1(2% DABCO−グリセロール) 5ml ・封入剤2 5ml (2% DABCO−5%ポリビニルアルコールおよび 0.05%アジド含有PBS) (試薬はすべて冷蔵保存)
【0047】実施例5 検体中のクリプトスポリジウム
属原虫オーシストの測定 実施例4の構成1にて調製したクリプトスポリジウム属
原虫オーシストの測定用試薬を用いて種々の検体中のク
リプトスポリジウム属原虫オーシストを測定した。検体
として、(i)不活化したC.パルブムオーシスト懸濁
液(測定用試薬中の陽性対照を希釈して1000個/m
lに調整)、(ii)該陽性対照を添加した下水(100
0個/ml)および(iii )クリプトスポリジウム属原
虫に汚染された藻類周辺の水(オーシスト数未知)を用
いた。まずすべての試薬を室温に戻した後、濃縮洗浄液
を蒸留水で10倍希釈し、これでセルロースアセテート
またはオムニポア濾過膜(孔径0.45〜1.0μm)
を十分洗浄した。該濾過膜を濾過装置にセットし、洗浄
液で再度洗浄後、ブロッキング液を数滴滴下した。つい
で検体(iおよびiiは50μl、iii は1ml)を濾過
膜に滴下し、さらにブロッキング液を数滴加えた。ブロ
ッキング液を濾去した後、洗浄液で2.5,5および1
0μg/mlの濃度に調整したFITC標識抗Cp(F
ITC価19.6)0.5mlを濾過膜に添加し、室温
で30分間反応させた。反応終了後、抗体溶液を除き、
洗浄液で5回洗浄した後、セルロースアセテート膜は5
%グリセロール含有10,20,40,80および90
%エタノールで脱水し、封入剤1で封入し、一方、オム
ニポア膜は脱水せずに封入剤2で封入して、蛍光顕微鏡
(倍率200倍)でクリプトスポリジウム属原虫オーシ
ストの発する蛍光を観察・計数した。その結果、使用し
たすべての抗体濃度で蛍光染色像が鮮明に観察された。
検体iと検体iiでは1視野あたりのオーシスト数はほぼ
等しく、検体1mlあたりに換算するとともに約100
0個であり、精度よく測定できることがわかった。検体
iと検体iiで測定値に差がなかったことから、本発明の
モノクローナル抗体は下水中の妨害物質と非特異的に反
応しないことが示された。また、検体iii からは1視野
あたり6個のクリプトスポリジウム属原虫オーシストが
検出された。
【0048】
【発明の効果】本発明の新規抗クリプトスポリジウムオ
ーシストモノクローナル抗体は、従来の抗体よりも抗原
特異性が高く、また、より多分子の蛍光物質で標識する
ことができるので、水などの該原虫オーシストが極微量
含まれる検体についても直接法による測定が可能であ
る。したがって、本発明によれば、クリプトスポリジウ
ム属に属する原虫のオーシストをより簡便かつ迅速に、
精度よく測定することが可能となり、クリプトスポリジ
ウム症の水系集団発生の予防に特に有用である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 33/533 G01N 33/569 A 33/569 C12N 5/00 B (72)発明者 中村 隆広 熊本県宇土市栗崎町1285 株式会社パナフ ァーム・ラボラトリーズ内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クリプトスポリジウム属(Cryptosporid
    ium )に属する原虫のオーシストに対して特異的に親和
    性を有し、且つIgMクラスに属するモノクローナル抗
    体。
  2. 【請求項2】 蛍光物質で標識された請求項1記載のモ
    ノクローナル抗体。
  3. 【請求項3】 抗体1分子あたりに標識される蛍光物質
    の数が4〜25分子である請求項2記載のモノクローナ
    ル抗体。
  4. 【請求項4】 蛍光物質がフルオレセインイソチオシア
    ネートである請求項2または3記載のモノクローナル抗
    体。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のモノクローナル抗体を産
    生するハイブリドーマ。
  6. 【請求項6】 検体を請求項1〜4のいずれかに記載の
    モノクローナル抗体と反応させる工程を含む検体中のク
    リプトスポリジウム属原虫オーシストの測定方法。
  7. 【請求項7】 検体を請求項2〜4のいずれかに記載の
    モノクローナル抗体と反応させ、形成される免疫複合体
    の発する蛍光を測定する工程を含む検体中のクリプトス
    ポリジウム属原虫オーシストの測定方法。
  8. 【請求項8】 蛍光を発する該免疫複合体を、蛍光顕微
    鏡にて検出・計数することを特徴とする請求項7記載の
    測定方法。
  9. 【請求項9】 検体が水または糞便である請求項6〜8
    のいずれかに記載の測定方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜4のいずれかに記載のモノ
    クローナル抗体を含む検体中のクリプトスポリジウム属
    原虫オーシストの測定用試薬。
  11. 【請求項11】 検体が水または糞便である請求項10
    記載の測定用試薬。
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