JPH11186035A - 非晶質軟磁性薄膜材料およびその製造方法 - Google Patents
非晶質軟磁性薄膜材料およびその製造方法Info
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- JPH11186035A JPH11186035A JP35687797A JP35687797A JPH11186035A JP H11186035 A JPH11186035 A JP H11186035A JP 35687797 A JP35687797 A JP 35687797A JP 35687797 A JP35687797 A JP 35687797A JP H11186035 A JPH11186035 A JP H11186035A
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- H01F10/08—Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers
- H01F10/10—Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition
- H01F10/12—Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition being metals or alloys
- H01F10/13—Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals
- H01F10/132—Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals containing cobalt
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 薄膜作製後に熱処理を施すことなく、安定で
良好な軟磁気特性を有する、有機高分子基板上に作製さ
れた軟磁気特性に優れた薄膜材料を提供する。 【解決手段】 少なくともCo、Fe、Cの3種類の元
素を含んでなる非晶質金属薄膜であって、薄膜中のC量
が4原子%以上45原子%以下であり、且つ、飽和磁歪
定数λが0<λ<20×10-6以下であり、有機高分子
基板上に形成されたことを特徴とする非晶質軟磁性薄膜
材料。不活性ガスと炭化水素ガスとの混合ガス中の炭化
水素ガスの体積分率が0.05以上0.4以下である混合
ガス中で、少なくともCoおよびFeとを気化すること
により基板上に薄膜を作製することを特徴とする上記非
晶質軟磁性薄膜材料の製造方法。
良好な軟磁気特性を有する、有機高分子基板上に作製さ
れた軟磁気特性に優れた薄膜材料を提供する。 【解決手段】 少なくともCo、Fe、Cの3種類の元
素を含んでなる非晶質金属薄膜であって、薄膜中のC量
が4原子%以上45原子%以下であり、且つ、飽和磁歪
定数λが0<λ<20×10-6以下であり、有機高分子
基板上に形成されたことを特徴とする非晶質軟磁性薄膜
材料。不活性ガスと炭化水素ガスとの混合ガス中の炭化
水素ガスの体積分率が0.05以上0.4以下である混合
ガス中で、少なくともCoおよびFeとを気化すること
により基板上に薄膜を作製することを特徴とする上記非
晶質軟磁性薄膜材料の製造方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟磁気特性に優
れ、異方性分散の少ない非晶質軟磁性薄膜材料並びに、
その薄膜材料を作製するための製造方法に関する。
れ、異方性分散の少ない非晶質軟磁性薄膜材料並びに、
その薄膜材料を作製するための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】軟磁気特性の良好な材料を得るために
は、FeやCoあるいはNiの磁性元素にSiやAlあ
るいはMo、Ga、Ruなどの多くの元素が添加され、
合金化される。また、最近盛んに利用されている非晶質
磁性金属の場合は、B、C、PあるいはZr、Nb、H
fのような、金属を非晶質化させやすい合金元素が大量
に添加される。このような元素の添加は、原材料を高い
ものとするため、これらの磁性材料はかなり高価なもの
であった。しかし、特にスパッタリングなどの気相法に
よって合金薄膜を作製する場合に限っては、炭化水素な
どの至極一般的なガスの形でCを合金に添加することが
できることから、極めて安価な製品が提供できる可能性
がある。
は、FeやCoあるいはNiの磁性元素にSiやAlあ
るいはMo、Ga、Ruなどの多くの元素が添加され、
合金化される。また、最近盛んに利用されている非晶質
磁性金属の場合は、B、C、PあるいはZr、Nb、H
fのような、金属を非晶質化させやすい合金元素が大量
に添加される。このような元素の添加は、原材料を高い
ものとするため、これらの磁性材料はかなり高価なもの
であった。しかし、特にスパッタリングなどの気相法に
よって合金薄膜を作製する場合に限っては、炭化水素な
どの至極一般的なガスの形でCを合金に添加することが
できることから、極めて安価な製品が提供できる可能性
がある。
【0003】Cを含む磁性金属薄膜としては、例えば特
開平4-139805号公報に開示がある。これによる
と、Fe-M合金のターゲットにグラファイトのペレッ
トを配置して不活性ガス中でスパッタリングするか、あ
るいは、Fe-M合金を不活性ガスとメタンガスの混合
ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって非晶質
薄膜を作製し、この得られた薄膜を加熱処理することに
よって微細結晶を析出させ、保磁力が低く且つ、透磁率
の高い薄膜が得られている。一方、Coを主成分とする
薄膜においてもCを含む薄膜について検討がなされてお
り、例えば、日本金属学会誌、第54巻、第11号、第1270〜1
278頁(1990)には、ガラス基上に作製したCo-C-(T
i、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W)薄
膜の磁気特性が調べられている。これらの膜の作製方法
は前記特開平4-139805号公報と類似しており、
やはりスパッタリングにより非晶質構造を有する薄膜を
作製し、その後に回転磁場を印加しながら熱処理するこ
とで微結晶化させて、飽和磁束密度が10kGを越え、
且つ、保磁力が1Oe以下の良好な磁気特性が得られて
いる。
開平4-139805号公報に開示がある。これによる
と、Fe-M合金のターゲットにグラファイトのペレッ
トを配置して不活性ガス中でスパッタリングするか、あ
るいは、Fe-M合金を不活性ガスとメタンガスの混合
ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって非晶質
薄膜を作製し、この得られた薄膜を加熱処理することに
よって微細結晶を析出させ、保磁力が低く且つ、透磁率
の高い薄膜が得られている。一方、Coを主成分とする
薄膜においてもCを含む薄膜について検討がなされてお
り、例えば、日本金属学会誌、第54巻、第11号、第1270〜1
278頁(1990)には、ガラス基上に作製したCo-C-(T
i、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W)薄
膜の磁気特性が調べられている。これらの膜の作製方法
は前記特開平4-139805号公報と類似しており、
やはりスパッタリングにより非晶質構造を有する薄膜を
作製し、その後に回転磁場を印加しながら熱処理するこ
とで微結晶化させて、飽和磁束密度が10kGを越え、
且つ、保磁力が1Oe以下の良好な磁気特性が得られて
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のCを含む軟磁性
薄膜は共に飽和磁束密度が高いことから、磁気ヘッドや
コア材料に応用するために検討されたものであった。従
って、ガラスやセラミクスなどの材料が基板に用いられ
るため、500℃以上になる前記熱処理にも基材は耐え
ることができる。ところで、このような板状の堅い基板
にバッチ成膜されるものの他に、有機高分子フィルムの
ような可撓性のある基板に連続的にコーティングされた
軟磁性薄膜も、将来の有望な材料として検討されてい
る。硬磁性を利用したものでは、すでに磁気テープがあ
り、記録媒体として盛んに利用されているが、軟磁性材
料を同様にコーティングできれば、巻コア、各種フィル
ター、シールドあるいはセンサーなどに幅広い利用が期
待できる。これらの磁性フィルム材料は、磁気ヘッド材
以上に非常に安価に大量製造されることが求められ、そ
の点でCを含む磁性薄膜は大いに期待が持てる。
薄膜は共に飽和磁束密度が高いことから、磁気ヘッドや
コア材料に応用するために検討されたものであった。従
って、ガラスやセラミクスなどの材料が基板に用いられ
るため、500℃以上になる前記熱処理にも基材は耐え
ることができる。ところで、このような板状の堅い基板
にバッチ成膜されるものの他に、有機高分子フィルムの
ような可撓性のある基板に連続的にコーティングされた
軟磁性薄膜も、将来の有望な材料として検討されてい
る。硬磁性を利用したものでは、すでに磁気テープがあ
り、記録媒体として盛んに利用されているが、軟磁性材
料を同様にコーティングできれば、巻コア、各種フィル
ター、シールドあるいはセンサーなどに幅広い利用が期
待できる。これらの磁性フィルム材料は、磁気ヘッド材
以上に非常に安価に大量製造されることが求められ、そ
の点でCを含む磁性薄膜は大いに期待が持てる。
【0005】そこで、前記従来技術をこの磁性フィルム
に応用することを考えたが、有機高分子材料で前記文献
で示された最適結晶化熱処理温度に耐えられるものは現
在のところなかった。そこで、高分子材料が耐えられる
程度にまで熱処理温度を低下し、その分熱処理時間を長
くする必要があるが、このような条件ではどうしても特
性が悪く、バラツキが生じるという問題点があった。ま
た、このような熱処理による工程自体がコストを上昇さ
せ、さらに、Cとともに添加が不可欠なTaやNbなど
の元素により、原材料を安価にすることも困難であっ
た。
に応用することを考えたが、有機高分子材料で前記文献
で示された最適結晶化熱処理温度に耐えられるものは現
在のところなかった。そこで、高分子材料が耐えられる
程度にまで熱処理温度を低下し、その分熱処理時間を長
くする必要があるが、このような条件ではどうしても特
性が悪く、バラツキが生じるという問題点があった。ま
た、このような熱処理による工程自体がコストを上昇さ
せ、さらに、Cとともに添加が不可欠なTaやNbなど
の元素により、原材料を安価にすることも困難であっ
た。
【0006】このような点を考えると、薄膜を作製した
ままの非晶質構造の状態で、良好な軟磁気特性を有する
薄膜が望ましい。Feを炭化水素ガス中でスパッタし、
非晶質合金化したFe-C薄膜が、作製したままで良好
な軟磁気特性を示すことが本発明者らにより特開平7−
211573号公報によって開示されている。さらに、
これらの材料がPETフィルムなどの有機高分子基板の
上にロールコーターにより連続的に形成できることが示
されている。しかし、コアにするために巻いたり、変形
させると、これらのFeC薄膜は応力に非常に敏感なた
め、磁気特性が極度に変化し、安定な特性を得ることが
できなかった。一方、前記方法と同じようにCoを炭化
水素ガス中でスパッタし、非晶質合金化したCo-C薄
膜を作製し、特性の改善を計ったところ、このような合
金薄膜では保磁力の小さなものが得られず、フィルムの
部分部分で非常に特性がばらついたものしかできなかっ
た。
ままの非晶質構造の状態で、良好な軟磁気特性を有する
薄膜が望ましい。Feを炭化水素ガス中でスパッタし、
非晶質合金化したFe-C薄膜が、作製したままで良好
な軟磁気特性を示すことが本発明者らにより特開平7−
211573号公報によって開示されている。さらに、
これらの材料がPETフィルムなどの有機高分子基板の
上にロールコーターにより連続的に形成できることが示
されている。しかし、コアにするために巻いたり、変形
させると、これらのFeC薄膜は応力に非常に敏感なた
め、磁気特性が極度に変化し、安定な特性を得ることが
できなかった。一方、前記方法と同じようにCoを炭化
水素ガス中でスパッタし、非晶質合金化したCo-C薄
膜を作製し、特性の改善を計ったところ、このような合
金薄膜では保磁力の小さなものが得られず、フィルムの
部分部分で非常に特性がばらついたものしかできなかっ
た。
【0007】このようなことから、本発明者らは、薄膜
作製後に熱処理を施すことなく、安定で良好な軟磁気特
性を有する、有機高分子基板上に作製された軟磁気特性
に優れた薄膜材料を提供することを目的に検討した。
作製後に熱処理を施すことなく、安定で良好な軟磁気特
性を有する、有機高分子基板上に作製された軟磁気特性
に優れた薄膜材料を提供することを目的に検討した。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上記の点に鑑み、鋭意検討した結果、特定組成から成る
CoFeC薄膜を有機高分子基板上に作製すると、上記
課題が達成されることを見出し、本発明に到達した。即
ち、本発明における第1の発明は、Co、Fe、Cの3
種類の元素を含んでなる非晶質薄膜であって、薄膜中の
C量が4原子%以上45原子%以下であり、且つ、磁歪
定数(λ)が0<λ<20×10-6である薄膜を、有機
高分子基板上に作製した非晶質軟磁性薄膜材料であり、
第2の発明は、薄膜作製時に使用するガスが、不活性ガ
スと炭化水素系ガスであって、その不活性ガスと炭化水
素系ガスの体積分率が0.05〜0.4の範囲内である請
求項1記載の非晶質軟磁性薄膜材料の製造方法を要旨と
するものである。
上記の点に鑑み、鋭意検討した結果、特定組成から成る
CoFeC薄膜を有機高分子基板上に作製すると、上記
課題が達成されることを見出し、本発明に到達した。即
ち、本発明における第1の発明は、Co、Fe、Cの3
種類の元素を含んでなる非晶質薄膜であって、薄膜中の
C量が4原子%以上45原子%以下であり、且つ、磁歪
定数(λ)が0<λ<20×10-6である薄膜を、有機
高分子基板上に作製した非晶質軟磁性薄膜材料であり、
第2の発明は、薄膜作製時に使用するガスが、不活性ガ
スと炭化水素系ガスであって、その不活性ガスと炭化水
素系ガスの体積分率が0.05〜0.4の範囲内である請
求項1記載の非晶質軟磁性薄膜材料の製造方法を要旨と
するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明における第1の発明は、少なくともCo、
Fe、Cの3種類の元素を含んでなる非晶質薄膜であっ
て、薄膜中のC量が4原子%以上45原子%以下であ
り、且つ、磁歪定数(λ)が0<λ<20×10-6であ
る薄膜を、有機高分子基板上に作製することが必要であ
る。
まず、本発明における第1の発明は、少なくともCo、
Fe、Cの3種類の元素を含んでなる非晶質薄膜であっ
て、薄膜中のC量が4原子%以上45原子%以下であ
り、且つ、磁歪定数(λ)が0<λ<20×10-6であ
る薄膜を、有機高分子基板上に作製することが必要であ
る。
【0010】本発明においては、少なくともCo、F
e、Cの3種類の元素が必要であり、その内の一つの元
素が欠けても本発明の範囲ではない。これは、以下の理
由による。磁性元素であるCoとFeのうち、一つでも
欠けると、磁界中成膜などによって一軸磁気異方性を良
好に導入することが困難になり、その結果、異方性分散
の大きな特性の悪い薄膜となってしまう為である。ま
た、Cは4原子%以上45原子%以下含まれることが必
要であり、10原子%以上30原子%以下であるとさら
に好ましい。C量が4原子%未満の場合には、非晶質構
造を有する薄膜が得られず、軟磁気特性の良好な薄膜が
得られないため適切ではない。また、C量が45原子%
を超えると、薄膜が大きく湾曲するなど変形する傾向に
あり、軟磁気特性が極めて劣化する。
e、Cの3種類の元素が必要であり、その内の一つの元
素が欠けても本発明の範囲ではない。これは、以下の理
由による。磁性元素であるCoとFeのうち、一つでも
欠けると、磁界中成膜などによって一軸磁気異方性を良
好に導入することが困難になり、その結果、異方性分散
の大きな特性の悪い薄膜となってしまう為である。ま
た、Cは4原子%以上45原子%以下含まれることが必
要であり、10原子%以上30原子%以下であるとさら
に好ましい。C量が4原子%未満の場合には、非晶質構
造を有する薄膜が得られず、軟磁気特性の良好な薄膜が
得られないため適切ではない。また、C量が45原子%
を超えると、薄膜が大きく湾曲するなど変形する傾向に
あり、軟磁気特性が極めて劣化する。
【0011】さらに、このようにして有機高分子基板上
に作製された薄膜の飽和磁歪定数は、0<λ<20×1
0-6の範囲内であることが必要であり、0<λ<10×
10-6の範囲内であることがより好ましい。このように
薄膜の飽和磁歪定数を限定するのは、以下の理由のため
である。種々の実験の結果、薄膜の磁気特性は薄膜の磁
歪と有機高分子基板の内在応力、特に熱収縮との関係に
よって著しい影響を受けることが明らかとなった。負の
磁歪定数(λ<0)を有する薄膜を有機高分子基板上に
作製すると、膜の磁気特性が局所的に極度にばらついた
状態となり、軟磁気特性が著しく劣化する。前述のCo
-C非晶質薄膜で軟磁気特性が得られなかったのは、こ
のためである。従って、本発明においては、有機高分子
基板の上に正の磁歪の薄膜が形成されることが必要であ
る。このような正磁歪の薄膜では、成膜後に薄膜付きの
フィルムを無応力の状態で使用する限りにおいては、一
軸磁気異方性のある良好な軟磁気特性を得ることができ
る。一方、Fe-C薄膜のように磁歪の大きな薄膜で
は、前記したように、巻磁芯のような利用の場合に問題
がある。このような応力の印加によって、保磁力が増大
し、また薄膜の湾曲状態が均一でないために磁気特性も
バラツキが大きくなってしまい、実用に供さなくなる。
に作製された薄膜の飽和磁歪定数は、0<λ<20×1
0-6の範囲内であることが必要であり、0<λ<10×
10-6の範囲内であることがより好ましい。このように
薄膜の飽和磁歪定数を限定するのは、以下の理由のため
である。種々の実験の結果、薄膜の磁気特性は薄膜の磁
歪と有機高分子基板の内在応力、特に熱収縮との関係に
よって著しい影響を受けることが明らかとなった。負の
磁歪定数(λ<0)を有する薄膜を有機高分子基板上に
作製すると、膜の磁気特性が局所的に極度にばらついた
状態となり、軟磁気特性が著しく劣化する。前述のCo
-C非晶質薄膜で軟磁気特性が得られなかったのは、こ
のためである。従って、本発明においては、有機高分子
基板の上に正の磁歪の薄膜が形成されることが必要であ
る。このような正磁歪の薄膜では、成膜後に薄膜付きの
フィルムを無応力の状態で使用する限りにおいては、一
軸磁気異方性のある良好な軟磁気特性を得ることができ
る。一方、Fe-C薄膜のように磁歪の大きな薄膜で
は、前記したように、巻磁芯のような利用の場合に問題
がある。このような応力の印加によって、保磁力が増大
し、また薄膜の湾曲状態が均一でないために磁気特性も
バラツキが大きくなってしまい、実用に供さなくなる。
【0012】本発明者らは、詳細な検討の結果、磁歪定
数(λ)が20×10-6を超えると、このような影響が
非常に大きくなることを見いだした。その結果、合金組
成の制御により磁歪を0<λ<20×10-6の範囲にす
れば、このような応力の影響を回避できることがわか
り、本発明に到達したものである。薄膜の磁歪は、ガス
圧などの成膜条件によっても変化するが、CoとFeの
混合比率によってより直接的に制御することができる。
Cの含有比、成膜時のガス圧、CoとFeとC以外の添
加元素とその含有比などによっても磁歪は変化すること
から一概には言えないものの、Co/Fe比が原子単位
で概ね0.6以上、0.95以下、好ましくは0.7以
上、0.94以下であれば本発明の磁歪条件になること
が多い。
数(λ)が20×10-6を超えると、このような影響が
非常に大きくなることを見いだした。その結果、合金組
成の制御により磁歪を0<λ<20×10-6の範囲にす
れば、このような応力の影響を回避できることがわか
り、本発明に到達したものである。薄膜の磁歪は、ガス
圧などの成膜条件によっても変化するが、CoとFeの
混合比率によってより直接的に制御することができる。
Cの含有比、成膜時のガス圧、CoとFeとC以外の添
加元素とその含有比などによっても磁歪は変化すること
から一概には言えないものの、Co/Fe比が原子単位
で概ね0.6以上、0.95以下、好ましくは0.7以
上、0.94以下であれば本発明の磁歪条件になること
が多い。
【0013】本発明に用いる基板は、有機高分子材料で
あることが必要であり、フィルム状が望ましい。有機高
分子フィルムの種類としては、ポリエチレンテレフタレ
ート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PE
N)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリ
フェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルホン(P
SF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサル
ホン(PES)、ポリプロピレン(PP)、 液晶ポリ
マーなどが使用でき、特にポリエチレンテレフタレート
は好適である。また、有機高分子フィルムの厚みは、5
〜250μmが好ましく、20〜150μmがより好ま
しい。適切な材料が選択されていれば、本発明において
は、有機高分子基板は熱収縮の異方性があることが望ま
しい。その熱収縮量は薄膜の異方性磁界の大きさに影響
するため、軟磁性薄膜を利用する分野を考慮して適宜選
択することが望ましい。例えば150℃で15分間加熱
された際に熱収縮率の最大値と最小値の差が0.003
〜0.015程度のレベルであれば、センサーなどの使
用に適した良好な一軸異方性軟磁性薄膜を得ることがで
きる。なお、このような熱収縮量の調整は、例えば成膜
前に予め基板を加熱しておくことによっても行うことが
できる。
あることが必要であり、フィルム状が望ましい。有機高
分子フィルムの種類としては、ポリエチレンテレフタレ
ート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PE
N)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリ
フェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルホン(P
SF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサル
ホン(PES)、ポリプロピレン(PP)、 液晶ポリ
マーなどが使用でき、特にポリエチレンテレフタレート
は好適である。また、有機高分子フィルムの厚みは、5
〜250μmが好ましく、20〜150μmがより好ま
しい。適切な材料が選択されていれば、本発明において
は、有機高分子基板は熱収縮の異方性があることが望ま
しい。その熱収縮量は薄膜の異方性磁界の大きさに影響
するため、軟磁性薄膜を利用する分野を考慮して適宜選
択することが望ましい。例えば150℃で15分間加熱
された際に熱収縮率の最大値と最小値の差が0.003
〜0.015程度のレベルであれば、センサーなどの使
用に適した良好な一軸異方性軟磁性薄膜を得ることがで
きる。なお、このような熱収縮量の調整は、例えば成膜
前に予め基板を加熱しておくことによっても行うことが
できる。
【0014】次に、本発明の第2発明である、Cを含む
Co-Fe系非晶質薄膜の製造方法について述べる。本
発明のCo-Fe系非晶質薄膜を作製するためには、プ
ラズマ雰囲気中で薄膜作製を行う方法が望まれ、CVD
法,イオンプレーテイング法,スパッタリング法等の成
膜法を用いることができる。例えば、スパッタリング法
を用いる場合には、スパッタリングターゲットとして、
CoとFeの合金ターゲットを用い、不活性ガスと炭化
水素系ガスの、ある特定範囲内の混合ガス中で成膜する
ことにより本発明の薄膜を得ることができる。この際、
不活性ガスの流量をFa,炭化水素系ガスの流量をFbと
すると、混合ガスの混合比A=Fb/(Fa+Fb)は、
0.05≦A≦0.4(体積比)の範囲内であることが必
要であり、0.1≦A≦0.3の範囲であることがより好
ましい。Aが0.05未満では、Cが不足して作製した
薄膜が非晶質構造とならないために軟磁気特性が得らず
適切ではない。一方、Aが0.4を越える場合は、薄膜
は非晶質構造となるものの、磁束密度が極度に小さくな
ってしまうとともに、磁気特性にバラツキが生じやすく
なるため、本発明の範囲外である。
Co-Fe系非晶質薄膜の製造方法について述べる。本
発明のCo-Fe系非晶質薄膜を作製するためには、プ
ラズマ雰囲気中で薄膜作製を行う方法が望まれ、CVD
法,イオンプレーテイング法,スパッタリング法等の成
膜法を用いることができる。例えば、スパッタリング法
を用いる場合には、スパッタリングターゲットとして、
CoとFeの合金ターゲットを用い、不活性ガスと炭化
水素系ガスの、ある特定範囲内の混合ガス中で成膜する
ことにより本発明の薄膜を得ることができる。この際、
不活性ガスの流量をFa,炭化水素系ガスの流量をFbと
すると、混合ガスの混合比A=Fb/(Fa+Fb)は、
0.05≦A≦0.4(体積比)の範囲内であることが必
要であり、0.1≦A≦0.3の範囲であることがより好
ましい。Aが0.05未満では、Cが不足して作製した
薄膜が非晶質構造とならないために軟磁気特性が得らず
適切ではない。一方、Aが0.4を越える場合は、薄膜
は非晶質構造となるものの、磁束密度が極度に小さくな
ってしまうとともに、磁気特性にバラツキが生じやすく
なるため、本発明の範囲外である。
【0015】本発明においては、不活性ガスとして、ア
ルゴン、ヘリウム、ネオンなどを用いることができる。
炭化水素系ガスとしては、通常市販されているガスを好
適に利用することができるが、その中でも、アセチレ
ン、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素系ガス
は、より良好な軟磁気特性を得ることができることから
最も好ましい。
ルゴン、ヘリウム、ネオンなどを用いることができる。
炭化水素系ガスとしては、通常市販されているガスを好
適に利用することができるが、その中でも、アセチレ
ン、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素系ガス
は、より良好な軟磁気特性を得ることができることから
最も好ましい。
【0016】ターゲットとしては、CoとFeの溶製タ
ーゲット、チップなどを使った複合ターゲット、粉末タ
ーゲットなどを使用することができる。特に、平板状の
ターゲットの上に強磁性体からなるヨーク部材を接続
し、ターゲット下部に配置した磁石の磁束をターゲット
面上に誘導する形式のマグネトロンスパッタリング装置
を用いると、ヨーク部材としてFeを使用するとFeの
供給が可能なため、ターゲットには高価なCoとFeの
合金を用いる必要がなく、Co単体でよいため、より安
価な非晶質Co-Fe-C薄膜を作製することができる。
ーゲット、チップなどを使った複合ターゲット、粉末タ
ーゲットなどを使用することができる。特に、平板状の
ターゲットの上に強磁性体からなるヨーク部材を接続
し、ターゲット下部に配置した磁石の磁束をターゲット
面上に誘導する形式のマグネトロンスパッタリング装置
を用いると、ヨーク部材としてFeを使用するとFeの
供給が可能なため、ターゲットには高価なCoとFeの
合金を用いる必要がなく、Co単体でよいため、より安
価な非晶質Co-Fe-C薄膜を作製することができる。
【0017】上記のような本発明の条件で作製された薄
膜では、熱処理などの後処理を経ずとも、作製したまま
の状態ですでに良好な軟磁気特性が示される。しかも、
膜構造が非晶質相であるために、微結晶化させた薄膜の
場合のような特性のバラツキもほとんどない。さらに、
磁歪が制御された本発明の薄膜では、使用時の応力の影
響が小さいことから、巻、曲げ、引張などが印加される
ような状況でも、好適に利用することができる。以下、
実施例によりさらに具体的に本発明を説明する。
膜では、熱処理などの後処理を経ずとも、作製したまま
の状態ですでに良好な軟磁気特性が示される。しかも、
膜構造が非晶質相であるために、微結晶化させた薄膜の
場合のような特性のバラツキもほとんどない。さらに、
磁歪が制御された本発明の薄膜では、使用時の応力の影
響が小さいことから、巻、曲げ、引張などが印加される
ような状況でも、好適に利用することができる。以下、
実施例によりさらに具体的に本発明を説明する。
【0018】
【実施例】本発明を以下実施例を用いたより具体的に説
明する。実施例 1 特開平4-218905号公報に開示しているヨーク付
きのDCマグネトロンスパッタリング装置により、厚み
が125μmのPETフィルム基板上に、膜厚0.5μ
mのCo-Fe-C薄膜を作製した。純度が99.9%の
Coターゲット、ヨーク部材には外部ヨーク、内部ヨー
クともにFeを用い、アルゴンガスとエチレンガスをそ
れぞれ、90cc/min、20cc/minで導入
し、混合比(A)が0.18のガス雰囲気中で、スパッ
タ成膜した。得られた薄膜の構造は、理学電機社製のX
線回折装置により決定し、薄膜の組成は、パーキンエル
マー社製オージェ分光分析装置により決定した。薄膜の
磁気特性は、理研電子社製交流B-Hトレーサー(AC,
BH-100K)により磁化容易軸方向の保磁力および
印加磁界100 Oeでの磁束密度(以降B100と記述)
を測定した。また、薄膜の磁歪は、光てこ法により測定
した。作製された薄膜は非晶質構造であり、その組成は
(Co0.75、Fe0.25)85C15原子%であった。磁歪は
+14×10-6であり、磁束密度(B100)は12.5
kGと大きな値を示した。この薄膜の磁化容易軸方向の
保磁力は0.15 Oeであり、良好な軟磁気特性が得ら
れた。また、この薄膜に10kg/mm2の引張応力を
印加しながら測定しても、保磁力は0.2 Oeと、その
変化は小さかった。
明する。実施例 1 特開平4-218905号公報に開示しているヨーク付
きのDCマグネトロンスパッタリング装置により、厚み
が125μmのPETフィルム基板上に、膜厚0.5μ
mのCo-Fe-C薄膜を作製した。純度が99.9%の
Coターゲット、ヨーク部材には外部ヨーク、内部ヨー
クともにFeを用い、アルゴンガスとエチレンガスをそ
れぞれ、90cc/min、20cc/minで導入
し、混合比(A)が0.18のガス雰囲気中で、スパッ
タ成膜した。得られた薄膜の構造は、理学電機社製のX
線回折装置により決定し、薄膜の組成は、パーキンエル
マー社製オージェ分光分析装置により決定した。薄膜の
磁気特性は、理研電子社製交流B-Hトレーサー(AC,
BH-100K)により磁化容易軸方向の保磁力および
印加磁界100 Oeでの磁束密度(以降B100と記述)
を測定した。また、薄膜の磁歪は、光てこ法により測定
した。作製された薄膜は非晶質構造であり、その組成は
(Co0.75、Fe0.25)85C15原子%であった。磁歪は
+14×10-6であり、磁束密度(B100)は12.5
kGと大きな値を示した。この薄膜の磁化容易軸方向の
保磁力は0.15 Oeであり、良好な軟磁気特性が得ら
れた。また、この薄膜に10kg/mm2の引張応力を
印加しながら測定しても、保磁力は0.2 Oeと、その
変化は小さかった。
【0019】実施例 2 実施例1と同様の方法で、厚みが100μmのPENフ
ィルム基板上に、膜厚0.5μmのCo-Fe-C薄膜を
作製した。ただし、ヨーク部材には、外部ヨークにFe
を、内部ヨークにCoを用いた。また、アルゴンガスお
よびエチレンガス流量は、それぞれ、80cc/mi
n、30cc/minとし、ガス混合比(A)は0.2
7とした。このようにして得られた薄膜は非晶質であ
り、組成は(Co0.87、Fe0.13)73C27原子%であっ
た。磁歪は +6×10-6で、磁束密度(B100)も1
0.6kGと高い値を示した。また、磁化容易軸方向の
保磁力は0.12 Oeと軟磁気特性を示し、この薄膜に
10kg/mm2の引張応力を印加しながら測定して
も、保磁力は0.2 Oeと、その変化は小さかった。
ィルム基板上に、膜厚0.5μmのCo-Fe-C薄膜を
作製した。ただし、ヨーク部材には、外部ヨークにFe
を、内部ヨークにCoを用いた。また、アルゴンガスお
よびエチレンガス流量は、それぞれ、80cc/mi
n、30cc/minとし、ガス混合比(A)は0.2
7とした。このようにして得られた薄膜は非晶質であ
り、組成は(Co0.87、Fe0.13)73C27原子%であっ
た。磁歪は +6×10-6で、磁束密度(B100)も1
0.6kGと高い値を示した。また、磁化容易軸方向の
保磁力は0.12 Oeと軟磁気特性を示し、この薄膜に
10kg/mm2の引張応力を印加しながら測定して
も、保磁力は0.2 Oeと、その変化は小さかった。
【0020】比較例 1 実施例1と同じ装置と基材を使用してCo-Fe-C薄膜
を作製した。ただし、薄膜作製中のアルゴンガス流量お
よびエチレンガス流量は、それぞれ108cc/mi
n、2cc/minとし、ガス混合比(A)を0.02
とした。作製された薄膜は結晶質構造であり、その組成
は(Co0.73、Fe0.27)98C2原子%であった。ま
た、磁束密度(B100)は15.5kGと高い値を示した
ものの、磁化容易軸方向における保磁力は8.5 Oeと
大きく、軟磁気特性は示さなかった。
を作製した。ただし、薄膜作製中のアルゴンガス流量お
よびエチレンガス流量は、それぞれ108cc/mi
n、2cc/minとし、ガス混合比(A)を0.02
とした。作製された薄膜は結晶質構造であり、その組成
は(Co0.73、Fe0.27)98C2原子%であった。ま
た、磁束密度(B100)は15.5kGと高い値を示した
ものの、磁化容易軸方向における保磁力は8.5 Oeと
大きく、軟磁気特性は示さなかった。
【0021】比較例 2 実施例2と同じ装置と基材を使用してCo-Fe-C薄膜
を作製した。ただし、薄膜作製中のアルゴンガス流量お
よびエチレンガス流量は、それぞれ、55cc/mi
n、55cc/minとし、ガス流量比(A)を0.5
とした。作製された薄膜は非晶質構造を有しており、そ
の組成は(Co0.88、Fe0.12)52C48原子%であっ
た。この薄膜の磁気特性は、磁化容易軸方向の保磁力は
試料の測定部分により0.7〜1.2 Oeの範囲で変動
しており、磁気異方性方向もバラツキが大きかった。ま
た、磁束密度(B100)が4.5kGと非常に低く、本発
明が目的とする軟磁性薄膜としては適さなかった。
を作製した。ただし、薄膜作製中のアルゴンガス流量お
よびエチレンガス流量は、それぞれ、55cc/mi
n、55cc/minとし、ガス流量比(A)を0.5
とした。作製された薄膜は非晶質構造を有しており、そ
の組成は(Co0.88、Fe0.12)52C48原子%であっ
た。この薄膜の磁気特性は、磁化容易軸方向の保磁力は
試料の測定部分により0.7〜1.2 Oeの範囲で変動
しており、磁気異方性方向もバラツキが大きかった。ま
た、磁束密度(B100)が4.5kGと非常に低く、本発
明が目的とする軟磁性薄膜としては適さなかった。
【0022】実施例 3 プレーナ型のマグネトロンスパッタリング装置を用い
て、膜厚0.8μmのCo-Fe-C薄膜を厚みが125
μmのPETフィルム基板上に作製した。ターゲットに
はCo90Fe10(原子%)の合金を用い、アルゴンガス
とエチレンガスの流量がそれぞれ、95cc/min、
15cc/min(混合比(A)=0.14)の雰囲気
中で成膜した。作製された薄膜は非晶質構造であり、そ
の組成は(Co0.91Fe0.09)89C11原子%であった。
磁歪は +3×10-6であり、磁束密度(B100)は1
3.4kGと大きな値を示した。この薄膜の磁化容易軸
方向の保磁力は0.2 0eであり、良好な軟磁気特性を
示し、この薄膜に10kg/mm2の引張応力を印加し
ながら測定しても、保磁力は0.25 Oeと、その変化
は小さかった。
て、膜厚0.8μmのCo-Fe-C薄膜を厚みが125
μmのPETフィルム基板上に作製した。ターゲットに
はCo90Fe10(原子%)の合金を用い、アルゴンガス
とエチレンガスの流量がそれぞれ、95cc/min、
15cc/min(混合比(A)=0.14)の雰囲気
中で成膜した。作製された薄膜は非晶質構造であり、そ
の組成は(Co0.91Fe0.09)89C11原子%であった。
磁歪は +3×10-6であり、磁束密度(B100)は1
3.4kGと大きな値を示した。この薄膜の磁化容易軸
方向の保磁力は0.2 0eであり、良好な軟磁気特性を
示し、この薄膜に10kg/mm2の引張応力を印加し
ながら測定しても、保磁力は0.25 Oeと、その変化
は小さかった。
【0023】比較例 3 ターゲットに純Coを用いた以外は、実施例3と同じ条
件で、膜厚0.8μmの薄膜を作製した。作製された薄
膜は非晶質構造であり、その組成は、Co87C13原子%
であった。磁歪は−2×10-6であり、磁束密度(B
100)は8.5kGであった。この薄膜の磁気特性は、磁
化容易軸方向が試料の領域によりひどくバラツキ、保磁
力は1.6〜4.3 Oeと大きく且つばらついていた。
件で、膜厚0.8μmの薄膜を作製した。作製された薄
膜は非晶質構造であり、その組成は、Co87C13原子%
であった。磁歪は−2×10-6であり、磁束密度(B
100)は8.5kGであった。この薄膜の磁気特性は、磁
化容易軸方向が試料の領域によりひどくバラツキ、保磁
力は1.6〜4.3 Oeと大きく且つばらついていた。
【0024】比較例 4 ターゲットに純Feを用いた以外は、実施例3と同じ条
件で、膜厚0.8μmの薄膜を作製した。作製された薄
膜は非晶質構造であり、その組成は、Fe83C17原子%
であった。磁歪は+45×10-6であり、磁束密度(B
100)は17.4kGと大きな値を示した。この薄膜試料
に応力が作用しない条件で測定した場合、磁化容易軸方
向の保磁力は0.15 0eと非常に良好な軟磁気特性を
示した。しかし、この薄膜に10kg/mm2の引張応
力を印加しながら測定すると、保磁力は0.3 Oeに増
大し、その変化は大きかった。
件で、膜厚0.8μmの薄膜を作製した。作製された薄
膜は非晶質構造であり、その組成は、Fe83C17原子%
であった。磁歪は+45×10-6であり、磁束密度(B
100)は17.4kGと大きな値を示した。この薄膜試料
に応力が作用しない条件で測定した場合、磁化容易軸方
向の保磁力は0.15 0eと非常に良好な軟磁気特性を
示した。しかし、この薄膜に10kg/mm2の引張応
力を印加しながら測定すると、保磁力は0.3 Oeに増
大し、その変化は大きかった。
【0025】比較例 5 ターゲットにCo50Fe50(原子%)の合金を用いた以
外は、実施例3と同じ条件で、膜厚0.8μmの薄膜を
作製した。作製された薄膜は非晶質構造であり、その組
成は、(Co0.55Fe0.45)83C17原子%であった。磁
歪は+25×10-6であり、磁束密度(B100)は16.
4kGであった。この薄膜試料に応力が作用しない条件
で測定した場合、磁化容易軸方向の保磁力は0.17 0
eと非常に良好な軟磁気特性を示した。しかし、この薄
膜に10kg/mm2の引張応力を印加しながら測定す
ると、保磁力は0.3Oeに増大し、その変化は大きか
った。
外は、実施例3と同じ条件で、膜厚0.8μmの薄膜を
作製した。作製された薄膜は非晶質構造であり、その組
成は、(Co0.55Fe0.45)83C17原子%であった。磁
歪は+25×10-6であり、磁束密度(B100)は16.
4kGであった。この薄膜試料に応力が作用しない条件
で測定した場合、磁化容易軸方向の保磁力は0.17 0
eと非常に良好な軟磁気特性を示した。しかし、この薄
膜に10kg/mm2の引張応力を印加しながら測定す
ると、保磁力は0.3Oeに増大し、その変化は大きか
った。
【0026】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば薄膜
作製後に熱処理を施すことなく良好な軟磁気特性を有す
る非晶質軟磁性薄膜を提供することができる。また、本
発明の薄膜は、応力の影響が小さいために、巻、曲げ、
引張などの状況下でも好適に利用でき、巻磁芯やシール
ド材など幅広く用いることができる。さらに、本発明の
非晶質薄膜は、Cを含んでおり、高価な添加元素を必要
としないことから低コストで製造ができ、特性の再現性
にも優れていることから、その工業的意義は大きい。
作製後に熱処理を施すことなく良好な軟磁気特性を有す
る非晶質軟磁性薄膜を提供することができる。また、本
発明の薄膜は、応力の影響が小さいために、巻、曲げ、
引張などの状況下でも好適に利用でき、巻磁芯やシール
ド材など幅広く用いることができる。さらに、本発明の
非晶質薄膜は、Cを含んでおり、高価な添加元素を必要
としないことから低コストで製造ができ、特性の再現性
にも優れていることから、その工業的意義は大きい。
Claims (2)
- 【請求項1】 少なくともCo、Fe、Cの3種類の元
素を含んでなる非晶質金属薄膜であって、薄膜中のC量
が4原子%以上45原子%以下であり、且つ、飽和磁歪
定数λが0<λ<20×10-6以下であり、有機高分子
基板上に形成されたことを特徴とする非晶質軟磁性薄膜
材料。 - 【請求項2】 不活性ガスと炭化水素ガスとの混合ガス
中の炭化水素ガスの体積分率が0.05以上0.4以下で
ある混合ガス中で、少なくともCoおよびFeとを気化
することにより基板上に薄膜を作製することを特徴とす
る請求項1記載の非晶質軟磁性薄膜材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35687797A JPH11186035A (ja) | 1997-12-25 | 1997-12-25 | 非晶質軟磁性薄膜材料およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35687797A JPH11186035A (ja) | 1997-12-25 | 1997-12-25 | 非晶質軟磁性薄膜材料およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11186035A true JPH11186035A (ja) | 1999-07-09 |
Family
ID=18451214
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35687797A Pending JPH11186035A (ja) | 1997-12-25 | 1997-12-25 | 非晶質軟磁性薄膜材料およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11186035A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2002016663A1 (fr) * | 2000-08-21 | 2002-02-28 | Citizen Watch Co., Ltd. | Métal mou, procédé de fabrication dudit métal mou, pièce décorative et procédé de fabrication de ladite pièce décorative |
JP2002367138A (ja) * | 2001-06-07 | 2002-12-20 | Fujitsu Ltd | 磁気情報記録媒体 |
WO2005086556A1 (ja) * | 2004-03-08 | 2005-09-15 | Nec Tokin Corporation | 電磁雑音吸収薄膜 |
US7371471B2 (en) | 2004-03-08 | 2008-05-13 | Nec Tokin Corporation | Electromagnetic noise suppressing thin film |
US9469107B2 (en) | 2013-07-12 | 2016-10-18 | Hewlett-Packard Development Company, L.P. | Thermal inkjet printhead stack with amorphous metal resistor |
US9511585B2 (en) | 2013-07-12 | 2016-12-06 | Hewlett-Packard Development Company, L.P. | Thermal inkjet printhead stack with amorphous thin metal protective layer |
US10177310B2 (en) | 2014-07-30 | 2019-01-08 | Hewlett Packard Enterprise Development Lp | Amorphous metal alloy electrodes in non-volatile device applications |
-
1997
- 1997-12-25 JP JP35687797A patent/JPH11186035A/ja active Pending
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2002016663A1 (fr) * | 2000-08-21 | 2002-02-28 | Citizen Watch Co., Ltd. | Métal mou, procédé de fabrication dudit métal mou, pièce décorative et procédé de fabrication de ladite pièce décorative |
US6730415B2 (en) | 2000-08-21 | 2004-05-04 | Citizen Watch Co., Ltd. | Soft metal and method of manufacturing the soft metal, and decorative part and method of manufacturing the decorative part |
JP2002367138A (ja) * | 2001-06-07 | 2002-12-20 | Fujitsu Ltd | 磁気情報記録媒体 |
WO2005086556A1 (ja) * | 2004-03-08 | 2005-09-15 | Nec Tokin Corporation | 電磁雑音吸収薄膜 |
US7371471B2 (en) | 2004-03-08 | 2008-05-13 | Nec Tokin Corporation | Electromagnetic noise suppressing thin film |
US9469107B2 (en) | 2013-07-12 | 2016-10-18 | Hewlett-Packard Development Company, L.P. | Thermal inkjet printhead stack with amorphous metal resistor |
US9511585B2 (en) | 2013-07-12 | 2016-12-06 | Hewlett-Packard Development Company, L.P. | Thermal inkjet printhead stack with amorphous thin metal protective layer |
US10177310B2 (en) | 2014-07-30 | 2019-01-08 | Hewlett Packard Enterprise Development Lp | Amorphous metal alloy electrodes in non-volatile device applications |
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