JPH1117550A - フローティング型a/d変換器 - Google Patents

フローティング型a/d変換器

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JPH1117550A
JPH1117550A JP9167769A JP16776997A JPH1117550A JP H1117550 A JPH1117550 A JP H1117550A JP 9167769 A JP9167769 A JP 9167769A JP 16776997 A JP16776997 A JP 16776997A JP H1117550 A JPH1117550 A JP H1117550A
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    • H03M3/30Delta-sigma modulation
    • H03M3/458Analogue/digital converters using delta-sigma modulation as an intermediate step
    • H03M3/478Means for controlling the correspondence between the range of the input signal and the range of signals the converter can handle; Means for out-of-range indication
    • H03M3/488Means for controlling the correspondence between the range of the input signal and the range of signals the converter can handle; Means for out-of-range indication using automatic control

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のフローティング型A/D変換器が有し
ていた「周波数特性が高域において不定になる」問題を
解決し、周波数特性の安定したフローティング型A/D
変換器を提供する。 【解決手段】 アナログ信号は、アンプ11および12
によりゲインAおよび1が各々付与され、各々ΔΣ変調
器とデシメーションフィルタからなるA/D変換器21
および22に各々供給される。DSP3は、A/D変換
器21の出力信号を1/A倍して出力する。遅延器61
および62は、デシメーションフィルタと同じ遅延時間
だけDSP3およびA/D変換器22の各出力信号を遅
延させる。切換器5は、切換検出器4による監視結果に
基づき、DSP3の出力信号がクリップしてないときは
遅延器61、クリップしているときは遅延器62の出力
信号を選択し出力する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、広いダイナミッ
クレンジでのA/D変換が可能なフローティング型A/
D変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】図6は、従来のフローティング型A/D
変換器の構成例を示すブロック図である。図示の通り、
このフローティング型A/D変換器は、2個のA/D変
換器21および22を有しており、各A/D変換器の前
段には、変換対象たるアナログ信号を増幅するアンプ1
1および12が各々配置されている。ここで、アンプ1
1は所定のゲインAを有しており、アンプ12はゲイン
1を有している。従って、A/D変換器21には変換対
象たるアナログ信号をA倍に増幅したアナログ信号が入
力され、A/D変換器22には変換対象たるアナログ信
号がそのままのレベルで入力される。
【0003】A/D変換器21および22は、同一構成
のA/D変換器であり、いずれもΔΣ変調器101とデ
シメーションフィルタ102とにより構成されている。
ここで、ΔΣ変調器101は、アンプ11または12か
ら供給されるアナログ信号に対しΔΣ変調を施し、アナ
ログ信号のレベルに応じてPDM(Pulse Density Modu
lation)化されたビットストリームデータを出力する手
段である。このΔΣ変調器101によるビットストリー
ムデータの出力は、このフローティング型A/D変換器
から最終的に出力されるデジタル信号のサンプリング周
波数fsのN倍(例えば64倍)のビットレートで行わ
れる。デシメーションフィルタ102は、このΔΣ変調
器101から出力されるビットストリームデータを多ビ
ットのデジタル信号に変換すると共に間引き処理を施
し、サンプリング周波数fsに対応したデジタル信号と
して出力する手段である。
【0004】既に説明したように、A/D変換器22に
は変換対象たるアナログ信号がそのままのレベルで入力
される。従って、A/D変換器22からは元のアナログ
信号に対応したデジタル信号が出力される。これに対
し、A/D変換器21には変換対象たるアナログ信号を
A倍に増幅したアナログ信号が入力される。従って、A
/D変換器21から出力されるデジタル信号は、クリッ
プ状態(飽和状態)とならない限り、元のアナログ信号
のレベルのA倍のレベルを表すものとなる。そこで、A
/D変換器21の後段にDSP3が配置されている。A
/D変換器21から出力されるデジタル信号は、このD
SP3によって1/Aが乗じられ、元のアナログ信号の
レベルに対応したデジタル信号に修正される。
【0005】切換検出器4および切換器5は、DSP3
またはA/D変換器22の各出力信号のうちいずれかを
選択して出力する手段である。すなわち、切換器5は、
切換検出器4を介して各A/D変換器の各出力信号を監
視し、A/D変換器21の出力信号がクリップしていな
いときにはDSP3の出力信号を選択して出力し、A/
D変換器21の出力信号がクリップしたときにはA/D
変換器22の出力信号を選択して出力する。
【0006】以上説明した構成によれば、変換対象たる
アナログ信号のレベルが微弱であり、A/D変換器21
の出力信号がクリップしていない場合には、アンプ1
1、A/D変換器21およびDSP3により、A/D変
換器21の本来の分解能のA倍の分解能でA/D変換が
行われ、この高分解能のA/D変換により得られたデジ
タル信号が切換器5から出力されることとなる。
【0007】一方、変換対象たるアナログ信号のレベル
が大きくなり、過大なレベルのアナログ信号がA/D変
換器21に入力されると、A/D変換器21の出力信号
がクリップし、これによりDSP3の出力信号もクリッ
プすることとなる。従って、元のアナログ信号をA/D
変換器22の本来の分解能でA/D変換したデジタル信
号が切換器5から出力されることとなる。
【0008】このように同一のアナログ信号について高
分解能のA/D変換と通常の分解能のA/D変換が並行
して行われ、アナログ信号のレベルが微弱であるときに
は高分解能のA/D変換、レベルが大きい場合には通常
の分解能のA/D変換が自動的に選択されて採用される
ため、広いダイナミックレンジでのA/D変換を行うこ
とができるのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
従来のフローティング型A/D変換器によれば、広いダ
イナミックレンジでのA/D変換を行うことが可能であ
る。ところが、このフローティング型A/D変換器は、
周波数特性が高域において不定になることが本願発明者
の研究により判明した。以下、その詳細を説明する。
【0010】まず、本願発明者は、同じ波形の2個のイ
ンパルスをタイミングをずらしてフローティング型A/
D変換器に与え、これによりフローティング型A/D変
換器から出力される各インパルス応答波形のサンプルデ
ータを採取した。図7において、プロット“×”はフロ
ーティング型A/D変換器から採取された各インパルス
応答波形のサンプルデータを表しており、波形Bおよび
Cは各プロットを結んだインパルス応答波形である。な
お、インパルス応答波形Cは、ピーク部分が欠けた状態
となっているが、これはサンプルデータのサンプリング
タイミングとインパルス応答波形のピーク点とがずれて
いるためであり、元のインパルス応答波形がピークの欠
けたものである訳ではない。
【0011】次にこのようにして採取したインパルス応
答波形BおよびCの各サンプルデータにFFT(高速フ
ーリエ変換)を施し、各インパルス応答波形BおよびC
からフローティング型A/D変換器の利得の周波数特性
を求めた。図8において、Dはインパルス応答波形Bか
ら求めた周波数特性であり、Eはインパルス応答波形C
から求めた周波数特性である。周波数特性DおよびEを
比較すると、両者は高域において大きく相違している。
【0012】これらの周波数特性DおよびEは、異なっ
たタイミングにおいて測定したものではあるが、同じ波
形のインパルスを使用して測定したものである。従っ
て、周波数特性DおよびEは一致すべきである。しか
し、インパルスの入力タイミングが僅かにずれただけ
で、インパルス応答波形から得られる周波数特性の高域
部分が変化してしまうのである。これが上述の「周波数
特性が高域において不定になる」現象である。
【0013】このような不安定で再現性のない現象が生
じるのは何故か。本願発明者は、様々な仮説を設定して
試行錯誤を重ねたがその原因の究明は困難を極めた。そ
こで、本願発明者は、フローティング型A/D変換器で
はなく、逐次比較型A/D変換器を用いて上記と同様の
実験を行ってみた。この結果、上記の不安定で再現性の
ない現象の発生メカニズムが解明されるに至った。すな
わち、次の通りである。
【0014】まず、図9に示すインパルス応答波形Fお
よびGは、逐次比較型A/D変換器に対し、上記と同
様、タイミングをずらしてインパルスを与えることによ
り得られたものである。そして、図10における周波数
特性HおよびIは、これらのインパルス応答波形Fおよ
びGの各サンプルデータにFFTを施すことにより得ら
れた特性である。図10から明らかなように、周波数特
性HおよびIは極めてよく一致している。すなわち、
「周波数特性が高域において不定になる」現象は、逐次
比較型A/D変換器においては生じず、フローティング
型A/D変換器においてのみ生じる現象である、という
ことになる。
【0015】このように逐次比較型A/D変換器とフロ
ーティング型A/D変換器とで各々の周波数特性に差異
がある以上、両者のインパルス応答波形にも何等かの差
異があるはずである。そこで、本願発明者は、フローテ
ィング型A/D変換器から得られるインパルス応答波形
(図7)と逐次比較型A/D変換器から得られるインパ
ルス応答波形(図9)とを重ね合わせてみた。この結
果、各A/D変換器から得られる各インパルス応答波形
に重大な差異があることが判明した。すなわち、各イン
パルス応答波形は、元のインパルスに対応した部分の前
後にプリエコーとポストエコーが付加された波形となっ
ているが、フローティング型A/D変換器の場合と逐次
比較型A/D変換器の場合とではプリエコーとポストエ
コーの比が異なっているのである。
【0016】まず、逐次比較型A/D変換器の場合、図
9に示すように、ポストエコーとそれほど変らない振幅
のプリエコーが発生している。これに対し、フローティ
ング型A/D変換器の場合には、図7に示すように、ポ
ストエコーよりもかなり小さなプリエコーが発生してお
り、プリエコーとポストエコーが非対称になっているこ
とが分る。
【0017】そして、フローティング型A/D変換器の
インパルス応答波形を逐次比較型A/D変換器のものと
の間には、プリエコーとポストエコーが非対称であるか
対称であるかの差異を除いて他に特徴的な差異は見当ら
ない。従って、フローティング型A/D変換器において
非対称なプリエコーとポストエコーが発生する現象は、
同A/D変換器の周波数特性が高域において不定になる
現象と原因を同じくするものであると考えられるのであ
る。
【0018】しかし、このようにプリエコーとポストエ
コーとが非対称になるのは何故か。フローティング型A
/D変換器の場合、プリエコーとポストエコーはデシメ
ーションフィルタ(図6参照)において発生されると考
えられるが、このデシメーションフィルタは直線位相特
性を有するFIRフィルタによって構成されるため、入
力インパルスに対し、対称なプリエコーとポストエコー
を付加するはずである。しかるにフローティング型A/
D変換器ではインパルス応答波形のプリエコーとポスト
エコーとが非対称になる。これは何故か。本願発明者
は、上述した高分解能のA/D変換と通常の分解能のA
/D変換の切り換えがこの非対称化の原因であると考え
た。
【0019】ここで、図11および前掲図6を参照し、
本願発明者が推測したプリエコーとポストエコーの非対
称化のメカニズムについて説明する。まず、前掲図6の
フローティング型A/D変換器に対し、図11(a)に
例示するインパルスを与えたとする。この場合、A/D
変換器21にはこのインパルスのレベルをA倍したイン
パルスが供給され(図11(b)参照)、A/D変換器
22にはこのインパルスがそのままのレベルで供給され
る(図11(c)参照)。
【0020】これらのインパルスは、A/D変換器21
および22により各々デジタル信号に変換される。この
A/D変換において、A/D変換器21および22の各
々のデシメーションフィルタからは図11(d)および
(e)に例示するようなインパルス応答波形のサンプル
データが各々出力される。いずれのA/D変換器におい
て発生するインパルス応答波形も対称なプリエコーとポ
ストエコーが付加されている。
【0021】ところで、A/D変換器21および22の
出力デジタル信号のレベルは、そのビット幅によって決
定される最大値(クリップレベル)以下に制限される。
この例の場合、図11(d)に示すように、A/D変換
器21のデシメーションフィルタから出力されるデジタ
ル信号は、時刻TXにおいてクリップレベルを越えるた
め、この時刻TX以降、A/D変換器21の出力デジタ
ル信号はクリップすることになる。
【0022】従って、時刻TXよりも前の期間は、A/
D変換器21の出力デジタル信号をDSP3によって1
/Aにしたデジタル信号が切換器5によって選択され、
時刻TXよりも後の期間はA/D変換器22の出力デジ
タル信号が切換器5によって選択される。このため、D
SP3から得られるインパルス応答波形のプリエコーに
相当する部分と、A/D変換器22から得られるインパ
ルス応答波形のプリエコー以降の部分とを接続したよう
なインパルス応答波形が切換器5から出力されることと
なる(図11(f))。この場合、A/D変換器22か
らは出力されるインパルス応答波形(図11(e))の
ポストエコーに相当する部分はそのままのレベルで切換
器5から出力されるが、DSP3から出力されるインパ
ルス応答波形のプリエコーに相当する部分はレベルが1
/Aにされて出力される。従って、切換器5から出力さ
れるインパルス応答波形は、図11(f)に例示するよ
うに、ポストエコーに比べてプリエコーが縮小した波形
となり、インパルス応答波形に含まれるプリエコーとポ
ストエコーが非対称になるのである。
【0023】以上が、本願発明者の解析によるプリエコ
ーとポストエコーの非対称化のメカニズムである。
【0024】従来のフローティング型A/D変換器にお
いては、以上説明したメカニズムによりインパルス応答
波形のプリエコー相当部分とそれ以降の部分との間に不
連続が生じ、これにより「周波数特性が高域において不
定になる」現象が生じていたと考えられるのである。
【0025】この発明は、以上の解析結果に基づきイン
パルス応答波形のプリエコーとポストエコーの非対称化
の問題をなくすための改善を従来のフローティング型A
/D変換器を施し、周波数特性の安定したフローティン
グ型A/D変換器を提供することを目的とするものであ
る。
【0026】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
アナログ信号に各々異なるゲインを付与し、レベルの異
なった複数の変換用アナログ信号として出力するアナロ
グレベル調整手段と、前記アナログレベル調整手段から
出力される複数の変換用アナログ信号を各々デジタル信
号に変換して出力する複数のA/D変換器と、前記複数
の変換用アナログ信号に付与された各ゲインの逆数に対
応した各ゲインを、前記複数のA/D変換器から出力さ
れる各変換用アナログ信号に対応した各デジタル信号に
各々付与して出力するデジタルレベル調整手段と、前記
デジタルレベル調整手段から出力される各デジタル信号
を各々遅延させて出力する遅延手段と、前記複数のA/
D変換器から出力される各デジタル信号の各レベルに基
づき、前記遅延手段から出力される各デジタル信号のう
ち1つのデジタル信号を選択して出力する切換手段とを
具備することを特徴とするフローティング型A/D変換
器を要旨とする。
【0027】請求項2に係る発明は、前記複数のA/D
変換器は各々ΔΣ変調器とデシメーションフィルタとに
より構成され、前記遅延手段は前記デジタルレベル調整
手段から出力される各デジタル信号を少なくとも前記デ
シメーションフィルタの遅延時間に相当する時間だけ各
々遅延させて出力することを特徴とする請求項1に記載
のフローティング型A/D変換器を要旨とする。
【0028】請求項3に係る発明は、前記デジタルレベ
ル調整手段から出力される各デジタル信号を前記遅延手
段を介して前記切換手段に供給するか前記遅延手段を介
さないで直接供給するかを切り換える手段を具備するこ
とを特徴とする請求項1または2に記載のフローティン
グ型A/D変換器を要旨とする。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に理解しやすく
するため、実施の形態について説明する。かかる実施の
形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を
限定するものではなく、本発明の範囲で任意に変更可能
である。
【0030】図1はこの発明の一実施形態であるフロー
ティング型A/D変換器の構成を示すブロック図であ
る。なお、この図において前掲図6と対応する部分には
同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0031】図1に示すように、DSP3と切換器5と
の間にはスイッチ71、遅延器61およびスイッチ81
が介挿されており、A/D変換器22と切換器5との間
にはスイッチ72、遅延器62およびスイッチ82が介
挿されている。各遅延器61、62の前段および後段に
設けられた各スイッチ71、81、72、82は、手動
により切り換えられるスイッチである。遅延器61およ
び62は、シフトレジスタまたはRAMによって構成さ
れた遅延器であり、A/D変換器21および22内の各
デシメーションフィルタ102,102と同じ遅延時間
を有している。各スイッチ71、81、72および82
が図示の状態にある場合、DSP3およびA/D変換器
22から出力されるデジタル信号は遅延器61および6
2によって各々遅延され、切換器5に供給される。
【0032】切換検出器4は、DSP3およびA/D変
換器22から出力される各デジタル信号を監視する。な
お、前掲図6の構成ではDSP3ではなくA/D変換器
21の出力信号のクリップの検出を行うようにしていた
が、DSP3またはA/D変換器21のいずれの出力信
号のクリップを検出したとしても、A/D変換器21の
出力信号のクリップを検出していることに変りはない。
【0033】前掲図6の構成と同様、切換器5の切り換
えは、切換検出器4による監視結果に基づいて行われ
る。すなわち、DSP3の出力信号がクリップしていな
い状態においては、切換器5ではDSP3から遅延器6
1を介して供給されるデジタル信号が選択されて出力さ
れる。しかし、DSP3の出力信号がクリップすると、
これが切換検出器4によって検出されることにより切換
器5の切り換えが行われ、A/D変換器22から遅延器
62を介して供給されるデジタル信号が切換器5により
出力される。
【0034】ここで、切換器5の切り換え時点において
遅延器62から切換器5に供給されるデジタル信号は、
当該切り換え時点から遅延器62の遅延時間だけ過去に
遡った時点におけるA/D変換器22の出力デジタル信
号である。また、遅延器62の遅延時間は、デシメーシ
ョンフィルタ102の遅延時間に等しい。従って、従来
のフローティング型A/D変換器において生じたプリエ
コーとポストエコーの非対称化の問題は本実施形態では
生じないこととなる。
【0035】このことを前掲図11を再び参照して説明
すると次のようになる。まず、従来のフローティング型
A/D変換器では、DSP3およびA/D変換器22の
各出力信号を切換器5に直接供給していたので、A/D
変換器21のインパルス応答波形のうち切り換えタイミ
ングTXより前の部分とA/D変換器22のインパルス
応答波形のうち切り換えタイミングTXより後の部分を
合成した不連続なインパルス応答波形が切換器5から出
力された。
【0036】これに対し、本実施形態では、DSP3お
よびA/D変換器22の各出力信号を遅延器61および
62によって遅延させて切換器5に供給しているので、
切換器5の切り換えタイミングTX以降、A/D変換器
22から出力されるプリエコーを含んだインパルス応答
波形が遅延器62を介して切換器5に供給されることと
なる。このため、本実施形態においては、対称なプリエ
コーとポストエコーを含んだインパルス応答波形が得ら
れるのである。
【0037】本実施形態の効果を確認するため、本願発
明者は以下の実験を行った。まず、図1において、フロ
ーティング型A/D変換器にインパルスを与えたときに
A/D変換器21から得られるインパルス応答波形とA
/D変換器22から得られるインパルス応答波形の各々
のサンプルデータを採取した。
【0038】次に各インパルス応答波形のサンプルデー
タを用いて、各インパルス応答波形を時間軸に沿ってシ
フトした波形を各種用意した。図2における波形WA
2、WA4、WA8、WA16およびWA32は、A/
D変換器21から得られるインパルス応答波形を各々2
サンプル、4サンプル、8サンプル、16サンプルおよ
び32サンプルだけ遅延させることにより得られたもの
である。また、図3における波形WB2、WB4、WB
8、WB16およびWB32は、A/D変換器22から
得られるインパルス応答波形を各々2サンプル、4サン
プル、8サンプル、16サンプルおよび32サンプルだ
け遅延させることにより得られたものである。これらは
遅延器61および62の遅延時間を2サンプリング周期
〜32サンプリング周期まで各種変えた場合に各遅延器
から切換器5に供給される各インパルス波形に各々対応
するものである。
【0039】次に各インパルス応答波形を合成すること
により切換器5から出力されるインパルス応答波形を各
種求め、これらのインパルス応答波形のサンプルデータ
にFFTを施すことにより遅延器61および62の遅延
時間を各種変えた場合におけるフローティング型A/D
変換器の周波数特性を求めた。さらに詳述すると、次の
通りである。
【0040】まず、インパルス応答波形WA2から切り
換え器5の切り換えタイミングTXより前の部分を切り
出すとともに、インパルス応答波形WB2から切り換え
タイミングTXより後の部分を切り出した。次にインパ
ルス応答波形WA2から切り出した波形のレベルを1/
Aにしたものとインパルス応答波形WB2から切り出し
た波形とを接続し、遅延器61および62の遅延時間を
2サンプリング周期とした場合に切換器5から出力され
るであろうインパルス応答波形を求めた。そして、この
ようにして求めたインパルス応答波形のサンプルデータ
にFFTを施し、遅延器61および62の遅延時間が2
サンプリング周期である場合におけるフローティング型
A/D変換器の周波数特性を求めた。
【0041】同様のことをインパルス応答波形WA4お
よびWB4、WA8およびWB8、WA16およびWB
16、WA32およびWB32を用いて行った。
【0042】図4はこのようにして得られた結果を示す
ものであり、図中、F2、F4、F8、F16およびF
32は、遅延器61および62の遅延時間を2サンプリ
ング周期から32サンプリング周期まで変化させた場合
におけるフローティング型A/D変換器の周波数特性を
各々示している。同図より、遅延器61および62の遅
延時間を長くすることによりフローティング型A/D変
換器の周波数特性が安定した特性に収束してゆき、遅延
器61および62の遅延時間が32サンプリング周期相
当あれば十分に安定な周波数特性が得られることが分
る。
【0043】ところで、この実験において用いたA/D
変換器21および22のデシメーションフィルタは、1
サンプリング周期だけ信号を遅延させる遅延器を64段
使用したFIRフィルタであり、32サンプリング周期
相当の遅延時間を有している。このため、A/D変換器
21がプリエコーを出力するのに要する時間も32サン
プリング周期程度であると考えられる。従って、理論的
には遅延器61および62の遅延時間を32サンプリン
グ周期以上にすれば対称なプリエコーとポストエコーを
含んだインパルス応答波形が得られ、フローティング型
A/D変換器の周波数特性が安定化することになる。
【0044】今回の実験では、遅延器61および62の
遅延時間を32サンプリング周期相当にすればフローテ
ィング型A/D変換器の周波数特性が安定するとの結果
が得られたが、これは理論通りの結果であると言える。
【0045】以上説明した通り、本実施形態に係るフロ
ーティング型A/Dは、対称なプリエコーとポストエコ
ーを含んだインパルス応答が得られ、安定した周波数特
性が得られることが実験的にも確認された。
【0046】さて、本実施形態においては、各スイッチ
71、81、72および82を図1に示す状態から切り
換えることにより、DSP3およびA/D変換器22か
ら出力される各デジタル信号を遅延器61および62を
介さないで切換器5に供給することもできる。
【0047】この場合、従来のフローティング型A/D
変換器と同じ動作が行われるため、周波数特性が高域に
おいて不定になるが、遅延器61および62が使用され
ない分だけ応答性がよいという利点もある。
【0048】従って、本実施形態によれば、スイッチ7
1、81、72および82の切り換えにより、遅延器6
1および62を使用することによる安定した周波数特性
でのA/D変換と、遅延器61および62を使用しない
で行う応答性に優れたA/D変換の両方を行うことがで
きるという利点がある。
【0049】以上、A/D変換器を2個したフローティ
ング型A/D変換器を例に本発明の実施形態について説
明したが、本発明は3個以上のA/D変換器を使用した
フローティング型A/D変換器にも勿論適用可能であ
る。
【0050】図5は、A/D変換器をn個使用したフロ
ーティング型A/D変換器の構成例を示すものである。
この図において、P1〜Pn-1は異なったゲインA1〜A
n-1(1<A1<A2<…<An-1)を有するアンプ、Q0
〜Qn-1は各々ΔΣ変調器とデシメーションフィルタに
よって構成されたA/D変換器、R1〜Rn-1はゲイン1
/A1〜1/An-1を各々の入力信号に乗算する乗算器、
0〜Dn-1は各々上記デシメーションフィルタと同じ遅
延時間を有する遅延器である。切換検出器4および切換
器5は図1に示したものと同じ機能を営む手段である。
このフローティング型A/D変換器では、乗算器Rn-1
の出力信号がクリップしていないときはこの乗算器R
n-1の出力信号を遅延器Dn-1によって遅延させたデジタ
ル信号が切換器5から出力される。そして、変換対象で
あるアナログ信号のレベルが大きくなり、乗算器Rn-1
の出力信号がクリップすると、遅延器Dn-1に代えて遅
延器Dn- 2の出力信号が切換器5によって選択され、さ
らに乗算器Rn-2の出力信号がクリップすると、遅延器
n-2に代えて遅延器Dn-3の出力信号が切換器5によっ
て選択され、…という具合に各乗算器の出力信号のクリ
ップ状態に応じて、切換器5による遅延器の切り換えが
行われる。このフローティング型A/D変換器において
も、上記実施形態の場合の同様な役割を果す遅延器を使
用しているので、安定した周波数特性が得られる。
【0051】なお、以上説明した実施形態では、ΔΣ変
調器とデシメーションフィルタからなるA/D変換器を
使用したフローティング型A/D変換器を例に挙げて説
明を行ったが、本発明は、このようなA/D変換器に限
らず、遅延時間の大きなフィルタを含んだ複数のA/D
変換器によって構成される様々なフローティング型A/
D変換器に適用してもよく、この場合においても上記実
施形態と同様な効果が得られる。また、遅延器の遅延時
間は、例えば上記実施形態の場合だとデシメーションフ
ィルタの遅延時間相当の長さがあれば申し分のない効果
が得られるが、要求される応答速度等の諸条件を考慮し
て定めればよい。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、この発明に係るフ
ローティング型A/D変換器によれば、「周波数特性が
高域において不定になる」という従来のフローティング
型A/D変換器が有していた問題が生じず、安定した周
波数特性が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態であるフローティング
型A/D変換器の構成を示すブロック図である。
【図2】 同実施形態の効果を求めるべく同フローティ
ング型A/D変換器から採取されたインパルス応答波形
を示す図である。
【図3】 同実施形態の効果を求めるべく同フローティ
ング型A/D変換器から採取されたインパルス応答波形
を示す図である。
【図4】 同インパルス応答波形を合成した波形にFF
Tを施すことにより得られた同フローティング型A/D
変換器の周波数特性を示す図である。
【図5】 この発明に係るフローティング型A/D変換
器の他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図6】 従来のフローティング型A/D変換器の構成
を示すブロック図である。
【図7】 同フローティング型A/D変換器から採取さ
れた2個のインパルス応答波形を示す図である。
【図8】 同インパルス応答波形にFFTを施すことに
より得られた同フローティング型A/D変換器の周波数
特性を示す図である。
【図9】 逐次比較型A/D変換器から採取された2個
のインパルス応答波形を示す図である。
【図10】 同インパルス応答波形にFFTを施すこと
により得られた同逐次比較型A/D変換器の周波数特性
を示す図である。
【図11】 従来のフローティング型A/D変換器にお
けるプリエコーとポストエコーの非対称化のメカニズム
を説明する図である。
【符号の説明】
11,12……アンプ、21,22……A/D変換器、
3……DSP、61,62……遅延器、4……切換検出
器、5……切換器、71,81,72,82……スイッ
チ。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アナログ信号に各々異なるゲインを付与
    し、レベルの異なった複数の変換用アナログ信号として
    出力するアナログレベル調整手段と、 前記アナログレベル調整手段から出力される複数の変換
    用アナログ信号を各々デジタル信号に変換して出力する
    複数のA/D変換器と、 前記複数の変換用アナログ信号に付与された各ゲインの
    逆数に対応した各ゲインを、前記複数のA/D変換器か
    ら出力される各変換用アナログ信号に対応した各デジタ
    ル信号に各々付与して出力するデジタルレベル調整手段
    と、 前記デジタルレベル調整手段から出力される各デジタル
    信号を各々遅延させて出力する遅延手段と、 前記複数のA/D変換器から出力される各デジタル信号
    のレベルに基づき、前記遅延手段から出力される各デジ
    タル信号のうち1つのデジタル信号を選択して出力する
    切換手段とを具備することを特徴とするフローティング
    型A/D変換器。
  2. 【請求項2】 前記複数のA/D変換器は各々ΔΣ変調
    器とデシメーションフィルタとにより構成され、前記遅
    延手段は前記デジタルレベル調整手段から出力される各
    デジタル信号を少なくとも前記デシメーションフィルタ
    の遅延時間に相当する時間だけ各々遅延させて出力する
    ことを特徴とする請求項1に記載のフローティング型A
    /D変換器。
  3. 【請求項3】 前記デジタルレベル調整手段から出力さ
    れる各デジタル信号を前記遅延手段を介して前記切換手
    段に供給するか前記遅延手段を介さないで直接供給する
    かを切り換える手段を具備することを特徴とする請求項
    1または2に記載のフローティング型A/D変換器。
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