JPH11154475A - 偏向ヨーク - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 前部渡り線部を形成する前部鍔部および前部
係止爪がコイルボビンの漏斗形状を延長する方向に延設
されたコイルボビンを備えた偏向ヨークにおいて、コイ
ルボビンの成形金型の構造を簡素化し、製造コストを低
減する。 【解決手段】 前部渡り線部１８を形成している前部鍔
部１８ａと前部係止爪１８ｂを、陰極線管管軸方向から
見て互いに独立した位置、つまり平面的に重なり合うこ
とのない位置に配設する。これによりコイルボビン１２
の成形金型の離型方向は管軸方向と管軸に対するラジア
ル方向となり、成形金型の構造を簡素化することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、陰極線管に装着
して使用される偏向ヨークに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、テレビジョン受像機や陰極線管デ
ィスプレイ装置においては、スクリーン面の中央部のみ
ならず周辺部においても高品質な画像が求められてい
る。このため、画像品質を左右する重要な特性であるラ
スター歪、その中でもガルウィングで代表される高次の
ラスター歪が生じることのない高品位の画面を実現する
偏向ヨークが望まれている。

【０００３】特開平８−６９７６４号公報には、サドル
型偏向コイルのスクリーン側フランジ部の中央を、スク
リーン型に突き出した凸状形状に、あるいは電子銃側に
くぼませた凹状形状に形成することで、高次のラスター
歪を低減し、なおかつ、前記サドル型偏向コイルのスク
リーン側フランジ部の面を陰極線管のガラスファンネル
部の面に沿った形状に形成することによって、ラスター
歪の補正量及びエネルギー損失をそれぞれ最大、最小と
する方法が開示されている。

【０００４】一方、前記サドル型偏向コイルの巻回方法
においては、巻型と呼ばれる金型の隙間に自己融着型の
線材をサドル状に巻回して成形する方法と、図７に示す
ように、ほぼ漏斗状の形状を成したコイルボビン３１に
線材（図示せず）を巻回する方法が知られている。

【０００５】このコイルボビン３１は、その内面に線材
を直接巻回できるリブ３２と、このリブ３２によって形
成された複数のスリット３３とを有し、前端部及び後端
部には前部渡り線部３４及び後部渡り線部３５が設けら
れている。これらの渡り線部３４、３５は、それぞれ前
部鍔部３４ａと前部係止爪３４ｂ、及び後部鍔部３５ａ
と後部係止爪３５ｂとにより形成されている。前部鍔部
３４ａ及び後部鍔部３５ａは陰極線管管軸に対して鉛直
方向に立ち上げて設けられている。前部係止爪３４ｂ及
び後部係止爪３５ｂはリブ３２の端部に設けられ、前部
鍔部３４ａ及び後部鍔部３５ａと平行に設けられてい
る。以上のリブ３２、前部鍔部３４ａ、後部鍔部３５
ａ、前部係止爪３４ｂ及び後部係止爪３５ｂは、いずれ
もコイルボビン３１に一体成形されている。

【０００６】ところで、前者の金型巻きに比べ、後者の
スリット巻きによる方法は、偏向コイルの巻線分布のば
らつきを低減でき、コンバージェンス特性等の乱れを低
減できることが知られている。このため高画面品位が望
まれる偏向ヨークに、前記スリット巻きを採用した偏向
コイルが多く使用されている。

【０００７】このような前記コイルボビンを製造する方
法としては、合成樹脂等の成形材料を溶融、成形金型に
注入充填し、冷却・固化して成形する射出成形方法が知
られている。この成形方法において、成形品の金型から
の取り出しは、金型を特定方向に移動させると同時に複
数のピン等を金型内に挿入して成形品を機械的に突き出
すこと、によっり行われる。したがって、射出成形品の
形状は、上記の成形金型の離型（抜き）方向を考慮した
うえで設計されなければならない。

【０００８】ここで、前記コイルボビン３１の成形金型
の離型方向を考えてみると、例えば図８に示すような陰
極線管管軸上の前部方向３６および後部方向３７、さら
には前記管軸に対する鉛直方向（ラジアル方向）３８を
成形金型の離型方向とすることができる。前述したよう
に、前部鍔部３４ａ及び前部係止爪３４ｂは管軸に対し
て鉛直方向に立ち上がった形状を成しているため、前部
渡り線部３４を成形する金型３９の形状は例えば図９に
示すような形状となり、図１０に示すように、このよう
な渡り線部の成形金型３９を上下に２つ合わせた状態か
ら、図中符合３８及び符合４０の２方向に成形金型３９
をそれぞれ離型することができる。

【０００９】これに対して、前記特開平８−６９７６４
号公報で示されているように、サドル型偏向コイルのス
クリーン側フランジ部の面を陰極線管のガラスファンネ
ル部の面に沿った形状に形成しようとした場合、図１１
に示すように、前部渡り線部４１を形成するための前部
鍔部４１ａおよび前部係止爪４１ｂをコイルボビン３１
の漏斗形状を延長する方向に延設する必要がある。この
方法は実公平６−４１３３３号公報にその詳細が示され
ている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】上述したように、前部
渡り線部４１を形成する前部鍔部４１ａおよび前部係止
爪４１ｂがコイルボビン３１の漏斗形状を延長する方向
に延設された一体成形型のコイルボビン３１を備えた偏
向ヨークの場合、コイルボビン３１の成形に使用される
金型の離型方向は、図１１及び図１２の符合４５に示す
ように、陰極線管の管軸に対して一定傾斜角を伴った放
射方向となる。このような成形金型の構造は極めて複雑
なものとなり、成形金型の製造コストの増大を伴う。

【００１１】この発明はこのような課題を解決するため
のもので、コイルボビンの成形金型の構造を簡素化する
ことができ、これにより製造コストを低減することので
きる偏向ヨークを提供することを目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の偏向ヨークは、ほぼ漏斗状のコイルボビン
と、このコイルボビンに各々設けられた前部鍔部および
後部鍔部と、前記コイルボビンの内面に設けられ線材を
巻回保持する複数のリブと、前記リブに設けられ前記前
部鍔部および前記後部鍔部とにより前記線材の前部渡り
線部および後部渡り線部を形成する係止爪と、前記各リ
ブ及び前記渡り線部に前記線材を巻回して形成された一
対の偏向コイルとを有する偏向ヨ−クにおいて、少なく
とも前記前部渡り線部または後部渡り線部のいずれかを
形成する鍔部および係止爪が、前記コイルボビンの漏斗
形状を延長する方向に延設され、かつ陰極線管管軸方向
より見て互いに独立した位置に配設されていることを特
徴とする。

【００１３】本発明は、このように構成されているの
で、渡り線部を形成する鍔部および係止爪がコイルボビ
ンの漏斗形状を延長する方向に延設されたコイルボビン
の成形金型の離型方向が、陰極線管管軸方向とこの管軸
方向に対する鉛直方向（ラジアル方向）となり、成形金
型の構造を簡素化することができ、これによりコイルボ
ビンの成形金型の製造コストの低減、ひいては偏向ヨー
クの生産性の向上を図ることができる。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、この発明の偏向ヨークの一
実施形態を図面を用いて説明する。

【００１５】図１は本発明の一実施形態である偏向ヨー
ク１１の外観を示す斜視図である。この偏向ヨーク１１
は、合成樹脂などの絶縁材料からなるほぼ漏斗状のコイ
ルボビン１２と、このコイルボビン１２の内側に巻回さ
れ水平偏向磁界を発生する一対のサドル型水平偏向コイ
ル１３と、コイルボビン１２の外側に配置され垂直偏向
磁界を発生する一対のサドル型垂直偏向コイル１４と、
前記垂直偏向コイル１４の外側に配置された漏斗状のコ
ア１５とから構成されている。

【００１６】図２、図３に示すように、コイルボビン１
２の内面には線材を巻回保持する複数のリブ１６が一体
成形されており、これらのリブ１６によって複数のスリ
ット１７が形成されている。また、コイルボビン１２の
前端部及び後端部には前部渡り線部１８及び後部渡り線
部１９がそれぞれ形成されており、前部渡り線部１８は
コイルボビン１２に一体成形された前部鍔部１８ａと、
コイルボビン１２にリブ１６を介して一体成形された前
部係止爪１８ｂとにより形成されている。また、後部渡
り線部１９はコイルボビン１２に一体成形された後部鍔
部１９ａとコイルボビン１２にリブ１６を介して一体成
形された後部係止爪１９ｂとによって形成されている。

【００１７】そして前部渡り線部１８はコイルボビン１
２の漏斗形状を延長する方向に延設されており、この前
部渡り線部１８を形成している前部鍔部１８ａと前部係
止爪１８ｂは、図４にも示すように、陰極線管管軸方向
から見て互いに独立した位置、つまり平面的に重なり合
うことのない位置に配設されている。

【００１８】このような構成を有する本実施形態の偏向
ヨークのコイルボビン１２は、成形金型の構造を簡単な
ものとすることができ、離型が容易なものとなる。以下
その理由を説明する。

【００１９】図５は図４のＡ−Ａ断面すなわち本実施形
態の偏向ヨークにおけるコイルボビン１２の前部鍔部１
８ａの配設位置の断面図である。また、図６は図４のＢ
−Ｂ断面図すなわちコイルボビン１２の前部係止爪１８
ｂの配設位置の断面図である。図５に示すように、コイ
ルボビン１２の前部鍔部１８ａを含んだ断面を成形する
成形金型の離型方向は管軸方向２０，２１とこの管軸方
向に対する鉛直方向（ラジアル方向）２２となる。ま
た、図６に示すように、コイルボビン１２の前部係止爪
１８ｂを含んだ断面を成形する成形金型の離型方向も管
軸方向２３，２４とこの管軸方向に対する鉛直方向（ラ
ジアル方向）２５となる。なお、図２および図４にコイ
ルボビン１２全体における成形金型離型方向を矢印によ
り示す。このように本実施形態では、コイルボビン１２
の成形金型の離型方向が管軸方向と管軸に対するラジア
ル方向となり、成形金型の構造を簡素化することができ
る。したがって、成形金型のコスト低減、離型作業の効
率向上を図ることができる。

【００２０】なお、この実施形態においては、コイルボ
ビン１２の前後の渡り線部のうち、前部渡り線部１８だ
けがコイルボビン１２の漏斗形状を延長する方向に延設
されている偏向ヨークについて述べたが、後部渡り線部
１９も同様にコイルボビン１２の漏斗形状を延長する方
向に延設されている場合は、この後部渡り線部１９を形
成する後部鍔部１９ａと後部係止爪１９ｂも同様に、陰
極線管管軸方向から見て互いに独立した位置に配設すれ
ばよい。

【００２１】また、鍔部及び係止爪の数や配設位置は、
コイルボビン１２に線材を確実に巻回保持できれば、前
記本発明の鍔部と係止爪との配設位置関係の条件を満足
する範囲で自由に選択することが可能である。

【００２２】さらに、本発明は、コイルボビンが一体成
形品であることに限定されるものではなく、例えば、上
部と下部或いは前部と後部に２分して各々独立に成形さ
れた２体のコイルボビンを結合して構成されたものにも
適用することができる。

【００２３】また、本発明は、水平偏向コイル、垂直偏
向コイルの巻回形状が本実施形態に述べられているサド
ル型であることに限定されるものではなく、コアの外周
上に、線材がトロイダル状に巻回された偏向ヨークにも
適用することができる。

【００２４】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、渡
り線部を形成する鍔部および係止爪がコイルボビンの漏
斗形状を延長する方向に延設されたコイルボビンを有す
る偏向ヨークにおいて、コイルボビンの成形金型の構造
を簡素化することができ、これによりコイルボビンの成
形金型の製造コストの低減、ひいては偏向ヨークの生産
性の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施形態である偏向ヨークの構成
を示す斜視図

【図２】図１の偏向ヨークのコイルボビンの側面図

【図３】図２のコイルボビンの一部を破断した側面図

【図４】図２のコイルボビンの前部側の正面図

【図５】図２のコイルボビンの前部鍔部を含んだ位置の
断面図

【図６】図２のコイルボビンの前部係止爪を含んだ位置
の断面図

【図７】従来の偏向ヨークのコイルボビンの一部を破断
した側面図

【図８】図７に示す従来のコイルボビンの前部鍔部及び
前部係止爪を示す部分断面図

【図９】図７に示す従来のコイルボビンの前部渡り線部
を成形する金型の一部を示す概略斜視図

【図１０】図７に示す従来のコイルボビンの成形金型の
離型方向を示した正面図

【図１１】従来の前部鍔部および前部係止爪をコイルボ
ビンの漏斗形状を延長する方向に延設したコイルボビン
を示す断面図

【図１２】図１１に示す従来のコイルボビンの成形金型
の離型方向を示す正面図

【符号の説明】

１１……偏向ヨーク １２……コイルボビン １３……水平偏向コイル １４……垂直偏向コイル １５……コア １６……リブ １８……前部渡り線部 １８ａ……前部鍔部 １８ｂ……前部係止爪 １９……後部渡り線部 １９ａ……後部鍔部 １９ｂ……後部係止爪

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ほぼ漏斗状のコイルボビンと、このコイ
   ルボビンに各々設けられた前部鍔部および後部鍔部と、
   前記コイルボビンの内面に設けられ線材を巻回保持する
   複数のリブと、前記リブに設けられ前記前部鍔部および
   前記後部鍔部とにより前記線材の前部渡り線部および後
   部渡り線部を形成する係止爪と、前記各リブ及び前記渡
   り線部に前記線材を巻回して形成された一対の偏向コイ
   ルとを有する偏向ヨ−クにおいて、 少なくとも前記前部渡り線部または後部渡り線部のいず
   れかを形成する鍔部および係止爪が、前記コイルボビン
   の漏斗形状を延長する方向に延設され、かつ陰極線管管
   軸方向より見て互いに独立した位置に配設されているこ
   とを特徴とする偏向ヨーク。