JPH11152610A

JPH11152610A - 競技用衣服

Info

Publication number: JPH11152610A
Application number: JP9331291A
Authority: JP
Inventors: Tatsuo Sakaguchi; 達雄坂口; Takeshi Ogino; 毅荻野
Original assignee: Mizuno Corp
Current assignee: Mizuno Corp
Priority date: 1997-11-14
Filing date: 1997-11-14
Publication date: 1999-06-08

Abstract

(57)【要約】【課題】本発明はジャンプスキー、アルペンスキー、
自転車競技、陸上競技、競泳等に用いられる競技用衣服
に関するものであり、該衣服の表面に微細な溝を体長方
向に配することにより、競技中、衣服表面を流れる流体
の表面摩擦抵抗を低減させ、競技記録向上に資する。【解決手段】本発明に係る競技用衣服は、極微細な溝
を表面全体に体長方向へ配したことを特徴とする競技用
衣服であって、該溝は、競技用衣服を形成する生地の織
組織又は編組織の組織変化により形成され、あるいは生
地表面へのエンボス加工によって形成されることを特徴
とする競技用衣服である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はジャンプスキー、ア
ルペンスキー、自転車競技、陸上競技、競泳等に用いら
れる競技用衣服に関するものであり、該衣服の表面に微
細な溝を体長方向に配することにより、競技中、衣服表
面を流れる流体の表面摩擦抵抗を低減させ、競技記録向
上に資する流体力学的に優れた競技用衣服を提供する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、低抵抗競技用衣服は大きく分
けて、以下のような考え方に基づいて設計されている。
まず、実開昭５６−２３６１２号等により、競技用衣服
の表面に平滑加工を施し、あるいは撥水加工を施し、表
面摩擦抵抗を減少させる技術が開示されている。

【０００３】特開平２−３３３０５号、特開平２−３３
３０６号により、衣服表面の流体剥離位置前方にライン
状突起やライン状凹溝を設け、流体剥離位置を後退せし
めることによって形状抵抗を減少させる技術が開示され
ている。

【０００４】更に、特開平３−１３７２０６号、特開平
３−１３７２０４号、実開平６−６５４１４号、実開平
６−１２４１９号等より、競技用衣服の特定部位にライ
ン状又はドット状の突起等の凸凹を流体の流れの方向に
設け、表面流体を整流して形状抵抗の減少を図る技術も
開示されている。

【０００５】あるいは、特開平７−１７０９１２号、特
開平９−３１７２１号等により、競技用衣服の表面に各
種ストライプ加工を施し、表面流体の速度差が生じせし
めて、その速度差により発生する縦渦により、表面流体
の剥離位置を後退させることによって形状抵抗の減少さ
せる技術が開示されている。

【０００６】更に、造船工学や航空工学等の分野におい
ては、流体中の構造物の表面に各種微細な形状を形成し
て、流体抵抗を低減する技術が研究されている。即ち、
流体中の構造物表面より数十μｍから数百μｍの領域に
は、境界層と呼ばれる流体分子の運動量が極端に少なく
なっている領域が層状に分布し、この境界層が境界層外
の流体に引っ張られ抵抗を生じ、これが表面抵抗の一つ
の要因となっているといわれている。そこで、前記境界
層の厚みを薄くし、表面摩擦抵抗を低減するために、船
体や機体の表面に特殊な微細構造、例えば、数十から数
百μｍオーダーの大きさの溝や突起その他表面の粗度を
上げるような微細な構造を形成する技術が公開されてい
る。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このように、従来より
各種競技用衣服の流体抵抗を削減する技術が多々開示さ
れている。これら流体抵抗を削減する技術は、表面摩擦
抵抗を削減する方法と形状抵抗を削減する方法とに大別
できるが、本発明が解決しようとする課題は、主に表面
摩擦抵抗を削減する方法に関するものである。

【０００８】従来より、競技用衣服等の表面摩擦抵抗を
低減させる方法として、最も一般的であったのは衣服表
面を平滑にする方法であるが、近年の研究により、衣服
表面を平滑にすることが必ずしも表面摩擦抵抗の低減に
つながるとは言えない、との結果が得られている。

【０００９】また、衣服表面を平滑に加工する手段、ま
たは衣服表面上に何らかの形状変化を付与する手段とし
て、主にポリエステルやポリウレタンといった合成樹脂
等からなるフィルムやシート等を、生地表面に接着する
方法が採られていたが、これら方法を用いた場合、衣服
を形成する生地自体の伸縮性が阻害され運動機能性が低
下したり、生地の風合いが損なわれて着用時に違和感を
感じるといった問題もあった。更に、競技種目によって
は、安全性等を考慮し、競技用衣服の表面摩擦（雪面上
の）や生地の通気量等にレギュレーションを設けられて
いる場合もあり、フィルムコーティング等を施した衣服
においては、これらレギュレーションに抵触する場合も
あった。

【００１０】そこで本発明は、競技中の主に表面摩擦抵
抗を効果的に低減せしめることにより、各種競技の記録
向上に寄与する競技用衣服であって、しかも、従来より
フィルムコーティング等の表面加工を施した衣服の欠点
であった、生地自体の伸縮性の低下や着用時の違和感の
ない競技用衣服を提供するものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、気流中及び水流中における競技用衣服の表面を微視
的な観点より研究することよって、本発明をするに至っ
た。即ち、本発明に係る競技用衣服は、流体と衣服表面
との表面摩擦抵抗を低減させる目的で、深さ２０〜５０
０μｍ、幅２０〜５００μｍ、ピッチ２０〜２０００μ
ｍの微細な溝を衣服表面全体に渡り、体長方向へ配した
ことを特徴とする。ここで、ピッチとは溝と溝との距離
を言う。

【００１２】本発明に係る競技用衣服の表面に設けられ
る前記溝は、競技用衣服を形成する生地の織組織又は編
組織の組織変化によって形成される。あるいは、前記競
技用衣服を形成する生地が熱可塑性を有する素材からあ
る生地である場合は、前記溝を該生地表面へ直接エンボ
ス加工によって形成されることも可能である。

【００１３】

【発明の実施の形態】本発明に係る競技用衣服は、以下
のように実施される。ポリエステル糸またはナイロン糸
とポリウレタン糸を使用したトリコット編や、平織、サ
テン織等の伸縮性があり平滑な表面組織を有する生地の
表面にエンボス加工で、所定の深さ、幅及びピッチに対
応した溝を設ける。溝の形状は代表的なものとして、そ
の断面形状が図１に示すように（イ）台形状、（ロ）方
形状、（ハ）三角形状、（ニ）台形状が隣接した形状、
（ホ）三角形状が隣接した形状を呈したものが挙げられ
るが、特にこれらの形状に限定されるものではない。図
１に示すように、溝の深さｈは生地表面から溝の底部ま
での深さをいう。また、溝の幅ｂは（イ）（ロ）（ニ）
のような溝の底部に平坦な部分を有する溝の場合には該
平坦部の幅をいい、（ハ）（ホ）のような底部に平坦部
を有さない溝の場合にはひとつの溝の両端部間の距離い
う。更に、溝のピッチｐは前記各溝の中心点から隣接す
る溝の中心点までの距離をいう。本発明に用いられる繊
維は、生地に織った際又は編んだ際に、表面が平滑な生
地が得られるように、１００ｄ以下の繊維を用いるのが
好適である。

【００１４】ここで、エンボス加工とは、一般には所定
の形状を彫った金属製又は樹脂製のロールを高温高圧、
又は高温で、あるいは高圧で前記生地表面を一定速度で
プレスことにより、前記ロール表面に彫った形状に対応
した形状を形成することをいう。本発明に係る競技用衣
服に用いられる生地に施されるエンボス加工は、金属製
ロールの表面に、生地表面に形成される溝の形状に対応
した突条形状を彫り、該金属ロールを高温高圧で、前記
生地表面を一定速度でプレスすることに施される。

【００１５】この際の前記ロールの温度、圧力及び速度
は、加工する生地の材質、目付け、厚み、その他気温、
湿度等の作業環境によっても変化する。原材料である編
地表面のループあるいは、織地表面の織糸の盛り上がり
による生地表面の凹凸は、このプレスの際に溝形状が形
成されると同時にかなり平坦に均され、プレスによって
作られる溝より深くなることはない。

【００１６】本発明に係る競技用衣服の表面に設けられ
る溝の深さ、幅、ピッチなどは該競技用衣服が使用され
る競技種目の特性によって、特に、競技者に移動速度や
流体の種類によって、最適な数値に決定される。最適な
数値は、従来より流体抵抗の研究に用いられていた風洞
や回流水槽を用いた実験により決定される。例えば、ス
キージャンプ競技用に用いられる競技用衣服の設計にお
いては、生地表面の微細構造を決定するため、所定大き
さの円柱の表面に、各種微細構造を形成した生地の試験
片を貼着し、スキージャンプの助走時における競技者の
移動速度に該当する速度の空気流を前記生地を貼着した
円柱に当てて、該円柱にかかる力の大きさを計測し、抵
抗係数を算出して比較することにより評価する。更に、
上記円柱を用いた実験により有為な効果が認められた生
地で、それぞれ実際の競技用衣服を作成し、モデルに着
用させて同様に風洞内で該衣服にかかる力の大きさを計
測し、抵抗面積を算出、比較して、最も有効な効果の得
られる数値範囲を決定した。

【００１７】更に、競泳用水着等水中で用いられる競技
用衣服の設計においては、生地表面の微細構造を決定す
るため、所定大きさの平板の表面に、各種微細構造を形
成した生地の試験片を貼着し、該平板を回流水槽中に流
れの向きと平行に静め、競技者の移動速度に該当する速
度の水流を該平板の両側面に流して、該平板にかかる力
の大きさを計測し、抵抗係数を算出し、比較することに
より評価する。更に、上記平板を用いた実験により有為
な効果が認められた生地で、それぞれ実際の競技用衣服
を作成し、モデルや人体模型に着用させて同様に回流水
槽中で該衣服にかかる力の大きさを測定し、最も有効な
効果の得られる数値範囲を決定した。

【００１８】このような実験、解析から得られた競技用
衣服に最適な形状及び有為な効果を得られる数値は、競
技者の体長方向に形成された微細な溝構造であって、該
溝の深さ２０〜５００μｍ、幅２０〜５００μｍ、ピッ
チ２０〜２０００μｍの範囲に該当する大きさの溝構造
である。

【００１９】特に、ジャンプスキー競技において、スタ
ートの静止状態から助走路を滑り降り、踏切直前にはお
よそ９０ｋｍ／ｈの速度に達するが、空気中で該速度範
囲において最も表面摩擦抵抗の低減効果が得られた溝の
形態は、深さ２５０〜５００μｍ、幅２５０〜５００μ
ｍ、ピッチ１２００〜１８００μｍであった。

【００２０】本発明に係る競技用衣服は、このように形
成された生地を裁断、縫製して実施されるが、スケート
用衣服あるいは競泳用水着等であれば該生地をそのまま
用い、アルペンスキー用衣服あるいはジャンプスキー用
衣服等のように、更に積層加工などの生地加工が必要な
ものに対しては、表地として使用する。

【００２１】

【実施例】本願発明に係る競技用衣服の一実施例である
ジャンプスキー用衣服について説明する。本実施例に係
るジャンプスキー用衣服には、表面に５０ｄポリエステ
ル、４０ｄポリウレタンの極細糸をトリコット編機を用
いて編成した編生地を使用する。この生地に、図１の
（イ）に示すような台形状の溝であって、深さ３００μ
ｍ、幅２５０μｍ、ピッチ１２００μｍの溝を体長方向
に平行に形成し、これを表地とする。次に、該生地の裏
面に発泡体層や裏地を適宜積層一体化して、表面に深さ
約３００μｍ、幅約３００μｍ、ピッチ約１５００μｍ
の溝を有するジャンプスキー用衣服の生地とする。ここ
で、積層後の生地上のピッチが積層前のピッチより若干
広がっているのは、前記積層する工程において、表地を
若干引っ張りながら接着するためである。

【００２２】該生地を前記溝が体長方向とほぼ平行とな
るように裁断、縫製する。即ち、該生地を用いてジャン
プスキー用競技用衣服を形成した状態において、前記溝
は、前後身頃部分及び脚部においては上下方向に、腕部
においては袖ぐり部から袖口部の方向に設けられてい
る。

【００２３】次に、本実施例に係るジャンプスキー用衣
服の表地及びジャンプスキー用衣服に関する実験結果の
一部を示す。表１に、本実施例に係るジャンプスキー用
衣服の表地と前記溝のピッチを変更した比較品とについ
て、前記円柱を用いた風洞実験の結果を示す。

【００２４】

【表１】

【００２５】本実験に用いた比較品１のピッチは２５０
０μｍであり、比較品２のピッチは５０００μｍであ
る。表１から分かるように、抵抗係数（Ｃ_D 値）は、風
速１０ｍ／ｓ（時速３．６ｋｍ／ｈ）から風速３０ｍ／
ｓ（時速１０８ｋｍ／ｈ）において、本発明品が各比較
品より低い。ここで、抵抗係数（Ｃ_D 値）とは、風洞実
験で得られた全抵抗値に、実験時の空気密度を考慮した
補正を加え、風向に対する投影面積で除した値であっ
て、単位面積あたりの抵抗値の大きさを示す数字であ
る。

【００２６】表２に本実施例に係るジャンプスキー用衣
服と従来品について、実際に着用した状態で行った風洞
実験の結果を示す。

【００２７】

【表２】

【００２８】表２から分かるように、抵抗面積（Ｃ_D ・
Ｓ値）は、風速１５ｍ／ｓ（時速５．４ｋｍ／ｈ）から
風速２５ｍ／ｓ（時速９０ｋｍ／ｈ）において本発明品
が各比較品より若干低い。ここで、抵抗面積（Ｃ_D ・Ｓ
値）とは、風洞実験で得られた全抵抗値に、実験時の空
気密度を考慮した補正を加えた値である。なお、本実験
において抵抗係数ではなく抵抗面積を用いたのは、円柱
ではなく実際に被験者に衣服を着用させて抵抗値を測定
するため、風向に対する投影面積を正確に測定すること
が困難なためである。

【００２９】このように、前記溝のピッチに関しては、
小さいほうがよりよい効果を期待できるが、用いられる
生地自体の成型性や前記ロール作成の経済性等を勘案す
れば、ピッチは２０〜２０００μｍの範囲に設定するの
が好適であり、特に、ジャンプスキー競技用衣服におい
ては、１２００〜１８００μｍの範囲に設定するのが最
適である。

【００３０】表３に本実施例に係るジャンプスキー用衣
服の表地と従来品について、前記円柱を用いた風洞実験
の結果を示す。

【００３１】

【表３】

【００３２】本実験に用いた従来品は、本実施例に係る
ジャンプスキー用衣服の表生地と同一の組成からなるト
リコット編地であって、前記エンボス加工を施していな
い表面が平滑な生地を用いた。表３から分かるように、
抵抗係数（Ｃ_D 値）は、風速１０ｍ／ｓ（時速３．６ｋ
ｍ／ｈ）から風速２５ｍ／ｓ（時速９０ｋｍ／ｈ）にお
いて本発明品が従来品より低く、風速２５ｍ／ｓを境に
逆転している。

【００３３】表４に本実施例に係るジャンプスキー用衣
服と従来品について、実際に着用した状態で行った風洞
実験の結果を示す。

【００３４】

【表４】

【００３５】表４から分かるように、抵抗面積（Ｃ_D ・
Ｓ値）は、風速１５ｍ／ｓ（時速５．４ｋｍ／ｈ）から
風速２５ｍ／ｓ（時速９０ｋｍ／ｈ）において本発明品
が従来品より低い。

【００３６】即ち、これらの実験結果より、ジャンプス
キー競技の助走中においては、本発明品のほうが抵抗値
が低く踏切時の初速の向上に寄与し、ひいては飛距離の
向上を図ることができる。

【００３７】

【発明の効果】本発明に係る競技用衣服は、ジャンプス
キー、アルペンスキー、自転車競技、陸上競技、競泳
等、そのスピードを競う競技において、該衣服の表面に
微細な溝を体長方向に配することにより、競技中、衣服
表面を流れる流体の表面摩擦抵抗を低減させ、競技記録
向上に資することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る競技用衣服の表面に形成される溝
の断面形状を示す図である。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】深さ２０〜５００μｍ、幅２０〜５００
μｍ、ピッチ２０〜２０００μｍの溝を表面全体に体長
方向へ配したことを特徴とする競技用衣服。
【請求項２】前記溝が、競技用衣服を形成する生地の
織組織又は編組織の組織変化によって形成されることを
特徴とする請求項１記載の競技用衣服。
【請求項３】前記溝が、競技用衣服を形成する平滑な
生地表面へのエンボス加工によって形成されることを特
徴とする競技用衣服。