JPH11145526A - 電気機械変換素子,電気機械変換効果応用素子及びその製造法 - Google Patents

電気機械変換素子,電気機械変換効果応用素子及びその製造法

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JPH11145526A
JPH11145526A JP30854497A JP30854497A JPH11145526A JP H11145526 A JPH11145526 A JP H11145526A JP 30854497 A JP30854497 A JP 30854497A JP 30854497 A JP30854497 A JP 30854497A JP H11145526 A JPH11145526 A JP H11145526A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の薄膜形成技術により薄膜状に圧電体層
を弾性体上に形成しようとすると、圧電体層が圧電性を
有する温度に加熱されるため、所望の圧電性が得られな
い。 【解決手段】 振動発生体3と,振動発生体3の装着位
置に溶射により成膜されるとともに、電気エネルギー及
び機械的変位間の相互変換を行う電気機械変換素子5
と、振動発生体3と電気機械変換素子5との間に溶射に
より形成される緩衝層4とを備える電気機械変換効果応
用素子7。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気エネルギーを
機械的変位に変換する電気機械変換素子と、この電気機
械変換素子を装着されて振動を発生する弾性部材を備え
る電気機械変換効果応用素子と、この電気機械変換効果
応用素子の製造法とに関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、例えば、圧電アクチュエ
ータは、圧電体や電歪素子等の電気機械変換素子により
弾性体からなる振動発生体(アクチュエータ母材)を変
形させ、振動発生体に加圧接触する相対運動部材との間
で相対運動を発生する。一方、圧電センサは、振動発生
体の変形により発生する応力を機械電気変換素子により
電気信号に変換することにより変形量を検出する。
【0003】これらの圧電アクチュエータや圧電センサ
といった電気機械変換効果応用素子は、セラミックス等
の圧電効果を有する圧電素子を必要な形状(例えば薄板
状)に加工し、加工した圧電素子を、振動発生体等に適
宜手段(例えば接着)により接合することにより、電気
機械変換効果応用素子として基本性能を得ていた。
【0004】ところで、電気機械変換効果応用素子に対
してはよりいっそうの小型化が要求されており、このよ
うな要請に対応するため、圧電素子に対しても小型化及
び薄型化が要求される。
【0005】例えば、圧電アクチュエータの一つである
超音波アクチュエータの場合には、振動発生体である弾
性体の表面に相対運動部材を駆動するのに十分な振幅を
有する振動波を発生させる必要がある。そのため、電気
機械変換素子である圧電素子自体の振動が十分に大きく
なくてはならない。
【0006】圧電素子の振幅は、印加電界に比例するも
のであるため、入力電圧に比例するとともに圧電素子の
厚さに反比例する。そのため、電源を含めた圧電素子の
小型化のために入力電圧値が決定されてしまうと、十分
な駆動力を得るためには圧電素子の厚さを小さくするこ
とにより、出力を増大するという方法を取らざるを得な
い。例えば、一眼レフカメラの自動焦点合わせの駆動源
である超音波アクチュエータでは、円環型の振動発生体
に、厚さが0.5mm程度の圧電素子であるPZT(ジ
ルコン酸チタン酸鉛)を貼付している。
【0007】このように、圧電素子を薄くすることによ
り入力電圧を低下することが可能となり、電源を含めた
素子全体を小型化することが可能となる。しかし、この
ように厚さの薄い圧電素子を弾性体に例えばエポキシ樹
脂系接着剤で接着しようとすると、接着のために行う加
圧により圧電素子が容易に破損してしまう。このような
破損に留意すると、接着作業性が著しく損なわれてしま
う。
【0008】一方、圧電素子をさらに薄くしていくと、
これに伴って、接着層(樹脂層)が振動吸収層として作
用して圧電振動エネルギーの吸収率が増加し、エネルギ
ー変換効率が著しく低下してしまう。
【0009】そして、このような問題を解決するため
に、蒸着,スパッタリング,CVDさらにはゾルゲル法
等の薄膜形成技術により、PZT等の圧電材料を薄膜と
して、振動発生体の表面に直接的に形成する技術が提案
されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従
来の技術には、以下に列記するような課題がある。 (1)この薄膜形成技術によって形成された数μm程度
の圧電体薄膜は、弾性体との界面に接着剤の層のような
振動吸収層は持たないため、圧電層と弾性体層との間で
振動の伝搬を非常に効率良く行うことが可能である。
【0011】しかし、この薄膜形成技術では、数μm以
上の薄膜を形成するには大変時間や手間を要する。ま
た、形成した薄膜にひびが発生し易くなるため、圧電ア
クチュエータの場合には弾性体の厚さが大きいときに
は、相対運動部材の駆動に十分な変位の振動を弾性体に
発生することが難しい。一方、圧電センサの場合には、
ある大きさの変位を検出しようとすると、圧電素子が薄
過ぎるために圧電素子により発生する電界が小さくな
り、検出が難しい。
【0012】これらの問題を解決するためには、数10
μm〜数mm程度の厚さを有し、さらに弾性体上に直接
的に形成された圧電素子を得る必要がある。一方、適用
範囲が拡大されるのに伴って、圧電アクチュエータや圧
電センサ等の構造も多様化してきており、それに伴って
振動発生体としての弾性体の形状は複雑化している。し
たがって、従来のように、振動発生体の所定の位置に単
体の圧電素子を接着するのでは、今後さらに、振動発生
体の圧電素子装着面が平面ではない複雑な形状になった
場合には全く対応できなくなってしまう。これを解消す
るためには、曲面等の複雑な形状の圧電素子装着面に
も、容易に圧電素子を形成できる圧電素子の形成技術の
開発が極めて重要である。
【0013】(2)電気機械変換素子である圧電体は、
特にセラミックスの場合、圧電的性質を取り出すため
に、材料に対して分極処理(ポーリング)を行うことが
必要である。ポーリングとは、ポーリング処理前の圧電
体中ではランダムな方向を指向している電気双極子の分
極方向を、外部からの力により強制的に一方向を指向さ
せることにより、圧電体に電界誘起歪み,応力誘起電荷
等の圧電的性質を持たせることを初めて可能とする処理
である。セラミックスのポーリングは、一般に高温に加
熱したシリコーンオイル等の絶縁溶媒中で、セラミック
スに1mm2 当たり数kVの高電圧を印加することで行
うものである。しかし、一度施したポーリング処理も、
圧電体(PZTの場合)を200℃から300℃程度に
近づけると劣化していき、Tc付近では完全に無効にな
ってしまう。
【0014】ところが、現在これらのアクチュエータ,
センサ等の圧電応用素子を製造する場合に、圧電体上の
電極への配線のため、はんだ付け,接着等の圧電体の加
熱の過程は避けることが困難である。したがって、この
時、ポーリングの破壊を避けるためには、圧電体にかけ
られる温度は使用している圧電体のTcに応じて極めて
制限されたものとなり、素子の形状や強度,耐久性,生
産性等の諸条件を優先させた任意の配線方法を選択する
自由はない。
【0015】また、圧電体と弾性体の接合は弾性体を変
形させることとなり、精度向上のためには圧電体を接合
した後の加工は避けられない。ところが、この加工に伴
う加工歪みが発生するため、加工歪みを取るための熱処
理が必要になってしまう。例えばSUS304では60
0℃程度の熱処理が必要であり、殆ど全ての圧電体がこ
の温度では完全にポーリングが壊れてしまう。
【0016】さらに、ポーリングは圧電体の使用時間や
使用環境に応じて劣化していくものであり、それに伴い
圧電素子の圧電的性質も劣化していく。しかし、従来の
ものでは、一度劣化した圧電性能を、再ポーリングによ
って再び元に戻すことは、前述のポーリングの過程を考
えると、極めて困難である。
【0017】(3)圧電素子がアクチュエータ母材又は
センサ母材等の表面に薄膜成形技術によって形成された
アクチュエータ及びセンサ等の電気機械変換効果応用素
子においては、形成された圧電素子が圧電特性を有する
結晶構造である必要がある。ところが、チタン酸ジルコ
ン酸鉛(PZT)に代表されるように、実用的な圧電材
料は、ペロブスカイト型の結晶構造を有するものが圧倒
的に多く、しかもこれらのペロブスカイト型の圧電材料
は、高温相で圧電性を有するペロブスカイト型の結晶構
造の他に、低温相で圧電性を全く示さないパイロクロア
相が生成してしまう。そのため、溶射によって形成され
た圧電体層が圧電性を有するためには、圧電体層の形成
を十分に高温で行うか、低温で形成された層に熱処理を
施すことが必要である。また、使われている圧電体の殆
どのものがPZTに代表されるように鉛系の酸化物材料
である。鉛イオンは、陽イオンの半分近くが換言され易
いため、高温で相の形成がなされる場合にも、熱処理を
行う場合にも、雰囲気は十分に酸素のある状態でなくて
はならない。
【0018】ところが、母材にSUS等の鉄系の合金を
使用する場合には、高温での成膜や熱処理を行うこと
は、圧電体層と母材との間で酸素原子の拡散等の物質移
動に代表される化学反応が起こる可能性が高い。その場
合、母材の表面に酸化層が形成れたり、母材や圧電体層
の化学組成が変化して、圧電特性や圧電体層とアクチュ
エータとの付着強度が著しく低下する。
【0019】このような問題を解決するために、母材表
面にニッケル,クロム,コバルト等の高融点で酸化し難
い金属,又は白金,レニウム,ロジウム,パラジウム等
の融点の高い貴金属、さらにそれらの合金からなる緩衝
層を、薄膜形成技術やメッキ等により形成することも考
えられる。しかし、このような緩衝層の上に圧電体層を
形成する場合、緩衝層の厚さは、溶射条件によっては不
十分なことがある。また、溶射を行う前に、緩衝層形成
工程を行う必要もあり、生産性の低下は免れない。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は、圧電体の原料
粉末を溶射ガン先端に発生する炎中に投入することによ
り、圧電体粉末を溶融しながら弾性体の表面に衝突さ
せ、急冷することにより被膜を形成する溶射技術によっ
て、圧電体を振動発生体及び振動発生体母材の表面に直
接形成すること、さらに、溶射により形成する圧電体層
と弾性体との間に、溶射による緩衝層を形成することに
よって、前述した課題の解決を図るものである。
【0021】請求項1の発明は、電気エネルギー及び機
械的変位間の相互変換を行うとともに、所定の装着位置
に溶射により成膜されてなることを特徴とする電気機械
変換素子である。
【0022】請求項2の発明は、請求項1に記載された
電気機械変換素子は、圧電素子又は電歪素子であること
を特徴とする電気機械変換素子である。請求項3の発明
は、弾性部材と,前記弾性部材の所定の位置に溶射によ
り成膜されるとともに、電気エネルギー及び機械的変位
間の相互変換を行う電気機械変換素子とを備えることを
特徴とする電気機械変換効果応用素子である。
【0023】請求項4の発明は、請求項3に記載された
電気機械変換効果応用素子は、アクチュエータ又はセン
サであることを特徴とする電気機械変換効果応用素子で
ある。請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載
された電気機械変換効果応用素子において、前記弾性部
材が導電性を有する場合には、少なくとも、前記弾性部
材と前記電気機械変換素子との間に、前記弾性部材が導
電性を有さない場合には、前記電気機械変換素子の両面
に、電気エネルギーの入力又は出力のための電極が形成
されることを特徴とする電気機械変換効果応用素子であ
る。
【0024】請求項6の発明は、請求項5に記載の電気
機械変換効果応用素子において、前記電極のうちの前記
弾性部材と前記電気機械変換素子との間に配置される電
極は、拡散を防止する緩衝層をなすことを特徴とする電
気機械変換効果応用素子である。
【0025】請求項7の発明は、請求項6に記載の電気
機械変換効果応用素子において、前記緩衝層は、前記弾
性部材の装着位置に溶射により成膜されることを特徴と
する電気機械変換効果応用素子である。
【0026】請求項8の発明は、請求項7に記載の電気
機械変換効果応用素子において、前記電極及び前記緩衝
層は、いずれも、高融点であって酸化し難い金属,高融
点の貴金属又はこれらの合金からなることを特徴とする
電気機械変換効果応用素子である。
【0027】請求項9の発明は、請求項3から請求項8
までのいずれか1項に記載された電気機械変換効果応用
素子において、前記電気機械変換素子は、鉛系強誘電体
からなることを特徴とする電気機械変換効果応用素子で
ある。
【0028】請求項10の発明は、弾性部材の表面に、
電気エネルギー及び機械的変位間の相互変換を行う電気
機械変換素子を溶射により薄膜状に形成し、形成された
前記電気機械変換素子の両面又は片面に電極を形成する
ことを特徴とする電気機械変換効果応用素子の製造法で
ある。
【0029】請求項11の発明は、請求項10に記載さ
れた電気機械変換効果応用素子の製造法において、前記
電気機械変換素子の前記溶射を行う前に、前記弾性部材
の表面に溶射によって、高融点であって酸化し難い金
属,高融点の貴金属又はこれらの合金からなる緩衝層を
形成することを特徴とする電気機械変換効果応用素子の
製造法である。
【0030】請求項12の発明は、請求項10又は請求
項11に記載された電気機械変換効果応用素子の製造法
において、前記電気機械変換素子は、鉛系強誘電体から
なる圧電又は電歪材料であることを特徴とする電気機械
変換効果応用素子の製造法である。
【0031】請求項13の発明は、請求項10から請求
項12までのいずれか1項に記載された電気機械変換効
果応用素子の製造法において、前記電気機械変換素子又
は前記緩衝層それぞれを前記溶射により形成する際に
は、前記弾性部材を所定の処理温度に設定しておくこと
を特徴とする電気機械変換効果応用素子の製造法であ
る。
【0032】請求項14の発明は、請求項10から請求
項13までのいずれか1項に記載された電気機械変換効
果応用素子の製造法において、前記溶射により前記電気
機械変換素子を形成した後であって前記電極を形成する
前に、熱処理を行って加工歪みを除去することを特徴と
する電気機械変換効果応用素子の製造法である。
【0033】請求項15の発明は、請求項10から請求
項14までのいずれか1項に記載された電気機械変換効
果応用素子の製造法において、前記弾性部材が導電性を
有する場合には、前記弾性部材と前記電気機械変換素子
の表面に形成した前記電極とを用いて、前記弾性部材が
導電性を有さない場合には、前記電気機械変換素子の両
面に形成した二つの電極を用いて、前記電気機械変換素
子の分極処理を行うことを特徴とする電気機械変換効果
応用素子の製造法である。
【0034】本発明において、「電気機械変換効果応用
素子」とは、電気機械変換効果を利用した素子全般を意
味しており、例えばアクチュエータやセンサ等を例示す
ることができる。
【0035】本発明における「電気機械変換素子」と
は、電気エネルギーを機械的変位に変換することができ
る素子を意味し、圧電素子,磁歪素子さらには電歪素子
等を包含する。
【0036】また、本発明における「高融点で酸化し難
い金属」とはニッケル,クロム,コバルト等をいい、
「高融点の貴金属」とは白金,レニウム,ロジウム,パ
ラジウム等をいう。
【0037】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、本発明の
実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。な
お、以降の各実施形態の説明では、振動アクチュエータ
として超音波の振動を利用した超音波アクチュエータを
用いる。
【0038】図1は、本発明にかかる圧電応用素子を、
振動アクチュエータの一例である超音波アクチュエータ
7に適用した第1実施形態を示す分解斜視図であり、図
2は、図1に示す超音波アクチュエータ7の構成要素で
ある、白金上部電極6が形成された弾性体3を示す平面
図である。なお、圧電応用素子とは、前記電気機械変換
応用素子のうち圧電効果を利用するものをいう。
【0039】図1に示すように、第1実施形態の超音波
アクチュエータは、円環状の弾性体3と、この弾性体3
の一方の端面に加圧接触する円環状の移動子1とにより
構成される。
【0040】弾性体3の一方の平面には、その円周方向
に多数の溝部3bが連続して設置されており、この溝部
3bによって区切られることにより、多数の突起部3a
が連続して形成される。これらの突起部3aは弾性体3
の端面に発生する進行波の振幅を増幅させるとともに、
移動子1との接触により発生した摩耗粉を溝部3b内に
落下させることにより接触部に残存させないために設け
られる。
【0041】本実施形態では、この弾性体3は、ニッケ
ル合金を用いて、鋳造を行ってさらに必要に応じて機械
加工を施すことにより、構成される。弾性体3の他方の
平面には、図2に示すように、弾性体3に圧電体層5を
形成するためのニッケル合金からなる緩衝層4が溶射に
より構成される。この緩衝層4は下部電極としても機能
する。
【0042】緩衝層4の表面には、圧電体層5が形成さ
れる。この圧電体層5は、後述するように、緩衝層4の
表面に溶射により形成される。一方、移動子1の弾性体
3との接触面側の平面には、環状の摺動材2が貼付され
て装着される。この摺動材2を介して、移動子1は図示
しない加圧機構により弾性体3に加圧接触される。
【0043】本実施形態の超音波アクチュエータ7で
は、前述したように、弾性体3の裏面に溶射により緩衝
層4が形成される。また、緩衝層4の上には溶射により
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電体層5が形成さ
れており、さらにその表面には分割された白金上部電極
6が形成される。以下、緩衝層4,緩衝層4の表面への
圧電体層5の溶射による形成法について説明する。
【0044】(緩衝層4)粒径を5〜40μmに調整し
たニッケル粉体を原料とした。この原料を用いてプラズ
マ溶射装置で室温で、SUS304からなる弾性体3の
表面に、50μmの厚さで溶射被膜を形成した。プラズ
マジェットの作動ガスとしては、アルゴンと水素の混合
ガスを用いた。
【0045】(圧電体層5)仮焼,粉砕及び造粒によ
り、粒径を5〜40μmに調整した、Pb,Zr,Ti
のモル比が1:0.52:0.48のチタン酸ジルコン
酸鉛(PZT)に、溶射の際の鉛の揮発分を考慮して過
剰のPbを酸化物(PbO)の形で添加した混合物を原
料粉末とした。
【0046】この原料粉末を用いてプラズマ溶射装置に
より、緩衝層4の表面に、100μmの厚さでPZTか
らなる圧電体層5を成膜した。プラズマジェットの作動
ガスとしては、アルゴン,(アルゴンと水素の混合ガ
ス),又は(アルゴンとヘリウムの混合ガス)を用い
た。
【0047】このようなプラズマ溶射により、原料粉末
は、溶射ガン先端に発生する炎中に投入され、溶融され
ながら弾性体3の表面に形成された緩衝層4の表面に衝
突し、急冷されながら接着される。このため、原料粉末
は、緩衝層4の表面で急冷されることにより十分な結晶
化が発生しないことがあり、このような場合には、薄膜
の電気機械変換効率が希望する値に達しない。このよう
な事態の発生を防止するために、プラズマ溶射後に適当
な温度で熱処理を行うことにより、圧電体層5中に所望
の結晶を発生させ、薄膜状の圧電体層5の性能を向上さ
せることができる。
【0048】溶射過程において、溶融された原料粉末の
温度と弾性体3の表面温度との差が大き過ぎると、弾性
体3の表面に衝突した原料粉末が十分に付着しないこと
がある。このため、溶射を行う際に、弾性体3に抵抗体
加熱等を行うことにより加熱しておくことにより原料粉
末と弾性体3との温度差を小さくして、付着効率を上げ
ることが可能である。
【0049】本実施形態では、溶射時に、抵抗体ヒータ
を用いて弾性体3の表面温度を300℃以上650℃以
下の範囲にコントロールした。なお、このように溶射時
に弾性体3の表面温度を上げる方法では、基板温度が所
望の結晶相を発生させるのに十分な温度まで達している
場合には、上記の熱処理と同等の効果を発揮し、成膜後
の熱処理を施さなくても薄膜の性能を十分に引き出すこ
とが可能になる。
【0050】また、溶射中の溶射ガンと弾性体との距離
を近づけて、弾性体の温度を薄膜の結晶化温度まで上昇
させ、溶射と同時に結晶化させ、その後の熱処理を不要
にすることも可能である。
【0051】圧電アクチュエータの場合、弾性体を効率
的に励振させるための圧電体薄膜としては、印加電界当
たりの変位量が大きいため、鉛系強誘電体からなる圧電
材料又は電歪材料を用いることが望ましい。
【0052】同様に、圧電センサの場合にも、弾性体か
らの応力を効率的に受けることが可能な圧電体薄膜とし
て、印加応力当たりの発生電荷量が大きいため、鉛系強
誘電体からなる圧電材料又は電歪材料を用いることが望
ましい。
【0053】そして、溶射後に、圧電体層5の溶射によ
る形成に伴う弾性体3の変形を修正するため、弾性体3
に対して研削加工及び研摩加工を施した。さらに、この
後、溶射により形成した圧電体層5を完全なペロブスカ
イト層にするため、及び弾性体3の変形(加工歪み)を
取り去るため、650℃に5時間保持する熱処理を行っ
た。
【0054】このようにして、緩衝層4の表面に圧電体
層5を形成し、この圧電体層5の表面に白金上部電極6
を成膜した。本実施形態では、白金上部電極6はスパッ
タリングにより成膜した。
【0055】この白金上部電極6は、スパッタリング時
にマスキングを行うことによって、図2に示すように、
弾性体3の円周方向について約20°ピッチで多数連設
される。
【0056】このようにして形成された白金上部電極6
に対し、リード線を接続する配線用銅箔を接合するため
に、白金上部電極6と銅箔(図示しない。)との間には
んだ箔を挟み、加圧した状態で高周波炉中で400℃に
加熱することにより、白金上部電極6と銅箔とを接合し
た。
【0057】その後に、白金上部電極6に、図2に示す
ように隣接する電極同士で符号が逆向きになるように電
圧を印加することにより、圧電体層5の分極処理を行っ
た。分極処理の条件は、150℃,300Vで大気中で
1時間行った。
【0058】このようにして、第1実施形態の超音波ア
クチュエータ7は構成される。ここで、形成された圧電
体層5のキューリー温度Tcは約240℃であった。こ
の超音波アクチュエータ7の圧電体層5に、入力A相と
入力B相とで(π/2)の位相差を付けて実効電圧で±
5Vの交流電界を印加したところ、弾性体3の表面に形
成された突起部3aの先端に進行波が発生し、弾性体3
に加圧接触されている移動子1が回転することが確認さ
れた。このことから、本実施形態によれば、溶射により
形成された圧電体層5が十分な圧電性を有することがわ
かる。
【0059】このように、本実施形態の超音波アクチュ
エータ7では、圧電体層5を溶射により数10μm〜数
mmの厚さに形成するため、圧電体層5に発生する変位
や振動を非常に効率的に弾性体3へ伝達することができ
る。一方、圧電センサに適用することにより、弾性体3
の変位から発生する応力を効率的に受けることができ
る。
【0060】溶射時間も、数10秒間から10数分間程
度であり、他の方法と比較して成膜速度が非常に速く、
量産に適する。
【0061】溶射以外の方法、例えば水熱合成法を利用
することによっても、数10μmまでの膜厚は形成する
ことはできる。しかし、この膜厚の圧電体層5の形成に
は、数時間〜数日間を必要とし、量産性の点で重大な問
題がある。しかし、本発明で用いる溶射に要する処理時
間は、数10秒間〜10数分間程度であって、極めて量
産性に優れる。
【0062】このようにして形成された圧電体層5の膜
厚は、数10μm〜数mm程度であり、従来の別部品と
して形成された圧電体層5の厚さと同等程度から100
分の1程度の厚さまでの範囲とすることができる。その
ため、従来の圧電アクチュエータに比較して顕著に低い
電圧で駆動することができる。
【0063】また、圧電体層5がどれほど小型になって
も、極めて容易に弾性体3の表面に圧電体層5を形成す
ることが可能になるとともに、従来のように振動吸収層
としての接着層が存在しないために弾性体3に対する振
動伝搬効率が小型化によって著しく損なわれる可能性も
解消され、圧電体層5の小型化に対して十分に対応する
ことができる。
【0064】また、溶射により形成した圧電体層5は、
電極を付けて配線を行った後にポーリング処理を行うこ
とが極めて容易である。溶射という方法は、従来の方法
に比較すると、ポーリング処理が容易な十分に薄い圧電
体層5を簡単かつ確実に形成することが可能だからであ
る。したがって、圧電体層5の形成及び配線後に、大気
中で低い電圧でポーリング処理を行うことができる。こ
のことにより、圧電体層5への配線に伴う熱処理のた
め、ポーリングが破壊されることを恐れて配線方法を制
限する必要がなくなり、素子の形状や強度,耐久性,生
産性等の諸条件を優先させた任意の配線方法を選択した
上で、配線の熱処理の後にポーリング処理を行えば良く
なった。例えば、配線処理を通常のはんだを用いて十分
に高温の状態で行うことが可能になった。
【0065】また、溶射により圧電体層5を薄膜状に形
成するため、加工歪みを取るための熱処理が可能とな
り、圧電体層5と弾性体3との接合によって生じた変形
を、加工により修正できるようになるため、精度向上の
可能性が広がった。
【0066】また、ポーリングが劣化し、圧電性能の低
下した素子に対して容易に再ポーリングを施すことが可
能となり、素子の寿命が極めて長くなるとともに、過酷
な条件下での使用等、使用条件の可能性も広がった。
【0067】また、蒸着,スパッタリング,CVD,ゾ
ルゲル等の薄膜形成技術では、溶射と同様に配線後にポ
ーリング処理を行うことが可能なものの、膜厚が小さ過
ぎるためにアクチュエータやセンサ等の電気機械変換効
果応用素子への応用が制限されるが、溶射による膜厚は
適正値であって、容易に電気機械変換効果応用素子へ適
用することができる。
【0068】さらに、本発明の実施に際しては、弾性体
3の溶射面に対する溶射動作を教示したロボットのアー
ム先端等に溶射ガンを保持させて、このロボットにより
溶射を行わせることにより、曲面のような複雑な形状の
溶射面を有する弾性体3に対しても極めて容易かつ確実
に圧電体層5を形成することが可能となり、圧電体層5
の形状の複雑化に対しても十分に対応することができ
る。
【0069】また、本実施形態では、弾性体3の表面に
緩衝層を形成してある。この緩衝層は、ニッケル,クロ
ム,コバルト等の高融点で酸化し難い金属,または白
金,レニウム,ロジウム,パラジウム等の融点の高い金
属,あるいはそれらの合金により構成される。そのた
め、高温下で圧電体層5を成膜する場合でも、成膜する
面に酸化層が形成され難くなり、圧電体層5が形成され
易くなる。また、成膜後の熱処理時において、弾性体3
と圧電体層5との間での物質拡散が起こり難くなり、こ
の物質拡散により圧電効果の阻害を防止することができ
る。
【0070】このように緩衝層4を溶射により形成した
場合、数10μm以上の厚さを有する層が極めて容易に
得られるため、この溶射層4の表面にさらに、高エネル
ギー条件で圧電体層5を溶射により形成しても、緩衝層
4が侵されるおそれが極めて少ない。
【0071】また、一つの溶射ガンに対して粉体の供給
経路を2系統設け、一方を緩衝層4形成用の金属原料供
給路とし、他方を圧電体層5形成用の圧電体原料供給路
とすることにより、両供給路を切り換えることにより、
緩衝層4及び圧電体層5の形成を同一の溶射装置により
行うことができる。これにより、緩衝層4の形成のため
に、スパッタリング工程やメッキ工程といった余分な工
程を設ける必要がなくなり、製造コストの上昇及び生産
性の低下をともに防止することができる。
【0072】(第2実施形態)図3は、本発明の第2実
施形態の超音波アクチュエータ105を示す斜視図であ
る。
【0073】本実施形態にかかる超音波アクチュエータ
105は、SUS304からなる矩形平板状の弾性体1
01と、この弾性体101の一平面上に形成されたPZ
Tからなる圧電体層103とを有する。そして、圧電体
層103に交流電圧を印加することで、弾性体103に
1次の縦振動と4次の屈曲振動を調和的に発生させるこ
とで、弾性体103とこの弾性体103に加圧接触する
移動子(図示せず)との間に相対運動を発生させるもの
である。
【0074】弾性体101の一方の平面には、弾性体1
01に圧電体層103を形成するためのニッケル合金か
らなる緩衝層102が溶射により成膜される。この緩衝
層102は下部電極としても機能する。
【0075】緩衝層102の表面には、PZTからなる
圧電体層103がプラズマ溶射により形成される。ニッ
ケル合金からなる緩衝層102,PZTからなる圧電体
層103それぞれの形成条件は、第1実施形態と同一で
ある。
【0076】本実施例では、PZTからなる圧電体層1
03の溶射による形成に伴って、弾性体101に発生す
る1次の縦振動と4次の屈曲振動との共振周波数の関係
にずれが生じる。そこで、両振動モードの周波数を一致
させるため、圧電体層103の溶射による形成後に弾性
体101の加工を行った。
【0077】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともに、圧電体層103の完全なペロブスカイト化
を図るため、第1実施形態と同様に、650℃に5時間
保持する熱処理を行った。なお、圧電体層103の分極
処理は、第1実施形態と同様に、150℃,300Vで
大気中で1時間行った。
【0078】さらに、このようにして溶射により成膜し
た圧電体層103の表面に、白金上部電極104a,1
04bがスパッタリングにより形成される。白金上部電
極104a,104bは、スパッタリングの際のマスキ
ングにより2分割されて、成膜される。
【0079】このようにして形成された白金上部電極1
04a,104bに対して、配線用の銅箔を接合するた
めに、白金上部電極104a,104bと銅箔との間に
はんだ箔を挟み、加圧した状態でリフロー式はんだ付け
炉中で400℃に加熱保持した。
【0080】なお、弾性体101の他方の平面であって
発生する4次の屈曲振動の腹位置の2カ所には、弾性体
101の幅方向に突起状に形成された駆動力取出部10
1a,101bが形成されており、図示しない移動子は
この駆動力取出部101a,101bの先端面を介して
弾性体101に加圧接触する。
【0081】このように構成された超音波アクチュエー
タ105において、白金上部電極104aに交流電圧A
相を、白金上部電極104bにA相と位相が90°異な
る交流電圧B相を、それぞれ実効電圧±5Vで印加し
た。その結果、弾性体101の駆動力取出部101a,
101bの先端面に楕円運動が発生し、駆動力取出部1
01a,101bの先端面を介して加圧接触する相対運
動部材との間で相対運動が発生することが確認された。
このことから、本実施形態によれば、溶射により形成さ
れた圧電体層103が十分な圧電性を有することがわか
る。
【0082】(第3実施形態)図4は、本発明の第3実
施形態の超音波アクチュエータ205の構成を示す斜視
図である。
【0083】本実施形態は、基本的構成は第2実施形態
の超音波アクチュエータ105と同一であり、本実施形
態では第1実施形態では100番台を付した図中符号を
200番台に置換することにより、それらの説明は省略
する。
【0084】第1実施形態の超音波アクチュエータ10
5との相違点は、高温の環境下での使用に対応するた
め、圧電体層203の構成材料として、キューリー温度
Tcが490℃であって高温環境下においても分極処理
の劣化が発生し難いチタン酸鉛(以下PTと略す)を用
いた点である。
【0085】以下、PTからなる圧電体層203の溶射
による形成方法について説明する。焼結,粉砕及び造粒
によって粒径を5〜40μmに調整した、Pb,Tiの
モル比が1:1であるチタン酸鉛(PT)に、溶射によ
る鉛の揮発分を考慮して過剰のPbを酸化物(PbO)
の形で添加した混合物を原料粉末とした。
【0086】弾性体201の表面に、第2実施形態と同
様にニッケル合金からなる緩衝層202を溶射により形
成した。この緩衝層202の表面に、前述した原料粉末
を用いてプラズマ溶射装置により、100μmの厚さで
PTからなる圧電体層203を形成した。プラズマジェ
ットガスの作動ガスとしては、アルゴン,(アルゴンと
水素の混合ガス)又は(アルゴンとへリウムの混合ガ
ス)を用いた。
【0087】また、弾性体201に対する原料粉末の付
着効率を上げるために、抵抗体ヒータを用いて溶射時の
弾性体201の表面温度を300℃以上650℃以下に
コントロールした。
【0088】この後、本実施形態においても、PTから
なる圧電体層203の形成に伴って、弾性体201の1
次の縦振動と4次の屈曲振動との共振周波数の関係にず
れが生じるため、両振動モードの周波数を一致させるた
めに、PTからなる圧電体層203の形成後に弾性体2
01の加工を行った。
【0089】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともに、PTからなる圧電体層203の完全なぺロ
ブスカイト化を図るため、第1実施形態と同様に、65
0℃に5時間加熱保持する熱処理を行った。
【0090】なお、圧電体層203のポーリング(分極
処理)は、200℃,450Vで大気中で1時間行っ
た。この超音波アクチュエータ205においても、白金
上部電極204aに交流電圧A相を印加するとともに、
電極204bに交流電圧A相と位相が90°異なる交流
電圧B相を実効電圧で±10V印加した。その結果、弾
性体201の駆動力取出部201a,201bの先端面
に楕円運動が発生し、駆動力取出部201a,201b
の先端面を介して加圧接触する移動子(図示しない)と
の間で相対運動を発生することが確認された。このこと
から、本実施形態の超音波アクチュエータ205によれ
ば、溶射により形成された圧電体層203が十分な圧電
性を有することがわかる。
【0091】(第4実施形態)図5は、第4実施形態の
超音波アクチュエータ307の説明図であって、図5
(a)は斜視図,図5(b)は図5(a)におけるA−
A断面図,図5(c)は図5(a)におけるB−B断面
図である。
【0092】本実施形態の超音波アクチュエータ307
は、円柱状の弾性体301の両端(一端でもよい。)
を、弾性体301の表面に溶射により形成した圧電素子
302,303により二次元的に加振することにより、
振動面が回転しながら進行する進行性振動波を弾性体3
01上に発生させ、これにより弾性体301に加圧接触
する移動子306に直進運動及び回転運動の両方を同時
に付与する。
【0093】本実施形態における超音波アクチュエータ
307では、弾性体301の両端の周囲に、第1実施形
態〜第3実施形態と同様、ニッケル合金からなる緩衝層
302a,302bが溶射により形成されている。そし
て、この緩衝層302a,302bの表面に、第1実施
形態〜第3実施形態と同様にして溶射により圧電体層3
02,303が形成されている。
【0094】本実施形態の超音波アクチュエータ307
は、円筒状の弾性体301の両端側の外周面に溶射によ
り圧電体層302及び303が成膜されており、さらに
それらの圧電体層302及び303は、それぞれ直方体
型の固定子304及び305により保持される。さら
に、弾性体301には、中空円筒状の移動子306の内
周面が加圧接触する。
【0095】圧電体層302及び303は、円筒形の弾
性体301の両端部側301a,301bに、溶射によ
って圧電体層302,303が形成され、圧電体層30
2,303の上には、弾性体301の円周方向に4分割
された上部銀電極302c1,302c2,302c
3,302c4及び303c1,303c2,303c
3,303c4が形成される。
【0096】緩衝層302a,303bおよび圧電体層
302,303の溶射による形成条件は、第1実施形態
と同様である。また、上部銀電極302c1〜302c
4及び303c1〜303c4の形成は、スクリーン印
刷により行った。上部銀電極302c1〜302c4及
び303c1〜303c4への配線処理は、はんだ付け
により行った。さらに、圧電体層302及び303の分
極処理は、150℃,300Vで大気中で1時間行っ
た。
【0097】このように構成された超音波アクチュエー
タ307において、一方の圧電素子302の上部銀電極
302c1〜302c4に、この順番で隣り合う上部銀
電極間の位相差がπ/2になるように実効電圧で±5V
の交流電界を印加したところ、圧電素子302は首振り
運動を行うことが確認された。
【0098】このような首振り運動で、しかも圧電素子
302に発生する首振り運動に対してπ/2の位相差を
有する運動を圧電素子304に関しても発生させたとこ
ろ、棒状の弾性体301に振動面を回転させながら進行
する進行性振動波が発生し、これにより移動子306が
回転しながら直進することが確認された。
【0099】また、本実施形態においても、電極302
c1,302c3及び303c1,303c3のみに入
力電圧を印加した場合、又は上部銀電極302c2,3
02c4及び303c2,303c4にのみ駆動電圧を
印加した場合には、弾性体301の振動面を回転させな
いで進行する通常の進行性振動波が発生し、振動子30
6は回転せずに直進運動のみを行うことが確認された。
【0100】さらに、圧電素子302のみにより弾性体
301を励振し、圧電素子303により進行波を吸収す
るようにしたところ、同様に、移動子306は回転せず
に直進運動のみを行うことが確認された。
【0101】なお、本実施形態においては、弾性体30
1上に圧電体層302,303を形成するための緩衝層
であるニッケル合金からなる層は、下部電極として利用
されている。また、緩衝層として、ニッケルからなる層
のかわりに白金メッキ層、クロム層またはニクロム層を
用いてもよい。
【0102】(第5実施形態)図6は、第5実施形態の
超音波アクチュエータ403を示す説明図であって、図
6(a)及び図6(b)は、いずれも、超音波アクチュ
エータ403の分解斜視図である。
【0103】本実施形態にかかる超音波アクチュエータ
403は、円環状の弾性体401の面内屈曲振動のうち
の非軸対称振動を行い、内周にテーパ状に外径が変更さ
れる変径部を有する円環型の振動子401と、振動子4
01の変径部を介して接触する回転子402とを備え
る。
【0104】ここで、振動子401は、円環型の弾性体
401aの両面に、前述した第1実施形態〜第4実施形
態と同様に形成されたニッケル合金からなる緩衝層40
1b,401eそれぞれの表面に溶射により形成された
PZTからなる圧電体層401c,401fと、さらに
そのそれぞれの表面にスパッタリングにより円周方向に
4分割された状態で形成された白金上部電極401d
1,401d2,401d3,401d4及び401g
1,401g2,401g3,401g4とから構成さ
れる。なお、圧電体層401c,401fの形成条件
は、第1実施形態と同様である。
【0105】このようにして形成された白金上部電極4
01d1〜401d4及び401g1〜401g4の分
極処理を行った。分極処理の条件は、150℃,300
Vで大気中で1時間行った。
【0106】ここで、白金上部電極401d1〜401
d4及び401g1〜401g4の2グループの電極群
に、この順番で隣り合う電極間の位相差がπ/2になる
ように実効電圧で±5Vの交流電界を印加した。する
と、振動子401の内周面及び外周面に面内方向に振動
面を有する進行性振動波が発生し、内周面に接触する回
転子402が回転運動を行うことが確認された。
【0107】なお、本実施形態においては、振動子40
1上に圧電体層401c,401fを形成するための緩
衝層であるニッケル合金からなる層は、下部電極として
利用されている。また、緩衝層として、ニッケルからな
る層のかわりに白金メッキ層、クロム層またはニクロム
層を用いてもよい。
【0108】(第6実施形態)図7は、第6実施形態の
ユニモルフ型アクチュエータ506を示す斜視図であ
る。
【0109】このユニモルフ型アクチュエータ506
は、圧電体層503の電界印加方向に関する垂直方向の
変位を利用する。ユニモルフ型アクチュエータ506
は、アルミニウムからなる弾性体501と、第1実施形
態〜第5実施形態と同様に弾性体501の表面に形成さ
れたニッケル合金からなる緩衝層502と、緩衝層50
2上に溶射により形成されたPZTからなる圧電体層5
03と、圧電体層503の表面にスパッタリングにより
形成された白金上部電極504と、弾性体501を支持
する支持体505とにより構成される。圧電体層503
の形成条件は、第1実施形態と同様である。
【0110】スパッタリングにより形成された白金上部
電極504に対して、配線用の銅箔を接合するために、
白金上部電極504と銅箔との間にはんだ箔を挟み、加
圧した状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加
熱した。圧電体層503のポーリングは、第1実施形態
と同様に、150℃,300Vで大気中で1時間行っ
た。
【0111】このように構成された本実施形態のユニモ
ルフ型アクチュエータ506において、白金上部電極5
04と下部電極である弾性体501との間に、駆動電圧
を印加したところ、圧電体層503の面方向に関する変
位により、弾性体501の板状の部分が上下に変位する
ことが確認された。
【0112】なお、本実施形態においては、弾性体50
1上に圧電体層503を形成するための緩衝層であるニ
ッケル合金からなる層は、下部電極として利用されてい
る。また、緩衝層として、ニッケルからなる層のかわり
に白金メッキ層、クロム層またはニクロム層を用いても
よい。
【0113】(第7実施形態)図8は、第7実施形態の
ユニモルフ型メカニカルフィルタ用振動子606を示す
斜視図である。
【0114】本実施形態のユニモルフ型メカニカルフィ
ルタ用振動子606は、圧電体層603の電界印加方向
の垂直方向に関する変位を利用する。ユニモルフ型メカ
ニカルフィルタ用振動子606は、弾性体601と、第
1実施形態〜第6実施形態と同様に弾性体601上に形
成されたニッケル合金からなる緩衝層602と、緩衝層
602上に溶射により形成されたPZTからなる圧電体
層603と、圧電体層603の表面にスパッタリングに
より形成された白金上部電極604a,604bとによ
り構成される。
【0115】圧電体層603の形成条件は、第1実施形
態と同様である。また、白金上部電極604a,604
bに対し、配線用の銅箔を接合するため、白金上部電極
604a,604bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加
圧した状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加
熱した。圧電体層603のポーリングは、第1実施形態
と同様に、150℃,300Vで大気中で1時間行っ
た。
【0116】ここで、白金上部電極604a,604b
と下部電極である弾性体601との間に交流電界を印加
したところ、圧電体層603の面方向に関する変位によ
り、弾性体601の板状の部分に片持ち梁の共振周波数
に等しい周波数の正弦波であった。
【0117】このことから、本実施形態における振動子
606は、入力信号からある一定の周波数の出力信号の
みを取り出すための周波数フィルタとして機能すること
が確認された。
【0118】なお、本実施形態においては、弾性体60
1上に圧電体層603を形成するための緩衝層であるニ
ッケル合金からなる層は、下部電極として利用されてい
る。また、緩衝層として、ニッケルからなる層のかわり
に白金メッキ層、クロム層またはニクロム層を用いても
よい。
【0119】(第8実施形態)図9は、第8実施形態の
振動角速度計705を示す斜視図である。図9に示す振
動角速度計705では、ステンレスからなる直方体振動
子701の一つの側面に、第1実施形態〜第7実施形態
と同様にニッケル合金からなる緩衝層702を形成す
る。この緩衝層702の表面に、プラズマ溶射により、
PZTからなる圧電体層703を形成する。
【0120】ニッケル−クロム合金からなる振動子70
1自身をグランド電極として用い、PZTからなる圧電
体層703上にスパッタリング法により、振動子701
の軸方向に3分割された電極704を形成する。
【0121】中央の電極704bは駆動用電極であり、
両側の電極704a,704cは検出用電極である。振
動子701の軸方向に垂直な断面は、駆動方向とコリオ
リ力方向との共振周波数を合わせるため、略正方形であ
る。圧電体層703の形成条件は、第1実施形態と同様
である。また、電極704a〜704cに対し、配線用
の銅箔を接合するため、電極704a〜704cと銅箔
との間にはんだ箔を挟み、加圧した状態でリフロー式は
んだ付け炉中で400℃に加熱した。圧電体層703の
ポーリングは、第1実施形態と同様に150℃,300
Vで大気中で1時間行った。
【0122】図10(a)〜図10(c)は、いずれ
も、図9に示した圧電振動角速度計706の動作原理を
示す説明図である。図10(a)に示すように、駆動用
電極704bに振動子701の共振周波数に近い交流電
圧を印加すると、振動子701は無拘束条件で振動し、
振動の節点705を境に、振動子701の中央部分と端
部とは、反対の向きに速度を有する。
【0123】図10(b)に示すように、この時、振動
子701の軸回りに回転が発生すると、速度の方向が反
対であるため、振動の接点を境に反対の向きにコリオリ
力が発生する。
【0124】図10(c)に示すように、コリオリ力に
より、振動子701は電極面内方向で屈曲する。外側に
配置された二つの検出用電極704a,704cには、
駆動振動(図10(a)参照)に起因する圧電信号と、
コリオリ力による変形(図10(c)参照)に起因する
圧電信号とが同時に発生する。
【0125】このうち、コリオリ力に起因する圧電信号
は、二つの電極704a,704c間で略位相が反対と
なる。これは、例えば図10(c)に示す変形状態で
は、電極704a側には圧縮応力が作用するとともに電
極704c側には引張応力が作用することにより、二つ
の電極704a,704c間で常に応力の符号が異なる
からである。
【0126】一方、起動に起因する圧電信号は、両電極
704a,704c間で略同じであるため、両電極70
4a,704cから差動信号をとれば、略コリオリ力に
起因する圧電信号のみを得ることがてきる。
【0127】本実施形態では、振動子701の断面を正
方形とするとともにコリオリ力方向及び駆動方向それぞ
れの共振周波数を一致させてあるため、検出用電極70
4a,704cからの出力を帰還すれば、簡単な発振回
路で振動子701を共振周波数付近で駆動することがで
き、したがって、コリオリ力に基づく振動も共振状態と
なり、検出感度が向上する。
【0128】このように二方向の共振周波数を合わせる
ためには、振動子701の形状精度に対する要求は極め
て高い。したがって、第2実施形態及び第3実施形態と
同様に、本実施形態においても、圧電体層形成後に共振
合わせのための加工を行い、さらに、この加工による加
工歪みを取るための熱処理を650℃で行った。
【0129】なお、本実施形態における振動子701で
は、必ずしも、駆動方向およびコリオリ力方向それぞれ
の共振周波数が一致している必要はない。例えば、駆動
には共振状態てなくとも大きな変位が得られるユニモル
フ振動を使い、振動検出だけをコリオリ力方向の共振を
用いることも可能である。このためには、コリオリ力方
向の共振周波数によって、振動子701をユニモルフ駆
動させればよい。このような振動子701を用いれば、
共振合わせ加工の工程を省賂することができる。
【0130】図11は、図9に示した振動子701の無
拘束振動条件を実現するための振動子701の支持形態
例を示したものである。振動の節点に相当する位置で、
シリコーン系接着剤を用いて支持台706に固定してあ
る。また、簡便な固定方法として、振動子701全体を
比較的弾性定数の低い接着剤に埋め込むことも可能であ
る。
【0131】また、本実施形態においては、振動子70
1に圧電体層703を形成するための緩衝層であるニッ
ケル合金からなる層702は、そのまま下部電極として
利用されている。また、緩衝層として、ニッケルからな
る層のかわりに白金メッキ層、クロム層またはニクロム
層を用いてもよい。
【0132】(第9実施形態)図12は、第9実施形態
にかかる超音波アクチュエータ805を示す斜視図であ
る。本実施形態の超音波アクチュエータ805は、第2
実施形態と同様に、圧電体803により弾性体801を
励振し弾性体801の1次の縦振動と4次の屈曲振動と
を調和的に発生させることにより、弾性体801に加圧
接触する移動子(図示しない。)を駆動するものであ
る。
【0133】本実施形態の超音波アクチュエータ805
では、弾性体801の表面には白金メッキ層からなる緩
衝層802が形成される。緩衝層802の表面には、ガ
スフレーム溶射により、PZTからなる圧電体層803
の形成を行った。圧電体層803の表面には、白金上部
電極804a,804bが形成される。
【0134】ガスフレーム溶射法による圧電体層803
の溶射条件は以下の通りである。仮焼,粉砕及び造粒に
より、二次粒子の粒径を5〜40μmに調整した、P
b,Zr,Tiのモル比が1:0.52:0.48のチ
タン酸ジルコン酸鉛(PZT)に、溶射の際のPb揮発
分を考慮して、過剰のPbを酸化物(PbO)の形で添
加したものを原料粉末とした。
【0135】この原料粉末を用いてフレーム溶射装置に
より、緩衝層802の表面に100μmの厚さで成膜し
た。ガスフレーム溶射の燃料ガスとしては、アセチレン
ガス(プロパンガスでもよい。)を用いた。
【0136】また、弾性体801に対する原料粉末の付
着効率を上げるため、抵抗体ヒータを用いて弾性体表面
の温度を300℃〜650℃の範囲にコントロールし
た。本実施形態においても、第2実施形態及び第3実施
形態と同様に、圧電体層803のガスフレーム溶射によ
る形成に伴って、弾性体801の縦振動1次モードと屈
曲振動4次モードとの関係にずれが生じるため、両モー
ドの周波数を一致させるため、圧電体層803の形成後
に弾性体801の加工を行った。
【0137】また、この加工による加工歪みを除去する
とともに圧電体層803の完全なペロブスカイト化を図
るため、第1実施形態と同様に、650℃で5時間の熱
処理を行った。
【0138】さらに、圧電体層803の表面における白
金上部電極は、スパッタリングにより白金上部電極80
4a,804bに対して配線用の銅箔を接合するため
に、白金上部電極804a,804bと銅箔との間には
んだ箔を挟み、加圧した状態でリフロー式はんだ付け炉
中で400℃の処理を行った。
【0139】このように構成された超音波アクチュエー
タ805において、電極804aに交流電圧A相を、電
極804bにA相と位相が90°異なる交流電圧B相を
実効電圧で±5Vそれぞれ印加したところ、弾性体80
1の突起状に形成された駆動力取出部801a,801
bの先端に楕円運動が発生し、駆動力取出部801a,
801bを介して加圧接触する相対運動部材である移動
子(図示しない。)が駆動されることが確認された。
【0140】なお、本実施形態においては、弾性体80
1上に形成した白金メッキ層からなる緩衝層802を下
部電極として利用している。また、緩衝層として、白金
メッキ層のかわりにニッケルからなる層、クロム層また
はニクロム層等を第1実施形態と同様に溶射により形成
してもよい。
【0141】(第10実施形態)図13は、第10実施
形態に係る超音波アクチュエータ905を示す斜視図で
ある。
【0142】図13に示す超音波アクチュエータ905
は、溶射により形成された圧電体層903により弾性体
901を励振し、弾性体901の1次の縦振動と4次の
屈曲振動とを調和的に発生させて、弾性体901に加圧
接触する移動子(図示しない。)を駆動するものであ
る。
【0143】本実施形態では、圧電体層903としてチ
タン酸バリウム(BaTiO3 )系の圧電組成を用い
た。チタン酸バリウムは、構成元素であるバリウム及び
チタンがともに高融点であるとともに蒸気圧も接近して
いる。そのため、PZTにおけるPb成分のような一成
分の揮発による組成ずれの心配が少なく、組成のコント
ロールが比較的容易であって溶射条件を決定し易いとい
う特徴がある。本実施形態では、室温付近に存在するチ
タン酸バリウムの第2変態点を低下させるため、パリウ
ムを10重量%程度カルシウムに置換した組成を用い
た。
【0144】弾性体901の表面には、第1実施形態〜
第9実施形態と同様にニッケル合金からなる緩衝層90
2が形成されており、この緩衝層902の表面にはチタ
ン酸バリウム系圧電体層903が形成されており、さら
にその表面には白金上部電極904a,904bがスパ
ッタリングにより2分割されて成膜される。
【0145】本実施形態においても、第1実施形態と同
様に、圧電体層903はプラズマ溶射により形成され
る。チタン酸バリウムからなる圧電体層903の溶射に
よる形成の方法について述べる。
【0146】焼結,粉砕及び造粒により、二次粒子の粒
径を5〜40μmに調整した、Ba,Ca,Tiのモル
比が0.9:0.1:1のチタン酸バリウム系組成物を
原料粉末とした。
【0147】この原料粉末を用いてプラズマ溶射装置に
より、緩衝層902の表面に100μmの厚さでチタン
酸バリウム系圧電体層903を形成した。溶射の際のプ
ラズマジェットの作動ガスとしては、アルゴン,(アル
ゴン及び水素)の混合ガス,(アルゴン及びへリウム)
の混合ガスを用いた。
【0148】また、弾性体901に対する粉末の付着効
率を上げるため、抵抗体ヒータを用いて弾性体901の
表面温度を300℃〜650℃の間でコントロールし
た。本実施形態においても、圧電体層903の形成に伴
って弾性体901の縦振動1次モードと屈曲振動4次モ
ードとの関係にずれが生じるため、両モードの周波数を
一致させるように、圧電体層903の形成後に弾性体9
01の加工を行った。
【0149】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともにペロブスカイト結晶層の結晶化度を上昇させ
るため、第1実施形態と同様に、650℃に5時間加熱
保持する熱処理を行った。さらに、ポーリングは、20
0℃,450Vで大気中で1時間行った。
【0150】本実施形態の超音波アクチュエータ905
においても、電極904aに交流電圧A相を、電極90
4bにA相とは位相が90°異なる交流電圧B相を、そ
れぞれ実効電圧で±10V印加したところ、弾性体90
1の突起状の駆動力取出部901a,901bの先端に
楕円運動が発生し、駆動力取出部901a,901bの
先端に楕円運動が発生し、駆動力取出部901a,90
1bを介して加圧接触する移動子(図示しない。)との
間で相対運動を発生することが確認された。
【0151】なお、本実施形態においては、弾性体90
1上に圧電体層903を形成するための緩衝層であるニ
ッケル合金からなる層は、下部電極として利用されてい
る。また、緩衝層として、ニッケルからなる層のかわり
に白金メッキ層、クロム層またはニクロム層を用いても
よい。
【0152】(変形形態)各実施形態の説明では、振動
アクチュエータとして超音波アクチュエータを用いた
が、他の振動域の振動を利用した振動アクチュエータに
ついても等しく適用することができる。
【0153】また、各実施形態の説明では、電気機械変
換素子として圧電素子を用いたが、例えば電歪素子等の
他の電気エネルギーを機械的変位に変換することができ
るものであれば、等しく適用することができる。
【0154】なお、以上の各実施形態の説明では、溶射
後に熱処理を行うことにより圧電体薄膜を完全なペロブ
スカイト相とするものであるが、溶射ガスのパワーと,
成膜時の加熱による弾性体の表面温度との組み合わせに
よっては、成膜後に熱処理を行わなくともペロブスカイ
ト相の生成が十分に行われており、熱処理を行わずに希
望の圧電性能を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる電気機械変換効果応用素子を、
振動アクチュエータの一例である超音波アクチュエータ
に適用した第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】第1実施形態の超音波アクチュエータの構成要
素である、上部電極が形成された弾性体を示す平面図で
ある。
【図3】第2実施形態の超音波アクチュエータを示す斜
視図である。
【図4】第3実施形態の超音波アクチュエータを示す斜
視図である。
【図5】第4実施形態の超音波アクチュエータの説明図
であって、図5(a)は斜視図,図5(b)は図5
(a)におけるA−A断面図,図5(c)は図5(a)
におけるB−B断面図である。
【図6】第5実施形態の超音波アクチュエータを示す説
明図であって、図6(a)及び図6(b)は、いずれ
も、超音波アクチュエータの分解斜視図である。
【図7】第6実施形態のユニモルフ型アクチュエータを
示す斜視図である。
【図8】第7実施形態のユニモルフ型メカニカルフィル
タ用振動子を示す斜視図である。
【図9】第8実施形態の振動角速度計を示す斜視図であ
る。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、いずれも、
第8実施形態の圧電振動角速度計の動作原理を示す説明
図である。
【図11】第8実施形態で用いる振動子の無拘束条件を
実現するための振動子の支持形態の一例を示す説明図で
ある。
【図12】第9実施実施形態の超音波アクチュエータを
示す斜視図である。
【図13】第10実施形態の超音波アクチュエータを示
す斜視図である。
【図14】成膜温度または熱処理温度の違いに基づく、
結晶構造の違いを示すグラフである。
【符号の説明】
1 移動子 2 摺動材 3 弾性体 3a 突起部 3b 溝部 5 圧電体層 6 白金上部電極 7 超音波アクチュエータ(電気機械変換効果応用素
子)

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電気エネルギー及び機械的変位間の相互
    変換を行うとともに、所定の装着位置に溶射により成膜
    されてなることを特徴とする電気機械変換素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載された電気機械変換素子
    は、圧電素子又は電歪素子であることを特徴とする電気
    機械変換素子。
  3. 【請求項3】 弾性部材と,前記弾性部材の所定の位置
    に溶射により成膜されるとともに、電気エネルギー及び
    機械的変位間の相互変換を行う電気機械変換素子とを備
    えることを特徴とする電気機械変換効果応用素子。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載された電気機械変換効果
    応用素子は、アクチュエータ又はセンサであることを特
    徴とする電気機械変換効果応用素子。
  5. 【請求項5】 請求項3又は請求項4に記載された電気
    機械変換効果応用素子において、 前記弾性部材が導電性を有する場合には、少なくとも、
    前記弾性部材と前記電気機械変換素子との間に、前記弾
    性部材が導電性を有さない場合には、前記電気機械変換
    素子の両面に、電気エネルギーの入力又は出力のための
    電極が形成されることを特徴とする電気機械変換効果応
    用素子。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の電気機械変換効果応用
    素子において、 前記電極のうちの前記弾性部材と前記電気機械変換素子
    との間に配置される電極は、拡散を防止する緩衝層をな
    すことを特徴とする電気機械変換効果応用素子。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の電気機械変換効果応用
    素子において、 前記緩衝層は、前記弾性部材の装着位置に溶射により成
    膜されることを特徴とする電気機械変換効果応用素子。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の電気機械変換効果応用
    素子において、 前記電極及び前記緩衝層は、いずれも、高融点であって
    酸化し難い金属,高融点の貴金属又はこれらの合金から
    なることを特徴とする電気機械変換効果応用素子。
  9. 【請求項9】 請求項3から請求項8までのいずれか1
    項に記載された電気機械変換効果応用素子において、 前記電気機械変換素子は、鉛系強誘電体からなることを
    特徴とする電気機械変換効果応用素子。
  10. 【請求項10】 弾性部材の表面に、電気エネルギー及
    び機械的変位間の相互変換を行う電気機械変換素子を溶
    射により薄膜状に形成し、形成された前記電気機械変換
    素子の両面又は片面に電極を形成することを特徴とする
    電気機械変換効果応用素子の製造法。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載された電気機械変換
    効果応用素子の製造法において、 前記電気機械変換素子の前記溶射を行う前に、前記弾性
    部材の表面に溶射によって、高融点であって酸化し難い
    金属,高融点の貴金属又はこれらの合金からなる緩衝層
    を形成することを特徴とする電気機械変換効果応用素子
    の製造法。
  12. 【請求項12】 請求項10又は請求項11に記載され
    た電気機械変換効果応用素子の製造法において、 前記電気機械変換素子は、鉛系強誘電体からなる圧電又
    は電歪材料であることを特徴とする電気機械変換効果応
    用素子の製造法。
  13. 【請求項13】 請求項10から請求項12までのいず
    れか1項に記載された電気機械変換効果応用素子の製造
    法において、 前記電気機械変換素子又は前記緩衝層それぞれを前記溶
    射により形成する際には、前記弾性部材を所定の処理温
    度に設定しておくことを特徴とする電気機械変換効果応
    用素子の製造法。
  14. 【請求項14】 請求項10から請求項13までのいず
    れか1項に記載された電気機械変換効果応用素子の製造
    法において、 前記溶射により前記電気機械変換素子を形成した後であ
    って前記電極を形成する前に、熱処理を行って加工歪み
    を除去することを特徴とする電気機械変換効果応用素子
    の製造法。
  15. 【請求項15】 請求項10から請求項14までのいず
    れか1項に記載された電気機械変換効果応用素子の製造
    法において、 前記弾性部材が導電性を有する場合には、前記弾性部材
    と前記電気機械変換素子の表面に形成した前記電極とを
    用いて、前記弾性部材が導電性を有さない場合には、前
    記電気機械変換素子の両面に形成した二つの電極を用い
    て、前記電気機械変換素子の分極処理を行うことを特徴
    とする電気機械変換効果応用素子の製造法。
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