JPH09321364A - 圧電応用素子 - Google Patents

圧電応用素子

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JPH09321364A
JPH09321364A JP13686196A JP13686196A JPH09321364A JP H09321364 A JPH09321364 A JP H09321364A JP 13686196 A JP13686196 A JP 13686196A JP 13686196 A JP13686196 A JP 13686196A JP H09321364 A JPH09321364 A JP H09321364A
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JP
Japan
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elastic body
piezoelectric
piezoelectric layer
layer
electromechanical conversion
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JP13686196A
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English (en)
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Kenichi Muramatsu
研一 村松
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の薄膜形成技術により薄膜状に圧電体層
を弾性体上に形成しようとすると、圧電体層が圧電性を
有する温度に加熱するために、弾性体が酸化し、所望の
圧電性が得られない。 【解決手段】 溶射により圧電体層5が表面に形成され
た弾性体3を備える超音波アクチュエータ(圧電応用素
子)であって、弾性体3が、高融点であって酸化し難い
金属,高融点の貴金属又はこれらの合金により構成され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機械変換素子
が表面に形成された弾性体を備える圧電応用素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、振動アクチュエータ等のアクチュ
エータ,メカニカルフィルターさらにはジャイロといっ
た圧電効果を利用した圧電応用素子を構成する弾性体の
表面に、例えば圧電素子,磁歪素子さらには電歪素子と
いった電気機械変換素子を形成するには、電気機械変換
素子を、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からな
る別部品により薄板状に形成しておき、形成した電気機
械変換素子を弾性体の表面に例えば接着により貼付して
いた。
【0003】しかし、このように電気機械変換素子を弾
性体の表面に貼付する場合、製造技術上の制約から、電
気機械変換素子の厚さをある所定値以下に小さくするこ
とができない。そのため、前述の圧電応用素子の出力を
所望の値に確保するためには、高い駆動電圧を印加する
必要があり、このために装置全体の小型化を計ることが
難しかった。
【0004】そこで、例えば特開昭63−28279号
公報には、チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電素子を、
蒸着,スパッタリング等の薄膜形成技術により弾性体表
面に薄膜状に成膜した振動アクチュエータが提案されて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、弾性体の表
面に薄膜形成技術により薄膜状に成膜された電気機械変
換素子が圧電特性を有するためには、チタン酸ジルコン
酸鉛を用いて圧電素子を構成する場合には、チタン酸ジ
ルコン酸鉛の結晶構造をペロブスカイト型とする必要が
ある。
【0006】すなわち、薄膜形成技術により電気機械変
換素子を形成するには、通常は、高温域で薄膜を成膜す
るか、又は低温域で非晶質の薄膜を成膜した後に熱処理
を行うが、この際の成膜温度や熱処理温度の高低によっ
て、得られる結晶構造が著しく異なる。
【0007】図14には、成膜温度又は熱処理温度の違
いに基づく結晶構造の違いをグラフで示す。同図に示す
ように、熱処理温度が(室温〜300℃)程度又は熱処
理しないままでは殆どが非晶質となり、熱処理温度が4
00℃程度になると主にパイロクロア型となり、熱処理
温度が500℃程度になるとパイロクロア型とペロブス
カイト型の混在となり、さらに、熱処理温度が600℃
以上になると主にペロブスカイト型となる。
【0008】このように、成膜又は熱処理が高温域で行
われ結晶相が600℃以上の高温で形成された場合に
は、圧電性を有するペロブスカイト相だけが生成するも
のの、熱処理が低温域で行われ結晶相の形成が充分に高
い温度でなされなかった場合には、ペロブスカイト相と
ともに、圧電性を全く有さないパイロクロア相も生成し
てしまう。
【0009】そのため、薄膜形成技術によって形成され
た電気機械変換素子が圧電性を有するためには、圧電体
層の形成を、例えば600℃以上の高温域で行うか、低
温で成膜された薄膜層に、例えば600℃以上の高温域
で熱処理を施すことが必要となる。
【0010】また、使われている電気機械変換素子の殆
どのものが、印加電界当たりの変位量が大きいことか
ら、チタン酸ジルコン酸鉛に代表されるように鉛系の酸
化物材料であり、陽イオンの半分近くが還元され易い鉛
イオンである。そのため、例えば600℃以上の高温域
で相の形成がなされた後に熱処理を行う場合にも、雰囲
気は酸素に富んだ状態である。
【0011】そのため、弾性体にステンレス鋼等の鉄系
の合金を用いる場合には、例えば600℃以上の高温域
で成膜や熱処理を行うことは、弾性体表面が酸化された
り、電気機械変換素子と弾性体との間で酸素原子や鉛原
子の拡散等の物質移動に代表される化学反応が起こる可
能性が高い。このような化学反応により、弾性体の表面
に酸化層が形成されたり、弾性体や電気機械変換素子の
界面付近での化学組成が変化することにより、圧電特性
が低下したり、電気機械変換素子と弾性体との密着強度
が著しく低下してしまうおそれがあった。
【0012】さらに、弾性体に生じる2つの固有振動数
を一致させるために、電気機械変換素子の弾性率や密
度,さらには形状を正確に把握して計算を行う必要があ
る。しかし、電気機械変換素子を別部品として貼付する
ことによる従来の技術では、弾性体と電気機械変換素子
との間に不可避的に存在してしまう接着層の影響を受け
るため、前述の計算値に誤差を生じてしまい、正確に周
波数を一致させることが難しかった。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、溶射
により電気機械変換素子が表面に形成された弾性体を備
える圧電応用素子であって、この弾性体は、高融点であ
って酸化し難い金属,高融点の貴金属又はこれらの合金
からなることを特徴とする。
【0014】請求項2の発明は、請求項1に記載された
圧電応用素子において、前記の弾性体は、電気機械変換
素子の溶射時に、加熱処理されてなることを特徴とす
る。
【0015】請求項3の発明は、請求項1又は請求項2
に記載された圧電応用素子において、溶射により形成さ
れた前記の電気機械変換素子は、溶射後に熱処理されて
なることを特徴とする。
【0016】請求項4の発明は、請求項1から請求項3
までのいずれか1項に記載された圧電応用素子におい
て、さらに、前記の電気機械変換素子への駆動信号の入
力、又は前記の電気機械変換素子からの検出信号の出力
のための電極が形成されることを特徴とする。
【0017】請求項5の発明は、請求項1から請求項4
までのいずれか1項に記載された圧電応用素子におい
て、前記の電気機械変換素子は、鉛系強誘電体からなる
圧電材料又は電歪材料であることを特徴とする。
【0018】本発明において、「圧電応用素子」とは、
圧電効果を利用した素子全般を意味しており、例えばア
クチュエータやセンサー等を例示することができる。
【0019】本発明における「電気機械変換素子」と
は、電気エネルギーを機械的変位に変換することができ
る素子を意味し、圧電素子,磁歪素子さらには電歪素子
等を包含する。
【0020】また、本発明における「高融点で酸化し難
い金属」とはニッケル,クロム,コバルト等をいい、
「高融点の貴金属」とは白金,レニウム,ロジウム,パ
ラジウム等をいう。
【0021】すなわち、鉄,アルミニウムさらには銅等
の低融点の金属原子は、高温環境下では、極めて酸素原
子と結合して酸化し易い。しかも、これらの原子は低融
点であるためにペロブスカイト相が安定的に生成するよ
うな高温域では、極めて容易に原子の拡散が起こり易
い。
【0022】したがって、これらの金属、又はこれらの
金属を多く含有する合金により弾性体を構成し、その表
面にペロブスカイト型のように高温で安定な電気機械変
換素子を形成することは、特にそれがチタン酸ジルコン
酸鉛のような鉛系酸化物である場合には、還元環境下で
の処理が不可能であり、しかも電気機械変換素子自体も
酸化物であるために弾性体の酸化を避けることができな
いため、極めて難しい。
【0023】さらに、熱処理時には、弾性体の原子は極
めて拡散し易い状態にあり、しかも電気機械変換素子中
の鉛原子も極めて低融点であるため、電気機械変換素子
から弾性体への鉛原子の拡散も避けることができない。
【0024】弾性体表面,又は弾性体と電気機械変換素
子との界面における酸化膜の生成は、電気機械変換素子
と弾性体との付着強度を低下させ、電気機械変換素子を
剥離させ易くするものであり、特に高温域での生成で
は、酸化した弾性体表面上には電気機械変換素子は殆ど
付着しない。
【0025】また、弾性体と電気機械変換素子との界面
における弾性体酸化層の形成,弾性体中への鉛原子の拡
散による拡散層の形成、さらには前述の拡散層の形成に
よる界面近傍での電気機械変換素子中の鉛欠乏層の形成
等といったように、弾性体と電気機械変換素子との間
に、電極以外の低誘電率の誘電体層が形成されること
は、結果的に圧電効果を著しく阻害することになる。
【0026】これに対し、弾性体がニッケル,クロム,
コバルト等の高融点で酸化し難い金属,又は白金,レニ
ウム,ロジウム,パラジウム等の融点の高い貴金属、さ
らにそれらの合金からなる場合には、高温での成膜でも
表面に酸化層ができ難いため、弾性体と電気機械変換素
子との間に拡散層等が形成され難く、また熱処理時にも
弾性体と圧電素子との間で物質拡散が起こり難いため、
それにより圧電効果が阻害されるおそれもない。
【0027】このように、本発明にかかる圧電応用素子
では、表面に溶射により電気機械変換素子を形成される
弾性体が、高融点であって酸化し難い金属,高融点の貴
金属又はこれらの合金により形成されるため、熱処理に
よる弾性体の酸化量が抑制されて弾性体と電気機械変換
素子との間に酸化膜が形成され難くなる。
【0028】また、熱処理時にも弾性体と圧電体層との
間における物質拡散が起こり難いため、圧電効果が阻害
されるおそれもない。
【0029】さらに、従来の電気機械変換素子の厚さの
1/100以下になるとともに接着層を介在しないた
め、接着層による振動吸収層が存在せず、固有振動数の
計算の際の誤差分が低減される。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)以下、本発明にかかる圧電応用素子の
実施形態を、添付図面を参照しながらさらに詳細に説明
する。
【0031】図1は、本発明にかかる圧電応用素子を、
振動アクチュエータの一例である超音波アクチュエータ
7に適用した第1実施形態を示す分解斜視図であり、図
2は、図1に示す超音波アクチュエータ7の構成要素で
ある、白金上部電極6が形成された弾性体3を示す平面
図である。
【0032】図1に示すように、第1実施形態の超音波
アクチュエータ7は、円環状の弾性体3と、この弾性体
3の一方の端面に加圧接触する円環状の移動子1とによ
り構成される。
【0033】弾性体3の一方の平面には、その円周方向
に多数の溝部3bが連設されており、この溝部3bによ
って区切られることにより多数の突起部3aが連続して
形成される。これらの突起部3aは弾性体3の端面に発
生する進行波の振幅を増幅するとともに、移動子1との
接触により発生した摩耗粉を溝部3b内に落下させるこ
とにより接触部に残存させないためである。
【0034】本実施形態では、この弾性体3はニッケル
合金を用いて、鋳造を行ってさらに必要に応じて機械加
工を施すことにより、構成される。弾性体3の他方の平
面には、図2に示すように、弾性体3に圧電体層5を形
成するための白金からなる緩衝層4がスパッタリングに
より成膜される。この緩衝層4は下部電極としても機能
する。緩衝層4の表面には、圧電体層5が形成される。
この圧電体層5は、後述するように、弾性体3の表面に
溶射により形成される。
【0035】一方、移動子1の弾性体3との接触面側の
平面には、環状の摺動材2が貼付されて装着される。こ
の摺動材2を介して、移動子1は図示しない加圧機構に
より弾性体3に加圧接触される。
【0036】本実施形態の超音波アクチュエータ7で
は、前述したように、弾性体3の裏面にスパッタリング
により緩衝層4が形成されるとともに、緩衝層4の上に
は溶射によりチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電体
層5が形成されており、さらにその表面には分割された
白金上部電極6が形成される。以下、緩衝層4の表面へ
の圧電体層4の溶射による形成法について説明する。
【0037】仮焼,粉砕及び造粒により、粒径を5〜4
0μmに調整した、Pb,Zr,Tiのモル比が1:
0.52:0.48のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)
に、溶射の際の鉛の揮発分を考慮して過剰のPbを酸化
物(PbO)の形で添加した混合物を原料粉末とした。
【0038】この原料を用いてプラズマ溶射装置によ
り、緩衝層4の表面に、100μmの厚さでPZTから
なる圧電体層5を成膜した。プラズマジェットの作動ガ
スとしては、アルゴン,(アルゴン及び水素の混合ガ
ス),又は(アルゴン及びヘリウムの混合ガス)を用い
た。
【0039】本実施形態では、弾性体3の表面に対する
原料粉末の付着効率を上げるため、溶射時には、抵抗体
ヒータを用いて弾性体3の表面温度を300〜650℃
の範囲にコントロールした。
【0040】さらに、溶射後に、圧電体層5の溶射によ
る形成に伴う弾性体3の変形を修正するため、弾性体3
に対して研削加工及び研摩加工を施した。さらに、この
後、形成した圧電体層5を完全なペロブスカイト層にす
るため、及び弾性体3の加工歪みを取り去るため、65
0℃に5時間保持する熱処理を行った。
【0041】このようにして、弾性体3の表面に圧電体
層5を形成し、この圧電体層5の表面に白金上部電極6
を成膜した。本実施形態では、白金上部電極6はスパッ
タリングにより成膜した。
【0042】この白金上部電極6は、スパッタリング時
にマスキングを行うことにより、図2に示すように、弾
性体3の円周方向について約20°ピッチで多数連設さ
れる。このようにして形成された白金上部電極6に対
し、リード線を接続する配線用銅箔を接合するために、
白金上部電極6と銅箔(図示しない。)との間にはんだ
箔を挟み、加圧した状態で高周波炉中で400℃に加熱
保持することにより、白金上部電極6と銅箔とを接合し
た。
【0043】その後に、白金上部電極6に、図2に示す
ように隣接する電極同士で符号が逆向きになるように駆
動電圧を印加することにより、圧電体層5の分極処理を
行った。分極処理の条件は、150℃,300Vで大気
中で1時間行った。
【0044】このようにして、第1実施形態の超音波ア
クチュエータ7は構成される。ここで、形成された圧電
体層5のキューリ温度Tcは約240℃であった。この
超音波アクチュエータ7の圧電体層5に、入力A相と入
力B相とで(π/2)の位相差をつけて実効電圧で±5
Vの交流電界を印加したところ、弾性体3の表面に形成
された突起部3aの先端に進行波が発生し、弾性体3に
加圧接触されている移動子1が回転することが確認され
た。このことから、本実施形態によれば、溶射により形
成された圧電体層5が充分な圧電性を有することがわか
る。
【0045】(第2実施形態)図3は、本発明の第2実
施形態の超音波アクチュエータ105を示す斜視図であ
る。
【0046】本実施形態にかかる超音波アクチュエータ
105は、ニッケルからなる矩形平板状の弾性体101
の平面に、PZTからなる圧電体層103を溶射により
成膜し、圧電体層103に駆動電圧を印加することによ
り弾性体101を励振し、弾性体101に縦振動1次モ
ードと屈曲振動4次モードとを調和的に発生させること
により、弾性体101に加圧接触する移動子(図示しな
い)との間で相対運動を発生させるものである。
【0047】弾性体101は、前述したようにニッケル
合金からなり、弾性体101の一方の平面には、弾性体
101に圧電体層103を形成するための白金からなる
緩衝層102がスパッタリングにより成膜される。この
緩衝層102は下部電極としても機能する。緩衝層10
2の表面には、PZTからなる圧電体層103が溶射に
より形成される。PZTからなる圧電体層103の形成
条件は、第1実施形態と同一である。
【0048】本実施形態では、PZTからなる圧電体層
103の溶射による形成に伴って、弾性体101に発生
する縦振動1次モードと屈曲振動4次モードとの関係に
ずれが生じる。そこで、両振動モードの周波数を一致さ
せるため、圧電体層103の溶射による形成後に弾性体
101の加工を行った。
【0049】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともに、圧電体層103の完全なペロブスカイト化
を図るため、第1実施形態と同様に、650℃に5時間
保持する熱処理を行った。なお、圧電体層103の分極
処理は、第1実施形態と同様に、150℃,300Vの
条件で大気中で1時間行った。
【0050】さらに、このようにして溶射により成膜し
た圧電体層103の表面に、白金上部電極104a,1
04bがスパッタリングにより形成される。白金上部電
極104a,104bは、スパッタリングの際のマスキ
ングにより2分割されて,成膜される。
【0051】このようにして形成された白金上部電極1
04a,104bに対し、配線用の銅箔を接合するため
に、白金上部電極104a,104bと銅箔との間には
んだ箔を挟み、加圧した状態でリフロー式はんだ付け炉
中で400℃に加熱保持した。
【0052】なお、弾性体101の他方の平面であって
発生する屈曲振動4次モードの腹位置の2か所には、弾
性体101の幅方向に突起状に形成された駆動力取出部
101a,101bが形成されており、図示しない移動
子はこの駆動力取出部101a,101bの先端面を介
して弾性体101に加圧接触する。
【0053】このように構成された超音波アクチュエー
タ105において、白金上部電極104aに交流電圧A
相を、白金上部電極104bにA相と位相が90°異な
る交流電圧B相を、それぞれ実効電圧で±5V印加した
ところ、弾性体1の駆動力取出部101a,101bの
先端面に楕円運動が発生し、駆動力取出部101a,1
01bの先端部を介して加圧接触する相対運動部材との
間で相対運動が発生することが確認された。このことか
ら、本実施形態によれば、溶射により形成された圧電体
層103が充分な圧電性を有することがわかる。
【0054】(第3実施形態)図4は、第3実施形態の
超音波アクチュエータ205の構成を示す斜視図であ
る。
【0055】本実施形態は、基本的構成は第2実施形態
の超音波アクチュエータ105と同一であり、本実施形
態では第1実施形態では100番代を付した図中符号を
200番代に置換することにより、それらの説明は省略
する。
【0056】第1実施形態の超音波アクチュエータ10
5との相違点は、高温の環境下での使用に対応するた
め、圧電体層203の構成材料として、キューリ温度T
cが490℃であって高温環境下においても分極処理の
劣化が発生し難いチタン酸鉛(PT)を用いた点であ
る。
【0057】したがって、以下、PTからなる圧電体層
203の溶射による形成方法について説明する。焼結,
粉砕及び造粒によって粒径を5〜40μmに調整した、
Pb,Tiのモル比が1:1であるチタン酸鉛(PT)
に、溶射によるPbの揮発分を考慮して過剰のPbを酸
化物(PbO)の形で添加した混合物を原料粉末とし
た。
【0058】弾性体201の表面に、第2実施形態と同
様に緩衝層202を形成した。この緩衝層202の表面
に、前述した原料粉末を用いてプラズマ溶射装置で、1
00μmの厚さでPTからなる圧電体層203を形成し
た。プラズマジェットガスの作動ガスとしては、アルゴ
ン,(アルゴン及び水素の混合ガス)又は(アルゴン及
びヘリウムの混合ガス)を用いた。
【0059】また、弾性体201に対する原料粉末の付
着効率を上げるために、抵抗体ヒータを用いて溶射時の
弾性体201の表面温度を300〜650℃の範囲にコ
ントロールした。
【0060】この後、本実施形態においても、PTから
なる圧電体層203の形成に伴って弾性体201の縦振
動1次モードと屈曲振動4次モードとの関係にずれが生
じるため、両振動モードの周波数を一致させるために、
PTからなる圧電体層203の形成後に弾性体201の
加工を行った。
【0061】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともに、PTからなる圧電体層203の完全なペロ
ブスカイト化を図るため、第1実施形態と同様に、65
0℃に5時間加熱保持する熱処理を行った。
【0062】このようにして形成した圧電体層203に
対して、配線用の銅箔を接合するために、白金上部電極
204a,204bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加
圧した状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加
熱保持する熱処理を行った。
【0063】なお、圧電体層203のポーリング(分極
処理)は、200℃,450Vで大気中で1時間行っ
た。この超音波アクチュエータ205においても、白金
上部電極204aに交流電圧A相を印加するとともに電
極204bに交流電圧A相と位相が90°異なる交流電
圧B相を実効電圧で±10V印加したところ、弾性体2
01の駆動力取出部201a,201bの先端面に楕円
運動が発生し、駆動力取出部201a,201bの先端
面を介して加圧接触する移動子(図示しない。)との間
で相対運動を発生することが確認された。このことか
ら、本実施形態によれば、溶射により形成された圧電体
層203が充分な圧電性を有することがわかる。
【0064】(第4実施形態)図5は、第4実施形態の
超音波アクチュエータ307の説明図であって、図5
(a)は斜視図,図5(b)は図5(a)におけるA−
A断面図,図5(c)は図5(a)におけるB−B断面
図である。
【0065】本実施形態の超音波アクチュエータ307
は、円柱状のニッケルからなる弾性体301の両端(一
端でもよい。)を、弾性体301の表面に溶射により形
成した圧電素子302,303により二次元的に加振す
ることにより、振動面が回転しながら進行する進行性振
動波を弾性体301上に発生させ、これにより弾性体3
01に加圧接触する移動子306に直進運動及び回転運
動の両方を同時に付与する。
【0066】本実施形態における超音波アクチュエータ
307では、弾性体301の両端において、第1実施形
態〜第3実施形態と同様に緩衝層302a,303aを
形成し、形成した緩衝層302a,303aの表面に、
溶射により圧電体層302,303を円筒状に形成し、
励振を行うように構成した。
【0067】本実施形態の超音波アクチュエータ307
は、円筒状の弾性体301の両端側の外周面に溶射によ
り圧電体層302及び303が成膜されており、さらに
それらの圧電体層302及び303は、それぞれ直方体
型の固定子304及び305により保持される。さら
に、弾性体301には、中空円筒状の移動子306の内
周面が加圧接触する。
【0068】本実施形態では、円筒状の弾性体301は
ニッケル合金からなる。圧電体層302及び303は、
円筒形のニッケル弾性体301の両端部側301a,3
01bに、溶射によって圧電体層302,303が形成
され、圧電体層302,303の上には、弾性体301
の円周方向に4分割された上部銀電極302c1,30
2c2,302c3,302c4及び303c1,30
3c2,303c3,303c4が形成される。
【0069】圧電体層302及び303の溶射による形
成条件は、第1実施形態と同様である。また、上部銀電
極302c1〜302c4及び303c1〜303c4
の形成は、スクリーン印刷により行った。上部銀電極3
02c1〜302c4及び303c1〜303c4への
配線処理は、はんだ付けにより行った。さらに、圧電体
層302及び303の分極処理は、150℃,300V
で大気中で1時間行った。
【0070】このように構成された超音波アクチュエー
タ307において、一方の圧電素子302の上部銀電極
302c1〜302c4に、この順番で隣合う上部銀電
極間の位相差がπ/2になるように実効電圧で±5Vの
交流電界を印加したところ、圧電素子302は首振り運
動を行うことが確認された。このような首振り運動で、
しかも圧電素子302に発生する首振り運動に対してπ
/2の位相差を有する運動を圧電素子304に関しても
発生させたところ、棒状の弾性体301に振動面を回転
させながら進行する進行性振動波が発生し、これにより
移動子306が回転しながら直進することが確認され
た。
【0071】また、本実施形態において、電極302c
1,302c3及び303c1,303c3のみに入力
電圧を印加した場合、又は上部銀電極302c2,30
2c4及び303c2,303c4にのみ駆動電圧を印
加した場合には、弾性体301上に振動面を回転させな
いで進行する通常の進行性振動波が発生し、移動子30
6は回転せずに直進運動のみを行うことが確認された。
【0072】さらに、圧電素子302のみにより弾性体
301を励振し、圧電素子303により進行波を吸収す
るようにしたところ、同様に、移動子306は回転せず
に直進運動のみを行うことが確認された。
【0073】(第5実施形態)図6は、第5実施形態の
超音波アクチュエータ403を示す説明図であって、図
6(a)及び図6(b)は、いずれもは、超音波アクチ
ュエータ403の分解斜視図である。
【0074】本実施形態にかかる超音波アクチュエータ
403は、円環状の弾性体401の面内屈曲振動のうち
の非軸対称屈曲振動を行い、内周にテーパ状の変径部を
有する円環型の振動子401と、振動子401の変形部
を介して接触する回転子402とを備える。
【0075】ここで、振動子401は、円環型のニッケ
ル合金からなる弾性体401aの両面に、前述した第1
実施形態〜第4実施形態と同様に形成された緩衝層40
1b,401eと、緩衝層401b,401eそれぞれ
の表面に溶射により形成されたPZTからなる圧電体層
401c,401fと、さらにそのそれぞれの表面にス
パッタリングにより円周方向に4分割された状態で形成
された白金上部電極401d1,401d2,401d
3,401d4及び401g1,401g2,401g
3,401g4とから構成される。なお、圧電体層40
1c,401fの形成条件は、第1実施形態と同様であ
る。
【0076】このようにして形成された白金上部電極4
01d1〜401d4及び401f1〜401f4に対
し、配線用の銅箔(図示しない。)を接合するため、白
金上部電極401d1〜401d4及び401f1〜4
01f4と銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧した状態
で高周波炉中で400℃に加熱した。
【0077】その後に、白金上部電極401d1〜40
1d4及び401f1〜401f4に、図2に示すよう
に隣接するもの同士で符号が逆向きになるように電圧を
印加することにより、白金上部電極401d1〜401
d4及び401f1〜401f4の分極処理を行った。
分極処理の条件は150℃で300Vで大気中において
1時間行った。
【0078】ここで、白金上部電極401d1〜401
d4及び401f1〜401f4の2グループの電極群
に、この順番で隣り合う電極間の位相差がπ/2になる
ように実効電圧で±5Vの交流電界を印加した。する
と、振動子401の内周面及び外周面に面内方向に振動
面を有する進行性振動波が発生し、内周面に接触する回
転子402が回転運動を行うことが確認された。
【0079】(第6実施形態)図7は、第6実施形態の
ユニモルフ型アクチュエータ506を示す斜視図であ
る。
【0080】このユニモルフ型アクチュエータ506
は、圧電体層503の電界印加方向に関する垂直方向の
変位を利用する。ユニモルフ型アクチュエータ506
は、白金からなる弾性体501と、第1実施形態〜第5
実施形態と同様に弾性体501の表面に形成された緩衝
層502と、緩衝層502上に溶射により形成されたP
ZTからなる圧電体層503と、圧電体層503の表面
にスパッタリングにより形成された白金上部電極504
と、弾性体501を支持する支持体505とにより構成
される。圧電体層503の形成条件は、第1実施形態と
同様である。
【0081】スパッタリングにより形成された白金上部
電極504に対し、配線用の銅箔を接合するため、白金
上部電極504と銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧し
た状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加熱し
た。圧電体層503のポーリングは、第1実施形態と同
様に、150℃,300Vで大気中で1時間行った。
【0082】このように構成された本実施形態のユニモ
ルフ型アクチュエータ506において、白金上部電極5
04と下部電極である弾性体501との間に、駆動電圧
を印加したところ、圧電体層503の面方向に関する変
位により、弾性体501の板状の部分が上下に変位する
ことが確認された。
【0083】(第7実施形態)図8は、第7実施形態の
ユニモルフ型メカニカルフィルタ用振動子606を示す
斜視図である。
【0084】本実施形態のユニモルフ型メカニカルフィ
ルタ用振動子606は、圧電体層603の電界印加方向
の垂直方向に関する変位を利用する。ユニモルフ型メカ
ニカルフィルタ用振動子606は、クロム合金からなる
弾性体601と、第1実施形態〜第6実施形態と同様に
弾性体601上に形成された緩衝層602と、緩衝層6
02上に溶射により形成されたPZTからなる圧電体層
603と、圧電体層603の表面にスパッタリングによ
り形成された白金上部電極604a,604bとにより
構成される。
【0085】圧電体層603の形成条件は、第1実施形
態と同様である。また、白金上部電極604a,604
bに対し、配線用の銅箔を接合するため、白金上部電極
604a,604bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加
圧した状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加
熱した。圧電体層603のポーリングは、第1実施形態
と同様に、150℃、300Vで大気中で1時間行っ
た。
【0086】ここで、白金上部電極604a,604b
と下部電極である弾性体601との間に交流電界を印加
したところ、圧電体層603の面方向に関する変位によ
り、弾性体601の板状の部分に片持ち梁の共振が励振
された。
【0087】さらに、この片持ち梁の共振振動により圧
電体層603の表面に誘起電荷が発生することを利用し
て、白金上部電極604bと弾性体601とから発生信
号を検出したところ、信号は片持ち梁の共振周波数に等
しい周波数の正弦波であった。
【0088】このことから、本実施形態における振動子
606は、入力信号からある一定の周波数の出力信号の
みを取り出すための周波数フィルターとして機能するこ
とが確認された。
【0089】(第8実施形態)図9は、第8実施形態の
振動角速度計705を示す斜視図である。図9に示す振
動角速度計705では、ニッケル−クロム合金からなる
直方体振動子701の一つの側面に、第1実施形態〜第
7実施形態と同様に緩衝層702を形成する。この緩衝
層702の表面に、プラズマ溶射により、PZTからな
る圧電体層703を形成する。
【0090】ニッケル−クロム合金からなる振動子70
1自身をグランド電極として用い、PZTからなる圧電
体層703上に、スパッタリング法により、振動子70
1の軸方向に3分割された電極704を形成する。
【0091】中央の電極704bは駆動用電極であり、
両側の電極704a,704cは検出用電極である。振
動子701の軸方向に垂直な断面は、駆動方向とコリオ
リ力方向との共振周波数を一致させるため、略正方形で
ある。圧電体層703の形成条件は、第1実施形態と同
様である。また、電極704a〜704cに対し、配線
用の銅箔を接合するため、電極704a〜704cと銅
箔との間にはんだ箔を挟み、加圧した状態でリフロー式
はんだ付け炉中で400℃に加熱した。圧電体層703
のポーリングは、第1実施形態と同様に150℃,30
0Vで大気中で1時間行った。
【0092】図10(a)〜図10(c)は、いずれ
も、図9に示した圧電振動角速度計706の動作原理を
示す説明図である。図10(a)に示すように、駆動用
電極704bに振動子701の共振周波数に近い交流電
圧を印加すると、振動子701は無拘束条件で振動し、
振動の節点705を境に振動子701の中央部分と端部
とは、反対の向きに速度を有する。
【0093】図10(b)に示すように、この時、振動
子701の軸回りに回転が発生すると、速度の方向が反
対であるため、振動の接点を境に反対の向きにコリオリ
力が発生する。
【0094】図10(c)に示すように、このコリオリ
力により、振動子701は電極面内方向で屈曲する。外
側に配置された二つの検出用電極704a,704cに
は、駆動振動(図10(a)参照)に起因する圧電信号
と、コリオリ力による変形(図10(c)参照)に起因
する圧電信号とが同時に発生する。
【0095】このうち、コリオリ力に起因する圧電信号
は、二つの電極704a,704c間で略位相が反対と
なる。これは、例えば図10(c)に示す変形状態で
は、電極704a側には圧縮応力が作用するとともに電
極704c側には引張応力が作用することになり、二つ
の電極704a,704cの間で常に応力の符号が異な
る。
【0096】一方、起動に起因した圧電信号は、両電極
704a,704c間で略同じであるため、両電極70
4a,704cから差動信号をとれば、略コリオリ力に
起因する圧電信号だけを取り出すことができる。
【0097】本実施形態では、振動子701の断面を正
方形とするとともにコリオリ力方向及び駆動方向それぞ
れの共振周波数を一致させてあるため、検出用電極70
4a,704cからの出力を帰還すれば、簡単な発振回
路で振動子701を共振周波数付近で駆動することがで
き、したがってコリオリ力に基づく振動も共振状態とな
り、検出感度が向上する。
【0098】このように二方向の共振周波数を合わせる
ためには、振動子701の形状精度に対する要求は極め
て高い。したがって、第2実施形態及び第3実施形態と
同様に、本実施形態においても、圧電体層形成後に共振
合わせのための加工を行い、さらに、この加工による加
工歪みを取るための熱処理を650℃で行った。
【0099】なお、本実施形態における振動子701で
は、必ずしも、駆動方向及びコリオリ力方向それぞれの
共振周波数が一致している必要はない。例えば、駆動に
は共振状態でなくても大きな変位が得られるユニモルフ
振動を用い、振動検出だけをコリオリ力方向の共振を用
いることも可能である。このためには、コリオリ力方向
の共振周波数によって、振動子701をユニモルフ駆動
させればよい。このような振動子701を用いれば、共
振合わせ加工の工程を省略することができる。
【0100】図11は、図9に示す振動子701の無拘
束条件を実現するための振動子701の支持形態の一例
を示したものである。振動の節点に相当する位置で、シ
リコーン系接着剤を使用して支持台706に固定してあ
る。また、簡便な方法として、振動子701全体を比較
的弾性定数の低い接着剤に埋め込んで固定することも可
能である。
【0101】また、本実施形態においては、振動子70
1に圧電体層703を形成するための緩衝層である白金
層702は、そのまま下部電極として利用される。
【0102】(第9実施形態)図12は、第9実施形態
の超音波アクチュエータ805を示す斜視図である。
【0103】本実施形態の超音波アクチュエータ805
は、第2実施形態と同様に、圧電体803により弾性体
801を励振し弾性体801の縦振動1次モードと屈曲
振動4次モードとを調和的に発生させることにより、弾
性体801に加圧接触する移動子(図示しない)を駆動
するものである。
【0104】本実施形態の超音波アクチュエータ805
では、弾性体801はニッケル合金からなるとともに、
第1実施形態〜第8実施形態と同様に緩衝層802が形
成される。緩衝層802の表面には、ガスフレーム溶射
法により、PZTからなる圧電体層803の形成を行っ
た。圧電体層803の表面には、白金上部電極804
a,804bが形成される。
【0105】ガスフレーム溶射法による圧電体層803
の溶射条件は以下の通りである。仮焼,粉砕及び造粒に
より、二次粒子の粒径を5〜40μmに調整した、P
b,Zr,Tiのモル比が1:0.52:0.48のチ
タン酸ジルコン酸鉛(PZT)に、溶射の際のPb揮発
分を考慮して、過剰のPbを酸化物(PbO)の形で添
加したものを原料粉末とした。
【0106】この原料粉末を用いてフレーム溶射装置に
より、弾性体801の表面に100μmの厚さで成膜し
た。ガスフレーム溶射の燃料ガスとしては、アセチレン
ガス(プロパンガスでもよい。)を用いた。
【0107】また、弾性体801に対する原料粉末の付
着効率を上げるため、抵抗体ヒータを用いて弾性体80
1の表面温度を300〜650℃の範囲にコントロール
した。
【0108】本実施形態においても、第2実施形態及び
第3実施形態と同様に、圧電体層803のガスフレーム
溶射による形成に伴って、弾性体801の縦振動1次モ
ードと屈曲振動4次モードとの関係にずれが生じるた
め、両モードの周波数を一致させるため、圧電体層80
3の形成後に弾性体801の加工を行った。
【0109】また、この加工による加工歪みを除去する
とともに圧電体層803の完全なペロブスカイト化を図
るため、第1実施形態と同様に、650℃で5時間の熱
処理を行った。
【0110】さらに、圧電体層803の表面における白
金上部電極は、スパッタリングにより白金上部電極80
4a,804bに2分割されて成膜される。このように
して形成された白金上部電極804a,804bに対し
て配線用の銅箔を接合するために、白金上部電極804
a,804bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧した
状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃の処理を行
った。
【0111】このように構成された超音波アクチュエー
タ805において、電極804aに交流電圧A相を、電
極804bにA相と位相が90°異なる交流電圧B相を
実効電圧で±5V印加したところ、弾性体801の突起
状に形成された駆動力取出部801a,801bの先端
に楕円運動が発生し、駆動力取出部801a,801b
を介して加圧接触する相対運動部材である移動子(図示
しない。)が駆動されることが確認された。
【0112】(第10実施形態)図13は、第10実施
形態の超音波アクチュエータ905を示す斜視図であ
る。
【0113】図13に示す超音波アクチュエータ905
は、溶射により形成された圧電体層903によりニッケ
ル合金からなる弾性体901を励振し、弾性体901の
縦振動1次モードと屈曲振動4次モードとを調和的に発
生させて、弾性体901に加圧接触する移動子(図示し
ない。)を駆動するものである。
【0114】本実施形態では、圧電体層903としてチ
タン酸バリウム(BaTiO3 )系の圧電組成を用い
た。チタン酸バリウムは、構成元素であるバリウム及び
チタンがともに高融点であるとともに蒸気圧も接近して
いる。そのため、PZTにおけるPb成分のような一成
分の揮発による組成ずれの心配が少なく、組成のコント
ロールが比較的容易であって溶射条件を決定し易いとい
う特徴がある。本実施形態では、室温付近に存在するチ
タン酸バリウムの第2変態点を低下させるため、バリウ
ムを10重量%程度カルシウムに置換した組成を用い
た。
【0115】弾性体901の表面には、第1実施形態〜
第9実施形態と同様に緩衝層902が形成されており、
この緩衝層902の表面にはチタン酸バリウム系圧電体
層903が形成されており、さらにその表面には白金上
部電極904a,904bがスパッタリングにより2分
割されて成膜される。
【0116】本実施形態においても、第1実施形態と同
様に、圧電体層903はプラズマ溶射により形成され
る。チタン酸バリウムからなる圧電体層903の溶射に
よる形成の方法について述べる。
【0117】焼結,粉砕及び造粒により、二次粒子の粒
径を5〜40μmに調整した、Ba,Ca,Tiのモル
比が0.9:0.1:1のチタン酸バリウム系組成を原
料粉末とした。
【0118】この原料粉末を用いてプラズマ溶射装置に
より、弾性体901の表面に100μmの厚さでチタン
酸バリウム系圧電体層903を形成した。溶射の際のプ
ラズマジェットガスの作動ガスとしては、アルゴン,
(アルゴン+水素)の混合ガス,(アルゴン+ヘリウ
ム)の混合ガスを用いた。
【0119】また、弾性体901に対する粉末の付着効
率を上げるため、抵抗体ヒータを用いて弾性体901の
表面温度を300〜650℃の範囲にコントロールし
た。本実施形態においても、圧電体層903の形成に伴
って弾性体901の縦振動1次モードと屈曲振動4次モ
ードとの関係にずれが生じるため、両モードの周波数を
一致させるように、圧電体層903の形成後に弾性体9
01の加工を行った。
【0120】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともにペロブスカイト結晶層の結晶化度を上昇させ
るため、第1実施形態と同様に、650℃に5時間加熱
保持する熱処理を行った。
【0121】また、白金上部電極904a,904bに
対し、配線用の銅箔を接合するために、白金上部電極9
04a,904bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧
した状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加熱
する処理を行った。さらに、圧電体層903に対するポ
ーリングは、200℃,450Vで大気中で1時間行っ
た。
【0122】本実施形態の超音波アクチュエータ905
においても、電極904aに交流電圧A相を、また電極
904bにA相とは位相が90°異なる交流電圧B相
を、それぞれ実効電圧で±10V印加したところ、弾性
体901の突起状の駆動力取出部901a,901bの
先端に楕円運動が発生し、駆動力取出部901a,90
1bを介して加圧接触する移動子(図示しない。)との
間で相対運動を発生することが確認された。
【0123】このように、第1実施形態〜第10実施形
態によれば、溶射による圧電体層形成母材の表面におけ
る酸化層の生成を恐れることなく、圧電体層の溶射によ
る成膜時に母材を溶射に最適な温度に加熱できるように
なった。
【0124】これにより、圧電体層の溶射による成膜の
際に母材温度の設定幅が拡大され、圧電体層の緻密化や
母材に対する付着強度を最大限に引き出すことができる
最適な溶射条件を選択できるようになった。
【0125】また、熱処理時においても、母材と圧電体
層との間における物質拡散を抑制するため、圧電効果の
低下を恐れることなく、充分な熱処理を行うことが可能
となった。このため、圧電効果を奏するに必要な結晶層
の生成を確実かつ充分に行うことが可能となり、圧電効
果が最大限に奏されるようになった。
【0126】さらに、母材表面に直接的に圧電体を形成
するため、母材表面に対して高融点で酸化し難い金属や
貴金属を、例えばスパッタリングやメッキ等の方法によ
り形成するような手間を要さないため、極めて生産性が
優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる圧電応用素子を、振動アクチュ
エータの一例である超音波アクチュエータに適用した第
1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】第1実施形態の超音波アクチュエータの構成要
素である、上部電極が形成された弾性体を示す平面図で
ある。
【図3】本発明の第2実施形態の超音波アクチュエータ
を示す斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態の超音波アクチュエータ
の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第4実施形態の超音波アクチュエータ
の説明図であって、図5(a)は斜視図,図5(b)は
図5(a)におけるA−A断面図,図5(c)は図5
(a)におけるB−B断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態の超音波アクチュエータ
を示す説明図であって、図6(a)及び図6(b)は、
いずれもは、超音波アクチュエータの分解斜視図であ
る。
【図7】本発明の第6実施形態のユニモルフ型アクチュ
エータを示す斜視図である。
【図8】本発明の第7実施形態のユニモルフ型メカニカ
ルフィルタ用振動子を示す斜視図である。
【図9】本発明の第8実施形態の振動角速度計を示す斜
視図である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、いずれも、
第8実施形態の圧電振動角速度計の動作原理を示す説明
図である。
【図11】第8実施形態で用いる振動子の無拘束条件を
実現するための振動子の支持形態の一例を示す説明図で
ある。
【図12】本発明の第9実施形態の超音波アクチュエー
タを示す斜視図である。
【図13】本発明の第10実施形態の超音波アクチュエ
ータを示す斜視図である。
【図14】成膜温度又は熱処理温度の違いに基づく結晶
構造の違いを示すグラフである。
【符号の説明】
1 移動子 2 摺動材 3 弾性体 3a 突起部 3b 溝部 4 圧電体層 5 白金上部電極 6 圧電素子 7 超音波アクチュエータ(圧電応用素子)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶射により電気機械変換素子が表面に形
    成された弾性体を備える圧電応用素子であって、 前記弾性体は、高融点であって酸化し難い金属,高融点
    の貴金属又はこれらの合金からなることを特徴とする圧
    電応用素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載された圧電応用素子にお
    いて、 前記弾性体は、前記電気機械変換素子の溶射時に、加熱
    処理されてなることを特徴とする圧電応用素子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載された圧電
    応用素子において、 溶射により形成された前記電気機械変換素子は、溶射後
    に熱処理されてなることを特徴とする圧電応用素子。
  4. 【請求項4】 請求項1から請求項3までのいずれか1
    項に記載された圧電応用素子において、 さらに、前記電気機械変換素子への駆動信号の入力、又
    は前記電気機械変換素子からの検出信号の出力のための
    電極が形成されることを特徴とする圧電応用素子。
  5. 【請求項5】 請求項1から請求項4までのいずれか1
    項に記載された圧電応用素子において、 前記電気機械変換素子は、鉛系強誘電体からなる圧電材
    料又は電歪材料であることを特徴とする圧電応用素子。
JP13686196A 1996-05-30 1996-05-30 圧電応用素子 Pending JPH09321364A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005340631A (ja) * 2004-05-28 2005-12-08 Sony Corp 圧電素子部品及び電子装置

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JP2005340631A (ja) * 2004-05-28 2005-12-08 Sony Corp 圧電素子部品及び電子装置

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