JPH11139974A - 組織線維化抑制剤 - Google Patents

組織線維化抑制剤

Info

Publication number
JPH11139974A
JPH11139974A JP32212597A JP32212597A JPH11139974A JP H11139974 A JPH11139974 A JP H11139974A JP 32212597 A JP32212597 A JP 32212597A JP 32212597 A JP32212597 A JP 32212597A JP H11139974 A JPH11139974 A JP H11139974A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
carbon atoms
formula
hydrogen atom
bisindolylmaleimide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP32212597A
Other languages
English (en)
Inventor
Suguru Motojima
英 本島
Takao Ando
隆雄 安藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kureha Corp filed Critical Kureha Corp
Priority to JP32212597A priority Critical patent/JPH11139974A/ja
Publication of JPH11139974A publication Critical patent/JPH11139974A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Pyrane Compounds (AREA)
  • Plural Heterocyclic Compounds (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞外マトリックスの沈着を伴う疾病の治療
又は予防に有用な組織線維化抑制剤を提供する。 【解決手段】 前記組織線維化抑制剤は、式(I)のゲ
ニステイン化合物(例えば、ゲニステイン)若しくは式
(II)のビスインドリルマレイミド化合物(例えば、ビ
スインドリルマレイミドI)又はそれらの塩を有効成分
として含有する。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、組織線維化抑制剤
に関する。本発明の組織線維化抑制剤は、糸球体腎炎、
糸球体硬化症、間質線維化、肺線維化、心不全、肝硬
変、又は血管炎の治療又は予防剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】糸球体腎炎をはじめとする進行性糸球体
疾患の組織学的特徴である糸球体硬化や間質線維化は、
細胞外マトリックスの蓄積の結果である。細胞外マトリ
ックスは、糸球体の基底膜やメサンギウム領域を構成
し、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、若しくは
ラミニンなどの糖タンパク質、又はバイグリカン若しく
はデコリンなどのプロテオグリカンなどを含む。これら
の細胞外マトリックスは、正常糸球体においてその構成
細胞の機能を制御する一方、糸球体腎炎や硬化の際には
増加し、腎炎の進展に関連する。
【0003】最近の知見によれば、メサンギウム細胞に
おけるこのような細胞外マトリックスのターンオーバー
を調節する主要な因子として、プラスミンが知られてい
る。プラスミンの生成は、プラスミノーゲンアクチベー
ターと種々のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビ
ター(plasminogen activatori
nhibitor;PAI)とのバランスにより調節さ
れている。増殖性糸球体腎炎の動物モデルから単離した
糸球体において、プラスミノーゲンアクチベーターイン
ヒビター1型(PAI−1)の細胞外マトリックスへの
蓄積が増加していることが知られており、この知見は、
PAI−1が、メサンギウム細胞における細胞外マトリ
ックスの蓄積に関して、鍵となる因子の1つであること
を示唆するものである。すなわち、PAI−1の発現量
が増加すると、プロテアーゼであるプラスミンの生成を
抑制し、その結果、細胞外マトリックスの分解が抑制さ
れるものと考えられる。換言すれば、PAI−1の発現
量を抑制することにより、細胞外マトリックスの蓄積を
抑制し、組織線維化を防止することができるものと考え
られる。従って、PAI−1の発現量を抑制することの
できる化合物は、細胞外マトリックスの沈着を伴う疾
病、例えば、糸球体腎炎、糸球体硬化症、間質線維化、
肺線維化、心不全、肝硬変、又は血管炎の治療又は予防
に有用であることが期待される。
【0004】一方、アンギオテンシンIIやTGF−β
は、それぞれ単独で、或る特定の細胞においてPAI−
1mRNAの発現を増加させることが報告されている。
また、アンギオテンシンII又はTGF−βのいずれか一
方の単独作用により誘導される前記のPAI−1mRN
Aの発現が、或る化合物により阻害されることが知られ
ている。例えば、Endocrinology,130
(3),1255−1262(1992)には、ラット
脳から調製した大グリア細胞において、アンギオテンシ
ンIIがPAI−1mRNAの発現を増加させ、その誘導
されたPAI−1mRNAの発現が、プロテインキナー
ゼCの阻害剤であるH−7[1−(5−イソキノリンス
ルホニル)−2−メチルピペラジン]の非常に高濃度で
の処理によって阻害されることが報告されている。ま
た、Mol.Cell.Biol.,12(1),26
1−265(1992)には、MvILu肺上皮細胞に
おいて、TGF−β1がPAI−1mRNAの発現を増
加させ、その誘導されたPAI−1mRNAの発現が、
前記H−7によって阻害されることが報告されている。
【0005】また、J.Clin.Invest.,
(3),1353−1362(1995)には、ラッ
ト大動脈平滑筋細胞及び血管内皮細胞において、アンギ
オテンシンIIがPAI−1mRNAの発現を増加させ、
前記血管内皮細胞においてアンギオテンシンIIにより誘
導されたPAI−1mRNAの発現が、チロシンキナー
ゼの阻害剤であるゲニステインによって部分的に阻害さ
れることが報告されている。更に、Kidney In
t.,51(3),664−671(1997)には、
ラットメサンギウム細胞において、アンギオテンシンII
がPAI−1mRNAの発現を増加させることが報告さ
れている。すなわち、これらの文献には、アンギオテン
シンII又はTGF−βのいずれか一方の単独作用により
誘導されるPAI−1mRNAの発現を阻害することの
できる化合物が開示されているにすぎない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、PAI−
1の発現量を抑制することのできる化合物を鋭意探索す
る過程において、アンギオテンシンIIからのシグナル伝
達により誘導されるラット腎メサンギウム細胞における
PAI−1mRNAの発現が、TGF−βにより相乗的
に増加すること、すなわち、アンギオテンシンIIとTG
F−βとをラット腎メサンギウム細胞に同時に作用させ
ることによってPAI−1mRNAの発現がスーパーイ
ンデュース(superinduce)されることを新
たに見出した。このようなアンギオテンシンIIとTGF
−βとの同時作用により誘導されるPAI−1mRNA
の発現は、前記の各文献で採用した実験系においてアン
ギオテンシンII又はTGF−βのいずれか一方の単独作
用により誘導されるPAI−1mRNAの発現に比べ
て、生体内の環境により近いものと考えられる。
【0007】また、本発明者は、アンギオテンシンIIと
TGF−βとの同時作用によるPAI−1mRNAのス
ーパーインダクション(superinductio
n)だけでなく、アンギオテンシンII又はTGF−βの
いずれか一方の単独作用によるPAI−1mRNAの誘
導をも、阻害する作用を有する化合物が存在することを
新たに見出した。このような化合物は、前記各文献に報
告されている阻害剤よりも、生体内における細胞外マト
リックスの蓄積を有効に抑制することができるものと期
待される。本発明はこうした知見によるものである。
【0008】従って、本発明の課題は、細胞外マトリッ
クスの沈着を伴う疾病、例えば、糸球体腎炎、糸球体硬
化症、間質線維化、肺線維化、心不全、肝硬変、又は血
管炎の治療又は予防剤、より具体的には、組織線維化抑
制剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題は、本発明によ
る、式(I):
【化6】 [式中、4−R1 −3−R6 置換フェニル基は、クロモ
ン環の2位又は3位に結合し、R1 は、−ORa 又はア
ミノ基であり、R6 は、−ORe 又は水素原子であり、
a及びRe は、それぞれ独立して式(a):
【化7】 で表される基、炭素数1〜4のアルキル基、又は水素原
子であり、Rb は、水素原子、又は炭素数1〜4のアル
キル基であるか、あるいは、置換基として水酸基、カル
ボキシル基、カルバモイル基、メルカプト基、メチルチ
オ基、アミノ基、グアニジノ基、イミダゾリル基、フェ
ニル基、ヒドロキシフェニル基、インドリル基、式
(b):
【化8】 で表される基、及び式(c):
【化9】 で表される基からなる群から選んだ基1つ又はそれ以上
で置換されている炭素数1〜4のアルキル基であり、R
c 及びRd は、それぞれ独立して、水素原子又はアミノ
保護基であるか、あるいは、Rb とRc とが一緒になっ
て、トリメチレン基、又は水酸基で置換されているトリ
メチレン基を形成し、Rd は水素原子又はアミノ保護基
であり、R2 、R3 、R4 、及びR5 は、それぞれ独立
して、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ
基、前記式(a)で表される基、又はヘキソースの1位
に結合している水酸基の水素原子を除いたヘキソース残
基である]で表されるゲニステイン化合物、若しくはそ
の薬剤学的に許容することのできる塩、又は式(II):
【化10】 [式中、R11は、水素原子又はアセチル基であり、R12
及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜
4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、炭素
数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のアミ
ノアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基(各アル
キル部分の炭素数は、それぞれ独立して1〜4であ
る)、ジアルキルアミノアルキル基(各アルキル部分の
炭素数は、それぞれ独立して1〜4である)、又は−
(CH2 n−R14であり、R14は、炭素数1〜4のア
ルキル基でN−置換されているピロリジニル基、又はピ
ロリジニル基であり、nは1〜6の整数であるか、ある
いは、R12とR13とは一緒になって、式: −X−W−Y− で表される基を形成し、Wは、−O−、−S−、−SO
−、又は−SO2 −であり、X及びYは、それぞれ独立
して、炭素数1〜4のアルキレン基、又は置換された炭
素数1〜4のアルキレン基である]で表されるビスイン
ドリルマレイミド化合物、若しくはその薬剤学的に許容
することのできる塩を有効成分として含有することを特
徴とする、組織線維化抑制剤によって解決することがで
きる。
【0010】また、本発明は、前記の式(I)で表され
るゲニステイン化合物若しくはその薬剤学的に許容する
ことのできる塩、又は前記の式(II)で表されるビスイ
ンドリルマレイミド化合物若しくはその薬剤学的に許容
することのできる塩を有効成分として含有することを特
徴とする、糸球体腎炎、糸球体硬化症、間質線維化、肺
線維化、心不全、肝硬変、又は血管炎の治療又は予防剤
にも関する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「炭素数1〜4のアルキル基」に
は、直鎖状及び分枝状の炭素数1〜4のアルキル基が含
まれ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソ
プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブ
チル基などを挙げることができる。本明細書において、
「炭素数1〜4のアルコキシ基」には、直鎖状及び分枝
状の炭素数1〜4のアルコキシ基が含まれ、例えば、メ
トキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ
基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、又はt−ブトキ
シ基などを挙げることができる。
【0012】本明細書において、「炭素数1〜4のアル
キレン基」には、直鎖状及び分枝状の炭素数1〜4のア
ルキレン基が含まれ、例えば、メチレン基、エチレン
基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、s
ec−ブチレン基、又はt−ブチレン基などを挙げるこ
とができる。
【0013】本明細書において、「置換された炭素数1
〜4のアルキレン基」とは、例えば、式(d):
【化11】 [式中、Zは−(CH2 r −又は−(CH2 s −O
−(CH2 t −であり、R21は水酸基、メルカプト
基、炭素数1〜4のアルキル基、 フェニル基、ベンジ
ル基、フェネチル基、フェニルアミノ基、又は−NR22
23であり、R22は水素原子又は炭素数1〜4のアルキ
ル基であり、R23は水素原子、炭素数1〜4のアルキル
基、又はベンジル基であり、又はR22とR23とはそれら
が結合している窒素原子と一緒になって飽和又は不飽和
の5員環又は6員環を形成し、r、s、及びtは、それ
ぞれ独立して0、1又は2であり、p及びqは、それぞ
れ独立して0、1、2、又は3であるが、但し、pとq
との和が0、1、2、又は3であるものとする]で表さ
れる基である。
【0014】R22とR23とそれらが結合している窒素原
子とによって形成される飽和又は不飽和の5員環又は6
員環は、例えば、1−ピロリル基、1−ピロリジニル
基、ピリジノ基、又はピペリジノ基である。前記の置換
された炭素数1〜4のアルキレン基は、前記式(d)に
おいて、Zが−CH2 −であり、R21が−NH2 又は−
N(CH3 2 であり、p及びqは、それぞれ独立して
2又は3であるか、あるいはp又はqの一方が0で他方
が2又は3の基であることが好ましく、Zが−CH2
であり、R21が−N(CH32であり 、p又はqの一
方が0で他方が2の基であるのがより好ましい。
【0015】本明細書において、「ハロアルキル基」
は、ハロゲン原子1個又はそれ以上、好ましくはハロゲ
ン原子1〜3個で置換されている炭素数1〜4のアルキ
ル基を意味し、例えば、CH2 Cl、CF3 、CH2
3 、又はCH2 (CF2 2CF3 などを挙げること
ができる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素
原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などを挙げ
ることができる。
【0016】本明細書において、「ピロリジニル基」に
は、2−ピロリジニル基及び3−ピロリジニル基が含ま
れ、「炭素数1〜4のアルキル基でN−置換されている
ピロリジニル基」には、炭素数1〜4のアルキル基でN
−置換されている2−ピロリジニル基[すなわち、N−
アルキル−ピロリジン−2−イル基(アルキル部分の炭
素数は1〜4である)]及び炭素数1〜4のアルキル基
でN−置換されている3−ピロリジニル基[すなわち、
N−アルキル−ピロリジン−3−イル基(アルキル部分
の炭素数は1〜4である)]が含まれる。
【0017】本明細書において、「ヘキソース残基」と
は、ヘキソースの1位に結合している水酸基の水素原子
を除いた残基である。前記ヘキソースとしては、例え
ば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノー
ス、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プ
シコース、フルクトース、ソルボース、又はタガトース
などを挙げることができる。ヘキソースは、D−体又は
L−体のいずれでもあってもよく、また、ピラノース型
又はフラノース型のいずれであってもよい。好ましいヘ
キソースは、グルコースである。前記ヘキソース残基と
クロモン環とは、グリコシド結合で結合する。グリコシ
ド1位の立体配置は、α−アノマー又はβ−アノマーの
いずれであってもよい。
【0018】前記式(a)で表されるアミノ酸残基に
は、L体及びD体の両方が含まれる。前記式(a)で表
されるアミノ酸残基は、好ましくはアラニン、バリン、
ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニ
ン、トリプトファン、プロリン、グリシン、セリン、ト
レオニン、システイン、シスチン、チロシン、アスパラ
ギン、グルタミン、リシン、ヒスチジン、アルギニン、
アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリシン、ヒ
ドロキシプロリン、ノルロイシン、チロキシン、ヒドロ
キシグルタミン酸、若しくはオルニチン、又はそのα−
アミノ基がアミノ保護基で保護されているこれらのアミ
ノ酸から誘導することができ、より好ましくはタンパク
質構成アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシ
ン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、ト
リプトファン、プロリン、グリシン、セリン、トレオニ
ン、システイン、シスチン、チロシン、アスパラギン、
グルタミン、リシン、ヒスチジン、アルギニン、アスパ
ラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリシン、若しくは
ヒドロキシプロリン、又はそのα−アミノ基がアミノ保
護基で保護されているこれらのアミノ酸から誘導するこ
とができ、特に好ましくは疎水性アミノ酸、例えば、ア
ラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニ
ン、フェニルアラニン、若しくはトリプトファン、また
はそのα−アミノ基がアミノ保護基で保護されているこ
れらのアミノ酸から誘導することができる。前記アミノ
保護基は特に限定されるものではなく、公知のアミノ保
護基、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブト
キシカルボニル基、又はフタルイミド基などを挙げるこ
とができる。前記式(I)で表されるゲニステイン化合
物におけるRa は、前記式(a)で表される基、すなわ
ち、アミノ酸のα−カルボキシル基の水酸基を除いたア
ミノ酸残基、炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメ
チル基又はエチル基)、又は水素原子であることがで
き、水素原子であることが好ましい。
【0019】本発明による組織線維化抑制剤は、有効成
分として、前記式(I)で表されるゲニステイン化合
物、若しくはその薬剤学的に許容することのできる塩、
又は前記式(II)で表されるビスインドリルマレイミド
化合物、若しくはその薬剤学的に許容することのできる
塩を含有する。本発明による組織線維化抑制剤の有効成
分として用いることのできる前記式(I)で表されるゲ
ニステイン化合物としては、R1 が、水酸基又はアミノ
基であり、R2 及びR3 が、それぞれ独立して、水素原
子又は水酸基であり、R4 が、水素原子、水酸基、又は
ヘキソース残基であり、R5 が、水素原子、又は炭素数
1〜4のアルコキシ基(より好ましくはメトキシ基)で
あり、R6 が、水酸基又は水素原子である、式(I)で
表されるゲニステイン化合物が好ましく、更に、クロモ
ン環の2位又は3位に結合している4−置換フェニル基
が、クロモン環の2位に結合している4−アミノフェニ
ル基、又はクロモン環の3位に結合している4−ヒドロ
キシフェニル基であることがより好ましい。
【0020】本発明による組織線維化抑制剤の有効成分
として用いることのできる前記式(I)で表されるゲニ
ステイン化合物としては、ゲニステイン(genist
ein;4’,5,7−トリヒドロキシイソフラボ
ン)、アミノゲニステイン(aminogeniste
in;4’−アミノ−6−ヒドロキシフラボン)、ダイ
ドゼイン(daidzein;4’,7−ジヒドロキシ
イソフラボン)、又はψ−テクトリゲニン(psi−t
ectorigenin;8−メトキシゲニステイン)
が更に好ましく、ゲニステインが特に好ましい。
【0021】本発明による組織線維化抑制剤の有効成分
として用いることのできる前記式(II)で表されるビス
インドリルマレイミド化合物としては、R11が水素原子
であり、R12及びR13が、それぞれ独立して、水素原
子、炭素数1〜4のアミノアルキル基(より好ましくは
3−アミノプロピル基)、炭素数1〜4のアルキル基2
個で置換されているアミノ基で置換されている炭素数1
〜4のアルキル基(より好ましくは3−ジメチルアミノ
プロピル基)、又は−(CH2 n −R14[より好まし
くは2−(1−メチル−ピロリジン−2−イル)エチル
基]である、式(II)で表されるビスインドリルマレイ
ミド化合物が好ましく、R11及びR13が、共に水素原子
であり、R12が、水素原子、炭素数1〜4のアミノアル
キル基(より好ましくは3−アミノプロピル基)、炭素
数1〜4のアルキル基2個で置換されているアミノ基で
置換されている炭素数1〜4のアルキル基(より好まし
くは3−ジメチルアミノプロピル基)、又は−(C
2 n −R14[より好ましくは2−(1−メチル−ピ
ロリジン−2−イル)エチル基]である、式(II)で表
されるビスインドリルマレイミド化合物がより好まし
い。
【0022】本発明による組織線維化抑制剤の有効成分
として用いることのできる前記式(II)で表されるビス
インドリルマレイミド化合物としては、ビスインドリル
マレイミドI[すなわち、2−[1−(3−ジメチルア
ミノプロピル)−1H−インドール−3−イル]−3−
(1H−インドール−3−イル)マレイミド]、ビスイ
ンドリルマレイミドII[すなわち、2−[1−[2−
(1−メチルピロリジノ)エチル]−1H−インドール
−3−イル]−3−(1H−インドール−3−イル)マ
レイミド]、ビスインドリルマレイミドIII [すなわ
ち、2−[1−(3−アミノプロピル)−1H−インド
ール−3−イル]−3−(1H−インドール−3−イ
ル)マレイミド]、又はビスインドリルマレイミドIV
[すなわち、2,3−ビス(1H−インドール−3−イ
ル)マレイミド]が更に好ましく、ビスインドリルマレ
イミドIが特に好ましい。
【0023】本発明による組織線維化抑制剤の有効成分
として用いることのできる前記式(II)で表されるビス
インドリルマレイミド化合物としては、(R)−3,4
−[(N,N’−1,1’−((2’’−エトキシ)−
3’’’(O)−4’’’−(N,N−ジメチルアミ
ノ)−ブタン)−ビス−(3,3’−インドリル)]−
1(H)−ピロール−2,5−ジオン、又は(S)−
3,4−[(N,N’−1,1’−((2’’−エトキ
シ)−3’’’(O)−4’’’−(N,N−ジメチル
アミノ)−ブタン)−ビス−(3,3’−インドリ
ル)]−1(H)−ピロール−2,5−ジオンを好適に
用いることもできる。
【0024】前記式(I)で表されるゲニステイン化合
物、又は前記式(II)で表されるビスインドリルマレイ
ミド化合物には、各種の立体異性体が含まれ、それらの
任意の純粋の立体異性体又はそれらの混合物を、本発明
による組織線維化抑制剤の有効成分として用いることが
できる。
【0025】本発明による組織線維化抑制剤の有効成分
として用いることのできる前記式(I)で表されるゲニ
ステイン化合物、又は前記式(II)で表されるビスイン
ドリルマレイミド化合物は、公知化合物であり、それ自
体公知の方法によって調製することもできるし、あるい
は、市販品を用いることもできる。
【0026】前記式(I)で表されるゲニステイン化合
物の薬剤学的に許容される塩、又は前記式(II)で表さ
れるビスインドリルマレイミド化合物の薬剤学的に許容
される塩には、例えば、有機酸若しくは無機酸との塩が
含まれ、例えば、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸
塩、又はp−トルエンスルホン酸、更には、シュウ酸、
マロン酸、コハク酸、マレイン酸、又はフマル酸などの
ジカルボン酸との塩、更に、酢酸、プロピオン酸、又は
酪酸などのモノカルボン酸との塩などを挙げることがで
きる。
【0027】生体内で、前記式(I)で表されるゲニス
テイン化合物、若しくはその薬剤学的に許容することの
できる塩、又は前記式(II)で表されるビスインドリル
マレイミド化合物、若しくはその薬剤学的に許容するこ
とのできる塩に容易に変換することのできる誘導体、す
なわち、プロドラッグも本発明の有効成分として使用す
ることができる。適当なプロドラッグの選択及び製造に
一般に用いられる方法は、例えば、「デザインオブプロ
ドラッグス」(H.バンガード編集、エルセビア、19
85年:”Design of Prodrugs”,
ed.H.Bundgaard,Elsevier,1
985)に記載されている。
【0028】本発明による組織線維化抑制剤は、前記式
(I)で表されるゲニステイン化合物、若しくはその薬
剤学的に許容することのできる塩、又は前記式(II)で
表されるビスインドリルマレイミド化合物、若しくはそ
の薬剤学的に許容することのできる塩を、それ単独で、
又は好ましくは薬剤学的若しくは獣医学的に許容するこ
とのできる通常の担体と共に、動物、好ましくは哺乳動
物(特にはヒト)に投与することができる。投与剤型と
しては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒
剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロ
ップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射
剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若
しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。こ
れらの経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリ
ウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、
マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリ
ン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシ
チン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸
マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネ
シウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなど
の賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動
性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安
定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、
常法に従って製造することができる。
【0029】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなか
で、注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の
調製においては、有効成分としての前記式(I)で表さ
れるゲニステイン化合物、若しくはその薬剤学的に許容
することのできる塩、又は前記式(II)で表されるビス
インドリルマレイミド化合物、若しくはその薬剤学的に
許容することのできる塩の他に、例えば、生理食塩水若
しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪
酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナ
トリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐
剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることがで
きる。また、本発明による組織線維化抑制剤は、徐放性
ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与し
てもよい。例えば、本発明による組織線維化抑制剤をエ
チレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、
このペレットを治療又は予防すべき組織中に外科的に移
植することができる。
【0030】本発明による組織線維化抑制剤は、これに
限定されるものではないが、前記式(I)で表されるゲ
ニステイン化合物、若しくはその薬剤学的に許容するこ
とのできる塩、又は前記式(II)で表されるビスインド
リルマレイミド化合物、若しくはその薬剤学的に許容す
ることのできる塩を、0.01〜99重量%、好ましく
は0.1〜80重量%の量で含有することができる。本
発明による組織線維化抑制剤を用いる場合の投与量は、
病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又
は投与方法などにより異なり、特に制限はないが、通
常、1個体当り、前記式(I)で表されるゲニステイン
化合物、若しくはその薬剤学的に許容することのできる
塩、又は前記式(II)で表されるビスインドリルマレイ
ミド化合物、若しくはその薬剤学的に許容することので
きる塩0.1mg〜1g程度を、1日1〜4回程度にわ
けて、経口的に又は非経口的に投与する。更に、形態も
医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例え
ば、機能性食品や健康食品、又は飼料として飲食物の形
で与えることも可能である。
【0031】これまで説明したように、本発明による組
織線維化抑制剤に含有される前記式(I)で表されるゲ
ニステイン化合物、若しくはその薬剤学的に許容するこ
とのできる塩、又は前記式(II)で表されるビスインド
リルマレイミド化合物、若しくはその薬剤学的に許容す
ることのできる塩は、細胞内のPAI−1mRNAの発
現を抑制する作用がある。従って、本発明による組織線
維化抑制剤の有効成分として使用することのできる前記
式(I)で表されるゲニステイン化合物、若しくはその
薬剤学的に許容することのできる塩、又は前記式(II)
で表されるビスインドリルマレイミド化合物、若しくは
その薬剤学的に許容することのできる塩は、PAI−1
発現抑制剤の有効成分としても使用することができる。
【0032】前記式(I)で表されるゲニステイン化合
物、若しくはその薬剤学的に許容することのできる塩、
又は前記式(II)で表されるビスインドリルマレイミド
化合物、若しくはその薬剤学的に許容することのできる
塩を投与すると、細胞内でのPAI−1の発現量が減少
し、その結果、プロテアーゼであるプラスミンの発現量
が増加し、細胞外マトリックスの分解が促進されるの
で、細胞外マトリックスの蓄積を抑制することができ
る。前記式(I)で表されるゲニステイン化合物、若し
くはその薬剤学的に許容することのできる塩、又は前記
式(II)で表されるビスインドリルマレイミド化合物、
若しくはその薬剤学的に許容することのできる塩は、細
胞外マトリックスの沈着を伴う疾病、例えば、糸球体腎
炎、糸球体硬化症、間質線維化、肺線維化、心不全、肝
硬変、又は血管炎の治療の治療又は予防に使用すること
ができる。
【0033】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。
【実施例1】本実施例においては、以下の実施例で使用
するラット腎メサンギウム細胞を調製した。7週令の雄
性SD(Sprague−Dawley)ラットから腎
皮質を摘出し、ミンチした後に、一連のふるい操作にか
けることによって、糸球体を単離した。単離した糸球体
を1mg/mlコラゲナーゼで30分間処理した後に、
100mmプラスチック組織培養皿に移し、17%ウシ
胎児血清、0.1U/mlインシュリン、及び抗生物質
(50単位/mlペニシリン及び50μg/mlストレ
プトマイシン)を含有するRPMI−1640培地中で
培養した。糸球体から増殖してくるメサンギウム細胞を
前記培地中で継代培養し、6〜9継代の細胞を以下の実
施例で使用した。
【0034】前記の各継代のラットメサンギウム細胞
が、アンギオテンシンII受容体を発現していることは、
以下に説明する 125I−アンギオテンシンIIバインディ
ングアッセイにより確認した。すなわち、ラットメサン
ギウム細胞を、1×105 細胞/ウェルになるように2
4ウェルカルチャープレートに入れ、50mMトリス−
HCl(pH7.5)、2.5mM−MgCl2 、0.
1%ウシ血清アルブミン(BSA)、100μMバシト
ラシン、及び50pM[ 125I]アンギオテンシンII
(シグマ社)を含有する緩衝液中で37℃で1時間イン
キュベートした。続いて、氷冷したリン酸緩衝溶液(p
hosphate−buffered saline;
PBS)で細胞を2度洗浄し、0.1%ドデシル硫酸ナ
トリウム(SDS)含有0.25N−NaOH中に溶解
した。得られたライセート中の放射能の強さをガンマカ
ウンターを用いて測定することによって、ラットメサン
ギウム細胞におけるアンギオテンシンII受容体の発現量
を決定した。なお、非特異的結合は、10μM非放射性
アンギオテンシンIIの存在下において決定した。
【0035】
【実施例2】本実施例においては、アンギオテンシンII
により誘導されるプラスミノーゲンアクチベーターイン
ヒビター1型(PAI−1)のmRNA発現(以下、ア
ンギオテンシンII誘導性PAI−1mRNA発現と称す
ることがある)におけるビスインドリルマレイミドIの
阻害効果を確認した。前記実施例1で調製したラットメ
サンギウム細胞1×106 個を、0.1U/mlインシ
ュリン及び抗生物質(50単位/mlペニシリン及び5
0μg/mlストレプトマイシン)を含有するRPMI
−1640培地5ml中で24時間インキュベートする
ことによって静止状態にした。続いて、濃度が100n
M又は1μMになるようにビスインドリルマレイミドI
(カルビオケム社)を添加して30分間インキュベート
した後に、濃度が100nMになるようにアンギオテン
シンII(シグマ社)を添加し、更に6時間インキュベー
トした。
【0036】培地を除去し、ハンクス平衡塩で細胞を洗
浄した後、市販のRNA単離用溶液(ISOGEN;和
光純薬社)を用いて、前記細胞から全RNAを調製し
た。全RNAの調製操作は、添付の取り扱い説明書に従
って実施したが、その概要は以下のとおりである。すな
わち、前記RNA単離用溶液1mlを加えて細胞を溶解
した後に、そのライセートをチューブに移し、クロロホ
ルム抽出及び遠心操作を実施し、水相を分離した。イソ
プロパノールを用いて、水相中のRNAを沈殿させ、沈
殿したRNAを75%エタノールで洗浄した後に、ジエ
チルピロカーボネート(DEPC)処理した水に再懸濁
した。
【0037】得られた全RNAを用いて、以下に説明す
るノーザンブロット法により、ラットメサンギウム細胞
中のアンギオテンシンII誘導性PAI−1mRNAの発
現量を確認した。すなわち、全RNA(約10〜20μ
g)を1%アガロースホルムアルデヒドゲルを用いて電
気泳動した後に、ゲルからナイロン膜(Hybond
N+ ナイロンメンブレン;アマシャム社)にRNAを
転写し、紫外線照射架橋により固定化した。4×SSC
P、1×Denhard’t、1%SDS、50%ホル
ムアミド、及び100μg/mlサケ精子DNAを含有
する溶液中で、前記ナイロン膜を42℃で3時間プレハ
イブリダイズさせた。なお、1×SSCPは、0.12
M−NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、及び
0.015M−Na2 HPO4 ,0.005M−NaH
2 PO4 含有水溶液であり、1×Denhard’t
は、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロ
リドン、及び0.02%ウシ血清アルブミン含有溶液で
ある。
【0038】ハイブリダイゼーションは、4×SSC
P、1×Denhard’t、1%SDS、5%硫酸デ
キストラン、50%ホルムアミド、及び100μg/m
lサケ精子DNAと、変性させたジゴキシゲニン(DI
G)標識化プローブとを含有する溶液中で42℃で16
時間実施した。なお、PAI−1mRNAの検出用プロ
ーブとしては、第345番目の塩基〜第1221番目の
塩基からなる配列を含むラットPAI−1cDNA断片
を使用し、β−アクチンmRNAの検出用プローブとし
ては、第954番目の塩基〜第1428番目の塩基から
なるラットβ−アクチンcDNA断片を使用した。ま
た、これらのcDNA断片の標識化は、市販のDIG標
識化キット(DIG high prime;ベーリン
ガーマンハイム社)を用いて、添付の取り扱い説明書に
従って実施した。ハイブリダイゼーションを行なったナ
イロン膜を、0.1%SDS含有1×SSC(0.15
M−NaCl及び0.015Mクエン酸ナトリウム含有
水溶液)を用いて室温で洗浄(15分間×2回)し、更
に、0.1%SDS含有0.2×SSCを用いて42℃
で洗浄(15分間×2回)した。続いて、DIG検出キ
ット(ベーリンガーマンハイム社)を用いて、添付の取
扱説明書に従って、ハイブリダイズしたプローブを検出
した。
【0039】比較例として、ビスインドリルマレイミド
Iを添加しないこと以外は、前記操作を繰り返した。ま
た、コントロールとして、ビスインドリルマレイミドI
及びアンギオテンシンIIを添加しないこと以外は、前記
操作を繰り返した。それらの結果を図1及び図2に示
す。図1は、ノーザンブロット法による電気泳動の結果
を示す図面である。図2は、デンシトメトリー分析(d
ensitometoric analysis)、す
なわち、DIG検出キットにより検出された各ブロット
をデンシトメーターにより数値化し、得られた数値をβ
−アクチンmRNA量を考慮して補正した結果を示すグ
ラフであり、結果(相対的mRNA発現量)を平均値±
標準偏差(n=4)で示す。
【0040】図1及び図2において、レーン1は、ビス
インドリルマレイミドI及びアンギオテンシンIIを添加
しない場合(コントロール)の結果を示し;レーン2
は、100nMアンギオテンシンII添加及びビスインド
リルマレイミドI無添加の場合の結果を示し;レーン3
は、100nMアンギオテンシンII添加及び100nM
ビスインドリルマレイミドI添加の場合の結果を示し;
レーン4は、100nMアンギオテンシンII添加及び1
μMビスインドリルマレイミドI添加の場合の結果を示
す。
【0041】比較例の結果は、図1及び図2に示すよう
に、アンギオテンシンII(100nM)が、ラットメサ
ンギウム細胞におけるPAI−1mRNAの発現を誘導
することを示している(コントロールに比べて4.6±
1.1倍)。それに対して、実施例の結果は、ビスイン
ドリルマレイミドIが、アンギオテンシンII誘導性PA
I−1mRNA発現を、投与量依存的に阻害することを
示している。例えば、アンギオテンシンII(100n
M)とビスインドリルマレイミドI(1μM)とで同時
処理した細胞におけるPAI−1mRNAの発現量と、
アンギオテンシンII未処理細胞(すなわち、コントロー
ル)におけるPAI−1mRNAの発現量とは、ほぼ同
じ程度であった。
【0042】
【実施例3】本実施例においては、アンギオテンシンII
誘導性PAI−1mRNA発現におけるゲニステインの
阻害効果を確認した。本実施例では、ビスインドリルマ
レイミドIを添加する代わりに、ゲニステイン(カルビ
オケム社)(濃度=100μM)を添加すること以外
は、前記実施例2に記載の操作を繰り返した。また、比
較例として、ビスインドリルマレイミドIを添加しない
こと以外は、前記実施例2に記載の操作を繰り返した。
また、コントロールとして、前記実施例2に記載のコン
トロールと同じ操作を繰り返した。実施例、比較例、及
びコントロールのそれぞれについて、2回ずつ操作を行
ない、その結果を図3に示す。図3は、ノーザンブロッ
ト法による電気泳動の結果を示す図面である。図3にお
いて、レーン1及びレーン2は、ゲニステイン及びアン
ギオテンシンIIを添加しない場合(コントロール)の結
果を示し;レーン3及びレーン4は、100nMアンギ
オテンシンII添加及びゲニステイン無添加の場合の結果
を示し;レーン5及びレーン6は、100nMアンギオ
テンシンII添加及び100nMゲニステイン添加の場合
の結果を示す。図3に示すように、ゲニステイン(10
0μM)は、アンギオテンシンII誘導性PAI−1mR
NA発現を阻害した。
【0043】
【実施例4】本実施例においては、アンギオテンシンII
及びTGF−β1により誘導されるPAI−1mRNA
発現におけるビスインドリルマレイミドI又はゲニステ
インの阻害効果を確認した。前記実施例1で調製したラ
ットメサンギウム細胞1×106 個を、0.1U/ml
インシュリン及び抗生物質(50単位/mlペニシリン
及び50μg/mlストレプトマイシン)を含有するR
PMI−1640培地5ml中で24時間インキュベー
トすることによって静止状態にした。続いて、ビスイン
ドリルマレイミドI(1μM)又はゲニステイン(濃度
=100μM)を添加して30分間インキュベートした
後に、アンギオテンシンII(濃度=100nM)及びヒ
ト組換えTGF−β1(濃度=10ng/ml)を添加
し、更に6時間インキュベートした。続いて、前記実施
例2に記載の操作を繰り返した。
【0044】また、比較例として、ビスインドリルマレ
イミドI(1μM)及びゲニステインのいずれも添加し
ないこと、そして、アンギオテンシンII及びヒト組換え
TGF−β1を添加する代わりに、アンギオテンシンII
(濃度=100nM)又はヒト組換えTGF−β1(濃
度=10ng/ml)のいずれか一方を添加し、もう一
方を添加しないこと以外は、前記の本実施例の操作を繰
り返した。また、別の比較例として、ビスインドリルマ
レイミドI(1μM)及びゲニステインのいずれも添加
しないこと以外は、前記の本実施例の操作を繰り返し
た。更に、コントロールとして、前記実施例2に記載の
コントロールと同じ操作を繰り返した。
【0045】結果を図4及び図5に示す。図4は、ノー
ザンブロット法による電気泳動の結果を示す図面であ
る。図5は、デンシトメトリー分析、すなわち、DIG
検出キットにより検出された各ブロットをデンシトメー
ターにより数値化し、得られた数値をβ−アクチンmR
NA量を考慮して補正した結果を示すグラフであり、結
果(相対的mRNA発現量)を平均値±標準偏差(n=
4)で示す。
【0046】図4及び図5において、レーン1は、コン
トロール(すなわち、アンギオテンシンII、ヒト組換え
TGF−β1、ビスインドリルマレイミドI、及びゲニ
ステイン無添加の場合)の結果を示し;レーン2は、1
00nMアンギオテンシンII添加、並びにヒト組換えT
GF−β1、ビスインドリルマレイミドI、及びゲニス
テイン無添加の場合の結果を示し;レーン3は、10n
g/mlヒト組換えTGF−β1添加、並びにアンギオ
テンシンII、ビスインドリルマレイミドI、及びゲニス
テイン無添加の場合の結果を示し;レーン4は、100
nMアンギオテンシンII及び10ng/mlヒト組換え
TGF−β1添加、並びにビスインドリルマレイミド及
びゲニステイン無添加の場合の結果を示し;レーン5
は、100nMアンギオテンシンII、10ng/mlヒ
ト組換えTGF−β1、及びビスインドリルマレイミド
I添加、並びにゲニステイン無添加の場合の結果を示
し;レーン6は、100nMアンギオテンシンII、10
ng/mlヒト組換えTGF−β1、及びゲニステイン
添加、並びにビスインドリルマレイミド無添加の場合の
結果を示す。
【0047】図4及び図5に示すように、TGF−β1
単独ではPAI−1の発現にほとんど作用しないが、ア
ンギオテンシンIIとの共存下ではTGF−β1はアンギ
オテンシンIIによるPAI−1mRNAの誘導を更に増
強した。デンシトメトリー分析では、このTGF−β1
の効果は、アンギオテンシンIIによるPAI−1mRN
Aの誘導を更に1.9±0.5倍増強した。ビスインド
リルマレイミドI(1μM)又はゲニステイン(濃度=
100μM)のいずれの化合物も、アンギオテンシンII
及びTGF−β1により誘導されるPAI−1mRNA
の発現を阻害した。しかも、ビスインドリルマレイミド
I(1μM)又はゲニステイン(濃度=100μM)の
いずれかの化合物とアンギオテンシンII及びTGF−β
1とで処理した細胞におけるPAI−1mRNAの発現
量と、アンギオテンシンII未処理細胞(すなわち、コン
トロール)におけるPAI−1mRNAの発現量とは、
ほぼ同じ程度であった。
【0048】
【発明の効果】本発明による組織線維化抑制剤によれ
ば、細胞内でのPAI−1mRNAの発現を抑制し、P
AI−1の生合成を減少させることができる。その結
果、プロテアーゼであるプラスミンの発現量を増加さ
せ、細胞外マトリックスの分解を促進することができる
と考えられるので、細胞外マトリックスの蓄積を抑制す
ることができる。このことにより、組織線維化の進行を
抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アンギオテンシンII誘導性PAI−1mRNA
発現におけるビスインドリルマレイミドIの阻害効果を
確認するために実施した、ノーザンブロット法による電
気泳動の結果を示す図面である。
【図2】図1に示す各ブロットのデンシトメトリー分析
の結果を示すグラフである。
【図3】アンギオテンシンII誘導性PAI−1mRNA
発現におけるゲニステインの阻害効果を確認するために
実施した、ノーザンブロット法による電気泳動の結果を
示す図面である。
【図4】アンギオテンシンII及びTGF−β1により誘
導されるPAI−1mRNA発現におけるビスインドリ
ルマレイミドI又はゲニステインの阻害効果を確認する
ために実施した、ノーザンブロット法による電気泳動の
結果を示す図面である。
【図5】図4に示す各ブロットのデンシトメトリー分析
の結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07D 403/14 207 C07D 403/14 207

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I): 【化1】 [式中、4−R1 −3−R6 置換フェニル基は、クロモ
    ン環の2位又は3位に結合し、R1 は、−ORa 又はア
    ミノ基であり、R6 は、−ORe 又は水素原子であり、
    a及びRe は、それぞれ独立して式(a): 【化2】 で表される基、炭素数1〜4のアルキル基、又は水素原
    子であり、Rb は、水素原子、又は炭素数1〜4のアル
    キル基であるか、あるいは、置換基として水酸基、カル
    ボキシル基、カルバモイル基、メルカプト基、メチルチ
    オ基、アミノ基、グアニジノ基、イミダゾリル基、フェ
    ニル基、ヒドロキシフェニル基、インドリル基、式
    (b): 【化3】 で表される基、及び式(c): 【化4】 で表される基からなる群から選んだ基1つ又はそれ以上
    で置換されている炭素数1〜4のアルキル基であり、R
    c 及びRd は、それぞれ独立して、水素原子又はアミノ
    保護基であるか、あるいは、Rb とRc とが一緒になっ
    て、トリメチレン基、又は水酸基で置換されているトリ
    メチレン基を形成し、Rd は水素原子又はアミノ保護基
    であり、R2 、R3 、R4 、及びR5 は、それぞれ独立
    して、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ
    基、前記式(a)で表される基、又はヘキソースの1位
    に結合している水酸基の水素原子を除いたヘキソース残
    基である]で表されるゲニステイン化合物、若しくはそ
    の薬剤学的に許容することのできる塩、又は式(II): 【化5】 [式中、R11は、水素原子又はアセチル基であり、R12
    及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜
    4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、炭素
    数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のアミ
    ノアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基(各アル
    キル部分の炭素数は、それぞれ独立して1〜4であ
    る)、ジアルキルアミノアルキル基(各アルキル部分の
    炭素数は、それぞれ独立して1〜4である)、又は−
    (CH2 n−R14であり、R14は、炭素数1〜4のア
    ルキル基でN−置換されているピロリジニル基、又はピ
    ロリジニル基であり、nは1〜6の整数であるか、ある
    いは、R12とR13とは一緒になって、式: −X−W−Y− で表される基を形成し、Wは、−O−、−S−、−SO
    −、又は−SO2 −であり、X及びYは、それぞれ独立
    して、炭素数1〜4のアルキレン基、又は置換された炭
    素数1〜4のアルキレン基である]で表されるビスイン
    ドリルマレイミド化合物、若しくはその薬剤学的に許容
    することのできる塩を有効成分として含有することを特
    徴とする、組織線維化抑制剤。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のゲニステイン化合物若
    しくはその薬剤学的に許容することのできる塩、又はビ
    スインドリルマレイミド化合物若しくはその薬剤学的に
    許容することのできる塩を有効成分として含有すること
    を特徴とする、糸球体腎炎、糸球体硬化症、間質線維
    化、肺線維化、心不全、肝硬変、又は血管炎の治療又は
    予防剤。
JP32212597A 1997-11-07 1997-11-07 組織線維化抑制剤 Pending JPH11139974A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32212597A JPH11139974A (ja) 1997-11-07 1997-11-07 組織線維化抑制剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32212597A JPH11139974A (ja) 1997-11-07 1997-11-07 組織線維化抑制剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11139974A true JPH11139974A (ja) 1999-05-25

Family

ID=18140214

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32212597A Pending JPH11139974A (ja) 1997-11-07 1997-11-07 組織線維化抑制剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11139974A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000001716A3 (en) * 1998-07-06 2000-10-05 Karobio Ab Vasculoprotector
KR20010103188A (ko) * 2000-05-03 2001-11-23 성재갑 3-하이드록시크로멘-4-온 구조를 갖는 cdk 저해제
JP2006069898A (ja) * 2004-08-31 2006-03-16 Fuji Oil Co Ltd 腎機能改善組成物
KR100841901B1 (ko) * 2002-03-18 2008-06-27 동화약품공업주식회사 플라보노이드 계열 화합물 또는 이를 포함하는 강진향추출물을 함유한 매트릭스 메탈로프로테이나제 활성저해제 및 기능성 식품

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000001716A3 (en) * 1998-07-06 2000-10-05 Karobio Ab Vasculoprotector
KR20010103188A (ko) * 2000-05-03 2001-11-23 성재갑 3-하이드록시크로멘-4-온 구조를 갖는 cdk 저해제
KR100841901B1 (ko) * 2002-03-18 2008-06-27 동화약품공업주식회사 플라보노이드 계열 화합물 또는 이를 포함하는 강진향추출물을 함유한 매트릭스 메탈로프로테이나제 활성저해제 및 기능성 식품
JP2006069898A (ja) * 2004-08-31 2006-03-16 Fuji Oil Co Ltd 腎機能改善組成物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6982286B2 (en) Carbocyclic hydrazino inhibitors of copper-containing amine oxidases
US5866570A (en) Treatment of vascular leakage and related syndrome such as septic shock by administration of metalloproteinase inhibitors
AU733304B2 (en) Combination of an aldose reductase inhibitor and a glycogen phosphorylase inhibitor
US20080226718A1 (en) Indole and Azaindole Derivatives For the Treatment of Inflammatory and Autoimmune Diseases
US20040106654A1 (en) Inhibitors of copper-containing amine oxidases
US20070161557A1 (en) Casein derived peptides and uses thereof in therapy
AU2016204491A1 (en) Macrocyclic proline derived HCV serine protease inhibitors
CA1268597A (en) Diamino acid derivatives
JPH07508000A (ja) 1,2,3−トリアゾール及びイミダゾール化合物並びにそれらの抗腫瘍用途
WO2007101347A1 (en) Bir domain binding compounds
JP2005194287A (ja) 血管静止性ジペプチド薬学的組成物およびその使用方法
CN108409820A (zh) 作为hcv rna复制抑制剂的4′-叠氮基,3′-氟取代的核苷衍生物
CN101980602A (zh) 大环肟基丙型肝炎丝氨酸蛋白酶抑制剂
PL198427B1 (pl) Zastosowanie chelerytryny
JP2001502292A (ja) Pdgfアンタゴニストとしての4−〔2−(n−2−カルボキサミドインドール)アミノエチル〕ベンゼンスルホンアミドまたはスルホニル尿素
CN103180310A (zh) 作为hcv抑制剂的杂二环衍生物
US20090227521A1 (en) Use of compounds in the treatment of ischemia and neurodegeneration
JP2011530519A (ja) 免疫調節化合物を用いたc型肝炎の治療または予防の方法
JP2003510352A (ja) ウイルス媒介性疾病の治療用化合物
JP2000511882A (ja) Ace阻害剤及び/またはnep阻害剤として有用なn―ホルミルヒドロキシルアミン化合物
WO2005056012A1 (en) Indole derivatives for the treatment of bone diseases
WO2010031171A1 (en) Iap bir domain binding compounds
JPH11139974A (ja) 組織線維化抑制剤
JP2008509974A (ja) 抗炎症剤
CN104169271A (zh) 作为hcv抑制剂的喹唑啉酮衍生物