JPH11133413A - 液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示装置

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JPH11133413A
JPH11133413A JP10244178A JP24417898A JPH11133413A JP H11133413 A JPH11133413 A JP H11133413A JP 10244178 A JP10244178 A JP 10244178A JP 24417898 A JP24417898 A JP 24417898A JP H11133413 A JPH11133413 A JP H11133413A
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Shinichi Terashita
慎一 寺下
Shuichi Kanzaki
修一 神崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 視野角特性に優れた液晶表示装置を提供す
る。 【解決手段】 偏光板と液晶セルの間に、面内の平均屈
折率に比して厚さ方向の屈折率が小さく、かつ面内に屈
折率異方性を有するシート状の位相差補償素子を配す
る。望ましくは、位相差補償素子の面内の最大屈折率に
平行な軸と、該位相差補償素子に隣接した偏光板の吸収
軸が直交している構成とする。前述の構成により、特に
偏光板の吸収軸に対して±45°方向での斜視時の黒浮
きが低減され視野角特性に優れた状態となる。また、本
発明においては、液晶表示装置を構成する液晶セルは黒
表示時のセル表面内の平均屈折率が厚さ方向の屈折率よ
りも小さいものであれば水平配向型、垂直配向型、水平
垂直ハイブリッド配向型等を含めいかなる表示モードに
も適応できる。特に、分割配向、連続配向及び軸対称配
向等の広視野角表示モードに適応することで大きな効果
を創出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置に関
する。特に、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッ
サ、アミューズメント機器、テレビジョン装置などの平
面ディスプレイやシャッタ効果を利用した表示装置など
に好適に用いられる広視野角特性を有する液晶表示装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置の広視野角化の手法として
は、液晶分子を基板表面に対して概ね平行に運動させる
方式と、液晶分子の運動は基板表面に対して垂直のまま
で一つの絵素内の配向を複数に分割する方式とがある。
前者の代表的な方式としては、IPS(In−Plan
e Switching)モードが挙げられる。後者の
方式の例としては、Np型液晶(ネマチック相ポジ型液
晶)を軸対称状に水平配向させた広視野角液晶表示モー
ド(特開平7−120728号公報)、垂直配向したN
n型液晶(ネマチック相ネガ型液晶)を電界制御によっ
て動作時に分割配向する広視野角液晶表示モード(特開
平7−28068号公報)、および、AM−LCD’9
6,p.185(1996)に開示された、Np型液晶
を絵素内で略4分割して水平配向させた広視野角液晶表
示モード等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、後者の方式
である絵素内の配向を分割する表示モードでは、総じ
て、図22及び図23に示すように、液晶セル201を
挟んで設けた上偏光板の吸収軸202と下偏光板の吸収
軸203とを二等分する軸方向での視野角特性が、吸収
軸の方向の視野角特性に比して著しく悪くなるという問
題があった。すなわち、図22(a)に示すような、視
野角を定義するための液晶セルに平行な仮想平面204
の法線からの見る角度である視野角をθとし、その見る
方向の下偏光板の吸収軸203(Φ=0゜とする)から
の角度を方位角Φとした極座標系を定義して視野角特性
を評価すれば、等コントラスト・コンター曲線は、表示
モードに関わらず総じて図23に示す曲線301のよう
になる。つまり、方位角Φが上、下偏光板の吸収軸から
ずれるにしたがって視野角が狭くなるという問題があっ
た。なお、図23における曲線302は、本発明におい
て得ることを目的とする等コントラスト・コンター曲線
を示す。
【0004】本発明は、このような従来技術の課題を解
決すべくなされたものであり、吸収軸からのずれに伴う
視野角特性の悪化を解消し、概ね軸対称の視野角特性を
有する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の液晶表示装置
は、一対の基板に挟持された液晶層を有する液晶セル
と、該液晶セルを挟持するとともに直交ニコルの配置さ
れた一対の偏光板と、該一対の偏光板と該液晶セルとの
間の少なくとも一方に設けられた位相差補償素子と、を
有し、該液晶層にあっては、該液晶セル表面に平行な面
内の局所的な屈折率異方性の値が白表示時よりも黒表示
時の方が小さく、且つ、該位相差補償素子は屈折率異方
性を呈するとともに、直交座標系XYZの主軸x、y、
z軸に沿った方向の屈折率をnx,ny,nzとし主軸
zは該液晶セル表面の法線に平行であり、主軸x,yは
該液晶セル表面に平行な面内に有ると定義するとき、n
z<(nx+ny)/2、且つ、nx>nyであり、そ
のことによって上記目的が達成される。
【0006】前記一対の偏光板と前記液晶セルとの間
に、それぞれ第1および第2の位相差補償素子を有する
構成としても良い。
【0007】前記位相差補償素子がそれぞれ二枚の位相
差補償フィルムからなるものであって、前記液晶セルの
片側に配された二枚の位相差補償フィルムのうちの一方
は、nx=ny且つnz<nxであり、且つ他方の位相
差補償フィルムはny=nz且つnx>nyである構成
としても良い。
【0008】前記第1および第2の位相差補償素子の屈
折率異方性が略同一であってもよい。
【0009】前記第1および第2の位相差補償素子のそ
れぞれの主軸xが互いに略直交していても良い。
【0010】前記位相差補償素子の主軸xが、各々の位
相差補償素子に最隣接の偏光板の吸収軸に直交する軸と
の成す角度が±45°であっても良い。
【0011】前記位相差補償素子の主軸xが、各々の位
相差補償素子に最隣接の偏光板の吸収軸に略直交する構
成としても良い。
【0012】以下に、本発明の作用につき説明する。
【0013】本発明は、図1に示すように、液晶表示セ
ル表面に平行な面内の平均屈折率(nx、ny)が厚さ
方向の屈折率(nz)に比べて大きく、かつ面内に屈折
率異方性(nx>ny)を有する位相差補償素子を、液
晶セルと偏光板との間に挿入する。すると、偏光板の吸
収軸からのずれに伴う視野角特性の悪化が解消されるこ
ととなる。
【0014】本発明で用いる位相差補償素子の屈折率に
関する条件は、図1に示す通り、nz<(nx+ny)
/2,nx>nyなる2条件である。なお、複数の位相
差板(または位相差フィルム)で位相差補償素子を構成
した場合であっても、素子全体として上記2条件が満た
されていればよい。なお、図1中における401は本発
明で用いる位相差補償素子を示し、402はその屈折率
楕円体である。
【0015】また、液晶表示装置にて白表示および中間
階調表示を行うとき、透過率変化および色付き等を最適
化する観点から、面内の屈折率異方性の軸と偏光板の吸
収軸との成す角度を調整することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】まず、個々の形態の液晶表示装置
について説明することは避け、包括的な説明を行なう。
【0017】本発明の適応される液晶セルに必要な条件
は、上述した通り、「液晶セル表面に概ね平行な平面内
の局所的な(即ち、該液晶層が分離配向されている場合
においては略同一配向とみなされる領域の)屈折率異方
性の値が、白表示時よりも黒表示時の方が小さい」こと
である。即ち、本発明が適応される液晶セルは、黒表示
時において、図2に示すように正の一軸性の位相差板に
近似できる。ここで、501は液晶セルの下基板、50
2はその上基板であり、503は黒表示時の液晶層の屈
折率異方性を代表して示す屈折率楕円体である。
【0018】実際の液晶セルでは電圧印加時の配向を規
定するために黒表示時であっても液晶層を代表する屈折
率楕円体は基板の法線方向から傾斜しているものがあ
る。例えば配向が2分割されている場合、図3に示すよ
うに領域Aと領域Bの屈折率楕円体の長軸は、基板表面
の法線からわずかに傾斜している。図3は液晶の配向を
2分割した液晶セルの黒表示時の屈折率異方性を代表す
る屈折率楕円体を示す。この図3において、521は下
基板、522は上基板、523はドメインA、524は
ドメインBであり、525はドメインAにおける液晶層
の屈折率異方性を示す屈折率楕円体、526はドメイン
Bにおける液晶層の屈折率異方性を示す屈折率楕円体で
ある。この様な場合には、その傾斜角が大きくなるのに
ともなって図2の近似との差異が拡大していき、本発明
の発明の効果は減少する。しかしながら、一般的に用い
られる液晶表示装置では本発明の効果が完全に消失する
ことはない。後述の実施例で述べるが、一般的には、垂
直配向膜とNn型液晶で構成される液晶表示装置は水平
配向膜とNp型液晶で構成される液晶表示装置に比べて
前記傾斜角度が小さい。即ち、本発明は垂直配向膜とN
n型液晶で構成される液晶表示装置に適用することによ
りより大きな効果を発揮する。
【0019】以上において説明したように、本発明の本
質は、黒表示時の液晶セルが概ね図2の近似が成立する
総ての場合に共通する。従って、以下の説明では、黒表
示時の液晶表示装置に注目し、図2に示した黒表示時の
液晶セルの屈折率異方性を代表する屈折率楕円体に等価
な屈折率楕円体を有する位相差フィルムを液晶セルの代
わりに用いて本発明の内容を説明する。
【0020】図4に示す液晶表示装置の構成において、
液晶セル105をdLC・(nz−nx)=350n
m、nx=nyなる正の一軸性の位相差フィルムに置き
換えた装置を作製した。図4において、101は下偏光
板、102は上偏光板、103は下位相差補償素子、1
04は上位相差補償素子、106は下偏光板の吸収軸、
そして107は上偏光板の吸収軸である。108、10
9については後述する。
【0021】図5Aに示すように、クロスニコルに配し
た偏光板で正の一軸性の位相差フィルムを挟んだ装置を
上下偏光板の吸収軸を二等分する方向に沿って(以下で
はΦ=45゜)、視角(θ)を変化させつつ観察する
と、透過率(図では透過率100%をパラレルニコル配
置した偏光板のみの正面透過率と定義した)が増加す
る。即ち、黒表示状態の液晶セルで斜視時に光漏れが生
じる。その結果、コントラストが低下する。
【0022】更に、周知のように、図5Bに示すよう
に、前記現象は図4に示した位相差補償素子103、1
04に負の一軸性の位相差フィルムを用いることで改善
できる。図5Bは、位相差補償素子103、104とし
て、nx=ny>nzであって、df・(nx−nz)
(dfは位相差補償素子の厚さ)を0nm〜280nm
まで変化させ、Φ=45゜(光源側下偏光板の吸収軸の
方向をΦ=0゜とする)及びΦ=90゜(上下偏光板の
吸収軸に対して平行または直交する方向)であって、か
つθ=50゜(図4の装置表面の法線から50゜傾いた
方向)での透過率を測定した結果である。Φ=90゜の
透過率はdf(nx−nz)の値によらずほぼ0%であ
った。一方、Φ=45゜の透過率はdf(nx−nz)
の値が0から増加するにしたがって減少し、df(nx
−nz)=175で最小値2%をとる。ここまでは、周
知である。
【0023】本発明は、前記nx=ny>nzなる位相
差補償素子を、nx≠ny、(nx+ny)/2>nz
なる位相差補償素子に置き換えることにより、Φ=45
゜での最小値を2%よりも更に小さくするものである。
【0024】図5Cは、位相差補償素子103、104
を、各々のx軸を108、109に一致させた、nx>
ny、(nx+ny)/2>nzなる位相差補償素子
(図1と同等)とし、df{(nx+ny)/2−n
z}=175nmを保ちつつ、df(nx−ny)を0
nm〜38nmまで変化させ、Φ=45゜及びΦ=90
゜であって、θ=50゜での透過率を測定した結果であ
る。なお、108は下位相差補償素子の最大屈折率を示
す軸であり、109は上位相差補償素子の最大屈折率を
示す軸である。
【0025】Φ=90゜の透過率はdf(nx−ny)
の値によらずほぼ0%であった。一方、Φ=45゜の透
過率はdf(nx−ny)の値が0から増加するにした
がって減少し、df(nx−ny)=20nmで最小値
0.3%となった。
【0026】即ち、図1に示す位相差補償素子を用いる
本発明の構成によって、周知の構成の場合に比して、Φ
=90゜、θ=50゜の光漏れを1/7に低減できた。
この効果は、直ちに斜視時のコントラスト向上、即ち視
野角特性の向上につながる。何故なら、コントラストは
黒レベルの逆数に比例するからである。
【0027】以上で示したとおり、本発明の手法、即ち
nz<(nx+ny)/2であって、かつnx≠nyな
る位相差補償素子を用い、nx,ny,nzの値を適切
に選ぶことで、特に上下偏光板の吸収軸を二等分する方
向で、斜め方向から観測した場合の光漏れが著しく抑制
できることが示された。このことは、同時に上下偏光板
の吸収軸を二等分する方向でのコントラスト比の視野角
特性の改善効果を示している。
【0028】以下に、本発明の具体的な実施例を説明す
る。
【0029】(実施例1)本発明の実施例1の液晶表示
装置は、図4に示す構成とした。
【0030】図4の液晶セル105は、本願発明者等の
提案したNn型液晶を軸対称状に垂直配向させた広視野
角液晶表示モードであり、特願平8−341590号に
記載の図6に示す液晶セルである。この液晶セル105
の構成は、以下の通りである。
【0031】即ち、表面に透明電極63(ITO:10
0nm)が形成された基板62上に、感光性ポリイミド
を用いて、高さ約4.5μmのスペーサー65を絵素領
域外に形成した。その後で、OMR83(東京応化社
製)で高さ約3μmの凸部66を形成した。凸部66で
包囲される領域の大きさは、100μm×100μmと
し、1絵素(100μm×300μm)にこの領域を3
つ形成した。その上に、JALS−204(日本合成ゴ
ム社製)をスピンコートし、垂直配向層68を形成し
た。さらに、もう一方の基板の透明電極(平坦な)上に
も同じ材料を用いて、垂直配向層(図示せず)を形成し
た。両者を貼り合わせて液晶セルを完成させた。
【0032】作製した液晶セル中に、Nn型液晶材料
(メルク社製MJ95955、セルギャップ4.5μm
で左ネジレ90゜ツイストとなるようにカイラル材料を
混入)を注入し、電圧を7V印加した。電圧印加直後、
初期状態で、軸対称配向の配向軸が複数存在する状態と
なり、さらに、電圧印加状態を続けると凸部66で包囲
された領域ごとに1つの軸対称配向領域(モノドメイ
ン)が形成された。
【0033】このような液晶セルに、二軸延伸法により
作製した、厚さdf=50μm,df(nx−ny)=2
5nm,df{(nx+ny)/2−nz}=130n
mの位相差板を、位相差補償素子103、104として
図4に示すように配置した。更に、外側に偏光板10
1、102をクロスニコル状態になるよう配置した。
【0034】本実施例の液晶表示装置を、大塚電子
(株)製光学特性測定器LCD5000を用いて、駆動
電圧Voff=2Vにて黒表示させたときの透過率の視
野角特性を測定し、ついで駆動電圧Von=5Vにて白
表示させたときの透過率の視野角特性を測定し、更に白
表示時の透過率を黒表示の透過率で除しコントラスト比
の視野角特性を得た。
【0035】図7は、その結果を基にしたコントラスト
比50の等コントラスト・コンター曲線を示す図であ
る。
【0036】(比較例1)本発明の実施例1に対応する
比較例について以下に説明する。
【0037】本比較例1では、実施例1と同様に、図4
に示す液晶表示装置と同様の構成のものを用いた。但
し、本比較例1で用いた板状の位相差補償素子は、厚さ
f=50μm、df(nx−ny)=0nm、d
f{(nx+ny)/2−nz}=130nmとした。
【0038】図8は、この液晶表示装置を実施例1と同
様の手法で測定したコントラスト比50の等コントラス
ト・コンター曲線を示す図である。
【0039】(比較例2)本発明の実施例1に対応する
比較例について以下で説明する。
【0040】本比較例2では、実施例1と同様に、図4
に示す液晶表示装置と同様の構成のものを用いた。但
し、本比較例2では位相差補償素子を用いていない。
【0041】図9は、この液晶表示装置を実施例1と同
様の手法で測定したコントラスト比50の等コントラス
ト・コンター曲線を示す図である。
【0042】上述した図7、図8及び図9を比較すれ
ば、Φ=0°、90°、180°及び270°ではいず
れもコントラスト50の等コントラスト線は概ねθ=5
5°と同一の値を示している。しかしながら、Φ=45
°、135°、225°及び315°でのコントラスト
50の等コントラスト・コンター曲線は、比較例2の図
9では概ねθ=23°、比較例1の図8では概ねθ=3
8°であるのに比して、実施例1の図7では概ねθ=5
3°である。
【0043】以上まとめると、比較例1、2及び実施例
1ではΦ=0°、90°、180°及び270°での視
野角特性は概ね同一かつ良好である。しかし、Φ=45
°、135°、225°及び315°では比較例2の液
晶表示装置の視野角特性は著しく劣っている。比較例1
の液晶表示装置は、これに一定の改善が成された。更に
実施例1では、これをほぼ完全に改善し、Φ=45°、
135°、225°及び315°の視野角特性をΦ=0
°、90°、180°及び270°の視角特性とほぼ等
しい程度に拡大した。即ち、実施例1ではほぼ完全に等
方的な、かつ良好な視野角特性が得られた。
【0044】また、実施例1では、位相差補償素子とし
て、厚さdf=50μm,df(nx−ny)=25n
m、df{(nx+ny)/2−nz}=130nmの
位相差フィルムを各々1枚ずつ用いたが、本発明は何ら
これに限定されることなく、位相差補償素子として同等
の特性を示すものであれば、複数の位相差フィルムある
いは液晶セル等を組み合わせて用いてもよい。
【0045】(実施例2)ところで、実施例1ではdf
(nx−ny)=25nm、df{(nx+ny)/2
−nz}=130nmなる2枚の位相差フィルム(位相
差補償素子)で液晶セルを挟んだ場合のみを示した。こ
のとき、各々の位相差補償素子はx軸を最隣接の偏光板
の吸収軸に直交するように配置した場合のみの検討であ
った。
【0046】そこで、本実施例2では、df{(nx+
ny)/2−nz}の値、df(nx−ny)の値、及
び偏光板の吸収軸と位相差板のx軸とのなす角度につい
て、各々独立に変化させることで本発明の効果が創出さ
れる範囲を見積もった。但し、本実施例2では、nx、
ny、nzすべての値が異なる位相差フィルムを用いる
代りに、図10に示すように、nx=ny>nzの第1
の位相差フィルムと、nx>ny=nzの第2の位相差
フィルムとを組み合せた位相差補償素子を用いた。
【0047】なお、図10において、A101は下偏光
板、A102は上偏光板、A103は第1の下位相差フ
ィルム(nx=ny>nz)、A104は第1の上位相
差フィルム(nx=ny>nz)、A105は第2の下
位相差フィルム(nx>ny=nz)、A106は第2
の上位相差フィルム(nx>ny=nz)、A107は
液晶セル、A108は下偏光板の吸収軸、A109は上
偏光板の吸収軸、A110は第2の下位相差フィルムA
105のx軸、A111は第2の上位相差フィルムA1
06のx軸である。
【0048】ここで、位相差補償素子を用いたのは、以
下の二つの理由による。 (a)本発明の効果が創出される範囲を容易かつ詳細に
調べることができるからである。 (b)複数の位相差フィルムを組み合わせた位相差補償
素子によっても本発明の効果が創出できることを示すた
めである。
【0049】[df(nx−nz)}の変化]図10の
ような配置において(但し、第2の位相差フィルムA1
05、A106は取り除いた状態で)、nx=ny>n
zなる厚さdfの第1の位相差フィルムのdf(nx−n
z)値を20nm〜400nmまで変化させ、斜め方向
のコントラスト特性を実施例1と同一の測定系で測定し
た。ここで、斜め方向とは視野角を定義した図22にお
いて、θ=50°、Φ=0°、45°、90°、135
°、180°、225°、270°そして315°であ
る。
【0050】図11は、測定の結果を示す図である。
【0051】この図11により理解されるように、Φ=
0°、90°、180°及び270°では、df(nx
−nz)値によらず、ほぼ一定の良好なコントラスト値
を示している。一方、Φ=45°、135°、225°
及び315°では、df(nx−nz)の値がほぼ14
0nmのときに最大のコントラストが得られた。尚、図
11に示した通り、前記最適値以外でも、20nm<d
f(nx−nz)<250nmの範囲ではコントラスト
向上の効果があり、更に90nm<df(nx−nz)
<190nmの範囲ではその効果が顕著であった。
【0052】周知のように、位相差補償素子のリタデー
ション値{df(nx−nz)}は、補償される液晶セ
ルのdLC・△n値(セル厚dLCと、用いた液晶の△n
(=|ne−no|)との積)に対する相対値で議論す
べきである。本実施例2でもその考えを踏襲する。本実
施例2で用いた液晶(メルク社製MJ95955)の△
nは概ね0.077、セル厚は4.5μmであるから、
液晶セルのdLC・△nは347nmである。従って、本
発明の効果が得られる範囲は、位相差補償素子のリタデ
ーション値{=df(nx−nz)}が液晶セルのdLC
・△n値の0%〜72%の間であり、著しい効果が得ら
れるのは25%〜55%の間であり、最大の効果が期待
できるのは概ね40%の場合である。
【0053】本実施例2では、位相差補償素子を液晶セ
ルの両側に配置した場合であり、片側一方に配置した場
合には、前記の各値を各々略2倍すればよい。この場合
において、本発明の効果が得られる範囲は、位相差補償
素子のリタデーション値{d f(nx−nz)}が液晶
セルのdLC・△n値の0%〜144%の間であり、著し
い効果が得られるのは50%〜110%の間であり、最
大の効果が期待できるのは概ね80%となる。
【0054】本実施例2では、位相差補償素子の各々を
2枚の位相差フィルムによって構成したが、3枚以上の
位相差フィルムあるいはフィルム以外のもの、例えば液
晶セル、液晶性高分子膜等で位相差補償素子を構成して
もよい。
【0055】[(df(nx−ny)の変化]次に、図
10の配置で、nx>ny=nzなる厚さdfの第2の
位相差フィルムのdf(nx−ny)値を0nm〜50
nmまで変化させ、斜め方向のコントラスト特性を実施
例1と同一の測定系で測定した。但し、第1の位相差フ
ィルムは、df(nx−nz)=140nmとした。こ
こで、斜め方向とは視野角を定義した図22において、
θ=50°、Φ=0°、45°、90°、135°、1
80°、225°、270°そして315°である。
【0056】図12は、その測定の結果を示す図であ
る。
【0057】この図12により理解されるように、Φ=
0°、90°、180°及び270°では、df(nx
−ny)値によらず、ほぼ一定の良好なコントラスト値
が得られている。一方、Φ=45°、135°、225
°及び315°では、df(nx−ny)の値がほぼ2
2.5nmのときに最大のコントラストが得られた。
尚、図12に示した通り、最適値22.5nm以外で
も、2.5nm<df(nx−ny)<45nmの範囲で
はコントラスト向上の効果があり、更に10nm<df
(nx−ny)<35nmの範囲ではその効果が顕著で
あった。
【0058】ここで、位相差補償素子のリタデーション
値{df(nx−ny)}を、補償される液晶セルのd
LC・△n値(この実施例の場合、dLC・△n=347n
m)に対する相対値で議論する。
【0059】本発明の効果が得られる範囲は、位相差補
償素子のリタデーション値{df(nx−ny)}が液
晶セルのdLC・△n値の0%〜13%の間であり、著し
い効果が得られるのは2%〜10%の間であり、最大の
効果が期待できるのは概ね6.5%の場合である。
【0060】[上下位相差補償素子のx軸(面内で最大
屈折率を示す軸)軸の成す角度]本発明では液晶セルの
上下に配置した位相差補償素子の、x軸は概ね直交させ
てある。その理由は、液晶表示装置を正面から見たとき
のコントラストの低下を避けるためである。2枚の位相
差補償素子のx軸が直交していなければ、位相差補償素
子全体で面内位相差が生じるため、良好な黒表示が得ら
れず、コントラストが低下することは容易に推察できる
からである。
【0061】[位相差補償素子の配置、x軸と偏光板の
吸収軸の成す角度の変化]前述した実施例1では、液晶
セルの上下に配置した位相差補償素子のx軸(最大屈折
率を示す軸)は、それに最隣接した偏光板の吸収軸に直
交に配置してあった。本実施例2では、x軸と最隣接の
偏光板の吸収軸との直交関係のずれと本発明の効果の関
係を調べた。
【0062】具体的には、df(nx−nz)=140
nm、ny=nxの条件を満たす位相差フィルム(第1
の位相差フィルム)と、df(nx−ny)=22.5
nm、nz=nyの条件を満たす位相差フィルム(第2
の位相差フィルム)を、図10のように積層し、上下に
配した第2の位相差フィルムの各x軸(面内での最大屈
折率に平行な軸)の直交関係を維持しつつ、第2の位相
差フィルムのx軸と最隣接の偏光板の吸収軸との成す角
度α(図13参照)を時計回りの回転を正として、0°
≦α<180°の範囲で変化させ、斜め方向のコントラ
スト特性を実施例1と同一の測定系で測定した。ここ
で、斜め方向とは視野角を定義した図22において、θ
=50°、Φ=0°、45°、90°、135°、18
0°、225°,270°そして315°である。
【0063】図14は、測定結果を示す図である。
【0064】この図14による場合には、Φ=0°、9
0°、180°及び270°はα=0°、90°、18
0°の3点で最大値をとるが、Φ=45°、135°、
225°及び315°はα=90°のみで、即ち位相差
補償素子のx軸が最隣接偏光板の吸収軸と直交する配置
でのみ最大値をとる。
【0065】従って、本発明の効果を最大限に得るため
には、α=90°、即ち位相差補償素子の面内での最大
屈折率を示す軸nxと、それに最隣接の偏光板の吸収軸
とが直交するときである。また、図14によれば、45
°<α<135°のとき、即ち前記本発明の効果の得ら
れる配置から時計回り及び反時計回りに45°ずれた場
合でも本発明の効果が得られることが解る。さらには、
67°<α<113°のとき、即ち前記本発明の最大効
果の得られる配置から時計回り及び反時計回りに23°
ずれた場合では著しい効果が得られた。
【0066】実施例1、2では、液晶表示モードとして
図6に示す構成のものを用いたが、本発明の適用できる
液晶表示モードは何らこれに限定されるものではない。
即ち、請求項1に記載の条件を満たす液晶セルであれば
如何なる表示モードを用いた液晶セルでもよい。
【0067】(実施例3)上述した実施例1、2では垂
直配向したNn型液晶を分割配向させた代表的な液晶表
示モードに対して、本発明の位相差補償技術を適応した
場合の例であった。本実施例3と後述の実施例4では、
水平配向したNp型液晶を分割配向させた代表的な液晶
表示モードに対して、本発明の位相差補償技術を適応す
る。
【0068】本実施例3の液晶表示装置の構成も、図4
に示すものと同様である。
【0069】図4の液晶セルは、本願発明者等の提案し
たNp型液晶を軸対称状に水平配向させた広視野角液晶
表示モードのものである。その液晶セルの作製法の一例
を挙げれば以下の通りである。無論、作製法はこれに限
定されるものではない。
【0070】前述の図6を参照しながら、本実施例の液
晶表示装置の製造方法を説明する。
【0071】表面に透明電極63(ITO=膜厚100
nm)が形成された基板62上に、感光性ポリイミドを
用いて高さ約4.5μmのスペーサー65を絵素領域外
に形成した。その後でOMR83(東京応化製)で高さ
約3μmの凸部66を形成した。凸部66で包囲される
領域、即ち絵素領域の大きさは100μm□とした。垂
直配向層68は形成せず。
【0072】このように形成した基板を、もう一方の基
板である、透明電極を有し、かつ平坦な形状の基板と貼
り合わせて液晶セルを完成させた。
【0073】作製した液晶セル中に、光硬化性樹脂とし
てR−684(日本化薬製)0.1g、光重合抑制剤と
してp−フェニル・スチレン0.1g、液晶材料として
MS90847(メルク社製:S811を0.4重量%
混有)3.74g及び光開始剤Irgacure651
を0.025g混合した混合物を注入した。
【0074】その後、液晶セルを、液晶の透明点温度以
上の110℃に加熱し、1時間保持した。その後、0.
1℃/minで室温まで徐冷した。徐冷の途中で、絵素
内に透明相と非透明相とが観測され、かつ透明相と非透
明相の面積がほぼ同一になったとき、徐冷を一旦停止
し、液晶セルに約2.5Vrmsの矩形波を断続的に印
加し、またセルの温度を適切に上下し、良好な軸対称配
向を得た後、電圧印加を止め徐冷を再開した。最後に、
紫外線を照射し光硬化性樹脂R−684を硬化させるこ
とで軸対称配向を固定し、液晶セルの作製を完了した。
【0075】この液晶セルに、二軸延伸法により作製し
た、厚さdf=50μm、df(nx−ny)=25n
m、df{(nx+ny)/2−nz}=130nmの
位相差補償素子としての位相差フィルム103、104
を図4の様に配置した。更に、その外側に偏光板10
1、102を配置して、液晶表示装置を完成させた。
【0076】本実施例3の液晶表示装置を、大塚電子
(株)製の光学特性測定器LCD5000を用いて、駆
動電圧Von=7.3Vにて黒表示させたときの透過率
の視野角特性を測定し、ついで駆動電圧Voff=2.
3Vにて白表示させたときの透過率の視野角特性を測定
し、更に白表示時の透過率を黒表示の透過率で除しコン
トラスト比の視野角特性を得た。
【0077】図15は、その結果をもとにコントラスト
比5の等コントラスト・コンター曲線を示す図である。
【0078】(比較例3)本発明の実施例3に対応する
比較例3について以下で説明する。
【0079】本比較例3では、実施例3と同様に、図4
に示す液晶表示装置の構成のものを用いた。但し、本比
較例3で用いた位相差板は、厚さdf=50μm、d
f(nx−ny)=0nm,df{(nx+ny)/2−
nz}=130nmとした。
【0080】図16は、この液晶表示装置を実施例1と
同様の手法で測定したコントラスト比5の等コントラス
ト・コンター曲線を示す図である。
【0081】(比較例4)本発明の実施例3に対応する
比較例4について以下で説明する。
【0082】本比較例4では、実施例3と同様に、図4
に示す液晶表示装置の構成のものを用いた。但し、本比
較例4では、位相差補償素子を用いていない。
【0083】図17は、この液晶表示装置を実施例1と
同様の手法で測定したコントラスト比5の等コントラス
ト・コンター曲線を示す図である。
【0084】上述した図15、図16及び図17を比較
すれば、Φ=0°、90°、180°及び270°では
いずれもコントラスト5の等コントラスト線は概ねθ=
60°と同一の値を示している。しかしながら、Φ=1
35°、315°でのコントラスト5の等コントラスト
・コンター曲線は、比較例4の図17では概ねθ=38
°、比較例3の図16では概ねθ=48°であるのに比
して、実施例3の図15では概ねθ=55°である。
【0085】以上まとめると、比較例3、4及び実施例
3では、Φ=0°、90°、180°及び270°での
視野角特性は概ね同一かつ良好である。しかし、Φ=1
35°、315°では比較例4の液晶表示装置の視野角
特性は劣っている。比較例3の液晶表示装置は、これに
一定の改善が成された。更に実施例3では、これをほぼ
完全に改善し、Φ=135°、315°の視野角特性を
Φ=0°、90°、180°及び270°ほぼ等しい程
度に拡大した。即ち、実施例3ではほぼ完全に等方的
な、かつ良好な視野角特性が得られた。
【0086】本実施例では位相差補償素子を2枚の位相
差フィルムによって構成したが、複数枚のフィルムある
いはフィルム以外のもの、例えば液晶セル、液晶性高分
子膜等で構成してもよい。
【0087】(実施例4)ところで、上述した実施例3
では、df(nx−ny)=25nm,df{(nx+n
y)/2−nz}=130nmなる2枚の位相差フィル
ムで液晶セルを挟んだ場合のみを示した。このとき、各
々の位相差板はx軸を最隣接の偏光板の吸収軸に直交す
るように配置した場合のみの検討であった。
【0088】そこで、本実施例4では、df{(nx+
ny)/2−nz}の値、df(nx−ny)の値、及
び偏光板の吸収軸と位相差板のx軸との成す角度につい
て各々独立に変化させることで本発明の効果が創出され
る範囲を見積もった。ただし、本実施例4では、nx、
ny、nzのすべての値が異なる位相差フィルムを用い
る代りに、nx=ny>nzの第1の位相差フィルム
と、nx>ny=nzの第2の位相差フィルムとを、図
10のように組み合せた位相差補償素子を配置した。配
置の仕方は、実施例2の場合と同様である。
【0089】ここで、この位相差補償素子を用いたの
は、以下の2つの理由による。 (a)本発明の効果が創出される範囲を容易、かつ詳細
に調べることができるからである。 (b)複数の位相差フィルムを組み合わせた位相差補償
素子によっても本発明の効果が創出できることを示すた
めである。
【0090】[df(nx−nz)の変化]図10のよ
うな配置において、nx=ny>nzなる厚さdfの位
相差フィルムのdf(nx−nz)値を20nm〜40
0nmまで変化させ、斜め方向のコントラスト特性を実
施例1と同一の測定系で測定した。ここで、斜め方向と
は視野角を定義した図22において、θ=50°、Φ=
0°、45°、90°、135°、180°、225
°、270°そして315°である。
【0091】図18は、測定の結果を示す図である。
【0092】図18において、Φ=0°、90°、18
0°及び270°ではdf(nx−nz)値によらずほ
ぼ一定の良好なコントラスト値を示している。一方、Φ
=45°、135°、225°そして315°ではdf
(nx−nz)の値がほぼ150nmのときに最大のコ
ントラストが得られた。尚、図18に示した通り、前記
最適値以外でも20nm<df(nx−nz)<300
nmの範囲ではコントラスト向上の効果があり、更に7
0nm<df(nx−nz)<230nmの範囲ではそ
の効果が顕著であった。
【0093】周知のように、位相差補償素子のリタデー
ション値{df(nx−nz)}は、補償される液晶セ
ルのdLC・△n値(セル厚dLCと、用いた液晶の△n
(=|ne−no|)との積)に対する相対値で議論す
べきである。本実施例でもその考えを踏襲する。本実施
例で用いた液晶(メルク社製MS90847)の△nは
概ね0.096、セル厚は4.5μmであるから液晶セ
ルのdLC・△nは432nmである従って、本発明の効
果が得られる範囲は位相差補償素子のリタデーション値
{df(nx−nz)}が液晶セルのdLC・△n値の5
%〜69%の間であり、著しい効果が得られるのは16
%〜54%であり、最大の効果が期待できるのは概ね3
5%の場合である。
【0094】本実施例では、位相差補償素子を液晶セル
の両側に配置した場合であり、片一方に配置した場合に
は前記の各値を各々略2倍すればよい。従って、本発明
の効果が得られる範囲は位相差補償素子のリタデーショ
ン値{=df(nx−nz)}が液晶セルのdLC・△n
値の10%〜138%の間であり、著しい効果が得られ
るのは32%〜108%の間であり、最大の効果が期待
できるのは概ね70%となる。
【0095】[df(nx−ny)の変化]次に、図1
0の配置で、nx>ny=nzなる厚さdfの位相差フ
ィルムA105及びA106のdf(nx−ny)値を
3nm〜50nmまで変化させ、斜め方向のコントラス
ト特性を実施例1と同一の測定系で測定した。但し、位
相差フィルムA103とA104は、df(nx−n
z)=150nm。ここで、斜め方向とは視野角を定義
した図22において、θ=50°、Φ=0°,45°、
90°、135°、180°、225°、270°そし
て315°である。
【0096】図19は、測定の結果を示す図である。
【0097】図19によれば、Φ=0°、90°、18
0°及び270°ではdf(nx−ny)値によらずほ
ぼ一定の良好なコントラスト値が得られている。一方、
Φ=45°、135°、225°及び315°では、Φ
=45°、225°とΦ=135°、315°では最大
コントラストを与えるdf(nx−ny)値に大きな差
がある。しかし、df(nx−ny)値の変化に対する
両組のコントラストの変化はブロードであり、両コント
ラストが一致したとき、即ち視野角特性がより同心円状
になったとき(これもまた本発明の効果の一つである)
でもコントラスト拡大の効果が十分に得られている。こ
のときのdf(nx−ny)の値は24nmであり、こ
のとき本発明の効果が最大であった。なお、図19に示
した通り、最適値24nm以外でも3nm<df(nx
−ny)<48nmの範囲では本発明の効果があり、更
に、12nm<df(nx−ny)<36nmの範囲では
その効果が顕著であった。
【0098】ここで、位相差補償素子のリタデーション
値{df(nx−ny)}を、補償される液晶セルのd
LC・△n値(この例の場合のdLC・△n=432nm)
に対する相対値で議論する。本発明の効果が得られる範
囲は位相差補償素子のリタデーション値{df(nx−
ny)}が液晶セルのdLC・△n値の0%〜12%の間
であり、著しい効果が得られるのは2%〜9%の間であ
り、最大の効果が期待できるのは概ね5.5%の場合で
ある。
【0099】[上下位相差補償素子のx軸(面内で最大
屈折率を示す軸)の成す角度]本発明では液晶セルの上
下に配置した位相差補償素子の、x軸は概ね直交させて
ある。その理由は液晶表示素子を正面から見たときのコ
ントラストの低下を避けるためである。2枚の位相差補
償素子のx軸が直交していなければ、位相差補償素子全
体で面内位相差が生じるため、良好な黒表示が得られ
ず、コントラストが低下することは容易に推察できるか
らである。
【0100】[位相差補償素子の配置、x軸と偏光板の
吸収軸の成す角度の変化]前述した実施例3では、液晶
セルの上下に配置した位相差補償素子のx軸(最大屈折
率を示す軸)はそれに最隣接した偏光板の吸収軸に直交
させてあった。本実施例4では、x軸と最隣接の偏光板
の吸収軸との直交関係のずれと本発明の効果の関係を調
べた。
【0101】具体的には、df(nz−nx)=150
nm,ny=nxの条件を満たす位相差フィルムと、d
f(nx−ny)=24nm,nz=nyの条件を満た
す位相差フィルムとの2枚の位相差フィルムを、図10
のように積層した位相差補償素子のx軸(面内での最大
屈折率に平行な軸)の直交関係を維持しつつ、位相差補
償素子のx軸と最隣接の偏光板の吸収軸との成す角度α
(図13参照)を時計回りの回転を正として、0°≦α
<180°の範囲で変化させ、斜め方向のコントラスト
特性を実施例1と同一の測定系で測定した。ここで、斜
め方向とは視野角を定義した図22において、θ=50
°、Φ=0°、45°、90°、135°、180°、
225°、270°そして315°である。
【0102】図20は、測定結果を示す図である。
【0103】図20によれば、総てのΦに対して最大の
コントラストを与えるαの値は存在しない。しかし、視
野角特性が対称に拡大できるのはα=90°、即ち位相
差補償素子のx軸が最隣接偏光板の吸収軸と直交する配
置でのときである。従って、本発明の効果を最大限に得
るためにはα=90°、即ち位相差補償素子の面内での
最大屈折率を示す軸nxと、それに最隣接の偏光板の吸
収軸とが直交するときである。また、図20によれば、
45°<α<135°のとき、即ち前記本発明の効果の
得られる配置から時計回り及び反時計回りに45°ずれ
た場合でも、本発明の効果が得られることが解る。更に
は、67°<α<113゜のとき、即ち前記本発明の最
大効果の得られる配置から時計回り及び反時計回りに2
3°ずれた場合では著しい効果が得られた。
【0104】上述した実施例1〜4では、図6の構成の
液晶セル、つまり液晶表示モードとして略連続的に配向
が変化している(連続的に配向分割した)表示モードを
用いたが、前述したように本発明の適用範囲は何らこれ
に限定されるものではない。
【0105】本実施例で略連続的に配向が変化している
表示モードを用いたのは、本発明により偏光板の吸収軸
から45°ずれた方向での視野角特性を改善することで
等方的な視野角特性が得られるからである。
【0106】図21に、2分割、4分割、連続分割の分
割配向での、液晶表示装置を正面から見たときの、絵素
内のダイレクター分布の一例を示す。(a−1)は2分
割配向で白表示を行う場合、(a−2)は2分割配向で
黒表示を行う場合、(b−1)は4分割配向で白表示を
行う場合、(b−2)は4分割配向で黒表示を行う場
合、(c−1)は連続配向で白表示を行う場合、(c−
2)は連続配向で黒表示を行う場合である。これらの図
中の破線は分割配向による各ドメイン境界を示してい
る。また、図中の矢印は、図21(d)に示すように、
液晶セルの中間層での液晶分子の起き上がり方向を矢先
として液晶分子のダイレクターを示している。
【0107】この図21より理解されるように、連続的
に配向が変化している(連続的に配向分割した)場合に
は、この境界線が無いのが特徴である。なお、図21に
おいて、分割無し、3分割、5分割、6分割、7分割・
・・等も考えられる。また各々、様々なツイスト角度を
取り得る。
【0108】また、本発明が表示モード(分割方法)に
よらないのは、図21の右列、つまり(a−2)、(b
−2)、(c−2)に示した黒表示のダイレクター分布
が端的に示している。即ち、黒表示では、分割方法によ
らずダイレクターは同一である。厳密には、液晶セル厚
方向のプロファイルが異なる。Np型液晶の水平配向を
用いた実施例3及び4の特性に比してNn型液晶の垂直
配向を用いた実施例1及び2の特性が優れているのは、
セル厚方向のプロファイルの違いに起因している。この
プロファイルの違いを具体的に以下に説明する。
【0109】Nn型液晶を用いた場合には、黒表示時に
おいて、セル厚方向のいずれの位置に置いても(上下基
板付近およびセル厚の中央付近のいずれにおいても)、
液晶分子はその分子長軸を基板表面に対して垂直に配向
している。これに対し、Np型液晶を用いた場合には、
黒表示時において、セル厚の中央付近の液晶分子はその
分子長軸を基板表面に対して垂直に配向しているが、上
下基板に近づくにつれて、垂直からずれ基板表面に対し
て略平行に配向する。上記のプロファイルの違いは、こ
の配向状態の違いを言う。この配向状態の違い起因し
て、Nn型液晶を用いた液晶セルはNp型液晶を用いた
液晶セルに比較して、図2に示した屈折率楕円体で代表
される理想的な屈折率異方性を呈するため、実施例1お
よび2の液晶表示装置の視野角特性は、実施例3および
4の視野角特性よりも優れる。
【0110】本発明の効果の本質は、黒表示状態での光
漏れを押さえる点にあり、表示モード(分割方法)に依
存しないのは必然である。即ち、液晶セル表面に概ね平
行な平面内の局所的な屈折率異方性の値が白表示時より
も黒表示時の方が小さくなる液晶セルであれば、如何な
る表示モードを用いた液晶セルを使用してもよい。
【0111】本発明の実施例では液晶表示装置の駆動方
法については何ら言及していないが、本発明はパッシブ
・マトリックス駆動、薄膜トランジスタ等を用いたアク
ティブ・マトリックス駆動、プラズマ放電を用いたプラ
ズマ・アドレス駆動(PALC)等、如何なる駆動方式
にも適応できることは言うまでもない。
【0112】
【発明の効果】以上詳述したように本発明による場合に
は、吸収軸からのずれに伴う視野角特性の悪化を解消
し、概ね軸対称の視野角特性を有する液晶表示装置を提
供することが可能であるため、視野角を著しく拡大で
き、かつ同特性が全方位にわたって略等方的であるよう
にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる位相差補償素子の屈折率に関す
る条件を説明する模式図(斜視図)である。
【図2】本発明の適応できる液晶セルにおける、4つ以
上に配向分割した黒表示時の屈折率異方性に関する近似
を示す斜視図である。
【図3】本発明の適応できる液晶セルにおける、2つに
配向分割した黒表示時の屈折率異方性を各ドメイン毎の
近似を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1、3における液晶表示装置の
構成例を示す分解斜視図である。
【図5A】上下偏光板の吸収軸を二等分する方向に沿っ
た、視野角変化による光漏れを説明する図である。
【図5B】周知の技術による、上下偏光板の吸収軸を二
等分する方向に沿った、視野角変化による光漏れ低減効
果を説明する図である。
【図5C】本発明の技術による、上下偏光板の吸収軸を
二等分する方向に沿った、視野角変化による光漏れ低減
効果を説明する図である。
【図6】(a)は本発明の液晶表示装置に適用可能な液
晶セルの構成例を示す断面図、(b)はその平面図であ
る。
【図7】本発明の実施例1による場合の視野角特性を示
す図である。
【図8】比較例1での視野角特性を示す図である。
【図9】比較例2での視野角特性を示す図である。
【図10】本発明の実施例2、4における液晶表示装置
の構造例を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の実施例2における、コントラスト比
のdf(nx−nz)依存性を示す図である。
【図12】本発明の実施例2における、コントラスト比
のdf(nx−ny)依存特性を示す図である。
【図13】本発明の実施例2において、位相差補償素子
のx軸と偏光板の吸収軸との配置を規定する角度αを定
義する図である。
【図14】本発明の実施例2における、コントラスト比
のα依存特性を示す図である。
【図15】本発明の実施例3による場合の視野角特性を
示す図である。
【図16】比較例3での視野角特性を示す図である。
【図17】比較例4での視野角特性を示す図である。
【図18】本発明の実施例4における、コントラスト比
のdf(nx−nz)依存性を示す図である。
【図19】本発明の実施例4における、コントラスト比
のdf(nx−ny)依存特性を示す図である。
【図20】本発明の実施例4における、コントラスト比
のα依存特性を示す図である。
【図21】本発明の液晶表示装置に適用される液晶セル
の構成各種を説明する図及び液晶セルにおける液晶分子
の配向方向の定義を示す図である。
【図22】本発明における視野角の定義を説明する斜視
図である。
【図23】従来の配向分割による広視野角表示モードで
の代表的な視野角特性(等コントラスト・コンター曲
線)と、本発明による改善効果とを示す概念図である。
【符号の説明】
101 下偏光板 102 上偏光板 103 下位相差補償素子 104 上位相差補償素子 105 液晶セル 106 下偏光板の吸収軸 107 上偏光板の吸収軸 108 下位相差補償素子のx軸(最大屈折率を示す
軸) 109 上位相差補償素子のx軸(最大屈折率を示す
軸) 201 液晶セル 202 上偏光板の吸収軸 203 下偏光板の吸収軸 204 視野角を定義するための、液晶表示装置に平行
な仮想平面 205 視野角(観測者の視線) 301 等コントラスト・コンター曲線 302 等コントラスト・コンター曲線 401 位相差補償素子 402 位相差補償素子における屈折率楕円体 501 下基板 502 上基板 503 黒表示時の液晶層の屈折率異方性を示す屈折率
楕円体 521 下基板 522 上基板 523 ドメインA 524 ドメインB 525 ドメインAの液晶層の屈折率異方性を示す屈折
率楕円体 526 ドメインBの液晶層の屈折率異方性を示す屈折
率楕円体 A101 下偏光板 A102 上偏光板 A103 第1の下位相差フィルム A104 第1の上位相差フィルム A105 第2の下位相差フィルム A106 第2の上位相差フィルム A107 液晶セル A108 下偏光板の吸収軸 A109 上偏光板の吸収軸 A110 第2の下位相差フィルムのx軸(最大屈折率
を示す軸) A111 第2の上位相差フィルムのx軸(最大屈折率
を示す軸) A401 液晶表示装置を正面から見たときの光源側偏
光板の吸収軸 A402 液晶表示装置を正面から見たときの観測者側
偏光板の吸収軸 A403 液晶表示装置を正面から見たときの光源側位
相差補償素子のx軸 A404 液晶表示装置を正面から見たときの観測者側
位相差補償素子のx軸

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の基板に挟持された液晶層を有する
    液晶セルと、 該液晶セルを挟持するとともに直交ニコルの配置された
    一対の偏光板と、 該一対の偏光板と該液晶セルとの間の少なくとも一方に
    設けられた位相差補償素子と、を有し、 該液晶層にあっては、該液晶セル表面に平行な面内の局
    所的な屈折率異方性の値が白表示時よりも黒表示時の方
    が小さく、且つ、 前記位相差補償素子は屈折率異方性を呈するとともに、
    直交座標系XYZの主軸x、y、z軸に沿った方向の屈
    折率をnx,ny,nzとし主軸zは該液晶セル表面の
    法線に平行であり、主軸x,yは該液晶セル表面に平行
    な面内に有ると定義するとき、 nz<(nx+ny)/2、且つ、nx>nyである、
    液晶表示装置。
  2. 【請求項2】 前記一対の偏光板と前記液晶セルとの間
    に、それぞれ第1および第2の位相差補償素子を有す
    る、請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 【請求項3】 前記位相差補償素子がそれぞれ二枚の位
    相差補償フィルムからなるものであって、 前記液晶セルの片側に配された二枚の位相差補償フィル
    ムのうちの一方は、nx=ny且つnz<nxであり、
    且つ他方の位相差補償フィルムはny=nz且つnx>
    nyである、請求項1または2に記載の液晶表示装置。
  4. 【請求項4】 前記第1および第2の位相差補償素子の
    屈折率異方性が略同一である、請求項2または3に記載
    の液晶表示装置。
  5. 【請求項5】 前記第1および第2の位相差補償素子の
    それぞれの主軸xが互いに略直交している、請求項2か
    ら4の何れか記載の液晶表示装置。
  6. 【請求項6】 前記位相差補償素子の主軸xが、各々の
    位相差補償素子に最隣接の偏光板の吸収軸に直交する軸
    との成す角度が±45°である、請求項1から5の何れ
    かに記載の液晶表示装置。
  7. 【請求項7】 前記位相差補償素子の主軸xが、各々の
    位相差補償素子に最隣接の偏光板の吸収軸に略直交す
    る、液晶表示装置。
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