以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
尚、説明においては、液晶パネルとしてMVA型液晶表示装置を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、他の垂直配向型液晶表示装置やTN型液晶表示装置などに適用できるものである。
〔第1の実施の形態〕
まず、本発明の実施の形態の説明の前に、本発明で言う、第1種の位相差フィルムと、第2種の位相差フィルムについて説明する。
図8は、位相差フィルムを説明する図である。フィルム面内方向の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnzとしたときに、位相差フィルムでは、面内方向のリタデーションと、厚さ方向のリタデーションが重要である。面内方向のリタデーションは、
Rp=(nx−ny)d
厚さ方向のリタデーションは、
Rt=((nx+ny)/2−nz)d
で与えられる。
ここで、本発明では、nxがny、nzの何れよりも大きい、すなわち、nx>ny、nzの関係が成り立つ位相差フィルムを第1種の位相差フィルムと呼び、nx、nyのうち大きい方の方向を遅相軸と呼ぶ。位相差フィルムの厚さをdとすると、この第1種の位相差フィルムを通過することにより、面内方向にRp=(nx−ny)dのリタデーション(位相差)を生じる。また、nxとnyがほぼ等しく、且つ、nxとnyがnzよりも大きい、すなわち、nx≒ny>nzの関係が成り立つ位相差フィルムを、フィルム面の法線方向に光学的に負の一軸性を有する位相差フィルムといい、本発明では、第2種の位相差フィルムと呼ぶ。位相差フィルムの厚さをdとすると、この第2種の位相差フィルムを通過することにより、厚さ方向にRt=((nx+ny)/2−nz)dのリタデーションを生じる。また、上記では第1種の位相差フィルムでは面内方向のリタデーションRp、第2種の位相差フィルムでは厚さ方向のリタデーションRtについて触れたが、値の大小はあるが、それぞれに面内方向のリタデーションRp、厚さ方向のリタデーションRtが存在する。
尚、前述のように、第2種の位相差フィルムには、屈折率にnx≒ny>nzの関係があるとしたが、nxとnyの関係(nx≒ny)について、本明細書においては、
(nx+ny)/2−nz>(nx−ny)×2 あるいは
(nx−ny)×d≦20nm
とする。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置56を示す図である。液晶表示装置56は、透過型の液晶表示装置で、光の入射側から、保護層32、第1の偏光素子34、第1の第2種の位相差フィルム36、第1の第1種の位相差フィルム50、液晶パネル30、第2の第1種の位相差フィルム52、第2の第2種の位相差フィルム46、第2の偏光素子44、保護層42の順に配置されている。そして、保護層32と、第1の偏光素子34と、第1の第2種の位相差フィルム36は貼り合わされて一体となり、偏光板31を構成している。同様に、保護層42と、第2の偏光素子44と、第2の第2種の位相差フィルム46は貼り合わされて一体となり、偏光板31を構成している。つまり、第2種の位相差フィルム36、46は、偏光板31、40を構成する保護部材である、保護層を兼ねている。このように、本明細書では、偏光素子とは偏光機能を有する層を意味し、一般的に保護部材が一体となっている、いわゆる偏光板とは区別して考え、保護部材等は含めない。液晶パネル30は、図1乃至図3に示したような、4分割配向のMVA型LCDである。
一対の偏光子34、44の吸収軸は図中矢印で示すように直交しており、また、吸収軸の方向は、図1で説明したのと同様に、液晶の配向方向(例えば、Aに着目して)に対して45度となっている。一対の第1種の位相差フィルム50、52の遅相軸も図中矢印で示すように直交している。また、液晶パネル30に対して同じ側にある、偏光素子34(または44)の吸収軸と第1種の位相差フィルム50(または52)の遅相軸は直交している。また、第2種の位相差フィルム36、46の面内のリタデーションの遅相軸(面内の延伸方向)は、隣接する偏光素子34、44の吸収軸と平行か、あるいは直交するように配置できる。ここで、吸収軸と平行に配置した場合には、面内のリタデーションの計算(式1を用いる計算)には関与しない。
次に、具体的な数値を用い計算を行う。液晶パネル30の液晶層のリタデーションRLC(=Δnd)は280nmとした。第2種の位相差フィルム36、46としては、偏光板の保護層として使用されているTAC(トリアセチルセルロース)フィルムを用いた。このTACフィルムの厚さ方向のリタデーションRtは55nmである。面内方向のリタデーションRpは5nmであるが、遅相軸を隣接する偏光素子34、44の吸収軸と平行に配置したので、計算には加えない。ここで、一般的な偏光板では、その製造工程において偏光素子の延伸方向とTACフィルムの貼り合わせの軸の方向とが一致するため、自動的に一致するようになっている。第1種の位相差フィルム50、52の面内方向のリタデーションRpはともに35nm、厚さ方向のリタデーションRtはともに60nmとした。
したがって、液晶表示装置56の面内方向のリタデーションの合計Rp−tは、35×2=70nmとなった。また、厚さ方向のリタデーションの合計Rt−tは、55×2+60×2=230となった。また、式1から範囲を求めると、面内方向のリタデーションの合計Rp−t=71.2(±60)nmであり、液晶表示装置56のRp−tはこの範囲の中心近くにある。また、式2から範囲を求めると、厚さ方向のリタデーションの合計Rt−t=233nmであり、これも範囲に含まれる理想的な数値であった。このときの視角特性を図9に示す。
図9は、全方位から見たときにコントラストが等しくなる視野角を線で結んだ等コントラスト曲線である。この図9より、最もコントラストが悪い方位角45度方向を含め、全視野角でコントラスト20以上となり良好な表示が行えることがわかる。
次に、本発明で開示した最適なコントラストを求める2つの式、式1、式2について詳細に説明する。
本発明では、前述のように、第1種の位相差フィルムおよび第2種の位相差フィルムの特定の配置において、面内方向および厚さ方向の最適な範囲を以下の式で定義した。
Rp−t=2×(−0.08×RLC+58nm+α)
ただし、α=±30nm ・・・〔式1〕
Rt−t=(1.05±0.05)×RLC−47nm+β
ただし、−100nm≦β≦47nm ・・・〔式2〕
特に、式1を適用する際に、偏光素子に接する(偏光板の保護膜のように一体となっているような場合)、あるいは、偏光素子に隣接する(独立した部材として配置されような場合)位相差フィルムの遅相軸と、偏光素子の吸収軸とが平行な場合には、その位相差フィルムの面内方向のリタデーションは考慮に入れない。これは、位相差フィルムの遅相軸と偏光素子の吸収軸が平行である場合には、位相差フィルムで面内方向のリタデーションを与えないためである。
上記の本発明の式1および式2が最適解となることを説明する。図14は、斜め視角(方位角45度、傾き角80度)で観察したときに、コントラストが最大となる条件をプロットしたものであり、図14(A)は面内方向のリタデーションに関して、図14(B)は厚さ方向のリタデーションに関する図である。
図14(A)において、実線はコントラストが最大となる点を面内のリタデーションを条件としてプロットしており、点線はコントラストが2以上となる範囲を示している。この実線はほぼ直線と見ることができ、そのy切片が24(nm)となる。また、コントラストが2以上となる範囲は、各液晶のリタデーションRLCでほぼ同じであり、±60nmである。式1における+58nmおよびα=±30nmの項は、この数値が関係している。
また、図14(B)の厚さ方向のリタデーションの条件についても同様に考えられ、式2における−47nmおよび−100nm≦β≦47nmの項の数値が関係している。
次に、式1および式2のような簡単な式で条件が決まるかを図11乃至図13を用いて説明する。図11乃至図13は、位相差フィルムおよび液晶層を光が通過していくときの偏光の状態をポアンカレ球上の軌跡として示したもので、ポアンカレ球を北極から観察したものを図示している。
まず、図11を図5の第1の実施形態に当てはめて説明する。まず、斜め視角方向から観察しているので、偏光素子の吸収軸は45度から少し寝た状態に見えるため、点Dから少し点A方向にずれた点Eとなる。よって、入射してくる光の偏光状態は、点Fとなる。光は入射側の第2種の位相差フィルムを通過するが、斜め方向から見ているので、第2種の位相差フィルムは真横に軸を有するとみなすことができ、よって、点Aを軸として回転(回転は全て右回転である)し、球上を点Gまで移動する。破線は、南半球の軌跡である。次に、光は入射側の第1種の位相差フィルムを通過するが、ここでも斜め方向から見ているので、第1種の位相差フィルムの軸は点Cから少し点A方向にずれた点Kに軸があるとみなすことができる。よって、点Kを軸として回転し、球上を点Hまで移動する。次に液晶層を通過するが、液晶分子は縦方向に軸を持っているので点Bを軸として回転する。よって、点Hから点Cを経由して点Iまで移動する。次に、出射側の第1種の位相差フィルムを通過するが、斜め方向から見ているので、第1種の位相差フィルムの軸は点Dから少し点Aにずれた点Eにあるとみなすことができる。よって、点Eを軸として回転し、点Jまで移動する。最後に光は出射側の第2種の位相差フィルムを通過するが、入射側と同様に点Aに軸があるとみなすことができるため点Aを軸として回転し点Kまで移動する。点Kは出射側の偏光素子の吸収軸の方向に相当する。
図11乃至図13を参照して、図11と図12および図13では、液晶層のRLCの値が異なっている。よって、図11の線分HCIと、図12の線分ОCPの長さが異なっている。しかしながら、その形状はほぼ同一である。そして、図11の線分GH、IJと図12の線分NО、PQは、軌跡を投影した平面上では、同じ方向で且つ同じ長さである。しかし、実際はこれらの線分は球上の軌跡であり、その位置によって回転角が異なり長さが異なる。この違いは面内方向のリタデーションの大きさに相当する。長さ(回転角)が異なるのは、球上の位置、すなわち液晶層のリタデーションRLCによるものである。このため、最適な面内方向のリタデーションも液晶層のリタデーションRLCに依存し、式1でのRLCの係数が0.08になる。
次に、厚さ方向のリタデーションについてみると、液晶層による球上の動き(線分HCI、ОCP)と、第2種の位相差フィルムによる動き(線分FG+JK、FN+QK)とは、互いに打ち消しあう形となっている。すなわち、図11における線分FG+JKと線分HCIの差と、図12における線分FN+QKと線分ОCPの差とは、軌跡を投影した平面状では同一である。しかしながら、球上の回転角としては異なっている。このため、最適な厚さ方向のリタデーションも液晶のリタデーションRLCに依存し、式2でのRLCの係数が1.05となる。
以上のことから、本発明における式1および式2が導き出される。
〔第2の実施の形態〕
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る液晶表示装置58を示す図である。液晶表示装置58は、図5の液晶表示装置56と類似した構成であるが、相違点は、液晶パネル30の液晶層のリタデーションRLCが350nmである点と、第2の第1種の位相差フィルム52と第2の第2種の位相差フィルム46との間に第2の第2種の位相差フィルム54を挿入した点である。位相差フィルム54は、厚さ方向のリタデーションが55nmであり、面内の遅相軸は液晶層と同じ側にある偏光素子44の吸収軸と並行にした。
液晶表示装置58の面内方向のリタデーションの合計Rp−tは70nm、厚さ方向のリタデーションの合計は285nmである。式1からは、Rp−t=60±30nmとなり、中心からは少しずれたが十分範囲内に入っている。式2からは、Rt−t=303nmとなり、同様に中心からは少しずれたが、十分に範囲に入っている。ここで、式の中心から外れた理由であるが、これは、第2種の位相差フィルムの配置が非対称であるためである。図12に示すように、本実施形態の場合には、第2種の位相差フィルムによる効果は線分FGとMKのように非対称であって、線分GHとLMについてもその位置が異なるため、本来の最適な値は異なっていてしかるべきである。しかしながら、本実施形態では、第1種の位相差フィルムは図5の第1の実施形態と同じものを用いており、よって、式2の中心から条件が少し外れたものと思われる。
図10は、第2の実施形態における視角特性を示す図である。条件が最適値から少し外れたためか、第1の実施形態(図9)と比較すると、斜め45度方向で、コントラスト20の線が内側に入っているが、それでも、コントラスト20近くであり、十分に良好な視角特性である。
ここで、式1および式2で定義される範囲のぎりぎりの場合について実験を行った。この場合、第2種の位相差フィルムとして、市販のノルボルネン系フィルムを二方向に延伸して、厚さ方向に種々のリタデーションを持ったフィルムを作成した。視角特性は、図9のものと比較すると悪いものであったが、それでも、全方位でコントラスト5以上を実現し、十分良好な視角特性を得られた。
〔第3の実施の形態〕
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る液晶表示装置59を示す図である。液晶表示装置59は、図5の液晶表示装置56と類似した構成であるが、相違点は、液晶パネル30の液晶層のリタデーションRLCが350nmである点と、偏光板31’、40’が異なる点である。偏光板31’、40’は、第2種の位相差フィルムとなる保護層のTACフィルムを、厚さ方向のリタデーションが通常のTACフィルムより大きく、90nmから125nmのフィルム38、48(以下、厚TACフィルムとも言う)を用いた。このような厚TACフィルム38、48を用いると、第2の実施形態のように液晶層のリタデーションRLCが350nm程度の液晶パネルを用いるときに有効である。すなわち、第2の実施形態の場合のように、追加のTACフィルムを第2種の位相差フィルムとして挿入する必要がない。
液晶表示装置59は、厚TACフィルム38、48の厚さ方向のリタデーションが90nm、面内方向のリタデーションが10nm(但し、遅相軸が偏光素子の吸収軸と平行)であり、第1種の位相差フィルムの面内方向のリタデーションが40nm、厚さ方向のリタデーションが55nmである。したがって、厚さ方向のリタデーションの合計Rt−tは290nmとなり、式2による303nmという値に近い値を実現できた。
次に、本発明における、さらに好適な範囲の組み合わせを示す。
液晶層のリタデーションRLCを280nm±30nm、厚さ方向のリタデーションの合計Rt−tを220nm±40nm、面内方向のリタデーションの合計Rp−tを80nm±40nmとする。
液晶層のリタデーションRLCを350nm±40nm、厚さ方向のリタデーションの合計Rt−tを290nm±60nm、面内方向のリタデーションの合計Rp−tを80nm±40nmとする。
ここで、厚さ方向および面内方向のリタデーションにある幅を持たせているが、これは、図15に示すように、面内方向のリタデーションの合計が大きいと、斜め視角からの黒表示が青みがかり、小さい場合には、コントラストが低下し赤みがかる。また、厚さ方向のリタデーションの合計では、小さい場合に青みがかり、大きい場合には赤みがかる。これらは、好みによる個人的な問題であり、一概に一点にも決められない場合もある。したがって、これらの傾向も考慮してリタデーションの範囲にも幅を持たせている。
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4乃至第6の実施の形態によるMVA型液晶表示装置について説明する。各実施形態の説明に入る前に本実施形態が解決しようとする課題についてより具体的に説明する。図16は、図1のMVA型液晶表示装置において、第1の偏光素子21と液晶パネル30の間に、上記の第1種の一軸性位相差フィルム80を加えた構成を示し、図17はその視角特性を示す。図4と図17を比較して明らかなように、高コントラストが得られる視野角が広がり、特に45度方位などの上下左右方向以外の方向から見たときのコントラストが向上することが分かる。
上記の第1種の一軸性位相差フィルムは、例えばノルボルネン系フィルムなどを延伸して製造するが、MVA型液晶表示装置において使用される第1種の一軸性位相差フィルムの複屈折の値は、50nmあるいはそれ以下の値が要求されることがあり、このような小さな値を延伸フィルムで実現するのは難しかった。そのため、そのような仕様の第1種の一軸性位相差フィルムを製造する場合のマージンは狭く、量産する上での大きな問題になっていた。
また、特願平10−185836号は、MVA型液晶表示装置で位相差フィルムを設ける各種の構成を開示しているが、一層の視角特性の向上が求められている。
本実施形態は、このような問題を解決するためのもので、第1の目的は製造マージンが高く安定して製造可能な複屈折の値の小さな第1種の一軸性位相差フィルムを実現すると共に、それを使用して視角特性を改善したVA型液晶表示装置を実現することであり、第2の目的は位相差フィルムを加えた構成で視角特性を一層向上したVA型液晶表示装置を実現することである。
上記目的を実現するため、本実施形態の第1の態様は、負の複屈折を有する層が傾いて積層されて積層群をなし、このような積層群を傾きの方向が逆方向となるように2つ対向して積層することにより第1種の位相差フィルムと同等の特性を有する視角補償フィルムを実現する。
図18は、本実施形態の視角補償フィルムの原理構成を示す図である。特開平8−50206号公報に開示されているディスコティック液晶のような、負の複屈折特性を有する層状の光学材料が知られている。更に、特開平8−50206号公報は、ラビング膜を有する基板上にディスコティック液晶層を形成することにより負の複屈折を有し且つフィルムの法線から傾斜した方向にリタデーションの最小値を有する光学補償フィルム、すなわち第2種の一軸性位相差フィルムを開示している。本願発明の発明者は、ディスコティック液晶のような負の複屈折特性を有する層状の光学材料81、82を、図18(A)に示すように、逆方向に傾けて組み合わせると、図18(B)に示すように、nx>ny≒nzの関係、すなわち第1種の一軸性位相差フィルムと同等の光学特性が得られることを発見した。
図18(C)に示すように、2つの基板83、85の上にそれぞれ負の複屈折を有する逆方向に傾いた層を積層した積層群84、86を形成し、積層群84と86が対向するように配置すれば、第1種の一軸性位相差フィルムと同等の光学特性を有する光学補償フィルムが実現できる。また、図18(D)に示すように、対向した積層群84と86の間に接着材87を設けて一体にすることも可能である。いずれにしろ、2つの積層群の各層は面対称に配置される。
層状の光学材料としては、特開平8−50206号公報に開示されているディスコティック液晶が使用できる。また、特開平8−50206号公報に開示されているように、ラビング膜を有する基板上にディスコティック液晶を塗布した光学補償フィルムの場合、ディスコティック液晶層の傾き角度は基板に接する部分では小さく、基板から離れるに従って徐々に大きくなり、例えば、10度以下から70度±10度まで変化するが、その場合でも2つの液晶層を対向するように配置すれば第1種の位相差フィルムと同等の光学特性が得られる。なお、本実施形態の光学補償フィルムは、特開平8−50206号公報に開示された方法と同様の方法で製造することが可能であり、複屈折の値が50nmあるいはそれ以下の値のものでも容易に製造可能である。
本実施形態の光学補償フィルムを、VA型液晶表示装置に使用すれば、視角特性を大幅に向上させることができる。
本実施形態の第2の態様の液晶表示装置は、VA型液晶パネルと、その両側に吸収軸が互いに直交するように配置された第1及び第2の偏光素子と、液晶パネルと第1の偏光素子との間に遅相軸が第1の偏光素子の吸収軸と直交するように配置された第1の位相差フィルム(第1種の一軸性位相差フィルム)と、液晶パネルと第2の偏光素子との間に遅相軸が第2の偏光素子の吸収軸と直交するように配置された第2の位相差フィルム(第1種の一軸性位相差フィルム)と、第1の偏光素子と第1の位相差フィルムとの間、第1の位相差フィルムと液晶パネルとの間、第2の偏光素子と第2の位相差フィルムとの間、あるいは第2の位相差フィルムと液晶パネルとの間の少なくとも一か所に配置された付加位相差フィルム(第2種の一軸性位相差フィルム)とを備えることを特徴とする。
本実施形態の第2の態様の液晶表示装置の構成により、視角特性が一層向上することを発見した。
なお、付加位相差フィルムは第2種の一軸性位相差フィルムであり、本実施形態では、第2種の一軸性位相差フィルムは、0nm≦(nx−ny)d≦10nm(d:付加位相差フィルムの厚さ)の関係の特性を有するものとする。
本実施形態の第2の態様の液晶表示装置は、特にMVA型液晶表示装置であることが望ましい。
第1及び第2の位相差フィルムは、前述のようにフィルムを延伸して実現できるが、第1の態様の光学補償フィルムのような高分子液晶層を有するフィルムを使用することも可能である。
図19は、本発明の第4の実施の形態によるMVA型液晶表示装置(LCD)の構成を示す図である。図示のように、第4の実施の形態によるMVA型LCDは、液晶パネル30と、液晶パネル30の両側に配置した第1と第2の偏光素子21と22と、液晶パネル30と第1の偏光素子21の間に配置した第1と第2の光学補償フィルム88と89を有する。液晶パネル30は、図2及び図3で説明したのと同じ構成を有する。従って、第4の実施の形態のMVA型LCDは、図1に示した構成において、第1と第2の光学補償フィルム88と89を付加した構成を有する。第1と第2の光学補償フィルム88と89は、図18(C)に示すように、基板83と85の上にディスコティック液晶層84と86をそれぞれ形成したものであるが、図18(D)のように液晶層84と86の間に接着層87を設けて一体化したものを使用してもよい。ディスコティック液晶層84と86の形成方法については、特開平8−50206号公報に詳細に開示されており、ここでは説明を省略し、実施形態によるMVA型液晶表示パネルに使用するときの特性についてのみ説明する。
図18(A)に示すように、ディスコティック液晶分子は円盤状で、ディスコティック液晶層84と86においては、各ディスコティック液晶分子が積層される。まず、各ディスコティック液晶分子が45度の傾き角(チルト角)で均一に積層されているとしてシミュレーションを行った。ディスコティック液晶分子は、負の屈折率異方性を有しており、円盤内の2つの方向の屈折率naは等しく、円盤に垂直な軸方向の屈折率をnbとすると、na>nbである。図18(A)に示すように、逆方向に傾いたディスコティック液晶分子を積層した2つの液晶層を組み合わせると、ディスコティック液晶分子を傾ける方位と90度異なる方位、すなわち図18(B)のnxの方位に異方性があった。すなわち、nx>ny≒nzの第1種の一軸性位相差フィルムの特性を有することを見出した。なお、この場合の「傾いた」の意味は、層が傾いていることであり、言い換えれば光学軸(円盤に垂直な方向の軸)が傾いていることである。また、ディスコティック液晶の厚さdを変化させると、リタデーション(複屈折の値)は(na−nb)×dで変化することが分かった。前述のように、第1種の一軸性位相差フィルムも面内方向に(nx−ny)dのリタデーションを生じるので、複屈折の値と厚さの間でも類似の特性が得られ、所望の第1種の一軸性位相差フィルムのリタデーションをA、45度傾けるディスコティック液晶の各々のリタデーションをBとすると、B=A±30%であればよいことが分かった。例えば、45nmの複屈折を生じる第1種の一軸性位相差フィルムと同等の特性の光学補償フィルムを得るには、各々40nmの負のリタデーションを有するディスコティック液晶層を有するフィルムを液晶層が対向するように組み合わせればよい。
ところで、特開平8−50206号公報に開示されている方法でディスコティック液晶層を有するフィルムを製造すると、図20に示すように、円盤状のディスコティック液晶分子のチルト角が徐々に変化する。図20において、参照番号83と85は基板であり、84と86はディスコティック液晶層である。ディスコティック液晶のチルト角は、基板近傍の位置においてθ1が4度で、基板から離れた位置においてθ2が68度であり、ディスコティック液晶層84と86の液晶分子は面対称に配置されている。このようなフィルムで正面から見たときの基板面内方向のリタデーションが18nmのものを、図19の第1と第2の光学補償フィルム88と89としてそれぞれ使用したときに、面内方向のリタデーションが45nmの第1種の一軸性位相差フィルムと同等の特性が得られた。このときのMVA型LCDの視角特性を図21に示す。図17と比較して明らかなように、第1種の一軸性位相差フィルムを使用した場合と同等(あるいはそれ以上)の視角特性が得られることが分かる。
条件を変えてシミュレーションを行い最適値を検討した結果、ディスコティック液晶層を有する2枚のフィルムを組み合わせる場合、第1種の一軸性位相差フィルムを使用した場合の最適なリタデーション(面内リタデーション)をA、徐々にチルト角が変化するディスコティック液晶層を有するフィルム1枚の正面リタデーション(法線方向から見た基板面内のリタデーション)をBとすると、B=A/2×0.8±30%の範囲において良好な特性が得られることが分かった。
以上のように、第4の実施の形態では、負の複屈折を有する層を逆方向に積層して組み合わせることで、第1種の一軸性位相差フィルムと同等の特性が得られる。これにより、これまで製造が難しかった複屈折の値が50nmあるいはそれ以下の値の第1種の一軸性位相差フィルムと同等の特性のフィルムが容易に製造できるようになり、VA型LCDの視角特性を向上させることができる。
〔第5の実施の形態〕
図22は、本発明の第5の実施の形態によるMVA型LCDの構成を示す図である。液晶パネル30は4分割MVA型であり、液晶パネル30の一方の基板(TFT基板)には画素電極、ゲートバスライン、データバスライン、TFT素子、ドメイン規制用のジグザグ状の突起又はスリットなどが形成されており、他方の基板(CF基板)には全面透明電極、カラーフィルタ、ドメイン規制用のジグザグ状の突起などが形成されている。両基板上には、ポリイミドからなる垂直配向膜が形成され、両基板は3.5μm径のスペーサを介して貼り合わされ、間に負の誘電率異方性を有するネマティック液晶(Δn=0.082)が封入される。
液晶パネル30の両側には、電圧印加時に液晶分子が斜めになる方向に対して吸収軸71、72が45度をなし、且つ互いに吸収軸が直交するように、第1及び第2の偏光素子21、22が配置される。また、4分割の領域における液晶分子が斜めになる方向(配向方向)は、液晶パネルの基板平面に投影して見たときに、それぞれ約90度ずつ異なっている。なお、本実施形態は、この構成(分割の配向方向及び偏光板の吸収軸、位相差フィルムの遅相軸が上記の関係)において特に顕著な効果を呈する。
液晶パネル30と第1の偏光素子21の間に、nx>ny≒nzが成り立ち、その遅相軸(nx方向)73が第1の偏光素子21の吸収軸と直交するように第1種の一軸位相差フィルム61を配置する。この第1種の一軸位相差フィルムは、例えば、市販されているようなノルボルネン系フィルムを延伸したものであるが、第4の実施の形態による負の複屈折を有する層を逆方向に積層して組み合わせたものを使用することも可能である。なお、第1種の一軸位相差フィルムのnyとnzは等しいことが望ましいが、製造誤差(ばらつき)によりnyとnzは完全には一致しない。本実施形態では、第1種の一軸位相差フィルムにおいては、0≦(ny−nz)×d≦20nmの関係が成り立つものとする。更に、液晶パネル30と第2の偏光素子22の間に、nx>ny≒nzが成り立ち、その遅相軸(nx方向)74が第2の偏光素子22の吸収軸と直交するように第1種の一軸位相差フィルム62を配置する。第1種の一軸位相差フィルム61と62の面内方向のリタデーションRは等しい。
第1の偏光素子21と第1種の一軸性位相差フィルム61との間に、nx≒ny>nzが成り立つ第2種の一軸性位相差フィルム63を配置する。なお、本明細書では、第2種の一軸位相差フィルムにおいては、0≦(nx−ny)×d≦10nmの関係が成り立つものとする。更に、第2の偏光素子22と第1種の一軸性位相差フィルム62との間に、nx≒ny>nzが成り立つ第2種の一軸性位相差フィルム64を配置する。第2種の一軸性位相差フィルム63と64の厚さ方向のリタデーションRtは等しい。
以上のような構成において、液晶パネル30のリタデーションRLCを、288nm、345nm、411nmとした場合に、第1種の一軸性位相差フィルム61と62のリタデーションRと、第2種の一軸性位相差フィルム63と64のリタデーションRtを変化させた場合の視角特性をシミュレーションにより調べた結果を図23乃至図25に示す。なお、液晶パネルのリタデーションRLCは、RLC=Δn×d(d:液晶層の厚さ)で表される。これらの図は、横軸にリタデーションR、縦軸にリタデーションRtをとり、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストが同一になる(R,Rt)を線で結んだ等高線グラフであり、図23はリタデーションRLCが288nmのときを、図24はリタデーションRLCが345nmのときを、図25はリタデーションRLCが411nmのときを示す。
図4に示したように、位相差フィルムを使用しないときには、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストは1であり、それ以上となる(R,Rt)の条件では、位相差フィルムを設ける効果があるといえる。
図23乃至図25の結果から、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストがもっとも高くなる(R,Rt)の条件を求め、リタデーションRLCに対してプロットした結果を図26に示す。なお、リタデーションRtについては、第2種の一軸性位相差フィルム63と64のリタデーションRtの和、すなわちRt×2の最適値をプロットした。更に、3枚以上の第2種の一軸性位相差フィルムを用いる場合には、各フィルムのリタデーションRtの和を考えればよい。図26の結果から、リタデーションRの最適値はリタデーションRLCに対して、
リタデーションRの最適値:−0.08×RLC+58
Rt×2の最適値:1.13×RLC−105
の関係があることが分かる。(単位はnm)
第5の実施の形態において、リタデーションRLC=345nm、リタデーションR=30nm、リタデーションRt=145nmとしたときの等コントラスト曲線を、図27に示す。この場合、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストは約100であり、視角特性が大幅に改善されることが分かる。
第5の実施の形態の構成で、実際に第1種の一軸性位相差フィルム61と62として上記のリタデーションR=40nmの延伸したノルボルネン系フィルムを使用し、第2種の一軸性位相差フィルム63と64としてリタデーションRt=100nmのポリカーボネート(PC)フィルムを使用したところ、良好な視角特性が得られた。
なお、第5の実施の形態では、第1の偏光素子21と第1種の一軸性位相差フィルム61の間に第2種の一軸性位相差フィルム63を1層、第2の偏光素子22と第1種の一軸性位相差フィルム62の間に第2種の一軸性位相差フィルム64を1層配置し、2層の第2種の一軸性位相差フィルム63と64のリタデーションRtは等しかった。しかし、第2種の一軸性位相差フィルム63と64は一層に限定されず、複数の層で構成することも可能である。例えば、第1の偏光素子21と第1種の一軸性位相差フィルム61の間か、第2の偏光素子22と第1種の一軸性位相差フィルム62の間の少なくとも一方に、nx≒ny>nzの関係が成り立つN(N≧1)層の第2種の一軸性位相差フィルムを配置した場合について調べた。その結果、N層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)dを、それぞれリタデーションRt1、Rt2、…、RtNとすると、リタデーションR及びリタデーションRt1+Rt2+…+RtNの最適値とリタデーションRLCの間に次のようにな関係があることが分かった(単位はnm)。
リタデーションRの最適値:−0.08×RLC+58
Rt1+Rt2+…+RtNの最適値:1.13×RLC−105
すなわち、第2種の一軸性位相差フィルムを複数設けた場合には、それらのリタデーションRtを合計した値を有する1層の第2種の一軸性位相差フィルムを設けた場合と同等である。
〔第6の実施の形態〕
図28は、本発明の第6の実施の形態によるMVA型LCDの構成を示す図である。第6の実施の形態の第5の実施の形態と異なる点は、第2種の一軸性位相差フィルム63と64の代わりに、第1種の一軸性位相差フィルム61と液晶パネル30との間に、nx≒ny>nzが成り立つ第2種の一軸性位相差フィルム65を配置し、第1種の一軸性位相差フィルム62と液晶パネル30との間に、nx≒ny>nzが成り立つ第2種の一軸性位相差フィルム66を配置した点である。この場合も第1種の一軸性位相差フィルム61と62のリタデーションRは等しく、第2種の一軸性位相差フィルム65と66のリタデーションRtは等しい。
第6の実施の形態においても、第5の実施の形態と同様に、液晶パネル30のリタデーションRLCを、288nm、345nm、411nmとした場合に、第1種の一軸性位相差フィルム61と62のリタデーションRと、第2種の一軸性位相差フィルム65と66のリタデーションRtを変化させた場合の視角特性をシミュレーションにより調べた結果を図29乃至図31に示す。これらの図は、横軸にリタデーションRt、縦軸にリタデーションRをとり、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストが同一になる(Rt,R)を線で結んだ等高線グラフであり、図29はリタデーションRLCが288nmのときを、図30はリタデーションRLCが345nmのときを、図31はリタデーションRLCが411nmのときを示す。更に、図29乃至図31の結果から、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストがもっとも高くなる(Rt,R)の条件を求め、リタデーションRLCに対してプロットした結果を図32に示す。この場合も、リタデーションRtについては、第2種の一軸性位相差フィルム65と66のリタデーションRtの和、すなわちRt×2の最適値をプロットした。図32の結果から、リタデーションRの最適値はリタデーションRLCに対して、
リタデーションRの最適値:リタデーションRLCにかかわらず95で一定
Rt×2の最適値:0.89×RLC−137
の関係があることが分かる。(単位はnm)
なお、第6の実施の形態においても、第2種の一軸性位相差フィルム65と66は一層に限定されず、複数の層で構成することも可能である。第1種の一軸性位相差フィルム61と液晶パネル30との間か、第1種の一軸性位相差フィルム62と液晶パネル30との間の少なくとも一方に、nx≒ny>nzの関係が成り立つM(M≧1)層の第2種の一軸性位相差フィルムを配置した場合について調べた。その結果、M層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)dを、それぞれリタデーションRt’1、Rt’2、…、Rt’Mとすると、リタデーションR及びリタデーションRt’1+Rt’2+…+Rt’Mの最適値とリタデーションRLCの間に次のようにな関係があることが分かった(単位はnm)。
リタデーションRの最適値:リタデーションRLCにかかわらず95で一定
Rt’1+Rt’2+…+Rt’Mの最適値:0.89×RLC−137
すなわち、第2種の一軸性位相差フィルムを複数設けた場合には、それらのリタデーションRtを合計した値を有する1層の第2種の一軸性位相差フィルムを設けた場合と同等である。
図33は、第4乃至第6の実施の形態によるMVA型LCDの他の構成例を示す図である。この構成例では、第1種の一軸位相差フィルム61と第1の偏光素子21との間、第1種の一軸位相差フィルム61と液晶パネル30との間、第1種の一軸位相差フィルム62と液晶パネル30との間、第1種の一軸位相差フィルム62と第2の偏光素子21との間に、それぞれ第2種の一軸性位相差フィルム63、65、66、64を配置する。すなわち、図22の第5の実施の形態の構成に、第2種の一軸性位相差フィルム65と66を加えた構成であり、又は図28の第6の実施の形態の構成に、第2種の一軸性位相差フィルム63と64を加えた構成である。
図33の構成で、両基板を4.0μm径のスペーサを介して貼り合わせ、間に負の誘電率異方性を有するネマティック液晶(Δn=0.086)を封入した液晶パネル30を使用し、第1種の一軸性位相差フィルム61、62としてリタデーションR=45nmの延伸フィルム又は高分子液晶層(例えば、ディスコティック液晶層など)を有するフィルムを使用し、第2種の一軸性位相差フィルム63、64、65、66としてリタデーションRt=60nmのポリカーボネート(PC)フィルムを使用したところ、良好な視角特性が得られた。
以上のように、第2種の一軸性位相差フィルムを設ける位置や枚数については各種の変形例が可能である。ここで、シミュレーションにより、図33の構成例において複数枚の第2種の一軸性位相差フィルムを設けた場合の最適な条件について調べた。すなわち、第1の偏光素子21と第1種の一軸性位相差フィルム61との間か、あるいは第2の偏光素子22と第1種の一軸性位相差フィルム62との間の少なくとも一方に、nx≒ny>nzの関係が成り立つN層の第2種の一軸性位相差フィルムを配置し、第1種の一軸性位相差フィルム61と液晶パネル30との間か、あるいは第1種の一軸性位相差フィルム62と液晶パネル30との間の少なくとも一方に、nx≒ny>nzの関係が成り立つM層の第2種の一軸性位相差フィルムを配置した場合を調べた(N+M≧1)。
その結果、N層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)dを、それぞれリタデーションRt1、Rt2、…、RtNとし、M層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)dを、それぞれリタデーションRt’1、Rt’2、…、Rt’Mとすると、リタデーションR及びリタデーションRt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’Mの最適値とリタデーションRLCの間に次のようにな関係があることが分かった(単位はnm)。
リタデーションRの最適値:(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)
Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’Mの最適値:(1.13×RLC−105)×α+(0.89×RLC−137)×(1−α)
但し、α=(Rt1+Rt2+…+RtN)/(Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’M)、及び単位はnmである。
以上のように求めたリタデーションR及びリタデーションRt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’Mの最適値を基準に、リタデーションRについては±60nm、リタデーションRt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’Mについては±120nmの範囲であれば、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストがほぼ2以上となり、図4の位相差フィルムを使用しないときに比べて位相差フィルムを付加することにより視角特性が改善されることが分かった。
更に、リタデーションRについては±30nm、リタデーションRt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’Mについては±60nmの範囲であれば、45度方位の斜め80度からパネルを見たときのコントラストがほぼ5以上となり、視角特性は一層改善されることが分かった。
以上、本発明の実施形態について説明したが、光学フィルムとして、偏光板の支持基板として広く用いられているTAC(トリアセチルセルロース)フィルムを使用することも行った。一般に偏光板は、ロール状に巻かれたTACフィルム、ロール状に巻かれたヨウ素を添加されたPVA(ポリビニールアルコール)フィルム、ロール状に巻かれたTACフィルムを、ロールから巻き出されたものをそのまま貼り合わせてロールに巻き取る形で製造されている。
ここにおいて、ロールから出たフィルムのうち、少なくとも液晶パネル側のTACフィルムを面内の一方向に延伸した。一般的にPVAフィルムは、ロールの送り出される方向に延伸されていて、この方向に光学軸(Optic axis of wave normal)を有し、ヨウ素はこの方向に配列し、PVAフィルムの光学軸と平行に吸収軸を有する。液晶パネル側のTACフィルムの延伸方向は、PVAフィルムの延伸された方向(一般的にロールの送り出される方向)あるいはヨウ素の配向される方向あるいはPVAフィルムの光学軸の方向に垂直である。このため、TACフィルムの延伸方向は、一般的にはロールの送り出される方向に垂直な方向とした。もちろん、PVA(ヨウ素)フィルムの光学軸とTACフィルムの延伸方向とが垂直であれば、上記の延伸方向の関係に限られるものではない。
この延伸したTACフィルムの条件としては、面内リタデーションが10nmから100nm、望ましくは60nm±30nmのときに良好な視角特性をえることができた。このように、TACフィルムを一方向のみに延伸し、隣接する偏光層(PVA、ヨウ素層)の吸収軸に延伸方向が直交するフィルムが視野角改善に有効であった。実際に、上記の偏光板一対と垂直配向した液晶層(MVA)とを積層させ、他には何も追加しない構成であっても、視角特性の改善効果が認められた。
以上説明したように、本実施形態によれば、複屈折の値の小さな面内リタデーションを生じる第1種の一軸性位相差フィルムを高い製造マージンで安定して製造することが可能になるので、それを使用してVA型液晶表示装置の視角特性を改善することができる。また、本実施形態によれば、VA型液晶表示装置での位相差フィルムの最適な構成が実現でき、視角特性を一層向上できる。
〔第7の実施の形態〕
次に、本発明の第7の実施の形態による液晶表示装置について説明する。実施形態の説明に入る前に本実施形態が解決しようとする課題についてより具体的に説明する。本実施形態は、視角特性を改善するために少なくともディスコティック液晶フィルムを光学補償フィルムとして備えた液晶表示装置に関し、さらに、ベンド配向の液晶層を用いるOCB(Optically Compensated Birefringence mode)モードの液晶表示装置に関する。
近年、高精細で十分な動画表示ができる高速応答の液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)の必要性が高まっている。従来のLCDで動画表示をさせようとすると、ホールド(hold)型である駆動方式に起因する本質的な表示ボケと、CRTに比べて格段に劣る応答性に起因する表示ボケが混在して発生し、動画画面は非常に見づらいものになる。
駆動方式に起因する表示ボケについては、定期的に黒ラインを書き込むCR法や、例えば表示フレーム内でバックライトを周期的に点滅させるスキャンバックライト法などで対応可能である。一方、応答性に起因する表示ボケについては、LCDの応答性能そのものを向上させるほか対応策はなく、そのため従来様々な液晶動作モードが試されている。一例として強誘電・反強誘電性液晶を用いた駆動モードでは、マイクロ秒(μs)オーダでの高速応答を実現できるが、配向制御に大きな難点があり、実用レベルには至っていない。また、ネマティック液晶を用いた種々の駆動モードが試されているが、高速応答が得られる代わりに表示品質が劣化してしまうという問題がある。
ネマティック液晶を用いた駆動モードのうち、ベンド配向を用いたOCBモードは、階調に依らず10ミリ秒(ms)以下の応答性を実現可能な高速応答LCDであり、ここ数年来実現に向けて期待が高まっている。このOCBモードLCDの構成及び動作について図34及び図35(A)乃至図35(D)を用いて簡単に説明する。
図34は、OCBモードLCDの概略構成を示す斜視図である。図35(A)は、OCBモードLCDの概略構成を示す断面図であり、図35(B)乃至図35(D)は、OCBモードLCDの各構成要素中の液晶のチルト角変化を各液晶層の厚さ方向(光入射側(下方)から光射出側(上方)へ見たリタデーション値の増加方向;以下、深さ方向位置という)にプロットしたグラフを示している。
OCBモードでは、電圧無印加時にスプレイ配向しているネマティック液晶を、表示駆動の際に比較的高い所定電圧を印加してベンド配向に変える。そして、ベンド配向が維持される印加電圧範囲内で画像表示を行う。OCBモードは、階調に応じた電圧を液晶層に印加してベンド配向液晶分子のチルト状態を制御することにより、液晶層を透過する光の位相差を制御して画像表示する複屈折型の液晶表示装置である。
図34及び図35(A)乃至図35(D)において、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)及び表示電極が形成されたアレイ基板102と、アレイ基板102に対向配置され共通電極が形成された対向基板104と、アレイ基板102と対向基板104との間の空隙に封止された液晶層110とで液晶セル100が構成される。アレイ基板102の液晶層110と反対側の表面には偏光板106が配置される。対向基板104の液晶層110と反対側の表面には、偏光板106の光透過軸と直交(クロスニコル)する光透過軸を有する偏光板108が配置される。
また、アレイ基板102と偏光板106との間には、ディスコティック液晶フィルム(光学異方素子)112が配置される。対向基板104と偏光板108との間には、ディスコティック液晶フィルム114が配置される。これらディスコティック液晶フィルム112、114は、液晶層110でのリタデーション(位相差)をできるだけ相殺して液晶層110における屈折率楕円体をできるだけ球に近づけるように補償して高視野角のパネルを実現するために設けられている。
アレイ基板102及び対向基板104の両基板の液晶層110側に形成された配向膜(図示せず)には同一方向116、118のラビング処理が施されている。これにより、アレイ基板102と対向基板104との間に封止された液晶層110の液晶分子は、所定電圧印加時において平面118内でベンド配向する。なお、ラビング方向は、偏光板106、108の光透過軸に対して45°の角度をなしている。また、図34及び図35に示すOCBモードLCDは、偏光板106、108をクロスニコルに配置しているので、ベンド配向が維持される印加電圧範囲内での最低電圧時に白を表示するノーマリホワイト型となる。
図34に示す液晶層110は、ベンド配向が維持される印加電圧範囲内で最高電圧値を印加して黒を表示させた状態での分子配列を例示している。黒表示において液晶層110の中央部の大部分の液晶分子が、アレイ基板102及び対向基板104の基板面法線方向(図中上下方向)にほぼ平行になり、両基板近傍で液晶分子は徐々に当該法線方向と直交する方向に傾斜して、両基板表面の配向膜近傍では、液晶分子は前記法線方向に対してほぼ直角に傾斜する。
図35(A)の液晶層110に示すように、OCBモードでのベンド配列では、液晶層110のほぼ中央で基板面に平行な直線に対して上半分の液晶分子110e〜110hと下半分の液晶分子110a〜110dとがほぼ対称となるように傾斜する。なお、本明細書において液晶分子に付した符号の添え字は、連続的に分布する液晶分子の位置を離散的に表現しただけであり、分子の数等を示したものではない。
黒表示における液晶層110での液晶分子の傾斜状態を図35(C)を用いて説明する。図35(C)は、アレイ基板102(下側)から対向基板104(上側)に向かって見た深さ方向位置を横軸に表している。また縦軸は液晶層110内の液晶分子のチルト角(傾斜角)を表している。なお、本明細書において、チルト角は図36に示すように、基板面法線に直交する方向を0°として、反時計回りに正の角度をとるものとする。
図35(C)に示すように、黒表示における液晶層110の液晶分子のチルト角は、アレイ基板102側(下)から対向基板104側(上)に向かって見て、0°近傍から急峻に−90°付近まで変化し、さらに単調減少しつつ概ね90°近辺を保った後、対向基板104側近傍において急峻に90°近辺から−180°近辺まで変化する。
これに対するディスコティック液晶フィルム112内のディスコティック液晶分子のチルト角変化について、図35(D)を用いて説明する。図35(D)は、偏光板106側(下側)からアレイ基板102側(上側)に向かって見たフィルム内の深さ方向の位置(基板面法線方向の位置)を横軸に表している。また縦軸はフィルム内のディスコティック液晶分子112a〜112dのチルト角を表している。ディスコティック液晶分子112a〜112dのチルト角は、黒表示における液晶層110の下半分側の液晶分子110a〜110dの光学特性を補償すべく、図35(D)に示すように、偏光板106側(下側)からアレイ基板102側(上側)に向かって見て、−90°近傍から0°付近まで直線的に変化している。
次に、ディスコティック液晶フィルム114内のディスコティック液晶分子のチルト角変化について、図35(B)を用いて説明する。図35(B)は、対向基板104側(下側)から偏光板108側(上側)に向かって見たフィルム内の深さ方向の位置(基板面法線方向の位置)を横軸に表している。また縦軸はフィルム内のディスコティック液晶分子114a〜114dのチルト角を表している。ディスコティック液晶分子114a〜114dのチルト角は、黒表示における液晶層110の上半分側の液晶分子110e〜110hの光学特性を補償すべく、図35(B)に示すように、対向基板104側(下側)からアレイ基板102側(上側)に向かって見て、0°近傍から+90°付近まで直線的に変化している。
このように、従来のOCBモードLCDでは、液晶セル100内で非線形に連続的に変化する液晶分子110a〜110hのチルト角に対して、ディスコティック液晶フィルム112、114内部のディスコティック液晶分子112a〜112d、114a〜114dのチルト角は線形に変化している。
ところが、上記従来のディスコティック液晶フィルム112、114を光学補償フィルムとして備えたOCBモードLCDの視角特性を調べると、現実には実用に十分な視野角を得ることができず、これをさらに拡げる必要があることが分かる。
まず、図34に示したOCBモードLCDにおいて、ディスコティック液晶フィルム112、114を用いずに、代わりに対向基板104と偏光板108との間に一軸位相差フィルム(図示せず)を配置した場合の視角特性について図37を用いて説明する。
図37に示す視角特性を示す図は、パネル表示面中心に向かって観察する際の観察位置を、パネル面法線となす角度(見込む角度)とパネル面中心からの方位角とで表している。中心から等間隔に広がる同心円は、順に20°、40°、60°、80°の見込む角度を表している。また、中心を通り円を12等分する直線は、30°刻みの方位角を示している。なお、方位0°は中心から紙面右方向に延びる線分で示し、反時計回りに正の角度を取るものとする。
前提として、液晶層110の液晶材料にはFT−5181(チッソ社製)を用いている。また、液晶セル100でのリタデーションは1000nmであり、一軸位相差フィルムでのリタデーションは120nmである。
また、クロスニコル配置の偏光板106、108の光透過軸は、図37の方位角で表すと、+45°と−45°の方向になる。また、ラビングの方向116、118は、図の左右方向(方位角0°と180°とを結ぶ直線に平行)である。
さて、図37において、線幅の太い実線はコントラスト比が500の等コントラスト比線を示し、線幅の細い実線は、コントラスト比が100の等コントラスト比線を示している。また、破線は、コントラスト比が10の等コントラスト比線を示している。
図37に示すように、一軸位相差フィルムだけを用いた従来のOCBモードLCDでは、例えばコントラスト比=10%が確実に得られる視野角は30°程度に過ぎない。
これに対して、図34及び図35に示した従来のディスコティック液晶フィルム112、114を用いたOCBモードLCDの視角特性を図38を用いて説明する。但し、ディスコティック液晶フィルム114と偏光板108との間に、一軸位相差フィルム及び正の垂直配向位相差フィルムを配置している。なお、図38の視角特性表示は、図37と同様であるのでその説明は省略する。ディスコティック液晶フィルム112、114のリタデーションは共に125nmである。それ以外の構成や条件は図37に示したものと同様である。
さて、図38に示すように、ディスコティック液晶フィルム112、114を用いたOCBモードLCDによれば、図37に示したLCDと比較して、観察方位によるコントラスト比のばらつきを減少させて、全方位で、ある程度均一な視野角を得ることができる。しかしながら、コントラスト比=10%以上が得られる視野角は30°程度であり、実用上十分とは言えない。
また、ディスコティック液晶フィルム以外の、3次元位相差フィルムや負の位相差フィルム(VAC)による従来の光学補償フィルムを用いても実用上十分な視野角が得られないのが実状である。
このように、OCBモードLCDにおける視角特性の改善は未だ不十分であり、高速応答特性を生かした表示装置の実現を阻む要因となっている。本実施形態の目的は、実用上十分に広い視野角を実現できるOCBモードの液晶表示装置を提供することにある。
本実施形態の目的は、所定の空隙を介して対向配置される第1及び第2の基板と、前記空隙に封止されてベンド配向する液晶層と、前記第1の基板の前記液晶層と反対側の面に配置される第1の偏光板と、前記第2の基板の前記液晶層と反対側の面に配置される第2の偏光板と、前記第1の基板と前記第1の偏光板との間に配置される第1の光学補償フィルムと、前記第2の基板と前記第2の偏光板との間に配置される第2の光学補償フィルムとを有する液晶表示装置において、前記第1の光学補償フィルムは、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第1の基板側の液晶分子の非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記非線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶を有し、前記第2の光学補償フィルムは、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第2の基板側の液晶分子の非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記非線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶を有していることを特徴とする液晶表示装置によって達成される。
上記本実施形態の液晶表示装置において、前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、ほぼ線形にチルト角が変化する複数の前記ディスコティック液晶層を積層して、前記液晶層の非線形なチルト角の変化曲線を補間して前記リタデーションを補償することを特徴とする。
また、上記本実施形態の液晶表示装置において、前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、ほぼ線形にチルト角が変化する前記ディスコティック液晶層を有する複数のフィルムの積層体で構成されていることを特徴とする。
また、上記本実施形態のいずれかの液晶表示装置において、前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、前記液晶層に近い側から順に第1及び第2のサブフィルムの積層構造を有し、前記第1のサブフィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ1は50°≦θ1≦80°であることを特徴とする。また、上記本実施形態の液晶表示装置において、前記第1のサブフィルムのリタデーションをR1、前記第2のサブフィルムのリタデーションをR2としたとき、R1+R2が450nm±150nm、R2/R1が1〜10であることを特徴とする。
また、上記本実施形態のいずれかの液晶表示装置において、前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、前記液晶層に近い側から順に第1乃至第3のサブフィルムの積層構造を有し、前記第1のサブフィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ1は30°≦θ1≦60°であり、前記第2のサブフィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ2は、θ1≦θ2<85°であることを特徴とする。さらに、前記第1のサブフィルムのリタデーションをR1、前記第2のサブフィルムのリタデーションをR2、前記第3のサブフィルムのリタデーションをR3としたとき、R1+R2+R3が450nm±150nm、R2/R1が1〜5、R3/R1が5〜10であることを特徴とする。
上記本実施形態の液晶表示装置において、前記第1の光学補償フィルムと前記第1の偏光板との間には、さらに第3の光学補償フィルムが配置されていることを特徴とする。また、前記第3の光学補償フィルムは、nx=ny<nzの屈折率楕円体でnzが前記基板面法線にほぼ一致している正の垂直配向位相差フィルムであることを特徴とする。あるいは、前記第2の光学補償フィルムと前記第2の偏光板との間には、さらに第4の光学補償フィルムが配置され、前記第3及び第4の光学補償フィルムは、負の位相差フィルムであることを特徴とする。
負の位相差を持つディスコティック液晶は、正の位相差を持つベンド配向液晶と全く同等な配向をする場合に完全な補償効果が得られる。ノーマリホワイト(NW)の場合電圧印加時に黒となるから、高コントラストであるためには電圧印加時のベンド配向の補償が必要である。本実施形態では、複数の異なるチルトを持ったサブフィルムで擬似的にベンド配向と同配向のディスコティック液晶を実現するため、どの視角方向から見ても補償関係が崩れず、広い視野角が得られる。
本発明の第7の実施の形態による液晶表示装置を図39乃至図47を用いて説明する。まず、本実施の形態による液晶表示装置の概略の構成を図39を用いて説明する。図39(A)乃至図39(D)は、従来の技術において説明した図35(A)乃至図35(D)に対応させて示した本実施形態によるOCBモードLCDの概略構成を示している。図39(A)は、OCBモードLCDの概略構成を示す断面図であり、図39(B)乃至図39(D)は、OCBモードLCDの各構成要素中の液晶のチルト角を各液晶層の深さ方向にプロットしたグラフを示している。なお、上述の図34乃至図38を用いて説明した構成要素と実質的に同一な構成要素については同一の符号を付している。
図34を参照しつつ図39において、画素毎にTFT及び表示電極が形成されたアレイ基板102と、アレイ基板102に対向配置され共通電極が形成された対向基板104と、アレイ基板102と対向基板104との間の空隙に封止された液晶層110とで液晶セル100が構成される。アレイ基板102の液晶層110と反対側の表面には偏光板106が配置される。対向基板104の液晶層110と反対側の表面には、偏光板106の光透過軸と直交(クロスニコル)する光透過軸を有する偏光板108が配置される。
アレイ基板102及び対向基板104の両基板の液晶層110側に形成された配向膜(図示せず)には同一方向116、118のラビング処理が施されている。これにより、アレイ基板102と対向基板104との間に封止された液晶層110の液晶分子は、所定電圧印加時において平面118内でベンド配向する。なお、ラビング方向は、偏光板106、108の光透過軸に対して45°の角度をなしている。また、図34及び図39に示すOCBモードLCDは、偏光板106、108をクロスニコルに配置しているので、ベンド配向が維持される印加電圧範囲内での最低電圧時に白を表示するノーマリホワイト型となる。
図39に示す液晶層110は、ベンド配向が維持される印加電圧範囲内で最高電圧値を印加して黒を表示させた状態での分子配列を例示している。黒表示において液晶層110の中央部の大部分の液晶分子が、アレイ基板102及び対向基板104の基板面法線方向(図中上下方向)にほぼ平行になり、両基板近傍で液晶分子は徐々に当該法線方向と直交する方向に傾斜して、両基板表面の配向膜近傍では、液晶分子は前記法線方向に対してほぼ直角に傾斜する。
図39(A)の液晶層110に示すように、OCBモードでのベンド配列では、液晶層110のほぼ中央で基板面に平行な直線に対して上半分の液晶分子110e〜110hと下半分の液晶分子110a〜110dとがほぼ対称となるように傾斜する。図39(C)に示す黒表示における液晶層110での液晶分子の傾斜状態は、図35(C)と同一である。
また、アレイ基板102と偏光板106との間には、本実施形態に係るディスコティック液晶フィルム112が配置される。
ディスコティック液晶フィルム112は、液晶層110を基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、アレイ基板102側の液晶分子110a〜110dの非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するようにチルト角を変化させた複数(本例では2枚)のディスコティック液晶サブフィルム112A、112Bを有している。
また、対向基板104と偏光板108との間には、本実施形態に係るディスコティック液晶フィルム114が配置される。ディスコティック液晶フィルム114は、液晶層110を基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、対向基板104側の液晶分子110e〜110hの非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するようにチルト角を変化させた複数(本例では2枚)のディスコティック液晶サブフィルム114A、114Bを有している。
このように、チルト角を変化させた2枚一組のディスコティック液晶サブフィルム112A、112B及び114A、114Bを用いることにより、液晶層110における液晶分子110a〜110hによる非線形なチルト変化に対応してリタデーションを相殺し、液晶層110における屈折率楕円体をできるだけ球に近づけるように補償することができる。これにより、液晶表示パネルを射出した画像光の視角特性を改善して高視野角のパネルを実現することができ、液晶パネル表示面をどの角度から観察しても反転領域が存在せず、コントラスト比の高い良好な黒表示を得ることができる。
次に、ディスコティック液晶サブフィルム112A、112B内のディスコティック液晶分子のチルト角変化について、図39(D)を用いて説明する。図39(D)は、偏光板106側(下側)からアレイ基板102側(上側)に向かって見たサブフィルム内の深さ方向の位置(基板面法線方向の位置)を横軸に表している。また縦軸はサブフィルム112A内のディスコティック液晶分子112Aa、112Abとサブフィルム112B内のディスコティック液晶分子112Ba、112Bbのチルト角を表している。
サブフィルム112A内のディスコティック液晶分子112Aa、112Abのチルト角θは、偏光板106側から所定の深さ方向位置Xまでの間に直線的に−90°〜θ1まで増加する。サブフィルム112B内のディスコティック液晶分子112Ba、112Bbのチルト角θは、位置Xからアレイ基板102側までの間に直線的にほぼθ1からほぼ0°まで増加する。
図39(D)中に記載された破線は、図39(C)に示す黒表示における液晶層110の液晶分子110a〜110dによる非線形なチルト角変化を補償するための理想的な補償曲線α1を示している。
図39(D)から明らかなように、本実施形態によるディスコティック液晶サブフィルム112Aと112Bの重ね合わせにより、液晶分子110a〜110dによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α1を補間する2つの直線でリタデーションの補償をするので、従来のような1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。
次に、ディスコティック液晶サブフィルム114A、114B内のディスコティック液晶分子のチルト角変化について、図39(B)を用いて説明する。図39(B)は、対向基板104側(下側)から偏光板108側(上側)に向かって見たフィルム内の深さ方向の位置(基板面法線方向の位置)を横軸に表している。また縦軸はサブフィルム114A内のディスコティック液晶分子114Aa、114Abとサブフィルム114B内のディスコティック液晶分子114Ba、114Bbのチルト角を表している。
サブフィルム114A内のディスコティック液晶分子114Aa、114Abのチルト角θは、対向基板104側から所定の深さ方向位置X’までの間に直線的に0°〜θ1’まで増加する。サブフィルム114B内のディスコティック液晶分子114Ba、114Bbのチルト角θは、位置X’から偏光板108側までの間に直線的にほぼθ1’からほぼ90°まで増加する。
図39(B)中に記載された破線は、図39(C)に示す黒表示における液晶層110の液晶分子110e〜110hによる非線形なチルト角変化を補償するための理想的な補償曲線α2を示している。
図39(B)から明らかなように、本実施形態によるディスコティック液晶サブフィルム114Aと114Bの重ね合わせにより、液晶分子110e〜110hによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α2を補間する2つの直線でリタデーションの補償をするので、従来のような1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。
このように、本実施の形態によるOCBモードLCDは、所定の空隙を介して対向配置される第1の基板(アレイ基板)102及び第2の基板(対向基板)104と、空隙内に封止されてベンド配向する液晶層110とを有している。また、アレイ基板102の液晶層110と反対側の面には第1の偏光板106を有し、対向基板104の液晶層110と反対側の面には第2の偏光板108を有している。
そして、アレイ基板102と第1の偏光板106との間に配置される第1の光学補償フィルム(ディスコティック液晶フィルム)112は、液晶層110を基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、アレイ基板102側の液晶分子110a〜110dの非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、非線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させるディスコティック液晶112Aa、112Ab、112Ba、及び112Bbを有している。
また、対向基板104と第2の偏光板108との間に配置される第2の光学補償フィルム(ディスコティック液晶フィルム)114は、液晶層110を基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、対向基板104側の液晶分子110e〜110hの非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、非線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させるディスコティック液晶114Aa、114Ab、114Ba、及び114Bbを有している。
本実施形態のOCBモードLCDは上述のような特徴的構成を有し、従来のOCBモードLCDのように、液晶セル100内で非線形に連続的に変化する液晶分子110a〜110hのチルト角に対して、ディスコティック液晶フィルム112、114内部のディスコティック液晶分子112a〜112d、114a〜114dのチルト角が線形に変化するのではなく、理想的な補償曲線に沿うようにチルト角を変化させることができるので、極めて広い良好な視野角が得られるOCBモードLCDを実現できる。
次に、本実施の形態による液晶表示装置の具体的構成例としての実施例1について図40乃至図43を用いて説明する。上記実施形態で説明した構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。まず、図40及び図41を用いて本実施例によるOCBモードLCDの構成を簡単に説明する。
図40に示すように、液晶セル100を挟んで両側に偏光板106、108がクロスニコルに配置されている。液晶セル100と偏光板106との間にはディスコティック液晶フィルム112が配置されている。液晶セル100と偏光板108との間には、液晶セル100側から順に、ディスコティック液晶フィルム114、正の垂直配向位相差フィルム120、一軸位相差フィルム122が配置されている。
図41は例えば偏光板108上面から見た各光学補償フィルムの配置関係を示している。ディスコティック液晶フィルム112、114内のディスコティック液晶分子は、図中左右方向に配向するベンド配向液晶分子110a〜110hとほぼ同一の方向に配向している。偏光板106、108の光透過軸P、Aの方位は、ベンド配向液晶分子110a〜110hの配向方位に対して45°傾いている。また、正の垂直配向位相差フィルム120の配向方向は紙面に垂直な方向であり、一軸位相差フィルム122の光学軸は偏光板108の光透過軸に一致させている。
図42(A)は、本実施例によるOCBモードLCDの概略構成を示す断面図であり、図42(B)乃至図42(D)は、OCBモードLCDの各構成要素中の液晶のチルト角を各液晶層の厚さ方向にプロットしたグラフを示している。図42(A)は、正の垂直配向位相差フィルム120と一軸位相差フィルム122を付加した点以外は図39(A)の構成と同一である。
液晶層110の液晶材料にはFT−5181(チッソ社製)を用いている。また、液晶セル100でのリタデーションRlは1000nmである。リタデーションRlは800〜1200nmの範囲であることが望ましい。
なお、ディスコティック液晶フィルム112、114で用いるサブフィルムには、例えば富士写真フィルム社製のディスコティック液晶フィルム等を使用することができる。ディスコティック液晶フィルム112、114は、UV硬化樹脂中にディスコティック液晶を配向した形で混入し、紫外線硬化することで得られるため、独自に作製することも可能である。正の垂直配向位相差フィルム120は、nx=ny≦nzなる屈折率楕円体の分子のZ軸がフィルム法線方向と一致するように配向したものを固化して得られ、垂直配向液晶層で代用することもできる。
図42(D)に示すように、液晶層110に近い側から見てディスコティック液晶サブフィルム112B内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ1は74°である。サブフィルム112A内のディスコティック液晶112Aa、112Abのチルト角は、偏光板106側から見てθ1=−90°〜θ1=−74°までほぼ線形に変化し、サブフィルム112Bのディスコティック液晶112Ba、112Bbのチルト角は、偏光板106側から見てθ1=−74°〜θ1=0°までほぼ線形に変化する。
また、サブフィルム112AのリタデーションR2は375nmであり、サブフィルム112BのリタデーションR1は75nmである。
このように、本実施例によるディスコティック液晶サブフィルム112Aと112Bの重ね合わせにより、液晶分子110a〜110dによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α1を補間する2つの直線でリタデーションの補償をするので、従来のような1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。なお、2つの直線で補償曲線α1を補間するために、上記最大チルト角θ1は、50°≦θ1≦80°であることが好ましい。また、リタデーションR1、R2の関係は、R1+R2が450nm±150nm、R2/R1が1〜10であることが好ましい。本実施例では、R1+R2=450nm、R2/R1=5である。
また、図42(B)に示すように、ディスコティック液晶サブフィルム114A内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ1’は74°である。サブフィルム114A内のディスコティック液晶114Aa、114Abのチルト角は、対向基板104側から見て0°〜θ1=+74°までほぼ線形に変化し、サブフィルム114Bのディスコティック液晶114Ba、114Bbのチルト角は、対向基板104側から見てθ1=+74°〜90°までほぼ線形に変化する。
また、サブフィルム114AのリタデーションR1’は75nmであり、サブフィルム114BのリタデーションR2’は375nmである。
このようなディスコティック液晶サブフィルム114Aと114Bの重ね合わせにより、液晶分子110e〜110hによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α2を補間する2つの直線でリタデーションの補償をするので、従来のような1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。なお、2つの直線で補償曲線α2を補間するために、上記最大チルト角θ1’は、50°≦θ1≦80°であることが好ましい。また、リタデーションR1’、R2’の関係は、R1’+R2’が450nm±150nm、R2’/R1’が1〜10であることが好ましい。本実施例では、R1’+R2’=450nm、R2’/R1’=5である。
次に、本実施例によるOCBモードLCDの視角特性を図43を用いて説明する。なお、図43の視角特性表示は、図37と同様であるのでその説明は省略する。
図43に示すように、本実施例による2層構造のディスコティック液晶フィルム112、114を用いたOCBモードLCDによれば、従来の図37及び図38に示したLCDと比較して、観察方位によるコントラスト比のばらつきを減少させて全方位で広い均一な視野角を得ることができる。例えば、視野角50°においてコントラスト比500%が得られ、視野角60°においてコントラスト比100%、視野角70°においてコントラスト比10%が得られ、視角対称性にも優れた良好な視角特性を得ることができ、実用上十分な画像品質で表示することができる。
以上説明したように、本実施例のOCBモードLCDは上述のような特徴的構成を有し、ディスコティック液晶フィルム112、114内部のディスコティック液晶分子112a〜112d、114a〜114dのチルト角を、理想的な補償曲線に沿うように変化させることができるので、極めて広い良好な視野角が得られるOCBモードLCDを実現できる。
次に、本実施形態の別の具体的構成例としての実施例2について図44及び図45を用いて説明する。図44(A)は、本実施例によるOCBモードLCDの概略構成を示す断面図であり、図44(B)乃至図44(D)は、OCBモードLCDの各構成要素中の液晶のチルト角を各液晶層の厚さ方向にプロットしたグラフを示している。本実施例は、ディスコティック液晶フィルム112、114をそれぞれ3層にした点を除き、図42に示した実施例1の構成と同一である。
ディスコティック液晶フィルム112は、偏光板106側から順に、ディスコティック液晶サブフィルム112A、112B、112Cが積層されている。図44(A)及び図44(D)に示すように、液晶層110に近い側から見てサブフィルム112C内のディスコティック液晶112Caのチルト角の最大値(絶対値)θ1は52°である。
また、同様にしてサブフィルム112B内のディスコティック液晶112Ba、112Bbのチルト角の最大値(絶対値)θ2は83°である。
サブフィルム112A内のディスコティック液晶112Aaのチルト角は、偏光板106側から見て−90°〜θ2=−83°までほぼ線形に変化し、サブフィルム112Bのディスコティック液晶112Ba、112Bbのチルト角は、θ2=−83°〜θ1=−52°までほぼ線形に変化する。また、サブフィルム112Cのディスコティック液晶112Caのチルト角は、θ1=−52°〜0°までほぼ線形に変化する。
また、サブフィルム112AのリタデーションR3は330nmであり、サブフィルム112BのリタデーションR2は125nmであり、サブフィルム112CのリタデーションR1は43nmである。
このようなディスコティック液晶サブフィルム112A〜112Cの重ね合わせにより、液晶分子110a〜110dによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α1を補間する3つの直線でリタデーションの補償をするので、従来のような1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。なお、3つの直線で補償曲線α1を補間するために、上記最大チルト角(絶対値)θ1、θ2は、30°≦θ1≦60°、θ1≦θ2<85°であることが好ましい。また、リタデーションR1、R2、R3の関係は、R1+R2+R3が450nm±150nm、R2/R1が1〜5、R3/R1が5〜10であることが好ましい。本実施例では、R1+R2+R3=498nm、R2/R1=2.9、R3/R1=7.7である。
ディスコティック液晶フィルム114は、対向基板104側から順に、ディスコティック液晶サブフィルム114A、114B、114Cが積層されている。図44(A)及び図44(B)に示すように、液晶層110に近い側から見てサブフィルム114A内のディスコティック液晶114Aaのチルト角の最大値(絶対値)θ1’は52°である。
また、同様にしてサブフィルム114B内のディスコティック液晶114Ba、112Bbのチルト角の最大値(絶対値)θ2’は83°である。
サブフィルム114A内のディスコティック液晶114Aaのチルト角は、対向基板104側から見て0°〜θ1’=52°までほぼ線形に変化し、サブフィルム114Bのディスコティック液晶114Ba、112Bbのチルト角は、θ1’=52°〜θ2’=83°までほぼ線形に変化する。また、サブフィルム114Cのディスコティック液晶114Caのチルト角は、θ2’=83°〜90°までほぼ線形に変化する。
また、サブフィルム114AのリタデーションR1’は43nmであり、サブフィルム114BのリタデーションR2’は125nmであり、サブフィルム114CのリタデーションR3’は330nmである。
このようなディスコティック液晶サブフィルム114A〜114Cの重ね合わせにより、液晶分子110e〜110hによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α2を補間する3つの直線でリタデーションの補償をするので、従来のような1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。なお、3つの直線で補償曲線α2を補間するために、上記最大チルト角θ1’、θ2’は、30°≦θ1≦60°、θ1≦θ2<85°であることが好ましい。また、リタデーションR1’、R2’、R3’の関係は、R1’+R2’+R3’が450nm±150nm、R2’/R1’が1〜5、R3’/R1’が5〜10であることが好ましい。本実施例では、R1’+R2’+R3’=498nm、R2’/R1’=2.9、R3’/R1’=7.7である。
次に、本実施例によるOCBモードLCDの視角特性を図45を用いて説明する。なお、図45の視角特性表示は、図37と同様であるのでその説明は省略する。
図45に示すように、本実施例による3層構造のディスコティック液晶フィルム112、114を用いたOCBモードLCDによれば、従来の図37及び図38に示したLCDと比較して、観察方位によるコントラスト比のばらつきを減少させて全方位で広い均一な視野角を得ることができる。本実施例によれば、実施例1であられる視角特性をさらに改善して、視野角の対称性により優れた良好な視角特性を得ることができ、実用上十分な画像品質で表示することができる。
以上説明したように、本実施例のOCBモードLCDによっても実施例1と同様に、理想的な補償曲線に沿うようにディスコティック液晶フィルム112、114内部のディスコティック液晶分子112a〜112d、114a〜114dのチルト角を変化させることができるので、極めて広い良好な視野角が得られるOCBモードLCDを実現できる。
次に、本実施形態のさらに別の具体的構成例として実施例3について図46及び図47を用いて説明する。図46(A)は、本実施例によるOCBモードLCDの概略構成を示す断面図であり、図46(B)乃至図46(D)は、OCBモードLCDの各構成要素中の液晶のチルト角を各液晶層の厚さ方向にプロットしたグラフを示している。本実施例は、ディスコティック液晶フィルム112、114をそれぞれ1層にすると共に、負の位相差フィルム124を両側に挿入した点に特徴を有している。その他は図42に示した実施例1の構成と同様である。
1層からなるディスコティック液晶フィルム112と偏光板106との間、及び1層からなるディスコティック液晶フィルム114と一軸位相差フィルム122との間に、それぞれ負の位相差フィルム124が配置されている。図46(A)及び図46(D)に示すように、液晶層110に近い側から見てディスコティック液晶フィルム112内のディスコティック液晶112a〜112dのチルト角の最大値(絶対値)θuは90°である。一方、チルト角の最小値(絶対値)θlはほぼ30°である。フィルム112内のディスコティック液晶112a〜112dのチルト角は、偏光板106側から見てθu=−90°〜θl=−30°までほぼ線形に変化する。フィルム112のリタデーションR1は200nmであり、負の位相差フィルム124のリタデーションR2は280nmである。
このようなディスコティック液晶フィルム112と負の位相差フィルム124の重ね合わせにより、液晶分子110a〜110dによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α1を補間する2つの直線でリタデーションの補償をするので、1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。
次に、ディスコティック液晶フィルム114側について説明する。図46(A)及び図46(B)に示すように、対向基板104に近い側から見てディスコティック液晶フィルム114内のディスコティック液晶114a〜114dのチルト角の最大値(絶対値)θu’は90°である。一方、チルト角の最小値(絶対値)θl’は30°である。フィルム114内のディスコティック液晶114a〜114dのチルト角は、対向基板104側から見てθl=30°〜90°=θu’までほぼ線形に変化する。フィルム114のリタデーションR1’は200nmであり、負の位相差フィルム124のリタデーションR2’は280nmである。
このようなディスコティック液晶フィルム114と負の位相差フィルム124の重ね合わせにより、液晶分子110e〜110hによる非線形なチルト角変化に対する理想的な補償曲線α2を補間する2つの直線でリタデーションの補償をするので、1つの直線で近似する場合より正確なリタデーション補償をすることができる。
なお、チルト角の最小値θuを30°としたのは、図46(B)及び図46(D)から分かるように、理想補償曲線α1、α2を補間する2つの直線のうち1本は深さ方向位置によらずθ=90°で固定されているため、ディスコティック液晶フィルム112、114による直線に縦軸の切片(オフセット)を持たせるようにして誤差の少ない補間をするためである。
本実施例によるOCBモードLCDの視角特性を図47に示す。本実施例においても上記実施例1及び2と同様に観察方位によるコントラスト比のばらつきを減少させて全方位で広い均一な視野角を得ることができる。以上の通り、本実施形態によれば、OCBモードの液晶表示装置において高速応答性と共に実用に耐える広い視野角を得ることができる。
〔第8の実施の形態〕
次に、本発明の第8の実施の形態による液晶表示装置について説明する。実施形態の説明に入る前に本実施形態が解決しようとする課題についてより具体的に説明する。
近年、液晶表示装置は薄型、軽量、低電圧駆動、あるいは低消費電力であるという特徴を生かして様々な用途に広く用いられるようになってきている。しかしながら、液晶パネルを斜めから見たときの表示特性、すなわち視野角特性はCRTに比べて劣っているのが現状である。したがって、視野角特性の優れた液晶パネルが要望されている。広視野角を有する液晶パネルとしては、図1乃至図3を用いて説明したMVA方式だけでなくIPS(In−plane Switching)などの方式も実用化されている。
図1乃至図3に示すMVA方式の液晶パネルの視野角特性は、液晶パネルを全方位から見たときに、コントラストが等しくなる視野角を線で結んだ等コントラスト曲線として図4のように表される。図4において、45°、135°、225°、315°方位においてコントラストが10となる視野角は約37°である。図4から分かるように、液晶パネルを上下左右方位から見たときには広い視野角が得られるが、45°方位などから見たときには視野角が狭くなる。
このため、本実施の形態では、表示面側と非表示面側にクロスニコルとなるように配置した偏光素子と液晶パネルとの間に、少なくとも一層の位相差フィルムを配置し、その位相差フィルムの条件を最適化するようにした。以下本実施の形態による液晶表示装置について図48乃至図63を用いて説明する。
本実施形態における液晶パネル構成の例を図48に示す。図48では、4分割MVA液晶パネル30の両面と偏光板21、22との間にそれぞれ位相差フィルム130と位相差フィルム132を配置している。ここでパネル30の法線方向をz、パネル面内方向をx、yとする。
位相差フィルム130、132の主屈折率をnx、ny、nz、とすると、位相差フィルム130、132の正面のリタデーションRと、厚さ方向のリタデーションRtは既に説明したように以下のようになる。
R=(nx−ny)d
Rt=((nx+ny)/2−nz)d (d:位相差フィルム130、132の厚さ)
本実施形態において用いる位相差フィルム130、132は、nx≒ny>nz(0nm≦R≦10nm)の関係を満たすように形成されている。
図48に示すパネル構成において、位相差フィルム130のみを用いた場合について考察する。図49は、オイラー角φ、θの定義を示している。角度φは、x−y−zグローバル座標系に対して、z軸を回転軸としてx−y面内でx−y軸を回転させた角度を示す。また、角度θは、グローバル座標系に対して角度φだけ回転したローカル座標系に対して、例えばx軸を回転軸としてy−z面内でy−z軸を回転させた角度を示す。これらオイラー角φ、θによりnx、ny、nzの方向を規定することができる。
図50は、位相差フィルム130の角度θを5°に固定し、角度φを0°〜360°、厚さ方向のリタデーションRtを100nm〜480nmの範囲で変化させて求めた正面コントラストを示している。横軸は厚さ方向のリタデーションRtを表し、縦軸は角度φを表している。図50は、正面コントラストが同一となる(Rt、φ)の組を線で結んだ等高線グラフを示している。
図50の同一正面コントラストを示す等高線グラフに示すように、角度φ=45°、135°、225°、及び315°の場合、厚さ方向のリタデーションRtが大きいと正面コントラストが低下する。厚さ方向のリタデーションRtの値に依存せずに正面コントラストの低下を防ぐには、角度φは、φ=0°、90°、180°、及び270°のいずれかでなければならない。位相差フィルム130のみでなく、複数の位相差フィルムを配置した場合でも、各位相差フィルムの角度φがφ=0°、90°、180°、270°のいずれかであれば、各位相差フィルムの厚さ方向のリタデーションRtに依存せずに正面コントラストは低下しない。
次に、図48に示したように、液晶パネル30の両面に位相差フィルム130と位相差フィルム132とを配置した場合について考察する。位相差フィルム130の角度θをθ1、角度φをφ1、厚さ方向のリタデーションRtをRt1、位相差フィルム132の角度θをθ2、角度φをφ2、厚さ方向のリタデーションRtをRt2とする。
先に説明したとおり、角度φ1、φ2は、0°、90°、180°、及び270°のいずれかでなければならない。そこで、角度θ1=θ2=5°、角度φ1=0°、角度φ2=180°に固定し、厚さ方向のリタデーションRt1、Rt2をそれぞれ20nm〜400nmの範囲で変化させて視角特性を調べた。その結果を図51乃至図58に示す。図51乃至図58は、横軸に位相差フィルム130の厚さ方向のリタデーションRt1をとり、縦軸に位相差フィルム132の厚さ方向のリタデーションRt2をとっている。また、図51乃至図58は、液晶パネルを順に方位0°(図51)、45°(図52)、90°(図53)、135°(図54)、180°(図55)、225°(図56)、270°(図57)、及び315°(図58)の8方位から見たときにコントラストが10となる視角が同一となる(Rt1、Rt2)を線で結んだ等高線グラフを示している。図51、53、55、及び図57においてグラフ全体に描かれた斜線部は、コントラストが10となる視角が80°以上の領域であることを示している。
図4の説明で述べたとおり、位相差フィルムを用いない場合、方位45°、135°、225°、及び315°方位でコントラストが10となる視野角は約37°である。従って図51乃至図58において、方位45°、135°、225°、及び315°方位でコントラストが10となる視野角が37°以上となる厚さ方向のリタデーションRt1、Rt2の条件では、位相差フィルム130、132を追加した効果があるといえる。図51乃至図58において、方位45°(図52)、135°(図54)、225°(図56)、及び315°(図58)の4方位ともにコントラストが10となる視野角が37°以上となるのは、厚さ方向のリタデーションRt1、Rt2について以下の条件が同時に満たされるときである。
0nm<2×Rt1+Rt2<900nm;
0nm<Rt1+2×Rt2<900nm ・・・〔式3〕
式3を変形すると、
0nm<2×Rt1/3+Rt2/3<300nm;
0nm<Rt1/3+2×Rt2/3<300nm ・・・〔式4〕
以上の結果は、角度θ1=θ2=5°の場合である。さらに、角度θ1=θ2=α(0°<α≦15°)の場合について同様にして視角特性を調べた。その結果、以下の条件が同時に満たされるとき、視野角特性改善の効果があることがわかった。
0nm<(1/2+α/30)×Rt1+(1/2−α/30)×Rt2<300nm;
0nm<(1/2−α/30)×Rt1+(1/2+α/30)×Rt2<300nm ・・・〔式5〕
α=5°の場合とα=10°の場合について、式5が満たされる厚さ方向のリタデーションRt1、Rt2の条件を図59に示す。図59からわかるとおり、α=10°の場合の条件はα=5°の場合の条件に含まれる。言い換えると、α=10°の場合に視野角特性改善の効果がある条件では、必ずα=5°の場合でも視野角特性改善の効果がある。
したがって、角度θ1=α1、θ2=α2(α1>α2)の場合、以下の条件が同時に満たされるとき、視野角特性改善の効果がある。
0nm<(1/2+α1/30)×Rt1+(1/2−α1/30)×Rt2<300nm;
0nm<(1/2−α1/30)×Rt1+(1/2+α1/30)×Rt2<300nm ・・・〔式6〕
また例えば、位相差フィルム130の角度θ1がフィルムの厚さ方向で連続あるいは不連続にα2<θ1<α1の範囲で変化するような場合でも、式6が満たされるとき、視野角特性改善の効果がある。
以上の結果は、角度φ1=0°、φ2=180°の場合である。そこで同様にして、角度φ1、φ2のその他の組合せについて視角特性を調べた。その結果、角度φ1=180°、φ2=0°や角度φ1=90°、φ2=270°など、角度φ1とφ2とが180°異なる全ての組合せにおいて、式5が満たされるときに視野角特性改善の効果があることがわかった。
式5において、厚さ方向のリタデーションRt1あるいはRt2のいずれかが0の場合、すなわち位相差フィルムが1層のみの場合についても、式5が満たされるときには視野角特性改善の効果がある。
以上の結果は、液晶セルのΔnLC・dLC(ΔnLC:液晶の屈折率異方性、dLC:セル厚)が341nmで、かつ光学的異方性を持たない偏光素子を用いた場合の結果である。通常の偏光素子は、図60に示すように、偏光機能を有するPVA(Polyvinyl Alcohol)フィルム136などを支持フィルムであるTAC(Triacetyl Cellulose)フィルム134などにより挟んだ構造となっている。TACフィルム134は光学的異方性(Rt=50nm〜60nm)を有するため、液晶パネル30の両側に配置されたPVAフィルム136の間に位置するTACフィルム134は位相差フィルムとして機能する。
位相差フィルムとして機能する支持フィルムの厚さ方向のリタデーションRt(図60の場合には、PVAフィルム136の間に位置する2層のTACフィルム134の厚さ方向のリタデーションRtの和)と、液晶パネル30のΔnLC・dLC(dLCは、セルギャップ)を変化させて、同様に視野角特性を調べた。その結果、以下の条件が同時に満たされるとき、視野角特性改善の効果があることがわかった。
0<(1/2+α/30)×Rt1+(1/2−α/30)×Rt2<0.88×(ΔnLC・dLC+RtPL);
0<(1/2−α/30)×Rt1+(1/2+α/30)×Rt2<0.88×(ΔnLC・dLC+RtPL) ・・・〔式7〕
RtPLは、偏光素子に用いられる支持フィルムのうち、位相差フィルムとして機能するフィルムの厚さ方向のリタデーションRtの合計値である。式7において、液晶パネル30のリタデーションΔnLC・dLC=341nm、支持フィルムの厚さ方向のリタデーションRtPL=0nmとすれば、式5となる。
以上の結果は、液晶パネル30の両側に角度θ≦α(0°<α≦15°)の位相差フィルムを1層ずつ配置した場合の結果である。図60では図示を省略しているが、角度θ≦α、角度φ=βの位相差フィルムを液晶パネル30の片側あるいは両側にN層配置し、角度θ≦α、角度φ=β+180の位相差フィルムを液晶パネル30の片側あるいは両側にN’層配置した場合について、同様に視野角特性を調べた。その結果、以下の条件が同時に満たされるとき、視野角特性改善の効果があることがわかった。
0<(1/2+α/30)×(Rt1+Rt2+…+RtN)+(1/2−α/30)×(R’t1+R’t2+…+R’tN')<0.88×(ΔnLC・dLC+RtPL);
0<(1/2−α/30)×(Rt1+Rt2+…+RtN)+(1/2+α/30)×(R’t1+R’t2+…+R’tN')<0.88×(ΔnLC・dLC+RtPL) ・・・〔式8〕
リタデーションRt1、Rt2、…、RtNは、角度φ=βの位相差フィルムの1層からN層までのリタデーションRtであり、リタデーションR’t1、R’t2、…、R’tN’は、角度φ=β+180の位相差フィルムの1層からN’層までのリタデーションRtである。ただし、角度βは0°、90°、180°、及び270°のいずれかであり、N=N’=0は除く。
次に本実施形態に基づく実施例について図61及び図62を用いて説明する。まず、4分割MVA方式の液晶パネル30を構成する2枚の基板を用意する。一方の基板には、全面透明電極、カラーフィルタ、ドメイン規制用のジグザグ状の突起などを形成しておく。他方の基板には、画素電極、ゲートバスライン、データバスライン、TFT素子、ドメイン規制用のジグザグ状の突起などを形成しておく。
両基板上に、ポリイミドからなる垂直配向膜を形成する。両基板を4μm径のスペーサを介して貼り合わせ、負の誘電率異方性を有するネマティック液晶(Δn=0.0852)を封入して液晶パネル30が完成する。
液晶パネル30の両側に、電圧印加時に液晶分子が斜めになる方向に対して吸収軸が45°をなし、かつ互いの吸収軸が直交するように偏光素子21、22を配置する。液晶パネル30と両側の偏光素子21、22との間に、厚さ方向のリタデーションRt=160nmでnzの法線方向からの傾き角が5°の位相差フィルム130、132を、nzの傾き方位が電圧印加時に液晶分子が斜めになる方向に対して45°をなし、かつ互いに180°異なるように一層ずつそれぞれ配置する。
nzの法線方向からの傾き角が5°の位相差フィルム130、132は、TACフィルム上に図63に示すような化学式で表されるディスコティック液晶を傾斜配向させることにより作製することができる。
以上の処理により図61に示すように、厚さ方向のリタデーションRt=160nmの位相差フィルム130、132を、nzの法線方向からの傾き角が5°で、nzの傾き方位が互いに180°異なるように、4分割MVAパネル30の両側に配置した構成が完成する。図61に示す液晶表示装置における等コントラスト曲線を図62に示す。図62に示すように本実施形態の構成によれば、図4と比較して視野角特性が大幅に改善された液晶表示装置を実現できる。
〔第9の実施の形態〕
次に、本発明の第9の実施の形態による液晶表示装置について説明する。本実施の形態では、第7の実施の形態で示したOCBモードLCDに代わるスプレーVAモードLCDについて説明する。
OCBモードは、階調に依らず10ms以下の応答性を有する高速LCDとして期待が高まっている。しかしながら、OCBモードは、ベンド配向させるための制御や視角特性等に困難性を有している。OCBモードの視角特性の改善に関しては、3次元位相差フィルムや負の位相差フィルム(VAC)を貼り付ける従来の補償法に加え、第7の実施の形態で示したように、負の位相差を持つディスコティック液晶をフィルム化した光学補償材が多く用いられる。OCBモードの視角特性に関し完全な補償効果を得るには、複雑にチルト配列したディスコティック液晶フィルムが必要となるが、そのようなフィルムの製造は極めて困難である。従って、現実には第7の実施の形態で示したような、リニアにチルト角が変化するディスコティック液晶フィルムを複数組み合わせて用いることになるが補償効果には一定の限界が生じる。
一方、MVAモードLCDを始めとする垂直配向(VA)の液晶を用いたLCDは応答速度が遅くなるという問題を有している。
本実施の形態では、これらOCBモード及びVAモードのLCDが有する問題を解決するスプレーVAモードLCDについて説明する。また、本実施の形態では、スプレーVAモードLCDの液晶分子のセル厚方向のチルト変化と同等の変化で配列するディスコティック液晶分子を備えた位相差フィルムを用いる例について説明する。
まず、スプレーVAモードLCDの構成及び動作について図64(A)乃至図64(D)を用いて簡単に説明する。図64(A)は、スプレーVAモードLCDの概略構成を示す断面図である。図64(B)乃至図64(D)は、スプレーVAモードLCDの液晶分子のチルト角変化に応じてディスコティック液晶分子による光学補償の動作を示している。
スプレーVAモードでは、電圧無印加時にベンド配向している負の誘電率異方性を有するネマティック液晶を、表示駆動の際に比較的高い所定電圧を印加してスプレー配向に変える。そして、スプレー配向が維持される印加電圧範囲内で画像表示を行う。スプレーVAモードは、階調に応じた電圧を液晶層に印加してスプレー配向液晶分子のチルト状態を制御することにより、液晶層を透過する光の位相差を制御して画像表示する複屈折型の液晶表示装置である。
スプレー配向時において、両基板界面の液晶分子はVの字となるように同方向Bに傾斜する。また、セルギャップ方向の中央部の液晶分子はほぼ水平に配向する。そして、両基板近傍からセル中央までチルト角が連続的に変化し、セル中央から上側基板近傍までの液晶チルト変化と、セル中央から下側基板近傍までの液晶のチルト変化が鏡像関係となっている。このようなスプレーVAモードによれば、通常のVA配向モードに比べて極めて高速な応答特性を得ることができる。
図64(A)において、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)及び表示電極が形成されたアレイ基板102と、アレイ基板102に対向配置され共通電極が形成された対向基板104と、アレイ基板102と対向基板104との間の空隙に封止された液晶層110とで液晶セル100が構成される。アレイ基板102の液晶層110と反対側の表面には偏光板106が配置される。対向基板104の液晶層110と反対側の表面には、偏光板106の光透過軸と直交(クロスニコル)する光透過軸を有する偏光板108が配置される。
また、アレイ基板102と偏光板106との間には、ディスコティック液晶フィルム(光学異方素子)112と位相差フィルム134が配置される。対向基板104と偏光板108との間には、ディスコティック液晶フィルム114と位相差フィルム134が配置される。これらディスコティック液晶フィルム112、114、及び位相差フィルム134は、液晶層110でのリタデーション(位相差)をできるだけ相殺して液晶層110における屈折率楕円体をできるだけ球に近づけるように補償して高視野角のパネルを実現するために設けられている。
アレイ基板102及び対向基板104の両基板の液晶層110側に形成された垂直配向膜(図示せず)により、アレイ基板102と対向基板104との間に封止された液晶層110の負の誘電率異方性を有する液晶分子は、所定電圧印加時においてスプレー配向する。また、本実施形態でのスプレーVAモードLCDは、偏光板106、108をクロスニコルに配置しているので、スプレー配向が維持される印加電圧範囲内での最低電圧時に白を表示するノーマリブラック型となる。
図64に示す液晶層110は、スプレー配向が維持される印加電圧範囲内での最低電圧値を印加して黒を表示させた状態での分子配列を例示している。黒表示において、液晶層110中央部の大部分の液晶分子は、アレイ基板102及び対向基板104の基板面法線方向(図中上下方向)に直交する方向に線形にチルト角が変化しながら傾斜し、両基板表面の配向膜近傍の液晶分子は基板面に対してほぼ垂直に起立している。
図64(A)の液晶層110に示すように、スプレーVAモードでのスプレー配列では、液晶層110のほぼ中央で基板面に平行な直線に対して上半分の液晶分子110e〜110gと下半分の液晶分子110a〜110cとがほぼ対称となるように傾斜する。なお、本明細書において液晶分子に付した符号の添え字は、連続的に分布する液晶分子の位置を離散的に表現しただけであり、分子の数等を示したものではない。
このスプレー配向に対するディスコティック液晶フィルム114内のディスコティック液晶分子のチルト角変化について、図64(B)乃至図64(D)を用いて説明する。ディスコティック液晶分子114a〜114eのチルト角は、黒表示における液晶層110の上半分側の液晶分子110e〜110gの光学特性を補償すべく、図64(B)乃至図64(D)に示すように、対向基板104側(下側)から偏光板108側(上側)に向かって見て、90°(垂直方向)から0°(水平方向)まで線形に変化している。
同様に、ディスコティック液晶分子112a〜112eのチルト角は、黒表示における液晶層110の下半分側の液晶分子110a〜110cの光学特性を補償すべく、アレイ基板102側(上側)から偏光板106側(下側)に向かって見て、90°(垂直方向)から0°(水平方向)まで線形に変化している。
このように、本実施の形態によるスプレーVAモードLCDの黒表示での液晶分子110a〜110gのスプレー配向は、液晶層110をセル厚方向に2分した上下領域で、それぞれ線形に連続的に変化している。このため、ディスコティック液晶フィルム112、114内部のディスコティック液晶分子112a〜112e、114a〜114eのチルト角も線形に変化させることができる。
次に、本実施の形態による液晶表示装置の具体的構成例としての実施例1について図65及び図66を用いて説明する。上記実施形態で説明した構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。まず、図65を用いて本実施例によるスプレーVAモードLCDの構成を簡単に説明する。
まず、液晶セル100を挟んで両側に偏光板106、108がクロスニコルに配置されている。液晶セル100と偏光板106との間には、液晶セル100側から順に、ディスコティック液晶フィルム112、正の垂直配向位相差フィルム120、一軸位相差フィルム122が配置されている。液晶セル100と偏光板108との間には、液晶セル100側から順に、ディスコティック液晶フィルム114、正の垂直配向位相差フィルム120、一軸位相差フィルム122が配置されている。
図65は、図左側に本実施例によるスプレーVAモードLCDの概略断面を示している。そして図右側には、主要素子の平面と、光透過軸あるいは遅相軸(光学軸)の方向を両矢印で示している。
本実施例において、液晶セル100でのリタデーションRlは600nmである。また、ディスコティック液晶フィルム112、114のリタデーションRdはそれぞれ300nmである。正の垂直配向位相差フィルム120のリタデーションR1は110nmである。一軸位相差フィルム122のリタデーションR2は55nmである。
また、偏光板106の透過軸の方向を基準にして、一軸位相差フィルム122の遅相軸は偏光板106の透過軸と平行に設定されている。正の垂直配向位相差フィルム120の遅相軸は紙面に垂直方向であるので図示を省略している。ディスコティック液晶フィルム112の遅相軸は偏光板106の透過軸に対して45°回転した方向にある。液晶セル100の遅相軸は偏光板106の透過軸に対して90°回転した方向にある。ディスコティック液晶フィルム114の遅相軸の方向はディスコティック液晶フィルム112の遅相軸の方向と一致している。一軸位相差フィルム122の遅相軸は偏光板106の透過軸と直交している。偏光板108の透過軸も偏光板106の透過軸と直交している。
次に、本実施例によるスプレーVAモードLCDの視角特性を図66を用いて説明する。図66に示すように、本実施例による光学補償フィルムを用いたスプレーVAモードLCDによれば、観察方位によるコントラスト比のばらつきを減少させて全方位で広い均一な視野角を得ることができる。
本実施形態の構成をまとめると、所定の空隙を介して対向配置される第1及び第2の基板(102、104)と、前記空隙に封止され、電圧印加時には、前記第1及び第2の基板(102、104)面近傍の液晶分子(110a、110g)がほぼ垂直配向を維持し全体としてスプレー配向する負の誘電率異方性を有するネマティック液晶層(110)と、前記第1の基板(102)の前記液晶層(110)と反対側の面に配置される第1の偏光板(106)と、前記第2の基板(104)の前記液晶層(110)と反対側の面に配置される第2の偏光板(108)と、前記第1の基板(102)と前記第1の偏光板(106)との間に配置され、前記液晶層(110)を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第1の基板(102)側の液晶分子(110a〜110c)の線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶(112a〜112e)を有する第1の光学補償フィルム(112)と、前記第2の基板(104)と前記第2の偏光板(108)との間に配置され、前記液晶層(110)を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第2の基板(104)側の液晶分子(110e〜110g)の線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶(114a〜114e)を有する第2の光学補償フィルム(114)とを有している。なお、基板両側に光学補償フィルムを設けずに、一方の基板側に光学補償フィルムを備えることも可能である。
また、複数のディスコティック液晶フィルムのディスコティック液晶分子は、スプレーVA配向時に最低電圧印加状態の液晶分子110a〜110gのチルト変化を疑似的に再現して、ノーマリーブラックモードでの黒状態を光学補償するように配向している。負の位相差を持つディスコティック液晶は、正の位相差を持つスプレーVA配向液晶と全く同等な配向をする場合に完全な補償効果が得られる。ノーマリーブラックモードの場合、最低電圧印加時に黒となるから、高コントラストであるためには低電圧印加時のスプレーVA配向のリタデーションを補償すればよい。このため、ディスコティック液晶分子のチルト変化はセルギャップ方向(基板面方位方向)にほぼ線形でよく、この点で高電圧印加時での液晶層のリタデーションを補償する第7の実施の形態によるOCB用補償フィルム(リニアでは補償が不完全)より製造性が極めて良いという利点を有している。
また、ディスコティック液晶のチルト変化がリニアな場合に最大の補償効果を得ることができるため、図66に示すように非常に広い視角特性を得ることができ、通常のOCBモードLCDより優れた視角特性が得られる。また、上記実施形態では液晶層110のリタデーションΔndが600nmの場合を示しているが、低い駆動電圧で白表示を得るために、より大きなリタデーションΔndにすることも考えられる。その場合は、ディスコティック液晶フィルムのリタデーションも同等に大きくすることが必要である。
また、スプレーVA配向時において、ディスコティック液晶フィルム114内のディスコティック液晶分子114a〜114eの主屈折率nx、ny、nzのうち、主屈折率nzの方向の変化は、液晶層110を基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、対向基板104側の液晶分子110e〜110gの主屈折率nzの変化する方向に対応付けられている。つまり、対向基板104に最も近い最下層のディスコティック液晶分子114aの主屈折率nzの方向は、液晶層110の対向基板104界面の液晶分子110gの主屈折率nzと同方向である。また、それよりわずかに上層のディスコティック液晶分子114bの主屈折率nzの方向は、対向基板104界面よりわずかに下層の液晶分子110fの主屈折率立nzと同方向である。同様の変化でディスコティック液晶フィルム114内のディスコティック液晶分子114c、dの主屈折率nzのセルギャップ方向の変化が規定される。ディスコティック液晶フィルム114内最上層のディスコティック液晶分子114eの主屈折率nzの方向は、スプレーVA配向している液晶層110の液晶セル100のセルギャップ方向の中央の例えば液晶分子110dの主屈折率nzと同方向になる。
また、スプレーVA配向時において、ディスコティック液晶フィルム112内のディスコティック液晶分子112a〜112eの主屈折率nx、ny、nzのうち、主屈折率nzの方向の変化は、液晶層110を基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、アレイ基板102側の液晶分子110a〜110cの主屈折率nzの変化する方向に対応付けられている。つまり、アレイ基板102に最も近い最上層のディスコティック液晶分子112eの主屈折率nzの方向は、液晶層110のアレイ基板102界面の液晶分子110aの主屈折率nzと同方向である。また、それよりわずかに下層のディスコティック液晶分子112dの主屈折率nzの方向は、アレイ基板102界面よりわずかに上層の液晶分子110bの主屈折率立nzと同方向である。同様の変化でディスコティック液晶フィルム112内のディスコティック液晶分子112c、bの主屈折率nzのセルギャップ方向の変化が規定される。ディスコティック液晶フィルム112内最下層のディスコティック液晶分子111aの主屈折率nzの方向は、スプレーVA配向している液晶層110の液晶セル100のセルギャップ方向の中央の例えば液晶分子110dの主屈折率nzと同方向になる。
また、ディスコティック液晶フィルム112、114のディスコティック液晶112a〜112e、114a〜114eの主屈折率nzの方向は、ディスコティック液晶112a〜112e、114a〜114eの基板面法線方向の位置変化に対してそれぞれ線形に変化する。
また、液晶層110のリタデーションΔnd(Δnは屈折率異方性、dはセルギャップ)は500〜2000nmであり、ディスコティック液晶フィルム112、114の各リタデーションR=((nx+ny)/2−nz)D(Dはディスコティック液晶フィルム112、114の各厚さ)は、300〜1200nmである。
また、上記実施例に示したように、少なくとも、ディスコティック液晶フィルム112と偏光板106との間、あるいはディスコティック液晶フィルム114と偏光板108との間に、液晶層110に近い方から順に、nx=ny<nzを満たす屈折率楕円体で主屈折率nzが基板面法線に一致する正の垂直配向位相差フィルム120と、光学軸の方向が偏光板106の透過軸に一致している一軸位相差フィルム122とが配置されている。
次に、本実施形態による実施例2について図67(A)乃至図67(C)を用いて説明する。スプレーVAモードで駆動するためには、初期電圧を印加してベンド配向をスプレー配向状態に変化させる動作を伴う。本実施例は、この動作を省略あるいは簡略化させることを意図している。このため、UV(紫外線)等で固化するポリマー剤を液晶中に混入し、液晶層110内でポリマー剤のネットワーク化を図ることにより、スプレー状態を安定化させる。
まず、図67(A)に示すように、電圧無印加状態でベンド配向する液晶(mj−961214)に、ポリマー剤としてUVキュアラブル液晶UCL−001(大日本インキ)を添加してパネルを作製する。次に、図67(B)に示すように、対向基板間に数Vの電圧を印加して液晶層の液晶分子をスプレーVA配向させる。次いで、図67(C)に示すように、スプレーVA配向させた状態で例えば波長λ=365nmのUV光を液晶層に照射してポリマー剤を固化する。固化したポリマー剤によるネットワークが液晶層内に形成され、基板間に電圧を印加しない状態にしても、ネットワークによる規制力によりスプレーVA配向が維持されるようになる。
〔第10の実施の形態〕
次に、本発明の第10の実施の形態による液晶表示装置について図68乃至図83を用いて説明する。本実施の形態による液晶表示装置は、TN(ねじれネマティック)液晶パネルに光学補償フィルムを組み合わせるだけで広視野角を実現する点に特徴を有している。具体的には、本実施の形態による液晶表示装置は、配向方向が下側基板近傍と上側基板近傍とで略90°異なるツイスト構造の液晶層を有している。また、偏光フィルムの偏光軸(透過光の偏光方向)は下側基板(光源側)の液晶配向方向に対して略45°の角度をなしている。上側基板側の偏光フィルムの偏光軸と下側基板側の偏光フィルムの偏光軸はほぼ平行になっている。光学位相差フィルムの3つの主屈折率nx、ny、nzはnx≒ny>nzであり、主屈折率nxの方向は偏光フィルムの偏光軸にほぼ平行であり、主屈折率nxの方向を軸にして主屈折率nzの方向がフィルム面の法線方向から傾き角θだけ傾くと同時に、主屈折率nyの方向がフィルム面に平行な方向から傾き角θだけ傾いている。
この構成の液晶表示装置により広視角特性が得られることを以下に説明する。TN液晶表示装置の視角特性を改善するために偏光フィルム条件及び補償フィルムについて計算シミュレーション等を用いて検討した結果、以下の条件を見出した。まず、上下偏光フィルムの偏光軸が平行な、いわゆるノーマリーブラッックモードの場合であって、光学位相差フィルムの3つの主屈折率nx、ny、nzがnx≒ny>nzを満たしているとする。このとき、図68に示すようにα−β−γ直交座標系において、主屈折率nx方向のα軸を中心に主屈折率nzの方向がフィルム面の法線方向(γ軸)から傾き角θだけ傾くと同時に、主屈折率nyの方向がフィルム面に平行な方向(β軸)から傾き角θだけ傾くように光学位相差フィルムを配置する。すると、以下の条件のときに良好な視角特性が得られることを見出した。
条件(a):偏光フィルムの偏光軸を、隣接基板近傍の液晶配向方向に対し、略45°傾ける。図69はγ軸から観察したα−β面を示している。図69に示すように、下側基板近傍の液晶配向方向X1と上側基板近傍の液晶配向方向X2は略90°異なっており、上下基板を挟んで対向する2枚の偏光フィルムの偏光軸P、Aは平行で、下側基板近傍の液晶配向方向X1と上側基板近傍の液晶配向方向X2に対して略45°の角度をなしている。
条件(b):図68に示した傾き角θの最良解は30°≦θ≦70°である。
条件(c):光学位相差フィルムの光学層の厚さをDとして、リタデーションR=(nx−nz)×Dは、70nm<R<160nmである。
条件(d):液晶パネルのリタデーションRLCは、400nm≦RLC≦550nmである。
以上の条件(a)〜(d)を満たした液晶表示装置の視角特性を図70に例示する。図70に視角特性を例示した液晶表示装置は、光学位相差フィルムのθ=45°、リタデーションR=120nm、液晶パネルのリタデーションRLC=0.47μmである。なお、液晶パネルの各画素は、2つの異なる方向に液晶分子が配向する配向分割処理が施されている。図70に示すように、上記(a)〜(d)の条件を満たした液晶表示装置では視角特性が改善されることがわかる。
以下、上記条件(a)〜(d)が与える影響について説明する。
条件(a)に代えて、比較例として図71に示すような配置構成を取る場合について考察する。図71はγ軸から観察したα−β面を示している。図71に示すように、下側基板近傍の液晶配向方向X1と上側基板近傍の液晶配向方向X2は略90°異なっており、上下基板を挟んで対向する2枚の偏光フィルムの偏光軸P、Aは平行で、且つ下側基板近傍の液晶配向方向X1と平行で上側基板近傍の液晶配向方向X2に対して略90°の角度をなしている。これは通常のTN液晶パネルの構成と同様である。この通常のTN液晶パネルは、図72に示すように画面左右方向及び画面下方からの視角特性が劣化する。
一方、図72に示す従来のTN液晶パネルに対して条件(a)を付加した液晶表示装置の視角特性を図73に示す。図73の視角特性を示す液晶表示装置は、光学位相差フィルムのリタデーションRを120nmから100nmに変更した点と配向分割を施していない点とを除き、図70に視角特性を例示した液晶表示装置と同一構成である。図72に示す従来のTN液晶パネルの視角特性に比較して、図73に示す視角特性も図70と同様に広視野角が得られている。なお、偏光軸の方向を図69に示した以外の任意の角度に設定しても良好な視角特性は得られない。
条件(b)について、図74乃至図77に傾き角θを変化させたときの視角特性の変化を示す。図74乃至図77に示す視角特性は、光学位相差フィルムのリタデーションR=100nm、液晶パネルのリタデーションRLC=0.47μmの仕様が共通して用いられている。図74は光学位相差フィルムの傾き角θ=30°の場合を示し、図75は光学位相差フィルムの傾き角θ=45°の場合を示し、図76は光学位相差フィルムの傾き角θ=60°の場合を示し、図77は光学位相差フィルムの傾き角θ=70°の場合を示している。
図74乃至図77から分かるように、傾き角θ=45°近辺で最も広い視角特性が得られている。傾き角θが45°より小さく、あるいは大きくなると左右の視角特性が劣化する傾向がある。傾き角θが30°以下又は70°以上ではこの左右の視角特性の劣化が顕著になる。
条件(c)について、図78乃至図80に光学位相差フィルムのリタデーションRを変化させたときの視角特性の変化を示す。図78乃至図80に示す視角特性は、光学位相差フィルムの傾き角θ=45°、液晶パネルのリタデーションRLC=0.47μmの仕様が共通して用いられている。図78は光学位相差フィルムのリタデーションR=70nmの場合を示し、図79は光学位相差フィルムのリタデーションR=120nmの場合を示し、図80は光学位相差フィルムのリタデーションR=160nmの場合を示している。
図78乃至図80から分かるように、R=120nm近辺で視角特性が良好になる。R=120nm近辺より大きくなると上下の視角特性が劣化し、R=120nm近辺より小さくなると左右の視角特性が劣化する。すなわち、70nm≦R≦160nm程度が適正値となる。
条件(d)について図81を用いて説明する。図81は横軸に液晶パネルのリタデーションRLC=Δnd(Δnは液晶材料の屈折率異方性、dはセルギャップ)をとり、縦軸に暗状態の光透過率をとって両者の関係を表したグラフである。図81のグラフに示すデータは、傾き角θ=45°、リタデーションR=100nmの光学位相差フィルムを用いて得られたものである。液晶パネルのリタデーションRLCを変化させると正面コントラストが変化するが、これはリタデーションRLCの変化により暗状態の光透過率が変化するためである。図81から、液晶パネルのリタデーションRLC=480nm近辺が最適であることがわかる。少なくとも400≦RLC≦550nmに設定する必要がある。
また、図82に示すように、液晶層が各画素内で面積のほぼ等しい2つの領域A、Bに分割されており、各領域の液晶配向方向が180°異なる配置とした配向分割を施せば、コントラストの視角特性と共に中間調表示特性を大幅に改善することができる。
次に、本実施の形態による液晶表示装置の一実施例について図83を用いて説明する。図83は液晶表示装置の断面構成を示している。図83に示す液晶表示装置は、対向する2枚のガラス基板で液晶を封止した液晶パネル140の両基板側にそれぞれ偏光フィルム142、144を配置し、液晶パネル140と偏光フィルム142、144との間に光学位相差フィルム146、148をそれぞれ配置したものである。光学位相差フィルム146、148は、傾き角θ=45°、リタデーションR=120nmを有している。液晶パネル140は、セルギャップが4.5μmで90°ねじれネマティック液晶を封止した640×480画素のTFT(薄膜トランジスタ)をスイッチング素子として用いたアクティブマトリクス型LCDである。使用した液晶材料は、Δn=0.105、Δε(比誘電率)=8.2のフッソ系液晶であり、液晶パネル140の両基板の液晶側に形成した配向膜の材料はSE7792(日産化学製)である。
本実施例による液晶表示装置の視角特性を測定したところ、コントラスト10が得られる範囲は上下方向で+55°〜−50°、左右方向で±80°を超える広視野角を得ることができた。さらに、各画素に対して画素半分をラビングする際、残りの半分にはレジストでマスクをしておくことで配向分割処理が施された液晶パネル140を用いて液晶表示装置を構成した場合には、コントラスト10が得られる範囲が上下方向で+55°〜−50°、左右方向で±80°を超える広視野角を得ることができただけでなく、階調表示をした場合、優れた中間調表示性能が得られた。
比較例として、通常の90度ツイストで、補償フィルムなしの場合にはコントラスト10が得られる範囲は上下方向で+24°〜−50°、左右方向で+38°〜−38°が得られるに止まった。
〔第11の実施の形態〕
次に、本発明の第11の実施の形態による液晶表示装置について図84乃至図93を用いて説明する。本実施の形態による液晶表示装置は、TN液晶パネルに光学補償フィルムを組み合わせるだけで広視野角を実現する点に特徴を有している。具体的には、本実施の形態による液晶表示装置は、下側基板近傍と上側基板近傍との配向方向のねじれ角が90°未満のツイスト構造の液晶層を有している。Z軸をフィルム膜厚方向にとったときに、3つの主屈折率nx、ny、nzがnx≒ny>nzであるような光学位相差フィルムを少なくとも一枚、偏光フィルムとガラス基板の間に配置している。
さらに、少なくとも2枚の一軸フィルムを偏光フィルムとガラス基板の間に配置しており、これらのうち少なくとも一枚の一軸フィルムの光学軸は出射側偏光フィルムの吸収軸または透過軸に一致している。
また、液晶層が各画素内で面積のほぼ等しい2つの領域に分割される配向分割処理を施していてももちろんよい。
この構成の液晶表示装置により広視角特性が得られることは、TN液晶表示装置の視角特性を改善するために偏光フィルム条件及び補償フィルムについて計算シミュレーション等を用いて検討した結果見出された。
本実施形態による液晶表示装置の断面構成を図84を用いて説明する。図84に示す液晶表示装置は、対向する2枚のガラス基板で液晶を封止した液晶パネル141の両基板側にそれぞれ偏光フィルム142、144を配置している。液晶パネル141と偏光フィルム142との間には、光学補償フィルム150が配置されている。液晶パネル141と偏光フィルム144との間には、2枚の一軸フィルム152、154が配置されている。
この構成において、
(a)偏光フィルム142の吸収軸と偏光フィルム144の吸収軸とは直交している。
(b)光学補償フィルム150の主屈折率nx、ny、nzは、nx≒ny>nzである。また、光学層の厚さをdとしたリタデーションR=(nx−nz)×dの値を70nm≦R≦200nmの範囲とすると、上下方向の視角においてコントラスト比が10を超える視野角は60°以上が得られる。
(c)液晶パネル141に封止されているTN液晶のねじれ角は90°未満であり、たとえばねじれ角が0°〜80°に設定されている。
(d)液晶パネル141のリタデーションRLCは白輝度を左右し、その最適値は液晶のねじれ角に依存する。ねじれ角0°では250nm≦RLC≦300nmの範囲にあり、ねじれ角45°では300nm≦RLC≦350nmの範囲にあるのが好ましい。
(e)一軸フィルム152は、100nm未満の小さなリタデーション値を有している。一軸フィルム152は、偏光フィルム144の吸収軸及び透過軸とは異なる方向にの遅相軸を有するように挿入されている。一軸フィルム152は液晶駆動電圧の調整用に挿入されており、一軸フィルム152の遅相軸の所定方向からの角度で液晶駆動電圧を変えることができる。
正面コントラストが1000レベル程度を得るためには、一軸フィルム152のリタデーションは20〜100nm程度が必要である。
(f)一軸フィルム154は、その遅相軸が偏光フィルム144の吸収軸または透過軸と平行になるように挿入されている。一軸フィルム154を配置することにより視角特性を改善することができる。
(g)液晶パネル141において、中間調特性を改善するため、液晶層は各画素内で面積のほぼ等しい2つの領域に分割されている。
次に、本実施の形態による液晶表示装置の実施例1乃至4について図84乃至図93を用いて説明する。以下の実施例1乃至4において、共通条件として、液晶層は、Δn=0.105、Δε=8.2のフッソ系液晶であり、配向膜は、SE7792(日産化学製)を用いており、液晶パネルは、640×480画素のTFTをスイッチング素子に用いたアクティブマトリクス型LCDである。
まず、図84乃至図86を用いて実施例1について説明する。図84及び図85に示す液晶表示装置において、液晶パネル141に封止されたTN液晶層は、ねじれ角が45°でセルギャップが3μmである。図85に示すように、液晶層は各画素内で領域I及び領域IIに配向分割されている。図中水平線に対して上側の領域Iでは、垂直線を境にして下側基板近傍の液晶分子は半時計回りに22.5°回転したX1方向に配向し、上側基板近傍の液晶分子は時計回りに22.5°回転したX2方向に配向している。従って、ねじれ角は45°である。図中下側の領域IIは、同様にX1方向とX2方向に配向している。
図示は省略したが偏光フィルム142の吸収軸は45°方位にあり、それと直交する135°方位に偏光フィルム144の吸収軸が設定されている。
光学補償フィルム150のリタデーションRは140nmである。一軸フィルム152のリタデーションは25nmで、遅相軸は150°の方向にある。また、一軸フィルム154のリタデーションは160nmであり、遅相軸は偏光フィルム144の透過軸の方向と平行な45°の方向にある。
以上の構成による液晶表示装置に、7.5Vの液晶駆動電圧を印加して測定した視角特性を図86に示す。コントラスト比が10以下となる領域は上下方向の±70°以上であり、それ以外は視野角80°以上の良好な視角特性が実現されている。
次に、図84及び図87乃至89を用いて実施例2について説明する。図84に示す液晶表示装置において、液晶パネル141に封止されたTN液晶層は、ねじれ角が45°でセルギャップが3μmである。液晶配向方向は実施例1で示した図85と同一である。
偏光フィルム142の吸収軸は45°方位にあり、それと直交する135°方位に偏光フィルム144の吸収軸が設定されている。
光学補償フィルム150のリタデーションRは150nmである。一軸フィルム152のリタデーションは25nmで、遅相軸は20°の方向にある。また、一軸フィルム154のリタデーションは160nmであり、遅相軸は偏光フィルム144の透過軸の方向と平行な45°の方向にある。
以上の構成による液晶表示装置に、10Vの液晶駆動電圧を印加して測定した視角特性を図87に示す。コントラスト比が10以下となる領域は全方位において視野角80°以上の良好な視角特性が実現されている。
また、上下方向から見たときの中間調特性を図88に示し、左右方向から見たときの中間調特性を図89に示す。図88及び図89は、横軸に極角(傾き角)をとり縦軸に透過率をとっている。本実施例の液晶表示装置も配向分割処理を施しているため、概ね良好な中間調表示が得られているが、図88に示す上下方向の階調表示特性では極角が±50°を超えると階調反転による中間調特性の劣化が生じる。この対策としてパネル全体を基板面法線を軸として45°回転させて、元の45°方向を上下方向に位置させ、元の135°方向を左右方向に位置させて測定した中間調特性を図90及び図91に示す。図90及び図91も横軸に極角をとり縦軸に透過率をとっている。図90及び図91から明らかなように、視野角±80°でも階調反転の生じるところはなく、中間調特性の評価上最も重要な上下左右の軸方向の中間調特性が改善されることが分かる。
次に、図84及び図92を用いて実施例3について説明する。図84に示す液晶表示装置において、液晶パネル141に封止された液晶層は、ねじれ角が0°でセルギャップが2.6μmである。液晶配向方向は実施例1の図85における90°と270°を結ぶ方向である。
偏光フィルム142の吸収軸は45°方位にあり、それと直交する135°方位に偏光フィルム144の吸収軸が設定されている。光学補償フィルム150にはVACフィルムが用いられている。VACフィルムのリタデーションRは140nmである。一軸フィルム152のリタデーションは25nmで、遅相軸は30°の方向にある。また、一軸フィルム154のリタデーションは120nmであり、遅相軸は偏光フィルム144の透過軸の方向と平行な45°の方向にある。
以上の構成による液晶表示装置に、10Vの液晶駆動電圧を印加して測定した視角特性を図87に示す。コントラスト比が10となる領域は全方位において視野角80°以上となる良好な視角特性が実現される。
次に、図84及び図93を用いて実施例4について説明する。図84に示す液晶表示装置において、液晶パネル141に封止された液晶層は、ねじれ角が60°でセルギャップが3.3μmである。液晶配向方向は実施例1の図85における垂直線に対して30°ずつ開いたX1方向及びX2方向である。
偏光フィルム142の吸収軸は45°方位にあり、それと直交する135°方位に偏光フィルム144の吸収軸が設定されている。光学補償フィルム150のリタデーションRは180nmである。一軸フィルム152のリタデーションは25nmで、遅相軸は145°の方向にある。また、一軸フィルム154のリタデーションは160nmであり、遅相軸は偏光フィルム144の透過軸の方向と平行な45°の方向にある。
以上の構成による液晶表示装置に、10Vの液晶駆動電圧を印加して測定した視角特性を図93に示す。コントラスト比が10となる領域は全方位において視野角80°以上となる良好な視角特性が実現される。
〔第12の実施の形態〕
次に、本発明の第12の実施の形態による液晶表示装置について図94乃至図104を用いて説明する。実施形態の説明に入る前に本実施形態が解決しようとする課題についてより具体的に説明する。近年、TFT液晶表示装置の大型化、階調表示化、あるいは高コントラスト化が図られ、パソコンのモニタあるいはTV画像表示装置として使用されるまでになっている。このようなアプリケーションにおいては、あらゆる方向から十分な表示品質で画像が見られる液晶表示装置の実現が望まれる。
広視野角を実現する技術として、本願出願人はMVA型液晶表示装置を実現している。MVA型液晶表示装置の液晶分子は、電圧無印加時には垂直配向しており、電圧印加時には4領域毎に分かれてそれぞれ4方向に傾く。これにより各領域の視角特性が混ざる結果広い視野角が得られる。
このMVA型LCDによる白黒表示の視野角は、上下左右視角において傾き角80°でコントラスト10以上が実現される。しかしながら、斜め45°視角方位ではコントラストが低下するという問題が生じていた。
この問題を解決するための手法として、遅相軸を直交させた位相差フィルムを液晶層の片側あるいは両側に別々あるいは重ねて設ける構成が提案されている。この提案は、例えば特開平4−101119号公報、あるいは特開平4−162018号公報などに開示されている。
これら開示された手法の構成を図94に模式的に示す。図94に示す液晶表示装置は、対向する2枚のガラス基板で液晶を封止した液晶パネル166の両基板面側にそれぞれ偏光フィルム164、172を配置し、液晶パネル166と偏光フィルム164、172との間に一軸延伸フィルム168、170をそれぞれ配置したものである。
偏光板164は2枚のTACフィルム160でPVAフィルム162を挟んだ構成となっている。同様に、偏光板172も2枚のTACフィルム160でPVAフィルム162を挟んだ構成となっている。PVAフィルム162にはヨウ素がドーブされて吸収軸が形成されている。図94に示すように一軸延伸フィルム168の延伸軸、すなわち遅相軸は偏光板164のPVAフィルム162の吸収軸と直交している。また、一軸延伸フィルム170の遅相軸は偏光板172のPVAフィルム162の吸収軸と直交している。また、偏光板164と偏光板172の吸収軸は直交している。液晶パネル166には垂直配向液晶が封止されている。
図95は一軸延伸フィルム168をフィルム面法線方向から見た状態を示しており、図中矢印は遅相軸の方向を示している。一方、図96は一軸延伸フィルム170をフィルム面法線方向から見た状態を示しており、図中矢印は遅相軸の方向を示している。いずれの一軸延伸フィルム168、170も、長方形のパネル面に合わせて長方形形状に裁断されて、それら遅相軸は長方形の各辺に平行あるいは直角な方向に形成されている。図95及び図96に示す一軸延伸フィルム168、170が図94に示す液晶パネル166の両基板面に正確に貼り合わされれば、それらの遅相軸は正確に直交するので、光学的な効果は正面視角において相殺されて皆無である。
ところが、現実に作製される一軸延伸フィルム168、170の遅層軸の方向は、図97及び図98に示すように、フィルム外形の長方形の各辺に平行あるいは垂直にならない場合が多い。このため、図97及び図98に示す一軸延伸フィルム168、170が図94に示す液晶パネル166の両基板面に正確に貼り合わされても、それらの遅相軸は直交しない。さらにそれらの遅相軸は、偏光板164、172の吸収軸に対しても平行あるいは垂直にならないため、各一軸延伸フィルム168、170の光学的な効果が発揮されて、黒表示においても正面において漏れ光が生じ、コントラストが低下するという問題が生じていた。
この一軸延伸フィルム168、170の遅相軸がずれてしまう原因は、一軸延伸フィルム168、170の製造工程に依存する点が大きい。図99は一軸延伸フィルム168、170の製造工程においてフィルム174を矢印178方向に延伸したときの位相差の軸176の分布を示している。フィルム174を延伸すると、フィルム174は延伸方向に垂直な方向にも応力がかかり、フィルム174面内に位相差の方向の分布が生じる。このため、図100に示すように、フィルム174の延伸方向(矢印178方向)を基準にして一軸延伸フィルム168、170を切り出す際、切り出す方位に対して一軸延伸フィルム168、170の遅相軸の方向が平行垂直にならずずれてしまう。長方形に切り出したフィルムを無作為に組み合わせると図97及び図98に示したように2つの遅相軸が直交しなくなり、結果として上述のようにコントラストが低下してしまう。
本実施の形態による液晶表示装置及びその製造方法について図101を用いて説明する。図101は、一軸延伸フィルム168、170の製造工程から液晶パネルへのフィルム貼りあわせ工程までを模式的に示しており、図中上方から下方に延びる矢印で各工程の流れを示している。
まず、図101上方に示すように、延伸フィルム174から一軸延伸フィルム168、170を切り出す位置、方位を管理し、フィルム174における光学軸の方位を各フィルム174について把握する。これに基づいて一軸延伸フィルム168、170の組み合わせを決定する。例えば、フィルム174としてノルボルネン系のフィルムを用いている。図101に示すように、延伸機による引張応力が加わる延伸フィルム174内の位相差の面内分布が、フィルム174中央で延伸方向(矢印178方向)に平行な軸(中心軸)でほぼ線対称であれば、図中のフィルム174上半分(α側)と下半分(β側)とに領域を区分けする。このとき重要なのはα側領域内(あるいはβ側領域内)での位相差の面内分布がほぼ均一であるように領域を区分けすることと、異なる位相差の分布が生じている領域毎に区分けすることである。
そして、フィルム切り出し工程A及び次工程Bにおいて、フィルムの光軸のずれ方位を管理する。ここで、フィルムの表面、裏面、フィルムの引き伸ばしの先側か元側か等を同時に管理することは言うまでもない。工程Aにおいて、フィルム174のα側から切り出した一軸延伸フィルム168と、同じくα側から切り出した一軸延伸フィルム170とを組み合わせる。一方、フィルム174のβ側から切り出した一軸延伸フィルム168と、同じくβ側から切り出した一軸延伸フィルム170とを組み合わせるようにする。次いで、工程Bにおいて、一軸延伸フィルム168、170の向きを揃える。
この状態での一軸延伸フィルム168の遅相軸(矢印)は、図102に例示するようにフィルム外形の長方形の各辺に平行あるいは垂直になっていない。一方、一軸延伸フィルム170の遅相軸も、図103に例示するようにフィルム外形の長方形の各辺に平行あるいは垂直になっていない。ところが、図102及び図103を重ねると、お互いの遅相軸が直交するのが分かる。つまり、遅相軸がほぼ等しい方向に向いている領域(例えばα側)内のフィルム同士を組み合わせれば容易に遅相軸が直交する2枚のフィルムを製造できる。
このようにして組み合わされた一軸延伸フィルム168、170を用いて、液晶パネル166と偏光板164(図中上下方向に吸収軸を有している)との間に一軸延伸フィルム168を配置し、液晶パネル166と偏光板172(図中左右方向に吸収軸を有している)との間に一軸延伸フィルム170を配置して液晶表示装置が完成する。完成した液晶表示装置は、一軸延伸フィルム168、170の遅相軸が直交しているので正面視角での光学的な効果は生じない。このため、優れた正面コントラストを得ることができる。なお、一軸延伸フィルム168、170の配置位置としては、液晶パネル166の一方のパネル面側に2枚を重ねて配置することも可能である。しかしながら、光学的な効果として、片側に2枚重ねた一軸延伸フィルムは偏光の方位を回転させる効果がないため、液晶パネル166を挟んでパネル両面側に配置することが望ましい。
次に、本実施の形態による液晶表示装置及びその製造方法を偏光板の製造に適用した例を図104を用いて説明する。図104は、偏光板164、172に用いられるPVAフィルム162の製造工程から液晶パネルへのフィルム貼りあわせ工程までを模式的に示しており、図中上方から下方に延びる矢印で各工程の流れを示している。
まず、図104上方に示すように、ヨウ素をド−プしたPVA延伸フィルム175からPVAフィルム162を切り出す位置、方位を管理し、PVA延伸フィルム175における光学軸の方位を各フィルム175について把握する。これに基づいてPVAフィルム162の組み合わせを決定する。図101を用いて説明したのと同様の方法により、図中のPVA延伸フィルム175上半分(α側)と下半分(β側)とに領域を区分けする。
次に、フィルム切り出し工程A及び次工程Bにおいても図101を用いて説明したのと同様の方法により、フィルムの組み合わせを管理する。工程Aにおいて、PVA延伸フィルム175のα側から切り出した2枚のPVAフィルム162のそれぞれにTACフィルムを貼り合わせて偏光板164、172の組を作製する。一方、PVA延伸フィルム175のβ側から切り出した2枚のPVAフィルム162のそれぞれにTACフィルムを貼り合わせて偏光板164、172の組を作製する。次いで、工程Bにおいて、偏光板164、172の向きを揃える。
この状態での偏光板164、172の吸収軸(図104中複数の平行線で示す)は、フィルム外形の長方形の各辺に平行あるいは垂直になっていない。ところが、図104の図示からも分かるように、偏光板164と172を重ねると、お互いの吸収軸が直交する。つまり、吸収軸がほぼ等しい方向に向いている領域(例えばα側)内のフィルム同士を組み合わせれば容易に吸収軸が直交する2枚の偏光板を製造できる。
このようにして組み合わされた偏光板164、172を用いて、液晶パネル166のパネル面両側にそれぞれ偏光板164、172を配置する。また、偏光板164と液晶パネル166との間に一軸延伸フィルム168を配置し、液晶パネル166と偏光板172との間に一軸延伸フィルム170を配置して液晶表示装置が完成する。本実施の形態で作成した一軸延伸フィルム168、170及び偏光板164、172を組み合わせることにより、一軸延伸フィルム168、170の遅相軸の直交性だけでなく、偏光板164、172同士の吸収軸の直交性、さらに一軸延伸フィルム168、170と偏光板164、172の直交性も確実に得られるので正面視角での光学的な効果を確実に生じさせないようにすることができる。このため、優れた正面コントラストを歩留まりよく得ることができるようになる。
このように本実施の形態によれば、位相差フィルム、あるいは、偏光板の光学軸の方向のずれの方位を容易に確実に合わせることができるので、これらを組合せた際の軸の直交性を高めることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、MVA型LCDの表示、視角特性を向上させることが可能となる。特に、正面のコントラストの高いディスプレイを歩留まりよく実現することが可能となる。
以上説明した第1乃至第12の実施の形態による視角補償フィルム及び液晶表示装置は、以下のようにまとめられる。
(付記1)
負の複屈折を有する層が傾いて積層されて積層群をなし、このような積層群が傾きの方向が逆方向となるように2つ対向して積層されていることを特徴とする視角補償フィルム。
(付記2)
付記1記載の視角補償フィルムであって、
前記積層群の各層の傾き角度が徐々に変化している視角補償フィルム。
(付記3)
付記1記載の視角補償フィルムであって、
前記積層群は、ディスコティック液晶からなる視角補償フィルム。
(付記4)
一対の基板と、前記一対の基板間に封入され、前記基板間に電圧を印加しないときには分子が前記基板面に対してほぼ垂直に配向する液晶とを備える液晶パネルと、
前記液晶パネルの両側に、吸収軸が互いに直交するように配置された一対の偏光素子と、
付記1乃至3のいずれか1項に記載の視角補償フィルムとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
(付記5)
一対の基板と、前記一対の基板に封入され、前記基板間に電圧を印加しないときには分子が前記基板面に対してほぼ垂直に配向する液晶とを備える液晶パネルと、
前記液晶パネルの両側に、吸収軸が互いに直交するように配置された第1及び第2の偏光素子と、
前記液晶パネルと前記第1の偏光素子との間に配置され、主屈折率nx、ny、nzのうち、フィルム面内方向の屈折率をnx、ny、フィルム法線方向の屈折率をnzとしたときに、nx>ny≒nzの関係が成り立ち、その遅相軸(nxの方向)が前記第1の偏光素子の吸収軸と直交するように配置された第1の位相差フィルムと、
前記液晶パネルと前記第2の偏光素子との間に配置され、主屈折率nx、ny、nzのうち、フィルム面内方向の屈折率をnx、nY、フィルム法線方向の屈折率をnzとしたときに、nx>ny≒nzの関係が成り立ち、その遅相軸(nxの方向)が前記第2の偏光素子の吸収軸と直交するように配置された第2の位相差フィルムと、
前記第1の偏光素子と前記第1の位相差フィルムとの間、前記第1の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間、前記第2の偏光素子と前記第2の位相差フィルムとの間、あるいは前記第2の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間の少なくとも一か所に配置され、主屈折率nx、ny、nzのうち、フィルム面内方向の屈折率をnx、ny、フィルム法線方向の屈折率をnzとしたときに、nx≒ny>nzの関係が成り立つ少なくとも一層の付加位相差フィルムとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
(付記6)
付記5記載の液晶表示装置であって、
前記液晶パネルを構成する前記一対の基板の対向する表面の少なくとも一方には、突起、窪み又は電極に設けたスリットのいずれか、又はそれらの組合せからなるドメイン規制手段を備え、前記ドメイン規制手段は、前記基板間に電圧を印加したときに液晶分子が斜めになる方向が、各画素内で複数の方向になるように規制すること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記7)
付記5記載の液晶表示装置であって、
前記第1、第2の位相差フィルムのリタデーション(nx−ny)d(d:位相差フィルムの厚さ)を、それぞれリタデーションR1、R2とし、
前記付加位相差フィルムのうち、前記第1の偏光素子と前記第1の位相差フィルムとの間か、又は前記第2の偏光素子と前記第2の位相差フィルムとの間の少なくとも一方に配置されたN層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)d(d:付加位相差フィルムの厚さ)をリタデーションRt1、Rt2、…、RtNとし、
前記付加位相差フィルムのうち、前記第1の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間か、又は前記第2の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間の少なくとも一方に配置されたM層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)d(d:付加位相差フィルムの厚さ)をリタデーションRt’1、Rt’2、…、Rt’Mとし(N+M≧1)、
前記液晶パネルのリタデーションをRLCとしたとき、
0≦R1、
0≦R2、
0≦Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’M、 (−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)−60≦R1≦(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)+60、
(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)−60≦R2≦(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)+60、
(1.13×RLC−105)×α+(0.89×RLC−137)(1−α)−25≦Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’M≦(1.13×RLC−105)×α+(0.89×RLC−137)(1−α)+25、
但し、α=(Rt1+Rt2+…+RtN)/(Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’M)で、単位はnmである関係が満たされる液晶表示装置。
(付記8)
付記5記載の液晶表示装置であって、
前記第1、第2の位相差フィルムのリタデーション(nx−ny)d(d:位相差フィルムの厚さ)を、それぞれリタデーションR1、R2とし、
前記付加位相差フィルムのうち、前記第1の偏光素子と前記第1の位相差フィルムとの間か、又は前記第2の偏光素子と前記第2の位相差フィルムとの間の少なくとも一方に配置されたN層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)d(d:付加位相差フィルムの厚さ)をリタデーションRt1、Rt2、…、RtNとし、
前記付加位相差フィルムのうち、前記第1の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間か、又は前記第2の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間の少なくとも一方に配置されたM層の位相差フィルムのリタデーション((nx+ny)/2−nz)d(d:付加位相差フィルムの厚さ)をリタデーションRt’1、Rt’2、…、Rt’Mとし(N+M≧1)、
前記液晶パネルのリタデーションをRLCとしたとき、
0≦R1、
0≦R2、
0≦Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’M、(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)−30≦R1≦(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)+30、
(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)−30≦R2≦(−0.08×RLC+58)×α+95×(1−α)+30、
(1.13×RLC−105)×α+(0.89×RLC−137)(1−α)−60≦Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’M≦(1.13×RLC−105)×α+(0.89×RLC−137)(1−α)+60、
但し、α=(Rt1+Rt2+…+RtN)/(Rt1+Rt2+…+RtN+Rt’1+Rt’2+…+Rt’M)で、単位はnmである関係が満たされる液晶表示装置。
(付記9)
付記5記載の液晶表示装置であって、
前記第1及び第2の位相差フィルムの少なくとも一方は、延伸フィルムである液晶表示装置。
(付記10)
付記5記載の液晶表示装置であって、
前記第1及び第2の位相差フィルムの少なくとも一方は、高分子液晶層を備える液晶表示装置。
(付記11)
一対の基板間に、電圧無印加時に長軸方向が前記基板面に対して略垂直に配向する液晶分子を含む液晶からなる液晶層を挟持する液晶パネルと、
前記液晶パネルの両外側に配置され、それぞれの吸収軸が互いに直交するように、かつ、前記吸収軸が前記液晶に電圧が印加されたときに前記液晶分子が配向する方向に対し略45度をなすように配設された第1及び第2の偏光素子と、
面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnzとするときに、nxがny及びnzの何れよりも大きい関係にある位相差フィルムを第1種の位相差フィルム、nxとnyがほぼ等しく且つnxとnyがnzよりも大きい関係にある位相差フィルムを第2種の位相差フィルムとして、
前記第1の偏光素子と前記液晶パネルとの間に、遅相軸が前記第1の偏光素子の吸収軸と直交するように配置された第1の第1種の位相差フィルムと、
前記第2の偏光素子と前記液晶パネルとの間に、遅相軸が前記第2の偏光素子の吸収軸と直行するように配置された第2の第1種の位相差フィルムと、
前記第1の偏光素子と前記第1の第1種の位相差フィルムとの間、前記第2の偏光素子と前記第2の第1種の位相差フィルムとの間、前記第1の第1種の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間、あるいは、前記第2の第1種の位相差フィルムと前記液晶パネルとの間の少なくとも一か所に、少なくとも1つの第2種の位相差フィルムを備え、
前記液晶層のリタデーションRLCを液晶の複屈折をΔnと液晶層の厚さdとの積Δnd、位相差フィルムの面内方向のリタデーションRpを(nx−ny)d、厚さ方向のリタデーションRtを((nx+ny)/2−nz)dとして、
遅相軸が隣接する偏光素子の吸収軸と平行に配置された位相差フィルムを除く、前記複数の位相差フィルムの面内方向のリタデーションRpの合計をRp−t、前記複数の位相差フィルムの厚さ方向のリタデーションRtの合計をRt−tとしたときに、
Rp−t=2×(−0.08×RLC+58nm+α)
ただし、α=±30nm
Rt−t=(1.05±0.05)×RLC−47nm+β
ただし、−100nm≦β≦47nm
としたことを特徴とする液晶表示装置。
(付記12)
付記11記載の液晶表示装置であって、
前記液晶層のリタデーションRLCが250nm以上310nm以下、前記厚さ方向のリタデーションの合計Rt−tが180nm以上260nm以下、前記第1種の位相差フィルムの面内方向のリタデーションの合計が25nm以上50nm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
(付記13)
付記11記載の液晶表示装置であって、
前記液晶層のリタデーションRLCが310nm以上390nm以下、前記厚さ方向のリタデーションの合計Rt−tが230nm以上350nm以下、前記第1種の位相差フィルムの面内方向のリタデーションの合計が25nm以上50nm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
(付記14)
付記11乃至13のいずれか1項に記載の液晶表示装置であって、
前記第1種の位相差フィルムは、一軸あるいは二軸方向に延伸したフィルムであることを特徴とする液晶表示装置。
(付記15)
付記11乃至13のいずれか1項に記載の液晶表示装置であって、
前記第2種の位相差フィルムは、前記偏光素子とともに偏光板を構成する保護部材であることを特徴とする液晶表示装置。
(付記16)
所定の空隙を介して対向配置される第1及び第2の基板と、
前記空隙に封止されてベンド配向する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層と反対側の面に配置される第1の偏光板と、
前記第2の基板の前記液晶層と反対側の面に配置される第2の偏光板と、
前記第1の基板と前記第1の偏光板との間に配置され、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第1の基板側の液晶分子の非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記非線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶を有する第1の光学補償フィルムと、
前記第2の基板と前記第2の偏光板との間に配置され、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第2の基板側の液晶分子の非線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記非線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶を有する第2の光学補償フィルムと
を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記17)
付記16記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、ほぼ線形にチルト角が変化する複数の前記ディスコティック液晶層を積層して、前記液晶層の非線形なチルト角の変化曲線を補間して前記リタデーションを補償すること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記18)
付記17記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、ほぼ線形にチルト角が変化する前記ディスコティック液晶層を有する複数のフィルムの積層体で構成されていること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記19)
付記18記載の液晶表示装置において、
前記複数のフィルムのそれぞれのディスコティック液晶は、
前記液晶層の液晶分子の配向方位とほぼ同方向の配向方位を有しており、
前記基板面法線に直交する方向を基準とすると、前記液晶層から遠ざかるにつれてチルト角(絶対値)が大きくなること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記20)
付記16乃至19のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルムは、ノーマリホワイトモードにおける黒表示において前記リタデーションを最適に補償すること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記21)
付記16乃至20のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶層のリタデーションは800〜1200nmであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記22)
付記21記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、前記液晶層に近い側から順に第1及び第2のサブフィルムの積層構造を有し、
前記第1のサブフィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ1は50°≦θ1≦80°であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記23)
付記22記載の液晶表示装置において、
前記第1のサブフィルムのリタデーションをR1、前記第2のサブフィルムのリタデーションをR2としたとき、R1+R2が450nm±150nm、R2/R1が1〜10であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記24)
付記21記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルムのそれぞれは、前記液晶層に近い側から順に第1乃至第3のサブフィルムの積層構造を有し、
前記第1のサブフィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ1は30°≦θ1≦60°であり、
前記第2のサブフィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θ2は、θ1≦θ2<85°であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記25)
付記24記載の液晶表示装置において、
前記第1のサブフィルムのリタデーションをR1、前記第2のサブフィルムのリタデーションをR2、前記第3のサブフィルムのリタデーションをR3としたとき、R1+R2+R3が450nm±150nm、R2/R1が1〜5、R3/R1が5〜10であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記26)
付記16記載の液晶表示装置において、
前記第1の光学補償フィルムと前記第1の偏光板との間には、さらに、nx=ny<nzの屈折率楕円体でnzが前記基板面法線にほぼ一致している正の垂直配向位相差フィルムである第3の光学補償フィルムが配置されていること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記27)
付記16記載の液晶表示装置において、
前記第1の光学補償フィルムと前記第1の偏光板との間には、さらに第3の光学補償フィルムが配置され、
前記第2の光学補償フィルムと前記第2の偏光板との間には、さらに第4の光学補償フィルムが配置され、
前記第3及び第4の光学補償フィルムは、負の位相差フィルムであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記28)
付記27記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最大値(絶対値)θuは、ほぼ90°であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記29)
付記27又は28に記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルム内のディスコティック液晶のチルト角の最小値(絶対値)θlは、ほぼ30°であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記30)
付記16乃至28のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第3の光学補償フィルムと前記第1の偏光板との間に、さらに、一軸位相差フィルムが配置されること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記31)
一対の基板間に、電圧無印加時に長軸方向が前記基板面に対して略垂直に配向する液晶分子を含む液晶からなる液晶層を挟持する液晶パネルと、
前記液晶パネルの両外側に配置され、それぞれの吸収軸が互いに直交するように、かつ、前記吸収軸が前記液晶に電圧が印加されたときに前記液晶分子が配向する方向に対し略45度をなすように配設された2つの偏光素子と、
前記偏光素子の少なくとも一方と前記液晶パネルとの間に配置され、主屈折率nx、ny、nzのうち最小の主屈折率nzの方向が基板法線方向から傾いている少なくとも一層の位相差フィルムと
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
(付記32)
付記31記載の液晶表示装置であって、
前記液晶パネルを構成する前記一対の基板の対向する表面の少なくとも一方には、突起、窪み又は電極に設けたスリットのいずれか、又はそれらの組合せからなるドメイン規制手段を備え、前記ドメイン規制手段は、前記基板間に電圧を印加したときに液晶分子が斜めになる方向が、各画素内で複数の方向になるように規制すること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記33)
付記32記載の液晶表示装置であって、
前記位相差フィルムは、その光学層の厚さをdとすると、nx≒ny>nz、0nm≦(nx−ny)d≦10nmの関係が成り立つこと
を特徴とする液晶表示装置。
(付記34)
付記33記載の液晶表示装置であって、
nzの方向が基板法線に対してなす角度をθとすると、0°<θ≦15°であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記35)
付記34記載の液晶表示装置であって、
nzが傾いている方位角と前記第1及び第2の偏光素子の吸収軸とがなす角度をφとすると、角度φは、0°、90°、180°、及び270°のいずれかであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記36)
付記35記載の液晶表示装置であって、
角度θ≦α、角度φ=βの位相差フィルムがN層配置され、
角度θ≦α、角度φ=β+180°の位相差フィルムがN’層配置され、
0<(1/2+α/30)×(Rt1+Rt2+…+RtN)+(1/2−α/30)×(R’t1+R’t2+…+R’tN')<0.88×(ΔnLC・dLC+RtPL);
0<(1/2−α/30)×(Rt1+Rt2+…+RtN)+(1/2+α/30)×(R’t1+R’t2+…+R’tN')<0.88×(ΔnLC・dLC+RtPL)
ただし、
0°<α≦15°;
βは、0°、90°、180°、270°のいずれかの値である;
N≧0、N’≧0(N=N’=0は除く);
リタデーションRt=((nx+ny)/2−nz)dとしたとき、Rt1、Rt2、…、RtNは、角度φ=βの位相差フィルムの1層からN層までのリタデーションRtであり、R’t1、R’t2、…、R’tN'は、角度φ=β+180の位相差フィルムの1層からN’層までのリタデーションRtである;
ΔnLCは、液晶の屈折率異方性である;
dLCは、セル厚である;
RtPLは、偏光素子に用いられる支持フィルムのうち、位相差フィルムとして機能するフィルムのリタデーションRtの合計値である;
が満たされること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記37)
付記36記載の液晶表示装置であって、
一層の位相差フィルムにおいて、前記角度θが厚さ方向で連続あるいは不連続に変化するような位相差フィルムを含むこと
を特徴とする液晶表示装置。
(付記38)
所定の空隙を介して対向配置される第1及び第2の基板と、
前記空隙に封止され、電圧印加時には、前記第1及び第2の基板面近傍の液晶分子がほぼ垂直配向を維持し全体としてスプレー配向する負の誘電率異方性を有するネマティック液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層と反対側の面に配置される第1の偏光板と、
前記第2の基板の前記液晶層と反対側の面に配置される第2の偏光板と、
少なくとも、前記第1の基板と前記第1の偏光板との間、又は、前記第2の基板と前記第2の偏光板との間に配置され、前記液晶層が有するリタデーションを補償する光学補償フィルムと
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
(付記39)
付記38記載の液晶表示装置において、
前記第1の基板と前記第1の偏光板との間に配置され、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第1の基板側の液晶分子の線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶を有する第1の光学補償フィルムと、
前記第2の基板と前記第2の偏光板との間に配置され、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第2の基板側の液晶分子の線形なチルト変化に基づくリタデーションを補償するように、前記線形なチルト変化に応じてチルト角を変化させたディスコティック液晶を有する第2の光学補償フィルムと
を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記40)
付記39記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルムは、ノーマリーブラックモードでの黒状態を光学補償すること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記41)
付記40記載の液晶表示装置において、
前記第1の光学補償フィルムの前記ディスコティック液晶の主屈折率nx、ny、nzのうち、主屈折率nzの方向の変化は、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第1の基板側の液晶分子の主屈折率nzの変化する方向に対応付けられており、
前記第2の光学補償フィルムの前記ディスコティック液晶の主屈折率nx、ny、nzのうち、主屈折率nzの方向の変化は、前記液晶層を前記基板面法線方向にほぼ2分する領域のうち、前記第2の基板側の液晶分子の主屈折率nzの変化する方向に対応付けられていること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記42)
付記41記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の光学補償フィルムの前記ディスコティック液晶の前記主屈折率nzの方向の変化は、前記ディスコティック液晶の前記基板面法線方向の位置変化に対して線形であること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記43)
付記39乃至42のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶層のリタデーションΔnd(Δnは液晶分子の屈折率異方性、dはセルギャップ)が500〜2000nmであり、
前記第1及び第2の光学補償フィルムの各リタデーションR=((nx+ny)/2−nz)D(Dは前記第1及び第2の光学補償フィルムの各厚さ)が、300〜1200nmであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記44)
付記39乃至43のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
少なくとも、前記第1の光学補償フィルムと前記第1の偏光板との間、あるいは前記第2の光学補償フィルムと前記第2の偏光板との間に、前記液晶層に近い方から順に、nx=ny<nzを満たす屈折率楕円体で主屈折率nzが基板面法線に一致する第3の光学補償フィルムと、一軸位相差フィルムであってその光学軸が前記第1の偏光板の透過軸方向に一致している第4の光学補償フィルムとが配置されていること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記45)
対向する2つの基板間に封止され、一方の基板近傍と他方の基板近傍とで配向方向が略90°異なるツイスト構造の液晶層と、
前記両基板の外側にそれぞれ配置され、互いの偏光軸が平行で且つ前記基板近傍の液晶の配向方向に対して略45°の角度をなす2枚の偏光フィルムと、
主屈折率nx、ny、nzがnx≒ny>nzであり、主屈折率nxの方向は前記偏光フィルムの前記偏光軸にほぼ平行であり、主屈折率nxの方向を軸にして主屈折率nzの方向がフィルム面の法線方向から傾き角θだけ傾くと同時に、主屈折率nyの方向がフィルム面に平行な方向から傾き角θだけ傾いている光学位相差フィルムと
を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記46)
付記45記載の液晶表示装置において、
前記傾き角θは、30°≦θ≦70°の範囲にあること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記47)
付記45又は46に記載の液晶表示装置において、
前記光学位相差フィルムの光学層の厚さをDとして、70nm<(nx−nz)×D<160nmであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記48)
付記45乃至47のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶層のリタデーションRは、400nm≦R≦550nmであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記49)
付記45乃至48のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶層が各画素内で面積のほぼ等しい2つの領域に分割されていること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記50)
対向する2つの基板間に封止され、一方の基板近傍と他方の基板近傍との配向方向のねじれ角が90°未満のツイスト構造の液晶層と、
前記両基板の外側にそれぞれ配置されて互いの偏光軸が直交する2枚の偏光フィルムと、
前記一方の基板とその外側に配置された一方の前記偏光フィルムとの間に配置され、Z軸をフィルム膜厚方向にとったときに、主屈折率nx、ny、nzがnx≒ny>nzとなる光学位相差フィルムと
前記他方の基板とその外側に配置された他方の前記偏光フィルムとの間に配置され、少なくとも一方の光学軸の方向は前記他方の偏光フィルムの吸収軸または透過軸と一致する少なくとも2枚の一軸フィルムと
を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記51)
付記50記載の液晶表示装置において、
前記光学位相差フィルムのリタデーションRは、70nm≦R≦200nmであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記52)
付記50又は51に記載の液晶表示装置において、
他方の光学軸を有する前記一軸フィルムは、リタデーションの値が20nm〜100nmであり、前記他方の光学軸が前記他方の偏光フィルムの吸収軸及び透過軸に一致しない方向に設定されていること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記53)
付記50乃至52のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
電圧無印加時にセルギャップ中央の液晶分子の配向方向が、パネル上下左右方向から略45度(又は135度)傾いていること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記54)
フィルム一端辺に対し平行及び垂直でない所定のずれ方位を持って互いにほぼ直交する遅相軸を有していることを特徴とする1組の位相差フィルム。
(付記55)
フィルム一端辺に対し平行及び垂直でない所定のずれ方位を持って互いにほぼ直交する吸収軸を有していることを特徴とする1組の偏光フィルム。
(付記56)
対向基板間に液晶を封止した液晶パネルと、前記液晶パネルの両パネル面にそれぞれ配置された1組の偏光フィルムと、前記液晶パネルと前記偏光フィルムとの間に配置された1組の位相差フィルムとを有する液晶表示装置において、
前記1組の位相差フィルムは、付記54記載の1組の位相差フィルムであること
を特徴とする液晶表示装置。
(付記57)
付記56記載の液晶表示装置において、
前記1組の偏光フィルムは、付記55記載の1組の偏光フィルムであること
を特徴とする液晶表示装置。