JPH11132224A - 動圧軸受装置および光偏向装置 - Google Patents

動圧軸受装置および光偏向装置

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JPH11132224A
JPH11132224A JP31436797A JP31436797A JPH11132224A JP H11132224 A JPH11132224 A JP H11132224A JP 31436797 A JP31436797 A JP 31436797A JP 31436797 A JP31436797 A JP 31436797A JP H11132224 A JPH11132224 A JP H11132224A
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sleeve
shaft
film
dynamic pressure
wear
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JP31436797A
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Masaaki Yokota
正明 横田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 動圧軸受の耐久性等を向上させる。 【解決手段】 回転多面鏡R1 と一体である回転軸2の
外周面と、これを嵌挿させるスリーブ1の内周面と、回
転軸の端面2aと、これに対向するスラスト板3の表面
にそれぞれ耐摩耗潤滑性被膜10a〜10dを設ける。
各耐摩耗潤滑性被膜10a〜10dは、母材との境界面
がタンタル、チタンまたは珪素であり、膜厚方向に炭素
含有量が徐々に増加し、表面は耐摩耗性と潤滑性にすぐ
れた硬質炭素膜によって構成されており、軸受負荷が増
大しても剥離を起こすおそれがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザビームプリ
ンタやレーザファクシミリ等の画像形成装置に用いられ
る光偏向装置の回転多面鏡の軸受部等に用いられる動圧
軸受装置および光偏向装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】動圧軸受装置は、一般的に、振れが小さ
くて騒音も少ない等の利点を有し、小型で回転むらが少
ないことを要求されるレーザビームプリンタやレーザフ
ァクシミリ等の光偏向装置の軸受部等に広く用いられ
る。
【0003】図7は、レーザビームプリンタ等の画像形
成装置に用いられる光偏向装置の主要部を示すもので、
側面に反射面を有する回転多面鏡R0 と、これを回転さ
せるモータM0 を有する。
【0004】レーザビームプリンタ等の画像形成装置の
高速化や画質向上のためには、回転多面鏡R0 の回転む
らが小さいことと振動や騒音等が少ないことが不可欠で
ある。そこで、回転多面鏡R0 の軸受部には、内面にヘ
リングボーン溝111(図7の(b)参照)を有するス
リーブ101と、これに嵌挿された回転軸102と、そ
の下端102aに対向するスラスト板103等からなる
動圧軸受装置が用いられる。
【0005】スリーブ101のヘリングボーン溝111
は、回転軸102の回転とともにスリーブ101と回転
軸102の間の流体をヘリングボーン溝111の両端部
から中央部分に向かって吸引するように構成されてお
り、回転軸102は、このようにして吸引された流体の
動圧によってスリーブ101に非接触で支持される。
【0006】回転軸102の下端102aは、回転軸1
02の回転中、モータM0 のロータ106とステータ1
07の間に作用する磁力や、スラスト板103との間の
流体の動圧によって、スラスト板103から浮上した状
態となる。
【0007】モータM0 のロータ106は、回転軸10
2と一体であるフランジ104から懸下されたヨーク1
06aと、その内側に固着されたロータマグネット10
6bを有し、ステータ107は、固定板105に立設さ
れた外筒105aに支持されたコイルからなる。固定板
105はスラスト板103と外筒105aを支持し、ス
リーブ101は外筒105aに嵌挿されている。
【0008】スリーブ101や回転軸102の材質は、
一般的に耐摩耗性にすぐれた窒化珪素や炭化珪素等のセ
ラミック材料、あるいは、アルミニウム、真鍮、SK材
等の金属を母材として、その表面をTiN,TiC,N
i等の耐摩耗性を有する硬質膜等によって硬質化したも
のが用いられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の技術によれば、セラミック材料は極めて加工性が悪い
材料であり、従って、ヘリングボーン溝等の加工コスト
が高く、スリーブ等の部品コストが高くなる。また、加
工性にすぐれたアルミニウム、真鍮、SK材等の金属製
の回転軸やスリーブを製作し、これらにヘリングボーン
溝等を溝加工したうえで、TiN、TiC、Ni等の硬
質膜を被覆する方法は、スリーブや回転軸の耐摩耗性の
向上や加工コストの低減には役立つものの、モータの起
動時の摩擦抵抗が大きいために、モータ負荷が増大して
消費電力の増加を招くという不都合がある。
【0010】そこで、充分な耐摩耗性を備えていて、し
かも潤滑性に富む硬質炭素膜等の炭素系の耐摩耗潤滑性
被膜(カーボンコート)を金属製の回転軸、スリーブ、
スラスト板に被覆することで、モータ起動時等にモータ
負荷が増大する欠点を解決する提案がなされているが、
炭素系の耐摩耗潤滑性被膜は、回転軸やスリーブ等の母
材に対する密着性が不充分であるため、軸受負荷が大き
くなると、膜が剥離するという未解決の課題がある。
【0011】近年では、レーザビームプリンタ等の高速
化やカラー化に対する需要が高まっており、これに応じ
るためには従来より大寸法の回転多面鏡を高速で回転さ
せる必要がある。ところが、大寸法の回転多面鏡を高速
で回転させると、その軸受部にかかる負荷が増大するた
め、上記のように耐摩耗潤滑性被膜の剥離が起こりやす
くなり、必要な耐久性を得ることができない。すなわ
ち、耐摩耗潤滑性被膜が剥離しやすいという欠点は、光
偏向装置等を高速化および高機能化するうえでの大きな
障害となっている。
【0012】本発明は上記従来の技術の有する未解決の
課題に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性と潤滑性に
すぐれており、従ってモータ起動時の摩擦抵抗のために
消費電力の増加を招く等のトラブルもない炭素系の耐摩
耗潤滑性被膜を用いる動圧軸受において、耐摩耗潤滑性
被膜の密着性を大幅に向上させ、高速化や高機能化を促
進できる安価で高性能な動圧軸受装置および光偏向装置
を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の動圧軸受装置は、相対的に回転自在に嵌
合された軸およびスリーブと、前記軸または前記スリー
ブの端面に対向するスラスト板を有し、前記軸の外周面
と前記スリーブの内周面がラジアル動圧軸受部を構成
し、前記スラスト板の表面と前記軸または前記スリーブ
の前記端面がスラスト動圧軸受部を構成する動圧軸受装
置であって、前記軸の前記外周面と前記スリーブの前記
内周面と前記スラスト板の前記表面と前記軸または前記
スリーブの前記端面が、それぞれ、炭素含有量が膜厚方
向に連続的に変化する炭素系の耐摩耗潤滑性被膜によっ
て被覆されていることを特徴とする。
【0014】耐摩耗潤滑性被膜の主成分が、タンタル、
チタンおよび珪素のうちの1つと炭素であるとよい。
【0015】
【作用】軸やスリーブ等の母材として加工しやすい金属
を用いて動圧発生溝を加工し、各軸受面すなわち、軸の
外周面、スリーブの内周面、スラスト板の表面、これに
対向する軸またはスリーブの端面にそれぞれ炭素系の耐
摩耗潤滑性被膜を被覆することで、耐摩耗性と潤滑性の
双方を向上させる。
【0016】炭素系の耐摩耗潤滑性被膜は金属の母材に
対する密着性が低いために剥離しやすいという欠点を有
するが、この欠点を補うために、タンタル、チタンおよ
び珪素のうちの1つと炭素を主成分とする耐摩耗潤滑性
被膜を用いて、炭素含有量が表面に近ずくほど多くなる
ように成分比を連続的に変化させる。母材に接する境界
面において母材である金属との密着性にすぐれたタンタ
ル、チタンまたは珪素の含有量を多くすることで、耐摩
耗潤滑性被膜と母材の結合力が大幅に強化され、耐摩耗
潤滑性被膜の剥離を防ぐことができる。
【0017】軸受負荷が増大しても耐摩耗潤滑性被膜が
剥離を起こすことなく、回転多面鏡の高速化や高重量化
等による軸受負荷の増大にも充分に応じることができ
る。
【0018】加工コストが低いうえに、動圧軸受として
充分な軸受性能を備えており、しかも、モータ起動時に
モータの負荷が増大するおそれがなく、軸受負荷等の増
加には充分に対応できる高い耐久性を有する高性能な動
圧軸受装置を実現できる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。
【0020】図1は一実施の形態による動圧軸受装置を
用いた光偏向装置の主要部を示すもので、これは、側面
に反射面A1 を有する回転多面鏡R1 と、これを回転さ
せる駆動手段であるモータM1 を有する。
【0021】レーザビームプリンタ等の高速化や画質向
上のためには、回転多面鏡R1 の回転むらが小さいこと
と振動や騒音等が少ないことが不可欠である。そこで、
回転多面鏡R1 の軸受部には、スリーブ1と、これに嵌
挿された軸である回転軸2と、その端面2aに対向する
スラスト板3を有する軸受手段である動圧軸受装置が用
いられる。
【0022】回転軸2の外周面には、ヘリングボーン溝
等の動圧発生溝E1 ,E2 が設けられ、回転軸2の回転
とともにスリーブ1と回転軸2の間の流体を動圧発生溝
11の両端部から中央部分に向かって吸引するように構
成されている。スリーブ1の内周面と回転軸2の外周面
は、このようにして吸引された流体の動圧によって互い
に非接触に保たれるラジアル動圧軸受部を構成する。
【0023】回転軸2の端面2aには、スラスト板3の
表面に対向するようにスパイラル状の動圧発生溝E3
形成されている(図1の(c)参照)。回転軸2は、そ
の回転中、モータM1 のロータ6とステータ7の間に作
用する磁力と、スラスト板3の表面と回転軸2の端面2
aによって構成されるスラスト動圧軸受部の流体の動圧
によって、スラスト板3から浮上した状態に保たれる。
【0024】モータM1 のロータ6は、回転軸2と一体
であるフランジ4から懸下されたヨーク6aと、その内
側に固着されたロータマグネット6bを有し、ステータ
7は、スラスト板3と一体である固定板5に立設された
外筒5aの外側に支持されたコイルからなる。
【0025】スリーブ1、回転軸2、スラスト板3は、
それぞれ、母材であるアルミニウム、真鍮、SK材、ス
テンレス等の金属材料を所定の形状に加工し、各軸受面
すなわち、スリーブ1の内周面と回転軸2の外周面、お
よび回転軸2の端面2aとこれに対向するスラスト板3
の表面にそれぞれ、炭素系の耐摩耗潤滑性被膜10a,
10b,10c,10dを被着させたものである。各耐
摩耗潤滑性被膜10a〜10dは、金属である母材表面
との境界面がタンタル、チタンまたは珪素を100%の
主成分とするもので、膜厚方向に図2に示すような勾配
で連続的に炭素含有量が増加してゆき、表面が炭素含有
量100%の硬質炭素膜(カーボンコート)となるよう
に公知の成膜方法で成膜されたものである。
【0026】このように各耐摩耗潤滑性被膜10a〜1
0dは、表面層が硬質炭素膜であるから、TiN,Ti
C等の硬質膜と同様にすぐれた耐摩耗性を有し、しかも
潤滑性にもすぐれており、モータの起動時の摩擦抵抗を
低減してモータ負荷を軽減できるという長所を有する。
すなわち、加工性のよい金属を母材とした動圧軸受の軸
受面に耐摩耗性と潤滑性の双方にすぐれたカーボンコー
トを施すことで、セラミック材料等に比べて加工コスト
が低く、しかも、耐摩耗性にすぐれており、摩擦のため
に負荷が増大して消費電力の増加を招く等のトラブルも
ない高性能な動圧軸受装置を実現できる。
【0027】加えて、各耐摩耗潤滑性被膜10a〜10
dは、母材表面との境界面が金属との密着性にすぐれた
タンタル、チタンまたは珪素を主成分とし、膜厚方向に
徐々に炭素の含有量が増加して表面が炭素含有量100
%の硬質炭素膜になる炭化物によって構成されているた
め、母材との密着性が高く、従って、母材からの剥離が
起こりにくい。
【0028】さらに、膜厚の成分比が徐々に変化してい
るために、膜厚の内部にも剥離しやすい界面が存在せ
ず、膜厚の中間部で剥離が起こるというトラブルもな
い。
【0029】このように、耐摩耗潤滑性被膜10a〜1
0dの母材に対する密着性が充分で、しかも膜厚の内部
で剥離が起こることもないため、特に回転多面鏡の高速
化や大形化等によって軸受負荷が増大する場合の動圧軸
受装置の耐久性を大幅に向上できる。
【0030】このような動圧軸受装置を用いることで、
光偏向装置等の高性能化や低価格化を促進し、また、軸
受部の耐久性を大幅に改善することで高速化やカラー化
等に貢献できる。
【0031】(実施例)図3に示すスパッタ装置を用い
て各軸受部品に耐摩耗潤滑性被膜を成膜した。回転軸、
スリーブ等の被加工物は、ワークホルダ51に以下の方
法で取りつける。
【0032】回転軸の外周面にマスキングを施して回転
軸の端面が図4に示すように蒸着物質飛来方向に垂直に
なるように保持する。図5の(a)に示すように、スラ
スト板も同様に保持される。回転軸の外周面に成膜する
ときは図5の(b)に示すように蒸着物質飛来方向と蒸
着面を垂直に保持し、膜厚が均一になるように回転を与
えた。スリーブの内周面は図5の(c)と(d)に示す
ようにスリーブの上下を反転させて2回に分けて蒸着
し、膜厚を均一にした。また必要に応じて各部品にマス
キングをした。
【0033】図3に示す装置の真空槽52を1×10-6
Torr以下に排気し、次いでガス導入口53よりアル
ゴンガスを導入して真空槽52を5×10-3Torrに
する。そこでRF電源54を投入して1W/cm2 のR
Fパワー密度でタンタルターゲット54aをスパッタす
る。RF電源54のRFパワーを徐々に減少させると同
時にグラファイトターゲット55aのRF電源55のR
Fパワーを徐々に増加させて3W/cm2 のRFパワー
密度でグラファイトターゲット55aをスパッタした。
最後はRF電源54はOFFの状態でグラファイトだけ
がスパッタされる。
【0034】このようにして、回転軸の外周面および端
面、スリーブの内周面、スラスト板の表面にそれぞれ膜
厚0.5μmの耐摩耗潤滑性被膜を形成した。この膜の
構成は金属母材との界面が100%タンタルで、表面に
向かってその量が連続的に減少するとともに炭素含有量
が増加して、表面層は炭素が100%の硬質炭素膜にな
っている。
【0035】(耐久テスト)次に、本実施例による耐摩
耗潤滑性被膜と、比較例として硬質炭素膜+TaC中間
膜、硬質炭素膜、TiN膜をコートした動圧軸受および
コートしていない動圧軸受の合計5種類を図1の装置に
組み込んで耐久テストを行なった。テスト方法は、任意
の一定時間内に15000rpmまで立ち上げ任意の一
定時間その回転数を保持したのちに停止させるいわゆる
スタート・ストップテストで、このスタート・ストップ
を1500回繰り返し行なった。表1に耐久テストの結
果を示す。なお、ここで使用した軸受各部品の材質は、
アルミニウム製の回転軸、真鍮製のスリーブ、ステンレ
ス製のスラスト板である。
【0036】
【表1】 表1において、「減少量」「表面状態」は耐久テスト後
に各軸受部品がどのくらい摩耗しているかもしくは剥離
等の欠陥が発生しているかを示し、また「消費電力」は
特に起動時における回転軸とスリーブおよびスラスト板
との滑り状態の良否の判断材料になる。つまり、消費電
力が少なければ良好な滑り状態である。また、「剥離発
生の耐久回数」は、耐久テスト中に消費電力が急激に増
加した時点で各軸受部品を観察した結果である。
【0037】今回のテストの結果、本実施例によるもの
は、回転軸、スリーブ、スラスト板に摩耗、キズ、膜剥
離等の発生はなく初期同等の良好な状態を1500回の
テスト終了まで維持できた。消費電力も初期と終了時で
変化は認められなかった。これは、本実施例の耐摩耗潤
滑性被膜が、硬質化のみでなく潤滑性も有しており、さ
らに金属材料との密着性もすぐれているため考えられ
る。
【0038】比較材の「硬質炭素膜+TaC中間膜」お
よび「硬質炭素膜」は、約1000回までは本実施例の
耐摩耗潤滑性被膜と同様に良好な状態であったが、それ
を少し越えた時点で「硬質炭素膜」が、さらに約130
0回で「硬質炭素膜+TaC中間膜」が剥離した。剥離
状態は両者とも回転軸とスリーブの接触部分および回転
軸の端面とスラスト板に発生した。「硬質炭素膜+Ta
C中間膜」の剥離は、炭素膜と中間膜の界面から発生し
ていた。つまり金属母材とTaC膜の密着力より炭素膜
とTaC膜の密着力の方が弱いと考えられる。また剥離
発生時点は、TaC中間層が存在することで金属に直接
炭素膜をコートするよりも約300回改善された。
【0039】しかし、上記のように硬質炭素膜と他の膜
(TaC)の界面が存在すると剥離発生の原因になる。
本実施例の耐摩耗潤滑性被膜は、金属部品と密着力の強
いTa膜を各軸受部品の表面に被覆して、膜厚方向に徐
々に炭素含有量を増加させ表面層を硬質炭素膜にするこ
とで、膜内部に界面が発生するのを回避したために、非
常に強い密着力をもち、しかも膜厚の中間部でも剥離が
起こらなかったものと考えられる。
【0040】次に、比較材のTiNコートは、回転軸、
スリーブ、スラスト板の摩耗による重量減少は認められ
なかったが、荷重の影響を受けやすいスラスト軸受部で
ある回転軸の端面およびスラスト板にわずかなキズが発
生した。消費電力も前記3種類のカーボン系コートに比
べて初期で1W、終了時で2W多くなった。これらの結
果は、TiN膜は摩耗防止には効果があるが潤滑効果が
カーボン系コートよりも劣っていることに起因するため
と考えられる。
【0041】さらに、コーティングなしの場合は、テス
ト後の回転軸の重量減少とスラスト板の重量増加が認め
られるとともに各軸受部品に激しい傷の発生も認められ
た。これは、スラスト板と回転軸が起動および停止時に
擦れることで回転軸の材質である柔らかいアルミニウム
がスラスト板に付着したためと考えられる。また消費電
力もこれらの摩耗や表面の劣化を反映してTiNコート
の動圧軸受よりもさらに大きくテスト終了時には13W
になっている。
【0042】次に、各コーティング膜のヌープ硬度と摩
擦係数を表2に示す。
【0043】
【表2】 この結果からもわかるように膜の硬度はTiNとカーボ
ン系膜で大きな差は認められない。また、本実施例の耐
摩耗潤滑性被膜は表面の硬質炭素膜の下に徐々にTaが
多くなるようにTaC膜が形成されているが、TaCの
硬度もHk =2000近くあるので表面の硬度の極端な
低下は見られず、膜の硬度はHk ≒2300であった。
同様な理由で、硬質炭素膜+TaC膜もHk ≒2300
であった。
【0044】一方、摩擦係数は表面が硬質炭素膜のもの
(本実施例の耐摩耗潤滑性被膜、硬質炭素膜+TaC、
硬質炭素膜)はTiN膜の1/2〜1/6で非常に低い
値を示した。この理由はまだ解明していないが、炭素膜
の摩擦にあずかる極表面層が摩擦方向に配向するためと
考えられてる。
【0045】図6は光偏向装置全体を示すもので、これ
は、レーザ光等の光ビーム(光束)を発生する光源S
と、前記レーザ光を回転多面鏡R1 の反射面A1 に線状
に集光させるシリンドリカルレンズCとを有し、前記光
ビームを回転多面鏡R1 の回転によって偏向走査し、結
像レンズ系Dを経て回転ドラム上の感光体Fに結像させ
る。結像レンズ系Dは球面レンズD1 、トーリックレン
ズD2 等を有し、感光体Fに結像する点像の走査速度等
を補正するいわゆるfθ機能を有する。
【0046】前記モータM1 によって回転多面鏡R1
回転すると、その反射面A1 は、回転多面鏡R1 の軸線
まわりに等速で回転する。前述のように光源Sから発生
され、シリンドリカルレンズCによって集光される光ビ
ームの光路と回転多面鏡R1の反射面A1 の法線とがな
す角、すなわち該反射面A1 に対する光ビームの入射角
は、回転多面鏡R1 の回転とともに経時的に変化し、同
様に反射角も変化するため、感光体F上で光ビームが集
光されてできる点像は回転ドラムの軸方向(主走査方
向)に移動(走査)する。
【0047】結像レンズ系Dは、回転多面鏡R1 におい
て反射された光ビームを感光体F上で所定のスポット形
状の点像に集光するとともに、該点像の主走査方向への
走査速度を等速に保つように設計されたものである。
【0048】感光体Fに結像する点像は、回転多面鏡R
1 の回転による主走査と、感光体Fを有する回転ドラム
がその軸まわりに回転することによる副走査に伴なっ
て、静電潜像を形成する。
【0049】感光体Fの周辺には、感光体Fの表面を一
様に帯電するための帯電装置、感光体Fの表面に形成さ
れる静電潜像をトナー像に顕像化するための現像装置、
前記トナー像を記録紙に転写する転写装置(いずれも不
図示)等が配置されており、光源Sから発生する光ビー
ムによる記録情報が記録紙等にプリントされる。
【0050】検出ミラーGは、感光体Fの表面における
記録情報の書き込み開始位置に入射する光ビームの光路
よりも主走査方向上流側において光ビームを反射して、
フォトダイオード等を有する受光素子Hの受光面に導入
する。受光素子Hはその受光面が前記光ビームによって
照射されたときに、走査開始位置(書き出し位置)を検
出するための走査開始信号を出力する。
【0051】光源Sは、ホストコンピュータからの情報
を処理する処理回路から与えられる信号に対応した光ビ
ームを発生する。光源Sに与えられる信号は、感光体F
に書き込むべき情報に対応しており、処理回路は、感光
体Fの表面において結像する点像が作る軌跡である一走
査線に対応する情報を表す信号を一単位として光源Sに
与える。この情報信号は、受光素子Hから与えられる走
査開始信号に同期して送信される。
【0052】なお、回転多面鏡R1 、結像レンズ系D等
は光学箱Bに収容され、光源S等は光学箱Bの側壁に取
り付けられる。光学箱Bに回転多面鏡R1 、結像レンズ
系D等を組み付けたうえで、光学箱Bの上部開口に図示
しないふたを装着する。
【0053】
【発明の効果】本発明は上述のように構成されているの
で、以下に記載するような効果を奏する。
【0054】高い軸受性能を有し、高速化等に伴なう軸
受負荷の増大にも耐えることのできるすぐれた耐久性を
備えており、また、ヘリングボーン溝等の加工コストが
低く、しかも、モータ起動時にモータ負荷が増大して消
費電力の増加を招く等のトラブルのない安価で高性能な
動圧軸受装置を実現できる。このような動圧軸受装置を
光偏向装置の回転多面鏡の軸受部に用いることで、レー
ザビームプリンタ等の画像形成装置の高性能化と低価格
化等に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態による動圧軸受装置を用いた光偏
向装置の主要部を示すもので、(a)はその模式断面
図、(b)は(a)の回転軸とスリーブのみを示す部分
断面図、(c)は回転軸の端面を示す底面図である。
【図2】耐摩耗潤滑性被膜の成分比の変化を示すグラフ
である。
【図3】耐摩耗性被膜を成膜するスパッタ装置を示す図
である。
【図4】図3の装置によって回転軸の端面に耐摩耗性被
膜を成膜する工程を示す図である。
【図5】耐摩耗性被膜をスラスト板と回転軸の外周面と
スリーブの内周面に成膜する工程を示す図である。
【図6】光偏向装置全体を説明する図である。
【図7】一従来例による動圧軸受装置を用いた光偏向装
置の主要部を示すもので、(a)はその模式断面図、
(b)はスリーブのみを示す断面図である。
【符号の説明】
1 スリーブ 2 回転軸 3 スラスト板 10a〜10d 耐摩耗潤滑性被膜 R1 回転多面鏡 S 光源 D 結像レンズ系 F 感光体

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対的に回転自在に嵌合された軸および
    スリーブと、前記軸または前記スリーブの端面に対向す
    るスラスト板を有し、前記軸の外周面と前記スリーブの
    内周面がラジアル動圧軸受部を構成し、前記スラスト板
    の表面と前記軸または前記スリーブの前記端面がスラス
    ト動圧軸受部を構成する動圧軸受装置であって、前記軸
    の前記外周面と前記スリーブの前記内周面と前記スラス
    ト板の前記表面と前記軸または前記スリーブの前記端面
    が、それぞれ、炭素含有量が膜厚方向に連続的に変化す
    る炭素系の耐摩耗潤滑性被膜によって被覆されているこ
    とを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 【請求項2】 耐摩耗潤滑性被膜の主成分が、タンタ
    ル、チタンおよび珪素のうちの1つと炭素であることを
    特徴とする請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 【請求項3】 耐摩耗潤滑性被膜の表面が硬質炭素膜で
    あることを特徴とする請求項1または2記載の動圧軸受
    装置。
  4. 【請求項4】 光ビームを反射する回転多面鏡と、これ
    を回転自在に支持する軸受手段と、前記回転多面鏡を回
    転駆動する駆動手段を有し、前記軸受手段が、相対的に
    回転自在に嵌合された軸およびスリーブと、前記軸また
    は前記スリーブの端面に対向するスラスト板を備えてお
    り、前記軸の外周面と前記スリーブの内周面がラジアル
    動圧軸受部を構成し、前記スラスト板の表面と前記軸ま
    たは前記スリーブの前記端面がスラスト動圧軸受部を構
    成する動圧軸受装置であって、前記軸の前記外周面と前
    記スリーブの前記内周面と前記スラスト板の前記表面と
    前記軸または前記スリーブの前記端面が、それぞれ、炭
    素含有量が膜厚方向に連続的に変化する炭素系の耐摩耗
    潤滑性被膜によって被覆されていることを特徴とする光
    偏向装置。
  5. 【請求項5】 耐摩耗潤滑性被膜の主成分が、タンタ
    ル、チタンおよび珪素のうちの1つと炭素であることを
    特徴とする請求項4記載の光偏向装置。
  6. 【請求項6】 耐摩耗潤滑性被膜の表面が硬質炭素膜で
    あることを特徴とする請求項4または5記載の光偏向装
    置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002072908A2 (en) * 2001-03-14 2002-09-19 The Timken Company Rotary fluid bearing coatings and coining and processes for manufacturing the same
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