JPH11131171A - チタンが主成分の刃材 - Google Patents

チタンが主成分の刃材

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JPH11131171A JP32939797A JP32939797A JPH11131171A JP H11131171 A JPH11131171 A JP H11131171A JP 32939797 A JP32939797 A JP 32939797A JP 32939797 A JP32939797 A JP 32939797A JP H11131171 A JPH11131171 A JP H11131171A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】不銹性であるとともに、ステンレス製や特殊鋼
製のものよりも一層軽量であり、特に切れ味が長寿命で
あり、かつ抗菌性の刃物の刃材を提供する。 【解決手段】全量100重量部中粒径150μm以下の
Ti粉末約80部、粒径20μm以下でAl6:V4の
重量比をもつAl・V合金粉末約6〜8部、粒径2μm
以下のFe粉末約1部、粒径2μm以下のCr
はTiC粉末約10部、及び粒径2μm以下のAg粉末
約1〜3部からなる組成物に粉末冶金技術を施して得た
焼結物からなる刃材。 【効果】不銹、軽量で切れ味の持続性が従来のいかなる
刃物より格段に大きく、かつ抗菌性ある刃物の刃材を提
供できた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は第一に、ナイフ、カ
ッターの刃、調理用包丁、鋏、カミソリその他各種の刃
物に関する技術分野に属するものである。本発明は第二
に、粉末冶金に関する技術分野に属するものである。
【0002】
【発明が解決すべき課題】従来、前記したような各種の
刃物は炭素鋼を刃材とするものが最も多いのであるが、
調理用包丁など家庭での使用が数量的に主となる刃物に
ついては、錆落し、刃砥ぎなどの日常の手入れが嫌われ
るので、近年は低炭素鋼に多量のニッケル及びクローム
を配合したステンレス鋼製のものが普及するようになっ
た。しかしながら、ステンレス鋼製の刃物は錆び難い利
点がある反面、炭素鋼のものと較べて切れ味が格段に劣
る。そこで最近は炭素鋼にCr、W、Moその他の特殊
元素を添加した、いわゆる特殊鋼を刃材とする調理用刃
物が家庭用品の市場にまで進出しつつある。
【0003】特殊鋼を刃材とする刃物は、ステンレス鋼
製と同様、不銹性であると同時に、使用の当初において
切れ味にも優れている。しかしながら、著しく高価な割
には切れ味の持続性が乏しいので広く普及するに至らな
い。
【0004】一方、近年の粉末冶金技術の進歩に伴い、
チタン合金やジルコニアセラミック粉末を素材とする刃
材も試作されるようになった。これらの刃材は軽量かつ
不銹性であるとともに、炭素鋼やステンレス鋼の刃材と
較べて硬度が高いので鋭利な刃物を得ることができる
が、抗折力が低いので刃が欠けやすい欠点がある。
【0005】以上述べた諸点から、ステンレス鋼製と同
様に不銹性であるとともに、ステンレス鋼製や特殊鋼製
よりも一層軽量かつ切れ味の持続性において優れ、加え
て、特殊鋼製よりも価格面で有利であるような刃材を提
供することが、本発明の解決すべき課題である。また、
最近の調理関係者等の環境衛生強化への指向に鑑み、鋭
利性を損なうことなく、調理に使用される包丁等の刃物
に抗菌性を与えることも本発明の課題であることを失わ
ない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は金属及びその化
合物の粉末を素材とし、圧縮成型工程及び焼結工程をへ
て焼結物を製造する、いわゆる粉末冶金技術を適用した
刃材に係るもので、つぎに掲げる5種類の粉末を混和し
た金属組成物を粉末冶金の粉末素材としている。即ち、
全量100重量部中、 粒径150μm以下のチタン(Ti)粉末約80部 粒径20μm以下でアルミニウム(Al)6:バナ
ジウム(V)4の重量比をもつアルミニウム・バナジウ
ム合金粉末約6〜8部 粒径2μm以下の鉄(Fe)粉末約1部 粒径2μm以下のクロームカーバイド(Cr
)粉末又はチタンカーバイド(TiC)粉末約1
0部 粒径2μm以下の銀(Ag)粉末約1〜3部
【0007】本発明は上記事項を要件とするものである
が、ここに前記した粉末素材である金属組成物に対して
粉末冶金技術を適用する場合の条件を述べる。但し、か
かる条件における数値自体は一般の粉末冶金技術におい
て既知の事項であるが以下にその例を述べる。即ち、圧
縮成型には4ton/cm以上の圧力を使用する。焼
結は真空炉又はアルゴンガス炉中、1,200〜1,3
00℃で所要時間は約2時間である。時効処理が所望さ
れる場合は400℃で40時間、又は500℃で3時間
程度行うとよい。
【0008】かくして得た焼結物からなる刃材は、研削
により所要の箇所に刃付け加工を施すことにより、所望
の刃物を得ることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一、二の実施例につき冗長を
避けるため、前記した粉末冶金の素材である組成物にお
ける各金属及び合金間の重量比のみをここに掲げる。こ
こに掲げた数値例に従って配合した組成物については、
これを粉末冶金の素材として用いた場合、後記する実験
結果とほとんど同様の成績を挙げることができた。 但し、個々の金属又は合金の粒径については前出
【0006】に記載した通り、また、粉末冶金工程の処
理条件については
【0007】に記載した通りである。
【0010】
【発明の作用効果】さて、本発明に係る刃材には、主成
分としてチタンが約80%含まれているので、この刃材
による刃物は、炭素鋼を主成分とする鋼刃物、特殊鋼刃
物、又はステンレス刃物と較べて当然に軽量であり、し
かもステンレス刃物と同様に不銹性である。
【0011】本発明の刃材の硬度はHRC45°〜50
0であり、従って、この刃材からは実用上ほとんど最高
の硬度をもつ刃物が得られることが明らかである。高硬
度の刃材からは、刃付けにより鋭利な刃物が得られる
が、高い硬度に起因する鋭利性は必ずしも良質な刃物を
与えない。高硬度の刃物が当初は鋭利であっても靱性が
乏しければ、繰り返し使用により、ごく薄の刃先に微細
な刃欠けが発生し、間もなく鈍刀化するからである。
【0012】本発明者は、刃材の靱性を知る手掛かりと
して、つぎのような抗折力測定を行った。図1を参照
し、1は55mm×55mm×1.5mmの検体で、定
盤2上において25mmの間隔で平行に置いた直径8m
m長さ40mmの2本の丸棒3によりこの検体1を支え
る。4は丸棒3と同寸法の丸棒で、この丸棒4により上
方から検体1の中央部を押圧し、検体1の折断時におけ
る押圧力を測定した。前掲の実施例における組成例Iの
刃材を検体として使用した場合の測定結果は、単位断面
積当たりの抗折力が600kg/cmを若干上回っ
た。また、検体に前記組成例IIの刃材を使用した場合
もほぼ同一の測定結果を得た。測定の対照例として、市
販のジルコニアセラミック包丁(刃板の厚さ1.5m
m)を前記した検体1の主面寸法に切断し、同様にその
抗折力を測定したところ、その測定値はほぼ200kg
/cmで、その抗折力は本発明による検体の抗折力の
1/3でであった。
【0013】以上のべた刃材の硬度及び抗折力に関する
検査の成績からみて、本発明の刃材に刃付け加工を行っ
た刃物の刃先については、高い硬度にかかわらず、通常
の刃物の“刃先の摩耗”と同様な意味で、“微細な刃欠
け”が発生し難く、従って切れ味の持続性が大きいこと
がほぼ断定できると思われた。しかしながら、本発明者
はその確認のため、刃物専門の研究機関であるイギリ
ス、シェフィールド所在のカットレリイ、アンド、アラ
イド、トレーズ、リサーチ、アソシエーション(Cut
lery and Allied Trades Re
search Association―略称CATR
A)に本発明の刃材に刃付けした包丁2点及び検査にお
いて対照とするための、ヘンケル社(ドイツ)製包丁1
点及びグローバル社(アメリカ)製(いずれもステンレ
ス鋼製)計4点を送り、切れ味の持続能力につき検査を
依頼したところ、1997年9月17日付で検査成績の
報告を受けた。
【0014】前記研究機関の検査方法は概略つぎの通り
である。即ち、検査装置の機械腕に検体の包丁を取りつ
け、一定荷重の下に刃先をテスト用カードに当て、一定
速度で片道40mmの往復サイクル運動を60回させ、
テスト用カードの切込みの深さを1サイクル毎に記録す
るものである。テスト用カードは化学繊維に5%の水晶
粉を混入してなるものである。
【0015】前記の報告によれば、いずれもHRC57
゜〜58゜の硬度をもつヘンケル社製、グローバル社製
のものが60サイクル時において、切込み能力をほとん
ど失っているのに対し、本発明による2点の包丁のうち
の1点は60サイクル時において前記2社製のものの6
〜10倍程度の切込み能力を保持しており、さらにテス
ト回数を180サイクルまで延長しても切込み能力が失
われなかったという。しかしながら、本発明による他の
1点はテストの当初から切込み能力が他の検体3点より
も格段に低く、かつ60サイクル時においては、ステン
レス鋼製と同様に切込み能力をほとんど失っていた。し
かし、切込み能力の減衰カーブをみると、本発明による
前記他の1点の減衰カーブの態様は、抜群に成績良好
な、さきに述べた検体の減衰カーブとほぼ同様であるか
ら、もしも前記2点の包丁の刃付けが同様に良好であっ
たならば、本発明による2点の検体は前記対照例の2点
とは比較にならないほど優れた切込み力の持続能力があ
ったであろうと思われる。
【0016】さて、本発明に係る刃材により作成した刃
物が、上記するように切れ味の持続能力に優れているの
は、前記したように刃材の硬度が高く、同時に靱性が大
きいことに起因することが明らかである。しかしなが
ら、靱性が大きい原因については目下研究中であり、未
だ明らかになっていない。ところで、本発明によれば、
Tiの粒径の上限は150μmであり、Cr又は
TiC、並びにFeの粒径の上限がそれぞれ2μmであ
るのと較べて前者の粒径の方が後者よりも著しく大きい
こと、そして主成分であるチタンの粒径と特にCr
又はTiCの粒径の比が比較的小さい場合には、硬度
は高いが靱性が不足となり、そのため、切れ味の持続性
の劣る刃物しか得られないという実験結果を別途に得て
いるので、主成分であるTiの大きい粒子の周囲に存在
する小さい粒子のCr又はTiCが、高温高圧に
よる焼結の過程において、Tiの大きい粒子と固溶体を
形成し、固溶体となった大きな粒子間に柔軟な橋絡が生
ずるのがその原因ではないかと推定している。
【0017】なお、本発明の刃材には副成分として銀が
配合されているため、この刃材による刃物は抗菌性であ
る。しかも、その配合量が少量であるため、刃物の重
量、鋭利性及び切れ味の寿命に悪影響が現れないこと
も、本発明の利点であることを失わない。
【0018】即ち、本発明によれば、ステンレス鋼を刃
材とする刃物と同様に不銹性かつステンレス鋼製よりも
著しく軽量であるのみならず、きわめて鋭利であると同
時にその鋭利性が多使用回数にわたって持続するとい
う、未だかって得られなかった格別の性能をもち、かつ
使用時において抗菌性を発揮するという抜群に優秀な刃
物を提供できるので、本発明は刃物の生産技術の向上並
びに粉末冶金技術の拡大に貢献するところが多大であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】刃材の抗折力測定方法の説明における測定装置
及び検体の拡大断面概念図。
【符号の説明】
1……………………検体 2……………………定盤 3,4………………丸棒

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】全量100重量部中、 粒径150μm以下のチタン(Ti)粉末約80部、 粒径20μm以下で、アルミニウム(Al)6:バナジ
    ウム(V)4の重量比をもつアルミニウム・バナジウム
    合金粉末約6〜8部 粒径2μm以下の鉄(Fe)粉末約1部、 粒径2μm以下のクロームカーバイド(Cr)又
    はチタンカーバイド(TiC)粉末約10部、 及び粒径2μm以下の銀(Ag)粉末約1〜3部 を混和した組成物を圧縮成型及び焼結して得た焼結物か
    らなることを特徴とするチタンが主成分の刃材。
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