JPH11128417A - ゴルフクラブ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】スイングバランスに優れ且つ軽量化を実現可能
な低価格なゴルフクラブを提供する。 【解決手段】シャフト４には、バックエンド近傍を除く
グリップ部８の周辺領域（即ち、スイング時に最大の曲
げモーメントが発生する領域）に、補強部材１０が配置
されており、この補強部材は、シャフトのバックエンド
からフロントエンド方向に長さＬ１だけずれた位置と、
シャフトの中心からバックエンド方向に長さＬ２だけず
れた位置との間の領域に配置される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ゴルフクラブに関
する。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えば実用新案登録公報第２５２
９０４１号に示されているように、シャフトの剛性及び
バランス性を改善するために、グリップ側のシャフト端
部（即ち、ヘッドが取り付けられるシャフトのフロント
エンドとは反対側のバックエンド）からフロントエンド
方向に長さ２００ｍｍ〜６００ｍｍに渡って、比重の大
きな金属製補強部材が連続的に配置されたゴルフクラブ
が知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】通常のゴルフスイング
において、ヘッドのフェースをゴルフボールに正確に当
てるためには、テイクバックした状態からダウンスイン
グしてインパクトの瞬間までに、フェースがゴルフボー
ルに対面するようにフェースを返す動作（以下、返し動
作という）が必要となる。

【０００４】そして、この返し動作に際して、ゴルフク
ラブは、バックエンド側に位置付けられている手（例え
ば右利きのプレイヤーでは左手）とフロントエンド側に
位置付けられている手（例えば右利きのプレイヤーでは
右手）との間の支点を中心に回転することになる。

【０００５】しかし、従来技術のようにバックエンドか
ら長さ２００ｍｍ〜６００ｍｍに渡って金属製補強部材
を配置した場合、シャフトの重心位置がバックエンド側
に大きく片寄ってしまうため、上記支点の部分からバッ
クエンドに渡る領域のシャフト重量が大きくなってしま
う。

【０００６】このため、ダウンスイング中、上記支点か
らフロントエンドに渡るシャフトの慣性モーメント力
は、上記支点からバックエンドに渡るシャフト内に配置
された金属製補強部材の慣性モーメント力によって弱め
られ、その結果、返し動作を完全に行うことができずに
フェースが流れて、フェースをゴルフボールに正確に当
てることが困難になってしまう。

【０００７】この場合、スイング軌道を安定化させるた
めには、プレイヤーは必要以上の大きな握持力でグリッ
プすることが必要となるが、この握持力を必要以上に強
めた場合には、クラブを振る力が鈍くなり、その結果、
スイングバランスが崩れてゴルフボールの飛距離や方向
性が不安定となってしまうといった問題が生じる。

【０００８】また、従来技術のゴルフクラブでは、上述
したようにシャフトの重心位置がバックエンド側に大き
く片寄ってしまうため、スイングバランスを考慮すると
金属製補強部材の重量以上にクラブのトータル重量が増
加してしまう。このため、軽量化を狙ったゴルフクラブ
には、適さない構成となってしまう。

【０００９】更に、補強部材に用いた金属材料は、高価
であるため、従来技術のようにバックエンドから連続し
て金属製補強部材を配置した場合、ゴルフクラブ全体の
製造コストが上昇してしまうといった問題も生じる。本
発明は、このような問題を解決するために成されてお
り、スイングバランスに優れ且つ軽量化を実現可能な低
価格なゴルフクラブを提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明のゴルフクラブは、シャフトのバック
エンド近傍を除いたグリップ部の周辺領域に補強部材が
配置されている。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態に係
るゴルフクラブについて、添付図面を参照して説明す
る。図１（ａ），（ｂ）に示すように、本実施の形態の
ゴルフクラブ２は、シャフト４と、このシャフト４のフ
ロントエンドに取り付けられたヘッド６とを備えて構成
されており、シャフト４のバックエンド側には、グリッ
プ部８が設けられている。

【００１２】グリップ部８は、メンズ用クラブとレディ
ス用クラブでは、そのグリップ長Ｗ（図２（ａ）参照）
が異なっているが、一般的に、シャフト４のバックエン
ドからフロントエンドに向かって約２１０ｍｍ〜２９０
ｍｍの長さのグリップ長Ｗを有している。なお、グリッ
プ部８には、通常、滑り止め用部材（例えば、ラバー部
材、合成皮革、合成樹脂など）が設けられている。

【００１３】また、図２（ａ），（ｂ）に示すように、
シャフト４には、バックエンド近傍を除いたグリップ部
８の周辺領域（即ち、スイング時に最大の曲げモーメン
トが発生する領域）に、補強部材１０が配置されてい
る。

【００１４】具体的には、この補強部材１０は、シャフ
ト４のバックエンドからフロントエンド方向に第１の長
さＬ１だけずれた位置と、シャフト４の中間部からバッ
クエンド方向に第２の長さＬ２だけずれた位置との間の
領域に配置されている。更に詳述すると、この補強部材
１０は、プレイヤーが両手でグリップ部を握持した際
に、少なくともバックエンド側の手（例えば右利きのプ
レイヤーでは左手）の位置よりもフロントエンド側に配
置する。

【００１５】この場合、各プレイヤーによる握持位置の
相違を考慮すると、第１の長さＬ１は、０＜Ｌ１≦２０
０（又は３００）ｍｍの範囲に設定し、第２の長さＬ２
は、０≦Ｌ２≦４００（又は６００）ｍｍの範囲に設定
することが好ましい。

【００１６】特に、Ｌ１の最小距離は、少なくとも２０
ｍｍ通常５０ｍｍにするのであり、好ましくは、１００
〜１５０ｍｍ（グリップした手の略中心位置）にするの
が良い。一方、Ｌ２の最大距離は、グリップした手の略
中心位置までが好ましいが、グリップした手の先端部又
はその近傍部まででも良い。

【００１７】また、補強部材１０としては、スイング中
に、例えば「しっかり感」や「シャープ感」及び「粘り
感」といったスイング感を奏するために、シャフト４を
繊維強化プラスチック（ＦＲＰ）で構成した場合、この
ＦＲＰの強化繊維を金属繊維で形成した金属製プリプレ
グを用いることができるが、このプリプレグの代わり
に、例えば金属薄板や金属箔又は金属フィルム等の金属
シートを用いても構わない。更に、例えば弾性率６０ｔ
ｏｎｆ／ｍｍ² 以上のピッチ系カーボン繊維を用いても
良い。

【００１８】このような補強部材１０は、シャフト４を
形成する際に、このシャフト４に組み込むことが可能で
ある。図２（ｂ）には、シャフト４の最外層上に補強部
材として金属製プリプレグシート１０を組み込んだ例が
示されており、図３には、このシャフト４の形成プロセ
スが示されている。

【００１９】即ち、図３に示すような複数のプリプレグ
シートを芯金１２に対して順に巻回した後、加熱行程、
冷却行程、脱芯行程、塗装工程等を経ることによって、
図２（ｂ）に示すようなシャフト４が形成される。

【００２０】具体的には、まず、芯金１２に対して、シ
ャフト４のフロントエンド側の補強層となる第１の補強
用プリプレグシート１４を巻回する。この第１の補強用
プリプレグシート１４は、炭素繊維を軸方向に引揃えて
構成されている。

【００２１】次に、第１の補強用プリプレグシート１４
が巻回された芯金１２に対して、軸方向に対して炭素繊
維を所定の交差角度（例えば、軸方向に対して±４５
°）で互いに斜向させて引揃えたプリプレグシート１６
を巻回する。

【００２２】続いて、このプリプレグシート１６上に、
炭素繊維を周方向に引揃えたプリプレグシート１８を巻
回した後、炭素繊維を軸方向に引揃えた２つのプリプレ
グシート２０，２２を順に巻回する。

【００２３】そして、プリプレグシート２２上に、シャ
フト４のフロントエンド側の補強層となる第２の補強用
プリプレグシート２４を巻回した後、上述した位置に補
強部材としての金属製プリプレグシート１０を巻回す
る。

【００２４】なお、第２の補強用プリプレグシート２４
は、第１の補強用プリプレグシート１４と同一の構成で
あるが、更に、耐衝撃性に優れたプリプレグシートで構
成することが好ましい。例えば、金属繊維プリプレグシ
ート、金属コーティング繊維プリプレグシート、有機強
化繊維（ＰＥＩ、ＰＥＥＫなど）で構成することが可能
である。

【００２５】そして、上述したように各プリプレグシー
トを巻回した後、加熱行程、冷却行程、脱芯行程、塗装
工程等を経ることによって、図２（ｂ）に示すように、
所定位置に補強部材１０が組み込まれたシャフト４が完
成する。

【００２６】なお、上述した形成プロセスは、その一例
であり、これ以外に、例えば各プリプレグシート同士を
任意に予め貼り付けておき、これを一体的に芯金１２に
対して巻回しても良い。また、プリプレグシート１６を
プリプレグシート１８に予め貼り付けておいても良い
し、プリプレグシート２０をプリプレグシート２２に予
め貼り付けておいても良い。更に、各プリプレグシート
の巻回数や強化繊維の弾性率並びに樹脂含浸量、強化繊
維の目付け量や厚さ並びに引揃え方向等は、シャフト４
の使用目的や設計規格等に対応して、任意に調整変更す
ることが可能である。

【００２７】このように本実施の形態によれば、バック
エンド近傍を除くグリップ部８の周辺領域に補強部材１
０を配置したことによって、スイング中にシャフトの重
心位置がバックエンド側に大きく片寄ってしまうことが
無くなり、クラブのトータル重量の増加を招くことは無
い。このため、ゴルフクラブの理想的な軽量化を実現す
ることができると共に、スイング中にフェースが流れて
しまうといった問題も生じない。この結果、グリップ部
８に対する握持力を必要以上に強めること無くスイング
軌道並びにスイングバランスを常時安定化させることが
できるため、フェースをゴルフボールに正確に当てるこ
とができると共に、ゴルフボールの飛距離や方向性を安
定化させることができる。

【００２８】また、必要な範囲にのみ限定して補強部材
１０を配置すれば良いため、ゴルフクラブの製造コスト
を低減させることが可能となる。更に、図２（ｂ）に示
すように、シャフト４の最外層上に補強部材１０を配置
した場合には、補強性能に優れているだけで無く、外観
上から補強性能を目視確認することが可能となる。そし
て、補強部材１０の配置位置をシャフト４の最外層に限
定した場合には、例えば炭素繊維に比べて密度の大きな
ガラス繊維で補強部材１０を構成しても同様の作用効果
を実現することができる。

【００２９】なお、図２（ｂ）及び図３では、シャフト
４の最外層上に補強部材として金属製プリプレグシート
１０を組み込んだ例を示したが、例えば、まず、芯金１
２に対して、補強部材としての金属製プリプレグシート
１０を上述した位置に巻回した後、他の各プリプレグシ
ートを巻回することによって、図４に示すように、シャ
フト４の最内層上に補強部材として金属製プリプレグシ
ート１０が組み込まれたシャフト４を形成することがで
きる。そして、このようなシャフト４も上記実施の形態
と同様の作用効果を実現することができる。

【００３０】また、補強部材１０の組み込み位置として
は、最外層や最内層に限定されることは無く、例えば、
プリプレグシート１６とプリプレグシート１８との間、
プリプレグシート１８とプリプレグシート２０との間、
或いは、２つのプリプレグシート２０，２２の間に配置
したり、又は、これら２つのプリプレグシート２０，２
２の層内に織り込んでも上記実施の形態と同様の作用効
果を実現することができ、シャフト４の要求特性に応じ
た各プリプレグシートの配置構成例に従って種々変更す
ることができる。

【００３１】また、上述した補強部材１０の特性を最大
に発揮させるために、グリップ部８には、総重量が約４
０ｇ未満の滑り止め用部材、或いは、薄肉の滑り止め用
部材を適用し、グリップ部８の軽量化を図ることが好ま
しい。

【００３２】また、補強部材１０は、シャフト４の強度
向上を図るように、一体的に形成するが、必ずしも強度
向上の役目を果たさない場合でも、重量バランスを調整
できる部材であれば良い。

【００３３】更に、補強部材１０は、元側の肉厚が厚く
なるように形成したり、元側の単位長さ当りの重量が重
くなるように、長さ方向に変化を持たせても良い。ま
た、その逆に、先側に重量を多く配分したり、中間部や
グリップ部８に重量が多くなるように配分しても良い。
これにより、より効率的に重量配分できる。なお、本発
明は、ウッドタイプ、アイアンタイプ、スチールシャフ
ト等の各ゴルフクラブに適用することができる。

【００３４】

【発明の効果】本発明によれば、スイングバランスに優
れ且つ軽量化を実現可能な低価格なゴルフクラブを提供
することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）は、本発明のゴルフクラブを用いてプレ
イヤーがスイングしている状態を示す図、（ｂ）は、本
発明のゴルフクラブの外観図。

【図２】（ａ）は、本発明のゴルフクラブの構成を示す
部分断面図、（ｂ）は、シャフトの構成を示す断面図。

【図３】シャフトの形成プロセスに用いる各プリプレグ
シートの配置構成を示す図。

【図４】シャフトの他の構成を示す断面図。

【符号の説明】

４ シャフト ８ グリップ部 １０ 補強部材

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シャフトと、このシャフトのフロントエ
   ンドに取り付けられたヘッドと、前記シャフトのバック
   エンド側に設けられたグリップ部とを備えて構成された
   ゴルフクラブにおいて、 前記シャフトには、そのバックエンド近傍を除いた前記
   グリップ部の周辺領域に、補強部材が配置されているこ
   とを特徴とするゴルフクラブ。
2. 【請求項２】 前記補強部材は、前記シャフトのバック
   エンドからフロントエンド方向に第１の長さだけずれた
   位置と、前記シャフトの中間部からバックエンド方向に
   第２の長さだけずれた位置との間の領域に配置されてい
   ることを特徴とする請求項１に記載のゴルフクラブ。
3. 【請求項３】 前記第１の長さをＬ１、前記第２の長さ
   をＬ２とすると、これら第１及び第２の長さＬ１，Ｌ２
   は、 ０＜Ｌ１≦３００ｍｍ、０≦Ｌ２≦６００ｍｍ の範囲に設定することを特徴とする請求項２に記載のゴ
   ルフクラブ。